結論
日本伸銅は、大阪・堺の工場で黄銅、つまり銅と亜鉛の合金の棒と線を作る会社だ。水栓やガス機器、空調の部品の材料になる。親会社のCKサンエツが55.5%を持つ。筆者の結論は、今の値段はやや割高だということだ。
利益の源は、地金の値段に上乗せする加工賃にある。銅の値段がいくら上がっても、それは売上を膨らませるだけで、稼ぎの本体は1トンあたりの加工賃だ。2026年3月期の営業利益は27億円だったが、銅高の在庫の値上がり益が膨らませたもので、ヘッジの損を引いた経常利益は10億円にとどまった。
資本は厚い。自己資本は127億円で、時価総額の2倍を超える。だが、自己資本利益率は5〜8%で、資本コストの9%に届かない。しかも配当は利益の4%ほどしか払っていない。ためた利益は親会社のグループの中に残り、少数の株主には戻りにくい。
10年後の中立でも、純利益は10億円台の前半と見る。資本は積み上がるが稼ぎは伸びず、帳簿の厚さは本質価値の支えになりにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿は厚いが持ちたいとは思いにくい会社だ。オーナーとして見ると、利益は年に7〜10億円出ているのに、株主に配られるのは3億円ほどにすぎない。残りは会社にたまり、資本コストを下回る稼ぎしか生まない。
事業そのものは堅い。黄銅棒は地味だが必要な素材で、10年後も使われる。設備は軽く、更新の投資も小さい。ただ、加工賃で稼ぐ事業には、値段を自分で決める力が乏しい。
安全域は、自己資本の厚みに見える。時価総額は自己資本の半分以下だ。だが、ためた利益が少数の株主に戻らないなら、その帳簿は値打ちにならない。親会社が決める資本の使い方しだいだ。
筆者が変化を待つのは、配当の方針だ。利益の3割以上を配るようになれば、ためた資本の値打ちは上がる。それまでは、資産の厚さよりも、資本コストに届かない稼ぎの方を重く見る。
何で稼ぐ会社か
日本伸銅は、黄銅の棒と線を作る専業のメーカーだ。売上の9割近い265億円が伸銅品で、年に2万トンほどを出荷する。残りは、棒を切ったり削ったりした加工品と、原料の地金の転売である。
黄銅は、切削しやすく錆びにくいので、水栓の金具、ガスの継手、空調のバルブ、電気のコネクタに広く使われる。売り先は部品を作る加工メーカーや、金属の問屋だ。最大の取引先は市原金属産業で、売上の13%を占める。
利益の仕組みは単純だ。製品の値段は「地金の値段+加工賃」で決まる。地金の値段は銅と亜鉛の相場に連動し、そのまま客に渡す。会社が稼ぐのは加工賃の部分だけだ。銅の値段が上がると在庫の値打ちが上がり、営業利益は膨らむ。だが会社はその値動きを先物でヘッジしており、営業外のヘッジの損で打ち消される。2026年3月期はその損が17億円に上った。
従業員は92人と少なく、工場は堺の1か所だ。設備投資は年に1億円にも届かない。親会社のCKサンエツはサンエツ金属などを持つ伸銅のグループで、原料の共同購入や製品の融通で日本伸銅と組んでいる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄いと筆者は見る。黄銅棒は規格の決まった素材で、どの会社の製品でも使える。差がつくのは、加工賃の安さと納期、品ぞろえだ。
ただし、業界の中での立ち位置は悪くない。親会社のCKサンエツは、サンエツ金属を中心に伸銅で国内の上位に立つグループだ。日本伸銅はその一員として、原料の共同購入と製品の融通で規模の利点を得ている。国内の需要が縮むなか、再編の受け皿になる側にいる。
資本効率は低い。過去10年の自己資本利益率の中央値は9.8%だが、直近は5〜8%に下がった。自己資本は年に8億円前後ずつ積み上がり、配当は年3億円ほどしか出ない。利益の大半が会社に残るのに、残った資本は資本コストを下回る稼ぎしか生まない。
財務は堅い。自己資本比率は69%で、純有利子負債は24億円と小さい。運転資金の大半は、銅と亜鉛の在庫と売掛金だ。銅が高い時ほど運転資金が膨らみ、借入が増える形である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の黄銅棒の需要は、ゆっくり縮んでいる。住宅の着工が減り、水栓やガス機器の部品の量も減る。新しい建物の減少は、10年で数量を1割ほど減らす方向に効く。
品質の規制も需要の形を変える。水道の部品では、鉛を減らした黄銅や、別の素材への置き換えが進んできた。鉛を減らした黄銅は加工が難しく、手間の分だけ加工賃は上がるが、一部は樹脂やステンレスに置き換わる。
銅の値段は長い目で上がると業界では見る。AIのデータセンターや電気自動車、電力網の投資で銅の需要が伸びるからだ。黄銅棒の会社にとって、銅高は売上と運転資金を膨らませるが、加工賃の稼ぎは増やさない。むしろ、銅が高すぎると客がアルミや樹脂に逃げる心配がある。
