結論
大紀アルミニウム工業所は、アルミのスクラップから自動車部品用の合金をつくる会社だ。売上の98%がこの二次合金で、半分は海外、タイ・インドネシア・インドなどで稼ぐ。
筆者の結論は割高だ。今期の営業利益は175億円の予想で、前期の2.4倍になる。ただ中身は、アルミ相場の上昇で製品価格を引き上げた分が大きい。2022年と同じ相場高の山で、平常の稼ぐ力ではないと筆者は見る。
事業の性質が効いている。売るのは合金の塊で、スクラップの仕入値との差、つまり値ざやが利益になる。残るのは売上の2%前後だ。値ざやは需給で決まり、自分では決められない。
運転資金も重い。純有利子負債は650億円で、時価総額とほぼ同じだ。大半は在庫と売掛金をまかなう借入で、相場が上がるほど膨らむ。金利が上がれば利益が削られる。
10年で見ると、中立の営業利益は今期予想の7割ほどに落ち着く。国内は車の鋳物部品の減少で細り、東南アジアとインドが伸びる。それでも自己資本の積み上がりに利益が追いつかず、ROEは資本コストに届かない。会社の努力を否定する話ではない。払う値段の問題だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の問いは単純だ。相場が変わっても残る稼ぎがあるか。合金は消えない。車が走る限り、アルミの部品は要る。ただ、儲けは値ざやとトン数の掛け算で、値ざやは自分で決められない。
株主が自由に使えるオーナー利益は、見かけの利益よりかなり小さい。相場が上がると、在庫と売掛金が膨らみ、借入が増える。前期の純有利子負債は650億円で、営業利益の9倍にあたる。利益はまず運転資金に消える。
今期の175億円は山と筆者は見る。2022年にも営業利益は204億円に跳ね、2年後には46億円まで落ちた。相場の上昇で製品価格を引き上げた益を、平常の利益とは見ない。
経営は手堅い。拠点を海外へ30年かけて広げ、還元の目安も示した。買収で価値を壊した形跡は見えない。ただ、インドのように、結果が出るまで時間のかかる投資もある。
安全域は薄い。今の値段は、今期の山が続くことに近い前提になる。売上の2%しか残らない商売で、わからない部分も多い。払う値段に見合う余裕はない、と筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は二次合金地金の製造販売だ。アルミ製品の切りくずや使用済みの部品(スクラップ)を溶かし、成分を整えて、塊(インゴット)にして売る。客は自動車部品メーカーが中心で、エンジン部品や変速機の部品などを金型に流し込むダイカストの原料になる。
会社は国内最大手を名乗る。国内の二次合金の生産は年69万トンほどで、大紀の国内分はその3分の1前後と筆者は推定する。海外は11か国に拠点がある。タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドで合金をつくり、中国と米国には販売会社を置く。タイでは日本軽金属と合弁を組む。
稼ぎ方は値ざやだ。スクラップを仕入れ、合金の値段で売る。アルミの国際相場(LME)が上がると売値も上がり、在庫の値上がり益が出る。相場が下がれば逆になる。利益は相場の水準ではなく、仕入れと売値の差と、扱うトン数で決まる。
ほかに、ダイカスト製品(タイの聖心製作所など)とアルミ溶解炉の製造販売がある。売上の2%足らずだが、利益率は10%近く、利益の1割弱を占める。溶解炉は、合金をつくる自社の技術を外に売る事業だ。2026年5月にはインドの政府系機関から二次合金のプラントを受注した。
足もとは海外が柱になった。売上の半分は海外の客で、タイ、インドネシア、中国が大きい。インドは立ち上げから日が浅く、収益の改善が課題と報じられている。
優良さと弱いところ
筆者がまず見るのは、値段を自分で決められるかどうかだ。この会社は決められない。合金の値段はアルミ相場に連動し、加工の上乗せ、つまり値ざやは需給で決まる。堀、つまり他社がまねできない強みは浅い。
強みは規模と調達力だ。スクラップの集荷網は、集める量が多いほど有利になる。国内最大手で、東南アジアには30年以上前から拠点を広げてきた。拠点が多いほど、スクラップの質と値段の差を取りやすい。ここは筆者も評価する。
もう一つの強みは溶解炉の技術だ。自社で炉を設計し、外にも売る。炉の効率は、1トンあたりの燃料費と歩留まりに効く。合金をつくる会社が、炉も自分でつくれる意味は大きい。
弱みは資本の稼ぎの低さだ。過去10年のROEは中央値で14%ある。ただ、これは2022年までの山が押し上げた数字だ。直近の3年は1〜5%に落ちた。営業利益率も2%前後で、利益の波が大きい。
資本配分は堅実だ。還元は配当性向30%程度とDOE(株主資本配当率)3%程度を目安にし、2024年には自社株買いも実施した。一方、インドのように立ち上げに時間がかかる拠点もある。海外拡大の採算は、まだ読み切れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内市場は細っている。二次合金の国内生産は2025年に69万トンで、5年ぶりに70万トンを割った。主力のダイカスト向けが落ち、中国産などの輸入品に置き換わったとの見方がある。
