結論
JX金属は、銅を掘って溶かす祖業の上に、半導体の材料を重ねた会社だ。スパッタリングターゲットは世界シェア約6割、スマートフォン向けの圧延銅箔は約8割、AIデータセンターの光通信に使うInP基板は約4割を握る。2026年3月期の営業利益は1,750億円で、前の期より5割以上増えた。
筆者の結論は「割高」だ。理由は2つある。1つ目は利益の質だ。営業利益の半分以上は、チリの銅鉱山の持分から入る資源の利益である。銅が10セント動くだけで40億円変わる。半導体材料の堀の外にある利益だ。
2つ目は2026年の資本政策だ。最大株主のENEOSから約1,949億円で自社株を買い、資金は利息のつかない転換社債2,500億円で集めた。純負債は4,000億円台に増えた。東邦チタニウムの完全子会社化でも新株が約2,470万株出た。
堀の価値は認める。それでも10年後の中立の時価総額は18,700億円にとどまる。5つの筋書きを確率で重ねた本質価値は10,858億円で、今の時価総額を61%下回る。AIの需要と銅高の両方が10年続く筋書きでなければ、今の値段には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業」と「景気の波に乗る事業」が1つの株に入っている。
良い事業は半導体材料と情報通信材料だ。顧客の認定が長く続き、10年後もこの優位が崩れるとは考えにくい。だが、需要の中心はAIデータセンターの投資で、その持続は誰にもわからない。
景気の波に乗る事業は、資源と製錬だ。2026年3月期の営業利益の半分以上を占め、銅価格が下がれば利益は一緒に下がる。経営者の腕では動かせない利益に、高い倍率をつけてはいけない。
資本の使い方も気にかかる。2026年に、約1,949億円で自社株を買い戻し、同時に新株を約2,470万株出した。純負債は4,000億円台に増えた。株価が高い時に買い戻す自社株買いは、割高で買うほど株主の取り分を減らす。筆者はこの点を評価しない。
10年の中立で見ても、時価総額は今の約3分の2にとどまる。楽観の筋書きでも、年率の期待リターンは6%と資本コストの9%に届かない。安全域は見当たらない。
何で稼ぐ会社か
事業は5つの部分に分かれる。稼ぎ方がまるで違うので、分けて見る必要がある。
資源は、チリの銅鉱山の持分だ。ロスペランブレス、エスコンディダ、カセロネスに少数株主として出資し、利益を受け取る。売上にはほとんど載らないが、2026年3月期の営業利益1,009億円は連結の営業利益の6割近い。銅価格で決まる利益である。
金属・リサイクルは祖業の製錬だ。佐賀関製錬所で電気銅や金・銀を作り、電子機器のスクラップから貴金属を回収する。銅鉱石の加工賃(TC/RC)は中国の製錬能力の拡大で実質ゼロまで下がった。稼ぎはリサイクルと貴金属に移っている。
半導体材料は、半導体のウェハーに金属の薄膜をつける高純度のスパッタリングターゲットと、キャパシタ用のタンタル粉だ。ターゲットの数量は2026年度に約2割増える見通しである。
情報通信材料の機能材料は、圧延銅箔・チタン銅・InP基板を作る。InP基板は2026年度下期から生産能力を7〜10倍に増やす計画で、4年で最大1,200億円を投じる。
チタン・電線等は、2026年6月に株式交換で100%子会社にした東邦チタニウムと、タツタ電線などだ。東邦チタニウムのスポンジチタンは航空機向けが柱で、半導体向けの高純度チタンも作る。売上は約1,600億円、営業利益は約100億円と、利益率は低い。
優良さと弱いところ
優良さは2層に分かれる。
上の層は半導体材料と情報通信材料だ。ターゲットも圧延銅箔もInP基板も、半導体メーカーや部品メーカーが長い品質認定を経て採用する。一度入れば切り替える費用が高く、値段も下がりにくい。6N(99.9999%)を超える高純度の技術が、新規参入を阻む。堀、つまり他社がまねできない強みは本物だ。
下の層は資源と製錬だ。銅価格もTC/RCも国際市況が決める。JX金属は値段の受け手にすぎない。そしてこの下の層が、2026年3月期の営業利益の半分以上を稼いだ。資本効率の高さ(ROE14.4%)は、銅高という外から来た追い風を含んでいる。
筆者は、堀の強さを全社に広げて評価しない。堀が効くのはセグメント利益の3分の1ほどで、残りは市況の波に乗る事業だからだ。残る超過利益の割合は「普通」(半分)とする。
