結論
エーアイテイーは、日本と中国を結ぶ海上コンテナ輸送の仲介業者だ。船は持たず、荷主から集めた貨物を船会社に運ばせ、運賃の差と通関などの手数料で稼ぐ。アパレル・雑貨の輸入に強い。
筆者の結論は「やや割高」だ。会社は良質である。身軽で借金がなく、純現金は時価総額の4分の1を占め、利益の7割を配当に回す。それでも、10年の利益の伸びは運賃と日本の衣類輸入量に左右され、確率で重みを付けた価値は今の時価総額を下回る。
最大の強みは身軽さだ。倉庫も船も持たないので、投じるお金が少なくて済む。自己資本利益率は過去10年の中央値で17%に達する。ただし堀、つまり他社がまねできない強みは厚くない。同じ貨物を運ぶ競合は多く、荷主は値段で乗り換える。
気になるのは、取り扱う貨物の中身だ。売上の大半が中国発の繊維・雑貨で、日本の衣類輸入は枚数で減り始めた。東南アジアへ移る生産を取り込めるかが、10年の分かれ目になる。
今の値段との差は、現金の厚さでは埋まらない。余った現金は配当で戻す会社なので、価値に足す分は帳簿の額どおりだ。差を埋めるのは、ベトナムなど東南アジアの取扱量と、通関・3PLの付加価値が運賃の波を上回る速さである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い商売だが、堀は浅い」と見る。資本をほとんど使わずに利益を生む点は魅力だ。ただ、利益の源は船会社との運賃差で、競合も同じ貨物を狙う。10年後の利益を高く見積もる根拠は弱い。
オーナー利益、つまり株主がそのまま手にできる利益は、純利益とほぼ重なる。設備投資がほとんど要らず、利益の7割を配当に回しても現金は減らない。この性質は評価できる。
安全域は2つの面で見る。1つは現金だ。純現金138億円のうち、運転資金を超える分は約80億円と推定する。もう1つは、現金の下にある事業の稼ぐ力だ。中立でも利益の伸びは物価並みにとどまり、事業の価値は今の値段の大半を説明しない。
経営の資本配分は、これまでのところ堅実だ。大型買収で価値を壊した形跡はなく、稼いだ現金を配当で戻している。ただ、数値目標を持たない点と、提携先が2割を持つ点は、長く持つオーナーとして確かめたい。
結論は、強みは本物だが、払う値段に十分な余裕がない、という見立てだ。
何で稼ぐ会社か
事業は国際貨物輸送の仲介だ。専門用語ではNVOCC(自社で船を持たない利用運送事業者)と呼ぶ。荷主から運賃を受け取り、船会社へ支払う運賃との差額が粗利になる。取扱いの大半は中国と日本の間の海上輸送だ。
運ぶだけでは差がつかないため、通関、検品・加工、3PL(物流の一括請け負い)を組み合わせる。荷物が今どこにあるかをウェブで見せるCISというサービスや、急ぎ便のホット・デリバリー、複数の荷主の貨物をまとめるバイヤーズ・コンソリデーションも用意する。
2026年2月期の売上は584億円。日本が約85%、中国が約12%、台湾・ベトナム・ミャンマーが約3%だ。上海、大連、天津、青島、寧波、厦門、深圳などに自前の拠点を持つ。連結の従業員は約1,200人。
顧客は特定の商社やメーカーの系列に属さない荷主で、繊維・雑貨関連が多い。売上の1割を超える顧客はない。1988年に雑貨輸入の会社として大阪で生まれ、2002年に中国でNVOCCの資格を登録した。2018年に日立物流(今のロジスティード)と資本業務提携し、約2割の出資を受ける。日新運輸(国内の陸送・倉庫)を子会社に持つ。
優良さと弱いところ
優良さの中心は、身軽な資本構造と日中の現場だ。船も大型倉庫も持たない。借金はなく、純現金が138億円ある。過去10年の自己資本利益率は中央値で17%と高く、利益の約7割を配当に回しても現金が減らない。
堀は浅い。値段を決めるのは船会社で、仲介業者は差額を取るだけだ。新規参入が増え、価格競争は常態化している。通関や3PLでの囲い込みと、荷物追跡サービスで荷主をつなぎとめているが、乗り換えの費用は小さい。
利益率の安定は評価できる。営業利益率は過去12年で3.5%から8.4%の幅に収まり、赤字の期はない。運賃が乱高下しても、会社は手数料を上乗せして粗利を守ってきた。
