結論
日本精鉱は、プラスチックを燃えにくくする薬剤の原料、アンチモンを精錬する会社だ。国内の難燃助剤で販売の約7割を占める。もうひとつの柱は、子会社が作る金属粉末だ。2026年3月期の売上は409億円、営業利益は61億円で、前の期の1.7倍になった。
筆者の結論は「割高」だ。利益が膨らんだのは、中国の輸出管理でアンチモンの地金が1年で2倍以上に上がったからだ。2026年3月期の純利益42億円は、時価総額の4分の1にあたる。しかし、相場はすでに高値から6割ほど下がった。会社自身が2027年3月期の営業利益を17億円と見込んでいる。
事業の実力は、この中間にある。中期計画は地金を1トン1万8千ドルと置き、営業利益の3年平均を30億円としている。筆者は、10年後の標準像を、地金が2万ドルに落ち着き、営業利益が23億円ほどの姿とみる。
上振れは、中国の規制が長引き、他国の供給も増えない時に来る。下振れは、高値が代替調達を呼び、相場が2024年以前の水準へ戻る時だ。後者の確率を厚く置いた。今の値段は、前の期の利益の幻影を、まだ引きずっている。相場が戻っても、純現金42億円と国内の7割というシェアが、事業を守る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは、10年後もこの事業があるかだ。難燃助剤の需要は残る。ただし、ハロゲンフリーへの代替が長く進めば、細る可能性がある。事業は続くが、大きくはならない。
堀は、国内の7割というシェアと、一貫生産の技術だ。しかし、利益の源は地金の相場で、同社は価格を決められない。2026年3月期の営業利益率14.9%は、事業の力というより、相場と在庫益の産物だ。株主のものになる利益は、営業利益の6〜7割だ。
経営者の資本配分は、配当性向30%と自己株取得の検討を掲げ、設備も前の計画の2倍に増やす。方向は悪くない。ただし、相場の高い時に拡大を急げば、元の水準へ戻った時に重荷になる。
安全域は、純現金42億円と自己資本比率62%にある。しかし、現金の一部は、すでに期末配当で出ていく。結論は、事業は良いが、値段は高い。割安になるのは、地金が1万5千ドル前後でも利益が残ると確かめられた時だ。それまでは、前の期の利益を見て買うのは危うい。経営者が3年平均をKPIに選んだのは、利益の荒さを自覚している点で評価できる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、アンチモンを精錬し、難燃助剤などの化合物に変えて売ることだ。家電や自動車のプラスチックは燃えやすい。ハロゲン系の難燃剤に三酸化アンチモンを加えると、燃えにくくなる。同社はこの国内市場で販売の約7割を握り、兵庫の中瀬製錬所で精錬から化合物まで一貫して作る。
2026年3月期の売上409億円のうち、アンチモン事業が294億円、金属粉末事業が115億円だ。アンチモンの利益は54億円で、粉末の利益は数億円にとどまる。利益の大半を、アンチモン相場が決めている。
売値は地金の相場に連動する。原料を買い、化合物にして売るまでの間に相場が動くと、在庫の評価損益が出る。2026年3月期は相場が上がり続け、在庫益が利益を押し上げた。
金属粉末は、子会社の日本アトマイズ加工が作る。水アトマイズ法で銅や鉄系合金の粉を作り、電子部品や自動車部品に売る。細かい粉ほど単価が高い。AIサーバーや電動車の部品向けが成長の見込みで、つくば工場を増設した。ほかに、金属硫化物、不動産の賃貸、トマト栽培もある。金属硫化物はブレーキ材の潤滑剤に使い、電池材料への展開を探っている。アンチモンはポリエステルを作る触媒にも使われ、難燃助剤だけが用途ではない。従業員は263人と小さい。
優良さと弱いところ
堀は、国内のシェアと一貫生産にある。難燃助剤の国内で販売の約7割、精錬から化合物まで自社で作る体制、顧客の試作に応える技術が、新規の参入を難しくしている。高純度品やマスターバッチなど、用途に合わせた形で売れる点も強みだ。
しかし、堀は価格を決める力ではない。アンチモンの値段は、中国の政策と世界の需給で決まる。同社は転嫁と在庫益で相場に乗るだけで、利益の質は低い。営業利益率は過去15年で-7%〜15%と振れた。2009年3月期は赤字で、2020年3月期も4%に落ちた。
財務は堅い。純現金は42億円、自己資本比率は62%、営業利益は支払利息の76倍だ。ただし、相場が高いほど在庫と売掛金が膨らみ、現金は運転資金に食われる。逆に相場が下がる局面では、運転資金が現金に戻るが、その時は利益も落ちている。
弱点は、一つの商品への依存だ。中国が規制を外せば相場は下がる。難燃剤の代替が進めば、需要が細る。会社は、電熱炉への転換投資と、電池材料向けの金属硫化物で、相場に左右されない収益を目指している。筆者は、その成果がまだ数字に出ていない点を気にする。2003年に住友金属鉱山から酸化アンチモンの営業権を買い、国内の事業を厚くした。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
アンチモンは、世界の供給の約半分を中国が握る金属だ。2024年9月に中国が輸出管理を始め、同12月には米国向けの輸出を原則禁じた。鉱石の不足と環境監査の強化も重なり、地金は2026年3月期の上期に平均で1トン5万8千ドル近くまで上がった。前の年の2.7倍だ。