日本の二次合金の需要は、輸入を含めると年150万トンある。ダイカスト向けが約90万トン、鋳物向けが約34万トンだ。業界団体は2026年度の需要を前年度比1.7%増と見るが、国内で作る分は逆に細っている。つまり、輸入品との競争が強まっている。
車の電動化は両刃の剣だ。エンジン部品や変速機は減る。一方で、トヨタは2026年のEVで、日産は2027年度から、ギガキャスト(車体の大きな部品を一体で鋳造する技術)を使う。使うアルミの量は増え、スクラップから作る合金の需要を押し上げる可能性がある。ただ、大型鋳造に耐える品質の合金を安定して出せるかは、各社の腕しだいだ。
海外は伸びる。タイとインドネシアは日本車の生産拠点で、日系の部品メーカーとともに合金の需要も増える。インドは自動車の市場が大きくなっている。ただ、中国勢も進出し、値ざやは削られやすい。
競合は、国内では日本軽金属ホールディングスが2位とされる。海外は現地の合金メーカーと中国勢だ。アルミ相場は2026年に4年ぶりの高値になった。中国の生産上限と中東の供給途絶が背景にある。高値は在庫益と値上げで利益を押し上げるが、戻れば逆に出る。
脱炭素は追い風だ。日本は新地金を全量輸入していて、再生アルミは製錬よりエネルギーが少ない。だが、この追い風が値ざやを厚くするかは別の話だ。
資本政策と M&A
還元には目安がある。配当性向30%程度とDOE 3%程度で、自社株買いも検討すると中期経営計画に書いた。2024年8月には上限11億円の自社株買いを実施している。今期は増配の見通しだ。
設備投資は2024〜2026年度の3年で136億円。海外拠点の増強とリサイクル設備が中心だ。借金の重さは、投資よりも運転資金から来る。純有利子負債は650億円、自己資本比率は43%。
株主は分散している。自己株口が9%、有限会社山本エステートが8%弱、信託銀行が7%台だ。支配株主はいない。参考にすると、10年以内にTOB(株式の公開買い付け)が起きる確率を、外部の試算は2割弱と置く。買う側から見ると、利益の波が大きく、運転資金の借入が重いのが気がかりになる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
海外の合金需要は確実に増える。タイ・インドネシアは日本車の生産拠点で、インドは自動車市場が拡大している。大紀は30年以上前から現地で根を張り、日系の部品メーカーの増産と一緒に伸びる。インドの政府系機関から二次合金プラントを受注したように、溶解炉という技術も外に売れる。
ギガキャストは追い風になる。トヨタが2026年のEVで、日産が2027年度から採用する。車体の大型部品を一体で鋳造すると、使うアルミの量は増え、スクラップから作る再生合金の出番も増える。国内最大手として、品質の高い合金を安定して出せる強みが生きる。
脱炭素も味方する。再生アルミは新地金よりエネルギーが少なく、自動車メーカーも再生材の比率を上げたい。アルミ相場は中国の生産上限と中東の供給途絶で高止まりしやすく、値上げも通しやすい。今期の営業利益175億円は、その力の表れだ。
資本政策も前向きだ。配当性向30%とDOE 3%の目安を示し、自社株買いも実施した。時価総額650億円は、純資産763億円を下回る。
慎重な見方
今期の営業利益175億円は、アルミ相場の上昇で製品価格を引き上げた益が大きい。2022年にも営業利益は204億円に跳ね、2年後には46億円まで落ちた。同じ山の形だ。直近3年のROEは1〜5%で、営業利益率は2%に届かない。これが平常の姿だ。
値ざやは需給で決まる。自分で値段を決められず、客は大手の部品メーカーだ。国内の二次合金生産は2025年に5年ぶりに70万トンを割り、中国産などの輸入品に置き換わっている。ダイカスト向けは落ちている。
運転資金が重い。純有利子負債は650億円で、時価総額とほぼ同じだ。相場が上がるほど在庫と売掛金が膨らみ、借入が増える。金利が上がれば、利払いが利益を削る。相場が戻れば、在庫の値下がり損も出る。
電動化でエンジン部品は減る。ギガキャストは、車の会社が自前の合金設備を持てば、外部の合金の需要を逆に減らす。インドの拠点は立ち上げが遅れている。海外の拡大が、利益に結びつく保証はない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分には中身がある。海外の需要は確かに増えるし、ギガキャストも追い風になりうる。ただ、利益の質と運転資金の重さでは、慎重な見方が勝つ。
10年先でも、ROEが資本コストを超える姿は描きにくい。値ざやが物価に沿って上がっても、売上の2%台しか残らず、利払いと運転資金に削られる。確率は、やや強気までを2割台半ば、やや弱気と弱気を4割弱に置き、中立にいちばん厚く置いた。国内の需要が実際に細り始めているので、弱気側に少し寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,449 円574 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 494 円195 億円)。 今の値に割り戻すと 951 円376 億円、今との差 −40.4%、 期待の年率 +2.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,033 円1,200 億円 | 910 円360 億円 | +147.0% | +9.5% | 237 円94 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,282 円903 億円 | 682 円270 億円 | +85.7% | +6.4% | 534 円211 億円 |
