結論
沖縄セルラー電話は、沖縄県内で au・UQ mobile・povo を売る地域の携帯会社だ。KDDI の子会社でもある。県内の契約はおよそ 70 万で、シェアは半分前後。KDDI の電波網を使うローミングの収入が、安定した利益の土台になっている。
筆者の結論は、今の値段は割高寄りというものだ。事業は申し分ない。営業利益率は 2 割を超え、自己資本比率は 8 割を超え、借金はない。ただ、その利益が 10 年後も同じ質で続くと見ても、今の時価総額には届かない。
理由は成長の源にある。沖縄の人口はやがて減り、携帯の契約数は増えない。伸びるのは料金と、電力・法人向けの新しい事業だけだ。料金は競争と規制の下で、物価ほどには上がりにくい。中期経営計画は 2030 年度に営業収益 1,000 億円を掲げるが、その柱の電力は利益が薄い。
株主への戻しは厚い。配当と自社株買いで、利益の 8 割強を毎年返している。それでも、利益の伸びが年 2〜3% にとどまる会社に、高い倍率は払えない。中立の筋書きでは、本質価値は今の時価総額を 2 割半ほど下回る。
一方で、沖縄で最も強い携帯網という堀は崩れにくい。楽天モバイルや格安勢との消耗戦という悲観の筋書きを置いても、会社は赤字にならない。割高ではあるが、危うい会社ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「よい事業を、高い値段で買うことにならないか」を問う会社だ。
事業としては、持ち続けたい。電波の免許と地域の信頼に守られ、借金なしで年 130 億円を稼ぐ。稼いだお金は株主に返され、資本の使い方も誠実だ。
ただ、持ち続ける価値は払う値段で決まる。この会社の利益は、物価を少し下回るペースでしか伸びない。人口が減る地域で、契約数が増えないからだ。その成長の鈍さに、今の値段は見合わない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益とほぼ同じだ。携帯は設備に投資が要るが、減価償却と同程度で済み、利益の大半を返せるからだ。ただし、その額は物価並みにしか増えない。10 年で純利益は 3 割ほど増え、年 170 億円前後になる。
安全域は薄い。中立の筋書きでさえ、今の時価総額に届かない。悲観の筋書きでも赤字にはならないが、価値は今の 2〜3 割に縮む。強気の筋書きで初めて、今の値段に近づく。
筆者は、この会社を「良い会社を高く買う」典型と見る。事業の質は信頼できるが、安全域のない値段では手を出さない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、携帯の契約者から毎月入る通信料だ。沖縄では au のショップ数が大手 2 社の約 2 倍あり、県民との接点が厚い。契約の維持には、この店の数が効いている。
収入の半分強はモバイル通信で、KDDI からのローミング収入もここに入る。他県の au 利用者が沖縄で電波を使うたびに、KDDI から対価が入る仕組みだ。観光客の多い沖縄では、これが大きな収益源になる。
次に端末の販売がある。売上は大きいが、利益はほとんど出ない。契約を取る入口の役目だ。そのほか、光回線のひかりゆいまーる、電力小売の auでんき、企業・自治体向けの ICT や農業、AI 乗り合い交通(mobi)などがある。
中期経営計画(OCT VISION 2030)は、電力を 2030 年度に 140 億円、ビジネス・課題解決を 160 億円まで育てる。合わせて 300 億円の成長領域だ。ただ、いずれも今は利益率が低い。携帯の利益を食わずに育てられるかが問われる。
親会社の KDDI は大株主で、沖縄セルラーの電波・商品・ブランドの大半は KDDI に頼っている。独立した会社というより、KDDI の沖縄支店が上場している姿に近い。
優良さと弱いところ
この会社の質は高い。営業利益率は 21.6% と、通信各社の中でも上位だ。過去 10 年は一貫して 17〜22% の間で上がってきた。
堀は 2 つある。1 つは電波の免許だ。携帯の事業者は数が限られ、新規参入は難しい。もう 1 つは県内のショップ網と顔なじみの関係で、県内シェアは半分を保っている。ただし、堀が深いとまでは見ない。楽天モバイルや大手 2 社は沖縄でも攻勢をかけており、会社自身が競争を「非常に激化」と言っている。
財務は鉄壁だ。借金はなく、自己資本比率は 8 割を超える。営業キャッシュフローは年 160 億円ほどで、設備投資を引いてもお金が残る。
弱みは 3 つある。1 つ目は規模だ。沖縄 1 県の人口に結びついた事業なので、契約数の伸びに限りがある。2 つ目は親会社への依存だ。商品や価格の方針は KDDI に左右され、独自の判断で動ける範囲は狭い。3 つ目は成長事業の薄さだ。電力は参入直後で利益がほとんど出ておらず、ビジネス事業も育てている途中だ。
経営は株主への戻しに積極的だ。2023 年には KDDI の保有株を買い取り、毎年の自社株買いも続けている。資本の使い方は評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の携帯市場は、契約者が飽和した成熟市場だ。総契約数は約 2.3 億で、人口減とともに伸びは年 1% を割る。NTT ドコモ、KDDI、ソフトバンクの 3 社が 8〜9 割を握り、楽天モバイルが 1,000 万契約を超えて食い込む。
