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STG 5858

精密鋳造の技術と海外拠点には価値がある。買収負債と希薄化を厳しく見ても、長期の本質価値は時価総額を上回る

割安
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)1,599 円34 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-11-02)1,127 円24 億円差 +41.8%
10 年後から見ると 割安 価値 1,599 円34 億円 · 差 +41.8% · 期待の年率 +13.2%
期待の年率リターン(10 年)+13.2%資本コスト比 +4.2 pt
推定の資本コスト9.0%期待の年率と比べる目安

期待の年率は、5つの筋書きから求めた期待CFのIRRです。期間の還元・追加負担を中間時点、終価を期間末に置く仮定で、価値の割引時期とそろえています。実際の配当日を予測した値や、筋書きごとのIRRの平均ではありません。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの終価と還元を確率で加重し、資本コスト 9.0% で今の値に割り戻したものです。

利益と必要資本から、将来の留保余力を見込む場合があります。この推定は、維持更新投資や運転資金、借換後の現金計画を確認した値ではありません。

留保余力の推定による上乗せは、算定価値の約2.0%です。同じモデル内の上乗せ分の割合で、実現する現金額や割高・割安を示すものではありません。

総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

終価・還元は現在株主全体の取り分です。1株表示は現株数への換算で、還元には配当・自社株買いを含みます。持分・支払時点は簡略化しており、買戻しに売却参加せず同じ株数を持ち続ける場合の将来株価・受取配当とは別です。

結論

STGは、マグネシウムとアルミニウムの精密鋳造を得意とする部品メーカーだ。筆者の結論は「割安」である。ただし、資産が安く放置されているからではない。海外工場を持つ小規模メーカーが、買収によって製品と顧客を広げ、10年後も利益を生み続けるという見通しに対して、現在の時価総額が低いからだ。

同社の売上は、2026年3月期に68.2億円となった。マグネシウムが41%、アルミニウムが54%を占める。かつての自動車部品中心の印象とは異なり、ネットワークカメラ、高付加価値カメラ、精密機器の存在が大きい。なかでも、スウェーデンのAXIS COMMUNICATIONS向けだけで売上の21.6%を占める。軽く薄い部品を安定して量産する能力には一定の参入障壁があるが、大口顧客への依存という弱点も明確だ。

株主にとって最大の問題は、成長そのものより成長に払う代金である。2025年のE-Cast買収によって純有利子負債は29.4億円に膨らんだ。2026年8月には折居技研も買収した。優先株式の転換による希薄化も控える。営業利益が増えても、それ以上の資金を買収と工場に投じれば、普通株主の価値は増えない。

10年後の中立では、売上高124.3億円、営業利益9.9億円、純利益6.4億円を見込む。会社が2028年に目指す営業利益12億円より慎重な水準だ。強気と慎重の両側を会社固有の事情で重み付けすると、現在価値は約33.3億円となり、基準時価総額24.2億円を約37%上回る。安全域は存在するが、利益の確実性が高い優良株ではない。買収後の利益率と現金創出を継続的に確かめる必要がある。

バリュー投資の観点から

長く持つ株主の見方では、STGの技術そのものより、その技術を保つのに必要な資金が重要になる。金型を造る技術、海外で不良率を抑える現場力、顧客の設計段階から入り込む関係は、十年後も役に立つ可能性が高い。カメラや精密機器の形が変わっても、軽くて丈夫な筐体を造る仕事は残る。AIだけで消える事業ではない。

ただし、良い技術と良い投資対象は同じではない。鋳造機、金型、加工機、検査装置には更新投資が必要だ。2026年3月期のEBITDAと営業利益の差は約4.7億円あり、償却負担は小さくない。既存設備の償却額は過去の取得原価を基準とするが、新しい設備はインフレ後の価格で買い直す。会計上の利益が増えても、設備更新後に残る現金が同じ割合で増えるとは限らない。

経営者が買収先を安く取得し、設備の稼働率を上げ、他社には出せない加工品質を維持できれば、再投資した資金は報われる。E-Castと折居技研はその試金石だ。反対に、買収を続けること自体が目標になれば、既存株主は借金と希薄化を引き受けるだけになる。筆者は、売上300億円という遠い構想より、直近で投じた資金が生んだ営業利益と現金の増分を重視する。

安全域を考えるうえで、現在の自己資本35.5億円と時価総額24.2億円の差は出発点にすぎない。自己資本には買収のれん、換金しにくい工場設備、優先株主に優先権のある資金が含まれる。損失を出す工場を帳簿価格で売れる保証もない。一方、収益力が回復するなら、資産価格ではなく継続的な利益が普通株主の価値を決める。大きな安全域があるように見える銘柄だからこそ、貸借対照表の数字だけではなく、事業の稼ぐ力が資本コストを超えるかを問い続けたい。

何で稼ぐ会社か

STGの本業は、金属を鋳型に流し込んで部品を造り、切削、表面処理、塗装、組立まで仕上げることである。国内の金型・精密加工技術と、中国、タイ、マレーシアの量産拠点を組み合わせている。製品は自動車だけでなく、ミラーレスカメラ、監視用ネットワークカメラ、プリンター、医療機器などに使われる。顧客が求めるのは金属の重量ではなく、薄さ、寸法精度、放熱性、品質の安定である。

マグネシウム合金は実用金属の中で軽く、複雑な形状を薄肉で造りやすい。STGは金型から仕上げまで一貫して引き受けることで、顧客が複数業者に発注する手間を減らしている。同社の技術紹介には薄肉0.35ミリメートル、寸法精度プラスマイナス0.03ミリメートルという加工例がある。ただし、すべての受注品がこの精度を必要とするわけではない。難しい部品で稼ぐ力を、汎用部品にまで広げて考えるべきではない。