| 中立 | 38% | 1,733 円686 億円 | 556 円220 億円 | +43.4% | +3.7% | 870 円344 億円 |
| やや悲観 | 25% | 536 円212 億円 | 329 円130 億円 | −45.8% | −5.9% | 216 円86 億円 |
| 悲観 | 13% | 493 円195 億円 | 177 円70 億円 | −58.0% | −8.3% | 87 円34 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,449 円574 億円 | 494 円195 億円 | +21.8% | +2.0% | 1,943 円769 億円 |
今の株価時価総額 1,596 円632 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 海外が想定以上に伸び、大型鋳造が追い風になる 利益 105 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,033 円1,200 億円
国内の落ち込みが小さく、海外が想定以上に伸びる。インドとベトナムの拠点が軌道に乗り、東南アジアの日系部品メーカーの増産にも乗る。海外の出荷は10年で6割以上増える。
車体の大型部品を一体で鋳造するギガキャストが広がり、スクラップから作る合金の需要を押し上げる。大型鋳造に耐える品質の合金を安定して出せる会社は少なく、値ざやも厚くなる。国内のダイカスト向けの減少は、この分でほぼ埋まる。
アルミ相場は高めで推移し、合金の値付けにも余裕が出る。溶解炉の外販も伸びる。それでも利益は売上の3%台にとどまる。運転資金の借入が相場とともに増え、利払いが利益を削る。最良の10年だが、薄い商売であることは変わらない。
- 国内の二次合金地金:数量 228(出荷量(千トン・年))× 価格 9.68(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,206 億円・営業利益 57 億円。出荷 3%減、価格 1.40 倍、利益率 2.6%
- 海外の二次合金地金:数量 404(出荷量(千トン・年))× 価格 9.30(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 3,757 億円・営業利益 124 億円。新拠点とインドの伸びで出荷 1.65 倍、利益率 3.3%
- ダイカスト製品・溶解炉:数量 5.6(出荷量(千トン換算。ダイカスト製品の重量に溶解炉の売上を同じ重さの製品とみなして足した値))× 価格 20(1 千トンあたり売上(億円・名目。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 110 億円・営業利益 12 億円。出荷 1.4 倍、利益率 11%
倍率:事業の純利益 105 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 1,200 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の落ち込みが小さく、海外が想定以上に伸び、大型鋳造向けの需要が立ち上がり、値ざやも厚くなる、と全部がそろう必要がある。実現しても、薄い値ざやと重い運転資金は変わらない。
やや楽観 18% 海外の伸びが国内の減少を上回る 利益 79 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,282 円903 億円
海外の伸びが国内の減少を上回り、全体の出荷は1割ほど増える。インドの拠点が黒字を安定させ、タイとインドネシアの工場も稼働率を上げる。
国内は電動化でエンジン部品が減るが、輸入品への置き換わりは限られる。ギガキャスト向けの合金は少しずつ売れ始める。値ざやは物価に沿って上がり、利益率は2%台半ばに乗る。
会社が掲げる配当性向30%とDOE 3%は守られ、自社株買いも時々入る。ただ運転資金の借入は相場とともに膨らみ、金利も上がるので、利益のかなりの部分が利払いと在庫の積み増しに消える。ROEは6%台で、資本コストには届かない。
- 国内の二次合金地金:数量 221(出荷量(千トン・年))× 価格 9.47(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,093 億円・営業利益 48 億円。出荷 6%減、価格 1.37 倍、利益率 2.3%
