結論
澁澤倉庫は、渋沢栄一が興した倉庫会社だ。売上の 9 割を物流(陸運・倉庫・国際輸送・港湾)が占め、利益の半分近くは東京の賃貸ビルが稼ぐ。筆者の結論は「割高」。今の値段は会社の稼ぐ力より、保有資産の価値に支えられている。
2026 年 3 月期の純利益は 63 億円だったが、政策保有株の売却益が押し上げた。それを除いた通常の利益は 33 億円ほどだ。営業利益は 41 億円で、新設拠点の償却負担と人件費の上昇で減った。会社の計画は、2027 年 3 月期に営業利益 53 億円まで戻る。
物流の利益率は 5% 前後と薄い。最大の荷主サントリーロジスティクスが売上の 11% を占め、荷主の内製化や拠点の集約は常に逆風になる。物流を支えているのは、賃貸ビルの利益率 51% だ。賃貸等不動産は、有報で簿価 230 億円に対し時価 879 億円と、650 億円ほどの含み益がある。
ただ、含み益は売らなければ利益にならない。賃貸ビルの利回りは時価に対して 4% を切る。資本コストに届かない。値段が資産の価値に近いなら、買う人は利益ではなく、資産が現金に変わる速さに賭けている。政策保有株の縮減、配当性向 50% 以上、自社株買いは、その方向を向いている。
確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を大きく下回る。逆転の目は、物流の利益率の回復と、含み益の現金化だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産は厚いが、稼ぐ力は薄い」と見える。時価総額は 1,148 億円。自己資本の 684 億円に、賃貸ビルの含み益の税引き後を足すと、1,000 億円を超える。値段は資産の価値にほぼ並ぶ。
問題は、資産が利益を生んでいない点だ。賃貸ビルの利益は 31 億円で、時価に対する利回りは 4% を切る。政策保有株の配当も小さい。資産を持っていることと、それが株主に利益をもたらすことは別だ。
オーナー利益で見ると、通常の純利益は 33 億円ほどである。10 年かけて 50 億円前後へ戻る道筋はあるが、人件費の上昇が足を引っぱる。成長の余地は物価並みで、特別な超過成長は見込めない。
経営の資本配分は、ようやく良い方向へ動いた。政策保有株を減らし、配当性向を上げ、自社株買いを続ける。このまま実行されれば、資産は株主のものになる。筆者がいちばん重く見るのは、含み益の現金化がどこまで進むかだ。
安全域はそれほど厚くない。資産で測れば今の値段は妥当だが、利益で測れば割高に寄る。払う値段に見合う利益の裏付けが薄いため、確信度は下げる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの形は単純だ。荷主から貨物を預かり、運び、港で船に載せる。それを全国に張った拠点と自前のトラックで一貫して請け負う。2026 年 3 月期の売上は 797 億円。内訳は物流が 740 億円、不動産が 61 億円である。
物流の中心は陸上運送で、売上の約半分を占める。次いで倉庫、国際輸送、港湾運送と続く。顧客は飲料・食品、化粧品、家電、半導体関連と広い。最大の荷主はサントリーロジスティクスで、売上の 11% を占める。倉庫の面積は約 55 万㎡で、うち約半分は借りている。
国際輸送は香港・上海・ベトナムの拠点を持つ。2026 年は半導体関連の北米向け航空貨物が伸び、ベトナムでは自動車工場向けの巡回集荷が堅調だった。港運は輸入家電の低調で減った。
不動産は、倉庫や港に近い土地に建てたビルの賃貸だ。賃貸面積は約 9.5 万㎡と小さいが、利益率は 51% と高い。物流不動産の開発や私募ファンドへの出資にも手を広げ始めた。新しい拠点として、栃木の危険物倉庫(2025 年 4 月)、飲料向けの習志野倉庫(2026 年 3 月に旧拠点の約 1.4 倍の面積で稼働)、前期までに竣工した本牧の定温・定湿の拠点がある。立ち上げ初期は償却と賃借料が先に出て、利益を圧迫した。
優良さと弱いところ
堀は浅い。倉庫と運送は荷主との交渉で値段が決まり、競争が厳しい。三菱倉庫・住友倉庫のような大きな不動産や港湾の免許に守られた強みを持たない。強いのは、飲料・食品の荷主との長い関係と、温度管理や危険物など手間のかかる倉庫の運営力だ。
優良さを支えるのは不動産だ。ビル賃貸の利益率は 51% で、物流の 5% と比べ一桁違う。ここが景気の波を和らげる。ただし利益は 31 億円で、物流と合わせたセグメント利益 68 億円から本社費などを引くと、営業利益は 41 億円まで落ちる。
資本効率は低い。2026 年 3 月期の ROE は 9% を超えたが、売却益のおかげだ。過去 10 年の中央値は 6% 台である。中計は ROE 7% 以上を掲げるが、水準は高くない。
財務は悪くない。自己資本比率は 57% で、営業利益は支払利息の 20 倍を超える。借入の一部に財務制限条項(純資産の維持、経常の連続赤字回避)がある点は気をつけたい。