現在はアルミニウム事業の方が大きい。マレーシアのSTX PRECISIONとE-Castが生産を担い、ネットワークカメラや電子機器向けの筐体などを供給する。E-Castは2025年9月に買収され、2026年3月期の連結業績には一部期間だけが反映された。工場の稼働率が上がり、両社で切削や表面処理を融通できれば、販売数量の増加以上に採算を改善できる余地がある。

2026年8月に取得した折居技研は、精密プラスチック成形と金型の会社だ。取得前の売上高は約8億円、営業利益は約1.1億円である。これによってSTGは金属だけでなく、樹脂部品にも事業を広げる。顧客に材料選択を含めた提案ができる反面、金属鋳造との相乗効果が十分に現れるかは未検証だ。

会計上の報告セグメントは金属部品鋳造及び加工事業の一つだけである。本分析では経済性の違いを見るため、マグネシウム、アルミニウム、その他加工・金型・樹脂の三つに分解した。製品別の利益や販売重量は開示されていないため、その部分の数値は明示的な推計である。顧客別売上ではAXIS COMMUNICATIONS、三菱電機、CBC、甲信工業の4社が合計で約60%を占める。受注が分散しているように見えて、収益の大半は少数の顧客の製品計画に左右される。

優良さと弱いところ

STGの競争上の強みは、価格を自由に決められるブランドではなく、量産立ち上げの難しさにある。顧客が部品の形状を決めてから、金型を設計し、試作し、不良率を下げ、品質認証を通して量産するまでには時間がかかる。工程を深く知る供給者を途中で替えることには、顧客側にも費用と品質リスクが生じる。小型で精密な筐体には、この乗り換えにくさが働く。

ただし、その堀は製品ごとに深さが違う。独特な薄肉加工や仕上げを必要とするマグネシウム部品には技術の蓄積がある。一方、マレーシアで量産するアルミ部品は、同業他社との価格競争にさらされやすい。値上げを重ねても受注数量を失わなかったという金額付きの実績や、世界シェアを支配する証拠は確認できない。したがって、会社全体を強い堀の企業とは評価しない。

資本効率の悪化は見過ごせない。2025年3月期には営業利益4.8億円を稼いだが、2026年3月期は売上増加にもかかわらず3.4億円へ減益となった。純有利子負債は約17億円から29.4億円に増え、自己資本も優先株式の発行などで厚くなった。つまり、事業に投じた資金は増えたのに、まだ利益は追い付いていない。E-Castの寄与期間が短い点を考慮しても、増分の投下資本利益率が資本コストを超えたという証拠にはならない。

好材料は、海外に複数の工場を持ち、顧客の生産移管に応じられることだ。人手不足の日本で金型技術を確保し、量産を東南アジアで行う仕組みには合理性がある。反面、拠点間で品質や稼働率をそろえられなければ、固定費だけが増える。2027年3月期第1四半期も増収なのに大幅減益だった。現時点の評価は、優良さが確立した会社というより、技術を持つ会社が収益基盤を再構築している途中というものだ。

AIエージェント代替の指定類型には該当しない。製品設計や事務作業へのAI導入は進んでも、金型、鋳造、寸法検査、表面処理という現場の物理的な仕事は画面操作型のエージェントでは置き換えられない。ただし、設計自動化や顧客の内製化が進めば、金型設計などの付加価値が圧迫される可能性はある。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

この会社の市場を、非鉄金属全体の値動きだけで考えるのは誤りだ。主戦場は、マグネシウムとアルミニウムを使った精密部品の鋳造・加工である。軽量化、放熱、電子機器の小型化には長期的な需要がある。しかし、自動車生産台数が大きく増える成熟市場ではなく、部品の材料と顧客の設計変更によって勝敗が決まる市場だ。

日本ダイカスト協会によると、2025年の国内ダイカスト生産は約90万トン、生産金額は約7,132億円だった。2026年度の国内アルミダイカストの数量見通しは約90.2万トンで、前年見込みからの増加率は2.8%にとどまる。同じ調査ではマグネシウムの受注動向が上期、下期とも減少を示している。10年間に国内の数量が自然に倍増するという前提は置けない。

STGは海外生産・海外販売が大きいため、日本の生産統計をそのまま分母にした市場シェアは意味を持たない。マグネシウム事業だけの世界市場規模、同社の販売重量、同じ用途に絞った競合シェアは公表されていない。したがって、精密部品という細分市場で同社が何%を握ると断定することはできない。比較材料として、マグネシウム部品の大手Meridianは年間4万トン超の出荷能力・実績を自社で示している。STGの推計販売重量とは規模が大きく異なるが、製品用途も異なるので、その比率を市場シェアとは呼ばない。

アルミダイカストではリョービ、アーレスティ、Nemak、Dynacastなどの大手が競争相手になる。マグネシウムではMeridianやアジアの鋳造会社が比較対象だ。大手は設備規模と自動車メーカーへの納入実績で優位に立つ。STGが狙うべきは大型汎用部品での正面衝突ではなく、薄肉の精密筐体、金型の作り込み、表面処理まで一括して任せたい顧客との取引だ。

需要の追い風は、ネットワークカメラ、産業機器、医療機器などの軽量・高精度部品にある。AXIS COMMUNICATIONS向けが伸びたことは、その方向への転換が進んでいる証拠だ。一方、電気自動車ではアルミの大型一体鋳造が広がり、小さな部品を組み合わせる需要を減らす可能性がある。カメラ市場にも製品寿命や仕様変更のリスクがある。軽量化という言葉だけであらゆる部品の数量が増えるわけではない。