料金は 2020 年前後に政府の要請で大きく下がった。その影響は一巡し、各社は値上げを少しずつ通している。ただ、サブブランドや格安プランに契約が流れる動きは続いており、1 契約あたりの収入を物価並みに上げるのは難しい。
沖縄はさらに事情が厳しい。県の人口は 2023 年に自然減に転じた。1 人あたりの所得も全国より低く、料金への感度は高い。会社自身が、au から UQ mobile への流出が一時あったと説明している。第 3 四半期には au がプラスに戻ったが、競争の厳しさは変わらない。
追い風もある。観光客の増加はローミング収入を押し上げる。5G の高度化(SA 方式)で人口カバーは 9 割を超える見込みで、衛星との直接通信(Starlink Direct)で離島や山間部の穴も埋まる。災害の多い沖縄では、通信の安定が信頼につながる。
政府の料金への介入、楽天モバイルの収益化、6G への投資負担が、業界全体の分かれ目になる。
資本政策と M&A
株主への戻しは厚く、増配も続く。配当性向は 40% 超を掲げ、配当は毎年増えてきた。自社株買いは 2020 年に始まり、2026 年 5 月にも 50 億円を上限に決議した。配当と自社株買いを合わせると、純利益の 8 割強になる。
2023 年には、KDDI が持つ自社株を約 84 億円で買い取った。親会社の持ち株を減らして株主構成を整える動きで、少数株主にとっては 1 株あたりの価値が上がる効果があった。
今後の最大の論点は親子上場の行方だ。KDDI は大株主で、沖縄セルラーを完全子会社にする選択肢を持つ。実行されれば、少数株主には買い取りの値段がつく。ただし、それが事業の価値に見合うとは限らない。
中期経営計画では、6 年間の営業キャッシュフロー約 1,000 億円のうち、既存の設備に 360 億円を使い、残りを戦略投資と還元に回す。買収で価値を壊すタイプの会社ではないが、電力やビジネスで小さな買収を重ねる可能性はある。
還元の置き方:配当性向40%超に自社株買い(2026年5月に50億円)を足し、実績は純利益の8割強。10年の中立は純利益の合計の84%。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の63億円が10年後に約 67億円。更新投資は価格の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
沖縄での au の強さは、競合が簡単には崩せない。ショップ数は大手の約 2 倍で、県内の携帯契約の半分前後を握る。この関係は、料金の差だけでは動かない。
中期経営計画が掲げる 2030 年度の営業収益 1,000 億円は、無理のない数字だ。電力は 2025 年 10 月に自ら小売へ参入し、採算が改善し始めている。ビジネス・課題解決は、農業や AI 乗り合い交通など、地元に根ざした事業で 2.5 倍を狙う。人口減に頼らない成長だ。
携帯の料金も、いつまでも据え置きではない。ドコモや KDDI が値上げを進めており、沖縄セルラーも続く。物価が年 3% で続く世界では、料金が物価並みに上がれば、利益率は守られる。
沖縄は観光客が増える。ローミング収入は、観光客が増えるたびに膨らむ。KDDI の au 利用者が全国から沖縄に来るので、他社にない追い風だ。
財務は強い。借金がなく、毎年利益の 8 割強を株主に返せる。自社株買いで 1 株あたりの利益も伸びる。KDDI による完全子会社化があれば、少数株主には上乗せされた値段がつく可能性もある。
慎重な見方
成長が止まった会社に、高い倍率は払えない。沖縄の人口は減り始め、携帯の契約数は増えない。伸びるのは物価の分だけで、その値上げも、競争と規制で通しにくい。
会社自身が、沖縄の競争は「非常に激化」と言っている。楽天モバイルは県内にも基地局を広げ、格安プランで契約を奪う。au から UQ mobile への流出は、1 契約あたりの収入を直接削る。料金が物価に追いつかなければ、人件費の上昇で利益率は下がる。
新しい事業も、利益に乏しい。電力は燃料調整費に売上が左右され、利益はほぼ出ない。ビジネス・課題解決は育てる途中で、まだ携帯の穴を埋める規模ではない。売上が 1,000 億円に届いても、利益率は今より下がる。
親会社への依存も重い。商品、価格、システムの大半を KDDI に頼り、KDDI の方針が変われば、沖縄セルラーの利益配分も変わりうる。完全子会社化が実行されても、買い取りの値段が高いとは限らない。
今の時価総額は、この会社が 10 年にわたって利益を伸ばし続ける姿を前提にしている。その前提が崩れたとき、下げ幅は大きい。
どちらに重みを置いたか
強い堀と鉄壁の財務は、悲観の筋書きでも赤字を防ぐ。一方で、成長の源が人口減と競争にさらされ、料金を物価並みに上げるのは難しい。この点で、慎重な見方のほうが強いと判断した。