経営は資本を戻す方向に動いた。配当性向を 50% 以上に上げ、自社株買いも続ける。筆者が評価するのは、含み資産を抱え込まず、株主に回し始めたことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
倉庫業は、貨物量が緩やかに増え、価格が物価に連れて上がる、成熟した市場だ。日本の港のコンテナ取扱量は 2024 年に 2,198 万 TEU で、前年比 0.9% 増にとどまる。人口が減る国内で、量の伸びは小さい。
追い風は二つある。ネット通販の拡大で、仕分けと出荷を担う倉庫の需要は伸びている。建設費の高騰と用地難で新しい倉庫の供給が抑えられ、既存の倉庫の稼働率と賃料を支える。トラックの 2024 年問題(運転手の残業規制)で運賃が上がり、荷主への転嫁も進んだ。
向かい風は人件費だ。ドライバーの待遇改善と最低賃金の上昇で、庫内作業の費用が重くなる。荷主が倉庫を自社運営に切り替える動きもある。澁澤倉庫の 2026 年 3 月期にも、拠点の集約や内製化で受託を失った業務があった。
競合は、財閥系の三菱倉庫・住友倉庫・三井倉庫ホールディングス、そして日本通運などの総合物流会社だ。規模では財閥系に劣り、都心の不動産も小さい。強みは、飲料や食品など得意な荷主を深く押さえていることである。
業界の再編は、トラック業界で先に進んだ。倉庫業界でも、規模を求めた買収が続く可能性はある。同社は規模が小さく、買う側にも買われる側にもなりうる。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社の見立てを分ける中心だ。まず還元。2026 年 3 月期から配当性向の目安を 40% から 50% 以上に引き上げた。自社株買いも続け、2026 年度は上限 28 億円の枠を置いた。創業 130 周年の記念配当も予定する。
次に政策保有株。投資有価証券は約 317 億円で、自己資本の 46% に当たる。会社は 2029 年 3 月期までに連結純資産の 20% 以下へ減らす方針で、売る余地は 180 億円ほどだ。前期は上場株の売却で 56 億円を得た。方針は前倒しで加速している。
投資には慎重だ。中計は新しい拠点への投資を続けるが、規模は大きくない。大型の買収は今のところない。
M&A の観点では、買う側より買われる側の確率が高い。筆頭株主はパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスで、10% 台を持つとされる。含み資産が厚い小型の倉庫株は、買収の対象になりやすい。kabufu の試算でも、10 年以内に買収される確率は 18% ほどだ。
10 年の還元は、配当性向 50% 以上の方針と、政策保有株の売却代金(約 180 億円)の半分に合わせた。売った持ち株の含み益(税後で約 55 億円)は、余った現金から外した。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の30億円が10年後に約 32億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
含み資産の厚さを、市場はまだ十分に織り込んでいない。賃貸ビルには有報の時価で 650 億円ほどの含み益があり、政策保有株は 317 億円ある。合わせると時価総額に匹敵する。しかも会社は、この資産を株主に戻し始めた。配当性向を 50% 以上に上げ、政策保有株を純資産の 20% 以下に減らし、自社株買いを重ねる。資産を現金にして戻せば、1 株あたりの価値は目に見えて上がる。
本業にも戻りの余地がある。習志野・本牧など新しい拠点は、立ち上げ初期の償却と賃借料が先に出た分、これから利益に変わる。会社は 2027 年 3 月期の営業利益を 53 億円と見ており、前期の 41 億円から二けた増える。運賃の是正が定着し、人件費の上昇を荷主に転嫁できるなら、物流の利益率は 6% に近づく。
医療機器や半導体関連の荷動きなど、手間のかかる貨物の取り込みは、安売りの競争から離れる道だ。大きな買い手が筆頭株主にいることも、経営に規律を与える。
慎重な見方
2026 年 3 月期の純利益 63 億円は、政策保有株の売却益で膨らんだ数字だ。通常の利益は 33 億円ほどで、時価総額 1,148 億円に対して 30 倍を超える。利益で測れば、明らかに割高である。
物流の利益率は 5% 前後で薄い。最大の荷主サントリーロジスティクスが売上の 11% を占め、他にも荷主の内製化や拠点の集約で業務を失う例が出ている。人件費と賃借料は物価で増える固定費で、倉庫の半分は借り物だ。運賃の値上げが一巡すれば、利益率は戻らない。
賃貸ビルの含み益は有報の時価で確かめた数字だが、含み益は売らなければ利益にならない。賃貸ビルの利回りは時価で 4% を切り、資本コストに届かない。政策保有株の売却代金も、有利な投資先がなければ、配当や自社株買いで一度戻るだけだ。
