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大阪チタニウムテクノロジーズ 5726

航空機向けの先行増産は強みだが、利益の伸びに対して資本と借入の負担が重く、今の値段は計画の達成を織り込みすぎている

割高
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)1,422 円638 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)2,107 円945 億円差 −32.5%
10 年後から見ると 割高 価値 1,422 円638 億円 · 差 −32.5% · 期待の年率 +3.5%
期待の年率リターン(10 年)+3.5%資本コスト比 −5.2 pt
推定の資本コスト8.8%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 8.8% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

大阪チタニウムテクノロジーズは、航空機のエンジンや機体に使うスポンジチタン(チタンの原料)を作る国内最大手だ。筆者の結論は、いまの値段は割高というものである。強みは確かだが、会社の計画を満額で信じないと、この値段は正当化できない。

強みは先に動いたことにある。尼崎で年産を 4 万トンから 5 万トンへ増やす投資を、会社は「世界で最初に」決めたと説明する。ロシア材を避けたい航空機メーカーとエンジン会社にとって、認証済みの供給元は限られる。2030 年度に営業利益 200 億円という計画も、この需要を背景にしている。

ただ、この会社の中期計画はこれまで毎回達成できていない。2015 年版が掲げた営業利益 70 億円は実際 33 億円、2018 年版の 50 億円は実際は赤字だった。赤字の期は過去 15 年のうち 6 期ある。景気の波が深く、設備が重い事業だ。

しかも今回は、増産の資金を公募増資と借入で賄う。増資で株数は 2 割増え、完工後の償却と金利も重くなる。中立で見ると、10 年後の営業利益は 130 億円ほど、ROE は 9% 前後と資本コストと同じ水準にとどまる。

本質価値は今の時価総額を 4 割あまり下回る。10 年後の時価総額が今を超えるのは、やや楽観より上の筋書きだけだ。需要の強さは疑わないが、その強さに払う値段としては高すぎる。

バリュー投資の観点から

バリュー投資の観点では、この会社を 3 つの目で見る。事業の質、資本の使い方、払う値段だ。

事業の質では、航空機用の認証に守られたスポンジの供給は、世界でも限られた事業だ。需要も 10 年先まで見通しが立つ。この点だけなら、持ち続けたい事業に入る。

資本の使い方では、点数が下がる。景気の山で設備を増やし、谷で借入が重くなる繰り返しを、この会社は何度も経験した。今回も株主から約 200 億円を集めたうえで、さらに借入を増やして投資する。需要は確かだが、投資の回収は 10 年先の値段の勝負になる。

払う値段では、安全域がまったくない。中立の筋書きで、10 年後の営業利益は 130 億円、ROE は資本コストと同じだ。ROE が資本コストと同じなら、払ってよい値段は自己資本とほぼ同じになる。今の時価総額は自己資本の 1.6 倍で、計画が満額に近いことを前提にしている。

筆者は、この会社を嫌いではない。強い需要の中にいる。ただ、事業の質の良さを、そのまま払う値段の高さに換えてはいけない。

何で稼ぐ会社か

稼ぎの中心はチタン事業で、売上のほとんどを占める。チタン鉱石を塩素と反応させ、マグネシウムで還元してスポンジ状の金属チタンを作る。これを溶かして固めたインゴットまで手がけ、顧客はチタン製品メーカーだ。最大の用途は航空機で、エンジンの回転部品や機体の骨組みに使われる。

航空機向けは品質の認証が要る。品質の要求が特に厳しい。国内では東邦チタニウムとの 2 社で供給し、世界ではロシアの VSMPO-AVISMA や中国勢が並ぶ。一般産業向け(化学プラントなど)は性格が違い、値段で決まる汎用品に近い。

もう 1 つの柱が高機能材料事業だ。高純度チタンや球状チタン粉末を作る。半導体の部材や金属 3D 造形の材料になるが、規模はまだ小さい。会社は 2030 年度に売上 150 億円、営業利益率 30% 以上を目指している。

収益の源は、出荷量(トン)と 1 トンあたりの値段だ。出荷量は設備の能力で上限が決まる。値段は、航空機向けの長期の取り決めと、一般産業向けの市況が混ざって決まる。固定費が重く、稼働率が下がると利益が急に落ちるのが、この事業の癖である。

