結論
JMACS は兵庫県小野市の小さな電線メーカーだ。工場の制御や計装、通信と防災に使う特殊なケーブルを、短い納期で作って稼ぐ。筆者の結論は割高である。今の稼ぎは半導体と工場更新の山に乗った数字で、ならした利益率は時価総額を支えきれない。
2026 年 2 月期の営業利益は 5 億円で、前の期の 7 倍になった。今期は 7 億円に届く見込みだ。ただ、この 10 年の営業利益率はおおむね 1〜3% にとどまり、赤字の年も 3 回あった。好況の利益をそのまま 10 年先に伸ばすのは危うい。
10 年後の姿として、筆者は利益率 6% 前後への着地を見込む。そこまで上がっても自己資本利益率(ROE)は 5% に届かず、資本コストの 8.5% を下回る。ためた利益が株主の価値を十分に生まない形が続く。ロボット向けやペロブスカイト向けの話題は、まだ数字に表れていない。
短納期の小回りは本物の強みだが、規模で勝る大手が同じ市場に入れば守りにくい。今の時価総額は自己資本とほぼ同じで、資本コストに届かない稼ぎに帳簿どおりの値段を払う形になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ち続けたい事業」とまでは言えない。理由は単純で、長い目で見た資本の稼ぐ力が弱いからだ。過去 10 年の多くの年で、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生まなかった。
今の好況は本物の追い風だ。半導体と工場の更新で注文があふれ、短納期の強みが値段に表れている。ただ、オーナーとして見るべきは山の利益でなく、谷を含めた平均の稼ぎである。
安全域、つまり払う値段と価値の差は、今の時価総額では取れない。時価総額は自己資本とほぼ同じで、帳簿の価値をそのまま払う形だ。ROE が資本コストに届かない会社に、帳簿どおりの値段は高い。新しい社長が利益率の底上げと資本の使い方を示せば、見方は変わる。
投資不動産と有価証券は売れば現金になる資産で、悲観の時の床にはなる。ただ、売る方針は示されていない。床があることと、価値が上がることは別の話だ。
何で稼ぐ会社か
事業は電線の 1 本だけだ。FA ネットワーク、計装、高難燃、光、EV 充電用、洋上風力用、通信・防災用と、品種は多い。どれも大手が量で戦う電力ケーブルとは違う、小ロットの特殊品である。
売り先は電線の商社と、装置や制御盤をつくる会社が中心だ。強みは「スピードと技術」と自ら言う短納期で、急ぎの注文を拾って値段を守る。2026 年度上期は半導体装置向けと、プラントや信号の更新が伸びた。売上は 24% 増え、営業利益は倍になった。
原料は銅と樹脂だ。銅は値段に転嫁する商慣行があるが、樹脂は原油の値段で動き、中東情勢で高くなっている。値上げが追いつくまでの間、利益率が削られやすい。
本業の外に、投資不動産を持って賃料を得ている。帳簿の額は 16 億円ほどで、営業外の収入として毎年の利益を下支えする。スマートグラスや無線センサーのソリューション事業もあるが、規模はまだ小さい。
会社は 100 年企業を目指すと言い、原価の低減と多能工化を進めている。中期経営計画の数値目標は出していない。決算の説明会も開かず、投資家への説明は短信と短い文書だけだ。
優良さと弱いところ
JMACS の優良さは、短納期という小回りにある。大手が手を出しにくい小ロットの特殊品を、急ぎで届ける。この役回りで顧客を離さず、好況の時には値段も通る。
弱さははっきりしている。第 1 に規模だ。売上は 60 億円で、住友電気工業やフジクラの 100 分の 1 に満たない。材料の買い付けでも設備でも、大手に勝てない。第 2 に利益の振れだ。過去 10 年の ROE の中央値は 1.5% で、資本コストを大きく下回ってきた。
第 3 に経営の継ぎ目である。2026 年 6 月に社長が急逝し、41 歳の副社長が後を継いだ。会社の歩みが変わるかは、まだわからない。堀、つまり他社がまねできない強みは、狭く浅いと見るのが妥当だ。
資本の効率も低い。自己資本の 3 割近くを投資不動産と有価証券が占め、本業の資本の稼ぎを薄めている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電線の業界は、大手の寡占と中小の専門メーカーの二層でできている。国内の大手は住友電気工業、フジクラ、古河電気工業、SWCC だ。いまはデータセンター向けの光ケーブルと、送電網向けの電力ケーブルで稼いでいる。JMACS はその隣の、工場と設備のケーブルで生きる。
工場向けの需要は、半導体と設備投資の波で大きく揺れる。いまは半導体の増産と、古いプラントや鉄道信号の更新が重なった山にある。この山がいつ終わるかは読めないが、過去の電線の需要は数年ごとに 2〜3 割縮んできた。