高値は、代替を呼ぶ。2026年の半ばには、中国のスポット相場が2万ドル前後まで下がった。日本経済新聞は、中国以外での調達が進んだことが理由のひとつとしている。会社も、2027年3月期の前提を2万4千ドルに置いた。
需要は難燃剤が中心で、家電、自動車、電気絶縁材に使う。大きな伸びはない。ハロゲンを使わない難燃剤への代替は、長期で需要を削る。同社の上期の販売数量は、前年より17%減った。中国からの調達の制約と、値上がりによる買い控えが重なった。
金属粉末は、銅の価格と電子部品の需要に左右される。AIサーバー向けなど先端は堅調で、自動車向けは低調だ。細かい粉は、AIサーバーのインダクタや導電ペーストで需要が増える。競合は国内外の粉末メーカーで、粒径と形の制御が差になる。銀や銅の相場が動くと、売上は変わるが利益はあまり動かない。
10年の標準像は、地金が2万ドル前後に落ち着き、数量はやや戻る形だ。名目で横ばいは、物価を考えると実質の下落になる。
資本政策と M&A
株主還元の方針は、連結配当性向30%を目安に、3年平均で保つことだ。2026年3月期の配当は前の期の2倍の水準になり、性向は9割を超えた。2027年3月期は減配の予想だ。過去20年以上、無配はない。中期計画は、自己株式の取得も検討すると書いている。
中期計画は2025年4月から2028年3月までで、営業利益の3年平均を30億円、ROEを10%以上に置く。地金の想定は、2027年3月期以降で1トン1万8千ドルだ。設備投資は51億円で、前の計画の2倍にあたる。中瀬製錬所の電熱炉への転換や、高機能粉末の量産に使う。資金は利益と自己資本で賄う。
M&Aでは、2003年に住友金属鉱山から酸化アンチモンの営業権を買い、2008年に日本アトマイズ加工を完全子会社にした。今後は樹脂コンパウンドや非鉄のリサイクルでの買収も視野に入れる。
大株主は、福田金属箔粉工業が約18%、川嶋とその関係の2社が約10%ずつ、富士興産が約5%だ。川嶋のグループは、保有目的に重要提案行為等を含めている。株式の集中度が高く、買収や提案の可能性は残る。上場銘柄の政策保有は2件にとどまる。従業員は263人と少なく、1人あたりの利益は大きいが、人手の確保が成長の制約にもなりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぐ力は、思ったより長く続く。中国の輸出管理は2024年9月から続き、鉱石の不足と環境規制も解けていない。国内の難燃助剤で約7割を握る同社は、相場が高いままなら利益を取れる。中期計画の営業利益30億円は、前の計画の1.8倍だ。足元の価格が下がっても、地金が2万ドルを保てば、2024年3月期の営業利益7億円の3倍にあたる利益が残る。純現金42億円と、配当性向の目安30%、自己株取得の検討が、下値を支える。価格を転嫁する力は2025年から2026年に実際に示した。ROE10%以上を長期の目標に置き、設備投資も前の計画の2倍へ増やして、成長への意思も見える。難燃助剤の国内シェアは、10年で急には崩れない。2026年3月期の利益でためた自己資本は154億円まで増え、相場が戻っても事業を続ける体力になる。さらに、金属粉末は相場と別の動きをする事業で、AIサーバー向けの伸びが利益の底を作る。電熱炉への転換で製錬のコストも下がり、同じ相場でも手元に残る利益が増える。
慎重な見方
利益の源は、相場という借り物だ。2026年3月期の営業利益61億円は、地金の急騰と在庫益の産物で、2027年3月期の予想は17億円まで落ちる。足元の相場は高値から6割下がり、中国以外の調達が増えている。難燃剤の代替も長期で需要を削る。2009年3月期には赤字を出し、2020年3月期も営業利益率が4%に落ちた。時価総額は前の期の純利益の4倍にすぎないが、その利益は二度と来ないかもしれない。さらに、高値期に決めた51億円の設備と、上がった配当は、相場が戻ると重い固定の約束になる。大株主が集中していることも、経営の自由度を狭める。会社自身が3年平均を目標にしているのは、利益が荒く振れると認めている証拠だ。金属粉末の利益は、2026年3月期の上期に前年の4割にまで減っており、アンチモンの落ち込みを埋められる規模ではない。しかも、会社の中期計画が置く地金の想定は1万8千ドルで、これを割る局面も十分にありうる。
どちらに重みを置いたか
規制が続く間は強気の見方が当たる。しかし、高値が代替を呼ぶのは相場の常で、足元の価格がすでにそれを示している。確率は、元の水準へ戻る道を厚くした。強気の見方は規制の期間に、慎重な見方は相場の平均回帰に根拠がある。規制が外れる時期は誰にも読めないので、確率を一方に寄せすぎない。後者のほうが、過去の例が多い。2022年3月期の営業利益22億円は、翌期に8億円へ落ちた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,502 円245 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 677 円66 億円)。 今の値に割り戻すと 1,620 円159 億円、今との差 +1.2%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 7,555 円741 億円 | 1,121 円110 億円 | +442.3% | +18.4% | 521 円51 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,516 円443 億円 | 917 円90 億円 | +239.6% | +13.0% | 978 円96 億円 |
