結論
ソフトバンクグループは、かつての通信会社から英半導体設計Armとビジョンファンド(SVF)を中核とする投資持株会社へと姿を変えた。保有する資産の時価(保有株式価値)は2026年6月末に83.1兆円と過去最大を更新し、そこから有利子負債を除いた純資産の時価(NAV)も72.3兆円と最大を記録した。価値の大半はArm株式(保有比率86%超)が占め、そこにOpenAIを中心としたビジョンファンド2の投資、国内の連結子会社ソフトバンク(通信・PayPay等)の保有株式が続く。
本質価値を見るうえでは、通信会社のような営業利益の積み上げではなく、保有資産それぞれの時価がどう動くか、そして株価が純資産の時価に対してどれだけ割り引かれるか(NAVディスカウント)の二段構えで考える必要がある。Armの企業価値はAIデータセンター向け需要への期待で急騰・急落を繰り返し、OpenAIという一つの賭けの成否がビジョンファンド全体の価値を左右する比重も極めて大きい。
ここで積み上げた計算では、10年後の純資産の時価そのものは中立の筋書きでも相応に積み上がる一方、株価が純資産の時価にどこまで近づくか(ディスカウントがどこまで縮むか)が結論を大きく左右した。今の株価は、純資産の時価に対して会社自身が示す目安よりもなお深い割引で評価されており、市場がこの会社のガバナンスと資産の実現可能性に強い警戒を残していることを示している。
資本コストは基本7.5%に品質の調整+2.5%(循環+1.0・借金+1.0・寿命+0.5)を足して10.0%とした。資産評価の読みにくさは悲観側の確率を厚くして表した。借入の利払いの増加(金利の決まり)の累計はNAVから引いた。NAVの形は残し、価値の大半を占めるArmは市場の時価でなく利益で測り直した。Armの純利益を中立で10年後90億ドルと置き、ほかの会社と同じ利益ベースの正当化PER(約15.8倍)の8.5割を掛けると、Armの持分は10年後約18.5兆円で、今の時価(53兆円)を大きく下回る。今のArmの時価は利益の数百倍だからである。利益の無いビジョンファンド・OpenAIは前の版の値のまま。その結果、10年後の本質価値は今の時価総額の約47%下で、総合では割高と出た。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まずこの会社のオーナー利益を会計上の純利益と同一視しないことが出発点になる。保有株式の公正価値の変動がそのまま損益に通るため、見た目の純利益は資産価格の変動そのものであり、株主に安定して残る現金創出力とは別物である。
堀の有無という点では、Armの半導体IPにおける地位は評価できる数少ない資産だが、それ以外(ビジョンファンドの個々の投資先、国内通信事業)は堀の強さがまちまちで、全体をひとつの優良企業として評価することは難しい。むしろ、複数の資産の集合体として、個別にその質を見極める必要がある会社である。
経営の資本配分については、Arm買収という成功例と、WeWorkのような失敗例が併存し、意思決定が孫正義氏という一人の人物に強く依存している点は、再現性・予見可能性という観点で慎重にならざるを得ない要素である。
安全域については、株価が純資産の時価に対して深い割引で評価されている今の状況そのものが、市場がこの会社の資産の実現可能性やガバナンスに大きな不確実性を見ていることの表れであり、割引の深さを安全域と見るか、割引が縮まらない構造的な理由があると見るかが、評価の分かれ目になる。
何で稼ぐ会社か
収益の構造は通信会社の決算とは異なり、保有する株式・ファンド持分の公正価値の変動がそのまま損益に通る持株会社の会計になっている。中核はArmで、2016年の買収以来、スマートフォン向けCPUの設計ライセンスで世界の大半を握り、近年はAIデータセンター向けのサーバー用CPU・ネットワーク機器向けIPへ裾野を広げている。ライセンス料とロイヤルティ(出荷台数×単価)が本来の収益源だが、株式市場での評価はAI関連の期待で大きく先行している。
