結論
カナレ電気は、テレビ局やスタジアムで使う映像・音声のケーブルとコネクタの専門メーカーだ。売上は 130 億円、営業利益率は 12%。赤字の年は過去 20 年に一度もない。
筆者の結論は「割安」だ。最大の理由は、現金と預金、長期預金、投資有価証券を合わせた金融資産が約 137 億円あり、時価総額 117 億円を上回ることだ。有利子負債はない。株価は、毎年 12 億円を稼ぐ本業を、ほぼ無料で買える値段になっている。
弱みは成長の遅さと、現金が株主に戻りにくいことだ。放送局の設備投資は波があり、国内は NHK 案件の反動で減った。経営は創業家に近い個人株主が支えており、現金は長年積み上がってきた。
それでも、配当は 3 年で 2 倍弱に増え、方針は配当性向 40% を目安にする。現金の半分以上が株主に戻るだけで、今の値段は割安になる。
10 年後の中立では、売上は物価と海外の伸びで 1.5 倍になり、営業利益は 24 億円ほどになる。筆者は、この安定した稼ぎと、ほとんど手つかずの現金の組み合わせこそが、この会社の最大の魅力だと考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に見るのは、会社が持つ金融資産と、事業がそれと別に生む利益だ。当社は金融資産が約 137 億円で、時価総額を超える。それとは別に、営業利益 15 億円の本業がある。本業の価値をゼロとして買えるに近い。
事業の質も悪くない。設備投資が軽く、利益のほとんどが現金になる。利益率は 12% で、赤字の年がない。10 年後の売上は 1.5 倍、利益は 1.5 倍に伸びる程度だが、堅い。
問題は、現金が株主のものになるかだ。経営が現金を積み上げてきた期間は長い。筆者は、現金の 75% が株主に戻ると仮定して価値を測る。それでも本業と合わせると、今の時価総額を大きく超える。
安全域は厚い。数字で言えば、現金だけで時価総額の 1 割増しになる。本業が悪化しても、現金が値段を支える。逆に、現金が戻らなくても、本業の配当が利回りを支える。待つ間も配当が出る。ただし、本業がゆっくり縮む場合に、割安のまま放置される罠には注意が要る。
何で稼ぐ会社か
事業は放送・通信向けのケーブル、コネクタ、機器の製造販売で、単一のセグメントだ。売上の 35% がケーブル、13% がコネクタで、残る 52% は接続ケーブル、光伝送やネットワークの機器、システムの提案と施工などだ。
顧客は、テレビ局、スタジアム、コンサートホール、音響・映像の施工会社とその販売店だ。国内では電設と放送機器の業界向けが国内売上の 7 割弱を占める。会社は、日本のテレビ局の多くが当社のケーブルとコネクタを使っていると説明している。
売上の約半分は海外だ。2025 年 12 月期の国別では、日本が 65 億円、米国が 17 億円、中国が 15 億円、韓国が 11 億円、欧州が 10 億円だった。米国では施工会社と販売店向けが堅調で、欧州と中東も伸びている。
製造は日本のグループ会社と、上海の子会社が担う。従業員は連結で 258 名と少ない。顧客の現場で使う細かな仕様の要望に応える少量多品種型だ。
稼ぎ方は、ケーブルとコネクタという消耗と更新が続く部品と、設備を一式で納めるシステム案件の組み合わせだ。放送局の設備更新は数年単位の波があるが、部品は常に売れる。
商品の幅も広い。同軸の映像ケーブルに加え、音声用のケーブル、パッチ盤、光ファイバーを使った伝送装置、ケーブルリール、工具まで取りそろえる。デジタルネットワーク製品として IP の伝送装置も出している。顧客の現場で必要なものをひとまとめで提案できる点が、競合に対する強みだ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、ケーブルとコネクタの両方を自社で作れることだ。会社は、両方を扱う企業は少ないと説明している。放送の現場では、ケーブルとコネクタの組み合わせの信頼性が命で、いったん採用されると仕様が固定され、替わりにくい。
財務の質は高い。過去 20 年に赤字の期がなく、営業利益率が 7.5% を下回ったことがない。最良の年は 16.9% だ。自己資本比率は 90% で、設備投資は年 3 億円ほどと軽い。事業が稼ぐ現金を、ほとんど使わずにためられる。
弱みも書く。ブランドは玄人向けで、市場が小さい。売上が 10 年で 1.3 倍にとどまり、成長力は高くない。人材の厚みも薄く、従業員の平均年齢は 49 歳だ。
最大の弱みは資本の使い方だ。現金が総資産の 6 割を超えるのに、事業に使う道が乏しい。2025 年は預金と有価証券に 35 億円を回したが、これは運用であり、事業の成長ではない。筆者は、この現金を株主がどれだけ受け取れるかが、投資の成否を分けると見る。
なお、同社は株主優待を 2022 年に廃止し、配当に一本化した。優待は会社の費用で株主を選ぶ仕組みなので、現金を直接戻す方向への転換として評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
放送・業務用の映像・音声機器の市場は、テレビ局の設備更新、スポーツの競技場、音楽ホール、企業の会議室や映像制作の設備投資に連動する。国内の市場は成熟していて、数量は実質で横ばいに近い。名目では物価で伸びる。