弱みは3つある。繊維・雑貨に偏る貨物、中国の景気と政策への依存、東南アジアの立ち上がりの遅れだ。ミャンマーの物流は低調で、ベトナムは立て直しの最中にある。重視する経営指標は成長率とROE・ROAだが、数値の目標は示していない。資本の使い方の約束が弱い点は、慎重に見る材料だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の衣類・雑貨の輸入は、数量では頭打ちから減少に入った。2024年の衣類輸入は約20.8億枚と、前年から約6%減った。中国産は4年ぶりの低水準だ。人口が減り、中古衣料やリユースが広がる国内の需要は、これから細ると見るのが自然である。
その一方で、仲介の需要は残る。生産が中国からベトナムやバングラデシュ、インドへ移っても、日本へ運ぶ貨物は仲介業者が集める。中国プラスワンは、取扱量を奪う動きであると同時に、新しい航路を開く動きでもある。会社は東南アジアの拠点づくりを急ぐが、成果はまだ小さい。
競合は3層ある。日本通運や郵船ロジスティクス、近鉄エクスプレスなどの総合物流大手。中国系を含む中堅・小規模の仲介業者。そして船会社の直販だ。大手は大口の製造業、中堅は雑貨と衣類の中小荷主を取り合う。エーアイテイーは後者の上位にいる(社名は有報になく、筆者の推定)。
運賃は、船腹の過剰と地政学で振れる。運賃が上がる局面で売上は膨らみ、下がる局面で縮むが、粗利は手数料でならされる。デジタルの仲介業者が増えれば、手数料は下がる方向に働く。
資本政策と M&A
配当は年2回で、2026年2月期の配当性向は74%だった。2027年2月期は増配を予想する。自社株買いの方針は明らかでない。純現金は2024年2月期の144億円から138億円へ横ばいで、稼いだ分を戻す姿勢はうかがえる。
ロジスティードが約2割を持つ。親会社ではなく、3PLとフォワーディングの連携、アパレル・雑貨物流の基盤づくりを進める提携先だ。この出資比率は買収の防波堤にも、将来の完全子会社化の足がかりにもなりうる。外部の推計では、10年以内にTOB(株式公開買い付け)や買収を受ける確率は約17%とされる。
M&Aは小規模で、日新運輸の子会社化や海外の持分法会社への出資が中心だ。大型の買収で価値を壊すタイプではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本と中国の物流の現場を自前の拠点で押さえる会社は、そう多くない。上海から深圳まで拠点を持ち、日本側では日新運輸が陸送と倉庫を担う。荷主に対して一貫した窓口を持つので、通関や3PLなどの付加サービスで粗利を積み上げられる。
中国プラスワンは追い風になりうる。生産がベトナム、バングラデシュ、インドへ広がれば、仲介の取り扱いはむしろ増える。ロジスティードの国際網と組めば、アパレルや雑貨以外の荷主にも手が届く。非アパレルの比率が上がれば、繊維頼みという弱点は薄まる。
身軽さも強みだ。船や倉庫を持たず、純現金は時価総額の4分の1に達する。配当性向は7割を超え、増配を続けている。赤字の期はなく、営業利益率は過去に8%台まで上がった。運賃の高い局面で粗利が膨らむことも多い。
荷物追跡のデジタルサービスと生成AIの活用で人手を減らせれば、人件費の上昇を吸収し、利益率はさらに上がる。10年で取扱量が3割以上伸び、利益率が8%に乗れば、利益は今の2倍を超える。
慎重な見方
日本の衣類・雑貨の輸入は、数量で減っている。2024年の衣類輸入は枚数で約6%減り、中国産は4年ぶりの低水準になった。人口減と国内の需要の縮みは止まらない。会社の貨物は繊維・雑貨に偏るので、この流れの影響が直接及ぶ。
競争は厳しい。新規参入が増え、手数料は下がりやすい。デジタルの仲介業者が荷主を直接つかめば、乗り換えの費用がほぼない荷主は値段で動く。船会社が荷主と直接契約を結べば、仲介業者の取り分そのものが削られる。
東南アジアは立ち上がりが遅い。ミャンマーは低調で、ベトナムは再建の最中だ。中国の拠点は利益が横ばいから減少に傾く。中国プラスワンの恩恵を取りこぼせば、10年で中国の取扱量が縮み、穴が埋まらない。
利益の変動も大きい。為替差益が前年の純利益を押し上げており、1Qの経常は10%減った。中国の許認可や国際情勢が変われば、日中の拠点網そのものが重荷になる。資本業務提携の成果も、数字には表れていない。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方が勝つ。身軽な構造、配当、安定した現金は本物だ。一方で、貨物の偏り、堀の浅さ、東南アジアの遅れという慎重な見方の指摘は、10年の利益の伸びに直接効く。