ビジョンファンド事業は、SVF1・SVF2・ラテンアメリカファンドを通じて世界中のテクノロジー企業に出資し、2026年にはOpenAIへの出資を積み増し、累積出資額は約646億ドル・持分比率約13%に達した。かつてのWeWorkのような大型投資の失敗も経験しており、少数の巨大な賭けに価値が集中する構造は今も変わっていない。
国内の通信事業は、連結子会社のソフトバンク株式会社(証券コード9434)が担い、SBGは同社株式の約6割強を保有する。モバイル通信、PayPayを中心とする決済・金融経済圏が、Arm・ビジョンファンドという変動の大きい資産群に対して、相対的に安定したキャッシュフローを供給する役割を持つ。
このように、半導体IP(Arm)、AI関連ベンチャー投資(ビジョンファンド)、国内通信・金融(ソフトバンク)という三本の柱で構成される投資持株会社であり、各資産の時価の合計から有利子負債を引いたものが、この会社の本質的な価値(純資産の時価)になる。
優良さと弱いところ
堀というよりは「どの資産に賭けるかを選ぶ目」と「資金を調達し続ける力」が、この会社の実力を決める。Armの半導体IP設計における地位は実際の技術的な堀(スマートフォン向けCPUアーキテクチャの事実上の標準)に支えられており、複合企業の中でも数少ない、裏付けのある優良資産である。一方、ビジョンファンドの投資判断は孫正義氏個人の意思決定に強く依存し、WeWorkのような過大評価投資を繰り出した過去があり、再現性のある勝ち方としては評価しにくい。
資本効率の面では、保有資産の時価が急伸した年は見た目のROEが跳ね上がるが、それは経営の実力ではなく資産価格の変動が通っているだけであり、オーナー利益(株主に残る現金を生み出す力)という観点では過大評価しやすい。有利子負債は10兆円規模にのぼり、Arm株式を担保にした資金調達や大型の社債発行を繰り返しており、金利が上昇する局面では財務の脆さが相対的に増す。
経営の資本配分では、自社株買いを繰り返しNAVディスカウントの縮小を狙う姿勢は株主還元として評価できるが、同時にOpenAIへの出資のような巨額の新規投資も続けており、保守的な財務運営とは言い難い。ガバナンスの観点では、孫正義氏への意思決定の集中、少数の巨大な賭けへの依存が、この会社の優良さを評価するうえで最大の弱点になっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社にとっての業界は一つではなく、半導体IP、ベンチャー投資(AI関連中心)、国内通信という複数の市場の組み合わせになる。半導体IP市場では、AIデータセンター向け投資の拡大がArmのロイヤルティ収入の成長源になっており、NVIDIA・Qualcomm・Appleなど主要プレーヤーがArmアーキテクチャを採用し続ける限り、Armの地位は揺るがない。一方でRISC-Vという無償で使えるオープンな命令セットアーキテクチャが徐々に採用を広げており、10年という時間軸ではArmのライセンス収入モデル自体への構造的な挑戦になり得る。
ベンチャー投資の世界では、2026年もOpenAIを中心に生成AI企業への資金流入が続き、企業価値の算定がますます将来の期待に基づくようになっている。OpenAIが実際にAGI級の収益化に成功するかどうかは、SVF2はおろかSBG全体の価値を左右する一点であり、同様の巨大企業がAI基盤モデルで先行・競合する構図の中で、OpenAI一本足での賭けの集中度は高い。
国内通信市場は、総契約数が2.3億を超え飽和に近づく中、5G普及・金融経済圏との連携で緩やかな成長が続く、相対的に安定した市場である。政府によるNTT法見直しの議論・携帯料金の政治的な圧力は、国内通信子会社の収益を通じてSBGにも及ぶ。
全体として、この会社が置かれている業界のサイクルは、半導体・AI投資という極めて振れの大きい局面と、国内通信という極めて緩やかな局面が同時に存在する、珍しい複合構造になっている。
資本政策と M&A
株主還元は配当(長期間にわたりほぼ一定の水準)に加え、自社株買いが中心的な手段になっている。自社株買いは、NAVディスカウント(純資産の時価に対する株価の割引)を縮めるための最も直接的な手段として会社自身が位置づけており、ディスカウントが深まった局面で規模を拡大する傾向がある。