優良さと弱いところ

事業の質は、堀と資本の使い方に分けて見る。堀は航空機用の認証だ。顧客に認められた供給元は限られ、新規の参入には壁がある。この点は本物で、筆者は他の素材メーカーより高く評価する。

ただ、堀の外側は薄い。一般産業向けは中国材と値段で競り合う。航空機向けでも、ロシア材が戻れば認証済みの供給元が増える。堀が値段を決める力に直結しているとは言えず、強い堀とはしない。

資本の使い方は評価が割れる。過去の計画は毎回未達で、2008 年に設備投資を 510 億円から 650 億円へ増やした後も、2014/03 期と 2016/03 期に赤字を出した。景気の山で設備を増やし、谷で苦しむ形を繰り返してきた。

今回の増産は需要の裏付けが以前より強い。それでも、株主に増資を頼み、借入も使う点は変わらない。財務の厚みは、自己資本比率が 4 割台と普通の水準で、増資の前から余裕があったわけではない。

利益の質は、景気の波に左右される。2024/03 期と 2025/03 期の営業利益率は 15〜19% まで上がったが、2026/03 期は 12% に下がり、今期は 8% の予想だ。過去 10 年の ROE の中央値は 3.6% にすぎない。山の数字を平常と見ないのが、バリュー投資家の目だ。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

チタンの需要は、航空機の生産と運航に大きく依存する。運航機数の増加、機体メーカーの増産、エンジンの整備需要が、スポンジの需要を押し上げる。調査会社は航空宇宙・防衛向けのスポンジ市場を、2025 年の 17.8 億ドルから 2026 年の 18.6 億ドルへと伸びると推計する。

需要は強いが、供給も動いている。大阪チタンは 4 万トンから 5 万トンへ、東邦チタニウムも若松と茅ヶ崎で年 3,000 トンを増やす。ロシア材は航空機の民間向けに戻る可能性があり、決算説明会でも質問に出た。中国材は欧州でアンチダンピング措置を受けるが、一般産業向けでは安く出る。

値段は、足元で下がっている。会社は前期の予想時に、輸出価格の一時的な下落と、国内の一般産業向けの在庫調整を挙げていた。前期の営業利益は 45% 減っている。ただ今期の第 1 四半期は営業利益が前年同期の 1.8 倍に回復した。

航空機の需要は景気の山と谷で数年遅れて動く。機体メーカーの生産トラブルや世界不況で、納入が止まる年が出る。10 年を通せば需要は伸びるが、年ごとの出荷は凸凹になる。

筆者は、需要の強さと供給の増加が同じ速さで進むと見ている。需要の伸びが価格に回るのは、ロシア材と中国材が航空機の認証の外にとどまる間だけだ。その見通しは 10 年も続くとは限らない。

資本政策と M&A

資本政策の中心は、尼崎の増産投資 390 億円(当初 330 億円から増額)だ。補助金 80 億円が出る見込みで、残りは自己資金、借入、公募増資で賄う。2026 年 8 月に 805 万株の公募増資を発表し、株数は 2 割ほど増えた。調達は約 200 億円で、発表当日の株価は 7% 下がった。

還元は、増産が終わるまで薄い。会社の計画では、2026〜28 年度の還元は 3 年で 30 億円、2029〜30 年度に 260 億円へ増やす。2029 年度以降の還元方針は見直す予定だ。配当より借入返済を優先する姿勢が読み取れる。

株主は分散している。神戸製鋼所が 8% ほど、三井住友トラスト・アセットマネジメントと共同保有者が合わせて 12% ほどを持つ。かつて親会社だった日本製鉄は主要株主でなくなった。支配する株主がいないため、買収の対象になりうる一方、守る株主もいない。

M&A の面では、買う側として動く気配はない。買われる側としての可能性は、チタンの供給網を押さえたい素材メーカーや航空機部品メーカーが考えられる。ただし、根拠のある報道は確認できない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

航空機向けのチタン需要は、運航機数、機体の増産、エンジンの整備と、三方向から伸びる。西側で認証を持つスポンジメーカーは限られ、増産で先行した大阪チタンは、その需要をまともに受け止められる位置にいる。

ロシア材を避ける動きは根強く、航空機メーカーとエンジン会社は供給元の分散を急ぐ。2026 年度の第 1 四半期は営業利益が前年の 1.8 倍に戻った。谷は終わりつつある。