確率は中立を最も厚くし、慎重な側に少し寄せた。やや悲観を25%、悲観を12%とし、楽観は7%に抑えた。計算の結論は「やや割高」。現金の厚さは価値に入れたが、事業の利益の伸びが今の値段を説明するには足りない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 3,589 円843 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,111 円261 億円)。 今の値に割り戻すと 2,515 円591 億円、今との差 +11.4%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,352 円1,492 億円 | 1,473 円346 億円 | +246.5% | +13.2% | 548 円129 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,104 円1,199 億円 | 1,332 円313 億円 | +185.0% | +11.0% | 1,287 円302 億円 |
| 中立 | 36% | 4,096 円962 億円 | 1,171 円275 億円 | +133.3% | +8.8% | 1,896 円445 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,331 円548 億円 | 983 円231 億円 | +46.8% | +3.9% | 829 円195 億円 |
| 悲観 | 12% | 550 円129 億円 | 617 円145 億円 | −48.3% | −6.4% | 140 円33 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,589 円843 億円 | 1,111 円261 億円 | +108.1% | +7.6% | 4,700 円1,104 億円 |
今の株価時価総額 2,258 円530 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 東南アジアと通関・3PLが伸び、仲介の利益が厚くなる 利益 68 億円 · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 6,352 円1,492 億円
中国プラスワンの波にうまく乗り、ベトナム・バングラデシュ・インド発の貨物を取り込む。取扱量は10年で3割強増える。ロジスティードの網とつながり、アパレル・雑貨以外の荷主が育って、繊維頼みの弱みが薄まる。通関・検品・3PLの付加価値の比率が上がり、運賃の波があっても粗利が厚くなる。
荷物追跡のデジタルサービスと生成AIで人手が減り、人件費の上昇を吸収する。営業利益率は過去の最高に並ぶ8%に達する。余った現金は配当で戻し続ける。仲介としては理想的な10年だ。
(名目の前提)運賃と手数料は物価並みを少し上回り、付加サービスの比率が上がる。取扱量は実質で置いた。現金の利息が増え、純利益が少し押し上がる。
- 国際貨物輸送(日中中心の海上コンテナ仲介・通関・3PL):数量 43.8(取扱量(万 TEU 相当、売上÷1 TEU 当たり単価からの推定))× 価格 25(万円/TEU(運賃・通関・3PL 等を合わせた売上÷取扱量。名目の指数))→ 売上 1,088 億円・営業利益 87 億円。取扱量1.35倍・単価1.38倍・利益率8.0%
倍率:事業の純利益 67 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 20.69 倍、時価総額 1,464 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東南アジアの取扱量を取り込み、非アパレルへ広げ、利益率が過去の最高圏まで続く必要がある。一つ一つは起こりうるが、同時に続く確度は高くない。
やや楽観 20% 東南アジアが緩やかに育ち、衣類の減少を補う 利益 55 億円 · PER 20.2 倍 · 株価時価総額 5,104 円1,199 億円
