結論
JMCは、横浜に本社を置く試作の会社だ。3Dプリンタで砂の型や樹脂の部品を作り、アルミやマグネシウムを流し込んで、自動車やロボットの開発用の部品を短い期間で届ける。工業用のCTで部品の中を透かして調べる仕事もある。筆者の結論は、今の値段はやや高いというものだ。小さな事業の稼ぐ力は本物だが、売上の3分の2を占める鋳造が利益を出せていないからだ。
強みははっきりしている。3Dプリンタの事業は利益率3割、CTの事業は6割を超える。客の開発の現場に入り込み、急ぎの試作を引き受ける腕がある。
つまずきもはっきりしている。会社は試作から量産の鋳造へ手を広げ、長野県飯田市の工場に大きく投資した。だが製造のコストが想定を上回り、技術の習得にも時間がかかった。2025年12月期には鋳造の設備で13億円の減損を出し、純損失は12億円を超えた。自己資本はほぼ半分になった。
2026年12月期は黒字に戻る見込みで、東証スタンダードにも移った。償却が軽くなった分、利益は出やすい。それでも全社の営業利益は2億円ほどで、本社の費用を賄うのがやっとだ。筆者は、鋳造の立て直しが数字で見えるまでは、高い倍率は付けられないと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、光る事業と重い事業が同居する会社だ。
3Dプリンタの試作とCTの検査は、小さいが良い事業だ。客は開発の時間を買い、値段には寛容だ。設備は要るが、稼ぐ力は高い。オーナーとして持ちたいと思わせる部分がある。
しかし、売上の3分の2は鋳造で、そこが利益を出せていない。会社は試作の強みを量産に広げようとして、大きな投資をし、それを減損した。資本の配分で1度つまずいた経営を、すぐに信じるのは難しい。過去10年のROEも資本コストに届いていない。
安全域も厚くない。自己資本は減損で半分になり、今の時価総額はその1.2倍ほどだ。利益は回復途上で、全社の営業利益は本社の費用に食われて小さい。筆者は、鋳造が利益を出し続ける姿を数字で確かめてから考えても遅くないと考える。今の値段は、良い事業の部分の値打ちを先取りしている。
何で稼ぐ会社か
1990年代の終わりに、樹脂を光で固める光造形の試作の会社として始まった。今の社長の渡邊大知氏が育て、3Dプリンタと鋳造を組み合わせた試作の会社になった。事業は3つに分かれる。
売上の6割強は鋳造だ。3Dプリンタで砂を固めて型を作り、そこにアルミやマグネシウムを流し込む。木の型を作らずに済むので、試作の部品を数日から数週間で届けられる。自動車のエンジンや車体の部品、産業用ロボットの腕の部品などが多い。近年は試作だけでなく、少ない数の量産の部品も引き受けるようになった。安川電機やファナックがそれぞれ売上の1割近くを占める。
2割強は3Dプリンタの事業だ。樹脂の部品や、手術の練習に使う心臓や骨の模型を作る。心臓の模型「HEARTROID」は、医師がカテーテルの手技を練習する道具として病院や医療機器の会社に売れる。
残りの1割強は工業用のCTの事業だ。部品を壊さずにX線で内部を撮り、鋳物の中の空洞や寸法のずれを調べる。装置は高く、客が自前で持つより、必要な時に頼むほうが安い。
工場は横浜の本社、長野県飯田市の鋳造の工場、浜松市の削り出しの工場にある。儲けの源は、急ぎの開発の仕事を高い値段で引き受けることだ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、試作の速さと幅にある。ただ、その堀が守っているのは小さな事業だ。
3Dプリンタで砂の型を作り、すぐに鋳物を流し、CTで中を調べ、削って仕上げる。これを1社で一気通貫でこなせる会社は少ない。開発の現場は時間との勝負で、客は値段よりも速さを買う。3Dプリンタの利益率3割、CTの6割という数字が、その強さを示している。
弱みは鋳造の量産だ。試作の腕があっても、量産の鋳造は別の仕事だ。不良を減らし、同じ品を安く大量に作る技術が要る。そこでは老舗の鋳物の会社が何十年も先を行く。JMCは量産の工場に大きく投資したが、コストが想定を上回り、13億円の減損を出した。試作の強みを量産に広げる戦略は、少なくとも1度は失敗した。
3Dプリンタの技術が広がることも、長い目では脅威だ。大手の自動車や機械の会社は、自前で3Dプリンタを持ち始めている。試作を外に頼む量は、いずれ細る恐れがある。
数字が実力を語る。過去12年の営業利益率は赤字から15%まで振れた。安定して稼ぐ会社とは言えない。ROEの中央値は6%ほどで、資本コストに届いていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
試作の市場は、客の開発の予算で動く。
自動車の業界は、電気自動車への移行で開発が増えた。車体やモーターの部品の形が変わり、試作の数は増える。ただ電気自動車の伸びが鈍った2024〜2025年には、開発の計画も先送りされた。ロボットの業界は、人手不足で需要が伸びる一方、設備投資の波が大きい。安川電機やファナックの受注が落ちれば、JMCの鋳造の注文も減る。
3Dプリンタで作る砂の型は、試作の鋳造では広く使われるようになった。木の型を作る職人が減り、3Dプリンタに置き換わる流れは続く。一方で、3Dプリンタの装置は安くなり、大手の会社が自前で持つ例も増えている。外に頼む試作の量は、伸びが鈍る恐れがある。
