結論
SWCCは、電力会社向けの高圧ケーブルと、データセンター向けの光ファイバを柱にする中堅の電線会社だ。筆者の結論は、今の株価は 10 年後の姿に対してやや割高、というものだ。いちばんの理由は、足元の利益が特需の山にあることだ。
稼ぎの土台は電力会社の設備更新である。国内の送配電設備は老朽化が進み、更新は 10 年続く。66kV 級の高圧ケーブルでは国内でほぼ独走しており、この土台の堅さは筆者も評価する。2026 年 3 月期は営業利益 273 億円と過去最高で、会社は 8 月に今期予想を 330 億円へ引き上げた。
ただし、伸びの主役である通信・部材は事情が違う。光ファイバは技術が広がるほど値下がりする。中国・韓国の追い上げもある。半導体検査用の部材を持つ TOTOKU の買収も、効果が出るのはこれからだ。
物価と数量を積み上げると、2036 年 3 月期の営業利益は 500 億円ほど。会社が 2030 年度に掲げる 400 億円超の延長線に近い。中立の ROE は 13% 台まで下がる。自己資本が積み上がるからだ。そこに適正な倍率を掛けると、10 年後の時価総額は今を少し上回る程度にとどまる。配当は手厚いが、割高感を消すほどではない。
バリュー投資の観点から
オーナー目線で見ると、利益の質は 2 層に分かれる。電力は、他社が入りにくい取引で安定して稼ぎ、持ち続けたい事業だ。通信は、需要こそ強いものの、値下がりと循環の波に飲まれる事業だ。
稼いだ利益のうち、再投資が必要な分を引いた「オーナー利益」は、見かけより小さい。5 年で設備に 560 億円、買収に 800 億円を使う計画だからだ。配当性向が 40% 台でも、残りの多くは設備に消える。
経営は、低収益から立て直し、財務を整えた点で評価できる。だが、買収を増やす方針は、価値を壊す方向にも働く。TOTOKU が期待どおり育つかが、最初の試金石になる。
安全域の面では、今の株価は特需の利益に高めの倍率を載せている。電力の堅さは魅力だが、10 年先で割り引いた値打ちは、今の時価総額に届かない。バリュー投資の観点では、払う値段にまだ余裕が足りないと判断する。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つに分かれる。エネルギー・インフラ事業は、電力ケーブルとその接続部材、建設・電販向けの電線を売る。売上は全体の半分弱だが、営業利益の 7 割近くを稼ぐ。電力会社向けの高機能な接続部材「SICONEX」が看板だ。
通信・コンポーネンツ事業は売上の半分ほどで、利益率は低い。通信ケーブルとリボン状の光ファイバ心線「e-Ribbon」、機器用の巻線、自動車向けの電装品、そして TOTOKU の半導体検査用部品が入る。2025 年 3 月に、カーライルから TOTOKU を日本政策投資銀行(DBJ)と組んで取得した。SWCCの持ち分は 51% で、DBJ が 49% を持つ。このため、利益の一部は少数株主に流れる。
その他は免震ゴムなどで、規模は小さい。
古河電工とは 2019 年に、建設・電販向けの汎用電線を統合して SFCC を作った。値段勝負の分野を切り離し、電力と通信の専門品に集中する流れだ。2026 年 2 月の中期経営計画「Transformation for Growth SWCC 2030」は、その路線の延長にある。2030 年度に営業利益 400 億円超、ROE 20%、買収枠 800 億円を掲げる。
優良さと弱いところ
筆者が最も評価するのは、電力ケーブルの取り分の大きさだ。66kV 級の国内シェアは約 9 割とされ、電力会社向けのシェアも 5 割台から 8 割台へ引き上げる計画を持つ。市場そのものは小さいが、堀、つまり他社がまねしにくい強みとして素直に効く。電力会社との長年の取引と、施工を簡単にする接続部材がその根っこにある。
一方、通信・部材は堀が薄い。光ファイバは競争で値下がりしやすく、利益率は 6% 前後にとどまる。TOTOKU の半導体検査用部品は成長分野だが、買収から日が浅く、実力は見えていない。自動車向けの電装品も、完成車メーカーに値を握られる。
経営の資本の使い方は、前向きに見える。長く続いた低収益を抜け、自己資本比率は 48% まで戻した。配当性向 40% 以上と DOE 5% 以上を約束している点も、株主に優しい。ただし、買収に 800 億円を使う計画は、買う値段を誤れば価値を壊す。筆者がいちばん気にかける点だ。