経営面の変化は2つある。ENEOSからの独立性は高まった。一方で、自社株買いと東邦チタニウムの買い取りで、財務の余裕は薄くなった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銅は電力網・EV・データセンターの需要で、長い目では不足方向とみられている。一方、製錬は逆風が続く。中国が製錬能力を急に広げ、銅精鉱の取り合いになった。2026年の加工賃は実質ゼロまで下がり、スポットでは一時マイナスになった。
本稿の中立は、銅価格を10年後に1トン1.3万ドルとする。足元の水準とほぼ同じで、物価で名目が上がらない前提だ。実質では目減りする。楽観は1.7万ドル、悲観は7,500ドルとみる。
半導体材料は、AIサーバー向けの先端ロジックとメモリの増産が追い風だ。競合は東ソー、三井金属、アルバック、住友化学、米ハネウェルなど。JX金属は高純度化の技術と東邦チタニウムの垂直統合で先を行く。ただし過去の半導体の投資は、数年単位で山と谷を繰り返してきた。
InP基板は、住友電気工業と合わせて世界の約8割を占める寡占市場だ。AIデータセンターの光トランシーバー需要で急に立ち上がった。将来、光を半導体の近くまで引き込む共同パッケージ光学が広がれば、基板の使い方が変わるおそれがある。
会社は中期計画で、2028年3月期までの営業利益の年率成長を10〜15%としている。2040年度の目標は2,500億円で、2026年度の見通し2,320億円とほぼ並ぶ水準だ。会社自身が、今の高い利益を長く続くものとは見ていないことがうかがえる。
資本政策と M&A
2026年は資本政策が大きく動いた年だ。
1つ目は自社株の公開買付けである。ENEOSが持つ株式のうち約5,730万株を、直前の終値より1割安い水準で、約1,949億円で買った。うち400万株は2026年7月末に消却した。資金は、2029年と2031年に満期を迎える転換社債(各1,250億円)で集めた。利息はゼロだが、転換価額は発行時の株価より2割高い。株価が今より5割超高くならなければ転換されず、満期に現金で返す借金として残る。手取りは約2,776億円で、買付けの残り約830億円は半導体材料や結晶材料の増産に回す。
2つ目は東邦チタニウムの完全子会社化だ。2026年6月1日に株式交換(1対0.70)で、新株約2,472万株を出した。親子上場が解消され、少数株主に流れていた利益が自社に戻る。ただし東邦チタニウムの利益はまだ小さく、新株の分だけ1株の取り分は薄まった。
3つ目は配当方針の変更だ。配当性向は25%程度を基本に下限を置く。2027年3月期の配当性向は1割強にとどまる。自社株買いを含めた総還元性向は100%を大きく超える。
ENEOSは約3億3,600万株、発行済みの35.3%を持つ最大株主のままだ。さらに売れば、株価には需給の重しになる。事業の価値は変わらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AIは10年かけて半導体と光通信の姿を変える。JX金属はその材料の根元を握る会社だ。ターゲットは世界の約6割、圧延銅箔は約8割、InP基板は約4割。どれも顧客の認定が長く、後発が入りにくい。
2026年は投資の年だった。ひたちなかの新工場でターゲットの生産能力を増やし、InP基板は4年で最大1,200億円をかけて7〜10倍にする。需要の先食いではなく、足りない供給を埋める投資だ。東邦チタニウムの完全子会社化で、高純度チタンの品質と供給も社内で固まった。
銅も追い風である。電力網・EV・データセンターの需要は強く、鉱山の新規開発は遅れている。チリの鉱山の持分は、銅が上がるほど利益が膨らむ。製錬の加工賃が悪くても、リサイクルと貴金属が補う。
自社株買いにも意味がある。ENEOSの持分は35%まで下がり、経営の独立性は上がった。株数が減った分、1株の取り分は増える。配当も、利益が伸びれば性向25%の方針で自然に増える。これらが重なれば、利益は今の水準から2倍に近づき、今の値段は割安だったと言われる。
慎重な見方
2026年3月期の利益は、銅高とAIブームが同時に来た山の高さだ。営業利益の半分以上は、チリの鉱山の持分から入る利益で、銅価格が10セント下がるだけで40億円消える。2026年度の見通しも、1四半期の鉱山の一部譲渡益と円安を含んでいる。
祖業の製錬は加工賃がゼロまで下がり、構造的に稼げない。半導体材料も、過去の投資の波では数年おきに需要が凹んだ。InP基板の生産能力を7〜10倍にする計画は、需要が計画に届かなければ重い固定費になる。共同パッケージ光学のような代替技術が出れば、基板そのものの使い方が変わる。中国は材料の国産化を進めている。
資本の使い方にも疑問が残る。株価が高い局面で、約1,949億円の自社株を買い戻した。その資金は転換社債で借りた。同時に、株式交換で新株が約2,470万株出て、1株の取り分は薄まった。純負債は4,000億円台に増え、2029年と2031年に満期が来る。