新工場が動けば、5 万トン体制で航空機向けのシェアは 40% から 50% へ上がる。営業利益率は 20% に戻り、営業利益は 200 億円に届く。補助金 80 億円と、金融機関の全面的な支援があり、資金面の不安は小さい。

高機能材料も、半導体や金属 3D 造形の需要で売上 150 億円を目指す。営業利益率 30% 以上の事業が全社の利益を底上げする。2029 年度以降は還元が 260 億円に増え、ROE は 20% へ向かう。市場が計画を信じるのは、当然だ。

慎重な見方

中期経営計画は、2010 年版以降、毎回未達だった。2010 年版は営業利益 145 億円に対し 28 億円、2015 年版は 70 億円に対し 33 億円、2018 年版は 50 億円に対し赤字だ。今回の営業利益 200 億円も、同じ道をたどる確率が高い。

増産は需要の裏付けがあるが、供給も増える。東邦チタニウムが増強し、ロシア材の民間航空機向けへの復帰と中国材の参入が、決算説明会の質疑でも話題になった。認証が広がれば、値段は物価に追いつかない。

資金も重い。投資は 330 億円から 390 億円へ膨らみ、2 割増の増資と借入の増加が同時に来る。完工後の償却と金利は固定費になり、稼働率が 8 割を切ると利益が急に落ちる。2016/03 期と 2021/03 期は、まさにそうなった。

赤字の期は過去 15 年で 6 期ある。今期の営業利益は 37 億円と、前期からさらに 3 割減る予想だ。山の利益率を平常と見て、その 10 年先まで払うのは高い。

どちらに重みを置いたか

どちらの言い分も事実に基づくが、慎重な見方がやや強い。需要の強さは疑いないが、計画の未達の歴史と、資金調達の重さは、説明のつく確率の寄せ方になる。

そのため、楽観を 1 割、やや楽観を 2 割に抑え、中立に 35%、慎重側に 35% を置いた。中立では、営業利益は計画の 3 分の 2 の 130 億円にとどまる。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 2,364 円1,060 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 609 円273 億円)。 今の値に割り戻すと 1,422 円638 億円、今との差 −32.5%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 8.8%)→ 割高

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 10% 5,671 円2,543 億円 1,260 円565 億円 +228.9% +12.6% 693 円311 億円
やや楽観 20% 3,850 円1,727 億円 908 円407 億円 +125.8% +8.5% 951 円427 億円
中立 35% 2,191 円983 億円 642 円288 億円 +34.5% +3.0% 992 円445 億円
やや悲観 25% 771 円346 億円 279 円125 億円 −50.2% −6.7% 262 円118 億円
悲観 10% 672 円301 億円 67 円30 億円 −65.0% −10.0% 74 円33 億円
加重平均100% 2,364 円1,060 億円609 円273 億円 +41.1% +3.5% 2,972 円1,333 億円

今の株価時価総額 2,107 円945 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。

楽観 10% 航空機向けが供給不足のまま続き、増産が値上がりつきで売れる 利益 180 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 5,671 円2,543 億円

航空機の運航機数とエンジン整備の需要が伸び続け、西側で航空機用に認められたスポンジの供給が足りない状態が 10 年続く。大阪チタンは 5 万トン体制をすぐに使い切り、さらに増設する。航空機向けのシェアは会社が掲げる 5 割を超える。

価格は需給の逼迫で物価を上回る。営業利益率は会社が目標にする 20% を超え、2008 年の山に近づく。球状チタン粉末や高純度チタンも、半導体と金属 3D 造形の需要で伸びる。

借入は増産の完成後、営業のお金で急速に減る。2029 年度以降は還元が計画どおり厚くなり、配当と自社株買いの合計が大きく積み上がる。中期経営計画をほぼ実現し、物価分だけ上積みした姿だ。

  • チタン事業(スポンジチタン・インゴット):数量 54.0(出荷量(千トン、スポンジ換算))× 価格 19(1 千トンあたり売上(億円・名目、インゴット込み))→ 売上 1,052 億円・営業利益 231 億円。出荷 5.4 万トン(能力 5 万トン超の追加増設を含む)× 単価 1.45 倍、営業利益率 22%
  • 高機能材料事業(高純度チタン・球状チタン粉末):数量 1,200(出荷量(トン))× 価格 0.14(1 トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 47 億円。1,200 トン × 単価 1.40 倍、営業利益率 28%