- 海外の二次合金地金:数量 368(出荷量(千トン・年))× 価格 9.10(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 3,343 億円・営業利益 99 億円。出荷 1.5 倍、利益率 2.95%
- ダイカスト製品・溶解炉:数量 4.8(出荷量(千トン換算。ダイカスト製品の重量に溶解炉の売上を同じ重さの製品とみなして足した値))× 価格 20(1 千トンあたり売上(億円・名目。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 94 億円・営業利益 10 億円。出荷 1.2 倍、利益率 10.5%
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 903 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東南アジアとインドの成長は確かで、会社の計画どおりに進む筋書き。ただ値ざやは市場が決めるため、会社が自力で伸ばせる範囲は限られる。
中立 38% 中立:海外は伸びるが、値ざやは薄いまま 利益 60 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,733 円686 億円
国内は細り、海外が伸びる。10年で国内の出荷は1割減り、海外は3割半ば増える。全体では1割強の増加で、物価の分だけ売上は大きくなる。
今期の利益は、アルミ相場の上昇で製品価格を引き上げた分がふくらんでいる。この山は続かない。値ざやは1トンあたり、今の水準に物価の上昇を足した程度に落ち着き、営業利益は今期予想の7割ほどにとどまる。2022年の山のあとも、利益は半分以下に戻った。
金利が上がるため、利払いが利益を削る。借入は運転資金が中心で、売上とともに増える。還元は利益の3分の1ほどで、自己資本は積み上がり、ROEは5%前後にとどまる。堅い素材商社に近い10年になる。
- 国内の二次合金地金:数量 212(出荷量(千トン・年))× 価格 9.27(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,960 億円・営業利益 39 億円。出荷 10%減、価格 1.34 倍、利益率 2.0%
- 海外の二次合金地金:数量 331(出荷量(千トン・年))× 価格 8.90(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,943 億円・営業利益 78 億円。出荷 1.35 倍、価格 1.34 倍、利益率 2.65%
- ダイカスト製品・溶解炉:数量 4.2(出荷量(千トン換算。ダイカスト製品の重量に溶解炉の売上を同じ重さの製品とみなして足した値))× 価格 20(1 千トンあたり売上(億円・名目。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 82 億円・営業利益 8 億円。出荷 1.05 倍、利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 686 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は細り海外は伸びるという今の傾向が続き、値ざやは物価に沿って上がる筋書き。2022 年の山のあとに利益が半分以下へ戻った例から、今期の水準は平常でないとみる。
やや悲観 25% 輸入合金に押され、国内が2割減る 利益 29 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 536 円212 億円
国内の出荷が2割近く減る。中国などからの輸入合金が増え、日本の部品メーカーが海外で現地調達に切り替える。電動化でエンジン周りの部品も減り、ダイカスト向けの需要が細る。
海外は伸びるが、中国勢との競り合いで値ざやが薄い。インドの拠点は思うように利益が出ず、重荷になる。アルミ相場も今の高値から落ち、在庫の値上がり益は消える。
利益率は1%台に沈み、営業利益は今期予想の半分以下になる。金利が上がり、借入の利払いが利益を食う。還元は絞られ、ROEは3%を割る。会社は壊れないが、稼ぐ力は伸びない。株主にとっては、10年たっても報われない時間になる。
- 国内の二次合金地金:数量 193(出荷量(千トン・年))× 価格 8.85(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,706 億円・営業利益 27 億円。出荷 18%減、価格 1.28 倍、利益率 1.4%
- 海外の二次合金地金:数量 282(出荷量(千トン・年))× 価格 8.50(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 2,395 億円・営業利益 50 億円。出荷 1.15 倍、価格 1.28 倍、利益率 1.9%
