結論
大東港運は、東京港で輸入貨物の荷役と保管、運送を請け負う港湾運送の中堅だ。冷凍・冷蔵の畜産物や水産物、食品が得意で、売上の 7 割強を輸出入の貨物取扱が占める。
筆者の結論は割高。仕事は堅いが、利益率は 6% が頂で、資本効率は資本コストに届かない。この水準の会社に今の時価総額は重い。
2026 年 3 月期は営業利益が 11 億円と前期の 1.7 倍になった。海外事業と輸入食品の取扱いが伸びたためだ。ただ、過去 12 年の営業利益率は 3〜4% が普通で、6% は例外的に良い年にあたる。今期の会社予想は経常が 3% 減る。
10 年後は、物価で売上が増えても、人件費も同じだけ増える。利益は名目でゆっくり伸びる程度にとどまり、自己資本利益率は 6% 台になる。強気の筋書きでも、今の時価総額を超えるのは難しい。
事業の質は悪くない。ただ、良い会社と割安な株は別の話だ。値段が先に走っている点が、筆者の気になるところである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見たとき、持ちたい会社かと問えば、値段しだいと答える。
事業は堅く、財務も安全だが、成長しない。名目の利益は物価でゆっくり増えるだけで、実質では横ばいだ。稼いだ利益を再投資しても、資本コストを上回る稼ぎは出にくい。自己資本利益率は 8% 前後から 6% 台に落ちる。
こうした会社に払ってよい倍率は、利益の 10 倍台前半までだ。今の時価総額は、純資産の 1.6 倍で利益の約 20 倍にあたり、安全域がない。
見直す条件は 2 つある。営業利益率が 6% を超えて定着すること、そして余った資本が配当や自社株買いで株主に戻ることだ。
どちらも、決算の数字で確かめられる。確かめられるまでは、今の値段は払い過ぎである。
なお、財務の安全だけでは、価値は増えない。資本は、増やした利益で測るのが筋だ。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、港で荷物を扱う仕事だ。船から降りた貨物を荷役し、倉庫に保管し、トラックで配送し、通関まで手がける。東京港が地盤で、売上の 73% を輸出入貨物取扱が占める。
得意は冷凍・冷蔵品だ。輸入の畜産物と水産物、冷凍食品を、品質を保ったまま運ぶ。取扱量は全国でも上位と自称する。
残りの 3 割弱は、鉄鋼の物流、海外事業、不動産の賃貸、水産物の買付・加工が占める。海外は中国などの現地法人と、国際輸送の代理業務だ。不動産は倉庫跡地などの賃貸で、利益は小さい。
単体が連結売上の 88% を占め、大半は東京港の事業だ。
稼ぎ方は薄利の請負業に近い。荷主の商社や食品会社から、荷役と保管の料金を受け取る。固定資産は小さく、有形固定資産は 49 億円で、半分以上が土地だ。装置産業ではなく、人と物流の運営力で稼ぐ会社である。
海外には中国の現地法人があり、日本から運ばれる食品の取扱いや、現地での倉庫・配送を手がける。冷凍・冷蔵の設備と、荷主との長い付き合いが、事業を支える資産になる。
経営の軸は、東京港の拠点の運営と、荷主との関係の維持にある。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば、堅実な請負業で、堀は普通だ。
強みは 2 つある。冷凍・冷蔵品の荷役で、温度管理の実績と荷主との長い取引があること。そして、自己資本比率が 67% で、倒れにくいことだ。上位株主に倉庫・物流の同業や取引先が並び、荷主との関係も固い。
弱みは、規模と利益率だ。東京港のコンテナ取扱いでは、自社ターミナルを持つ上組のような大手が上にいる。大東港運は 1 港の請負が中心で、荷主が強く、料金交渉力は限られる。営業利益率は過去 12 年のうち 6% 台が 3 回にとどまり、普通は 3〜4% だ。自己資本利益率の中央値は 8.9% だが、足元は 8% 前後に落ちる。
2023〜25 年度の中期計画は、目標を引き下げた。売上 175 億円・営業利益 9.2 億円に直し、結果はそれを上回った。ただ、新しい計画は見つからない。筆者は資本コストを 7% と、基本より 0.3 ポイント高く置いた。貿易量に左右される部分があるためだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の数量は、日本の輸出入の貨物量で決まる。2024 年の国内港湾のコンテナ取扱量は 2,198 万 TEU で、前年比 0.9% 増とほぼ横ばいだった。人口が減る国内で、貨物の数量は大きく伸びない。
価格は物価に近い動きをする。トラックの運転手不足(2024 年問題)で、運送と荷役の人件費が上がり、荷主への転嫁も進んでいる。ただ、人件費も同じ速さで上がるため、利益率は物価では伸びない。
食品の輸入は底堅い。国内の食料自給率は低く、冷凍食品と畜産物は輸入に頼る部分が大きい。大東港運にはここが追い風だ。ただ、国内の消費人口は減り、数量は 10 年で 1 割弱の増減にとどまる。