中立では世界の精密部品需要が実質で緩やかに増え、STGは海外で新規顧客と品目を増やすことで市場全体を上回る数量成長を得ると考える。ただし、価格は物価程度の上昇にとどめた。10年後の販売シェア拡大は、既存工場の稼働率改善と買収企業の顧客開拓によるもので、独占力を前提にしていない。買収による売上増加と、既存事業の市場シェア上昇を混同しないことが重要だ。

資本政策と M&A

資本配分の評価は、現時点では慎重にならざるを得ない。2025年に買収したE-Castによって生産能力と顧客基盤は広がった。しかし2026年3月期は営業キャッシュフローが約6.9億円あった一方、投資キャッシュフローは約22.7億円の支出となった。買収を含む投資負担を自前の現金だけでは賄えていない。借入金の増加と、日本政策投資銀行を引受先とする5億円の優先株式発行が成長資金を支えている。

2026年8月には、折居技研を概算8.72億円で買収した。同社の買収前営業利益は約1.14億円であり、取得価額が合理的かを判断する材料になる。ただし、買収後にどれだけ現金が残るか、金型・設備の更新にいくら必要かは別問題だ。既存顧客への販売が増えるという期待だけで、買収代金を正当化すべきではない。

中期経営計画「Challenge 100」は、2028年3月期の売上高120億円、営業利益12億円、営業利益率10%、純利益8.25億円、EBITDA16億円を目標とする。内訳は既存事業の売上80億円と買収事業の売上40億円であり、後者にはE-Castの16億円と追加買収の24億円が含まれる。マグネシウム売上高40億円も重要指標だ。会社は計画の進捗遅れを認めながら目標を維持しているため、達成の確度は慎重に見る。

株主還元では、2028年3月期の配当下限を25円以上、配当性向を10~20%とする具体的な数字が示されている。一方、DOE、総還元性向、自社株買い額について数字の約束はない。利益の大半は買収、設備更新、借入金返済に使う構えだ。余った現金が将来生じた場合の普通株主への戻り方は75%と考える。支配株主という理由だけで50%にはしないが、高い還元実績が確立した会社として100%を数えることもしない。

さらに、優先株式には年率6.3%の優先配当と普通株式への転換権がある。会社の中計が想定する2028年の発行済株式数は235万株で、現在の普通株式数より多い。成長が成功した時ほど転換が進む可能性があるため、将来の会社全体の価値をそのまま現在の普通株主の取り分とはしない。増資で得た資金の価値は既に財務諸表に入っており、転換時にもう一度現金が入るとは扱わない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

STGには、大手の汎用鋳造会社とは異なる成長経路がある。薄肉の精密加工と金型設計を組み合わせ、顧客が品質を重視する筐体部品で取引を深められる。AXIS COMMUNICATIONS向けの売上が伸びたことは、自動車部品の伸び悩みを他の用途で補えることを示している。日本、中国、タイ、マレーシアに拠点があるため、顧客の調達先変更にも対応しやすい。

E-Castの買収は、マレーシアでの生産能力を一気に増やす手段だった。取得前に一定の収益力を持っていた工場を取り込み、既存のSTXと加工工程を分担すれば、外注費を減らしながら受注を増やせる。折居技研は金属とは別の樹脂加工技術を持ち、顧客の製品に合わせて最適な材料を提案する道を開く。どちらの買収も、新しい分野をゼロから立ち上げるより早く顧客と設備を得られる点に意味がある。

需要が最も強いのは、単純な自動車部品ではなく、高精度カメラ、産業向けの映像機器、医療・通信機器などの分野だ。小さく薄い部品を安定して供給できれば、金属の重量に応じた価格競争だけでなく、加工品質に対する付加価値を受け取れる。買収企業の設備稼働率が上がれば、売上の増加よりも速く利益が増える可能性がある。

2028年の営業利益12億円という会社目標は、現在の実績から遠い。しかしE-Castの通年寄与、折居技研の取得前利益、マレーシアの大型受注が順調に重なれば、その水準には届き得る。10年後には海外を軸にさらに顧客基盤が広がり、営業利益率が二桁で定着する余地がある。そうなれば、現在の小さな時価総額は、普通株主への希薄化を考慮しても長期の収益力に比べて低い。

慎重な見方

最大の懸念は、技術の強さを証明する前に買収資金が先行していることだ。2026年3月期は売上が増えたにもかかわらず営業利益が減少した。2027年3月期第1四半期も売上高は前年同期比19.5%増だったが、営業利益は54.6%減となった。買収先の売上を連結すれば規模は大きく見える。しかし、設備、人員、金利、のれん償却を負担した後の利益が増えなければ、普通株主には何も残らない。

2025年のE-Cast取得と2026年の折居技研取得には、合わせて大きな買収代金を投じている。さらに中期計画は追加の買収を前提にしたものだ。新たに購入する会社の採算と、将来の金利・設備更新負担が読めない。事業承継案件には魅力的な価格の会社もあるが、技術者不足、老朽設備、特定顧客への依存といった問題を同時に引き継ぐ可能性がある。買収金額が小さい会社でも、失敗が重なると親会社の財務を傷める。

既存事業にも弱点がある。主要顧客4社で売上の約6割を占め、AXIS COMMUNICATIONSだけで2割を超える。製品世代が変わり、顧客が別の素材や部品メーカーを採用すれば、長年の取引が短期間で細ることもある。自動車向けは足元で低調であり、アルミダイカストでは大規模な競合の設備能力が強い。マグネシウム部品の数量拡大も、軽量化需要という抽象的な期待だけでは保証できない。