業界は再編の途中だ。国内の伸銅の会社は中小が多く、需要の縮みに合わせて統合が進む。CKサンエツは買収で規模を広げてきた。日本伸銅もそのグループの一員で、再編が進めば加工賃を守りやすくなる。
10年先の分かれ目は2つだ。ひとつは、加工賃を物価に合わせて上げられるか。もうひとつは、親会社のグループの中で、日本伸銅の役割がどう決まるかである。
資本政策と M&A
還元は細い。2026年3月期の配当は総額3.2億円で、純利益の4%ほどだった。会社は業績に見合った安定配当を掲げ、内部留保は設備投資とM&Aに使う方針だ。だが設備投資は年1億円にも届かず、利益の多くはそのまま自己資本に積み上がっている。
親会社のCKサンエツが55.5%を持つ。親子上場の形で、少数の株主には資本の使い方を変える力が無い。ためた利益が配当で戻る見込みは薄く、筆者は余った資本の戻り方を0.5と見る。
一方で、親会社が残りの株を買い取って完全子会社にする道はありうる。親子上場の解消は東京証券取引所も求めている流れだ。ただし、その発表は無く、筆者は本質価値の外の話として筋書きの確率には入れていない。
政策保有株は1億円に満たず小さい。本社工場の土地は帳簿で20億円ある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額は自己資本の半分以下で、純資産の厚さに比べて明らかに安い。在庫は銅と亜鉛の地金で、いつでも換金できる。銅の値段が上がれば在庫の値打ちも上がる。
親会社のCKサンエツは再編を進めるグループで、いずれ日本伸銅を完全子会社にする可能性が高い。親子上場の解消は東京証券取引所の流れでもあり、その時は自己資本に近い値段が付きうる。
事業も悪くない。従業員92人で300億円を売る効率の高い工場だ。業界の再編が進めば加工賃は上がり、1トンあたりの稼ぎは物価以上に増える。銅の需要は電力網やデータセンターで伸び、黄銅の需要の底も固い。
配当が少ないのも、見方を変えれば余力だ。親会社の方針ひとつで、たまった資本は一気に株主に戻りうる。
鉛を減らした黄銅は加工が難しく、作れる会社は限られる。規制が強まるほど、技術を持つ会社の加工賃は上がる。日本伸銅は長年この材料を作ってきた側にいる。規制は参入の壁にもなる。
慎重な見方
帳簿の厚さは、少数の株主のものではない。親会社が55.5%を握り、配当は利益の4%しか出ない。ためた利益は会社の中に残り続け、株主の手に戻る道が見えない。資本コストを下回る稼ぎしか生まない資本は、帳簿の値打ちを持たない。
本業の稼ぎも伸びにくい。黄銅棒の国内需要は住宅の減少とともに縮み、鉛の規制で一部は他の素材に置き換わる。加工賃は客との交渉で決まり、物価並みに上げられる保証はない。
2026年3月期の営業利益27億円は、銅高の在庫の値上がり益で膨らんだ見かけの数字だ。ヘッジの損を引けば経常利益は10億円にすぎない。銅が下がれば、今度は在庫の評価損が出る。
完全子会社化に期待するのも危うい。親会社は、できるだけ安く買い取りたい立場にある。
従業員92人の効率の良さも、裏を返せば工場1か所に頼る危うさだ。設備が古くなれば更新の投資が要り、その時には今の小さな設備投資では済まない。地震や事故で工場が止まれば、代わりの拠点はグループの他社しかない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方がやや強い。資産が厚いことは確かだが、それが少数の株主に戻る道は親会社の判断しだいで、配当の実績はそれを支えていない。強気の見方の完全子会社化は、本質価値の外の話だ。事業の稼ぎそのものは、加工賃が物価並みに上がるかどうかに尽きる。中立は加工賃が物価並みに上がり、数量が1割減る形に置き、確率は少し悲観の側に寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,301 円135 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 175 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 2,775 円59 億円、今との差 +11.6%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,144 円174 億円 | 257 円6 億円 | +238.0% | +12.9% | 588 円13 億円 |
| やや楽観 | 18% | 7,906 円169 億円 | 211 円5 億円 | +226.5% | +12.6% | 1,461 円31 億円 |