競争は、港ごとの免許と既得権で守られる。東京港では大手が自社ターミナルを持ち、国の国際コンテナ戦略港湾政策で集中投資が進む。
10 年の見立ては、数量が実質でほぼ横ばいから微増、価格は物価並みだ。
需要の裏には、大手荷主の調達の動きがある。商社は為替と相場で輸入のタイミングを変え、冷凍品の在庫も多い。荷役の仕事は、その変動を受けて忙しさが変わる。
資本政策と M&A
資本政策は、配当を中心にした安定型だ。前期に配当を大きく引き上げ、今期も据え置く。配当性向は約 3 割だ。
手元は純現金が約 5 億円で、時価総額の 3% ほどだ。余り現金として分ける額はない。投資有価証券が 21 億円あり、取引先との持ち合いとみられる。配当は利益に入っているため、余り資産には足していない。
株主優待は、3 月末の保有株数に応じて QUO カードを贈り、500 株以上にはコストコの会員クーポンも付く。単元株主が 1,200 名ほどで、費用は年に 0.06 億円ほどと推定する。額が小さいため、還元には加えていない。
設備は小さく、償却は年に 3 億円前後と推定する。開示は取得していない。更新は建築費の上昇で膨らむが、額は小さい。10 年以内の TOB は外部推計で 2 割弱だが、確かな根拠がなく、筋書きの確率には織り込んでいない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東京港は国の戦略港湾に位置づけられ、輸入食品の取扱いが増え続ける。冷凍・冷蔵品に強い大東港運は、この数量の伸びを取り込める。海外事業は前期に大きく伸びており、中国や東南アジアの現地法人が育てば、利益率は上がる。
2026 年 3 月期の営業利益は 11 億円と、前期の 1.7 倍になった。値上げの転嫁が進み、会社は 2028 年 3 月期に営業利益率 6.6% を見込む。この水準が定着すれば、10 年後の営業利益は 20 億円近い。
自己資本比率は 67% で、財務の余裕も大きい。配当を増やす余地があり、自社株買いも選べる。住友倉庫や神鋼物流が株主に並び、事業会社による買収もありうる。その場合、割増しの価格が付く。
さらに、持ち合い株を売って配当に回せば、資本効率は上がる。会社が資本の使い方を変える局面に入っている、と読める。
輸入の冷凍食品は、国内の外食や小売の需要に支えられる。人手不足で加工済みの食品が増える流れも、取扱量の追い風になる。
慎重な見方
今の利益は例外的に良い年の数字だ。過去 12 年の営業利益率は、多くの年で 3〜4% だった。6% を超えたのは 3 回で、荷主の出荷が増えたときの追い風に支えられていた。今期の経常は 3% 減の予想だ。
貨物量は人口の減る日本で伸びない。2024 年のコンテナ取扱量は 0.9% 増にとどまる。大手の上組のように自社ターミナルを持たず、荷主の商社や食品会社に料金を決められる立場だ。
人件費と運転手の不足は続き、転嫁が追いつかなければ利益は削られる。自己資本利益率は資本コストに届かず、成長もないため、純資産の 1.6 倍という値付けは、期待が先に走っている。
持ち合い株と土地が資産の大きな部分を占める点も、資本効率を下げる。
さらに、海外事業は前期に伸びたとはいえ、規模が小さく、為替で利益が振れる。一時の好調を、長く続く利益とみるのは危うい。
取引先の持ち合い株主が多く、少数株主の声は届きにくい。資本政策が変わる確証もない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。業績は堅いが、利益率の山と資本効率の低さを考えると、今の値付けは先走りだ。
強気の見方が当たるのは、財務の堅さと食品輸入の底堅さだ。それでも、確率は楽観とやや楽観に 3 割弱、悲観側に 3 割強とした。
特に、過去 12 年のほとんどの年で営業利益率が 3〜4% だった事実は重い。前期の 6% を基準にすると、倍率が上がり過ぎる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,586 円137 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 352 円30 億円)。 今の値に割り戻すと 1,058 円91 億円、今との差 −46.9%、 期待の年率 −0.3%(資本コスト 7.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,792 円242 億円 | 449 円39 億円 | +62.8% | +5.0% | 259 円22 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,111 円183 億円 | 393 円34 億円 | +25.8% | +2.3% | 501 円43 億円 |