ENEOSは35%を握る最大株主のままで、追加の売却はいつでも需給の重しになる。会社自身の長期目標も、2040年度に2,500億円と、今の水準からほとんど伸びない。今の値段が正しいなら、10年後も利益が2倍で続く必要がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと判断した。半導体材料の堀は本物だが、セグメント利益の3分の1ほどにすぎない。残りの資源と製錬は銅価格が決める。
中立の確率を3分の1とし、楽観とやや楽観を合わせて35%、やや悲観と悲観を合わせて32%とした。楽観側を厚くしなかったのは、利益の山が銅高とAIの同時の追い風だからだ。悲観側を薄くしなかったのは、固定費の重い増産投資と、増えた借金を抱えているからだ。ENEOSの追加売却は需給の話にとどめ、10年の価値には入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,584 円3.20 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 454 円4,053 億円)。 今の値に割り戻すと 1,969 円1.76 兆円、今との差 −32.5%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 7,793 円6.96 兆円 | 772 円6,900 億円 | +193.6% | +11.4% | 1,028 円9,184 億円 |
| やや楽観 | 23% | 5,490 円4.91 兆円 | 604 円5,400 億円 | +108.9% | +7.6% | 1,402 円1.25 兆円 |
| 中立 | 33% | 3,565 円3.19 兆円 | 459 円4,100 億円 | +37.9% | +3.3% | 1,328 円1.19 兆円 |
| やや悲観 | 22% | 829 円7,408 億円 | 280 円2,500 億円 | −62.0% | −9.2% | 244 円2,180 億円 |
| 悲観 | 10% | 269 円2,400 億円 | 90 円800 億円 | −87.7% | −18.9% | 36 円320 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,584 円3.20 兆円 | 454 円4,053 億円 | +38.4% | +3.3% | 4,037 円3.61 兆円 |
今の株価時価総額 2,917 円2.61 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% AI投資が10年続く 利益 3,540 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 7,793 円6.96 兆円
AIデータセンターへの投資が10年にわたって続き、半導体材料と情報通信材料が利益の柱になる。ターゲットは先端ロジックとメモリの増産に乗って数量が2倍半に伸び、InP基板は増産投資がフル稼働して光通信の需要を取り込む。東邦チタニウムとの垂直統合で高純度チタンの品質と供給が固まり、チタン・電線の利益も育つ。銅価格は電力網とEVとデータセンターの需要で1トン1.7万ドルまで上がり、チリ鉱山の持分利益も厚くなる。自社株買いで増えた借金は利益で早く減り、配当は性向25%の方針に上積みされる。ENEOSの追加売却は需給の重しにとどまり、事業の価値は動かさない。10年後の時価総額は、今の約1.5倍になる。
- 資源(チリ銅鉱山の持分):数量 12.5(権益分の銅量(万トン、推計))× 価格 17,000(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 3,188 億円・営業利益 1,807 億円。銅1.7万ドル
- 金属・リサイクル(製錬・都市鉱山):数量 30.0(電気銅換算の販売量(万トン、売上からの換算))× 価格 17,000(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 7,579 億円・営業利益 682 億円。加工賃が戻る
- 半導体材料(スパッタリングターゲット・タンタル):数量 30.0(対象市場(約20億ドル、実質)×JXのシェア約6割=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.30(値段の指数(今=1.0))→ 売上 5,850 億円・営業利益 1,755 億円。先端増産で2.5倍