工業用のCTは、伸びる市場だ。電気自動車の電池や鋳物の部品、航空や宇宙の部品で、壊さずに中を調べる需要が増えている。装置は数億円と高く、検査を外に頼む客は多い。ただ利益率が高い分、検査の会社や装置の会社が参入してくる。
医療の模型は、手術の練習や説明に使われ、少しずつ広がっている。規模はまだ小さい。
筆者は、JMCの数量は10年で4割ほど増えると見る。伸びるのはCTと量産の鋳造で、量産の鋳造が利益を出せるかが全てを決める。
資本政策と M&A
還元は無い。配当は出しておらず、2026年12月期も無配の予想だ。自社株買いもしていない。
稼いだお金と借入は、工場の投資に回ってきた。長野県飯田市の鋳造の工場には大きなお金をかけたが、2025年12月期にその設備の多くを減損した。投資の判断が裏目に出た形だ。会社は飯田の工場への投資を控え、大型の鋳造部品と量産の専用の工場へと体制を組み替えている。
借金は小さい。有利子負債は7億円ほどで、現金を引くと純負債は3億円ほどだ。自己資本比率は6割を超え、財務の危うさは無い。
株主は、社長とみられる筆頭の個人が2割強を持つ。創業者が経営を握る会社で、外からの買収は起きにくい。経営は成長の投資を優先しており、還元を始めるのはまだ先だと筆者は見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最悪は過ぎた。2025年12月期に鋳造の設備を13億円減損したことで、この先の償却は大きく減る。2026年12月期は営業利益が倍になる見込みで、上半期で黒字に戻った。減損は過去の投資の後始末で、事業の稼ぐ力が消えたわけではない。
CTと3Dプリンタは本物だ。CTの利益率は6割を超え、3Dプリンタは3割を稼ぐ。電気自動車の電池や鋳物の部品で、壊さずに中を調べる需要は伸び続ける。手術の練習の心臓の模型も、医療の現場で広がる。
鋳造も変わりつつある。安川電機やファナックのロボットの部品という、量産の客をつかんだ。人手不足でロボットの需要は長く伸びる。会社は大型の部品と量産の専用工場に絞り、組み替えを進めている。量産の技術が身につけば、売上の大きい鋳造が利益の柱になる。
東証スタンダードへの移行は、経営が利益の安定に自信を持った表れだ。借金は小さく、財務は健全だ。
小さな会社なので、量産の大口の注文が1つ決まるだけで利益は大きく動く。
慎重な見方
鋳造の失敗は一度きりとは限らない。会社は試作の強みを量産に広げると言って大きな投資をし、2年もたたずに13億円を減損した。製造のコストが想定を上回り、技術の習得にも時間がかかったと会社自身が認めている。量産の鋳造では、老舗の鋳物の会社が何十年も先を行く。新しく入った会社が安く大量に作れるようになる保証は無い。
ロボットの客は、波が大きい。安川電機とファナックの受注が落ちれば、量産の注文はすぐに減る。2社で売上の2割近くを占める依存も重い。
3Dプリンタの試作も、長く安泰ではない。装置が安くなり、大手の会社は自前で持ち始めている。CTも利益率が高い分、競争相手を呼び込む。
そして全社の利益は小さい。本社の費用が年4億円を超え、3つの事業の利益をほとんど食っている。過去10年のROEの中央値は6%ほどで、資本コストに届いたことはほとんど無い。
良い事業の部分は、会社全体の4分の1にすぎない。残りの4分の3が稼げなければ、全体の値打ちは上がらない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。CTと3Dプリンタの稼ぐ力は認めるが、売上の3分の2を占める鋳造で大きな失敗をしたばかりで、量産の技術が身についた証拠はまだ無い。確率は中立に4割弱を置き、小さな事業の伸びを映してやや楽観を2割強とした。悲観は1割強で、財務が健全なので厚くはしない。CTの値打ちは悲観側の床に数えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 566 円32 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 55 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 287 円16 億円、今との差 −15.2%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,632 円91 億円 | 144 円8 億円 | +425.3% | +18.0% | 178 円10 億円 |
| やや楽観 | 22% | 943 円53 億円 | 90 円5 億円 | +205.7% | +11.8% | 227 円13 億円 |
| 中立 | 38% | 449 円25 億円 | 54 円3 億円 | +48.9% | +4.1% | 191 円11 億円 |
| やや悲観 | 18% | 108 円6 億円 | 0 円0 億円 | −68.1% | −10.8% | 19 円1 億円 |
| 悲観 | 12% | 45 円3 億円 | 0 円0 億円 | −86.7% | −18.3% | 5 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 566 円32 億円 | 55 円3 億円 | +83.7% | +6.3% | 621 円35 億円 |