10 年の流れで見ると、追い風は 2 つある。工場の自動化でロボット向けの高屈曲ケーブルが増えること、そして再生可能エネルギーの配線だ。向かい風は、樹脂と銅の値上がりと、人手の不足である。筆者は、数量は実質で年 1.5% ほど伸び、値段は物価並みに上がると見る。
国内の銅電線の需要は年 60 万トン強で、長く横ばいが続いてきた。人口が減っても、工場と送電網の更新が需要を支える。JMACS の取り分はその 0.3% にも満たない小さなものだ。だからこそ、大手が見向きもしない小ロットの注文で生き残ってきた。大手が採算の良いデータセンター向けに力を注ぐ間は、この隙間は残る。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、自社株買いはしていない。2026 年 2 月期の配当は総額 0.8 億円で、配当性向は 21% だった。今期も同じ額を据え置く。
財務は堅くも弱くもない。現金は 16 億円、借入金は 28 億円で、わずかな純負債だ。投資不動産と有価証券で 18 億円ほどの資産を持つ。2024 年度には株数が 1 割強増えている。
M&A の歴史は乏しい。2024 年に個人投資家が 5% 超を買ったが、純投資と届けている。小さく安い会社なので、大手や投資ファンドの買収の的になりうる。ただし、具体的な動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今回の山は、ただの景気の波ではない。2026 年度の上期は、半導体装置向けと、プラントや信号の更新が同時に伸びた。会社は通期の営業利益の予想を 2 倍に上げた。短納期の評判が広がれば、値段の通る特殊品の比率は上がり続ける。
10 年の追い風も厚い。工場の自動化でロボットの台数は増え、曲げに強いケーブルの需要は伸びる。ペロブスカイト太陽電池が広がれば、その配線という新しい市場も開ける。EV 充電や洋上風力用のケーブルもそろえている。
資産の裏付けもある。投資不動産と有価証券で 18 億円ほどを持ち、毎年の賃料が利益を下支えする。利益率が 9% 台で定着すれば、ROE は資本コストを超え、今の時価総額は安く見える。
新しい社長は 41 歳と若い。原価の低減と多能工化を自ら進めてきた人で、代替わりは攻めの経営に変わる好機にもなる。大手が手を引く小ロットの品種を引き受けていけば、取り分は少しずつ広がる。
慎重な見方
過去 10 年の営業利益率はほとんど 1〜3% で、赤字の年も 3 回あった。今の 10% 近い利益率は、半導体の増産と更新の重なった山の数字だ。山の利益を地の力と取り違えてはいけない。
電線の材料は銅と樹脂で、どちらも値段が激しく動く。中東情勢で樹脂は高い。値上げが遅れれば、利益はすぐに削られる。規模が小さく、大手のような買い付けの力もない。
ロボットやペロブスカイトの話題は、株価を一時 2 倍以上に押し上げたが、まだ売上に表れていない。社長の急逝で経営の継ぎ目もある。工場の需要が細る局面では、利益率は元の 2% に戻り、ROE は資本コストを大きく下回る。
資本の使い方にも不安がある。自己資本の 3 割近くが投資不動産と有価証券に眠り、還元は配当だけだ。売上が伸びる局面では売掛金と在庫が膨らみ、借入が増える。稼ぎが増えても、株主の手元に残る現金は増えにくい。大手が小ロットの短納期に本気で乗り出せば、値段の優位も消える。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。30 年近い記録で、利益率が 10% を超えたのは 1 年だけだ。短納期の強みは本物だが、山の利益を 10 年続けるほどの堀ではない。確率は中立とやや悲観に厚く置き、楽観は 1 割未満にとどめた。今期の勢いは認めるが、それを地の力と見るには、谷の年でも利益率を保てるかを確かめる必要がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 809 円46 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 210 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 497 円28 億円、今との差 −45.4%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,868 円105 億円 | 343 円19 億円 | +143.0% | +9.3% | 177 円10 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,257 円71 億円 | 267 円15 億円 | +67.4% | +5.3% | 305 円17 億円 |