M&Aでは2016年のArm買収が最大かつ最も成功した例で、半導体IPという裏付けのある資産を手に入れた。一方でビジョンファンドを通じた無数のベンチャー投資の中には、WeWorkのように大きく価値を損なった例もあり、当たれば非常に大きいが外すと大きく損なうという投資行動のパターンが続いている。
2026年以降はOpenAIへの出資積み増しが最大の資本配分になっており、Arm株式を担保にした資金調達や大型の社債発行で資金を確保している。今後も、Arm株式の一部売却・先渡し売却による資金化、国内通信子会社株式の取り扱い(追加売却や完全子会社化)などが、資本政策上の分かれ目になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Armは2016年の買収以来、スマートフォン向けCPU設計でほぼ独占的な地位を築き、AIデータセンター向けのサーバー・ネットワーク機器向けIPへ裾野を広げている。NVIDIAをはじめとするAIチップ大手がArmアーキテクチャを採用し続ける限り、ロイヤルティ収入は出荷台数の増加と単価の上昇の両面で伸び続け、Armの企業価値はさらに膨らむ余地がある。
OpenAIへの出資は、生成AIが産業全体のインフラになっていく過程で最大級のリターンを生む可能性がある賭けで、累積出資646億ドル・持分比率約13%という規模は、OpenAIが収益化に成功した場合のSVF2への寄与が極めて大きいことを意味する。国内通信子会社の安定したキャッシュフローとPayPayを中心とする金融経済圏の成長が、この二つの変動の大きい資産を支える基盤になっている。
自社株買いの継続によってNAVディスカウントは縮小方向に向かっており、会社自身もこれを株価を意識した経営の中心に据えている。Arm株式の一部売却・先渡し売却による資金化が進めば、有利子負債を圧縮しながら株主還元を増やす余地も生まれる。過去にWeWorkのような失敗を経験したことで、投資規律そのものも以前より強化されているとみることもできる。すべての賭けが実を結ぶ必要はなく、Arm一つの成功だけでも現在の株価を正当化しうる非対称な構造になっている。
慎重な見方
この会社の価値のほとんどは、Arm一社の株価とOpenAI一社の企業価値という、極めて集中度の高い二つの変動資産に依存している。Armの企業価値はすでにAIブームへの期待を強く織り込んでおり、わずか数ヶ月で時価が数十兆円単位で動く値動きの荒さそのものが、評価の脆さを示している。AI投資への期待が後退すれば、Armの企業価値は評価の反動で大きく縮む。
OpenAIについては、累積出資646億ドルという規模にもかかわらず、実際に安定した収益を生むビジネスモデルへ転換できるかは未知数であり、同業の大手との開発競争・資金競争が続く中で、一社への依存度の高さがそのままリスクの集中になっている。過去のWeWorkへの投資が示すように、この会社の投資判断は当たれば大きいが外すと深い傷を負うパターンを繰り返してきた。
有利子負債は10兆円規模にのぼり、Arm株式を担保にした資金調達や大型の社債発行を積み重ねている。金利が上昇する局面やAI関連資産の価値が反落する局面が重なれば、資産の目減りと負債の実質的な重さが同時に進み、NAVそのものが大きく損なわれる。NAVディスカウントが長年縮まらない背景には、孫正義氏個人への意思決定の集中、情報開示の複雑さ、過去の投資失敗の記憶という構造的な要因があり、これは自社株買いだけでは解消しきれない。
どちらに重みを置いたか
半導体IPという裏付けのある資産(Arm)を持つ点では強気の見方に分があるが、価値の大半がArmとOpenAIという二つの集中したポジションに依存し、意思決定が一人の人物に強く依存する構造は、慎重な見方が指摘する脆さとして無視できない。本質価値の計算では、純資産の時価そのものは中立の筋書きでも相応に積み上がる一方、株価がそこにどれだけ近づくか(ディスカウントの深さ)が結論を大きく左右した。過去の投資失敗の記憶とガバナンスへの警戒から、ディスカウントが構造的に縮みにくいという見方にやや重みを置き、中立をやや悲観寄りに置いた。