確率は、楽観を 10%、やや楽観を 22% と抑え、やや悲観を 22%、悲観を 11% とやや厚めに置いた。ただし堀の深さを踏まえ、悲観を過度に厚くはしていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,379 円3,092 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,299 円1,188 億円)。 今の値に割り戻すと 2,748 円2,514 億円、今との差 −19.2%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 6.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,468 円5,003 億円 | 1,655 円1,514 億円 | +109.5% | +7.7% | 712 円652 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,681 円4,282 億円 | 1,528 円1,398 億円 | +82.6% | +6.2% | 1,366 円1,250 億円 |
| 中立 | 35% | 4,000 円3,659 億円 | 1,434 円1,312 億円 | +59.8% | +4.8% | 1,902 円1,740 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,569 円1,435 億円 | 1,030 円942 億円 | −23.6% | −2.7% | 572 円523 億円 |
| 悲観 | 11% | 523 円479 億円 | 625 円572 億円 | −66.2% | −10.3% | 126 円116 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,379 円3,092 億円 | 1,299 円1,188 億円 | +37.6% | +3.2% | 4,678 円4,280 億円 |
今の株価時価総額 3,400 円3,110 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 経済圏が沖縄に根づき、携帯の単価が物価を上回る 利益 233 億円 · PER 21.5 倍 · 株価時価総額 5,468 円5,003 億円
沖縄に au の経済圏が根づく。携帯の契約は横ばいを保ち、単価は物価を上回って上がる。金融とポイント、電力の組み合わせで、県内の家庭が離れにくくなる。
ローミング収入は観光客の増加とともに膨らむ。電力は参入後の採算が改善し、契約は 2 倍近くまで伸びる。ビジネス・課題解決は農業と交通で県内の自治体に広がり、中計の 160 億円を超えて育つ。
光回線は 10 ギガの普及でシェアを取り、利益率も 2 割に乗る。KDDI は完全子会社化を急がず、少数株主は配当と自社株買いの厚みを享受する。営業利益率は 20% を保ち、利益は 10 年で 6 割増える。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の63億円が10年後に約 67億円(物価で一律に増やすと約 44億円)。営業利益は +23億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- モバイル通信(au・UQ mobile・povo):数量 70.1(携帯の総契約数(万))× 価格 94,004(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 659 億円・営業利益 241 億円。契約微増・単価 1.42 倍・利益率36.5%・償却は物価で増やさず按分(10年後 67億円)
- 端末販売:数量 20.0(年間販売台数(万台))× 価格 91,000(1 台あたり販売額(円))→ 売上 182 億円・営業利益 7 億円。単価 1.4 倍
- FTTH・固定通信(ひかりゆいまーる):数量 14.3(FTTH 契約数(万))× 価格 151,110(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 215 億円・営業利益 43 億円。10 ギガ定着で契約 1.5 倍
- auでんき:数量 15.1(電力の契約数(万))× 価格 133,750(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 202 億円・営業利益 12 億円。契約 1.9 倍・利益率 6%
- ビジネス・課題解決:数量 8,000(取引先の法人・自治体数(社))× 価格 289(1 社あたり年間売上(万円))→ 売上 231 億円・営業利益 28 億円。取引先 1.6 倍・単価 1.7 倍