- 情報通信材料(圧延銅箔・チタン銅・InP基板):数量 30.0(対象市場(約25億ドル、実質)×JXの加重シェア約43%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.40(値段の指数(今=1.0))→ 売上 6,300 億円・営業利益 1,323 億円。InPが数倍に
- チタン・電線等(東邦チタニウム、タツタ電線等):数量 18.0(対象市場(約150億ドル、実質)×JXの出荷のシェア約7%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.40(値段の指数(今=1.0))→ 売上 3,780 億円・営業利益 378 億円。半導体向けチタン
倍率:事業の純利益 3,540 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.65 倍、時価総額 66,021 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIの投資と銅高が10年続く姿で、2つの追い風が重なる必要があるため1割強に置いた。
やや楽観 23% 成長が長引く 利益 2,540 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 5,490 円4.91 兆円
増産投資は計画どおり動き、InP基板の需要も光通信の拡大に沿って伸びる。ターゲットは2倍強に増え、圧延銅箔とチタン銅も堅調で、情報通信材料の利益は今の4倍になる。銅価格は1トン1.5万ドルで高止まりし、資源の持分利益は今より4割ほど増える。一方で製錬の加工賃は低いままで、貴金属とリサイクルが金属事業を支える。東邦チタニウムは航空機向けの回復と半導体向けの伸びで、利益がじわり増える。借金は4年ほどで平時の水準に戻り、配当も増えていく。利益は今の約2.4倍になるが、時価総額は今より6%高い程度にとどまる。
- 資源(チリ銅鉱山の持分):数量 12.0(権益分の銅量(万トン、推計))× 価格 15,000(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 2,700 億円・営業利益 1,375 億円。銅1.5万ドル
- 金属・リサイクル(製錬・都市鉱山):数量 28.0(電気銅換算の販売量(万トン、売上からの換算))× 価格 15,000(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 6,241 億円・営業利益 531 億円。貴金属が支える
- 半導体材料(スパッタリングターゲット・タンタル):数量 25.5(対象市場(約20億ドル、実質)×JXのシェア約6割=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.25(値段の指数(今=1.0))→ 売上 4,781 億円・営業利益 1,339 億円。シェア維持
- 情報通信材料(圧延銅箔・チタン銅・InP基板):数量 23.0(対象市場(約25億ドル、実質)×JXの加重シェア約43%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.35(値段の指数(今=1.0))→ 売上 4,658 億円・営業利益 838 億円。InPの増産稼働
- チタン・電線等(東邦チタニウム、タツタ電線等):数量 16.0(対象市場(約150億ドル、実質)×JXの出荷のシェア約7%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.37(値段の指数(今=1.0))→ 売上 3,288 億円・営業利益 296 億円。航空機が回復
倍率:事業の純利益 2,540 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 18.01 倍、時価総額 45,745 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:増産投資が計画どおり動き、銅も高止まりする姿。楽観より起こりやすいと見て2割強に置いた。
中立 33% 成長一巡の成熟 利益 1,700 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 3,565 円3.19 兆円