資本コストは基本7.5%に品質の調整+2.5%(循環・借金・寿命)を足して10.0%とし、悲観・やや悲観の確率を厚くし、利払いの増加の累計をNAVから引いた。さらにArmを市場の時価でなく利益で測り直すと(中立でArmの純利益の13.4倍)、NAVは前の版の3〜4割台に縮み、ディスカウントを前の版のまま残すと結論は割高になった。強気の見方が正しいのは、Armの利益が10年で200億ドル級に育つ楽観の筋書きで、そこでは今の値段の3.8倍になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,681 円38.07 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 111 円6,337 億円)。 今の値に割り戻すと 2,766 円15.77 兆円、今との差 −35.7%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 14% | 18,715 円106.66 兆円 | 150 円8,549 億円 | +338.2% | +15.9% | 2,641 円15.05 兆円 |
| やや楽観 | 23% | 9,997 円56.97 兆円 | 130 円7,409 億円 | +135.2% | +8.9% | 2,329 円13.27 兆円 |
| 中立 | 30% | 4,746 円27.05 兆円 | 115 円6,554 億円 | +12.9% | +1.2% | 1,458 円8.31 兆円 |
| やや悲観 | 20% | 1,548 円8.82 兆円 | 90 円5,129 億円 | −62.0% | −9.2% | 328 円1.87 兆円 |
| 悲観 | 13% | 216 円1.23 兆円 | 60 円3,419 億円 | −93.6% | −24.0% | 36 円2,042 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,681 円38.07 兆円 | 111 円6,337 億円 | +57.8% | +4.7% | 6,792 円38.71 兆円 |
今の株価時価総額 4,305 円24.53 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 14% Armが標準化しOpenAIも大きく育つ 利益 1,254,800 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 18,715 円106.66 兆円
10年間でArmはAIインフラの標準的な設計資産としての地位を確立し、サーバー・ネットワーク機器向けのロイヤルティ収入が本格的に立ち上がる。OpenAIは複数の収益源を確立し、新規株式公開も視野に入るほどの規模へ成長し、SVF2全体の価値を大きく押し上げる。国内通信子会社は金融・決済経済圏との統合を一段と深め、安定したキャッシュフローを供給し続ける。Arm株式の段階的な資金化と自社株買いの継続により、NAVディスカウントは純粋な資産管理会社に近い水準まで縮小し、会社の情報開示・ガバナンスも段階的に改善する。金利が3%台に戻る世界で借り換えのたびに利払いが増え、その累計(10年で約3.3兆円)がNAVを押し下げる。
- Arm株式(保有資産):数量 9.2(保有株数(億株))× 価格 50,697(Arm株式の1株価値(円))→ 売上 467,800 億円・営業利益 467,800 億円。Arm 保有株式の価値 約467,800億円(Arm の純利益 200 億ドル × PER 15.8 倍 + 現金 450 億ドル、1 ドル 150 円・持分 86.39%)
- その他保有資産(ビジョンファンド・国内通信子会社・PayPay等):数量 1.0(1(直接資産価値として扱う))× 価格 900,000(資産価値(億円))→ 売上 900,000 億円・営業利益 900,000 億円。SVF・国内通信子会社・PayPay等の合計資産価値