倍率:事業の純利益 180 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.13 倍、時価総額 2,543 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:ロシア材が戻らず、中国材も航空機の認証を取れない状態が 10 年続き、さらに追加の増設が要る水準まで需要が伸びる筋書き。すべてがうまくいく必要があり、2010 年版以降の計画が毎回未達だった経緯から、高い確率は置けない。

やや楽観 20% 新工場がほぼ満員で動き、計画の 7 割を実現する 利益 131 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 3,850 円1,727 億円

新工場は立ち上がりに大きな失敗なく、5 万トン体制の稼働率が 9 割台に乗る。ロシア材の航空機向けへの復帰は限定的で、中国材は一般産業向けにとどまる。

価格は物価並みを少し下回る程度に落ち着く。営業利益率は 2030 年度の目標 20% に届かず、2 割弱で止まる。会社の計画の営業利益 200 億円を、物価の分を含めて 7 割ほど実現する形だ。

借入は 2030 年前後に減り始め、還元は計画より薄めに出る。ROE は 12% 台に戻り、資本コストを上回る。高機能材料は計画の 150 億円に届かないが、100 億円ほどに育ち、全社の利益率を押し上げる。立ち上げで大きくつまずかなかった分、会社への信頼も戻る。

  • チタン事業(スポンジチタン・インゴット):数量 50.0(出荷量(千トン、スポンジ換算))× 価格 19(1 千トンあたり売上(億円・名目、インゴット込み))→ 売上 927 億円・営業利益 176 億円。出荷 5.0 万トン(新工場がフル稼働)× 単価 1.38 倍、営業利益率 19%
  • 高機能材料事業(高純度チタン・球状チタン粉末):数量 1,000(出荷量(トン))× 価格 0.14(1 トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 34 億円。1,000 トン × 単価 1.37 倍、営業利益率 25%

倍率:事業の純利益 131 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.18 倍、時価総額 1,727 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:航空機の需要は底堅く、先に増産を決めた強みも効く。ただ会社の過去の計画は毎回未達で、満額には届かないとみる。

中立 35% 5 万トン体制は動くが、利益は計画の 3 分の 2 にとどまる 利益 85 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 2,191 円983 億円

航空機向けの需要は実質で年 4% 弱伸び、大阪チタンは 5 万トン体制の 9 割強を使う。ただし航空機向けに認められたスポンジの供給元は増える。東邦チタニウムの増強、ロシアや中国の動きがあり、値段は物価に追いつかない。

営業利益率は 15% で、過去 3 期の山の水準に届かない。償却の重い新工場の分と、景気の谷の年が混ざるためだ。営業利益は 130 億円ほど。会社が 2030 年度に掲げる 200 億円の 3 分の 2 にあたる。

高機能材料は半導体と造形の需要で 2 倍の出荷に伸びるが、全社の利益を動かすほどの大きさにはならない。還元は 2029 年度から厚くなるものの、増産の借入の返済と並行するため控えめだ。

  • チタン事業(スポンジチタン・インゴット):数量 46.0(出荷量(千トン、スポンジ換算))× 価格 17(1 千トンあたり売上(億円・名目、インゴット込み))→ 売上 804 億円・営業利益 121 億円。出荷 4.6 万トン(能力の 9 割強)× 単価 1.30 倍(物価 1.34 倍よりやや低い)、営業利益率 15%
  • 高機能材料事業(高純度チタン・球状チタン粉末):数量 800(出荷量(トン))× 価格 0.13(1 トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 21 億円。800 トン × 単価 1.34 倍、営業利益率 20%

倍率:ROE 9.1%、k 8.75% なので RONIC はほぼ k。g 4% の正当化 PER は 1÷k に近い約 11.2 倍。ROE が k を超える会社の下限 1÷k に当たる 11.56 倍とする(景気の波は大きいが、それは確率と k の側で見ている)。

確率:航空機需要と増産の先行は確かな強みで、悲観側の言い分(過去の計画の未達と資金調達の重さ)との落としどころ。分布の中心にここを置く。

やや悲観 25% ロシア材の復帰で単価が伸びず、新工場の償却が重く残る 利益 32 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 771 円346 億円