AIの投資は続くが、2026年ほどの勢いは数年で一巡し、成熟した成長に落ち着く。半導体材料の数量は7割ほど増え、InP基板は計画の半分ほどが実現する。圧延銅箔はスマートフォンの成熟で横ばいに近い。銅価格は1トン1.3万ドルで、物価ほどは上がらず実質では目減りする。中国の製錬能力の過剰は10年たっても解消せず、加工賃は低いままだ。資源の持分利益は1,000億円弱で、今とほぼ同じ水準に戻る。営業利益は2,700億円と、会社が示す2040年度の目標(2,500億円)に近い姿になる。借金は利益で減っていくが、配当性向25%の方針のまま自己資本は厚くなり、ROEは11%前後にとどまる。
- 資源(チリ銅鉱山の持分):数量 11.5(権益分の銅量(万トン、推計))× 価格 13,000(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 2,243 億円・営業利益 972 億円。銅1.3万ドル
- 金属・リサイクル(製錬・都市鉱山):数量 27.0(電気銅換算の販売量(万トン、売上からの換算))× 価格 13,000(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 5,216 億円・営業利益 391 億円。加工賃は低いまま
- 半導体材料(スパッタリングターゲット・タンタル):数量 20.5(対象市場(約20億ドル、実質)×JXのシェア約6割=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.20(値段の指数(今=1.0))→ 売上 3,690 億円・営業利益 941 億円。成長は緩やか
- 情報通信材料(圧延銅箔・チタン銅・InP基板):数量 18.2(対象市場(約25億ドル、実質)×JXの加重シェア約43%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.30(値段の指数(今=1.0))→ 売上 3,549 億円・営業利益 550 億円。InPは半分の実現
- チタン・電線等(東邦チタニウム、タツタ電線等):数量 14.3(対象市場(約150億ドル、実質)×JXの出荷のシェア約7%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.34(値段の指数(今=1.0))→ 売上 2,874 億円・営業利益 230 億円。航空機・電線は堅調
倍率:事業の純利益 1,700 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.93 倍、時価総額 28,781 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIの成長が一巡し、銅が横ばいに落ち着く姿がもっとも起こりやすいとして最大の確率を置いた。
やや悲観 22% 稼働率が上がらない 利益 640 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 829 円7,408 億円
AI半導体の投資がいったん一服し、データセンターの計画見直しが相次ぐ。ターゲットの数量は伸び悩み、競合の追随で単価も下がる。InP基板は7〜10倍に増やした設備の稼働率が上がらず、固定費が利益を食う。銅価格は1トン1万ドルまで下がり、資源の持分利益は今の4割に減る。製錬の加工賃は恒常的にマイナスで、金属事業は薄利になる。自社株買いで増えた借金は、利益が細る中で重くなる。利息が3.5%に上がり、純利益は600億円ほどに沈む。ROEは5%前後と、資本コストの9%を割り込む。配当は下限を守るが、買い戻しはできない。
- 資源(チリ銅鉱山の持分):数量 11.0(権益分の銅量(万トン、推計))× 価格 10,000(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 1,650 億円・営業利益 435 億円。銅1万ドル
- 金属・リサイクル(製錬・都市鉱山):数量 25.0(電気銅換算の販売量(万トン、売上からの換算))× 価格 10,000(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 3,715 億円・営業利益 186 億円。加工賃がマイナス