| 中立 | 37% | 869 円49 億円 | 217 円12 億円 | +19.3% | +1.8% | 402 円23 億円 |
| やや悲観 | 23% | 297 円17 億円 | 155 円9 億円 | −50.4% | −6.8% | 104 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 151 円9 億円 | 110 円6 億円 | −71.3% | −11.7% | 31 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 809 円46 億円 | 210 円12 億円 | +11.9% | +1.1% | 1,019 円57 億円 |
今の株価時価総額 910 円51 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 半導体と自動化の波が続き、特殊品で利益率が定着 利益 9 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,868 円105 億円
半導体と工場の自動化の波が 10 年続く筋書きだ。ロボット向けの高屈曲ケーブルが量産品になり、ペロブスカイト太陽電池の配線でも採用が広がる。短納期の評判で特殊品の比率が上がり、値上げも物価より少し上を通す。
出荷は実質で 1.5 倍に増え、利益率は 9% 台で定着する。新しい社長のもとで原価の低減と多能工化が進み、谷の年でも黒字を守る。投資不動産の賃料も物価とともに増える。ROE は資本コストをわずかに超え、ためた利益が価値を生み始める。新しい経営陣は配当を増やし、投資不動産の一部を売って本業に回す。資本の効率は少しずつ上がる。
- 電線事業:数量 2,440(電線の出荷量(銅換算トン)= 国内の銅電線の需要 約 63 万トン(日本電線工業会)× 当社の推定シェア 0.25%)× 価格 528(銅 1 トンあたりの売上(万円。被覆・加工の付加価値と銅・樹脂の転嫁、物価を含む))→ 売上 129 億円・営業利益 12 億円。2,440 トン(市場横ばい・シェア 0.39%)× 528 万円(1.40 倍)、営業利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.86 倍、時価総額 105 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率 9% 台が 10 年続くには、30 年で 1 度しかない水準を保つ必要がある。短納期の強みは本物だが堀は浅いので 8% とした。
やや楽観 20% 工場向けの更新が底堅く、利益率 7% 台 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,257 円71 億円
工場向けの需要が底堅く、山がなだらかに続く筋書きだ。半導体は波を打つが、プラントや鉄道信号の更新と、EV 充電・洋上風力の配線が穴を埋める。ロボット向けは育つが、主力にはならない。
出荷は実質で 3 割強増え、利益率は 7% 台に落ち着く。値上げは物価並みに通る。ROE は 6% 台に上がるが、資本コストにはまだ届かない。配当は利益に合わせて増え、自己資本は着実に積み上がる。新しい経営陣が還元の方針を示せば、現金のたまり方も変わる。工場の自動化の流れは途切れず、短納期の評判は顧客の間で広がり続ける。
- 電線事業:数量 2,120(電線の出荷量(銅換算トン)= 国内の銅電線の需要 約 63 万トン(日本電線工業会)× 当社の推定シェア 0.25%)× 価格 516(銅 1 トンあたりの売上(万円。被覆・加工の付加価値と銅・樹脂の転嫁、物価を含む))→ 売上 109 億円・営業利益 8 億円。2,120 トン(シェア 0.34%)× 516 万円(1.37 倍)、営業利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 71 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の勢いと更新需要の厚みを見れば起こりうる。ただし利益率 7% 台が続いた記録はないので 2 割とした。
中立 37% 山が終わり、利益率は 6% 前後に戻る 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 869 円49 億円