ロシアの VSMPO-AVISMA が航空機向けに戻り、中国材も一般産業向けの値段を押し下げる。大阪チタンの出荷は 4 万トンどまりで、新工場の稼働率は 8 割に届かない。

単価は物価に追いつかず、実質で 1 割強下がる。営業利益率は 1 桁になり、新工場の償却と人件費が固定費として残る。2010 年代の半ばから後半に近い、ぱっとしない利益に戻る。

借入は 300 億円台で残り、金利が上がった分だけ純利益が削られる。還元は薄く、ROE は 4% 前後と資本コストを大きく下回る。高機能材料は伸びるが、全社の利益を支えるには小さい。航空機の生産が 1〜2 年止まる年も混ざり、利益はなかなか安定しない。

  • チタン事業(スポンジチタン・インゴット):数量 40.0(出荷量(千トン、スポンジ換算))× 価格 15(1 千トンあたり売上(億円・名目、インゴット込み))→ 売上 618 億円・営業利益 56 億円。出荷 4.0 万トン(稼働率 8 割)× 単価 1.15 倍、営業利益率 9%
  • 高機能材料事業(高純度チタン・球状チタン粉末):数量 600(出荷量(トン))× 価格 0.12(1 トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 9 億円。600 トン × 単価 1.20 倍、営業利益率 12%

倍率:ROE 4.0% で k 8.75% を下回るため、PER の上限は 1÷k の約 11 倍。稼ぐ力に見合う 10.8 倍に置き、7 割への引き上げはしない(今の自己資本 640 億円に対して PBR は 0.5 倍強で、中立の PBR より低い)。

確率:ロシア材の復帰と中国材の参入への警戒は決算説明会の質疑にも出ている。過去の計画の未達と、高値圏での増資という経緯から、確率は慎重側に寄せる。

悲観 10% 中国材とロシア材に挟まれ、新工場が重荷に変わる 利益 −19 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 672 円301 億円

中国材が航空機以外の用途で値段を決め、ロシア材も航空機向けに戻る。航空機の生産が事故や景気で止まる年が重なる。新工場は稼働率 6 割で、固定費を吸収できない。

単価は 10 年たっても上がらず、人件費や資材は物価で上がるため、営業利益はゼロ近辺まで落ちる。借入は 500 億円台で残り、利払いの分だけ赤字になる。

新工場の一部を減損し、自己資本は 150 億円ほど減る。還元は止まる。計画の 3 年分の還元 30 億円は、利益ではなく手元の現金と借入で払った形になる。この筋書きの値打ちは、稼ぐ力ではなく、売れる設備と在庫から借入を引いた残りで決まる。高機能材料は伸びず、会社の目標とはほど遠い。

  • チタン事業(スポンジチタン・インゴット):数量 30.0(出荷量(千トン、スポンジ換算))× 価格 13(1 千トンあたり売上(億円・名目、インゴット込み))→ 売上 403 億円・営業利益 4 億円。出荷 3.0 万トン(稼働率 6 割)× 単価 1.00 倍(実質で 25% 下落)、営業利益率 1%
  • 高機能材料事業(高純度チタン・球状チタン粉末):数量 500(出荷量(トン))× 価格 0.10(1 トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 3 億円。500 トン × 単価 1.00 倍、営業利益率 6%

倍率:赤字で稼ぐ力がなく、値打ちは売れる資産の税引き後から借入を引いた額(floor_assets_oku)で支える。増資前の今の自己資本 443 億円に 0.68 倍を掛けた形で、増資後の 640 億円に対しては 0.47 倍にあたる。減損後の自己資本は 422 億円。

確率:赤字の期は過去 15 年のうち 6 期あり、2016/03 期や 2021/03 期には大きく傷んだ。航空機用の認証が中国材に広がる危険も含め、1 割は置く。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

チタン事業(スポンジチタン・インゴット)

航空機・一般産業向けのスポンジチタンとインゴット。尼崎で年産 4 万トン、2027 年度末に 5 万トンへ。

数量出荷量(千トン、スポンジ換算)価格1 千トンあたり売上(億円・名目、インゴット込み)売上営業利益
今 2026/03 32.0 13 430 52
10 年後 中立 46.0 17 804 121