過去の傷もある。2009・2010・2013・2016 年の 3 月期は赤字だった。銅価格の変動と建設需要の波が、利益を大きく揺らした。今の高収益がこの波の中のどこにあるかは、冷静に見る必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電線業界は、電力・通信・自動車・建設の 4 つの需要に支えられている。SWCCは自動車向けが小さく、電力と通信に集中している点が、住友電工やフジクラと違う。
電力は、国内の送配電網の更新が追い風だ。会社は国内の電力ケーブル市場が 2024 年度の 1,500 億円から 2030 年度に 2,440 億円へ広がると見る。データセンター向けの電力需要も上乗せになる。ただし、電力会社の需要は人口と設備計画で決まる。物価を除いた量は、10 年で 1 割も伸びれば良い方だと筆者は考える。
通信は、北米のデータセンターが主戦場だ。e-Ribbon の生産能力は 2030 年度に 2025 年度の約 7 倍にする計画で、仙台の増強も 2026 年度上期に終わる。需要は強い。だが、競争相手はフジクラ、住友電工、古河電工、米国のコーニング、中国の長飛など、規模の大きい会社ばかりだ。光部品は、広がるほど値が下がる歴史がある。
半導体検査用の部材(TOTOKU)は、半導体の需要と連動して波がある。成長の期待は大きいが、利益の確かさでは電力に及ばない。
銅の価格は、電線の値段に転嫁される。値上がり局面では売上が膨らむが、転嫁が遅れると利益が削られる。2000 年前後の IT 不況のとき、光ファイバの需要が数年にわたって落ちた実例もある。業界全体として、強い追い風と循環の怖さが同居している。
資本政策と M&A
還元の方針は明確だ。連結配当性向 40% 以上、かつ DOE(自己資本に対する配当の割合)5% 以上。2026 年 8 月に今期の配当予想を引き上げ、中間と期末を増やした。2026 年 10 月には 1 株を 5 株に分割している。
設備と買収には積極的だ。2026〜2030 年度の 5 年で、営業キャッシュフロー 1,500 億円を見込み、設備に 560 億円、買収に 800 億円、還元に 440 億円を充てる計画だ。買収は、通信ケーブル、半導体検査装置、通信・コンポーネンツが重点とされる。
過去の大きな買収は TOTOKU である。DBJ と組んで 51% を持つ形にしたのは、資金負担を抑える工夫だが、利益の 49% は少数株主のものになる。10 年の利益を見るときは、その分を引く必要がある。
筆者が注意するのは、買収枠 800 億円が利益 400 億円の会社には大きいことだ。買収価格が高ければ、今の高い ROE が薄まる。自社株買いは目立たないので、余った資金は設備と買収に向かうと見る。
点検済み:中立の営業利益率11.7%が会社予想(27・28年3月期8.6〜8.8%)と過去最高(9.8%)を超え、通信・部材が今の5.8%から10%へ上がる前提だったため、7.5%に置き直した(全社10.3%)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電力網の更新は、確実に 10 年続く需要だ。国内の電力ケーブル市場は、会社の見立てで 2030 年度に 1.6 倍へ広がる。66kV 級でほぼ独走するSWCCは、その中で電力会社向けのシェアを 88% まで上げる計画を持つ。この取り分の高さは、価格を守る力になる。
通信では、データセンター向けの光ファイバを 2030 年度に約 7 倍の生産能力へ引き上げる。需要が先に走っている今、増産は素直に利益へ変わる。2027 年 3 月期の予想は、2026 年 8 月に営業利益 330 億円へ上方修正された。第 1 四半期だけで 86 億円を稼いでおり、通期の予想は保守的にも見える。
2030 年度に営業利益 400 億円超、買収を含めれば 800 億円という長期の目標がある。TOTOKU を足場に、半導体検査用の部品で買収を重ねれば、電線会社から素材・部材の専門会社へ姿を変えられる。配当性向 40% 以上と DOE 5% の約束は、株主にも優しい。
慎重な見方