今の株価時価総額 338 円19 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 量産の鋳造が柱になり、CTも倍に 利益 6 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 1,632 円91 億円
飯田の工場が量産の専用工場として軌道に乗る。ロボットの腕や電気自動車の部品で、少ない数から中くらいの数の量産を引き受ける。不良が減り、コストは想定の内に収まる。鋳物の出荷量は10年で2倍になり、利益率は9%に上がる。
CTの検査は、電池や航空の部品で需要が伸び、件数は2倍になる。3Dプリンタも、医療の模型と試作で6割増える。
全社の営業利益は10億円近くになり、本社の費用は売上の1割ほどに薄まる。会社は配当を始め、利益の1〜2割を戻す。ROEは資本コストを上回り、試作の会社から量産もこなす部品の会社に生まれ変わる。それでも鋳造の利益率は、老舗の鋳物の会社並みにとどまる。
- 3Dプリンタ(樹脂の試作・医療の模型):数量 3,056(受注の件数(件))× 価格 0.01(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 5 億円。件数1.6倍・単価1.35倍・利益率32%
- 鋳造(砂型の試作と量産):数量 834(鋳物の出荷量(トン))× 価格 0.07(1トンあたりの平均売上(億円))→ 売上 55 億円・営業利益 5 億円。出荷量2.0倍・単価1.33倍・利益率9%
- 工業用CTの検査:数量 5,000(検査の件数(件))× 価格 0.00(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 6 億円。件数2.0倍・単価1.33倍・利益率60%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.07 倍、時価総額 91 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量産の鋳造の技術を身につけ、ロボットの部品で出荷量を2倍にする必要がある。減損を出したばかりの事業で確度は低いが、過去に売上を6年で5倍にした実績があるので1割は置ける。
やや楽観 22% 鋳造が黒字を保ち、CTが伸びる 利益 4 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 943 円53 億円
鋳造の立て直しは時間がかかるが、少しずつ進む。大型の部品と量産の客に絞り、不良とコストを抑える。鋳物の出荷量は10年で7割増え、利益率は7%台で落ち着く。
CTの検査は、鋳物や電池の部品の検査で件数を7割強増やす。利益率は競争で少し下がるが、6割近くを保つ。3Dプリンタは、医療の模型と試作で4割強伸びる。
全社の営業利益は6億円台になる。本社の費用は物価で増えるが、売上の伸びがそれを上回る。配当は小さく始まる。会社は試作と検査で稼ぎ、量産の鋳造でそれを広げる形になる。ROEは資本コストをやや上回る。
- 3Dプリンタ(樹脂の試作・医療の模型):数量 2,770(受注の件数(件))× 価格 0.01(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 4 億円。件数1.45倍・単価1.33倍・利益率30%
- 鋳造(砂型の試作と量産):数量 709(鋳物の出荷量(トン))× 価格 0.06(1トンあたりの平均売上(億円))→ 売上 46 億円・営業利益 3 億円。出荷量1.7倍・単価1.29倍・利益率7.5%
- 工業用CTの検査:数量 4,375(検査の件数(件))× 価格 0.00(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 5 億円。件数1.75倍・単価1.30倍・利益率58%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.63 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:減損で償却が軽くなり、2026年12月期は営業利益の倍増を見込む。鋳造が7%台の利益率を保ち、CTと3Dプリンタが伸びる姿で、中立より一段上。
中立 38% 鋳造は薄利、試作と検査が支える 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 449 円25 億円
鋳造は黒字を保つが、利益率は6%ほどにとどまる。量産の客はつかむが、老舗の鋳物の会社と値段で競い、利ざやは広がらない。出荷量は10年で4割増える。
CTの検査は件数を5割増やし、利益率は競争で5割台に下がる。3Dプリンタは試作と医療の模型で3割伸びるが、大手の内製化で伸びは鈍る。
全社の営業利益は3億円台で、本社の費用が利益の多くを食う形は変わらない。純利益は年2億円ほどだ。配当は少しだけ始まり、利益の多くは会社に残る。ROEは資本コストを下回る。光る事業を抱えた小さな会社のまま、10年がたつ。