取り方:セグメントの開示を確認できず推定。全社売上 470 億円から高機能材料を引き、出荷を能力 4 万トンの 8 割の 3.2 万トンとした。1 トンあたり約 134 万円(約 9 ドル/kg 相当)はインゴット等の加工分を含む。物価は価格に入れる(10 年で中立 1.30 倍、物価 1.34 倍よりやや低い)。

高機能材料事業(高純度チタン・球状チタン粉末)

半導体の部材や金属 3D 造形に使う高純度チタンと球状チタン粉末。

数量出荷量(トン)価格1 トンあたり売上(億円・名目)売上営業利益
今 2026/03 400 0.10 40 6
10 年後 中立 800 0.13 107 21

取り方:セグメントの開示を確認できず推定。全社売上から差し引いた約 40 億円を、400 トン × 1 トンあたり 1,000 万円とした。会社の 2030 年度の売上目標は 150 億円。 数量は実物(出荷トン)で、名目の市場の伸びではない。

リスクと懸念

ロシア材の航空機向けへの復帰

ロシアの VSMPO-AVISMA が民間航空機向けに戻れば、認証済みの供給元が増える。大阪チタンの値上げの力が弱まり、新工場の稼働率も下がる。決算説明会でも質問に挙がった論点で、需給が逼迫するという前提が崩れる最大の経路だ。

中国材の認証と価格圧力

中国材は一般産業向けで安く出ており、欧州ではアンチダンピング措置を受ける。品質の認証が航空機向けに広がれば、堀の外側だけでなく内側も削られる。国内の一般産業向けが戻らないリスクもある。

新工場の立ち上げの失敗と投資額の膨張

尼崎の増産は投資が 330 億円から 390 億円へ増えた。完工は 2027 年度末で、建設資材と人件費の高騰がさらに続く可能性がある。立ち上げが遅れれば、償却と金利だけが先に始まる。

資本の希薄化と借入の重さ

2026 年 9 月の公募増資で株数が約 2 割増えた。それでも増産の投資で純負債は残る。金利の上昇が進むと、利益の薄い年に利払いが重くのしかかる。2016/03 期や 2021/03 期のような赤字を繰り返す危険がある。

航空機の生産の停止と景気

チタンの需要は、ボーイングとエアバスの生産に数年遅れて動く。機体の品質問題、サプライチェーンの混乱、世界不況で納入が止まれば、出荷が数割落ちる。航空機向けは安定という見方を過信できない。

中期計画の未達の歴史

2010 年版以降の中期計画は、毎回未達だった。今回の営業利益 200 億円も同じ道をたどるなら、増資と借入で増やした設備が過剰になる。市場が計画を信じている分、外れた時の下落も大きい。

支配株主の不在と買収

神戸製鋼所は 8% ほど、日本製鉄は主要株主でなくなった。守る株主がいないため、増資後に買収提案を受ける可能性は残る。提案が来ても、価格は事業の力より市場の期待で決まりやすい。

今後の分かれ目

ロシア材が民間航空機向けの供給を再開する
やや悲観の確率を上げる。航空機向けの単価が物価を下回り、新工場の稼働率が 8 割を切る可能性が高まる。
新工場が予定どおり 2027 年度末に完成し、稼働率が 1 年で 8 割を超える
中立の確率を上げてよい。償却の重さが吸収され、営業利益率は 15% に近づく。
航空機向けの長期契約の価格が、物価を上回って更新される
楽観側の確率を上げる。供給が足りないという前提が確認されたことになる。
中国材が航空機向けの認証を取る
悲観の確率を上げる。堀の中でも値段の競争が始まり、10 年の利益率が構造的に下がる。
2029 年度の還元方針の見直しで、配当と自社株買いが計画の 260 億円を上回る
資本政策への評価を上げる。借入返済と還元を両立できる利益の裏付けがあるという合図になる。
営業利益率が 2 期連続で 15% を超える
利益の質を上方に見直す。景気の山ではなく、平常の力が上がった可能性が出てくる。

見ておくもの

  • ボーイング・エアバスの月ごとの生産機数
  • ロシア材と中国材の航空機向けの認証の動き
  • 尼崎新工場の完工時期と投資額
  • 航空機向けスポンジの長期契約の更新価格
  • 営業利益率と稼働率(決算説明会の言及)
  • 2029 年度の還元方針の見直し

