結論
東邦亜鉛は、鉛と銀の製錬、金属のリサイクル、電炉ダストなどの環境リサイクルを手がける非鉄金属の会社だ。かつては亜鉛製錬と海外鉱山が柱だったが、巨額の赤字で2025年から事業再生に入り、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(AP)の支援下にある。
筆者の結論は、今の時価総額は10年の本質価値を大きく上回る、つまり割高というものだ。理由は希薄化にある。ファンドが持つA種優先株とB種劣後株は、普通株への転換が進めば既存株主の取り分を約3分の1まで薄める。ここで言う時価総額147億円は、普通株だけの値である。
足元の業績は戻っている。2026年3月期は営業利益が67億円、純利益は48億円と黒字に転じた。ただし銀価格の上昇による在庫評価益と資産売却益で、約17億円の一過性が含まれる。会社は2027年3月期の純利益を35億円と見込む。
事業再生は順調に進んでいる。亜鉛製錬と海外鉱山の切り離しはほぼ終わり、不採算の撤退は完了したと会社は説明する。それでも純有利子負債は513億円と、自己資本の3.8倍だ。債務の返済に利益の大半が向かう間、普通株主への還元は期待しにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でこの会社を見る時、最初に確認するのは、誰のお金で事業が成り立っているかだ。純有利子負債は513億円で、自己資本の4倍近い。さらにファンドの優先株と劣後株が控え、普通株主の取り分は薄められる。持ち分が3分の1になる前提で、価値を見る必要がある。
事業の質は、加工料と金属相場に左右される製錬が中心だ。堀は弱く、足元の利益には銀の在庫評価益が含まれる。再生計画が順調でも、ここから先の利益は相場次第だ。永続する稼ぐ力があるとは言えない。
安全域は薄い。楽観の筋書きでさえ、ファンドの取り分を引いた普通株の価値は今の時価総額に届かない。借入の返済が進むほど、取り分の希薄化はさらに強まる。
経営は再生に向けて動いているが、株主に報いるのは再生が終わってからになる。普通株主として持つなら、希薄化と無配の覚悟が要る。
筆者がもう一つ重く見るのは、再生計画の後ろ盾が誰かという点だ。ファンドは出口を前提に動くため、会社の利益と普通株主の利益は同じ向きとは限らない。債権者とファンドの取り分が先に確定し、普通株は最後に残りを受け取る立場にある。
何で稼ぐ会社か
事業は四つに整理されている。中核は鉛と銀の製錬で、鉛鉱石や二次原料から地金を作る。金属リサイクルは、電子部品の廃材などから有価金属を回収する。環境リサイクルは、鉄鋼の電炉から出るダストなどを処理して亜鉛を取り出す。電子部材・機能材料は、電解鉄や亜鉛化合物などの材料を作る。
稼ぎの仕組みは加工賃と相場の二つだ。製錬は鉱石を買って金属を売るため、鉱石を処理する対価の加工料(TC/RC)と、金属の相場が利益を決める。リサイクルは廃棄物を引き取る処理料と、回収した金属の売却益が収入になる。2026年3月期は売上1,256億円、営業利益67億円だった。
大きな再編を経て、会社の姿は変わった。2024年7月にオーストラリアのエンデバーとラスプの2つの資源事業を売却して切り離した。亜鉛製錬も撤退・再編を進め、売上はほぼゼロに近づいた。残務の費用は2026年3月期にかけて出ている。
2025年9月には、鉛・銀製錬の操業トラブルと小名浜製錬所の火災が重なり、通期の見通しを下げた。その後、銀価格と為替が追い風になり、期末の業績は上方修正された。社名は2027年4月に「東邦メタリクス」へ変わる予定だ。
優良さと弱いところ
強みは、使用済み素材から有価金属を回収する技術と、許可を要する環境処理の事業を持つことだ。電炉ダストの処理や金属リサイクルは、廃棄物の収集・処理に許可が要り、規制が参入を絞る。製錬の設備も、新たに作るのが難しい資産である。
しかし、堀として強くはない。製錬は鉱石の加工料と金属相場が外から決まる商売で、会社は値決めの主導権を持たない。加工料の条件が悪化する局面(TC/RCの悪化)では、設備を動かしても利益が出ない。筆者は堀を弱いとみる。
資本効率は、ここ数年はマイナスの時期が長かった。過去の営業利益率は赤字から15%まで幅が大きく、10年の中央値は7%台のROEだった。2024年3月期は純損失464億円で、自己資本は27億円まで縮んだ。財務の脆さは際立つ。自己資本比率は14%、営業利益は支払利息の5.6倍しかない。
経営の質は、再生計画の実行力で判断する。ファンド出身の人材を入れ、社長交代と社名変更を控える。一方で、会計処理の誤りで決算を訂正した経緯もあり、内部管理の向上は途上だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