東南アジアの拠点が緩やかに育ち、日中の衣類・雑貨の減少を補う。取扱量は10年で2割ほど増える。通関と3PLの比率が少しずつ上がり、手数料の差し引きは今を上回る。
ロジスティードとの連携は一部の非アパレル荷主に広がるが、劇的な効果までは出ない。営業利益率は7.5%と、過去の高いほうの水準で続く。
配当は利益の7割強を保つ。余った現金は戻され、自己資本は緩やかに積み上がる。
デジタルの荷物追跡と通関の電子化で、荷主の囲い込みは少し強まる。人件費は上がるが、手数料への転嫁でほぼ吸収できる。国内の衣類輸入が縮んでも、利益の柱は割れない。
(名目の前提)運賃と手数料は物価並みで、一部の付加サービスで上振れる。取扱量は実質で置いた。
- 国際貨物輸送(日中中心の海上コンテナ仲介・通関・3PL):数量 38.9(取扱量(万 TEU 相当、売上÷1 TEU 当たり単価からの推定))× 価格 24(万円/TEU(運賃・通関・3PL 等を合わせた売上÷取扱量。名目の指数))→ 売上 953 億円・営業利益 71 億円。取扱量1.20倍・単価1.36倍・利益率7.5%
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 20.21 倍、時価総額 1,169 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東南アジアの立ち上がりは遅れているが、提携先の網と通関・3PLの拡大で、衣類輸入の縮みを補う筋書き。同業が同じ波に乗ることも考え、やや楽観の確率は2割にとどめた。
中立 36% 衣類の減少を東南アジアと通関が補い、利益は物価並みに伸びる 利益 44 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 4,096 円962 億円
国内の衣類・雑貨の輸入は数量でじわじわ減るが、東南アジアの拠点づくりと通関・3PLの拡大が、その減少を補う。取扱量は10年で5%増にとどまる。運賃と手数料は物価並みに上がり、営業利益は今の3割増の水準に届く。
営業利益率は6.8%と、過去の中央値より少し上で落ち着く。人件費の上昇は手数料の転嫁で吸収するが、競争が利益率を押し上げることはない。
配当は利益の7割強で続き、自己資本は緩やかに増える。ROEは14%前後と高めだが、厚い現金で薄まる。特別な成長はなく、「身軽で堅実な仲介業」として評価される10年になる。
(名目の前提)運賃と手数料は物価並み。取扱量は実質で置いた。現金の利息は2%に上がり、純利益が少し増える。
- 国際貨物輸送(日中中心の海上コンテナ仲介・通関・3PL):数量 34.1(取扱量(万 TEU 相当、売上÷1 TEU 当たり単価からの推定))× 価格 24(万円/TEU(運賃・通関・3PL 等を合わせた売上÷取扱量。名目の指数))→ 売上 822 億円・営業利益 56 億円。取扱量1.05倍・単価1.34倍・利益率6.8%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 19.68 倍、時価総額 924 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の衣類輸入の縮みと、東南アジアの取り込み・通関拡大が相殺する想定。会社予想(2028年2月期に営業利益48億円)の延長線上にあり、確率を最も厚く置いた。
やや悲観 25% 衣類の減少が重く、東南アジアが育たず利益は伸びない 利益 30 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 2,331 円548 億円
衣類・雑貨の輸入が数量で縮み、東南アジアも育たない。取扱量は10年で1割減る。競争が続き、手数料の上乗せは物価に届かない。営業利益率は5.5%まで下がる。
中国の拠点は利益が横ばいから減少に傾き、ミャンマー・ベトナムの再建は長引く。会社は配当を保とうとするが、利益の伸びが鈍るため、余った現金の一部は買収や再建に使われる。
それでも赤字にはならない。身軽な構造と通関・3PLの手数料が、利益を一定の水準で支える。