倍率と資本コストの決め方

倍率は、ROE と資本コスト 8.75%、g 4% から出した正当化 PER で置き、今の株価や同業の倍率は見ていない。中立は下限の 1÷k にあたる 11.1 倍、楽観とやや楽観は上限の 9 割前後、やや悲観は ROE が k を下回るので稼ぐ力に見合う 10.5 倍とした。今の時価総額(約 1,040 億円)は計画の営業利益 200 億円の実現を前提にした水準で、中立の 130 億円では届かない。結論が割高と大きく出たのは、利益の伸びより資本と借入の増え方が速いためで、k を 8.75% と高めに置いたことも効いている。決算の形(家賃を費用に入れた形)は今と同じでそろえ、新リース会計基準での形の変化は 10 年後の数字に混ぜていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→14.13 倍・やや楽観 PER 11.5→13.18 倍・中立 PER 11.1→11.56 倍・やや悲観 PER 10.5→10.8 倍)。

資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。

同じ業種(非鉄金属)の AI 分析

割安 カナレ電気5819 放送向けケーブルの堅実な会社。時価総額を上回る金融資産を抱え、本業がほぼ無料で付いてくる 本質価値との差 +88.2% · 10 年 割安(年 +13.1%) 割安 DOWAホールディングス5714 環境・リサイクルと製錬を束ねる堅い会社。株価は金属高と一時益を織り込み、10年で見ると、やや割安の水準にある 本質価値との差 +42.6% · 10 年 割安(年 +9.9%) やや割安 アーレスティ5852 自動車向けアルミ鋳造の専業。稼ぐ力は薄く米国の再建しだいで振れ幅が大きいが、価値は今の値段とほぼ釣り合う 本質価値との差 +27.3% · 10 年 やや割安(年 +10.4%) やや割安 三菱マテリアル5711 利益は山の上にあるが、純資産の割には株価が低い。重い借金と製錬の構造不況を見込んで資本コストを10%に上げると、やや割高 本質価値との差 +20.7% · 10 年 やや割安(年 +9.9%) やや割安 CKサンエツ5757 国内首位の黄銅棒メーカーだが、市場は細り利益は相場で揺れる。10 年の本質価値は今の時価総額をやや下回る 本質価値との差 +19.5% · 10 年 やや割安(年 +9.0%) やや割安 オーナンバ5816 家電・産業機器向けワイヤーハーネスの専業。現金は厚いが値決めが弱く、10年で利益は伸びても資本コストに届かず、今の値段はほぼ妥当 本質価値との差 +18.5% · 10 年 やや割安(年 +8.6%) やや割安 リョービ5851 自動車向けアルミ鋳造の大手。軽量化の追い風はあるが稼ぎは薄く、10年先の価値は今の値段をやや下回る 本質価値との差 +13.8% · 10 年 やや割安(年 +8.3%) やや割安 AREホールディングス5857 金価格の急騰で稼ぎは倍になったが、その利益が10年続くとは見ない。値段は本質価値のほぼ近辺にある 本質価値との差 +11.9% · 10 年 やや割安(年 +8.5%) やや割安 日本伸銅5753 CKサンエツ傘下の黄銅棒メーカー。資産は厚いが稼ぎは資本コストに届かず、利益もほぼ配らない。やや割高と見る 本質価値との差 +11.6% · 10 年 やや割安(年 +10.0%) 適正 住友電気工業5802 ワイヤーハーネス世界首位は本物だが、一時的な特別利益とAI特需で高まったROEを今の株価はかなり先まで織り込んでいる 本質価値との差 +8.3% · 10 年 適正(年 +7.0%) 適正 SWCC5805 電力網の更新に支えられた堅い電線会社。ただし利益は特需の山にあり、10 年先の値打ちは今の値段に届かない 本質価値との差 +6.2% · 10 年 適正(年 +7.4%) 適正 三井金属5706 AIサーバー向け極薄銅箔MicroThinで世界シェア9割超、株価は強気の成長持続をすでに織り込む 本質価値との差 +6.1% · 10 年 適正(年 +8.1%) 適正 古河機械金属5715 稼ぐ力は鉱山機械と金属の二本足、だが収益は普通で、買い手が払う値段に安全域は薄い 本質価値との差 +2.5% · 10 年 適正(年 +7.0%) 適正 日本精鉱5729 アンチモンの国内首位。