結論
アサカ理研は、使い終わった電子部品や歯科材料から金、銀、パラジウムを回収して売る会社だ。売上の8割強が貴金属事業で、残りは廃液から銅を作る環境事業とシステム事業になる。
筆者の結論は、10年の価値は今の時価総額を7割近く下回る、である。2026年9月期は金価格の急騰で、営業利益が12億円と過去最高になる見通しだ。ただ、これは金価格が運んだ利益で、10年先まで続くとは置けない。
一方で、投資は重い。福島県いわき市の電池リサイクル工場に95億円を投じ、借入約60億円を組んだ。自己資本49億円の2倍近い額で、量産開始は2028年4月だ。
電池再生が当たれば景色は変わるが、採算の見通しは開示されていない。筆者は金の山の利益に高い倍率をつけない。
小さな会社が、自己資本の2倍近い投資を決めた点がいちばんの論点になる。成功への賭け金が大きいぶん、結果は両極に振れる。筆者は、その幅を確率に反映した。 判断の分かれ目は、金が下がる年にも電池が稼ぐかどうかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の稼ぎは金価格の高さに乗ったものだ。金は誰かが払える値段を決める資産で、リサイクル会社の利益は、その追い風に過ぎない。
筆者が気にするのは、資本の使い方だ。自己資本の2倍近い投資を、まだ収益の見えない電池再生に注ぐ。成功すれば大きいが、失敗すれば財務制限条項に触れる。
安全域は薄い。時価総額は130億円で、10年の中立の価値を大きく上回る。悲観の筋書きでは、電池再生の損失が自己資本を削り、貴金属の在庫が支えになる程度だ。
払える値段は、金が落ち着いた時の利益に、控えめな倍率をかけたものになる。
経営の資本配分は、攻めの色が濃い。成長のために借入を増やすことは否定しないが、事業の見通しが開示されない段階で自己資本の2倍近い投資を決めた。
成功した時の上振れと失敗した時の傷の深さを、確率で分けて評価するしかない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、金を中心とする貴金属の回収と販売だ。電子部品メーカーの基板屑、不良品、歯科医院からの廃材を集め、溶かして金地金や銀地金に精製する。売上は2025年9月期に87億円で、貴金属事業が73億円を占める。
環境事業は、プリント基板メーカーから出るエッチング廃液を引き取り、塩化第二鉄液や銅粉に再生する。売上は12億円ほどだ。システム事業は計測検査のソフトで、売上は2億円と小さい。
販売先は、ローム・アポロが22%、JXメタルサーキュラーソリューションズが13%、住商マテリアルが11%、三菱商事RtMジャパンが8%だ。仕入は特定の取引先に偏る状況が続く。
価格リスクは、仕入と同時に販売先を決める先渡し取引と、加工賃で相場に連動しない収益を確保して抑える。連結の従業員は194人と少ない。
貴金属は、売り手と買い手の両方で価格を受け入れる立場にある。電子部品屑の集荷には、メーカーや歯科の取引網が要る。精製には溶解と電解の設備が要り、環境規制の許認可も必要だ。
電池再生事業は、福島県いわき市の新工場で行う。2026年10月に完成し、2028年4月に量産に入る計画だ。車載電池大手との工程廃材の委託契約を結び、独自の薬液循環で金属を取り出す。
優良さと弱いところ
堀は、貴金属を高い純度で回収する技術と、電子部品メーカーとの集荷網だ。ただ同業には、住友金属鉱山、DOWA、田中貴金属などの大手がいる。規模と資金力では劣り、買い手と売り手の両方で価格を受け入れる側に回りやすい。
収益は金価格に大きく左右される。営業利益率は2020年9月期の1.1%から、2022年9月期の9.5%まで振れた。貴金属事業のセグメント利益率は2025年9月期でも4%と薄い。
財務は急速に悪化した。自己資本比率は54%から35%へ下がり、有利子負債は56億円に増えた。借入には、純資産を一定以上保ち、経常損失を2期続けないという条件がある。
経営は積極的で、電池再生の投資額は70億円から95億円へ増額された。成否は2028年以降に分かる。
過去の収益を見ると、金価格が上がる年に利益が出て、下がる年に薄くなる。2022年9月期の営業利益率9.5%も、金とパラジウムの上昇が押し上げた。経営の力で稼いだ部分と相場の部分は、分けて見る必要がある。
従業員は連結で194人。電池再生の立ち上げに必要な人材の確保も課題だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
貴金属リサイクルは、電子機器の廃棄量と金属価格の二つで決まる。金は中央銀行の購入などで2025年から2026年に急騰し、国内では1グラム2万3千円台を付けた。金価格が上がると、加工賃に加えて在庫の評価益が出て、リサイクル各社の利益が膨らむ。
構造的には、資源循環への流れが追い風だ。ただ同業の大手が処理量の確保で競い、買取条件は厳しくなりやすい。
電池リサイクルは、電気自動車の廃電池が増える2030年代に市場が本格化すると言われる。同社は薬液を循環させる独自工程で、リチウム、コバルト、ニッケルを高い回収率で取り出す。車載電池大手との工程廃材の委託契約を結んだ。
ただ、欧州や中国の大手との競争があり、金属の買取価格も不安定だ。市場の規模は読みにくい。
電子機器の廃棄量は景気にあまり左右されず、貴金属の回収量は長期で安定している。ただ、基板の小型化と貴金属使用量の減少で、1台あたりの回収量は減る傾向にある。
金価格のサイクルは、中央銀行の購入と実質金利に左右される。2013年の急落や2015年までの低迷のように、数年続く下落が過去にあった。電池リサイクルの市場はまだ形成の途中で、規制と補助金の動きが事業の採算を左右する。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本で、2025年9月期は配当総額0.6億円。2026年9月期からは年2回の配当にする。自社株買いの実績はない。