財務面では、純有利子負債29.4億円は現在の時価総額を上回る。金利が上がれば借り換え負担が増し、利益率の薄い工場に直接響く。優先株式には普通株主より先に受け取る権利があり、業績が回復すれば転換による希薄化が発生する。業績が悪ければ優先配当や償還が負担になる。成長が成功しても失敗しても、普通株主だけが利益を独占できる資本構成ではない。

どちらに重みを置いたか

技術の持続性では前向きな見方に分がある。だが、増分の投資利益率と財務の安全性については慎重な見方が勝る。売上拡大の実績はあるものの、直近の利益は買収資金の増加に見合っておらず、会社自身も中計の進捗遅れを認めている。

このため確率は楽観側27%、中立32%、悲観側41%と下に寄せた。中立で会社目標の達成を当然視せず、買収事業の統合に時間がかかる場合を厚くした。それでも現在価値は時価総額を約37%上回る。割安という結論は、会社の目標を全面的に信じた結果ではない。ただし、その差が実際の株主価値になるには、借金と優先株の負担を抑えながら利益を積み上げる必要がある。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3,191 円68 億円(+ 還元の換算額還元の合計 386 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 1,599 円34 億円、今との差 +41.8%、 期待の年率 +13.2%(資本コスト 9.0%)→ 割安

筋書き確率10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価還元の換算額還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・還元込み年率確率 × (終価+還元)
楽観 10% 8,789 円187 億円 851 円18 億円 +755.4% +26.2% 964 円20 億円
やや楽観 17% 5,784 円123 億円 596 円13 億円 +466.1% +20.5% 1,085 円23 億円
中立 32% 3,223 円69 億円 383 円8 億円 +220.0% +13.3% 1,154 円25 億円
やや悲観 27% 736 円16 億円 235 円5 億円 −13.8% −1.7% 262 円6 億円
悲観 14% 706 円15 億円 94 円2 億円 −29.0% −3.6% 112 円2 億円
加重平均100% 3,191 円68 億円386 円8 億円 +217.4% +13.2% 3,577 円76 億円

今の株価時価総額 1,127 円24 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。

楽観 10% 精密部品の海外展開と買収統合が連続して成功 利益 17 億円 · PER 12.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,789 円187 億円

ネットワークカメラと高付加価値の精密機器で、STGの薄肉加工技術が継続的に採用される。AXIS COMMUNICATIONSへの供給が伸びるだけでなく、新しい顧客が日本と東南アジアの工場を使うようになる。マグネシウムは自動車向けの弱さを補い、販売重量が現在の約1.9倍になる。アルミニウムも生産能力の拡大と顧客基盤の広がりで約1.9倍の重量を扱う。

E-CastとSTXは工程を統合し、機械加工と表面処理の外注を減らす。折居技研の樹脂加工技術は金属との複合部品の受注につながり、買収先の既存顧客にもSTGの金属加工品を販売できる。追加の買収も比較的安い価格で実現し、のれん償却や金利を負担した後に利益が残る。単なる売上規模の拡大ではなく、生産効率の改善が伴う。

薄肉部品の品質で選ばれる案件が増え、営業利益率は二桁台に定着する。借金を返済しながら新しい工場を稼働させ、資本コストを十分に上回る利益を確保する。優先株式は普通株式に転換され、既存株主の持分は薄まるが、会社全体の稼ぐ力の増加がそれを大きく上回る。10年後は小さな金属鋳造会社というより、精密加工技術を束ねたアジアの製造プラットフォームへ変わっている。

  • マグネシウム合金の精密鋳造・加工:数量 1,550(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.05(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 84 億円・営業利益 11 億円。推計出荷重量1550トン。数量約1.94倍、名目加工単価約1.55倍。難加工品の構成比改善を伴う。
  • アルミニウム合金の精密鋳造・加工:数量 3,350(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.03(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 102 億円・営業利益 13 億円。推計出荷重量3350トン。数量約1.86倍、単価約1.49倍。マレーシアの高稼働と高付加価値加工を想定。
  • 金型・その他加工・樹脂事業:数量 870(換算受注案件数(件/年、1件は一定規模の金型・加工契約、推定))× 価格 0.05(換算1案件当たり平均売上高(億円/件))→ 売上 44 億円・営業利益 6 億円。折居技研と追加買収による樹脂・金型・その他加工の拡大。案件数は買収事業を含む換算値。

倍率:資本コストk9%、10年後のROE=17÷115=14.78%、通常の堀の残存割合1/2から増分投資のRONIC約11.89%。2036年以降の名目成長g2.5%を用いると、正当化PER=(1−0.025÷0.1189)÷(0.09−0.025)=約12.15倍。過去の市場PERは使用しない。営業利益28.66億円から、金利・税・海外収益の帰属を控除して純利益17億円とした。普通株転換による取り分低下はmcapに手掛けせず、holder_shareで処理する。

確率:E-Castの稼働率改善、折居技研の顧客開拓、さらに複数の買収の成功が10年間重なる必要がある。既存の精密加工技術は評価するが、借入れを伴う連続買収の実行難度が高いため10%とした。

やや楽観 17% 買収効果が現れ、精密加工の利益率が改善 利益 11 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,784 円123 億円

2027年以降、E-Castの通年寄与とマレーシアの大型案件が収益に反映される。ネットワークカメラ向け部品の需要が底堅く、高付加価値カメラや精密機器の顧客も増える。自動車向けは大きく伸びないが、マグネシウム事業全体の販売重量は現在の約1.6倍になる。アルミニウムはE-Castの既存設備を使いながら数量を増やし、現在の約1.5倍の出荷重量に達する。

買収企業の管理制度、品質基準、資材調達を徐々に共通化することで、外注費と不良費用を抑えられる。折居技研の樹脂成形事業も従来の金属加工とは異なる顧客を連れてくる。M&Aは続くものの、業績を過大に見せるための大型買収は避け、既存拠点との相乗効果を確認してから投資する。連続的な大型増資に依存せず、営業キャッシュフローを設備と返済に振り向けられるようになる。