相場の急騰で利益は膨らんだが、足元はすでに急落し、元の水準へ戻る道が見える 本質価値との差 +1.2% · 10 年 適正(年 +7.1%) やや割高 日本軽金属ホールディングス5703 アルミを核にした総合素材。放熱・電池・半導体向けは育つが、薄い利益と借金で、今の値段は妥当圏に見える 本質価値との差 −10.2% · 10 年 やや割高(年 +5.6%) やや割高 中外鉱業1491 金の取引で稼ぐ貴金属リサイクル。利益は金価格と販売先2社に左右され、10年の価値は今の時価総額を下回る 本質価値との差 −14.0% · 10 年 やや割高(年 +6.5%) やや割高 JMC5704 3DプリンタとCTで高い利ざやを稼ぐが、本業の鋳造で大きくつまずいた。立て直しの途中で、今の値段はやや高い 本質価値との差 −15.2% · 10 年 やや割高(年 +6.3%) 割高 JX金属5016 半導体材料の堀は本物だが、利益の半分近くは銅価格頼み。自社株買いで財務も重くなり、10年の価値は今の時価総額を大きく下回る 本質価値との差 −32.5% · 10 年 割高(年 +3.3%) 割高 平河ヒューテック5821 太陽光向けケーブルの山で利益は倍増したが、山は続かない。10 年で測ると今の値段は先取りが大きい 本質価値との差 −32.7% · 10 年 割高(年 +3.0%) 割高 UACJ5741 アルミ圧延の国内最大手。北米の缶材は強いが、薄い利益と重い借金で、今の値段は割高に見える 本質価値との差 −34.6% · 10 年 割高(年 +3.3%) 割高 東邦亜鉛5707 事業再生でファンド支援下に入った非鉄製錬の会社。希薄化と債務が重く、今の値段は10年の価値を大きく上回る 本質価値との差 −39.8% · 10 年 割高(年 +3.6%) 割高 大紀アルミニウム工業所5702 国内最大手の再生アルミ合金メーカー。今期の利益は相場高の山で、薄い値ざやと重い運転資金から見て割高 本質価値との差 −40.4% · 10 年 割高(年 +2.0%) 割高 住友金属鉱山5713 資源(金・銅鉱山権益)が利益の過半を支えるが、その価値は山の金額ではなく平準化した値段で測るべきだ 本質価値との差 −40.6% · 10 年 割高(年 +0.7%) 割高 エヌアイシ・オートテック5742 工場の骨組みを作るアルミフレームの会社。高い配当は利益で賄えておらず、価値は今の値段を大きく下回る 本質価値との差 −42.2% · 10 年 割高(年 +1.8%) 割高 JMACS5817 半導体と工場の更新で稼ぎは跳ねたが、長く低い利益率が地の力。山の利益を地の力と見るには早い 本質価値との差 −45.4% · 10 年 割高(年 +1.1%) 割高 三ッ星5820 キャプタイヤケーブルの老舗が、大きな希薄化を伴う増資で蓄電池とスクラップに手を広げる。既存株主の取り分が4割薄まり割高 本質価値との差 −47.3% · 10 年 割高(年 +0.6%) 割高 アサカ理研5724 金の急騰で利益が膨らんだ貴金属リサイクル。巨額の電池再生投資が重く、10年の価値は今の時価総額を大きく下回る 本質価値との差 −57.2% · 10 年 割高(年 −0.8%) 割高 フジクラ5803 データセンター向け光配線は本物の追い風だが、株価はブームが長く続く前提を既に織り込みすぎている 本質価値との差 −59.3% · 10 年 割高(年 −1.6%) 割高 古河電気工業5801 AIデータセンター向け光部品で3位の実力はあるが、今のPER32.8倍は会社自身の2030年度目標達成をほぼ織り込んでいる 本質価値との差 −62.2% · 10 年 割高(年 −2.1%) 割高 エスクリプトエナジー5721 価値の中心は約300枚のビットコイン。本業の赤字と大きな希薄化を引くと、今の値段は高すぎる 本質価値との差 −78.7% · 10 年 割高(年 −5.8%)

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読んだ資料

  1. 中期経営計画 OTC 2030(要約)
  2. 尼崎工場の増産(スポンジチタン年産 5 万トン)
  3. 大阪チタニウムテクノロジーズ 公募増資の概要

分析日 2026-10-16