財務制限条項のある借入が約 120 億円あり、悪化局面で売り急ぐ恐れがある。そうなれば含み益も、安値での処分に消える。新しいリース会計の基準で借庫の負債が載れば、財務の見かけも悪化する。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さと資本を戻す姿勢は強気の見方が強い。だが、物流の利益率の薄さと、含み益が利益に変わらない点は慎重な見方が的を射ている。含み益は悲観側の床として使い、中立の価値は利益で測った。確率は中立を最も重くし、利益が計画どおり戻るやや楽観を厚く、悲観を同業並みに置いた。結論は「割高」。資産を現金に変える速さが想定を超えれば、結論は動く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,627 円905 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 528 円293 億円)。 今の値に割り戻すと 1,180 円656 億円、今との差 −40.7%、 期待の年率 +0.8%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,513 円1,397 億円 | 673 円374 億円 | +60.0% | +4.8% | 191 円106 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,154 円1,198 億円 | 613 円341 億円 | +39.0% | +3.3% | 554 円308 億円 |
| 中立 | 38% | 1,916 円1,065 億円 | 579 円322 億円 | +25.3% | +2.3% | 948 円527 億円 |
| やや悲観 | 24% | 989 円550 億円 | 468 円260 億円 | −26.8% | −3.1% | 350 円194 億円 |
| 悲観 | 12% | 666 円370 億円 | 270 円150 億円 | −53.0% | −7.3% | 112 円62 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,627 円905 億円 | 528 円293 億円 | +8.2% | +0.8% | 2,155 円1,198 億円 |
今の株価時価総額 1,991 円1,107 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% 新設拠点が満ち、不動産の含み益も実を結ぶ 利益 77 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 2,513 円1,397 億円
習志野・本牧などの新しい拠点が満杯になり、飲料・食品に加えて医療機器や半導体関連の荷動きが積み上がる。運賃と作業料の値上げが人件費の上昇を上回って通り、物流の利益率は 6% 台半ばまで戻る。国際輸送は香港・ベトナム・北米航空が伸びる。
不動産では私募ファンドへの出資や物流不動産の開発が実を結び、含み益の一部を現金にして株主へ戻す。政策保有株は純資産比 20% 以下へ前倒しで減り、代金は配当と自社株買いに回る。利益の残りは自己資本に積み上がるが、資本効率は保たれる。
筆者はここを「全部がうまくいった 10 年」と見る。倉庫株が資産株から、資本を回す成長株へ評価を変える形だ。
(名目の前提)保管料・運賃・荷役料は人件費に連れて物価並みに上がる前提で、数量は面積などの実質で置いた。賃料は契約の更新で物価に 1〜2 年遅れて追いつく。本社費も物価で増える。
(自己資本の流れ)前期の純利益 63 億円は政策保有株の売却益を含む。含み益は売る前から自己資本に入っており、売っても自己資本は増えない。流れは売却益を除いた通常の利益 33 億円から積んだ。売却代金の半分ほどが還元に、残りは拠点の投資に回る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の30億円が10年後に約 32億円(物価で一律に増やすと約 22億円)。営業利益は +10億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- 物流事業:数量 72.0(倉庫の面積(万㎡、所有・借庫の合計 55.4 万㎡))× 価格 18(万円/㎡・年(物流の営業収益を面積で割った実効単価。運送・荷役・国際輸送も含む混合値))→ 売上 1,327 億円・営業利益 96 億円。面積 1.30 倍・単価 1.38 倍・利益率7.2%・償却は物価で増やさず按分(10年後 32億円)