荷主は値段に敏感で、乗り換えの動きは止まらない。デジタルの仲介業者が手数料の水準を押し下げ、会社は粗利を守るために人員と拠点を絞る。成長の物語は薄れ、「堅実だが伸びない配当株」として扱われる10年になる。
(名目の前提)運賃と手数料は物価をやや下回って上がる。取扱量は実質で置いた。
- 国際貨物輸送(日中中心の海上コンテナ仲介・通関・3PL):数量 29.2(取扱量(万 TEU 相当、売上÷1 TEU 当たり単価からの推定))× 価格 23(万円/TEU(運賃・通関・3PL 等を合わせた売上÷取扱量。名目の指数))→ 売上 683 億円・営業利益 38 億円。取扱量0.90倍・単価1.30倍・利益率5.5%
倍率:事業の ROE 13.1% は資本コスト 7.5% を上回る。堀が薄いので残る割合は 1/3、RONIC=k+1/3×(ROE−k)=10.2%。g 3% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.3 倍。堀の薄さは残る割合 1/3 に、貨物量と運賃の振れは k の循環・値決め(+0.5% ずつ)に入っているので、倍率では二重に引かず、上限の 9 割、15.6 倍に置いた。余った現金 60 億円は戻り方 1.0 で足した。
確率:日本の衣類輸入の減少が続き、東南アジアの立ち上がりも遅れる想定。ミャンマー・ベトナムの苦戦という現状の延長で、起こりやすい。
悲観 12% 荷主が仲介を飛ばし、取扱いと手数料が縮む 利益 12 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 550 円129 億円
船会社と大口荷主の直接契約、デジタル仲介業者の台頭で、仲介業者の取り分が削られる。中国の拠点網が重荷になり、取扱量は10年で4分の1減る。手数料率は下がり、営業利益率は過去の最悪圏の3%まで落ちる。
東南アジアは育たず、ミャンマー・ベトナムは撤退や損失計上に向かう。配当は削られ、余った現金は拠点網の縮小と再建に使われる。
会社は債務超過にはならず、現金は残る。ただし、事業の稼ぐ力は今の3分の1以下で、優良な会社という評価は戻らない。
(名目の前提)運賃と手数料は物価を大きく下回る。取扱量は実質で置いた。
- 国際貨物輸送(日中中心の海上コンテナ仲介・通関・3PL):数量 24.3(取扱量(万 TEU 相当、売上÷1 TEU 当たり単価からの推定))× 価格 21(万円/TEU(運賃・通関・3PL 等を合わせた売上÷取扱量。名目の指数))→ 売上 504 億円・営業利益 15 億円。取扱量0.75倍・単価1.15倍・利益率3.0%
倍率:事業の ROE 5.4% は資本コスト 7.5% を下回る。縮む事業の g -1%(RONIC=k)から PER は 1÷(k−g)=10.3 倍が上限で、上限の 7.6 割、7.8 倍に置いた。稼ぐ力(純利益÷k)で測り、余った現金 40 億円を足した。
確率:デジタル仲介業者と船会社の直販で、仲介の取り分が構造的に削られる筋書き。乗り換え費用が小さい仲介業は一度崩れると戻りにくいので、低くはない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国際貨物輸送(日中中心の海上コンテナ仲介・通関・3PL)
自社で船を持たず、荷主から集めた貨物を船会社に運ばせ、運賃の差額と通関・検品・3PL の手数料で稼ぐ事業。日本・中国・東南アジアの拠点が一体で動く。
| 数量取扱量(万 TEU 相当、売上÷1 TEU 当たり単価からの推定) | 価格万円/TEU(運賃・通関・3PL 等を合わせた売上÷取扱量。名目の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 32.4 | 18 | 584 | 42 |
| 10 年後 中立 | 34.1 | 24 | 822 | 56 |
取り方:取扱量は非開示。2026年2月期の売上 584 億円を、運賃と通関・3PL 等を合わせた 1 TEU 当たりの売上 18 万円(推定)で割り、32.4 万 TEU 相当と置いた。営業利益率 7.2%。単価は船会社の運賃に連れて動く混合単価。取扱量は、東南アジアの拡大と国内衣類輸入の縮みの差で変わり、単価は物価並みに上がる。
リスクと懸念