倍率:事業の純利益 233 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.6% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.5 倍。全体の PER 21.47 倍、時価総額 5,002 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:沖縄の堀と電力・ビジネスの上振れが重なる筋書き。成長の源が人口減に縛られるので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% 中計はほぼ達成。電力とビジネスが利益の柱に育つ 利益 205 億円 · PER 20.9 倍 · 株価時価総額 4,681 円4,282 億円
中期経営計画がほぼ予定どおりに進む。携帯の契約は横ばいで、単価は物価をわずかに上回る。サブブランドへの流出は止まり、au の純増が続く。
電力は 2030 年度に 140 億円を達成し、その後も契約が伸びる。ビジネス・課題解決は 160 億円を超え、利益率も 1 割を超えて安定する。光回線は契約が 4 割増え、セット割で携帯を守る。
全社の営業収益は 1,400 億円弱まで伸びる。営業利益率は 19% に下がるが、利益は 4 割増える。配当と自社株買いは利益の 8 割強を保つ。沖縄の人口が減る中でも、県内の家庭と企業に深く入り込んだ会社が、物価並みの値上げと新しい事業で堅く伸びる 10 年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の63億円が10年後に約 67億円(物価で一律に増やすと約 47億円)。営業利益は +20億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- モバイル通信(au・UQ mobile・povo):数量 69.5(携帯の総契約数(万))× 価格 90,694(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 630 億円・営業利益 218 億円。契約横ばい・単価 1.37 倍・利益率34.7%・償却は物価で増やさず按分(10年後 67億円)
- 端末販売:数量 19.4(年間販売台数(万台))× 価格 89,050(1 台あたり販売額(円))→ 売上 173 億円・営業利益 6 億円。単価 1.37 倍
- FTTH・固定通信(ひかりゆいまーる):数量 13.5(FTTH 契約数(万))× 価格 146,730(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 198 億円・営業利益 38 億円。契約 1.42 倍
- auでんき:数量 13.9(電力の契約数(万))× 価格 130,540(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 181 億円・営業利益 9 億円。契約 1.75 倍
- ビジネス・課題解決:数量 7,750(取引先の法人・自治体数(社))× 価格 269(1 社あたり年間売上(万円))→ 売上 208 億円・営業利益 23 億円。取引先 1.55 倍
倍率:事業の純利益 205 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.9 倍。全体の PER 20.89 倍、時価総額 4,282 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の達成と料金の物価並みの上昇が現実味を持つ。携帯の競争の厳しさを考え 2 割強にとどめた。
中立 35% 沖縄の地元企業として堅く稼ぐが、利益は物価をやや下回って伸びる 利益 180 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 4,000 円3,659 億円
携帯は契約が人口減で微減し、単価は物価を少し下回って上がる。サブブランド化と競争で、料金の上昇は 1.3 倍にとどまる。ローミング収入が観光とともに支える。
電力とビジネスは中計に近づくが、利益は薄い。光回線は契約が 3 分の 1 ほど増える。全体で売上は年 4% 伸びるが、人件費の上昇と新しい事業の薄利で、営業利益率は 18% に下がる。
配当と自社株買いは利益の 8 割強を続ける。KDDI との関係は今のまま変わらず、堅い地域の会社としての姿が続く。電力の料金は燃料の値段に連動して物価ほど上がらず、売上の伸びを抑えるが、利益への影響は小さい。大きな上振れも下振れもない、安定した 10 年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の63億円が10年後に約 67億円(物価で一律に増やすと約 51億円)。営業利益は +16億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- モバイル通信(au・UQ mobile・povo):数量 68.1(携帯の総契約数(万))× 価格 86,060(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 586 億円・営業利益 198 億円。契約 0.98 倍・単価 1.30 倍・利益率33.7%・償却は物価で増やさず按分(10年後 67億円)