二桁の営業利益率を実現し、金利と税金を差し引いても純利益が着実に増える。ただし、事業規模は強気の最上位ほど広がらず、単価の改善も高精度品の比率上昇による部分に限られる。技術の堀は守られるが、世界市場で支配的な企業になるわけではない。優先株式の転換による希薄化を吸収できる程度には、普通株主に帰属する利益が増える。

  • マグネシウム合金の精密鋳造・加工:数量 1,270(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.05(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 64 億円・営業利益 7 億円。数量1.59倍、単価1.43倍。高精度品への構成比改善が物価上昇に加わる。
  • アルミニウム合金の精密鋳造・加工:数量 2,700(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.03(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 78 億円・営業利益 9 億円。数量1.50倍、単価1.42倍。既存拠点の稼働率改善と買収先の通年寄与。
  • 金型・その他加工・樹脂事業:数量 600(換算受注案件数(件/年、1件は一定規模の金型・加工契約、推定))× 価格 0.05(換算1案件当たり平均売上高(億円/件))→ 売上 28 億円・営業利益 4 億円。樹脂加工・金型事業の買収効果と顧客開拓が進む。

倍率:k9%、10年後ROE=11.4÷90=12.67%、残存割合1/2のRONIC約10.83%、2036年以降のg2.5%から正当化PER約11.83倍。式の上限そのものを使用する。利益率の改善はシナリオの営業利益17.97億円に含め、倍率側に高成長をさらに上乗せしない。純利益11.4億円は借換金利、税金、海外事業の利益帰属を控除した額。

確率:既にE-Castと折居技研を取得しており、新規顧客との取引拡大には具体的な手掛かりがある。一方、海外工場の稼働率と買収先の統合が同時に改善する必要があるため、強気側でも楽観より確率を高くしすぎない。

中立 32% 緩やかな数量成長と買収先の定着 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,223 円69 億円

マグネシウム部品は、国内自動車向けの減少をネットワークカメラと精密機器の需要で補う。薄肉加工技術の評価は保たれるが、顧客への値上げ力は強くない。10年間の販売重量は現在の1.25倍にとどまり、単価は物価上昇にほぼ沿って上がる。国内市場が大きく伸びなくても、海外で採用製品を増やすことで緩やかな数量成長を確保する。

アルミニウム事業は、マレーシアのSTXとE-Castを中心に生産を増やす。買収先の設備を十分に活用するまでには時間がかかり、短期的な利益率の上下を経験する。10年後には販売重量が約1.26倍になるが、大手競合と比べて圧倒的なシェアを持つことはない。折居技研の樹脂事業は既存顧客を維持し、金型と精密加工の案件を少しずつ増やす。

営業利益は2026年3月期の3.4億円から改善するものの、2036年でも約9.9億円にとどまる。これは会社が2028年に掲げる12億円を下回る。買収先ののれん償却、工場の管理費、更新投資、借入金の金利を無視しないためだ。自己資本は利益留保で増えるが、ROEは過去の中央値より低い水準になる。普通株の還元は会社の方針に沿った控えめな配当を中心とし、大規模な自社株買いは想定しない。

10年後のSTGは、突出した高収益企業ではなく、複数の精密加工拠点を持つ堅実な中堅メーカーになっている。技術は残るが超過利益は大きくない。普通株式への転換による希薄化を受けても、事業の収益が維持されれば、現在の時価総額を上回る価値を支えられる。

  • マグネシウム合金の精密鋳造・加工:数量 1,000(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.05(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 47 億円・営業利益 4 億円。推計数量800トンから1000トンへ1.25倍。価格は0.0349525から0.04685へ約1.34倍。世界的な支配的シェア獲得は想定しない。
  • アルミニウム合金の精密鋳造・加工:数量 2,275(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.03(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 62 億円・営業利益 5 億円。推計数量1800トンから2275トンへ約1.26倍。単価は約1.34倍。大手との価格競争を残す。
  • 金型・その他加工・樹脂事業:数量 330(換算受注案件数(件/年、1件は一定規模の金型・加工契約、推定))× 価格 0.05(換算1案件当たり平均売上高(億円/件))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。折居技研の取得前売上約8億円を重要な数量増加要因として含む。さらに金型・加工案件が少し広がる。

倍率:資本コストk9%。10年後ROE=6.4÷72.5=8.83%でkをわずかに下回るため、成長による追加価値を認めず、正当化PERの上限1÷k=11.11倍を採用した。過去の市場PERやPBRは使わない。純利益6.4億円は営業利益9.95億円から借り換えによる税前利息負担増約1億円と法人税等を引いた水準。自己資本72.5億円は当初35.5億円に期間利益約46億円を加え、還元9億円を控除する整合的な概算である。

確率:マグネシウム・アルミニウムの物理的需要は残るが、大幅な世界シェア獲得を裏付けるデータはない。既存拠点の稼働改善と取得済み2社の事業定着を中心にし、追加買収の成功を限定的に数えた。下に寄せる理由:2026年3月期の減益と2027年3月期第1四半期の利益悪化、買収による純負債の増大があるため、上振れよりも統合の遅れを厚く考慮する。

やや悲観 27% 買収統合が遅れ、利益が資本の増加に追い付かない 利益 2 億円 · PER 6.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 736 円16 億円

マグネシウム部品では、カメラ向けの一部案件は維持できるものの、自動車向けの弱さが続く。競合の生産能力が増え、STGは値上げより受注の確保を優先する。マグネシウムの出荷重量は現在からほとんど増えず、価格も物価上昇を十分には転嫁できない。生産品目が入れ替わるたびに、金型と品質確認の費用が発生する。