大きな構造変化が 2 つある。1 つは映像が 4K・8K へ進み、1 本あたりの伝送量が増えることだ。高性能のケーブルとコネクタが必要になり、単価は上がる。もう 1 つは放送設備が IP(ネットワーク)化に進むことだ。同軸ケーブルは減り、ネットワーク機器が増える。当社は IP 製品を成長領域と位置づけて開発している。
筆者は、IP 化で同軸ケーブルが急に消えるとは見ていない。現場の機器は、10 年は同軸の端子を持ち続ける。ただ、長い目では同軸の比重は下がり、当社が IP 製品で受注を取れるかが分かれ目になる。
競争は、海外の大手ケーブルメーカーやコネクタ専業が相手だ。価格で攻める中国勢もいる。当社は品質と現場の信頼で勝負し、海外ではまだ知名度が足りない。海外売上は半分に達し、伸び代は米国、欧州、中東にある。
10 年の見通しでは、数量は実質で年 1% 前後の伸びにとどまる。国内の放送局は数が決まっており、新設は少ない。伸びるのは、海外の施工会社経由の案件と、スポーツ施設や音楽ホール、企業の映像設備だ。物価の分は価格に入る。
資本政策と M&A
資本政策の核は、積み上がった金融資産だ。現金と預金が 93 億円、長期預金が 20 億円、投資有価証券が 24 億円ある。2025 年は長期預金と有価証券に 35 億円を回し、現金同等物は 23 億円減った。
還元は改善している。年間配当は 2022 年の総額 2.4 億円ほどから、2025 年に 4.5 億円ほどへ増えた。連結配当性向 40% を目安にしている。2026 年の中間配当も増やした。株主優待は 2022 年に廃止した。自社株買いの実績は見当たらない。
余った現金の戻り方は 0.75 と置く。配当性向を明示して増配が続く点は、1.0 に近い。一方、現金が利益の 10 年分を超え、今も積み上がっており、創業家に近い個人株主が上位を占めるため、全額が戻るとは見ない。
東証の PBR 1 倍割れへの改善要請は、この会社に追い風になる。自社株買い、増配、特別配当のどれが出ても、割安は縮まる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額 117 億円に対し、現金と預金、長期預金、投資有価証券が 137 億円ある。有利子負債はなく、負債の総額は 20 億円にすぎない。本業の営業利益 15 億円は、ほぼ無料で付いてくる。これほど割安な状況は、PBR 0.6 倍の今だけだ。
本業は堅い。赤字の年は過去 20 年にない。営業利益率は 12% で、ケーブルとコネクタの両方を自社で作る強みがある。海外売上は半分に達し、米国と中東で伸びている。4K・8K への移行で単価は上がる。
株主還元は変わりはじめている。配当は 3 年で 2 倍弱になり、東証の PBR 改善要請も強まっている。サウンドハウスの持ち分が 3% 台に上がるなど、外部の株主も動いている。現金の半分でも戻れば、株価は 5 割以上上がる。完全子会社化の動きがあれば、プレミアムは現金の厚みの上に乗る。
さらに、海外には伸び代がある。米国では施工会社と販売店向けの納入が堅調で、中間期の海外売上は前年同期比 9.5% 増えた。日本ブランドの信頼性は、為替が円安の間は価格競争力にもなる。IP 製品の拡販と、車載カメラや医療への技術の転用が当たれば、新しい柱が育つ。
慎重な見方
現金は長年積み上がるだけで、株主に戻ってこなかった。会社が現金を使う道は預金と有価証券で、事業の成長ではない。創業家に近い個人株主が上位を占める会社は、変わらないことがある。PBR 0.6 倍の状態が何年も続いた事実が、それを示している。
本業は成長しない。売上は 10 年で 1.3 倍にとどまり、営業利益は 2019 年の 12 億円から 2020 年に 9 億円まで落ちた。国内は NHK 案件の反動で、2026 年の中間期に売上が減った。営業利益の予想も 6% 減だ。
放送設備は IP 化に向かう。同軸ケーブルとコネクタを売る会社には、構造的な逆風だ。海外は中国勢の価格攻勢があり、中国とインドの納入は減った。現金があっても、事業が縮めば株価は上がらない。
金融資産の約 137 億円も、一部は有価証券で、価格が動く。2025 年は預金や有価証券へ 35 億円を回したが、事業への投資ではない。経営が現金の使い道を示さない限り、割安は放置されうる。創業家に近い株主が変化を求めなければ、PBR 0.6 倍は 10 年続くこともありうる。配当を増やしても、現金の積み上がりに追いつかない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方が強い。現金が時価総額を上回るという事実は、本業の悩みを上回る。ただし、現金が株主に戻る確率は、戻り方 0.75 に割り引いた。そのうえで、中立の確率を 38% とし、楽観とやや楽観に 3 割強、悲観側に 3 割弱を置いた。IP 化の逆風は、やや悲観と悲観の確率に反映してある。割安が放置される罠は、戻り方の 0.75 と、悲観で現金を半分に見ることで織り込んだ。この会社の価値は、現金の戻り方と、本業の守りの 2 点でほぼ決まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 4,969 円341 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 880 円60 億円)。 今の値に割り戻すと 3,221 円221 億円、今との差 +88.2%、 期待の年率 +13.1%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,766 円533 億円 | 1,385 円95 億円 | +434.8% | +18.3% | 915 円63 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,642 円456 億円 | 1,093 円75 億円 | +352.1% | +16.3% | 1,702 円117 億円 |