- 端末販売:数量 19.0(年間販売台数(万台))× 価格 87,100(1 台あたり販売額(円))→ 売上 166 億円・営業利益 5 億円。台数 0.95 倍
- FTTH・固定通信(ひかりゆいまーる):数量 12.8(FTTH 契約数(万))× 価格 142,350(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 183 億円・営業利益 33 億円。契約 1.35 倍・利益率 18%
- auでんき:数量 12.7(電力の契約数(万))× 価格 128,400(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 163 億円・営業利益 7 億円。契約 1.6 倍・利益率 4%。単価 1.2 倍は、料金が燃料調整費など卸の値段に連動し物価ほど上がらないため
- ビジネス・課題解決:数量 7,500(取引先の法人・自治体数(社))× 価格 250(1 社あたり年間売上(万円))→ 売上 187 億円・営業利益 19 億円。取引先 1.5 倍・利益率 10%
倍率:事業の純利益 180 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍。全体の PER 20.33 倍、時価総額 3,659 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:携帯は堅く、成長は物価を少し下回る。もっとも起きやすい姿として 35% を置いた。
やや悲観 22% 価格競争が続き、携帯の単価が物価に追いつかない 利益 115 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,569 円1,435 億円
沖縄の競争が続き、携帯の単価は物価に追いつかない。楽天モバイルと格安プランの攻勢で、契約は 6% 減り、サブブランド化も進む。単価は 1.18 倍にとどまる。
電力は燃料調整費に売上が左右され、利益はほぼ出ない。ビジネスも期待ほど育たない。人件費は物価並みに上がるので、営業利益率は 14% まで下がる。
配当は維持するが、自社株買いは減る。KDDI の完全子会社化もなく、少数株主には伸びない会社として映る。ショップ網の維持費と 5G・6G への設備投資は重く、利益の伸びは物価を大きく下回る。堅いが先の細い会社になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の63億円が10年後に約 67億円(物価で一律に増やすと約 58億円)。営業利益は +9億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- モバイル通信(au・UQ mobile・povo):数量 65.3(携帯の総契約数(万))× 価格 78,116(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 510 億円・営業利益 137 億円。契約 0.94 倍・単価 1.18 倍・利益率26.8%・償却は物価で増やさず按分(10年後 67億円)
- 端末販売:数量 18.0(年間販売台数(万台))× 価格 84,500(1 台あたり販売額(円))→ 売上 152 億円・営業利益 3 億円。台数 0.9 倍
- FTTH・固定通信(ひかりゆいまーる):数量 11.4(FTTH 契約数(万))× 価格 125,925(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 144 億円・営業利益 19 億円。契約 1.2 倍・利益率 13%
- auでんき:数量 11.1(電力の契約数(万))× 価格 123,050(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 137 億円・営業利益 3 億円。契約 1.4 倍・利益率 2%
- ビジネス・課題解決:数量 6,250(取引先の法人・自治体数(社))× 価格 213(1 社あたり年間売上(万円))→ 売上 133 億円・営業利益 11 億円。取引先 1.25 倍
倍率:競争で新たに投じる設備の稼ぎが k を下回る(RONIC が k 未満)筋書き。稼ぐ力の 1÷k(15.4 倍)に届かせず 12.5 倍に置いた。
確率:沖縄の競争激化と人口減が重なる姿で、会社自身が競争を「非常に激化」と述べている。慎重な見方が強いので 22% にやや厚く置いた。
悲観 11% 楽天と格安勢との消耗戦で、携帯の単価が実質 2 割以上下がったまま戻らない 利益 40 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 523 円479 億円
楽天モバイルや格安勢との消耗戦が長期化する。携帯の単価は 10 年間ほぼ横ばいで、実質では 25% 近く下がったまま戻らない。契約も 15% 減る。
人件費は物価で上がるので、携帯の利益率は 14% まで落ちる。端末は利益が出ず、電力は赤字になる。ビジネス・課題解決も伸びず、全社の営業利益は今の 3 割に縮む。