足元の利益は、特需の山だ。2026 年 3 月期の営業利益率 9.8% は、過去 10 年で最高だった。2015〜2018 年は 0.6〜3.7% にとどまり、赤字の期も 4 回ある。銅価格と建設需要の波で、利益は大きく揺れる事業だ。
通信の主力は光ファイバだ。広がるほど値が下がる性質があり、中国・韓国勢の追い上げも強まっている。コーニングやフジクラのような大きな競合に比べ、SWCCの規模は小さい。増産の 7 倍計画が当たらなければ、設備だけが残る。
買収にも懸念がある。800 億円の枠は、利益 400 億円の会社には重い。TOTOKU は 49% を DBJ が持つ構造で、利益の一部は外へ流れる。買収価格が高ければ、ROE は 20% を維持できない。
電力でも安心はできない。電力会社は調達費用の抑制を迫られており、入札の範囲が広がれば、約 9 割というシェアは守れない。今の株価は、通信の増産、買収、電力のシェアのすべてが好調に進むことを前提にしている。
どちらに重みを置いたか
電力の堅さと通信の追い風では、強気の見方が説得力を持つ。だが、利益が特需の山にあり、光部品が値下がりしやすい点では、慎重な見方が強い。10 年先まで利益の水準が高いまま続くとは考えにくい、と筆者は見る。そこで、確率は悲観側にやや寄せた。中立を 34%、やや悲観を 26% とし、楽観側の合計を 30% に抑えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,776 円5,595 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 759 円1,124 億円)。 今の値に割り戻すと 2,360 円3,497 億円、今との差 +6.2%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,359 円1.24 兆円 | 1,247 円1,847 億円 | +332.1% | +15.8% | 768 円1,139 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,329 円9,378 億円 | 1,016 円1,505 億円 | +230.4% | +12.7% | 1,616 円2,394 億円 |
| 中立 | 34% | 4,036 円5,980 億円 | 808 円1,197 億円 | +117.9% | +8.1% | 1,647 円2,440 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,231 円1,824 億円 | 495 円734 億円 | −22.4% | −2.5% | 449 円665 億円 |
| 悲観 | 10% | 224 円332 億円 | 319 円472 億円 | −75.6% | −13.2% | 54 円80 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,776 円5,595 億円 | 759 円1,124 億円 | +104.0% | +7.4% | 4,534 円6,719 億円 |
今の株価時価総額 2,223 円3,294 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 電力網の更新と光配線の波に乗り、買収も当たる 利益 591 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 8,359 円1.24 兆円
電力会社の更新投資が計画どおり続き、通信は北米のデータセンター向けの光ファイバが量産に乗る。AI 向けの太い需要を、増産した設備がそのまま利益に変える。会社が長期の目標に掲げる営業利益 800 億円超に、買収の上乗せ分も含めて届く。
買収枠 800 億円が半導体検査や通信の部材で当たり、TOTOKU との組み合わせが利益を押し上げる。電装・部材も高付加価値に移る。配当性向 40% 以上の約束は守られ、財務は A 格を保つ。電線御三家の下で埋もれてきた会社が、専門性の高い中堅として評価される 10 年になる。ただし、これは電力・通信・買収の三つが同時に当たった場合の姿で、確率は低く置いた。