倍率:株価÷1株当たりNAVという意味でのPBR(NAV倍率)。ディスカウント15%相当。NAV のうち Arm は市場の時価でなく利益で測った(子会社の価値も同じ利益ベースで確かめる)。Arm の純利益(株式報酬を費用に入れた後)200 億ドル、事業の ROE 40%、k 10.0%・長期の成長率 g 5%(半導体の設計資産は 10 年より先も数量が実質で伸びる)・強い堀(スマホの CPU の命令セットをほぼ独占し、切り替えが難しい)で残る割合 2/3 から RONIC 30.0%、正当化 PER = (1 − 5÷30.0)÷(10.0 − 5)= 16.7 倍。楽観でも上限すれすれにはせず上限の 9.5 割の 15.8 倍に置き、配当をほぼ出さず貯まる現金 450 億ドルを足して、1 ドル 150 円・持分 86.39% で 467,800 億円(前の版は市場の時価に近い 1,600,000 億円)。その他(ビジョンファンド・OpenAI・ソフトバンク株など)は赤字や未上場の投資が多く利益で測れないので、前の版の資産価値のまま。 NAV 1,254,800 億円 × 0.85 倍 = 時価総額 1,066,580 億円。)
確率:AIデータセンター投資の持続とOpenAIの収益化成功が同時に必要で、確度は中位。(資本コストへの上乗せ1%をやめ、保有資産の評価の読みにくさは悲観側の確率を2%厚くして表した)
やや楽観 23% 着実な拡大だが競争も続く 利益 813,900 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 9,997 円56.97 兆円
ArmはAI関連の需要を取り込みながら着実に企業価値を伸ばすが、RISC-Vなど代替アーキテクチャとの競争も続く。OpenAIを含むビジョンファンドの投資先の一部は大きな成功を収めるが、一部は期待に届かず、ポートフォリオ全体としては相応の成長にとどまる。国内通信子会社は緩やかな成長を続け、PayPayを含む金融経済圏とともに安定資産としての価値を保つ。自社株買いの継続でNAVディスカウントは縮小するが、意思決定の集中への警戒が残るため完全には解消されない。有利子負債も資産の伸びに応じて緩やかに増える10年になる。金利が3%台に戻る世界で借り換えのたびに利払いが増え、その累計(10年で約3.3兆円)がNAVを押し下げる。
- Arm株式(保有資産):数量 9.2(保有株数(億株))× 価格 32,176(Arm株式の1株価値(円))→ 売上 296,900 億円・営業利益 296,900 億円。Arm 保有株式の価値 約296,900億円(Arm の純利益 135 億ドル × PER 14.6 倍 + 現金 320 億ドル、1 ドル 150 円・持分 86.39%)
- その他保有資産(ビジョンファンド・国内通信子会社・PayPay等):数量 1.0(1(直接資産価値として扱う))× 価格 650,000(資産価値(億円))→ 売上 650,000 億円・営業利益 650,000 億円。SVF・国内通信子会社・PayPay等の合計資産価値
倍率:株価÷1株当たりNAVという意味でのPBR(NAV倍率)。ディスカウント30%相当。NAV のうち Arm は市場の時価でなく利益で測った(子会社の価値も同じ利益ベースで確かめる)。Arm の純利益(株式報酬を費用に入れた後)135 億ドル、事業の ROE 35%、k 10.0%・長期の成長率 g 5%(半導体の設計資産は 10 年より先も数量が実質で伸びる)・強い堀(スマホの CPU の命令セットをほぼ独占し、切り替えが難しい)で残る割合 2/3 から RONIC 26.7%、正当化 PER = (1 − 5÷26.7)÷(10.0 − 5)= 16.2 倍。やや楽観は上限の 9 割の 14.6 倍に置き、配当をほぼ出さず貯まる現金 320 億ドルを足して、1 ドル 150 円・持分 86.39% で 296,900 億円(前の版は市場の時価に近い 1,100,000 億円)。その他(ビジョンファンド・OpenAI・ソフトバンク株など)は赤字や未上場の投資が多く利益で測れないので、前の版の資産価値のまま。 NAV 813,900 億円 × 0.70 倍 = 時価総額 569,730 億円。)