マレーシアのアルミ事業は一定の成長を続けるが、大口顧客の新製品立ち上げが遅れ、工場の稼働率は高まらない。E-Castの設備を使い切れず、両社で重複する人員や管理費を削減するのにも時間がかかる。折居技研の樹脂事業は売上を維持する一方、金属事業との販売面での相乗効果は限られる。追加の買収を控えても、既存の借入金と設備更新への資金需要は残る。

連結売上は名目では現在を上回るが、営業利益は5億円台にとどまる。金利負担と税金を差し引いた純利益は2億円台となり、増えた自己資本に対して十分な利回りを生まない。配当は減益に応じて縮小し、自社株買いは実施しない。株価が優先株式の転換価額に届かないため優先株は転換されず、その優先権が普通株式の残余価値を圧迫する。会社は存続するが、株主から見て成長投資が報われなかった10年になる。

  • マグネシウム合金の精密鋳造・加工:数量 820(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.04(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。数量はほぼ横ばい。価格は10年間で約1.23倍と、物価上昇を下回る。
  • アルミニウム合金の精密鋳造・加工:数量 2,025(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.03(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 51 億円・営業利益 4 億円。数量は約1.13倍。値上げ余地と工場稼働率は中立より弱い。
  • 金型・その他加工・樹脂事業:数量 250(換算受注案件数(件/年、1件は一定規模の金型・加工契約、推定))× 価格 0.04(換算1案件当たり平均売上高(億円/件))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。取得済み樹脂事業は残るが、追加案件と買収相乗効果は限定的。

倍率:ROE=2.4÷51=4.71%でk9%を下回る。事業の稼ぐ力に対する上限は1÷k=11.11倍だが、普通株式に帰属しない未転換優先株式の償還請求権約5億円と、利益を生まない買収資産・工場の回収リスクを考慮し、普通株価値を純利益2.4億円の6.4倍=15.36億円とする。優先株が転換しないためholder_shareは1.0とし、希薄化と優先権を二重に数えない。

確率:既に買収によって負債が増え、2027年3月期第1四半期の利益率も低下した。新しい工場と顧客の統合が想定より難しく、売上は増えても利益が増えない可能性を高く見る。会社の事業計画も進捗遅れを明示している。

悲観 14% 顧客流出と買収失敗によって優良さを失う 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 706 円15 億円

主要なネットワークカメラ顧客が生産方式を変え、マグネシウムとアルミニウムの一部部品を他社に切り替える。STGが得意とする薄肉加工は残るが、売上規模の大きな案件を失う。国内の自動車関連も低迷を続け、カメラ・精密機器向けの代替受注だけでは埋められない。名目売上は10年前と大きく変わらなくても、物価上昇を差し引いた事業規模は大幅に縮小する。

マレーシアの工場では稼働率が落ち、設備の一部が遊休化する。顧客ごとの仕様に合わせた金型は、他社にそのまま売れない。折居技研を含む買収先との統合も失敗し、人員削減や製品整理に追われる。追加の借入れを避けるため成長投資を抑えるが、固定費と設備維持費はすぐには減らない。経営は買収事業ののれんと設備について減損を迫られる。

営業利益は赤字に転じ、利息負担を含む純利益も赤字となる。普通株配当は途中で停止し、資金は債務返済と必要最低限の設備更新に使われる。優先株式は普通株式に転換されず、残余財産に対する優先権を保つ。10年後の普通株式価値は継続事業の利益では説明できなくなり、換金できる資産から負債と優先権を差し引いた残りで判断される。これは一時的な不況ではなく、顧客との関係と加工技術の収益力を失った状態である。

  • マグネシウム合金の精密鋳造・加工:数量 650(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.04(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。主要顧客を失い数量は約19%減少。価格は物価を大きく下回る。
  • アルミニウム合金の精密鋳造・加工:数量 1,450(完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定))× 価格 0.02(出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む))→ 売上 33 億円・営業利益 0 億円。数量は約19%減少。工場の固定費が残り、営業利益率はほぼゼロ。
  • 金型・その他加工・樹脂事業:数量 200(換算受注案件数(件/年、1件は一定規模の金型・加工契約、推定))× 価格 0.04(換算1案件当たり平均売上高(億円/件))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。買収した樹脂事業も受注を減らし、金型更新と固定費が利益を圧迫する。

倍率:営業赤字と純損失の状態では継続利益にPERを適用しない。現在の自己資本35.5億円から、のれん約7.0億円、未転換優先株式の先取分5.0億円、工場・在庫等の換価損8.5億円を控除して、普通株主の換価可能価値15.0億円とした。現在の自己資本に対する比率は約0.4225倍である。過去の市場PBRの底から求めた値ではない。10年後の減損後自己資本20億円にこの倍率を掛け直さない。

確率:AXIS COMMUNICATIONSなど大口顧客の比率が高く、一つの製品世代の変更でも業績が大きく動き得る。純負債が時価総額を上回り、買収のれんと優先株式の先取権もあるため、構造的な失敗に無視できない確率を与える。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

マグネシウム合金の精密鋳造・加工

薄肉で軽いマグネシウム筐体を、金型、鋳造、切削、表面処理まで一貫して造る。高付加価値カメラ、自動車、精密機器などに供給する。

数量完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定)価格出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む)売上営業利益
今 2026/03 800 0.03 28 2
10 年後 中立 1,000 0.05 47 4