非鉄製錬の鉛と銀は、鉱石の供給と加工料に左右される。世界の鉱山は中国の製錬所に囲い込まれ、日本の製錬所は原料の確保が難しい。加工料が下がれば、国内の製錬は採算が悪化する。二次原料(スクラップ)の奪い合いも激しく、原料費は高止まりしている。
銀は相場が大きく動いた。会社は2027年3月期の想定を銀80ドル、鉛1,900ドル、円安が続く為替とした。銀価格の上昇は在庫の評価益を生み、追い風になる。しかし、相場が元に戻れば、利益は急に細る。10年の見通しでは、相場の山をそのまま続くと置いてはいけない。
リサイクルの需要は構造的に強い。電子機器や電池から金属を取り出す需要は、資源の確保と環境規制で長く伸びる。電炉ダストの処理も、鉄スクラップを使う電炉の増加に応じて増える。ここは製錬より安定した収益源になりうる。
競合は、三井金属、DOWAホールディングス、住友金属鉱山など大手の非鉄・リサイクル企業だ。いずれも資本力と原料網で上回る。東邦亜鉛は設備の古さと財務の弱さで不利で、再生計画が成功するかが分かれ目になる。
資本政策と M&A
資本政策は、再生計画そのものだ。2025年3月13日に、APのファンドと辰巳商会への第三者割当で、A種優先株式30億円とB種劣後株式45億円、合計75億円を調達した。A種は年9%の優先配当がつき、普通株への転換価額は低く設定されている。B種は転換で議決権の過半を握る設計だ。
金融機関14行とは、2025年2月に債権者間協定を結んだ。対象の債務は約643億円と1億豪ドルで、三菱UFJ銀行の貸出コミットメントもある。阪和興業とは事業面の提携を結んだ。2026年3月には、さらにApricus Partnersへ新株予約権を発行すると決めた。
配当は2025年3月期から無配が続き、2027年3月期も無配の予想だ。利益は債務の返済と設備に向かう。普通株主への還元は、再生計画が終わるまで期待しにくい。M&Aは売却・撤退が中心で、買収の余力はない。
ファンドは出口として、保有株の売却を考える。普通株への転換が進み、株が市場に出れば、需給の重しになる。上場維持の基準は2026年3月末に満たした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
再生計画は予定より速く進んでいる。2026年3月期は初年度で営業利益67億円を出し、会社は上方修正を重ねた。不採算の撤退は完了し、鉛・銀製錬の操業トラブルと火災も解消に向かう。銀価格が高止まりすれば、利益は大きく上振れする。
リサイクルへの転換が収益の質を変える。環境リサイクルと金属リサイクルに約35億円を投じる計画で、これらは加工料と相場の両方で稼げる。電炉の増加と資源確保の流れで、取扱量は伸び続ける。
債務の返済が進むほど、利払いが減り、純利益は増える。純有利子負債が半分に減れば、金利の上昇分を相殺できる。優先株の取得条項で、ファンドの取り分を現金で買い戻せれば、希薄化は小さくなる。
物価が年3%で続く世界では、金属の値段も上がる。製錬の設備を持つ会社の名目の利益は増え、債務の実質的な重さは軽くなる。
ファンドが入ったことで、経営管理、工場管理、DX、IRの改革が進む。外部人材の採用も進み、2026年3月末には上場維持の基準も満たした。再生の道筋が見えれば、信用が回復し、金利の低い借り換えも可能になる。
慎重な見方
財務の脆さは際立つ。自己資本比率は14%で、純有利子負債は513億円。営業利益は支払利息の5.6倍しかなく、金利が上がれば利益の多くが利払いに消える。再生計画の期間は5年あり、その間に相場や火災が重なれば、再び債務の問題が起こる。
足元の利益の質も低い。2026年3月期の純利益48億円には、銀の在庫評価益などの一過性が約17億円含まれる。2027年3月期の営業利益は、加工料の悪化と原料費の増加で伸びない。第1四半期は営業損失2.5億円だった。
希薄化が普通株主に重くのしかかる。A種優先株の転換価額は低く、B種劣後株は議決権の過半を持つ。ファンドが出口で株を売れば、需給が悪化する。さらに、新株予約権で発行済みの株数が増える可能性がある。
過去の失敗も見逃せない。海外鉱山で巨額の減損を出し、会計処理の誤りで決算を訂正した。内部管理に不安がある会社に、高い倍率は払えない。
さらに、非鉄製錬は設備の維持費が重い。古い設備の更新には建築費の上昇も響く。償却を超える更新投資が必要になれば、利益が出ても現金は残らない。債務の返済と設備の更新が重なる数年は、普通株への還元が最も出にくい時期になる。
どちらに重みを置いたか