確率:会社計画や市場の中心的な期待に近い想定。(資本コストへの上乗せ1%をやめ、保有資産の評価の読みにくさは悲観側の確率を2%厚くして表した)
中立 30% 中立:構造的な拡大もディスカウントは残存 利益 491,800 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 4,746 円27.05 兆円
Armは半導体IP市場の構造的な拡大に乗って企業価値を伸ばすが、RISC-Vの台頭でロイヤルティ単価の伸びは抑えられる。OpenAIを中心とするビジョンファンドの投資は、成功と失敗が入り混じり、ポートフォリオ全体として平均的な成長にとどまる。国内通信子会社は人口減少の中でも緩やかな増益を続け、安定資産としての役割は変わらない。自社株買いは続くが新規投資の規模も大きく、有利子負債も相応に積み上がる。NAVディスカウントは今と同程度の4割前後で構造的に残り続け、純粋な優良企業としての評価には届かない10年になる。金利が3%台に戻る世界で借り換えのたびに利払いが増え、その累計(10年で約3.3兆円)がNAVを押し下げる。
- Arm株式(保有資産):数量 9.2(保有株数(億株))× 価格 20,028(Arm株式の1株価値(円))→ 売上 184,800 億円・営業利益 184,800 億円。Arm 保有株式の価値 約184,800億円(Arm の純利益 90 億ドル × PER 13.4 倍 + 現金 220 億ドル、1 ドル 150 円・持分 86.39%)
- その他保有資産(ビジョンファンド・国内通信子会社・PayPay等):数量 1.0(1(直接資産価値として扱う))× 価格 450,000(資産価値(億円))→ 売上 450,000 億円・営業利益 450,000 億円。SVF・国内通信子会社・PayPay等の合計資産価値
倍率:株価÷1株当たりNAVという意味でのPBR(NAV倍率)。ディスカウント45%相当。NAV のうち Arm は市場の時価でなく利益で測った(子会社の価値も同じ利益ベースで確かめる)。Arm の純利益(株式報酬を費用に入れた後)90 億ドル、事業の ROE 30%、k 10.0%・長期の成長率 g 5%(半導体の設計資産は 10 年より先も数量が実質で伸びる)・強い堀(スマホの CPU の命令セットをほぼ独占し、切り替えが難しい)で残る割合 2/3 から RONIC 23.3%、正当化 PER = (1 − 5÷23.3)÷(10.0 − 5)= 15.7 倍。中立は上限の 8.5 割の 13.4 倍に置き、配当をほぼ出さず貯まる現金 220 億ドルを足して、1 ドル 150 円・持分 86.39% で 184,800 億円(前の版は市場の時価に近い 750,000 億円)。その他(ビジョンファンド・OpenAI・ソフトバンク株など)は赤字や未上場の投資が多く利益で測れないので、前の版の資産価値のまま。 NAV 491,800 億円 × 0.55 倍 = 時価総額 270,490 億円。)
確率:過去のNAVディスカウントの推移と業界見通しの中心値を踏まえた最も重みを置く筋書き。
やや悲観 20% 代替技術と投資失敗で価値の伸びが鈍る 利益 196,000 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,548 円8.82 兆円
RISC-Vなど代替アーキテクチャへの移行が一部の顧客で進み、Armのロイヤルティ単価の伸びが鈍る。OpenAIを含むビジョンファンドの投資先の多くが期待した収益化に届かず、一部は清算・減損に至る。国内通信子会社は規制・競争環境の悪化で成長が鈍化し、安定資産としての寄与も薄れる。新規投資のための資金調達で有利子負債は増加を続け、資産の時価の伸びがそれに追いつかない。自社株買いの規模も縮小せざるを得ず、NAVディスカウントは5割近くまで悪化し、投資持株会社としての評価そのものが見直される10年になる。金利が3%台に戻る世界で借り換えのたびに利払いが増え、その累計(10年で約3.3兆円)がNAVを押し下げる。