- エネルギー・インフラ:数量 11,500(国内の電力・建設・産業向け電線ケーブルと接続部材の市場(億円、実質))× 価格 20.8%(シェア × 値段の指数(今は 0.13=シェア 13%、物価と銅の転嫁で上がる))→ 売上 2,389 億円・営業利益 406 億円。国内市場 1.15 兆円(実質 1.15 倍)×シェア 15.5%、利益率 17%
- 通信・コンポーネンツ:数量 45,000(光ファイバ・通信ケーブル、巻線、半導体検査用部品などの対象市場の合計(億円、実質))× 価格 8.1%(シェア × 値段の指数(今は 0.047=シェア 4.7%))→ 売上 3,656 億円・営業利益 494 億円。市場 4.5 兆円(実質 1.5 倍)×シェア 6.5%、価格は物価より鈍い 1.25 倍、利益率 13.5%
- その他:数量 700(免震ゴム等の市場(億円、実質))× 価格 14.2%(シェア × 値段の指数(今は 0.106))→ 売上 99 億円・営業利益 15 億円。市場横ばい×シェア 10.6%、利益率 15%
倍率:事業の純利益 591 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍。全体の PER 20.46 倍、時価総額 12,092 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力網の更新・北米のデータセンター・買収の 3 つが同時に当たる必要がある。会社の 2036 年ビジョン(営業利益 800 億円超)に近い姿で、連続して成功する確度は高くない。
やや楽観 22% 会社計画に近い着地。電力と通信がそろって伸びる 利益 439 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 6,329 円9,378 億円
電力は国内の更新需要で安定して伸び、通信・部材は会社の 2030 年度の目標に近い形で育つ。営業利益は 2030 年度に 400 億円台を確保し、その後も物価の伸びを上回る。
通信では光ファイバ心線の増産が回り、北米向けが売上の数割を占めるようになる。電力会社向けのシェアは 5 割台から 7 割台へ上がる。買収は小粒が数件で、投資効率はまずまず。利益率は 11% 台に乗る。電装・部材は自動車の電動化の恩恵を受けるが、景気の波は残る。TOTOKU の半導体検査用部品は、半導体の設備投資とともに伸びる。ただし、光部品の値下がりが続くので、会社が掲げる 12% を安定して超えるところまでは行かない。
- エネルギー・インフラ:数量 11,000(国内の電力・建設・産業向け電線ケーブルと接続部材の市場(億円、実質))× 価格 19.4%(シェア × 値段の指数(今は 0.13=シェア 13%、物価と銅の転嫁で上がる))→ 売上 2,137 億円・営業利益 342 億円。国内市場 1.1 兆円×シェア 14.5%、利益率 16%
- 通信・コンポーネンツ:数量 38,000(光ファイバ・通信ケーブル、巻線、半導体検査用部品などの対象市場の合計(億円、実質))× 価格 6.6%(シェア × 値段の指数(今は 0.047=シェア 4.7%))→ 売上 2,508 億円・営業利益 326 億円。市場 3.8 兆円×シェア 5.5%、価格 1.2 倍、利益率 13%
- その他:数量 700(免震ゴム等の市場(億円、実質))× 価格 14.2%(シェア × 値段の指数(今は 0.106))→ 売上 99 億円・営業利益 15 億円。市場横ばい、利益率 15%
倍率:事業の純利益 439 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍。全体の PER 20.26 倍、時価総額 8,894 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2030 年度の目標(営業利益 400 億円超・利益率 12%)に近い着地。電力の更新需要は確度が高いが、通信の光部品は値下がりが続くので、中心よりやや軽く置いた。
中立 34% 電力は堅く、通信は伸びるが利益率は頭打ち 利益 305 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 4,036 円5,980 億円