事業再生の進み具合は強気の見方に分がある。足元の黒字と撤退の完了は本物だ。しかし、財務の脆さと希薄化は、慎重な見方が正しい。普通株の取り分が約3分の1になる前提を置くと、楽観の筋書きでも今の時価総額には届かない。
そのため、確率は中立にいちばん厚く置き、悲観側を楽観側より重くした。倍率は、堀が弱い前提で式の8割に置いた。悲観の確率が楽観を上回るのは、2024年3月期の巨額赤字が示すように、この会社の財務が相場の変動に弱いからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 984 円179 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 86 円16 億円)。 今の値に割り戻すと 452 円82 億円、今との差 −39.8%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,226 円405 億円 | 211 円38 億円 | +224.5% | +12.5% | 171 円31 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,630 円297 億円 | 141 円26 億円 | +135.8% | +9.0% | 319 円58 億円 |
| 中立 | 40% | 1,099 円200 億円 | 79 円14 億円 | +56.9% | +4.6% | 471 円86 億円 |
| やや悲観 | 23% | 377 円69 億円 | 49 円9 億円 | −43.2% | −5.5% | 98 円18 億円 |
| 悲観 | 12% | 72 円13 億円 | 26 円5 億円 | −86.9% | −18.4% | 12 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 984 円179 億円 | 86 円16 億円 | +42.5% | +3.6% | 1,070 円195 億円 |
今の株価時価総額 751 円137 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 再生が早く進み、銀高も追い風 利益 78 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,226 円405 億円
再生計画が前倒しで進み、リサイクルの取扱量が伸びる。銀と鉛の相場が高めで推移し、在庫評価益も出る。債務の返済が進み、支払利息は減る。営業利益は約132億円、利益率は5.8%。優先株の一部を現金で買い戻し、希薄化は小さくなる。リサイクルの比率が上がり、相場の波に左右されにくい構造になる。本社費と販管費は物価で1.34倍に増えるが、売上の増加で吸収する。純有利子負債は10年で半分以下に減る。リサイクルの取扱量は物価を超えて実質で伸び、製錬は加工料の改善で利益率が上がる。ファンドが出口で保有株を売る時も、業績が良ければ需給の悪化は限られ、普通株主の取り分はしっかり残る。
- 鉛・銀製錬、金属・環境リサイクル、電子材料:数量 10.0(金属換算の取扱量(万t相当・推定))× 価格 228(1万t相当あたり売上(億円。名目。金属価格を含む))→ 売上 2,277 億円・営業利益 132 億円。数量1.25倍・価格1.45倍・営業利益率5.8%
倍率:事業の純利益 78 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 29.7% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 16.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 1,071 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:銀高の定着と再生の前倒しが重なる必要があり、条件は厳しい。
やや楽観 18% リサイクルが育ち、債務が減る 利益 57 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 1,630 円297 億円
再生計画は順調に進み、リサイクルが収益の柱に育つ。製錬は相場に助けられる。営業利益は約103億円、利益率は5.1%。債務は半分近くまで減る。普通株の配当は後半に再開する。電炉ダストの処理量が増え、環境リサイクルが安定した収益源になる。本社費は物価で増える。更新投資は建築費の上昇で膨らむが、利益で賄える。製錬の加工料は中位で、銀の相場も平常に戻るが、リサイクルの伸びが穴を埋める。債務の返済は計画どおり進み、純有利子負債は10年で約300億円まで減る。金利の低い借り換えが可能になり、利払いが減る。ファンドの出口は業績の改善に沿って進む。