- 不動産事業:数量 10.9(賃貸ビルの契約面積(万㎡、9.49 万㎡))× 価格 9.20(万円/㎡・年(営業収益を面積で割った実効賃料。工事請負の収入を含む))→ 売上 100 億円・営業利益 53 億円。面積 1.15 倍・賃料 1.42 倍・利益率 53%
倍率:事業の純利益 76 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)269 億円。全体の PER 16.53 倍、時価総額 1,480 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 15.35 倍・時価総額 1,182 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:中計の営業利益 53 億円を軽く超え、物流の利益率が 6% 台に乗り、さらに含み益の実現(不動産の証券化・売却)まで進む必要がある。顧客の内製化と人件費の逆風が続く業界で、全部がそろう確度は低い。
やや楽観 20% 計画どおり利益が戻り、資本効率が上がる 利益 65 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,154 円1,198 億円
新設拠点の償却負担が薄れ、物流の利益率は 6% 近くへ戻る。運賃の是正が定着し、飲料・食品と化粧品の安定した荷動きが土台になる。サントリーロジスティクス向けの比重は下がらないが、取引は続く。
不動産は賃料の更新で物価に追いつき、利益率は 50% 台前半を保つ。政策保有株は 2029/03 期までに純資産比 20% 以下となり、配当性向 50% 以上の方針と自社株買いで資本が戻る。
中計が掲げた ROE 7% にほぼ届く水準に落ち着く。
(名目の前提)保管料・運賃・荷役料は人件費に連れて物価並みに上がる前提で、数量は面積などの実質で置いた。賃料は契約の更新で物価に 1〜2 年遅れて追いつく。本社費も物価で増える。
(自己資本の流れ)前期の純利益 63 億円は政策保有株の売却益を含む。含み益は売る前から自己資本に入っており、売っても自己資本は増えない。流れは売却益を除いた通常の利益 33 億円から積んだ。売却代金の半分ほどが還元に、残りは拠点の投資に回る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の30億円が10年後に約 32億円(物価で一律に増やすと約 23億円)。営業利益は +9億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- 物流事業:数量 67.6(倉庫の面積(万㎡、所有・借庫の合計 55.4 万㎡))× 価格 18(万円/㎡・年(物流の営業収益を面積で割った実効単価。運送・荷役・国際輸送も含む混合値))→ 売上 1,228 億円・営業利益 83 億円。面積 1.22 倍・単価 1.36 倍・利益率6.8%・償却は物価で増やさず按分(10年後 32億円)
- 不動産事業:数量 10.4(賃貸ビルの契約面積(万㎡、9.49 万㎡))× 価格 8.94(万円/㎡・年(営業収益を面積で割った実効賃料。工事請負の収入を含む))→ 売上 93 億円・営業利益 48 億円。面積 1.10 倍・賃料 1.38 倍・利益率 52%
倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)269 億円。全体の PER 15.6 倍、時価総額 1,224 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 14.34 倍・時価総額 932 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:会社の計画(2027/03 期の営業利益 53 億円、翌期 57 億円)が足元で見えており、新設拠点の稼働は期末にかけて戻っている。計画の延長線なので、上側の中心に置いた。
中立 38% 薄利の物流を不動産が支える、普通の堀 利益 56 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,916 円1,065 億円
物流は面積が 15% 増え、単価は物価並みに上がる。利益率は 5% 台半ばにとどまる。運賃の是正で人件費の上昇は吸収できるが、それ以上の余りは荷主に返す。顧客の内製化で一部の拠点を失う年もあるが、新しい拠点が埋め合わせる。
不動産は面積がわずかに増え、賃料は物価並みに上がる。利益率は 50% を少し超える水準で変わらない。
政策保有株は計画どおり減り、代金は還元と拠点の投資に回る。自己資本は 800 億円ほどまで増えるが、利益は物価並みに伸びるだけで、特別な超過成長はない。普通に優良な中堅の倉庫会社という姿に落ち着く。
(名目の前提)保管料・運賃・荷役料は人件費に連れて物価並みに上がる前提で、数量は面積などの実質で置いた。賃料は契約の更新で物価に 1〜2 年遅れて追いつく。本社費も物価で増える。