| 中立 | 38% | 2,563 円251 億円 | 764 円75 億円 | +108.0% | +7.6% | 1,264 円124 億円 |
| やや悲観 | 26% | 818 円80 億円 | 489 円48 億円 | −18.3% | −2.0% | 340 円33 億円 |
| 悲観 | 12% | 408 円40 億円 | 224 円22 億円 | −60.5% | −8.9% | 76 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,502 円245 億円 | 677 円66 億円 | +98.7% | +7.1% | 3,179 円312 億円 |
今の株価時価総額 1,600 円157 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 中国の規制が続き、アンチモンは高値圏に居座る 利益 39 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 7,555 円741 億円
中国の規制が10年続き、地金が3万ドル台後半にとどまる筋書きだ。国内の難燃助剤で7割を押さえる同社は、価格を転嫁しながら在庫益も拾う。アンチモンの数量は回復し、売上は約310億円、営業利益は約37億円になる。金属粉末はAIサーバーと電動車の部品で数量が3割ほど増え、営業利益は約15億円に育つ。合計の営業利益は約56億円で、利益率は10%を超える。配当は10年で110億円、自己資本は295億円まで積み上がる。ROEは13%台に乗り、資本コストを大きく上回る。電池材料向けの硫化物など、新しい事業も上積みになる。10年で売上は520億円まで増える。
- アンチモン事業:数量 5,200(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 599(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 311 億円・営業利益 37 億円。営業利益率12.0%
- 金属粉末事業:数量 2,835(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 736(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 209 億円・営業利益 15 億円。営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.65 倍、時価総額 692 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国の輸出管理が長く続き、他国の増産も進まない必要がある。足元の相場はすでに高値から6割ほど下がっており、確度は低い。
やや楽観 18% 規制は残り、地金は2万円台後半で落ち着く 利益 24 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 4,516 円443 億円
規制は緩まず、他国の供給も限られ、地金が2万8千ドルほどで落ち着く筋書きだ。数量は5千トン弱まで戻り、アンチモンの営業利益は約21億円になる。金属粉末は高機能粉末の比率が上がり、売上は約190億円、営業利益は約12億円だ。会社が中期計画で掲げる営業利益30億円の平均を、10年後は上回る。合計の営業利益は約35億円。配当は10年で90億円で、自己資本は241億円になり、ROEは10%に届く。難燃助剤の国内シェアは保たれ、金属粉末の高機能化が利益率を押し上げる。価格の変動は残るが、赤字の期は出ない。10年で売上は400億円台になり、営業利益率は9%に近づく。
- アンチモン事業:数量 4,900(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 441(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 216 億円・営業利益 21 億円。営業利益率9.5%
- 金属粉末事業:数量 2,688(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 709(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 191 億円・営業利益 12 億円。営業利益率6.2%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.31 倍、時価総額 398 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国以外の供給は少しずつ増えるが、規制の枠組みは残り、地金は今の相場より高く落ち着く。会社の中期計画の想定(1トン1万8千ドル)を上回るため、確率は中立より低くした。