- 鉛・銀製錬、金属・環境リサイクル、電子材料:数量 9.2(金属換算の取扱量(万t相当・推定))× 価格 220(1万t相当あたり売上(億円。名目。金属価格を含む))→ 売上 2,022 億円・営業利益 103 億円。数量1.15倍・価格1.40倍・営業利益率5.1%
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.1% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.12 倍、時価総額 750 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:リサイクルへの投資が収益に結びつく筋書き。
中立 40% 再生は進むが、相場次第 利益 38 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 1,099 円200 億円
亜鉛製錬と鉱山の撤退は終わり、鉛・銀製錬とリサイクルが残る。取扱量は5%増え、価格は物価並みの1.34倍。ただし銀価格の山は戻り、営業利益は約78億円、利益率は4.4%にとどまる。償却は既存設備が取得価格のままで、新規の環境投資の分だけ増える。更新投資は建築費の上昇で膨らむ。支払利息は金利の上昇で約25億円に増える。配当は債務の返済を優先して、ごく小さい。本社費は物価で1.34倍に増える。債務の返済は進むが、純有利子負債は10年後も200億円近く残る。ファンドは優先株を普通株に転換して保有を続け、普通株主の取り分は約3分の1になる。無配が長く続き、後半に小さな配当が出る。
- 鉛・銀製錬、金属・環境リサイクル、電子材料:数量 8.4(金属換算の取扱量(万t相当・推定))× 価格 210(1万t相当あたり売上(億円。名目。金属価格を含む))→ 売上 1,767 億円・営業利益 78 億円。数量1.05倍・価格1.34倍・営業利益率4.4%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.8% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.25 倍、時価総額 464 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:撤退は終わるが、製錬の収益は相場次第。最も実現しやすい。
やや悲観 23% 加工料悪化と操業トラブルで利益が伸びない 利益 16 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 377 円69 億円
鉛・銀製錬の操業トラブルが再発し、加工料の悪化も続く。営業利益は約46億円、利益率は3.0%。債務の返済は遅れ、金利の上昇が利益を削る。優先株の配当を払うと、普通株への還元はほとんど出ない。債権者間協定の条件も厳しく、設備投資は最小限に抑える。本社費は物価で増え、売上が伸びないため吸収できない。純有利子負債は高止まりする。銀の在庫評価益は消え、原料費の高止まりが利益率を押し下げる。ファンドの出口は遅れ、需給の重しが長引く。純有利子負債は10年後も350億円前後と高止まりし、金利の上昇が利益を削り続ける。再生計画は延長され、債権者の同意の範囲で運営される。
- 鉛・銀製錬、金属・環境リサイクル、電子材料:数量 7.6(金属換算の取扱量(万t相当・推定))× 価格 204(1万t相当あたり売上(億円。名目。金属価格を含む))→ 売上 1,551 億円・営業利益 47 億円。数量0.95倍・価格1.30倍・営業利益率3.0%
倍率:ROEがk9.5%を下回る年が多く、上限1÷k(10倍)以下。PER7.0倍。
確率:過去にも操業トラブルと加工料悪化で利益が伸びなかった。債務の重さが残る。
悲観 12% 構造的な負け:債務と相場で再生が頓挫 利益 −13 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 72 円13 億円
加工料と相場が悪化し、設備の火災や操業トラブルが重なる。営業利益は約12億円まで落ち、支払利息を賄えない。減損で自己資本が縮み、債務の再協議に入る。普通株の価値は優先株と債権者の後ろに回る。再生計画は作り直しになり、ファンドが追加の支援を条件に支配をさらに強める。一部の設備を売却し、人員を減らす。債権者間協定の条件変更で、普通株主への影響が出る。原料の確保が難しくなり、取扱量も落ちる。事業の一部は売却され、残る事業は縮小して続く。借入の一部は債権者との交渉で条件が緩むが、普通株主の取り分は大きく減り、優先株の配当すら払えない年が出る。