| 中立 | 38% | 5,622 円386 億円 | 904 円62 億円 | +281.4% | +14.3% | 2,480 円170 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,516 円173 億円 | 700 円48 億円 | +87.9% | +6.5% | 643 円44 億円 |
| 悲観 | 10% | 917 円63 億円 | 175 円12 億円 | −36.2% | −4.4% | 109 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,969 円341 億円 | 880 円60 億円 | +241.8% | +13.1% | 5,849 円401 億円 |
今の株価時価総額 1,711 円117 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 海外と IP 製品が伸び、利益率が 14% に乗る 利益 26 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 7,766 円533 億円
米国と欧州、中東で施工会社と販売店向けが伸び、海外売上は 10 年で 1.5 倍になる。4K・8K の高性能ケーブルが売れ、単価も物価以上に上がる。
IP 製品が放送局と競技場で採用され、同軸の減少を補う。システムの提案から施工までを一括で受ける体制が実を結ぶ。
営業利益は 33 億円ほどで、今の 2 倍になる。現金は積み上がるが、増配と自社株買いで株主に戻る比率も上がる。この筋書きでは、東証の PBR 改善要請や外部株主の動きが経営を動かし、資本配分が変わる。株主への還元は、配当性向の引き上げと自社株買いで、10 年の総額が純利益の 4 割を超える。現金の戻り方は 1.0 に近づく。海外では米国の施工会社との取引が太くなり、現地の在庫と修理の拠点も増える。
- ケーブル:数量 0.4(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段)= 放送・業務用の設備投資 × 当社の採用)× 価格 1.38(値段の指数(2025 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 79 億円・営業利益 10 億円。ケーブル:数量 1.25 倍 × 価格 1.38 倍、営業利益率 13.0%
- コネクタ:数量 0.2(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.38(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 35 億円・営業利益 8 億円。コネクタ:数量 1.50 倍 × 価格 1.38 倍、営業利益率 22.0%
- 接続ケーブル・機器・システム等:数量 0.6(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.36(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 125 億円・営業利益 16 億円。接続ケーブル・機器・システム等:数量 1.35 倍 × 価格 1.36 倍、営業利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)86 億円。全体の PER 18.31 倍、時価総額 533 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の拡大と IP 製品の受注、4K・8K の高単価化が重なる良い筋書き。2016 年 12 月期の営業利益率 16.9% より低く置いた。
やや楽観 22% 海外が伸び、利益率は 13% に 利益 22 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 6,642 円456 億円
海外売上が 10 年で 1.4 倍に伸び、国内は横ばいに近い。ケーブルとコネクタの数量は 15〜30% 増え、値段は物価並みに上がる。
IP 製品は受注が少しずつ増え、同軸の減少を相殺する。人件費の上昇は値上げで吸収できる。
営業利益は 28 億円ほどになる。配当は利益の 4 割で増え、10 年で 75 億円が株主へ渡る。米国と中東で施工会社との取引が広がり、サービスの修理拠点も現地に増える。設備投資は軽いままで、利益のほとんどが現金になる。値上げも通り、人件費の上昇を吸収できる。金融資産は 10 年で 200 億円を超える。