| 中立 | 37% | 8,121 円174 億円 | 187 円4 億円 | +234.2% | +12.8% | 3,074 円66 億円 |
| やや悲観 | 25% | 4,593 円98 億円 | 150 円3 億円 | +90.8% | +6.7% | 1,186 円25 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,189 円25 億円 | 94 円2 億円 | −48.4% | −6.4% | 167 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,301 円135 億円 | 175 円4 億円 | +160.5% | +10.0% | 6,476 円138 億円 |
今の株価時価総額 2,486 円53 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 再編で加工賃が上がり、銅も高い 利益 15 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 8,144 円174 億円
10年後、国内の伸銅の業界は再編が進み、CKサンエツのグループが上位を固めている。日本伸銅はグループの中で黄銅棒の工場として役割がはっきりし、数量は今と同じ2万トンを保つ。加工賃は物価以上に上がり、トンあたりの稼ぎは今の1.6倍になる。
銅は1トン1.7万ドルまで上がり、売上は400億円を超える。営業利益は22億円で、純利益は15億円近い。ただ、配当の方針は大きくは変わらず、利益の多くは会社にたまる。自己資本利益率は6%台で、資本コストにはまだ届かない。
銅が高い世界では、地金の在庫を厚く持つこと自体が強みになる。資金の余裕がない中小の同業から仕事が流れてくる。
- 伸銅品(黄銅棒・線):数量 20,419(販売数量(トン))× 価格 206(1トンあたり平均単価(万円、地金込み))→ 売上 421 億円・営業利益 20 億円。加工賃が物価以上
- 加工品・その他の金属材料:数量 2,600(推定数量(トン))× 価格 222(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。銅高で単価上昇
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 162 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の再編で加工賃が物価以上に上がり、銅も高い道。両方がそろう確率は低い。
やや楽観 18% 加工賃が物価並みに上がり、数量も保つ 利益 12 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 7,906 円169 億円
10年後、日本伸銅は加工賃を物価並みに上げ続けている。住宅の減少で数量は5%減るが、グループの中で他社の分の生産を引き受けて減り幅を抑える。トンあたりの稼ぎは今の1.4倍になる。
銅は1.5万ドル前後まで上がり、売上は400億円に近づく。営業利益は18億円、純利益は12億円だ。配当は少し増えるが、利益の5%ほどにとどまる。自己資本は200億円を超え、自己資本利益率は5%台に下がる。稼ぎは増えても、資本の積み上がりに追いつかない。
銅の需要が電力網とデータセンターで伸び、地金の値段が高止まりする。それでも加工賃の稼ぎは数量と物価で決まる。
- 伸銅品(黄銅棒・線):数量 19,398(販売数量(トン))× 価格 184(1トンあたり平均単価(万円、地金込み))→ 売上 358 億円・営業利益 17 億円。数量5%減
- 加工品・その他の金属材料:数量 2,470(推定数量(トン))× 価格 199(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 136 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:加工賃の転嫁が続き、数量の減りが小さい道。親会社のグループの購買力が支えになる。
中立 37% 数量は1割減り、加工賃は物価並み 利益 11 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 8,121 円174 億円
10年後、日本伸銅は数量を1割減らしながら、加工賃を物価並みに上げている。黄銅棒の出荷は1.8万トンほどで、トンあたりの稼ぎは今の1.34倍だ。銅は1.3万ドルに上がり、売上は340億円ほどになる。