店舗は固定費として残る。配当は利益に合わせて減るが、自己資本が厚いので、赤字には落ちない。KDDI の対応は読めないが、完全子会社化があっても高い値はつかない。配当は自己資本の厚さを使って、利益を超えて払う年も出るが、自社株買いは止まる。それでも自己資本比率は 8 割近くを保ち、会社が傷むことはない。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の63億円が10年後に約 67億円(物価で一律に増やすと約 68億円)。営業利益は −1億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- モバイル通信(au・UQ mobile・povo):数量 59.0(携帯の総契約数(万))× 価格 66,200(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 391 億円・営業利益 54 億円。契約 0.85 倍・単価横ばい(実質 25% 減)・利益率13.7%・償却は物価で増やさず按分(10年後 67億円)
- 端末販売:数量 16.0(年間販売台数(万台))× 価格 78,000(1 台あたり販売額(円))→ 売上 125 億円・営業利益 0 億円。台数 0.8 倍・利益ゼロ
- FTTH・固定通信(ひかりゆいまーる):数量 10.0(FTTH 契約数(万))× 価格 109,500(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 109 億円・営業利益 7 億円。契約 1.05 倍・単価横ばい
- auでんき:数量 9.5(電力の契約数(万))× 価格 112,350(1 契約あたり年間収入(円))→ 売上 107 億円・営業利益 −1 億円。契約 1.2 倍・赤字
- ビジネス・課題解決:数量 5,250(取引先の法人・自治体数(社))× 価格 187(1 社あたり年間売上(万円))→ 売上 98 億円・営業利益 4 億円。取引先 1.05 倍
倍率:利益が今の 3 割に縮み、なお細る途中。新規投資の稼ぎが k を下回るので、稼ぐ力の上限 1÷k(15.4 倍)に届かせず 12 倍に置いた。売れる資産の床(約 380 億円)より稼ぐ力のほうが大きい。
確率:楽天と格安勢との消耗戦で単価が固定的に下がる構造的な負け。免許と店舗網の堀を考え 11% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
モバイル通信(au・UQ mobile・povo)
沖縄県内の携帯電話サービス。KDDI からのローミング収入も含む、会社の稼ぎの中心。
| 数量携帯の総契約数(万) | 価格1 契約あたり年間収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 69.5 | 66,200 | 460 | 150 |
| 10 年後 中立 | 68.1 | 86,060 | 586 | 198 |
取り方:総契約数は 2026 年 3 月期第 3 四半期の開示(69 万 4,500)。モバイル総合収入は 9 か月で 343 億円で、通期の端末を除く収入を約 460 億円と置き、契約数で割って 1 契約あたり年 6.6 万円(月に直すと 5 千円台半ば)。営業利益は全社 187 億円から他の事業の推定を引いて約 150 億円。セグメント別の開示は確認できず、内訳は推定。
端末販売
スマートフォンなどの販売。ショップ網を持つための入口で、利益はほとんど出ない。
| 数量年間販売台数(万台) | 価格1 台あたり販売額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 65,000 | 130 | 5 |
| 10 年後 中立 | 19.0 | 87,100 | 166 | 5 |
取り方:契約 69 万に買い替え周期 3.5 年前後を当てて年 20 万台、1 台 6.5 万円として約 130 億円。端末収入が前年から 7.5 億円増えた開示と整合する推定。利益は薄いので営業利益 5 億円と置いた。
FTTH・固定通信(ひかりゆいまーる)
沖縄の光回線サービスと付帯収入。携帯とのセット割で契約を守る役目もある。
| 数量FTTH 契約数(万) | 価格1 契約あたり年間収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.5 | 109,500 | 104 | 22 |
| 10 年後 中立 | 12.8 | 142,350 | 183 | 33 |
取り方:県内の光回線シェア約 3 割(会社説明)をもとに契約数を約 9.5 万と推定し、設置工事や付帯サービスを含めた年間収入 104 億円を割った。純増は期初から 2,400 件の開示のみ。契約数は推定。
auでんき
電力小売。2025 年 10 月から自ら小売に参入し、採算の改善を進めている。
| 数量電力の契約数(万) | 価格1 契約あたり年間収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.9 | 107,000 | 85 | 3 |