| 中立 | 40% | 1,839 円159 億円 | 357 円31 億円 | +10.4% | +1.0% | 878 円76 億円 |
| やや悲観 | 20% | 679 円59 億円 | 371 円32 億円 | −47.2% | −6.2% | 210 円18 億円 |
| 悲観 | 12% | 578 円50 億円 | 172 円15 億円 | −62.3% | −9.3% | 90 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,586 円137 億円 | 352 円30 億円 | −2.6% | −0.3% | 1,939 円168 億円 |
今の株価時価総額 1,990 円172 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 食品輸入と海外事業が伸び、利益率が6%台半ばで定着する 利益 16 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 2,792 円242 億円
輸入の冷凍・冷蔵食品が増え、東京港の取扱量が伸びる。大東港運は温度管理の実績を武器に、荷主の商社から新しい荷を取る。
輸出入貨物の取扱量は 10 年で 15% 増え、料金は物価を 6% 上回る。海外事業は 3 割増え、中国や東南アジアの現地法人の利益が積み上がる。
営業利益率は輸出入が 6.5%、その他が 8.8% に上がる。全社の営業利益は 20 億円で、利益率 6.5% は過去の最高に並ぶ。
配当は増え、純資産は 10 年で 1.7 倍になる。
住友倉庫や神鋼物流など、同業や取引先が株主に並ぶ点も、事業の連携を後押しする。
- 輸出入貨物取扱(港湾運送・保管・運送):数量 94.3(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 23(1 トンあたり平均料金(千円))→ 売上 216 億円・営業利益 14 億円。食品輸入の増加と戦略港湾で数量増
- 鉄鋼物流・海外・不動産・その他:数量 45.5(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 20(1 トンあたり平均売上(千円))→ 売上 89 億円・営業利益 8 億円。海外事業が育つ
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.58 倍、時価総額 242 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:食品輸入・海外・値上げの全部がうまく回る必要があり、利益率が過去の山を超えるため 8%。
やや楽観 20% 値上げが定着し、営業利益率が6%近くを保つ 利益 13 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 2,111 円183 億円
荷主との料金交渉が進み、運転手と荷役の人件費の上昇を、おおむね転嫁できる。輸出入貨物の取扱量は 10 年で 8% 増える。
海外が 15% 増え、鉄鋼物流は横ばいにとどまる。営業利益率は輸出入が 6.0%、その他が 8.3% で、全社は 5.9% になる。
全社の営業利益は 16 億円で、前期の 11 億円の 1.5 倍だ。ただ、物価で売上は 1.5 倍に増えるため、実質ではほぼ横ばいに近い。
配当は純利益の 3 割強を保ち、純資産は積み上がる。
自己資本利益率は 7% 台で、資本コストをわずかに下回る水準にとどまる。
- 輸出入貨物取扱(港湾運送・保管・運送):数量 88.6(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 22(1 トンあたり平均料金(千円))→ 売上 197 億円・営業利益 12 億円。数量が 1 割弱増える
- 鉄鋼物流・海外・不動産・その他:数量 40.2(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 19(1 トンあたり平均売上(千円))→ 売上 77 億円・営業利益 6 億円。海外が伸びる
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.49 倍、時価総額 183 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期の利益率 6% が定着する展開。会社の予想(6.2〜6.6%)に近いが、過去は戻ってきたため 2 割。
中立 40% 数量は横ばい、利益率は5%台半ばに戻る 利益 11 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,839 円159 億円
数量は人口の減る国内と、底堅い食品輸入が相殺し、10 年でほぼ横ばいから 2% 増にとどまる。料金は物価並みに上がる。