営業利益は16億円、借入の金利が上がった分を引いて純利益は10億円台の前半だ。配当は今と同じ年3〜4億円にとどまる。利益の大半が会社にたまり、自己資本は210億円を超える。自己資本利益率は5%ほどで、資本コストの9%に遠い。親会社のグループの中で黙々と稼ぎ、ためる会社であり続ける。完全子会社化の道は残るが、この筋書きには入れていない。
- 伸銅品(黄銅棒・線):数量 18,377(販売数量(トン))× 価格 163(1トンあたり平均単価(万円、地金込み))→ 売上 299 億円・営業利益 15 億円。数量1割減
- 加工品・その他の金属材料:数量 2,340(推定数量(トン))× 価格 176(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。1割減
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 118 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:住宅の減少と物価並みの加工賃という、業界の流れどおりの中心の見通し。
やや悲観 25% 需要が2割減り、加工賃も削られる 利益 7 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 4,593 円98 億円
10年後、黄銅棒の国内需要は2割強減っている。水栓とガス機器の部品の一部が樹脂やステンレスに置き換わり、住宅の着工も減った。少ない仕事を取り合い、加工賃は物価ほどには上がらない。
銅は1万ドル前後で横ばいに近く、売上は230億円ほどに縮む。営業利益は11億円、純利益は7億円だ。配当は今のまま細く、自己資本だけが積み上がる。自己資本利益率は3%台に落ち、ためた資本は株主にとってほとんど値打ちを生まない。
親会社のグループは集約を進めるが、日本伸銅の工場の稼働は下がる。電気代と人件費の上昇は、加工賃に乗せきれない。
- 伸銅品(黄銅棒・線):数量 15,927(販売数量(トン))× 価格 130(1トンあたり平均単価(万円、地金込み))→ 売上 206 億円・営業利益 10 億円。需要2割減
- 加工品・その他の金属材料:数量 2,028(推定数量(トン))× 価格 140(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 28 億円・営業利益 0 億円。薄利
倍率:ROE3.4%がk9.0%以下なので上限は1÷k=11.1倍。稼ぐ力(純利益÷k)の約7割の8.0倍。ためた資本が少数株主に戻らない分を割り引いた。
確率:住宅の減少と鉛の規制による素材の置き換えが重なる道。国内の縮みの記録から可能性は高い。
悲観 13% 銅安と需要の縮みで、加工賃の稼ぎが消える 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,189 円25 億円
10年後、日本伸銅は構造的に負けている。黄銅棒の国内需要は4割近く減り、工場の稼働が落ちる。加工賃の値上げは通らず、トンあたりの稼ぎは今の半分になる。
銅は1トン7,500ドルまで下がり、在庫の評価損が自己資本を20億円削る。営業利益は4億円を割り、純利益は2億円だ。親会社のグループは生産を集約し、日本伸銅の工場の役割も縮む。資産は厚いが、少数の株主には清算を決める力が無く、帳簿の自己資本は床にならない。
配当は今の水準を守るのがやっとで、ためた資本は在庫と設備に眠ったまま残る。株主に戻るのは、細い配当だけだ。
- 伸銅品(黄銅棒・線):数量 12,660(販売数量(トン))× 価格 103(1トンあたり平均単価(万円、地金込み))→ 売上 130 億円・営業利益 4 億円。需要4割減
- 加工品・その他の金属材料:数量 1,612(推定数量(トン))× 価格 111(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。赤字
倍率:稼ぐ力(純利益1.8億円÷k)は約20億円。今の自己資本127億円に0.2倍(約25億円)で、清算の目安(下の床)より低い。清算されない限り、資産の価値は少数株主に届かないため。
確率:2013〜15年の赤字の実績と、銅7,500ドルへの下落という業種ノートの悲観を合わせて1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
伸銅品(黄銅棒・線)
黄銅の棒と線。水栓・ガス機器・空調・コネクタの部品の材料。値段は地金+加工賃。
| 数量販売数量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円、地金込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,419 | 130 | 265 | 26 |