(自己資本の流れ)前期の純利益 63 億円は政策保有株の売却益を含む。含み益は売る前から自己資本に入っており、売っても自己資本は増えない。流れは売却益を除いた通常の利益 33 億円から積んだ。売却代金の半分ほどが還元に、残りは拠点の投資に回る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の30億円が10年後に約 32億円(物価で一律に増やすと約 23億円)。営業利益は +9億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- 物流事業:数量 63.7(倉庫の面積(万㎡、所有・借庫の合計 55.4 万㎡))× 価格 18(万円/㎡・年(物流の営業収益を面積で割った実効単価。運送・荷役・国際輸送も含む混合値))→ 売上 1,140 億円・営業利益 73 億円。面積 1.15 倍・単価 1.34 倍・利益率6.4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 32億円)
- 不動産事業:数量 10.0(賃貸ビルの契約面積(万㎡、9.49 万㎡))× 価格 8.68(万円/㎡・年(営業収益を面積で割った実効賃料。工事請負の収入を含む))→ 売上 86 億円・営業利益 45 億円。面積 1.05 倍・賃料 1.34 倍・利益率 52%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)269 億円。全体の PER 14.81 倍、時価総額 1,043 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 13.79 倍・時価総額 772 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:同じ領域の住友倉庫・三菱倉庫と同じく、業種ノートの中心値(保管需要は緩やかに増え、価格は物価並み)を置いた。足元の利益の戻りは確かだが、人件費の上昇で利益率の上振れは限られる。
やや悲観 24% 利益率が戻らず、荷主の内製化が進む 利益 32 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 989 円550 億円
運賃の是正が一巡し、荷主は値上げを受け入れなくなる。人件費とエネルギー代の上昇が利益率を削り、物流の利益率は 4% 前後に沈む。大口の荷主が一部の拠点を自社運営へ切り替え、面積の伸びも小さい。
不動産は賃料の更新が遅れ、新規の工事請負も細る。利益率は 48% 程度にとどまる。
政策保有株の売却はすすむが、代金は有利な投資先が見つからず、借入の返済と配当にとどまる。利益は今の水準から伸びず、資産の価値だけが支える形になる。
(名目の前提)保管料・運賃・荷役料は人件費に連れて物価並みに上がる前提で、数量は面積などの実質で置いた。賃料は契約の更新で物価に 1〜2 年遅れて追いつく。本社費も物価で増える。
(自己資本の流れ)前期の純利益 63 億円は政策保有株の売却益を含む。含み益は売る前から自己資本に入っており、売っても自己資本は増えない。流れは売却益を除いた通常の利益 33 億円から積んだ。売却代金の半分ほどが還元に、残りは拠点の投資に回る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の30億円が10年後に約 32億円(物価で一律に増やすと約 25億円)。営業利益は +7億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- 物流事業:数量 58.2(倉庫の面積(万㎡、所有・借庫の合計 55.4 万㎡))× 価格 17(万円/㎡・年(物流の営業収益を面積で割った実効単価。運送・荷役・国際輸送も含む混合値))→ 売上 1,010 億円・営業利益 47 億円。面積 1.05 倍・単価 1.30 倍・利益率4.7%・償却は物価で増やさず按分(10年後 32億円)
- 不動産事業:数量 9.5(賃貸ビルの契約面積(万㎡、9.49 万㎡))× 価格 8.10(万円/㎡・年(営業収益を面積で割った実効賃料。工事請負の収入を含む))→ 売上 77 億円・営業利益 37 億円。面積 1.00 倍・賃料 1.25 倍・利益率 48%
倍率:事業の ROE 5.3% は資本コスト 7.25% 以下。新しく投じるお金が価値を増やさないので、稼ぐ力(純利益 27 億円÷k で約 330 億円)に余った現金の戻り分(約 240 億円)を足すと約 570 億円。売れる資産の税後 550 億円とほぼ並ぶので、床を 550 億円に置き、今の自己資本 684 億円に 0.80 倍を掛けた。