投資は電池再生に集中している。総額95億円のうち、約22億円が支払い済みで、残りは2026年10月の完成までに出ていく。経産省の補助金約18億円を見込み、借入は60億円のシンジケートローンを2035年8月まで固定金利で組んだ。
現金は40億円あるが、これは完成までの支払いに充てる分で、余った現金とは見ない。株主優待はない。
M&Aの動きは見えない。大株主は開示を確認できなかった。台湾の光洋応用材料科技の株式を政策保有している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金は2025年から2026年にかけて急騰し、国内で1グラム2万3千円を超えた。リサイクルは仕入と同時に販売先を決める先渡し取引と加工賃で、価格変動の影響を抑えながら上昇を取り込める。2026年9月期の営業利益は12億円と、18期ぶりの最高益になる見通しだ。電池リサイクルは、薬液循環の独自工程で高い回収率を狙い、車載電池大手との委託契約も結んだ。2026年10月に工場が完成し、2028年4月から量産に入る。補助金約18億円も見込める。貴金属が稼ぐ間に電池が育てば、金に頼らない成長株になる。 2026年10月に工場が完成すれば、2028年からは量産の売上が積み上がる。貴金属と電池の二本立てで、会社の収益の質は変わる。 小さな会社だからこそ、電池再生が当たれば売上の規模が一変する。経産省の補助金約18億円と、金利スワップで固定した借入が、立ち上げの負担を和らげる。 電池事業が利益を出す前でも、貴金属の利益だけで借入の利払いは賄える。金価格が下がっても、加工賃で相場に連動しない収益が一定ある。
慎重な見方
2026年9月期の利益は、金価格の急騰で押し上げられたものだ。貴金属事業のセグメント利益率は2025年9月期でも4%と薄く、金が落ち着けば元に戻る。電池再生の投資は95億円と、自己資本の2倍近い。補助金を引いても重く、量産は2028年4月とまだ先で、売上目標や採算は開示されていない。借入約60億円には、純資産の維持と経常損失を2期続けないという条件が付く。金が暴落し、電池再生が失敗すれば、財務は一気に苦しくなる。販売先は上位4社で6割近くを占め、仕入も特定先に偏る。時価総額130億円は、この不確実さに見合わない。 同業の大手は資金力が大きく、電池リサイクルでも参入を進めている。小さな会社が借入で挑む勝負には、体力の差が出る。 工場の完成後も量産まで1年半の立ち上げ期間があり、その間の利払いと償却は先に出ていく。 金価格は買い手が高値を追っているだけの面もあり、急落の可能性は常に残る。電池再生の主要な顧客も、車載電池の大手に偏る。
どちらに重みを置いたか
勝つのは慎重な見方だ。金の山の利益を10年先まで続くとは置けず、電池再生の採算は未知数で、財務の余裕も薄い。楽観の筋書きでも、金価格と電池の両方が当たる必要がある。確率は中立を厚く、やや悲観と悲観で3割半とした。電池再生の量産開始と採算が確かめられれば、見方は変わる。 電池再生が軌道に乗る確率を中立の期待に織り込んだが、財務制限条項の存在を考え、悲観側の確率は高めに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 1,939 円98 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 303 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 1,037 円52 億円、今との差 −57.2%、 期待の年率 −0.8%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,394 円322 億円 | 759 円38 億円 | +195.1% | +11.4% | 501 円25 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,605 円182 億円 | 498 円25 億円 | +69.3% | +5.4% | 821 円41 億円 |
| 中立 | 37% | 1,650 円83 億円 | 306 円15 億円 | −19.3% | −2.1% | 724 円36 億円 |
| やや悲観 | 26% | 486 円25 億円 | 135 円7 億円 | −74.4% | −12.7% | 161 円8 億円 |
| 悲観 | 10% | 339 円17 億円 | 20 円1 億円 | −85.2% | −17.4% | 36 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,939 円98 億円 | 303 円15 億円 | −7.5% | −0.8% | 2,242 円113 億円 |
今の株価時価総額 2,424 円122 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 電池リサイクルが当たり、金も高値を保つ10年 利益 22 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 6,394 円322 億円
2026年10月に完成するいわき工場が2028年4月に量産に入り、車載電池の廃材から、ニッケル、コバルト、リチウムを高い回収率で取り出す。電池メーカーとの工程廃材の委託契約が量を確保し、年間の処理量は計画の上限まで伸びる。
貴金属は電子部品の廃基板と歯科材料の回収が増え、数量は今の1.4倍になる。金価格は10年後に1グラム3万円を超える水準を保つ。