| 10 年後 中立 | 12.7 | 128,400 | 163 | 7 |
取り方:総契約数は 7 万 9,400(開示)。収入は 2024 年度の約 88 億円から燃料調整費の下落で細り、約 85 億円。中計は 2030 年度に 140 億円(2024 年度の 1.6 倍)を掲げる。営業利益は参入直後で薄く 3 億円。
ビジネス・課題解決
沖縄の企業・自治体向けの ICT、農業、マーケットプレイス、ヘルスケア、AI 乗り合い交通(mobi)。
| 数量取引先の法人・自治体数(社) | 価格1 社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,000 | 170 | 85 | 12 |
| 10 年後 中立 | 7,500 | 250 | 187 | 19 |
取り方:中計の 2030 年度目標 160 億円は 2024 年度の約 2.5 倍で、今期の売上は約 85 億円と推定。県内の取引先を約 5,000 社と置いて 1 社あたり 170 万円とした。取引先数は推定。 数量は実物(取引先数が 1.5 倍)。1 社あたり売上 1.47 倍は、物価 1.34 倍に、中計の売上目標(2030 年度 160 億円)へ近づくための事業の拡大を加えた値。
リスクと懸念
沖縄の価格競争
楽天モバイルや大手 2 社が沖縄でも攻勢を強めている。サブブランドや格安プランへの契約の移りが続けば、1 契約あたりの収入は物価に追いつかない。会社自身が競争を「非常に激化」と述べている。
人口減と契約数の頭打ち
沖縄県の人口は 2023 年に自然減に転じた。携帯の契約数は人口に結びつくため、増やすのは難しい。料金の上昇が頼りだが、所得が低い県では値上げへの感度が高い。
親会社への依存
KDDI は大株主で、商品・料金・ネットワークの大半を握る。KDDI の方針が変われば、ローミング収入の配分や商品の条件が変わる。親子上場の少数株主は、利益配分で不利になる恐れがある。
成長事業の利益の薄さ
電力は燃料調整費で売上が揺れ、利益はほとんど出ない。ビジネス・課題解決は 2.5 倍を狙うが、今は規模が小さい。売上が増えても、利益率の低い事業が増えれば、全体の利益率は下がる。
自然災害と観光の波
沖縄は台風や地震の被害を受けやすく、設備の復旧に費用がかかる。観光客の落ち込み(感染症や景気)は、ローミング収入を直接減らす。収益源が 1 つの地域に集中している。
6G と設備の更新
2030 年前後には 6G の導入が始まる見込みで、基地局の更新が重くなる。5G の人口カバーを 9 割に高めた後も、投資は続く。料金に転嫁できなければ、利益を削る。
今後の分かれ目
- 楽天モバイルの沖縄での契約数が急に伸びたら
- au から他社への流出が加速する前触れ。携帯の契約数と収入の伸びを下方修正し、悲観側の確率を上げる。
- KDDI が完全子会社化の公開買い付けを発表したら
- 少数株主には買い取りの値段がつく。ただし、提示は事業の価値ではなく親会社の都合で決まる。本質価値と比べて高いか安いかを確かめる。
- 電力小売の利益率が 5% を超えて安定したら
- 成長事業が利益に貢献し始めた証拠。中期経営計画の達成確率が上がり、やや楽観の筋書きを厚くしてよい。
- 沖縄の携帯の純減が 3 四半期続いたら
- 県内シェアの堀が崩れ始めたと見る。契約数の前提を見直し、やや悲観の筋書きに寄せる。
- 政府が携帯料金への介入を再び強めたら
- 料金の上昇が止まり、1 契約あたりの収入が物価に負ける。中立の価格の前提を下げる。
見ておくもの
- 沖縄のモバイル純増と au・UQ mobile 間の移動
- 1 契約あたりの通信収入(ARPU)の動き
- auでんきとビジネス・課題解決の営業利益
- KDDI の持株比率と完全子会社化の動き
- 自社株買いの進み方と配当の増減
倍率と資本コストの決め方
セグメントは契約数×1 契約あたり収入などで積み上げ、価格は物価 3% の 10 年 1.34 倍を基準に、携帯は競争とサブブランド化を理由に 1.30 倍へ下げた。自己資本は今に期間の純利益を足し還元を引いて流し、ROE は結果として出した。倍率は式の上限(k 6.5%、g 3.0%)の 8.5 割に置き、同業や過去の倍率は使っていない。純現金は時価総額の 1% で、分けなかった。新リース会計基準(2028/03 期)で店舗の賃借が BS に載るが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。今の株価に寄せて丸めてもいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 20.1→21.47 倍・やや楽観 PER 18.5→20.89 倍・中立 PER 17→20.33 倍)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality −1.0% = 6.5%。親子上場や完全子会社化の可能性は k に足さず、筋書きと確率で表した。