電力・インフラは堅い。国内の送配電設備は老朽化が進み、更新は 10 年続く。シェアの高い 66kV 級は値決めも安定する。通信・部材はデータセンター向けで伸びるが、光部品は技術が広がるほど値下がりする。
営業利益は 2036 年 3 月期に 450 億円ほど。2027 年 3 月期の会社予想の約 1.4 倍だが、物価の分を引くと実質の成長は小さい。利益率は 10% 前後で落ち着く(会社予想は 8.6〜8.8%)。TOTOKU は半導体検査の波で伸びるが、買収の上乗せは見込まない。還元は配当性向 45% 前後で、残りは設備と運転資金に回る。
- エネルギー・インフラ:数量 10,500(国内の電力・建設・産業向け電線ケーブルと接続部材の市場(億円、実質))× 価格 18.8%(シェア × 値段の指数(今は 0.13=シェア 13%、物価と銅の転嫁で上がる))→ 売上 1,970 億円・営業利益 286 億円。国内市場 1.05 兆円(実質 1.05 倍)×シェア 14%、価格は物価並みの 1.34 倍、利益率 14.5%
- 通信・コンポーネンツ:数量 39,000(光ファイバ・通信ケーブル、巻線、半導体検査用部品などの対象市場の合計(億円、実質))× 価格 6.0%(シェア × 値段の指数(今は 0.047=シェア 4.7%))→ 売上 2,332 億円・営業利益 175 億円。市場 3.9 兆円(実質 1.3 倍)×シェア 5.2%、光部品は値下がりで価格 1.15 倍、利益率 7.5%
- その他:数量 700(免震ゴム等の市場(億円、実質))× 価格 14.2%(シェア × 値段の指数(今は 0.106))→ 売上 99 億円・営業利益 14 億円。市場横ばい×シェア 10.6%、利益率 14%
倍率:事業の純利益 305 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍。全体の PER 18.44 倍、時価総額 5,624 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力・インフラの安定した需要に、通信・部材の成長を物価並みに足した中心の姿。同じ領域の住友電工の中立と並べ、規模が小さく通信に偏る分だけ利益率を低めに置いた。
やや悲観 26% 特需が一巡し、価格競争で利益率が戻る 利益 141 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,231 円1,824 億円
データセンター向けの特需は 2030 年代前半に一巡する。そこへ中国・韓国の光部品メーカーが価格で攻め、通信・部材の利益率は 5% 台まで戻る。電力は更新需要が残るものの、銅の高騰分の転嫁が遅れ、利益率が 10% 台前半に下がる。
営業利益は 230 億円ほど。2026 年 3 月期の水準を下回るが、赤字にはならない。配当は性向を保ち、減配は小幅にとどまる。設備増強の一部は稼働率が上がらず、追加投資は止まる。買収は見送りか小粒にとどまり、計画の枠 800 億円は使い切れない。電力会社向けの安定した需要が、利益の底を支える。
- エネルギー・インフラ:数量 9,600(国内の電力・建設・産業向け電線ケーブルと接続部材の市場(億円、実質))× 価格 15.6%(シェア × 値段の指数(今は 0.13=シェア 13%、物価と銅の転嫁で上がる))→ 売上 1,500 億円・営業利益 158 億円。国内市場 0.96 兆円×シェア 12.5%、銅の転嫁が遅れ価格 1.25 倍、利益率 10.5%
- 通信・コンポーネンツ:数量 33,000(光ファイバ・通信ケーブル、巻線、半導体検査用部品などの対象市場の合計(億円、実質))× 価格 4.6%(シェア × 値段の指数(今は 0.047=シェア 4.7%))→ 売上 1,518 億円・営業利益 83 億円。市場 3.3 兆円×シェア 4.6%、値下がりで価格 1.0 倍、利益率 5.5%
- その他:数量 600(免震ゴム等の市場(億円、実質))× 価格 12.0%(シェア × 値段の指数(今は 0.106))→ 売上 72 億円・営業利益 6 億円。市場縮小、利益率 9%
倍率:ROE 7.5% は k 7.5% 並みで、PER の上限は 1÷k=12.5 倍。そのうち 76%(9.5 倍)に置いた。特需が引いて利益が薄れる分を見込んだ割合。