- 半導体材料(スパッタリングターゲット・タンタル):数量 16.0(対象市場(約20億ドル、実質)×JXのシェア約6割=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.10(値段の指数(今=1.0))→ 売上 2,640 億円・営業利益 528 億円。需要伸び悩み
- 情報通信材料(圧延銅箔・チタン銅・InP基板):数量 13.5(対象市場(約25億ドル、実質)×JXの加重シェア約43%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.20(値段の指数(今=1.0))→ 売上 2,430 億円・営業利益 243 億円。稼働率が低迷
- チタン・電線等(東邦チタニウム、タツタ電線等):数量 11.5(対象市場(約150億ドル、実質)×JXの出荷のシェア約7%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.25(値段の指数(今=1.0))→ 売上 2,156 億円・営業利益 97 億円。航空機が伸びない
倍率:ROE5.4%がk8%以下なので、PERの上限は1÷k=11.1倍(ためた利益は額面未満の価値)。その約7割を採用。稼働率が低迷し、競争で利益が薄れる分を見込んだ。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7.8 倍・時価総額 4,992 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:増産投資に需要が追いつかず、稼働率が低迷し銅も下がる姿。固定費の重さを考え2割強に置いた。
悲観 10% 構造的に負ける 利益 −390 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 269 円2,400 億円
中国が半導体材料の国産化を進め、ターゲットと圧延銅箔のシェアを大きく失う。InP基板は光を半導体の近くまで引き込む新方式に置き換わり、増産した設備が使われなくなる。東邦チタニウムとの統合のシナジーも出ない。銅は世界の供給過剰で1トン7,500ドルまで沈み、資源の持分利益はほぼゼロ、製錬は赤字になる。2026年に自社株買いで減らした財務の余裕は戻らず、増産設備の固定費が重くのしかかる。10年後のJX金属は、もはや優良な材料メーカーではない。設備の減損で自己資本は6,000億円に縮み、売れる設備・在庫・鉱山持分の税後の値で評価される。配当は設備や鉱山持分の売却で当面は維持するが、途中で打ち切られる。
- 資源(チリ銅鉱山の持分):数量 10.0(権益分の銅量(万トン、推計))× 価格 7,500(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 1,125 億円・営業利益 20 億円。銅7,500ドルで利益ほぼゼロ
- 金属・リサイクル(製錬・都市鉱山):数量 21.0(電気銅換算の販売量(万トン、売上からの換算))× 価格 7,500(銅価格(ドル/トン、LME))→ 売上 2,340 億円・営業利益 −70 億円。製錬は赤字
- 半導体材料(スパッタリングターゲット・タンタル):数量 11.0(対象市場(約20億ドル、実質)×JXのシェア約6割=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.00(値段の指数(今=1.0))→ 売上 1,650 億円・営業利益 132 億円。シェアを失う
- 情報通信材料(圧延銅箔・チタン銅・InP基板):数量 8.5(対象市場(約25億ドル、実質)×JXの加重シェア約43%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.00(値段の指数(今=1.0))→ 売上 1,275 億円・営業利益 −26 億円。代替技術で置換
- チタン・電線等(東邦チタニウム、タツタ電線等):数量 8.5(対象市場(約150億ドル、実質)×JXの出荷のシェア約7%=自社分の出荷(億ドル))× 価格 1.10(値段の指数(今=1.0))→ 売上 1,403 億円・営業利益 −28 億円。需要が縮む
倍率:赤字でPERは当てられない。構造的に負けた谷として、売れる設備・在庫・鉱山持分の税後を、自己株取得後の自己資本(約6,000億円)の約4割と見た床。
確率:中国の国産化や代替技術でシェアを失い、銅も供給過剰で沈む構造的な負け。頻度は低いが起こりうるとして理由を明記し1割を確保した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
資源(チリ銅鉱山の持分)