確率:新設拠点の稼働は戻っても、人件費の上昇を荷主に転嫁しきれない年が続く可能性は小さくない。倉庫の借り分が約半分あり、固定の賃借料が利益を削る。
悲観 12% 物流が赤字に近づき、資産を売って延命する 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 666 円370 億円
大口荷主の自社運営化や拠点の集約が重なり、面積は 1 割減る。運賃の是正も止まり、単価は物価に追いつかない。人件費と賃借料だけが残り、物流の利益は消える。
不動産は賃貸ビルが残るが、地価と賃料が下がり、利益率も落ちる。本社費は削るが、固定費が重い。
赤字は小さいが、シンジケートローンの財務制限条項が重くのしかかり、含み益のある不動産や政策保有株を安く売って返済と配当に充てる。事業の評価は大きく下がり、資産の価値だけが残る。
(名目の前提)保管料・運賃・荷役料は人件費に連れて物価並みに上がる前提で、数量は面積などの実質で置いた。賃料は契約の更新で物価に 1〜2 年遅れて追いつく。本社費も物価で増える。
(自己資本の流れ)前期の純利益 63 億円は政策保有株の売却益を含む。含み益は売る前から自己資本に入っており、売っても自己資本は増えない。流れは売却益を除いた通常の利益 33 億円から積んだ。売却代金の半分ほどが還元に、残りは拠点の投資に回る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の30億円が10年後に約 32億円(物価で一律に増やすと約 28億円)。営業利益は +4億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 5億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 物流事業:数量 49.9(倉庫の面積(万㎡、所有・借庫の合計 55.4 万㎡))× 価格 16(万円/㎡・年(物流の営業収益を面積で割った実効単価。運送・荷役・国際輸送も含む混合値))→ 売上 786 億円・営業利益 8 億円。面積 0.90 倍・単価 1.18 倍・利益率1%・償却は物価で増やさず按分(10年後 32億円)
- 不動産事業:数量 9.5(賃貸ビルの契約面積(万㎡、9.49 万㎡))× 価格 7.12(万円/㎡・年(営業収益を面積で割った実効賃料。工事請負の収入を含む))→ 売上 68 億円・営業利益 31 億円。面積 1.00 倍・賃料 1.10 倍・利益率 46%
倍率:この筋書きの純利益は 1 億円で、稼ぐ力は事業としてほとんど残らない。稼ぐ力に余った現金の戻り分(約 160 億円)を足しても約 170 億円で、売れる資産の税後 370 億円のほうが大きい。床は売れる資産で置き、今の自己資本 684 億円に 0.54 倍を掛けた。EV ÷ 営業利益でも見たが、営業利益がほとんど残らず倍率は意味を持たない。
確率:新設拠点が回収できず、最大顧客の離脱や内製化が重なると、薄利の物流はすぐ赤字に近づく。財務制限条項(純資産維持・経常の連続赤字回避)に触れれば、売り急ぎも起こる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流事業
陸上運送・倉庫・国際輸送・港湾運送を一貫して請け負う事業。飲料・食品・化粧品・半導体関連が主な荷物。
| 数量倉庫の面積(万㎡、所有・借庫の合計 55.4 万㎡) | 価格万円/㎡・年(物流の営業収益を面積で割った実効単価。運送・荷役・国際輸送も含む混合値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.4 | 13 | 740 | 37 |
| 10 年後 中立 | 63.7 | 18 | 1,140 | 73 |
取り方:2026 年 3 月期の物流事業の営業収益 739.7 億円(内部取引の控除前)を、有報の倉庫面積 55.4 万㎡(所有 28.6 万㎡・借庫 26.8 万㎡)で割った実効単価。陸運が売上の約半分を占める混合値のため、倉庫の保管料の相場とは比べられない。セグメント利益 36.6 億円は全社費用の配賦前。数量は新しい拠点の分だけ増え、単価は人件費に連れて物価並みに上がる。
不動産事業
東京などの倉庫跡地・港に近い土地で営むビル・倉庫の賃貸と、ビル工事の請負。
| 数量賃貸ビルの契約面積(万㎡、9.49 万㎡) | 価格万円/㎡・年(営業収益を面積で割った実効賃料。工事請負の収入を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.5 | 6.48 | 61 | 31 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 8.68 | 86 | 45 |