- Arm株式(保有資産):数量 9.2(保有株数(億株))× 価格 8,562(Arm株式の1株価値(円))→ 売上 79,000 億円・営業利益 79,000 億円。Arm 保有株式の価値 約79,000億円(Arm の純利益 50 億ドル × PER 9.8 倍 + 現金 120 億ドル、1 ドル 150 円・持分 86.39%)
- その他保有資産(ビジョンファンド・国内通信子会社・PayPay等):数量 1.0(1(直接資産価値として扱う))× 価格 280,000(資産価値(億円))→ 売上 280,000 億円・営業利益 280,000 億円。SVF・国内通信子会社・PayPay等の合計資産価値
倍率:株価÷1株当たりNAVという意味でのPBR(NAV倍率)。ディスカウント55%相当。NAV のうち Arm は市場の時価でなく利益で測った(子会社の価値も同じ利益ベースで確かめる)。Arm の純利益(株式報酬を費用に入れた後)50 億ドル、事業の ROE 20%、k 10.0%・長期の成長率 g 5%(半導体の設計資産は 10 年より先も数量が実質で伸びる)・強い堀(スマホの CPU の命令セットをほぼ独占し、切り替えが難しい)で残る割合 2/3 から RONIC 16.7%、正当化 PER = (1 − 5÷16.7)÷(10.0 − 5)= 14.0 倍。やや悲観は RISC-V に一部を取られるとみて上限の 7 割の 9.8 倍に置き、配当をほぼ出さず貯まる現金 120 億ドルを足して、1 ドル 150 円・持分 86.39% で 79,000 億円(前の版は市場の時価に近い 480,000 億円)。その他(ビジョンファンド・OpenAI・ソフトバンク株など)は赤字や未上場の投資が多く利益で測れないので、前の版の資産価値のまま。 NAV 196,000 億円 × 0.45 倍 = 時価総額 88,200 億円。
確率:AI投資サイクルの過去の一服局面を踏まえた下振れ想定。(資本コストへの上乗せ1%をやめ、保有資産の評価の読みにくさは悲観側の確率を2%厚くして表した)
悲観 13% 構造的にArmの優位が崩れ投資も失敗する 利益 35,100 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 216 円1.23 兆円
ArmはRISC-Vなど無償のアーキテクチャへの移行が本格化し、ロイヤルティ収入の構造的な縮小に見舞われる。OpenAIを含むビジョンファンドの大型投資の多くが失敗に終わり、WeWorkを上回る規模の損失が明らかになる。資金繰りの悪化から国内通信子会社の株式を大幅に売却・手放す場面も生じ、かつての安定資産までも失う。孫正義氏の後継体制も不透明感を増し、情報開示の不透明さも解消されないまま、ガバナンスへの不信からNAVディスカウントは6割を超える水準に固定化し、投資持株会社としての存立基盤そのものが疑問視される10年になる。金利が3%台に戻る世界で借り換えのたびに利払いが増え、その累計(10年で約3.3兆円)がNAVを押し下げる。
- Arm株式(保有資産):数量 9.2(保有株数(億株))× 価格 3,251(Arm株式の1株価値(円))→ 売上 30,000 億円・営業利益 30,000 億円。Arm 保有株式の価値 約30,000億円(Arm の純利益 22 億ドル × PER 7.8 倍 + 現金 60 億ドル、1 ドル 150 円・持分 86.39%)
- その他保有資産(ビジョンファンド・国内通信子会社・PayPay等):数量 1.0(1(直接資産価値として扱う))× 価格 120,000(資産価値(億円))→ 売上 120,000 億円・営業利益 120,000 億円。SVF・国内通信子会社・PayPay等の合計資産価値