半導体の山が終わり、利益率が上と下の中ほどに戻る筋書きだ。高付加価値品への寄せは残るので、昔の 1〜3% には戻らない。一方で、今期の 10% 近い利益率も続かない。
出荷は工場の自動化と更新で、実質で年 1.5% ほど伸びる。値段は物価並みに上がる。利益率は 6% 前後で、ROE は 5% に届かない。ためた利益は自己資本として積もるが、資本コストを下回る稼ぎしか生まない。新しい経営陣は大きな変化を起こさず、配当は性向 3 割ほどで続く。投資不動産は持ち続け、賃料が営業外で利益を下支えする。株主の価値は、帳簿の伸びほどには増えない。
- 電線事業:数量 1,860(電線の出荷量(銅換算トン)= 国内の銅電線の需要 約 63 万トン(日本電線工業会)× 当社の推定シェア 0.25%)× 価格 505(銅 1 トンあたりの売上(万円。被覆・加工の付加価値と銅・樹脂の転嫁、物価を含む))→ 売上 94 億円・営業利益 6 億円。1,860 トン(シェア 0.30%)× 505 万円(物価並み 1.34 倍)、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 49 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高付加価値品への寄せと、利益率が山から戻る動きの両方を半分ずつ認める落としどころなので、最も厚い 37% とした。
やや悲観 23% 設備投資が冷え、利益率は平均の 3% へ 利益 2 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 297 円17 億円
工場の設備投資が冷え、樹脂と銅の高さが利益を削る筋書きだ。半導体の調整が長引き、プラントの更新も一巡する。小ロットの特殊品にも、大手や海外の安い品が入ってくる。
出荷は実質で今と同じ水準にとどまり、値上げは物価に追いつかない。利益率は 3% と、過去 10 年の平均に近い所へ戻る。ROE は 2% 台で、ためた利益は帳簿ほどの価値を持たない。配当は据え置きが精いっぱいになり、新しい製品の芽も育たない。ロボット向けやペロブスカイト向けは、大手に先を越されて小さな取引で終わる。運転資金の重さで借入も減らない。
- 電線事業:数量 1,600(電線の出荷量(銅換算トン)= 国内の銅電線の需要 約 63 万トン(日本電線工業会)× 当社の推定シェア 0.25%)× 価格 471(銅 1 トンあたりの売上(万円。被覆・加工の付加価値と銅・樹脂の転嫁、物価を含む))→ 売上 75 億円・営業利益 2 億円。1,600 トン(シェア据え置き)× 471 万円(1.25 倍、物価に届かない)、営業利益率 3.0%
倍率:ROE 2.3% は k 8.5% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て、1÷k の 11.8 倍の 7 割の 8.2 倍。
確率:過去 10 年の利益率の中央値に近い所へ戻る筋書きで、記録の上では起こりやすい。高付加価値品への寄せを考えて 23% とした。
悲観 12% 小回りの強みが消え、利益はほぼゼロ 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 151 円9 億円
特殊電線の小回りが強みでなくなる筋書きだ。大手が小ロットの短納期に乗り出し、海外の安い品も入り込む。顧客の装置メーカーが部材をまとめて大手から買うようになり、出荷は実質で 2 割近く減る。
値上げは通らず、営業利益はほぼゼロに沈む。投資不動産の賃料が利益をわずかに支えるだけだ。経営の継ぎ目で新しい手も打てず、現金は借入の返済と運転資金に消える。株主の価値は、不動産と有価証券を売った時の値段に近づく。新しい経営陣の手探りが続くうちに、熟練の人手も細っていく。小さな会社の弱さが、谷の深さとして表れる。
- 電線事業:数量 1,330(電線の出荷量(銅換算トン)= 国内の銅電線の需要 約 63 万トン(日本電線工業会)× 当社の推定シェア 0.25%)× 価格 434(銅 1 トンあたりの売上(万円。被覆・加工の付加価値と銅・樹脂の転嫁、物価を含む))→ 売上 58 億円・営業利益 0 億円。1,330 トン(市場 0.95 倍・シェア 0.22%)× 434 万円(1.15 倍)、営業利益率 0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロなので、床は売れる資産で見る。投資不動産と有価証券の税後から純負債を引いた約 8.5 億円を、今の自己資本 56.5 億円に対する PBR 0.15 倍で表した。