| 10 年後 中立 | 18,377 | 163 | 299 | 15 |
取り方:有報の伸銅品の売上265.06億円・20,419トン(開示)。単価は約130万円で、黄銅の地金(銅6割・亜鉛4割で約112万円)と加工賃(約18万円)に分けて見る。価格は地金の部分を業種ノートの銅の見通し(今1.05万ドル、中立1.3万ドル)で、加工賃を物価で動かす。利益はトンあたりの加工賃の稼ぎを平準化で約6.2万円(2027年3月期の営業利益予想13.2億円÷約2.1万トン)と置き、物価で伸ばす。今期の営業利益26.9億円は銅高の在庫評価益を含み(営業外のヘッジ損17億円と打ち消し合う)、全社の営業利益を売上で割り振った。中立の数量は住宅の減少と鉛の規制で10年0.90倍。
加工品・その他の金属材料
棒を切削した加工品と、原料の地金の転売。
| 数量推定数量(トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,600 | 140 | 36 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,340 | 176 | 41 | 1 |
取り方:伸銅加工品16.40億円とその他の金属材料19.97億円(有報)の合計。加工品は約760トン(全体21,176トン−伸銅品20,419トン)、転売の地金を合わせて約2,600トン・平均140万円と推定。利益率は転売が薄いので2%前後と置いた推定。数量・価格は伸銅品と同じ動き。
リスクと懸念
ためた利益が少数株主に戻らない
親会社のCKサンエツが55.5%を持ち、配当は利益の4%ほどしか出ない。利益の大半が会社にたまり、資本コストを下回る稼ぎしか生まない。資本の使い方は親会社が決め、少数の株主には変える力が無い。
国内需要の縮み
黄銅棒は水栓・ガス機器・空調の部品に使われ、住宅の着工が減るほど量が減る。鉛の規制で一部は樹脂やステンレスに置き換わる。工場は堺の1か所で、量が減れば固定費が重くなる。
銅の値動きと在庫の評価損
銅が上がれば在庫の値上がり益で営業利益が膨らみ、下がれば評価損が出る。会社はヘッジで打ち消すが、営業利益と経常利益の差が大きく、見かけの利益に惑わされやすい。銅が急落すれば運転資金は減るが、評価損で自己資本が削られる。
加工賃の値決めの弱さ
黄銅棒は規格品で、加工賃は客との交渉で決まる。電気代と人件費が上がっても、それを加工賃に乗せられなければ利益は細る。需要が縮む業界では、少ない仕事を取り合う値下げの圧力が強い。
親会社のグループ内での役割の変化
CKサンエツのグループが生産を集約すれば、日本伸銅の工場の役割が変わる。グループ内の取引の条件も親会社が決める。少数の株主にとって不利な条件になっても、それを止める手段は乏しい。
今後の分かれ目
- 配当性向を30%以上に引き上げたら
- ためた資本が株主に戻る道ができたと見て、戻り方を0.75〜1.0に上げ、倍率の割引も小さくする。
- 親会社が完全子会社化を発表したら
- 本質価値とは別に、株主の結果は買い取りの値段で決まる。分析はやめ、買い取りの条件を見る。
- 加工賃の値上げが続き、トンあたりの稼ぎが物価以上に伸びたら
- やや楽観の側へ確率を移す。
- 黄銅棒の出荷が2年続けて5%以上減ったら
- 需要の縮みが速いと見て、やや悲観の確率を厚くする。
- 銅が1トン8,000ドルを割り込んだら
- 在庫の評価損と売上の縮みが出る。加工賃の稼ぎが保たれているかを見て、悲観の深さを見直す。
見ておくもの
- 配当性向と親会社の資本政策
- 黄銅棒の販売数量(トン)
- トンあたりの営業利益(加工賃の稼ぎ)
- 銅・亜鉛の値段とヘッジの損益
- CKサンエツのグループの再編の動き
倍率と資本コストの決め方
伸銅品と加工品・その他の2つに分け、数量は実質(住宅の減少で10年0.90倍)、価格は地金を業種ノートの銅の見通し、加工賃を物価1.34倍で動かした。利益はトンあたりの加工賃の稼ぎを平準化した約6.2万円から物価で伸ばし、今期の在庫評価益とヘッジ損は除いた。償却は小さく(設備投資は年1億円未満)物価で増やしていない。倍率はROEがk9.0%以下で上限1÷kの8〜9割。悲観は稼ぐ力に近い今の自己資本の0.2倍で、清算の床より低い。今のPBR0.4倍台や時価総額から逆算していない。リースは小さく、新リース基準で形はほぼ変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.5→11.11 倍・中立 PER 9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.5%を足した9.0%。事業は傾いていないので上乗せは置かない。堀は普通(残る割合1/2)。