確率:データセンター特需の一巡と中国・韓国勢との価格競争は、領域全体の主な懸念。過去 20 年で 4 回の赤字期(2009・2010・2013・2016 年)があった循環性を踏まえ、確率を厚めに置いた。
悲観 10% 買収が外れ、通信が値崩れし、電力の取り分も落ちる 利益 39 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 224 円332 億円
買収した事業の相乗効果が出ず、減損が出る。通信は北米向けが急減し、光部品の値崩れで利益が消える。電力でも、電力会社が調達を競争入札に広げ、シェアと値段が落ちる。
営業利益は 80 億円ほどまで戻る。2015〜16 年の低迷期に近い姿だ。減損で自己資本は削られ、配当は性向を維持できず減る。ただし、電力ケーブルの更新は止まらないので、会社が倒れる筋書きではない。ただ、成長会社という評価は外れ、電線の中堅として低い倍率で値付けされる 10 年になる。通信の設備と買収で積んだ資産は、稼ぐ力に見合わず重荷になる。
- エネルギー・インフラ:数量 8,800(国内の電力・建設・産業向け電線ケーブルと接続部材の市場(億円、実質))× 価格 12.7%(シェア × 値段の指数(今は 0.13=シェア 13%、物価と銅の転嫁で上がる))→ 売上 1,113 億円・営業利益 72 億円。国内市場 0.88 兆円×シェア 11.5%、価格 1.1 倍、利益率 6.5%
- 通信・コンポーネンツ:数量 28,000(光ファイバ・通信ケーブル、巻線、半導体検査用部品などの対象市場の合計(億円、実質))× 価格 3.6%(シェア × 値段の指数(今は 0.047=シェア 4.7%))→ 売上 1,008 億円・営業利益 30 億円。市場 2.8 兆円×シェア 4.0%、価格 0.9 倍、利益率 3%
- その他:数量 500(免震ゴム等の市場(億円、実質))× 価格 10.0%(シェア × 値段の指数(今は 0.106))→ 売上 50 億円・営業利益 2 億円。市場縮小、利益率 5%
倍率:ROE 3.0% が k 以下なので PER の上限は 1÷k=12.5 倍。その約 7 割(8.5 倍)を採用。減損後の稼ぐ力に、競争で薄れる分を見込んだ。
確率:買収の失敗と電力会社の調達方針の変化が重なる、構造的な負けの姿。電力ケーブルの更新需要は国内に残るので 1 割に止め、住友電工の悲観と同じ水準に揃えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エネルギー・インフラ
電力ケーブルと接続部材(SICONEX など)、建設・電販向け電線。国内の電力会社が最大の顧客。
| 数量国内の電力・建設・産業向け電線ケーブルと接続部材の市場(億円、実質) | 価格シェア × 値段の指数(今は 0.13=シェア 13%、物価と銅の転嫁で上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 13.0% | 1,301 | 193 |
| 10 年後 中立 | 10,500 | 18.8% | 1,970 | 286 |
取り方:通期のセグメント数値は未取得。4〜12 月の売上 956 億円・営業利益 141 億円(IR)と全社の残りから、通期を売上 1,300 億円・営業利益 193 億円と推定した。市場は電線工業会の出荷額規模(約 1 兆円)から推定し、シェア 13% とした。物価と銅の転嫁は価格に入れ、数量には混ぜていない。
通信・コンポーネンツ
通信ケーブル・e-Ribbon、機器用巻線、自動車向け電装品、TOTOKU の半導体検査用部品など。
| 数量光ファイバ・通信ケーブル、巻線、半導体検査用部品などの対象市場の合計(億円、実質) | 価格シェア × 値段の指数(今は 0.047=シェア 4.7%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30,000 | 4.7% | 1,402 | 82 |
| 10 年後 中立 | 39,000 | 6.0% | 2,332 | 175 |
取り方:4〜12 月の売上 1,017 億円・営業利益 55 億円(IR)から、通期を売上 1,400 億円・営業利益 82 億円と推定した。対象市場は世界のデータセンター向けケーブル(約 1.8 兆円)、巻線、半導体検査用部品などの合計から約 3 兆円と推定し、シェア 4.7% とした。