- ケーブル:数量 0.4(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段)= 放送・業務用の設備投資 × 当社の採用)× 価格 1.36(値段の指数(2025 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 73 億円・営業利益 9 億円。ケーブル:数量 1.17 倍 × 価格 1.36 倍、営業利益率 12.0%
- コネクタ:数量 0.2(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.36(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 31 億円・営業利益 6 億円。コネクタ:数量 1.35 倍 × 価格 1.36 倍、営業利益率 20.0%
- 接続ケーブル・機器・システム等:数量 0.6(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.35(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 115 億円・営業利益 14 億円。接続ケーブル・機器・システム等:数量 1.25 倍 × 価格 1.35 倍、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)86 億円。全体の PER 18.12 倍、時価総額 456 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が伸び、IP 製品が一定の受注を取る筋書き。過去の営業利益率 12〜13% の範囲に収まる。
中立 38% 売上は物価並みに伸び、利益率は今の 12% を保つ 利益 19 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 5,622 円386 億円
国内の放送設備は更新が続くが、数量は横ばいに近い。海外は米国と中東で伸び、10 年で数量が 1.1〜1.2 倍になる。値段は物価並みの 1.34 倍に上がるが、人件費と材料も同じだけ上がる。
IP 化で同軸は徐々に減るが、4K・8K 化と IP 製品の販売が補う。営業利益率は 12% を保ち、営業利益は 24 億円ほどになる。
配当は利益の 4 割にとどまり、10 年で 62 億円が株主へ渡る。現金は積み上がり、金融資産は 200 億円に近づく。海外の拠点を増やし、現地での修理体制も整えるが、大きな買収には踏み込まない。堅実だが成長は穏やかな姿が続く。
- ケーブル:数量 0.3(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段)= 放送・業務用の設備投資 × 当社の採用)× 価格 1.34(値段の指数(2025 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 68 億円・営業利益 7 億円。ケーブル:数量 1.10 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 11.0%
- コネクタ:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.34(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 27 億円・営業利益 5 億円。コネクタ:数量 1.20 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 19.0%
- 接続ケーブル・機器・システム等:数量 0.5(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.34(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 105 億円・営業利益 12 億円。接続ケーブル・機器・システム等:数量 1.15 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)86 億円。全体の PER 17.52 倍、時価総額 386 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が緩やかに伸び、国内は成熟のまま、IP 化の逆風と 4K・8K の追い風が相殺する中心の筋書き。会社の足元の予想(2026 年 12 月期の営業利益 14.8 億円)から大きくは離れない。
やや悲観 20% IP 化の逆風と海外の価格競争で利益率は 9% に 利益 12 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,516 円173 億円
放送局の設備投資が IP 化に移り、同軸ケーブルの数量は 5% 減る。当社の IP 製品の受注は期待に届かず、システム案件は価格競争になる。
海外では中国勢が低価格品で攻め、値段が物価に追いつかない。営業利益率は 9% に下がり、営業利益は 15 億円ほどで足踏みする。