取り方:2026年3月期有報に記載されたマグネシウム売上構成比41%を、添付factsの連結売上68.2億円に適用し、27.962億円とした。会社は販売重量・部品別単価を開示していない。日本ダイカスト協会の2025年全材質平均の生産金額は約792円/kgだが、これは鋳造段階の業界平均でありSTGの仕上げ済み精密部品と同一ではない。加工・仕上げを含む仮の取引単価3495円/kgを採用すると約800トンになる。800トンは開示実績ではなく、重量と加工単価の感応度を確かめる推計である。マグネシウム単独の世界市場シェアは確認できない。営業利益1.6億円は全社利益を分析上で配賦した仮定であり、会社のセグメント開示ではない。

アルミニウム合金の精密鋳造・加工

マレーシアのSTXとE-Castなどを軸に、ネットワークカメラ、電子機器、精密機器向けのアルミ鋳造・機械加工品を量産する。

数量完成加工品の換算出荷重量(トン/年、推定)価格出荷重量1トン当たり売上高(億円/トン、加工・表面処理代を含む)売上営業利益
今 2026/03 1,800 0.02 37 2
10 年後 中立 2,275 0.03 62 5

取り方:2026年3月期有報のアルミニウム売上構成比54%を、添付factsの連結売上68.2億円に適用し36.828億円とした。会社から重量・販売単価の開示はない。国内ダイカスト全材質の平均約792円/kgは一次鋳造の比較物差しにとどまるため、精密切削・塗装等を含む想定単価を2046円/kgとし、換算出荷重量1800トンと推計した。この重量を国内生産統計の分子として市場シェアを計算することはできない。マレーシアなど海外生産が大きく、製品の加工深度も異なるためである。営業利益2.0億円は連結営業利益との整合を取るための分析上の配賦である。

金型・その他加工・樹脂事業

金型、試作、その他の精密加工に加え、2026年8月取得の折居技研が手がける精密プラスチック成形を含めた将来の事業群。

数量換算受注案件数(件/年、1件は一定規模の金型・加工契約、推定)価格換算1案件当たり平均売上高(億円/件)売上営業利益
今 2026/03 100 0.03 3 0
10 年後 中立 330 0.05 15 2

取り方:全社売上68.2億円から、開示比率に基づくマグネシウム27.962億円とアルミ36.828億円を引いた残差3.41億円。会社は残り5%の製品明細や数量を開示していないため、金型・加工契約等を100件の換算案件、1件341万円とする便宜的な数量仮定を明示した。実際の受注件数や単価を示すものではない。2026年8月取得の折居技研の売上約8億円は2026年3月期のこの基準額には含まれておらず、将来の案件数量増加として別途表現する。樹脂事業の市場シェアも算出不能であり、取得会社の実績売上と国内精密成形の競争環境を数量見通しの根拠とする。

リスクと懸念

M&Aと増分投資利益率

E-Castと折居技研の買収で事業の幅は広がったが、買収代金、借入金、管理費を負担した後にどれだけ利益が残るかが未確定だ。会社は追加の買収も成長の中心に据えている。取得した売上が増えても、投下資本利益率が資本コストを下回れば普通株主の価値は減る。買収先ごとの営業利益、のれん、設備投資額、営業キャッシュフローを分けて確認する必要がある。

大口顧客と製品世代への集中

AXIS COMMUNICATIONS、三菱電機、CBC、甲信工業の4社で売上の約60%を占める。ネットワークカメラ向けの成長は魅力的だが、顧客の新製品の部品構成、製造場所、材料の選択によって受注が変わる。切り替え費用はあるものの、次世代機の設計開始時には取引先が変わり得る。最も大きい顧客の採用品目と発注数量の変化が、長期の価値を左右する。

借入金の借り換えと資金繰り

2026年3月期の純有利子負債29.4億円は、基準時価総額24.2億円を超える。借入金の金利は短期の低金利のままではなく、借り換えを通じて上がる。添付briefの試算では10年後の利払いの悪化は税前約1億円であり、営業利益の薄い会社には無視できない。さらに2026年8月の折居技研買収に伴う資金負担は、基準決算時点の純負債額には十分反映されていない。

優先株式の先取権と希薄化

日本政策投資銀行に発行したA種優先株式5億円には年率6.3%の優先配当と普通株式への転換権がある。成長が成功して転換が進めば、現在の普通株主の持分が薄まる。成長が失敗して転換されなければ、優先配当と償還・残余財産の優先権が普通株主に不利に働く。会社全体の時価総額と現在の普通株主に帰属する価値は同じではない。

工場の更新投資と減価償却の錯覚

2026年3月期のEBITDAと営業利益の差は約4.7億円である。既存設備の会計上の償却は昔の取得原価で決まる一方、新しい鋳造機や加工機を買う代金は物価・建築費の上昇を受ける。営業利益が増えても更新投資がそれ以上に増えれば、株主に残る現金は少ない。金型の追加や工場の自動化が利益の伸びと見合っているかを確認する必要がある。

価格競争と材料・用途の置き換え

アルミニウムダイカストには国内外の大手競合が存在し、顧客は調達価格を比較できる。マグネシウム部品には技術的な優位があっても、採用先の設計が樹脂、アルミ、大型一体鋳造へ移れば数量は減る。材料価格や人件費の上昇をすべて販売価格に転嫁できたという実績も確認できない。物価上昇だけで売上が増えても、加工の付加価値が維持される保証はない。

海外拠点の経営・為替・品質管理

日本、中国、タイ、マレーシアに工場を持つことは顧客対応力になる反面、各国の賃金、規制、電力料金、品質管理の違いを抱える。顧客の生産地変更や現地の人員不足が稼働率を下げる場合もある。本分析ではドル円150円を全筋書きで固定しており、為替変動による一時的な増益を価値の根拠にしていない。海外の利益が現金として親会社に戻るかも重要である。