取り方:2026 年 3 月期の不動産事業の営業収益 61.5 億円を、賃貸ビルの契約面積 9.49 万㎡で割った実効賃料。ビル工事の請負の収入が混じる。セグメント利益 31.3 億円(利益率 51%)。賃料は契約の更新で物価に 1〜2 年遅れて上がる。面積は私募ファンドへの出資や物流不動産の開発で小幅に増える。
リスクと懸念
物流の利益率が戻らない
物流事業の利益率は 5% 前後と薄い。人件費とエネルギー代の上昇を運賃で吸収しきれなければ、会社の計画する営業利益 53 億円には届かない。新設拠点の稼働が遅れれば、償却と賃借料が利益を削る期間が延びる。
荷主の集中と内製化
サントリーロジスティクスが売上の 11% を占める。大口の荷主が自社運営に切り替えれば、拠点の稼働率と利益が一気に落ちる。前期にも、拠点の集約や内製化で受託を失った業務があった。
固定費の重さ(借庫と人件費)
倉庫の約半分は借り物で、賃借料は売上が落ちても減らない固定の約束だ。新しいリース会計基準(2028 年 3 月期から)で、この負債が貸借対照表に載り、自己資本比率は低く見える。人件費も物価で増える固定費である。
財務制限条項
シンジケートローン 120 億円に、純資産の維持と経常の連続赤字回避の条項がある。業績が悪化して条項に触れれば、返済を迫られて資産を安く売る場面もありうる。
政策保有株の値下がり
投資有価証券は約 317 億円で、自己資本の 46% に当たる。株価が下がれば自己資本が減り、売却益も薄くなる。縮減の方針は進むが、売るのは株価の動きに左右され、計画どおりに運ぶ保証はない。
含み益が現金にならない
賃貸ビルの含み益は報道の試算(約 628 億円)で、会社の開示ではない。地価が下がれば薄れ、売らなければ利益にならない。賃貸の利回りは時価に対して 4% を切り、資本コストに届かない。
買収と再編
筆頭株主がパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスで、含み資産の厚い小型株だ。買われる側になる可能性(kabufu の試算で 10 年以内に 18%)は、株主にとって上振れ要因でもあるが、条件は読めない。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が計画の 53 億円を超えたら
- 新設拠点の稼働が計画より早く、運賃の是正も効いている。やや楽観の確率を上げてよい。ただし売却益を除いた通常の利益で確かめる。
- 物流事業の利益率が 2 期続けて 4% を割ったら
- 人件費の転嫁が止まった証拠。やや悲観と悲観に重みを移す。財務制限条項の余裕も確かめる。
- 賃貸ビルの売却や証券化で含み益が実現したら
- 含み益が株主に回る道筋が見えたことになる。楽観に重みを移す。売却額と、代金が還元に回るのか投資に回るのかを確かめる。
- 最大の荷主が自社運営への切り替えを発表したら
- 拠点の稼働と利益が大きく動く。悲観側に重みを移す。
- 政策保有株の純資産比が 2029 年 3 月期の前に 20% を下回り、売却代金が還元に回ったら
- 資本効率の改善が早い。還元側の価値を上方修正する。
- 買収提案や筆頭株主の持分の動きが出たら
- 価格は提案の条件で決まる。本質価値とは別に、資産の価値を基準に提案の水準を測る。
見ておくもの
- 物流事業の利益率(四半期)と新設拠点の稼働率
- 政策保有株の純資産比と売却額(2029 年 3 月期に 20% 以下)
- 配当性向と自社株買いの枠・実行額
- 賃貸等不動産の時価の開示額と、売却・証券化の動き
- 最大荷主のサントリーロジスティクスの取引の動向
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らなかった。物流の面積と名目の単価、不動産の面積と賃料から利益を積み、倍率は正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g) を上限にした。k は 7.25%(基本 7.5% に quality +0.75%)。楽観は上限の 9 割、やや楽観と中立は 8.5 割に置いた。薄利で普通の堀だからだ。やや悲観と悲観は、稼ぐ力ではなく売れる資産(賃貸ビルの含み益の税後、政策保有株)の床で測った。賃貸等不動産の時価は有報(2026年3月期)で確かめ、報道の試算は使わない。含み益は余った現金として、持ち合い株の部分を1.0、賃貸の部分を0.5の重みで中立以上にも足した。2026 年 3 月期の売却益込みの純利益は延長していない。2028 年 3 月期からのリース会計の変更は、数字を今と同じ形(賃借料を費用に入れた形)でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。事業は傾いていないので上乗せは置かない。同じ領域の住友倉庫(8.0%)より、借庫の多さと財務制限条項の分だけ高い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.25%。