- 3Dプリンタ(樹脂の試作・医療の模型):数量 2,483(受注の件数(件))× 価格 0.01(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。件数1.3倍・単価1.30倍・利益率28%
- 鋳造(砂型の試作と量産):数量 584(鋳物の出荷量(トン))× 価格 0.06(1トンあたりの平均売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。出荷量1.4倍・単価1.25倍・利益率6%
- 工業用CTの検査:数量 3,750(検査の件数(件))× 価格 0.00(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 4 億円。件数1.5倍・単価1.25倍・利益率55%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:鋳造の減損は製造の技術の未熟さが原因で、量産の利益率は老舗に届きにくい。CTと3Dプリンタの稼ぐ力は続く。全社の利益率は過去12年の中ほどに収まる姿を中心に置いた。
やや悲観 18% 鋳造が足を引き、利益が消える 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 108 円6 億円
量産の鋳造は伸びず、出荷量は横ばいにとどまる。ロボットの受注の谷が長引き、量産の注文が減る。利益率は4%に落ちる。
3Dプリンタの試作は、大手の内製化で件数が増えない。CTも、検査の会社の参入で利益率が4割台に下がる。
本社の費用を削っても、全社の営業利益はほぼゼロになる。利益は出ず、配当も始まらない。会社は鋳造の工場の縮小を迫られる。株主にとっての値打ちは、CTと3Dプリンタの事業を誰かに売った時の値段に近づく。10年たっても、会社の規模は今とほとんど変わらない。
光る事業はあっても、会社としての稼ぐ力は細い。
- 3Dプリンタ(樹脂の試作・医療の模型):数量 1,910(受注の件数(件))× 価格 0.00(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。件数横ばい・単価1.23倍・利益率22%
- 鋳造(砂型の試作と量産):数量 417(鋳物の出荷量(トン))× 価格 0.06(1トンあたりの平均売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。出荷量横ばい・単価1.2倍・利益率4%
- 工業用CTの検査:数量 3,000(検査の件数(件))× 価格 0.00(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。件数1.2倍・単価1.13倍・利益率45%
倍率:稼ぐ力(純利益0.18億円÷k)は約2億円しかない。CTと3Dプリンタの事業を同業に売った時の値打ちから借金を返した残りに戻り方0.5を掛けた約6億円を床とし、今の自己資本16.5億円の0.364倍に置いた。EV(時価総額+純負債約3億円)÷営業利益は約28倍と高いが、利益がほぼ消える筋書きだからで、株主の取り分は売れる事業の床で測った。
確率:2020年と2025年に赤字の前例があり、鋳造の量産は1度失敗した。ロボットの波の谷と、3Dプリンタの内製化が重なれば、全社の利益はほぼ消える。
悲観 12% 鋳造で再び損を出し、事業が縮む 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 45 円3 億円
量産の鋳造で再びコストが膨らみ、ロボットの客は老舗の鋳物の会社に注文を移す。鋳物の出荷量は4割減り、鋳造は赤字が続く。
3Dプリンタの試作は、大手の内製化で件数が3割減る。CTも、装置が安くなって客が自前で持ち始め、件数が減る。
本社の費用は削り切れず、毎年数億円の赤字が出る。自己資本は10年で4分の3が消える。会社は鋳造の工場を畳み、CTと3Dプリンタの小さな事業だけが残る。その値打ちは、借金と閉鎖の費用を払った後にはわずかだ。
試作の速さという強みも、鋳造の失敗の穴埋めで消えてしまう。株主に残るのはわずかな値打ちだけだ。
- 3Dプリンタ(樹脂の試作・医療の模型):数量 1,337(受注の件数(件))× 価格 0.00(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。件数0.7倍・単価1.15倍・利益率12%
- 鋳造(砂型の試作と量産):数量 250(鋳物の出荷量(トン))× 価格 0.06(1トンあたりの平均売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。出荷量0.6倍・単価1.16倍・赤字
- 工業用CTの検査:数量 2,000(検査の件数(件))× 価格 0.00(1件あたりの平均売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。件数0.8倍・単価1.07倍・利益率30%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。残るCTと3Dプリンタの事業と工場の土地建物の売却額から、赤字で膨らんだ借金を返した残りに戻り方0.5を掛けた約2.5億円を床とし、今の自己資本16.5億円の0.152倍に置いた。