ロスペランブレス(持分約12.5%)・エスコンディダ(約3%)・カセロネス(約25%)の持分から入る利益。持分法や配当が中心で、売上にはほとんど載らない。
| 数量権益分の銅量(万トン、推計) | 価格銅価格(ドル/トン、LME) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.1 | 10,825 | 1,965 | 1,009 |
| 10 年後 中立 | 11.5 | 13,000 | 2,243 | 972 |
取り方:売上計上は57億円だが利益は1,009億円ある。銅が10セント動くと資源の営業利益が40億円動く(決算説明資料)ので、そこから権益分の銅量を約12万トン相当と割り戻した。売上は「権益分の銅量×銅価格」の目安値で、利益率は鉱山の税後の取り分に近い。銅価格は2025年度平均の491セント/ポンド。
金属・リサイクル(製錬・都市鉱山)
佐賀関製錬所などで電気銅・金・銀・硫酸を生産し、電子機器スクラップなどから貴金属・レアメタルを回収する祖業。
| 数量電気銅換算の販売量(万トン、売上からの換算) | 価格銅価格(ドル/トン、LME) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 10,825 | 4,021 | 376 |
| 10 年後 中立 | 27.0 | 13,000 | 5,216 | 391 |
取り方:売上4,021億円を銅価格で割り戻した換算値(金・銀・硫酸とリサイクルの収入を含む)。製錬の取り分(TC/RC)は実質ゼロまで下がり、利益の中身は貴金属とリサイクルが中心。
半導体材料(スパッタリングターゲット・タンタル)
半導体の薄膜をつくる高純度スパッタリングターゲット(世界シェア約6割)と、キャパシタ用のタンタル・ニオブ粉。
| 数量対象市場(約20億ドル、実質)×JXのシェア約6割=自社分の出荷(億ドル) | 価格値段の指数(今=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.8 | 1.00 | 1,772 | 395 |
| 10 年後 中立 | 20.5 | 1.20 | 3,690 | 941 |
取り方:開示は売上1,772億円・営業利益395億円(2025年度)。対象市場約20億ドルは薄膜材料(ターゲット・磁性材)とタンタル粉の推計で、確かな出典は無い。シェアは公表の約6割で、数量はこの自社分、値段は指数で置く。
情報通信材料(圧延銅箔・チタン銅・InP基板)
スマートフォン向けの圧延銅箔(世界シェア約8割)・チタン銅・表面処理と、AIデータセンターの光通信に使うインジウムリン(InP)基板(世界シェア約4割)。
| 数量対象市場(約25億ドル、実質)×JXの加重シェア約43%=自社分の出荷(億ドル) | 価格値段の指数(今=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.7 | 1.00 | 1,602 | 211 |
| 10 年後 中立 | 18.2 | 1.30 | 3,549 | 550 |
取り方:開示の「機能材料」は売上1,602億円・営業利益211億円(2025年度)。市場約25億ドルは圧延銅箔・チタン銅・InP基板などの推計で、シェアは製品別の公表値(銅箔8割・InP4割など)を加重した。InP基板は2026年度下期から生産能力を7〜10倍に増やす計画で、数量の伸びの中心。
チタン・電線等(東邦チタニウム、タツタ電線等)
東邦チタニウム(スポンジチタン・触媒・化学品)とタツタ電線(電線・電磁波シールド材)。東邦チタニウムは2026年6月に株式交換で100%子会社になった。
| 数量対象市場(約150億ドル、実質)×JXの出荷のシェア約7%=自社分の出荷(億ドル) | 価格値段の指数(今=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.6 | 1.00 | 1,585 | 104 |
| 10 年後 中立 | 14.3 | 1.34 | 2,874 | 230 |
取り方:開示は売上1,585億円・営業利益104億円(2025年度。東邦チタニウム単体は売上834億円・営業利益44億円)。スポンジチタン・チタン触媒・機能性電線を合わせた対象市場の約150億ドルと約7%のシェアは、売上を分解するための推計で、確かな出典は無い。
リスクと懸念
利益の半分以上が銅価格に連動する