中立 38% 地金は2万ドルに落ち着き、粉末が利益を支える 利益 16 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,563 円251 億円
地金が2万ドルに落ち着き、アンチモンは「数量を売る普通の化学品」に戻る標準の筋書きだ。難燃助剤の需要は堅いが、樹脂の薄型化と代替品で伸びは小さく、数量は4,700トンまで戻る程度だ。アンチモンの営業利益は約11億円。金属粉末は高機能粉末で数量が2割増え、営業利益は約9億円になる。その他の収入と合わせ、営業利益は約23億円、純利益は約16億円だ。配当は10年で75億円で、自己資本は214億円にとどまり、ROEは7%台にとどまる。価格は今の0.44倍に見えるが、今の716万円が異常な高値で、2万ドルは物価の分を含んだ水準だ。2024年3月期の実績に比べれば、売上も利益も大きい。
- アンチモン事業:数量 4,700(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 315(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 148 億円・営業利益 11 億円。営業利益率7.5%
- 金属粉末事業:数量 2,520(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 682(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 172 億円・営業利益 9 億円。営業利益率5.5%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.73 倍、時価総額 218 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:相場はすでに中国のスポットで2万ドル前後まで下がっている。名目で横ばいは、実質では2割以上の下落だ。会社の中期計画の1万8千ドルと予想の2万4千ドルの間に置いた。最も確度が高く、厚く置いた。
やや悲観 26% 他国の供給が増え、地金は1万円台前半へ戻る 利益 8 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 818 円80 億円
中国以外の鉱山や再生原料が増え、地金が1万4千ドルへ戻る筋書きだ。2024年3月期の営業利益は7億円だったが、物価の分を足すと10年後は10億円台になる。アンチモンの数量は樹脂の代替も受けて4,200トンまで減り、営業利益は約5億円。金属粉末も自動車向けの落ち込みが響き、営業利益は約5億円にとどまる。合計の営業利益は約12億円、純利益は約8億円。配当は10年で48億円、ROEは3%台だ。会社は設備投資を絞り、配当性向の下限30%を守るのが精いっぱいになる。自己株の取得は見送られる。固定費の重い中瀬製錬所の稼働率が下がり、利益率の悪化が加速する。
- アンチモン事業:数量 4,200(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 221(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 5 億円。営業利益率5.0%
- 金属粉末事業:数量 2,205(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 627(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 138 億円・営業利益 5 億円。営業利益率3.5%
倍率:事業のROEは3.9%と資本コスト8%を大きく下回る。PERの上限1÷k=11.8倍から、市況の利益の質の低さと稼ぐ力の弱さで4割弱引いた7.5倍に置いた。
確率:高値が代替調達を呼ぶのは、商品の相場でよくある形だ。足元の相場はすでに6割安で、中国の規制が緩めば、2024年以前の水準へ戻る道筋が見える。
悲観 12% アンチモンの需要が構造的に細り、地金は元の水準以下へ 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 408 円40 億円
難燃剤の代替が進み、地金が9千ドルまで下がる筋書きだ。アンチモンの売上は47億円まで縮み、固定費の重さで利益はほぼ消える。金属粉末も価格競争で利益率が1%に落ちる。営業利益は約3億円、純利益は約2億円。配当は10年で22億円にとどまる。価値の中身は、純現金と、運転資金が現金に戻る分に近い。それでも、国内7割のシェアと中瀬製錬所の設備は残り、事業は消えない。2009年3月期の赤字の時も、会社は無配にせず、事業を続けた。電熱炉への転換投資は、省エネの形で固定費を抑える側にも働く。売上は140億円台に縮むが、粉末が半分以上を支える。
- アンチモン事業:数量 3,300(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 142(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.0%