確率:過去 20 年で赤字は 7 回あり、谷の深さは記録が示す。大手と海外勢に挟まれて構造的に負ける筋書きとして 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電線事業
FA・計装・通信防災・高難燃・光・EV 充電用などの特殊ケーブルを小ロット・短納期で作る(単一セグメント)。
| 数量電線の出荷量(銅換算トン)= 国内の銅電線の需要 約 63 万トン(日本電線工業会)× 当社の推定シェア 0.25% | 価格銅 1 トンあたりの売上(万円。被覆・加工の付加価値と銅・樹脂の転嫁、物価を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,600 | 377 | 60 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,860 | 505 | 94 | 6 |
取り方:品種別の数量の開示がないため推定。国内の銅電線の需要約 63 万トン(日本電線工業会の 2024 年度見通し)に、多心の特殊ケーブル主体の当社の取り分 0.25% を掛けて 1,600 トン。売上 60.3 億円を割った 1 トンあたり約 377 万円は、銅の値段(約 160 万円)の 2.4 倍で、細物・多心の特殊品として妥当な水準。
リスクと懸念
好況の山の終わり
今の利益は半導体の増産と工場の更新が重なった山の数字だ。半導体の調整が来れば、注文は数四半期で細る。過去 10 年の営業利益率の中央値は 2% 前後で、山が終われば利益は大きく戻る。
樹脂と銅の値上がり
電線の材料は銅と樹脂で、樹脂は中東情勢による原油高で値上がりしている。値上げが追いつくまでの数か月、利益率は削られる。規模が小さいので、材料の買い付けで大手に勝てない。
経営の継ぎ目
2026 年 6 月に長く社長を務めた植村剛嗣氏が急逝し、41 歳の植村瑠美氏が後を継いだ。経営の方針や資本の使い方が変わるかは、まだ見えない。小さな会社では、経営者 1 人の判断の重みが大きい。
運転資金の膨らみ
売上が伸びると、売掛金と在庫が先に膨らむ。2026 年度上期は営業活動の現金が 6 億円の流出になり、短期の借入を増やした。成長の局面ほど現金が細り、金利の上昇で利払いも重くなる。
話題先行の新製品
ロボット向けの高屈曲ケーブルやペロブスカイト太陽電池向けの配線は、株価を一時 2 倍以上に押し上げた。ただ、売上への寄与は開示されておらず、大手も同じ市場を狙う。期待が数字に変わらない恐れがある。
今後の分かれ目
- 半導体装置の受注が 2 四半期続けて減ったら
- やや悲観の筋書きに重みを移す。工場向けの注文は数四半期遅れて細るので、利益率の戻りを早めに見込む。
- 下期も営業利益率 9% 以上を保ち、来期の予想も高い水準なら
- 高付加価値品への寄せが根づいた証拠として、やや楽観の筋書きの確率を上げる。
- 新しい経営陣が中期の数値目標や還元の方針を示したら
- 資本の使い方の見通しが立つので、ROE の見通しと配当性向を見直す。自社株買いが入れば価値は上がる。
- ロボット向けやペロブスカイト向けの売上が開示され、1 割を超えたら
- 数量の伸びを上方に見直し、楽観の筋書きの確率を上げる。
- 大手電線メーカーや投資ファンドが買収を持ちかけたら
- 割安に見えなくても、帳簿の価値に近い値段で決着しうる。筋書きの外の上振れとして扱う。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率と受注の勢い(半導体装置向け・プラント向け)
- 樹脂と銅の値段と、値上げの浸透
- 新しい経営陣の方針(中期目標・配当性向・自社株買い)
- 売掛金と在庫の増え方、短期借入の残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去の PER を見ずに、ROE と k 8.5% から決めた。中立の ROE は 4.9% で k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍になり、その 8 割を使った。利益率は今期の 10% 近い山でなく、過去 12 年の山(8.3%)と中央値(2% 前後)の間の 6% に置いた。今の時価総額は自己資本とほぼ同じだが、PBR 1 倍を割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.7→11.86 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。