確率:鋳造の量産で2度目の失敗が起き、ロボットの客を失えば、本社の費用だけが残る。財務は健全なので、1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
3Dプリンタ(樹脂の試作・医療の模型)
3Dプリンタで樹脂の試作部品や、手術の練習に使う心臓・骨の模型を作る。
| 数量受注の件数(件) | 価格1件あたりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,910 | 0.00 | 8 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,483 | 0.01 | 13 | 4 |
取り方:件数は未開示。3Dプリンタの事業の売上7.64億円を、1件あたり40万円(0.004億円)で割った推定。営業利益はセグメント利益(全社費用の配分前)。
鋳造(砂型の試作と量産)
3Dプリンタで作った砂の型にアルミやマグネシウムを流し込み、試作の部品や少ない数の量産の部品を作る。
| 数量鋳物の出荷量(トン) | 価格1トンあたりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 417 | 0.05 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 584 | 0.06 | 36 | 2 |
取り方:出荷量は未開示。鋳造の事業の売上20.84億円を、試作と量産を均した1トンあたり500万円(0.05億円)で割った推定。営業利益はセグメント利益。
工業用CTの検査
工業用のX線CTで部品の内部を壊さずに撮影し、空洞や寸法を調べる受託の検査。
| 数量検査の件数(件) | 価格1件あたりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,500 | 0.00 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3,750 | 0.00 | 7 | 4 |
取り方:件数は未開示。CTの事業の売上3.75億円を、1件あたり15万円(0.0015億円)で割った推定。営業利益はセグメント利益。全社費用約4.7億円は調整に入れた。
リスクと懸念
量産の鋳造の失敗
会社は試作から量産の鋳造へ広げようとして、2025年12月期に13億円の減損を出した。製造のコストが想定を上回り、技術の習得にも時間がかかった。量産では老舗の鋳物の会社が先を行き、2度目の失敗の恐れは残る。
ロボットの客への依存
安川電機とファナックで売上の2割近くを占める。ロボットの受注は設備投資の波で大きく振れ、量産の部品の注文もそれに沿って増減する。客が仕入れ先を替えれば、鋳造の売上は一気に減る。
3Dプリンタの内製化
3Dプリンタの装置は年々安くなり、大手の自動車や機械の会社は自前で持ち始めている。試作を外に頼む量が減れば、利益率の高い3Dプリンタの事業の伸びが止まる。
CTの競争
CTの検査は利益率が6割を超える。高い利ざやは、検査の会社や装置の会社の参入を呼ぶ。装置が安くなれば、客が自前で持つ例も増え、値段と件数の両方が下がる恐れがある。
本社の費用の重さ
3つの事業の利益の合計は6億円近いが、本社の費用が4億円を超え、全社の営業利益は1億円ほどにとどまった。売上が伸びなければ、本社の費用が利益を食い続ける。
今後の分かれ目
- 鋳造の事業の利益率が2期続けて8%を超えたら
- 量産の技術が身についたとみて、やや楽観の確率を厚くし、中立の鋳造の利益率を上げる。
- 全社の営業利益が2期続けて4億円を超えたら
- 本社の費用の重さが薄まったとみて、中立の利益を上げる。
- 鋳造でまた減損や大きな損失が出たら
- やや悲観と悲観の確率を厚くし、鋳造の出荷量と利益率を下げる。
- 安川電機やファナックからの受注が大きく減ったら
- 中立の鋳造の出荷量を下げる。
- 配当を始める、または還元の方針が示されたら
- 溜まる現金の戻り方を0.75に上げる。
見ておくもの
- 鋳造のセグメント利益と利益率
- CTと3Dプリンタのセグメント利益
- 全社の営業利益と本社の費用
- 安川電機・ファナック向けの売上
- 設備投資と減価償却
- 配当の開始
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、3Dプリンタの件数、鋳物の出荷量、CTの件数(いずれも推定)と単価、利益率から10年後のセグメント利益を積み、物価で増える本社の費用を引いた。中立のROEは資本コスト8.5%を下回るので、PERは1÷k(約11.8倍)を上限に利益の質で8割に置いた。2025年12月期の減損は一過性として起点の純利益から外したが、量産の鋳造の失敗の恐れは悲観側の確率に入れた。悲観側は、CTと3Dプリンタの事業を売った時の値打ちと土地建物の床で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→14.07 倍・やや楽観 PER 11→12.63 倍・中立 PER 9.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。