- ダイカスト製品・溶解炉:数量 3.6(出荷量(千トン換算。ダイカスト製品の重量に溶解炉の売上を同じ重さの製品とみなして足した値))× 価格 18(1 千トンあたり売上(億円・名目。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 63 億円・営業利益 5 億円。出荷 1割減、利益率 7%
倍率:ROE 2.8% は k 8.75% を大きく下回り、PER 上限は 1÷k=10.5 倍。やや悲観は稼ぐ力の弱さを見て、上限の 7 割の 7.37 倍に置いた。
確率:国内の二次合金生産は 2025 年に 5 年ぶりに 70 万トンを割り、輸入品への置き換えが始まっている。アルミ相場が戻れば在庫益が消える。2023〜2025 年に利益が 46〜48 億円まで落ちた型。
悲観 13% 構造的に負ける:中国勢と内製化で値ざやが消える 利益 −22 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 493 円195 億円
合金の商売が構造的に負ける。中国の安い合金と部品の輸入が国内の需要を奪い、車の電動化とギガキャストの内製化で、外部から合金を買う量そのものが減る。
海外でも現地の合金メーカーと中国勢に値ざやを削られる。インドは赤字から抜けられず、東南アジアも稼働率が落ちる。運転資金の借入は残るのに、利益が出ない。金利が上がり、赤字が続く。
工場の減損が出て、自己資本は半分近くになる。配当は初めの数年で止まり、その分は手持ちの資産の売却と借入で払う。株主に残る価値は、稼ぐ力ではなく、在庫や売掛金などの売れる資産から借金を引いた額で測るしかない。アルミ相場が崩れた年に、在庫の値下がり損が重なる。
- 国内の二次合金地金:数量 165(出荷量(千トン・年))× 価格 7.95(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,308 億円・営業利益 4 億円。出荷 3 割減、価格 1.15 倍、利益率 0.3%
- 海外の二次合金地金:数量 233(出荷量(千トン・年))× 価格 7.64(1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 1,778 億円・営業利益 11 億円。出荷 5%減、価格 1.15 倍、利益率 0.6%
- ダイカスト製品・溶解炉:数量 2.8(出荷量(千トン換算。ダイカスト製品の重量に溶解炉の売上を同じ重さの製品とみなして足した値))× 価格 16(1 千トンあたり売上(億円・名目。万円/トンの 10 分の 1))→ 売上 45 億円・営業利益 1 億円。出荷 3 割減、利益率 3%
倍率:利益から倍率を出さず、売れる資産から借金を引いた 190 億円を、今の自己資本 763 億円に対する倍率(0.25 倍)で表した。減損後の自己資本は 480 億円。EV ÷ 営業利益は借金(運転資金)が残る一方で営業利益が小さいため 53 倍と高いが、稼ぐ力がほぼ無い筋書きなので利益の倍率では見ず、売れる資産から借金を引いて見た。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.4062 倍・時価総額 195 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:輸入合金の増加・電動化・大型鋳造の内製化・海外拠点の不調が重なる複合の筋書き。過去 20 年に赤字の期が 3 回あり、売上の 2% に満たない利益の事業には、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の二次合金地金
国内の自動車部品メーカーなどに、スクラップから作る鋳造・ダイカスト用のアルミ合金地金を売る。
| 数量出荷量(千トン・年) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 235 | 6.92 | 1,625 | 28 |
| 10 年後 中立 | 212 | 9.27 | 1,960 | 39 |
取り方:全体の販売量は 2025/03 期の 3 四半期累計が 349,827 トンで、年約 47 万トン。2026/03 期は約 48 万トンと推定し、国内を 235 千トン(国内の二次合金生産 69 万トンの 3 分の 1 前後)、海外を 245 千トンと置いた。1 トンあたり売上は全体で約 69 万円(売上 3,311 億円 ÷ 48 万トン)。営業利益は二次合金の 67 億円を、国内と海外に 28 億・39 億と推定して分けた(拠点別の開示は無い。海外はタイ・インドの値ざやが厚いとの会社説明から)。
海外の二次合金地金
タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピン・ベトナム・インドの拠点で合金地金をつくり、現地の日系部品メーカーなどに売る。
| 数量出荷量(千トン・年) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目。アルミ相場を含む。万円/トンの 10 分の 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 245 | 6.64 | 1,627 | 39 |