利益は金の値動きと電池再生の二本柱になり、借入の返済も進む。配当は性向3割で維持される。
金価格の高騰が10年続くのではなく、実質では目減りしつつ高値圏にとどまる筋書きだ。
- 貴金属事業:数量 679(金換算の取扱量(キログラム、推定))× 価格 3,200(金1キログラムあたりの価格(万円))→ 売上 217 億円・営業利益 13 億円。回収量1.4倍・金価格は1グラム3.2万円
- 電池再生事業:数量 14.0(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 112 億円・営業利益 18 億円。いわき工場がフル稼働し高採算
- 環境事業:数量 132(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 13,400(1トンあたりの売上(円、推定))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。廃液再生が安定
- システム・その他:数量 59.4(年間の受注件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたりの売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。計測システムが堅調
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.32 倍、時価総額 322 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電池再生は量産が2028年4月の予定で、収益性は未知数。当たれば金価格に頼らない柱ができるが、2割を超える確率は置けない。
やや楽観 20% 金が高値圏を保ち、電池再生が順調に立ち上がる10年 利益 14 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 3,605 円182 億円
金は中央銀行の購入などで高値圏を保ち、10年後も1グラム2.7万円ほどで推移する。貴金属の回収量は電子機器の更新と歯科材料の回収で3割増える。
電池再生は量産が1年ほど遅れるが、軌道に乗って利益に貢献する。補助金約18億円と設備更新の費用で、借入は増えるが返済が進む。
営業利益は20億円強で、過去の山を大きく上回る。配当は性向3割で、年2回の配当になる。
電池再生の売上は、立ち上げの遅れを取り戻して3年後に黒字化する。
配当は年2回に増え、性向3割を守る。貴金属の回収網を使って電池の材料集めも伸ばす。
- 貴金属事業:数量 631(金換算の取扱量(キログラム、推定))× 価格 2,700(金1キログラムあたりの価格(万円))→ 売上 170 億円・営業利益 9 億円。回収量1.3倍・金価格は1グラム2.7万円
- 電池再生事業:数量 11.0(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 75(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 83 億円・営業利益 10 億円。量産が軌道に乗る
- 環境事業:数量 120(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 13,400(1トンあたりの売上(円、推定))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。物価並みに価格が上がる
- システム・その他:数量 54.0(年間の受注件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたりの売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。横ばいから微増
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.23 倍、時価総額 182 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年9月期は金価格の上昇で、営業利益が12億円と過去最高に近づく見通し。高値圏が続き、電池再生も計画に近く進む筋はありうる。
中立 37% 金は高値から落ち着き、電池再生が遅れつつ立ち上がる10年 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,650 円83 億円
金は今の1グラム2.3万円から落ち着き、10年後は2.2万円ほどで推移する。物価の伸びには届かず、実質では目減りする。貴金属の回収量は電子機器の廃棄と歯科材料で2割増える。
電池再生は量産が計画より1年遅れ、処理量はフル稼働の7割にとどまる。営業利益率は9%前後で、補助金約18億円を除いた投資額95億円に見合う稼ぎが出るには時間がかかる。
借入約60億円の返済は2035年8月。金利は上がり、利払いが利益を削る。償却は取得時の値段のまま足される。配当は性向3割を守る。
環境事業は価格が物価並みに上がり、システム事業は横ばいで推移する。
- 貴金属事業:数量 582(金換算の取扱量(キログラム、推定))× 価格 2,201(金1キログラムあたりの価格(万円))→ 売上 128 億円・営業利益 6 億円。回収量1.2倍・金価格は1グラム2.2万円で平準化
- 電池再生事業:数量 8.0(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 70(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 56 億円・営業利益 5 億円。量産が1年遅れ、フル稼働の7割