営業利益率は輸出入が 5.7%、その他が 8.0% で、全社は 5.5% になる。前期の 6.0% より低いが、過去 12 年の中央値より高い。
本社費などは物価で 1.34 倍に増える。償却は年 3 億円前後から 4 億円弱に増えるが、物価の伸びよりは低い。全社の営業利益は 14 億円で、前期の 1.25 倍と、物価の伸びにも届かない。
自己資本利益率は 6% 台で、資本コストに届かず、倍率は 11 倍台にとどまる。
- 輸出入貨物取扱(港湾運送・保管・運送):数量 83.6(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 22(1 トンあたり平均料金(千円))→ 売上 181 億円・営業利益 10 億円。数量はほぼ横ばい
- 鉄鋼物流・海外・不動産・その他:数量 36.8(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 19(1 トンあたり平均売上(千円))→ 売上 69 億円・営業利益 6 億円。海外が少し伸びる
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.29 倍、時価総額 153 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は横ばい、利益率は前期より下の 5% 台半ばに戻る最もありそうな展開。4 割。
やや悲観 20% 転嫁が遅れ、営業利益率が3%台に落ちる 利益 6 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 679 円59 億円
荷主の商社や食品会社が料金の引き上げを拒み、人件費の上昇の転嫁が遅れる。料金は物価の 97% の伸びにとどまる。
輸出入貨物の取扱量は 8% 減り、鉄鋼物流の縮小で、その他の取扱量も 5% 減る。営業利益率は輸出入が 4.3%、その他が 6.0% に下がる。
全社の営業利益は 8 億円で、2024 年 3 月期の 6 億円に近い水準に戻る。固定の本社費は物価で膨らみ、利益を食う。
配当は方針を守るため、純利益の 45% に高まり、純資産は伸びにくい。
財務は堅いため倒れないが、成長の投資は絞られる。会社は守りの経営に入る。
- 輸出入貨物取扱(港湾運送・保管・運送):数量 75.4(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 21(1 トンあたり平均料金(千円))→ 売上 158 億円・営業利益 7 億円。荷主の転嫁が遅れ、料金が物価に届かない
- 鉄鋼物流・海外・不動産・その他:数量 33.2(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 18(1 トンあたり平均売上(千円))→ 売上 60 億円・営業利益 4 億円。鉄鋼物流が縮む
倍率:ROE 約 4% は資本コスト 7% を大きく下回り、稼ぐ力が落ちる筋書き。倍率は上限 12.8 倍に引き上げず、8.5 倍とした。
確率:過去 12 年の普通の水準(3〜4%)に近づく展開。実際に 2024 年 3 月期に 4.0% まで落ちた実績があり 2 割。
悲観 12% 荷主の力と貨物の減少で、薄利から赤字ぎりぎりへ 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 578 円50 億円
東京港の貨物の一部が他港や海外に流れ、荷主は強い立場で料金を下げさせる。取扱量は 25% 減り、料金は物価を下回る。
営業利益率は輸出入が 2.5%、その他が 4% に下がる。固定費の本社費と人件費は残り、全社の営業利益は 3 億円にとどまる。
海外事業の投資も失敗し、減損で純資産は 10 億円ほど削られる。配当は大きく減る。
清算に近い価値が下値になる。純現金・持ち合い株・土地で、純資産の 5 割弱が残る。
買い手が現れても条件は低く、少数株主は会社の使い道に口を出せない。
この筋書きでは、東京港の地位の低下が最大の原因になる。
- 輸出入貨物取扱(港湾運送・保管・運送):数量 61.5(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 19(1 トンあたり平均料金(千円))→ 売上 119 億円・営業利益 3 億円。数量が 25% 減り、料金も下がる
- 鉄鋼物流・海外・不動産・その他:数量 28.0(取扱貨物量(万トン/年・推定))× 価格 17(1 トンあたり平均売上(千円))→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円。海外が不調で縮む
倍率:利益がほぼ出ないため稼ぐ力では測れず、清算に近い価値で測る。今の自己資本 106 億円に約 0.47 倍を掛けた額が、純現金と売れる資産の税後の合計と一致する。