- 鉛・銀製錬、金属・環境リサイクル、電子材料:数量 6.4(金属換算の取扱量(万t相当・推定))× 価格 181(1万t相当あたり売上(億円。名目。金属価格を含む))→ 売上 1,156 億円・営業利益 12 億円。数量0.80倍・価格1.15倍・営業利益率1.0%
倍率:赤字のため、今の自己資本136億円の0.3倍(約41億円)。EVで見ても営業利益12億円に対し純有利子負債513億円が重く、利益の倍率では測れない。ROEはkを大きく下回る。優先株と債権者が先に取るため、普通株の取り分はさらに薄まる(holder_shareで反映)。
確率:2024年3月期に純損失464億円を出した実績があり、再び起こりうる。財務の脆さから悲観を厚めに置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鉛・銀製錬、金属・環境リサイクル、電子材料
亜鉛製錬・鉱山の撤退後に残る事業全体。
| 数量金属換算の取扱量(万t相当・推定) | 価格1万t相当あたり売上(億円。名目。金属価格を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 157 | 1,256 | 67 |
| 10 年後 中立 | 8.4 | 210 | 1,767 | 78 |
取り方:セグメント別の売上・利益と数量は取得できなかったため、全社売上1,255.5億円を金属換算の取扱量の推定で割った。銀・鉛の価格水準を含む単価で、数量と価格の絶対水準は粗い。営業利益67.2億円は全社の値。
リスクと懸念
債務の重さ
純有利子負債は513億円で自己資本の3.8倍、自己資本比率14%。債権者間協定の対象債務は約643億円と1億豪ドル。相場や操業の悪化で返済が遅れれば、再協議になる。
普通株の希薄化
A種優先株とB種劣後株の転換で、普通株主の取り分は約3分の1まで薄まる。さらにApricus Partnersへの新株予約権もあり、株数が増える余地が残る。
銀・鉛の相場と加工料
2026年3月期の利益には銀の在庫評価益などの一過性が約17億円含まれる。相場や加工料が悪化すれば利益は急に減る。
操業トラブルと火災
2025年に鉛・銀製錬の操業トラブルと小名浜製錬所の火災が重なり、見通しを下げた。設備が古く、再発の恐れがある。
ファンドの出口
ファンドが保有株を売却する時、需給が悪化する。普通株への転換が進むほど、重しになる。
内部管理
2024年3月期は会計処理の誤りで決算短信を訂正した。海外鉱山の減損と債権回収の問題もあり、管理体制の向上は途上である。
今後の分かれ目
- 純有利子負債が3年で300億円を下回る
- 債務の重さが和らぎ、中立の確率を保ちながら悲観の確率を下げてよい。
- 鉛・銀製錬の営業利益が銀の評価益を除いても黒字を保つ
- 製錬の収益性が確認でき、中立から楽観へ確率を寄せてよい。
- 優先株の取得条項でファンドの取り分が現金で買い戻される
- 希薄化が小さくなる。holder_shareを高める。
- 再び操業トラブルや火災が起きる
- 悲観の確率を上げる。
- 債権者間協定の条件変更が発表される
- 悲観側の筋書きを点検する。
見ておくもの
- 純有利子負債と自己資本比率
- 鉛・銀製錬とリサイクルの営業利益
- 銀・鉛の相場と加工料
- 優先株の転換・取得と新株予約権の行使
倍率と資本コストの決め方
倍率は堀が弱い前提の正当化PER(k9.5%、g4%)の約8割に置いた。今の株価・過去のPERは使っていない。筋書きは会社全体の値で書き、普通株主の取り分はholder_share 0.32で最後に掛けた。数量は売上からの推定で粗いが、10年の増減率と価格1.34倍は物価の考えに沿う。償却は既存設備を取得価格のまま、新規の環境投資の分だけ増やした。新リース会計基準で数字の形が変わる点は、今と同じ形で置いた。鉱山は売却済みで権益の利益が全社の半分を超えることはないため、growth_longのdepletingは当てはめない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→13.7 倍・やや楽観 PER 9.8→13.12 倍・中立 PER 9.3→12.25 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。