現金は積み上がるが、経営の資本配分は変わらず、株主に戻る額も増えない。人件費は物価並みに上がり、価格転嫁が遅れる年は利益率が下がる。現金の運用益だけが、利益を支える。放送設備の更新が IP に移る間、同軸の売上は少しずつ細り、新製品の売上が追いつかない年が続く。
- ケーブル:数量 0.3(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段)= 放送・業務用の設備投資 × 当社の採用)× 価格 1.28(値段の指数(2025 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 56 億円・営業利益 5 億円。ケーブル:数量 0.95 倍 × 価格 1.28 倍、営業利益率 9.0%
- コネクタ:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.28(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。コネクタ:数量 1.00 倍 × 価格 1.28 倍、営業利益率 15.0%
- 接続ケーブル・機器・システム等:数量 0.4(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.28(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 83 億円・営業利益 7 億円。接続ケーブル・機器・システム等:数量 0.95 倍 × 価格 1.28 倍、営業利益率 8.0%
倍率:事業の資本の ROE は 15% 前後で k 6.75% を上回るが、構造的に押される筋書きなので、正当化 PER の約 17 倍の 6 割弱の 10.0 倍に置いた。余った現金は 0.75 倍の 86 億円を、戻り方 0.75 で足した。
確率:放送設備の IP 化で同軸の比重が下がり、中国勢の価格攻勢も受ける筋書き。2020〜2021 年の営業利益率 9〜10% が続く形だ。
悲観 10% 放送向けが縮み、本業が細る 利益 4 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 917 円63 億円
放送局の設備が IP とクラウドに移り、同軸ケーブルとコネクタの需要が 3 割近く減る。当社の IP 製品は先行する海外の大手に負け、受注を取れない。
価格は物価に追いつかず、営業利益率は 2〜4% に落ちる。営業利益は 4 億円ほどになる。
現金が海外の買収などに使われて目減りし、株主に戻る額は減る。投資有価証券の評価損も重なる。それでも、現金の半分は残り、価値の支えになる。配当は減るが無配にはならず、会社は縮小しながら現金を抱え続ける。大型の施設案件を競合に取られ、国内の売上も落ちる。人員の削減や拠点の統合が避けられない。最悪でも、時価総額は今の半分ほどに下支えされる。
- ケーブル:数量 0.2(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段)= 放送・業務用の設備投資 × 当社の採用)× 価格 1.15(値段の指数(2025 年=1.0、物価と値上げを含む))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。ケーブル:数量 0.75 倍 × 価格 1.15 倍、営業利益率 4.0%
- コネクタ:数量 0.1(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.15(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。コネクタ:数量 0.70 倍 × 価格 1.15 倍、営業利益率 7.0%
- 接続ケーブル・機器・システム等:数量 0.3(当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段))× 価格 1.15(値段の指数(2025 年=1.0))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。接続ケーブル・機器・システム等:数量 0.70 倍 × 価格 1.15 倍、営業利益率 3.0%
倍率:本業の稼ぐ力が細り、k 6.75% を稼げない筋書き。構造的に負けたので、1÷k=14.3 倍の 4 割強の 6.0 倍に置いた。余った現金は 0.5 倍の 57.5 億円を、戻り方 0.75 で足した。
確率:IP 化とクラウド化で同軸ケーブルの需要が構造的に減り、海外の価格競争も激しい。さらに現金が無駄な買収に使われる最悪の筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ケーブル
放送・音響・映像用の同軸ケーブルなど。売上の 35%。
| 数量当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段)= 放送・業務用の設備投資 × 当社の採用 | 価格値段の指数(2025 年=1.0、物価と値上げを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.3 | 1.00 | 46 | 5 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 1.34 | 68 | 7 |