2026年3月期の営業利益1,750億円のうち、資源の持分が1,009億円を占める。銅が10セント/ポンド動くと資源の営業利益は40億円動く。半導体材料の堀とは無関係に、銅高が終われば全社の利益が一緒に縮む。
AI投資サイクルの反動
ターゲットもInP基板も、需要の中心はAIデータセンターの投資だ。過去の半導体の投資は数年単位で山と谷を繰り返してきた。InP基板は生産能力を7〜10倍にするので、需要が届かなければ稼働率が下がり、固定費が利益を食う。
自社株買いと転換社債で財務が重い
約1,949億円の自社株買いを、利息ゼロの転換社債2,500億円で賄った。純負債は4,000億円台に増え、2029年と2031年に満期が来る。株価が転換価額を超えなければ現金で返す借金だ。景気が崩れた年に満期が重なると苦しい。
ENEOSの追加売却
ENEOSは発行済み株式の35.3%を持つ最大株主のままだ。追加で売れば、需給の重しになる。事業の価値は変わらないが、株価は一時的に下がる。
中国の材料国産化とInPの代替技術
ターゲット・圧延銅箔・InP基板は、中国が重点的に国産化を進める分野だ。品質認定の壁は高いが、長期ではシェアを削られうる。光を半導体の近くまで引き込む共同パッケージ光学が広がれば、InP基板の使い方も変わる。
TC/RC(製錬の加工賃)の低迷
中国の製錬能力の拡大で、銅精鉱の加工賃は2026年に実質ゼロまで下がり、スポットではマイナスになった。この状態が長引けば、金属・リサイクルは貴金属とリサイクルの収入に頼る薄い利益のままだ。
東邦チタニウムの統合
完全子会社化で少数株主の取り分は消えたが、新株約2,470万株を出した。東邦チタニウムの営業利益は2025年度に約44億円と小さく、航空機向けの需要回復と半導体向けの伸びがなければ、1株の取り分の薄まりを取り返せない。
今後の分かれ目
- 銅価格が1トン1万ドルを割り込み、そのまま戻らなかったら
- 資源の持分利益が3〜4割減り、全社の営業利益は2,000億円を割る。やや悲観の筋書きに近づく。
- AIデータセンターの投資が年率10%超で10年続いたら
- ターゲットとInP基板の数量が計画どおり伸び、やや楽観〜楽観の筋書きに近づく。
- InP基板の増産設備が2027年度に高稼働になったら
- 情報通信材料の利益が増え、借金の返済も早まる。やや楽観の筋書きに近づく。
- ENEOSが残る株式をさらに売り出したら
- 短期の需給は悪化するが、事業の価値は動かない。経営の独立性が高まる面もある。
- 2029年と2031年の転換社債の満期前に株価が転換価額を大きく超えたら
- 借金が株に変わり、財務は軽くなるが、株数が約5,100万株増えて1株の取り分は薄まる。
- 中国の材料メーカーが顧客の認定を通し、シェアを取り始めたら
- ターゲット・圧延銅箔の数量と価格が崩れ、半導体材料の堀の評価が下がる。やや悲観〜悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 銅価格(LME)と、資源の営業利益の四半期ごとの動き
- TC/RC(製錬の加工賃)の年次交渉と、中国の製錬能力
- InP基板の増産設備の稼働率と、光トランシーバー向けの出荷量
- ターゲットの数量の伸びと、中国・韓国勢の認定の動き
- ENEOSの持分比率と、転換社債の満期に向けた返済計画
倍率と資本コストの決め方
今の株価を見て倍率を決めてはいない。先に5つのセグメント(資源・金属リサイクル・半導体材料・情報通信材料・チタン電線)の数量と価格で10年後の利益を積み、その時点のROEと資本コスト8%(基本7.5%+quality+1.5%)から、正当化PERを式で出して上限の9割前後に置いた。中立の時価総額が今の約3分の2にとどまるのは、今の値段が楽観に近い筋書きを織り込んでいるためで、答えを今の株価に寄せて調整してはいない。2026年の自社株買い・転換社債・東邦チタニウムの完全子会社化は、株数(basis.shares)・自己資本の起点・利息・非支配持分に反映した。数字の形は今と同じ(家賃を営業費用に入れた形)でそろえる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.2→18.65 倍・やや楽観 PER 11.6→18.01 倍・中立 PER 11→16.93 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%+quality+1.5%=9.0%(β・規模は使わない)。内訳は quality_why。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。