- 環境事業:数量 120(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 13,400(1トンあたりの売上(円、推定))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。物価並みに価格が上がる
- システム・その他:数量 54.0(年間の受注件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたりの売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 83 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年9月期の利益は金の急騰で膨らんでおり、そのまま10年続くとは置けない。金は今の水準から落ち着き、電池再生が遅れて立ち上がるのが最も起こりやすい。
やや悲観 26% 金が下落し、電池再生の採算が合わない10年 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 486 円25 億円
金は1グラム1.7万円まで下がる。今の水準の3割安だ。貴金属の回収量は横ばいで、先渡し取引で価格を固めても、在庫評価の追い風は消える。
電池再生は量産が遅れ、歩留まりと金属の買取価格で苦戦する。設備の償却と借入の利払いだけが重く、営業利益はほぼ貴金属の加工賃で賄う程度になる。
借入には、経常損失を2期続けないという条件がある。ぎりぎりで守るが、配当は性向を上げられない。
環境事業とシステム事業は小さな黒字を保ち、全体を支える。
新リース会計の導入で数字の形は変わるが、10年後の利益の形は今と同じ前提で置く。
- 貴金属事業:数量 485(金換算の取扱量(キログラム、推定))× 価格 1,700(金1キログラムあたりの価格(万円))→ 売上 82 億円・営業利益 3 億円。回収量は横ばい・金価格は1グラム1.7万円
- 電池再生事業:数量 4.0(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 60(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。歩留まりと買取価格で苦戦
- 環境事業:数量 108(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 13,000(1トンあたりの売上(円、推定))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。数量が1割減
- システム・その他:数量 48.6(年間の受注件数(件、推定))× 価格 0.13(1件あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量が1割減
倍率:稼ぐ力はほぼゼロでk8.75%を大きく下回り、床は売れる資産の側で見る。今の自己資本49億円の約0.5倍とした。
確率:金は2012年から2015年にかけて長く下がった実例がある。今の高値は急騰の結果で、半分近くが戻る筋は軽くない。
悲観 10% 金が暴落し、電池再生は失敗に終わる構造的な負け 利益 −6 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 339 円17 億円
金は2013年のように急落し、10年後は1グラム1.1万円に下がる。貴金属の売上は半分近くに縮み、在庫の評価損が出る。
電池再生は競合の大手と欧州勢の参入で買取価格が下がり、採算に乗らないまま撤退する。設備の減損が自己資本を削る。
借入の財務制限条項に触れ、貸し手との再交渉が必要になる。配当はほぼなくなり、増資も排除できない。
電池再生の撤退費用と減損、貴金属の在庫評価損が重なり、自己資本は大きく減る。
同業の大手に事業や顧客を譲る選択肢も浮上する。株主の取り分は薄くなる。
仕入先の集荷網は残るが、価格を決める力は弱いままで、利益の厚みは出ない。
- 貴金属事業:数量 388(金換算の取扱量(キログラム、推定))× 価格 1,100(金1キログラムあたりの価格(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。回収量2割減・金価格は1グラム1.1万円
- 電池再生事業:数量 1.0(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 40(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 −2 億円。撤退・減損
- 環境事業:数量 96.0(年間の処理量(千トン、推定))× 価格 12,000(1トンあたりの売上(円、推定))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。数量2割減
- システム・その他:数量 48.6(年間の受注件数(件、推定))× 価格 0.12(1件あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量1割減
倍率:稼ぐ力に値が付かず、床は今の自己資本49億円の約0.35倍。設備投資の大半は売れず、貴金属の在庫と運転資金で支える。
確率:電池再生の設備投資95億円は、自己資本の約2倍で、失敗すれば財務制限条項に触れる恐れがある。金の暴落が重なる筋は、小さな会社には致命的だ。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