その他
免震ゴムなど。規模は小さい。
| 数量免震ゴム等の市場(億円、実質) | 価格シェア × 値段の指数(今は 0.106) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 10.6% | 74 | 11 |
| 10 年後 中立 | 700 | 14.2% | 99 | 14 |
取り方:4〜12 月の売上 48 億円・営業利益 8 億円(IR)から通期を売上 74 億円・営業利益 11 億円と推定。市場は約 700 億円と推定。全社の営業利益 273 億円との差は本社費など(約 −13 億円)。
リスクと懸念
通信の値下がりと中国勢の追い上げ
光ファイバは技術が広がるほど値下がりしてきた。中国・韓国のメーカーが北米でも攻めれば、増産した設備の稼働が落ち、通信・コンポーネンツの利益率 6% 台がさらに薄くなる。
データセンター特需の一巡
北米の設備投資が減速すれば、e-Ribbon を 7 倍にする計画は過剰設備になる。2000 年前後の IT 不況で、光ファイバの需要が数年落ちた実例がある。
買収の失敗
買収枠 800 億円は、利益 400 億円の会社にとって大きい。買う値段が高ければ、ROE が下がり価値が壊れる。TOTOKU の実力も、まだ確かめられていない。
銅価格の変動と転嫁の遅れ
電線の値段は銅に連動する。値上がりが急な時は転嫁が遅れ、在庫の評価損や利益の目減りが出る。過去の赤字期にも銅の波が絡んでいる。
電力会社への依存
エネルギー・インフラの利益の多くは、国内の電力会社向けに集まる。調達方針が競争入札に広がれば、約 9 割という 66kV 級のシェアも崩れうる。
少数株主への流出
TOTOKU は DBJ が 49% を持つ。成長して利益が増えるほど、少数株主に流れる額も増える。純利益が営業利益ほど伸びない。
会計の形の変化
新リース会計基準が 2028 年 3 月期から入る。営業利益と借金の見かけが変わる。数字の形が変わるだけで価値は同じだが、比較には注意が要る。
今後の分かれ目
- 北米のデータセンター投資が減速したら
- 通信の筋書きをやや悲観に寄せる。e-Ribbon の稼働率と受注残を見る。
- 電力会社向けのシェアが 70% を超えたら
- 電力の堅さが一段と強まる。楽観側の確率を引き上げてよい。
- TOTOKU が半導体検査用部品で計画を上回ったら
- 通信・部材の利益率を上方修正する。買収の上乗せも見直す。
- 800 億円規模の買収を高い値段で発表したら
- ROE が薄まる懸念が強まる。やや悲観側に確率を移す。
- 光ファイバの値下がりが始まったら
- 通信の価格の伸びを 1.15 倍から 1.0 倍へ下げる。中立の利益が減る。
- 銅価格が急落したら
- 売上が減るだけで利益への影響は限定的。ただし在庫評価損に注意する。
見ておくもの
- エネルギー・インフラの営業利益率(15% を保てるか)
- 通信・コンポーネンツの利益率(10% に届くか)
- e-Ribbon の増産の稼働率と北米の受注
- TOTOKU の半導体検査用部品の売上と利益
- 買収の発表と買収価格
- 電力会社向けのシェアの推移
倍率と資本コストの決め方
10 年後の利益は、セグメントごとに市場(実質)×シェア×値段の指数で積んだ。倍率は k 7.5%(基本 7.5%+quality 0.5%)と正当化 PER の式から出し、上限の 7〜9 割に置いた。今の PER や過去の PER は見ていない。2036 年 3 月期の形は、新リース会計基準の前の(家賃を営業費用に入れた)今と同じ形でそろえた。10 年の値が今の時価総額を下回る結果は、特需の山の利益に高い倍率を掛けない計算の結果で、今の株価に寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.8→20.46 倍・やや楽観 PER 14.8→20.26 倍・中立 PER 13.1→18.44 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足して決める(β・規模は使わない)。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。