- 金属粉末事業:数量 1,785(年間の販売数量(トン、推定))× 価格 545(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.0%
倍率:事業の稼ぐ力はROE1%と弱い。稼ぐ力(純利益2億円×6.0倍=約11億円)より、純現金のほうが大きいので、価値は床に置いた。今の自己資本154億円に掛けるPBR0.26倍。
確率:難燃剤の代替(ハロゲンフリー)が進み、中国が規制を外して地金が大量に出回る必要がある。過去にも営業利益が4億円まで落ちた期があり、無視はできない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アンチモン事業
三酸化アンチモンなど、難燃助剤や触媒向けのアンチモン化合物と地金の販売。
| 数量年間の販売数量(トン、推定) | 価格1トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,100 | 716 | 294 | 54 |
| 10 年後 中立 | 4,700 | 315 | 148 | 11 |
取り方:売上は決算で293.7億円。2026年3月期の上期の販売数量が2,035トン(前年より17%減)なので、年間を4,100トンと推定し、1トンあたり約716万円とした。地金の平均はおよそ4万8千ドルで、製品の値は地金に1.05を掛けて近い水準になる。利益は事業の営業利益53.9億円。相場が高く在庫益を含む、異例の水準である。
金属粉末事業
子会社の日本アトマイズ加工が作る、電子部品・自動車部品向けの銅粉、鉄系合金粉。
| 数量年間の販売数量(トン、推定) | 価格1トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,100 | 545 | 115 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2,520 | 682 | 172 | 9 |
取り方:売上は決算で114.5億円。2026年3月期の上期の販売数量が1,053トンなので、年間を2,100トンと推定し、1トンあたり約545万円とした。銀相場の上昇で単価が上がった分を含む。利益は会社の通期予想4.3億円を参考に、銀の上昇分を少し足して5.0億円と置いた(推定)。
リスクと懸念
アンチモン相場への依存
利益の大半はアンチモンの地金相場で決まる。中国が輸出管理を緩めたり、他国の鉱山が増産したりすれば、相場は元の水準へ戻る。足元の相場はすでに高値の4割まで下がった。
代替と需要の細り
難燃剤は、ハロゲンを使わない形への切り替えが長期で進む。アンチモンの販売数量は、2026年3月期の上期に前年より17%減った。値上がりが需要を壊す形が、すでに見えている。
高値期の投資と大株主
設備投資は前の計画の2倍の51億円だ。相場が戻ってから稼働すると重荷になる。大株主の川嶋のグループは、保有目的に重要提案行為等を含めており、提案や買収の動きが資本政策を左右しうる。
今後の分かれ目
- アンチモン地金が1トン1万8千ドルを下回っても、営業利益が15億円以上を保ったら
- 相場に頼らない収益力がある。中立の営業利益と確率を上へ見直す。
- 2027年3月期の営業利益が、会社の予想17億円を下回ったら
- 在庫益の剥落が想定より大きい。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 金属粉末の営業利益率が5%を超えたら
- AIサーバー向けの高機能化が利益に出ている。中立の粉末の利益率を見直す。
見ておくもの
- アンチモン地金の相場と、中国の輸出管理の動き
- アンチモンの販売数量と、金属粉末の営業利益率
- 配当性向の実績と、自己株式取得の実行
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROEと資本コスト8%の関係から式で出した。中立は事業のROEが7.5%でkを下回るため、PERの上限は1÷k=11.8倍。利益の質の低さ(市況)で2割弱引いた9.5倍に置いた。今の株価や過去のPER、同業の倍率は使っていない。地金は10年後(名目)で、楽観3万8千、やや楽観2万8千、中立2万、やや悲観1万4千、悲観9千ドルとした。中立は、会社の中期計画の想定(1万8千ドル)と予想(2万4千ドル)の間で、中国のスポット(足元2万ドル前後)と同じ水準だ。2026年3月期の純利益42億円は相場と在庫益の産物なので、土台に入れていない。純利益÷営業利益は過去の中央値0.67に近い0.68で置いた。中立の営業利益率7.3%は、過去12年の山14.9%より低く、前の計画の期間(2023〜2025年3月期)の実績の延長に近い。アンチモン事業の1トンあたりの利益は、物価の分を足した中立で約25万円と置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→17.65 倍・やや楽観 PER 10.5→16.31 倍・中立 PER 9.5→13.73 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。