取り方:有報の売上構成(ケーブル 35%)から 46 億円(131 億円の 35%)。出荷額を 150 円で割った億ドル相当を数量とした。営業利益率は、開示がないので 11% と推定した。
コネクタ
BNC などの映像・音声コネクタ。売上の 13%。
| 数量当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段) | 価格値段の指数(2025 年=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.1 | 1.00 | 17 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 1.34 | 27 | 5 |
取り方:有報の売上構成(コネクタ 13%)から 17 億円。営業利益率は、部品の専業に近く高いと見て 20% と推定した。
接続ケーブル・機器・システム等
接続ケーブル、光伝送やネットワークの機器、システムの提案と施工など。売上の 52%。
| 数量当社の出荷額(億ドル、2025 年の値段) | 価格値段の指数(2025 年=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.5 | 1.00 | 68 | 8 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 1.34 | 105 | 12 |
取り方:売上の残り 52%(68 億円)。全体の営業利益 15.8 億円から、上の 2 つを除いた残りを配分した推定(調整 -0.2 億円を含む)。
リスクと懸念
現金が株主に戻らない
金融資産が時価総額を上回っても、株主のものになるとは限らない。創業家に近い個人株主が多く、現金は長年積み上がってきた。戻り方を 0.75 に割り引いたが、さらに低い可能性もある。
放送設備の IP 化
放送局や競技場の設備が IP(ネットワーク)に移ると、同軸ケーブルとコネクタの需要は減る。当社の IP 製品が受注を取れなければ、構造的に細る。
国内の NHK 案件など大型案件の波
国内売上は、前期に計上した NHK 案件の反動で 2026 年の中間期に 3.6% 減った。大型案件の有無で、利益が 1〜2 億円動く。
海外の価格競争と為替
中国勢が低価格品で攻め、中国とインドの納入は減った。海外売上は半分で、為替の動きは利益に響く。本稿は 150 円固定で置いたが、実際には円高で減益になりうる。
現金の使い道を誤る
長年ためた現金が、事業に合わない買収に使われれば、株主の取り分が減る。経営が現金を運用で回す方針は、有価証券の評価損の形でも損失になりうる。
人材と事業の規模
従業員は連結で 258 名と少なく、平均年齢は 49 歳だ。熟練の技術者の退職や採用難が、少量多品種の対応力を損なうおそれがある。
今後の分かれ目
- 自社株買い、特別配当、配当性向の引き上げが発表される
- 現金の戻り方を 1.0 に近づけて見直す。割安の差がさらに広がる。
- 2026 年 12 月期の営業利益が予想の 14.8 億円を下回り、国内の売上が 2 期続けて減る
- やや悲観の確率を引き上げる。IP 化の逆風が表れている可能性がある。
- 海外売上の伸びが 10% を超え、米国と中東で拡大が続く
- 楽観とやや楽観の確率を引き上げる。海外の拡大が確認できたことになる。
- 大型の買収や、本業と関係の薄い出資が発表される
- 現金の戻り方を 0.5 に下げ、悲観の確率を引き上げる。資本配分の質の問題になる。
- TOB(公開買付け)や完全子会社化が発表される
- 買い取り価格が金融資産の厚みを反映しているかを確かめる。割安の差を満たす価格なら、その価格が価値の目安になる。
見ておくもの
- 現金・預金・有価証券の合計と、配当・自社株買いの方針
- 営業利益率の推移(2025 年 12 月期 12.1%、2026 年 12 月期予想 11.2%)
- 海外売上の伸びと IP 製品の受注
- 国内の放送局・競技場向けの案件
- 大株主の動き(サウンドハウスなど)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。事業の資本(現金を除く)の ROE が資本コスト(k=6.75%)を大きく上回るので、正当化 PER は約 20 倍になるが、事業が小さく成長が遅いため、6〜7.5 割の 12.5〜15 倍に置いた。余った現金は戻り方 0.75 を掛けて別に足し、今の株価や過去の PER・PBR は見ていない。数量は用途別の売上構成からの推定、価格は物価並みの 1.34 倍を基本にした。悲観側は現金を半分にして置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→18.31 倍・やや楽観 PER 14→18.12 倍・中立 PER 12.5→17.52 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。