| 10 年後 中立 | 331 | 8.90 | 2,943 | 78 |
取り方:海外の客への売上は連結の 50.8%(約 1,681 億円。タイ 496・インドネシア 350・中国 212・その他 622)。その大半を海外拠点の合金と輸出の合金とみて 245 千トン・1 トン約 66 万円と推定。営業利益 39 億円は二次合金の 67 億円からの按分で、開示は無い。連結の調整(取引の相殺 -16 億円ほど)は売上から引いて置いた。
ダイカスト製品・溶解炉
タイなどのダイカスト製品の製造販売と、アルミ溶解炉の設計・製造・販売。
| 数量出荷量(千トン換算。ダイカスト製品の重量に溶解炉の売上を同じ重さの製品とみなして足した値) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目。万円/トンの 10 分の 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 15 | 58 | 6 |
| 10 年後 中立 | 4.2 | 20 | 82 | 8 |
取り方:「その他」の売上 58.5 億円・利益 5.66 億円(利益率 9.7%)。ダイカスト製品の重量の開示は無く、4 千トン・1 トン約 146 万円と推定(溶解炉の売上を含む換算)。
リスクと懸念
アルミ相場の反落と在庫益の消失
今期の利益は、相場の上昇で製品価格を引き上げた益と在庫の値上がり益を含む。中国の生産上限や中東の供給途絶が一時の事情なら、相場が下がり、益が消えて、在庫の値下がり損が出る。2022年の山のあとの落ち込みが前例だ。
重い運転資金と金利の上昇
純有利子負債は650億円で、時価総額とほぼ同じ。大半は在庫と売掛金をまかなう借入で、相場が上がるほど増える。借り換えのたびに金利が上がると、10年で利払いが16億円ほど増え、利益の薄さが目立つ。
国内の需要減と輸入品
国内の二次合金生産は2025年に69万トンで、5年ぶりに70万トンを割った。電動化でエンジン部品が減り、中国産などの輸入品に置き換わっている。国内の出荷が細れば、固定費の負担が重くなる。
大型鋳造と自動車メーカーの内製化
ギガキャストは需要を増やす一方、自動車メーカーが合金の溶解設備を自社で持てば、外から買う量は減る。大型鋳造に耐える合金の品質で劣れば、シェアを失う。
海外拠点の立ち上げ(インド)
インドの子会社は、収益改善が課題と報じられている。立ち上げに時間がかかる拠点で赤字が続けば、全体の利益を押し下げる。海外は売上の半分で、為替や現地の規制の影響も受ける。
中国勢の進出
中国の合金メーカーが東南アジアや輸出市場で価格を下げれば、値ざやが削られる。値ざやは1トン1〜2万円で、わずかな下落が利益を大きく減らす。
今後の分かれ目
- アルミ相場が今期の水準から3割以上下がったら
- 在庫の値下がり損と製品価格の引き下げで利益が落ちる。やや悲観側へ確率を寄せる。
- 営業利益が今期予想の175億円を上回って2期続いたら
- 値ざやの構造が変わった可能性がある。中立と楽観の利益率を見直す。
- 国内の二次合金の生産が65万トンを割って減り続けたら
- 輸入品への置き換えが進んだとみて、やや悲観の確率を上げる。
- ギガキャスト向けの合金を、量産車に大量に供給する契約が決まったら
- 国内の減少を補う材料になる。やや楽観側へ確率を少し移す。
- インドの子会社が黒字を安定させたら
- 海外の利益の見通しが固まる。海外の利益率を上げた筋書きを厚くする。
- 運転資金の借入が膨らみ、純有利子負債が営業利益の10倍を超えたら
- 金利上昇への弱さが表に出る。資本コストの借金の項目を見直す。
見ておくもの
- アルミ相場(LME)と、在庫益の大きさ(営業利益と相場の動きの差)
- 国内の二次合金の生産量と輸入量
- 海外の出荷量と、インド子会社の損益
- 純有利子負債と自己資本比率
- 自動車メーカーのギガキャスト採用の進み方
倍率と資本コストの決め方
今の株価を見る前に、国内・海外・その他の出荷量と1トンあたり売上を置いて10年を積み、次に資本コスト 8.75% と ROE から倍率を決めた。10年中立の ROE は 5% 前後で資本コストを下回るので、PER は上限 1÷k の 7.5 割に置いた。今の PER や PBR、過去の倍率には寄せていない。今期の利益は相場高の山とみて、10年の利益には持ち込まず、過去の平均的な 1 トンあたりの利益に物価を乗せて出した。日本基準のためリースは BS に載っていないが、店舗や大きな賃借はなく、2028/03 期からの新リース会計で形が変わっても、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.95→11.43 倍・やや楽観 PER 8.42→11.43 倍・中立 PER 7.89→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.0% を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.75%。