今後の分かれ目

E-CastとSTXの合計売上が伸びるだけでなく、マレーシア事業の営業利益率と営業キャッシュフローが継続的に改善したら
買収後の増分資本が利益を生んでいる証拠になる。中立のアルミ事業利益率を見直し、やや楽観側の確率を引き上げる。
2028年3月期の売上120億円・営業利益12億円に近づき、そのうち買収事業の利益4億円がのれん償却後に確認できたら
会社の中計を単なる希望でなく実績に近い目標として再評価する。利益の改善が追加借入れや大幅増資に依存していないことも同時に確かめる。
AXIS COMMUNICATIONSなど上位顧客の売上が二期続けて大きく減り、代替顧客の受注が埋められなかったら
精密加工の堀が新しい製品世代に引き継がれていない可能性が高い。マグネシウムとアルミの数量を引き下げ、やや悲観・悲観の重みを増やす。
新たな買収のたびに純有利子負債が増え、営業利益と営業キャッシュフローの伸びがそれを下回ったら
資本配分の規律が弱いと判断する。売上目標の達成だけでは価値を引き上げず、買収後のROICと優先株式の負担を重く見る。
A種優先株式の普通株転換や新株予約権の行使が進み、普通株式数が中計想定235万株を超えたら
会社全体の利益が変わらなくても現在株主の取り分が減る。発行後株数と実際の払込金額を照合し、holder_shareと普通株主の本質価値を更新する。
自動車向けの低迷とマレーシア大型案件の遅れが解消せず、営業利益率が数期にわたって5%以下にとどまったら
中計の営業利益率10%を長期の根拠から外す。固定費の高止まりと償却負担を反映し、中立をやや悲観側へ近づける。
更新設備への支出を差し引いたフリーキャッシュフローが安定して黒字となり、純有利子負債が明確に減少したら
利益の質と資金繰りの危うさが改善したと評価する。借金の目安を見直すとともに、長期に株主へ戻せる現金の割合を再検討する。

見ておくもの

  • E-CastとSTXを合わせたマレーシア事業の売上高・営業利益・稼働率
  • AXIS COMMUNICATIONS、三菱電機、CBC、甲信工業の売上構成比と採用製品の変化
  • マグネシウム部品の売上高と、会社の中期計画にある40億円目標への進捗
  • 2028年3月期の連結売上120億円、営業利益12億円、営業利益率10%の達成度
  • 買収先別の取得価額、のれん、償却後営業利益、追加設備投資、営業キャッシュフロー
  • 純有利子負債、支払利息、短期借入金の借り換え条件
  • 日本政策投資銀行のA種優先株式の転換・償還状況と普通株式の完全希薄化後株数
  • 営業キャッシュフローから維持・更新設備投資を引いた現金創出額
  • 日本ダイカスト協会の材質別生産数量とマグネシウムの受注動向
  • 国内自動車向け部品の需要とネットワークカメラ向け部品の受注動向

倍率と資本コストの決め方

評価の出発点は株価ではなく、2026年3月期の製品構成と顧客、国内ダイカスト生産統計、取得済み企業の事業規模である。マグネシウムとアルミニウムは出荷重量と加工単価を分け、物価上昇は単価だけに反映した。重量と単価は開示実績ではなく、業界平均と加工深度の違いを踏まえた仮定である。シェアが開示されていない部分に偽の精密さを持ち込まず、上振れは顧客獲得と工場の稼働率改善、下振れは顧客喪失と買収失敗で表した。

資本コストは9%。中立のROEがそれを下回るため、正当化PERは稼ぐ力の上限である約11.11倍とした。楽観側は10年後のROEと、超過利益の半分が残る増分ROICから正当化PERを求めた。現在や過去のPER、PBRは倍率の根拠にしていない。借入金の金利上昇は純利益に反映し、M&Aリスクを資本コストに重ねていない。

2036年の自己資本は、現在の自己資本に10年の利益を加え、還元を差し引く考え方で整合させた。のれんの償却と固定費、新しい設備の取得原価の上昇を考慮し、既存設備の償却費を単純に物価で1.34倍していない。会計基準のリース表示変更があっても、10年後の収益力は現在と比較できる営業費用の考え方にそろえている。

悲観の床は現在の自己資本からのれん、優先株式の先取分、工場設備・在庫の換価損を控除した15億円とし、過去のPBRの底は使わない。基準時価総額は1140円と212万5476株から求めた約24.23億円である。5筋書きの将来時価総額と10年間の還元を、各筋書きの既存株主取り分を反映して資本コスト9%で割り引くと、確率加重の現在価値は約33.3億円、差は約プラス37.5%となる。折居技研の取得は2026年3月期の財務に含まれないため、基準の数字に遡及して加算していない。

資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、営業利益の変動、顧客側に偏る値決め力、純負債の重さによる合計1.5%を加える。M&A失敗や特定顧客喪失のリスクは資本コストにさらに上乗せせず、数量、利益率、確率で表す。

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読んだ資料

  1. STG 2026年3月期有価証券報告書(事業内容、製品構成、主要顧客、資産、借入金、優先株式)
  2. STG 2026年3月期決算説明資料(買収後の財務、海外拠点、中期計画の進捗、キャッシュフロー)
  3. STG 2025年11月13日 中期経営計画目標値の修正(120億円、12億円、買収内訳、株主還元)
  4. 日本ダイカスト協会 ダイカスト生産統計・2026年度受注動向
  5. Meridian Lightweight Technologies 公式資料(マグネシウム部品の生産能力・規模比較)
  6. STG 2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月12日)
  7. STGによる折居技研の子会社化(2026年8月28日、取得価格・対象会社業績)

分析日 2026-10-22