衣類・雑貨の輸入縮小
2024年の日本の衣類輸入は約20.8億枚で、前年から約6%減った。人口減とリユースの広がりで国内需要は細る。売上は繊維・雑貨に偏り、数量の減少が直接効く。東南アジアの取り込みが遅れれば、取扱量は10年で1割以上縮みうる。
運賃・為替の変動
収益は船会社の運賃と為替で振れる。2027年2月期の第1四半期は、前年の為替差益の反動で経常が10%減った。運賃が急落すれば売上が縮み、急騰すれば荷主との転嫁交渉が難航して、粗利の差が揺れる。
競争の激化と仲介の飛ばし
新規参入の増加で価格競争が常態化している。デジタルの仲介業者や船会社の直販が荷主を取り込めば、手数料の取り分が削られる。荷主の乗り換え費用は小さく、通関・3PL の囲い込みが効かなければ守れない。
中国情勢と許認可
中国の拠点は売上の約12%、取扱いの大半は日中間の貨物だ。貿易摩擦、規制、中国の NVOCC 許可の変更が起きれば、拠点網が重荷に変わる。中国は利益が横ばいから減少に傾いている。
東南アジア展開の遅れ
ミャンマーは低調で、ベトナムは再建の最中。その他地域の利益は前期に16%減った。中国プラスワンを取り込めなければ、衣類の縮みを埋める柱が育たない。
立替金・売掛金の貸倒れ
荷主への立替金・売掛金が膨らむ事業だ。取引先の破綻が増えれば、利益率の薄さを一度の貸倒れで失いかねない。10%超の顧客はないが、中小の荷主が多い。
提携先との距離
ロジスティードが約2割を持つ。提携の成果は数字にまだ表れていない。提携先が持ち株を手放す、あるいは買い増して完全子会社化に動けば、株主への還元の姿勢や事業の方向が変わる可能性がある。
今後の分かれ目
- 東南アジア発の取扱量が2桁の伸びを続けたら
- 楽観・やや楽観の筋書きへ重みを移す。利益率の維持も合わせて確かめる。
- 中国の衣類輸入が枚数で連続して減ったら
- やや悲観の筋書きへ寄せる。通関・3PL の比率が上がっているかを確認する。
- 営業利益率が6%を割り込んだら
- 価格競争が強まったと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ロジスティードが出資を引き上げる、または買い増したら
- 資本政策が変わる。TOB の可能性も含め、還元と事業の方向を見直す。
- 配当性向が60%を割り込んだら
- 現金を戻す前提が崩れる。余った現金の戻り方を 0.5 に下げて見直す。
見ておくもの
- 東南アジア発の取扱量と拠点別の利益
- 日本の衣類輸入の枚数
- 営業利益率と通関・3PL の比率
- 配当性向と純現金の推移
- ロジスティードの持ち株比率
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、取扱量(万 TEU 相当の推定)と名目の単価から利益を積み、倍率は利益ベースの正当化 PER =(1−g÷RONIC)÷(k−g) を上限にした。仲介業で堀が浅いので残る割合は 1/3、資本コストは 7.5%(基本 7.5% に quality +1.25%)、倍率は上限の 9 割に置いた(堀の薄さと運賃の振れは残る割合と k で引いたので二重に引かない)。やや悲観の g は 3% とした。純現金 138 億円のうち運転資金(売上の約 1 か月分)を除く 80 億円を余った現金とし、配当を厚く戻す実績から戻り方を 1.0 にした。悲観は構造的な負けで稼ぐ力から置いた。賃借は土地の年 0.7 億円ほどで小さいが、新リース会計基準で BS の形は変わる。10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。取扱量と単価は推定値。結論は「やや割高」。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.53→20.69 倍・やや楽観 PER 13.1→20.21 倍・中立 PER 12.6→19.68 倍・やや悲観 PER 11.1→15.6 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.25% を足した 8.75%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 7.50%。