確率:貨物の流出と荷主の力で利益が薄くなる構造的な負け。単一港・単一品目への依存を考え 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
輸出入貨物取扱(港湾運送・保管・運送)
東京港での輸出入貨物の荷役・保管・配送・通関。冷凍・冷蔵の畜産物、水産物、食品輸入が主力。
| 数量取扱貨物量(万トン/年・推定) | 価格1 トンあたり平均料金(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 82.0 | 16 | 132 | 8 |
| 10 年後 中立 | 83.6 | 22 | 181 | 10 |
取り方:売上は連結の 73%。取扱量は推定で、荷役・保管・運送を合わせた 1 トンあたり 1.6 万円ほどの料金として割った数。利益は全社の営業利益 11 億円に合うよう推定した。
鉄鋼物流・海外・不動産・その他
鉄鋼製品の物流、中国などの海外現地法人と国際輸送の代理、倉庫跡地などの賃貸、水産物の買付と加工。
| 数量取扱貨物量(万トン/年・推定) | 価格1 トンあたり平均売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.0 | 14 | 49 | 4 |
| 10 年後 中立 | 36.8 | 19 | 69 | 6 |
取り方:連結売上 181.3 億円から輸出入貨物取扱を引いた残り。数量は推定で、鉄鋼物流・海外・水産物の取扱いを合わせた量。利益は推定で、全社の営業利益 11 億円との差を本社費 1.6 億円とした。
リスクと懸念
貨物量の減少と港湾の地位
日本の輸出入量は人口減で伸びにくい。東京港の貨物が他港や海外へ流れれば、数量が減る。国のハブ化は大手の自社ターミナルが主に受ける。
荷主の力と料金交渉
取引先は商社や食品会社で、料金の交渉力は荷主が強い。運転手不足による人件費の上昇を転嫁できなければ、利益率は 3〜4% に戻る。
冷凍食品・畜産品への集中
主力が輸入の冷凍・冷蔵品に偏る。為替や関税、家畜の疾病による輸入の停止は、取扱量に直接響く。
持ち合い株と資本効率
投資有価証券が 21 億円で、時価総額の 12% にあたる。配当しか生まない資産が自己資本を膨らませ、自己資本利益率を押し下げている。
海外事業の失敗
前期に大きく伸びた海外事業は、中国など現地の景気と為替に左右される。投資が不調に終われば、利益も純資産も削られる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 6% を超えて 3 年続く
- 前期の利益が例外でなく定着した証拠。楽観とやや楽観の確率を上げるが、倍率は資本効率で縛られ、大きくは動かない。
- 今期の営業利益が 10 億円を割る
- 前期の利益が例外的だった可能性が高まり、悲観側の確率を上げる。
- 持ち合い株を売却し、配当や自社株買いに回す
- 資本効率が上がり、倍率の上限が上がる。強気の筋書きに寄る。
- 他社による TOB の提案が出る
- 買収価格が割増しとなり、短期の価値は上ぶれする。10 年の本質価値の見立ては変えない。
- 東京港での荷主の出荷が急に減る
- 取扱量が落ち、固定費が残る。やや悲観に近づく。
見ておくもの
- 営業利益率(6% が維持できるか)と、運転手・荷役の人件費の転嫁
- 輸入の冷凍・冷蔵品の取扱量と、東京港の貨物量
- 海外事業の利益の寄与
- 投資有価証券の売却や、配当・自社株買いの増加
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の PER から置かず、事業の自己資本利益率と資本コストから決めた。中立の自己資本利益率は 6.4% で、資本コスト 7% に届かないため、倍率の上限は 1÷k の 12.8 倍、置いた値はその 9 割だ。償却は年 3 億円前後と推定した(開示は取得していない)。土地は償却されず、既存設備は物価で増やさない。更新分だけ新しい値段で上乗せし、10 年後は 4 億円弱とみた。本社費などは物価で 1.34 倍に増やした。設備の更新は建築費の上昇で膨らむが、額が小さく、現金の余裕で賄えるとみた。新リース会計(2028 年 3 月期から)は、港湾の事務所・倉庫の賃借が小さく、影響は軽い。数字は今と同じ形で置いた。今の株価は計算に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.38→15.58 倍・やや楽観 PER 11.54→14.49 倍・中立 PER 11.54→14.29 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.3% を足して 7.8%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.80% → 7.00%。