貴金属事業
電子部品屑・歯科材料などから金・銀・パラジウムを回収し、地金や加工材料として売る。
| 数量金換算の取扱量(キログラム、推定) | 価格金1キログラムあたりの価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 485 | 1,500 | 73 | 3 |
| 10 年後 中立 | 582 | 2,201 | 128 | 6 |
取り方:決算短信の貴金属事業売上72.7億円を、2025年9月期の金の平均価格1グラム約1.5万円で割って金換算の取扱量を推定した(銀・パラジウムも金換算。量は開示なし・推定)。セグメント利益は3.02億円。償却は取得時の値段のまま。
電池再生事業
車載電池などの廃材からリチウム・コバルト・ニッケルを回収する新事業(いわき工場、2028年4月量産)。
| 数量年間の処理量(千トン、推定) | 価格1トンあたりの売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.0 | 52 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 70 | 56 | 5 |
取り方:2025年9月期は量産前の試験段階で、売上はほぼない。立ち上げの費用は全社の利益に含まれる。千トンと万円は規模感を示す推定で、処理能力は開示されていない。 電池再生の買取単価は現在の水準を1トン約52万円と推定した。
環境事業
プリント基板メーカーのエッチング廃液を引き取り、塩化第二鉄液と銅粉に再生する。
| 数量年間の処理量(千トン、推定) | 価格1トンあたりの売上(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 120 | 10,000 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 120 | 13,400 | 16 | 1 |
取り方:環境事業の売上12.0億円・セグメント利益0.71億円。量は開示がなく、1トン約1万円と置いて推定した。
システム・その他
計測検査システムの開発販売と、運輸・分析の関連事業。
| 数量年間の受注件数(件、推定) | 価格1件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 54.0 | 0.10 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 54.0 | 0.13 | 7 | 1 |
取り方:システム事業2.0億円とその他3.5億円の計5.4億円、セグメント利益0.55億円。件数は1件約1千万円と置いた推定。
リスクと懸念
金価格の下落
2026年9月期の利益は金の急騰が押し上げた。2012年から2015年のように金が長く下がれば、在庫の評価益が消え、貴金属事業は薄利に戻る。
電池再生の投資の回収
総投資95億円は自己資本49億円の約2倍。量産は2028年4月で、売上目標や採算は開示されていない。歩留まりや金属の買取価格が計画に届かなければ、償却と利払いだけが残る。
借入の財務制限条項
シンジケートローン60億円には、純資産の一定水準の維持と、経常損失を2期続けないという条件がある。金の下落と電池の立ち上げ遅れが重なれば、条件に触れる恐れがある。
取引先の偏り
販売先は上位4社で5割強、仕入も特定の取引先に偏る状況が続く。取引条件の変更や大口の喪失は利益に直撃する。
大手同業との競争
住友金属鉱山、DOWA、田中貴金属などの大手は、処理量の確保で競っている。電池リサイクルも欧州や中国の大手との競争があり、価格決定力は弱い。
今後の分かれ目
- 金価格が今の1グラム2万3千円から1万円台前半へ下がる
- 在庫評価益が消え、貴金属事業は薄利に戻る。やや悲観から悲観の筋書きに寄る。
- 電池再生の量産が2028年4月に始まり、売上と採算の目標が開示される
- 事業の価値が具体化する。数字が良ければ楽観側、悪ければ悲観側に寄る。
- 補助金の確定や追加投資の増額、または借入条件の見直しが発表される
- 財務の余裕が変わる。増額なら悲観の確率が上がる。
- 車載電池大手との委託契約が拡大する
- 処理量の確保が進み、電池再生の稼働率が上がる。確率は楽観側に動く。
- 他社が出資や公開買付けを仕掛ける
- 少数株主にとって別の価値が出うるが、巨額投資を抱えるため、条件は読みにくい。
見ておくもの
- 金価格と先渡しの価格差、貴金属事業のセグメント利益率
- 電池再生の量産開始時期(2028年4月)と処理量
- 有利子負債と財務制限条項の余裕
- 販売先上位4社の売上構成比
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PERの式とROEがk以下なら1÷kが上限という決まりから置き、今の株価や同業の倍率は使っていない。金価格は10年平準化して置き、足元の急騰を倍率に掛けていない。現金は完成までの支払いに充てるため余った現金とは見ていない。リースの形は変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→14.32 倍・やや楽観 PER 10→13.23 倍・中立 PER 9→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+2.0%を足して9.5%。事業は傾いていないが、金価格と巨額投資を抱え、上乗せはqualityの中で見た。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.75%。