倍率:株価÷1株当たりNAVという意味でのPBR(NAV倍率)。ディスカウント65%相当。NAV のうち Arm は市場の時価でなく利益で測った(子会社の価値も同じ利益ベースで確かめる)。Arm の純利益(株式報酬を費用に入れた後)22 億ドル、事業の ROE 12%、k 10.0%・長期の成長率 g 5%(半導体の設計資産は 10 年より先も数量が実質で伸びる)・強い堀(スマホの CPU の命令セットをほぼ独占し、切り替えが難しい)で残る割合 2/3 から RONIC 11.3%、正当化 PER = (1 − 5÷11.3)÷(10.0 − 5)= 11.2 倍。悲観は優位が崩れるとみて上限の 7 割の 7.8 倍に置き、配当をほぼ出さず貯まる現金 60 億ドルを足して、1 ドル 150 円・持分 86.39% で 30,000 億円(前の版は市場の時価に近い 220,000 億円)。その他(ビジョンファンド・OpenAI・ソフトバンク株など)は赤字や未上場の投資が多く利益で測れないので、前の版の資産価値のまま。 NAV 35,100 億円 × 0.35 倍 = 時価総額 12,285 億円。 この筋書きでは借金が資産を上回るが、Arm 株を担保にしたマージンローンやファンドの借入は本体に返済義務が及ばない(非遡及)ので、資産を上回る分 68,100 億円は株主が負わないとみて純負債から外し、NAV を 4 兆円(株主に残る選択権の価値)に置いた。
確率:AIブームの急速な巻き戻しとビジョンファンドの大型投資失敗が同時に起きる複合シナリオ。頻度は低いが過去にWeWork等で近い事例がある。(資本コストへの上乗せ1%をやめ、保有資産の評価の読みにくさは悲観側の確率を2%厚くして表した)
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Arm株式(保有資産)
英国半導体IP設計会社Armの保有株式。SBGが保有比率86%超を持つ連結子会社。
| 数量保有株数(億株) | 価格Arm株式の1株価値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.2 | 57,547 | 531,003 | 531,003 |
| 10 年後 中立 | 9.2 | 20,028 | 184,800 | 184,800 |
取り方:2026年6月末開示の保有株式価値53.1兆円(保有比率86.39%、約9.2273億株)を1株価値に逆算した。NAVは資産側のスナップショットのため、直近決算期(2026年3月期)そのものの値ではない。 今の値は市場の時価だが、先の筋書きでは Arm の純利益 × 利益ベースの正当化 PER(直し 3)で測り直す。
その他保有資産(ビジョンファンド・国内通信子会社・PayPay等)
SVF1/SVF2/ラテンアメリカファンドの投資持分、連結子会社ソフトバンク(9434)の保有株式(出資比率約63%)、PayPay等を合計した資産価値。
| 数量1(直接資産価値として扱う) | 価格資産価値(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 300,020 | 300,020 | 300,020 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 450,000 | 450,000 | 450,000 |
取り方:2026年6月末の保有株式価値83.1兆円からArm分を除いた残り(SVF・国内通信子会社・PayPay等)を直接の資産価値として置いた。
リスクと懸念
資産価値の集中リスク(Arm・OpenAI一本足)
保有資産の価値の大半がArm一社の株価とOpenAI一社の企業価値に依存しており、どちらか一方の評価が大きく崩れるだけで、NAV全体が大きく損なわれる構造的な集中リスクを抱えている。分散の効いた複合企業とは異なり、二つの巨大な賭けの成否がそのまま会社全体の価値を左右する。
NAVディスカウントが構造的に縮まらないリスク
孫正義氏個人への意思決定の集中、開示の複雑さ、過去の投資失敗の記憶といった要因は自社株買いだけでは解消しきれず、ディスカウントが長期にわたって高止まりする可能性がある。会社が目安として示す水準よりも市場が深い割引を付け続ける状態が続けば、株主還元の効果も限定的になる。
有利子負債の拡大と金利上昇
Arm株式を担保にした資金調達や大型の社債発行を繰り返しており、金利が上昇する局面やAI関連資産の価値が反落する局面が重なると、財務の脆さが相対的に増す。資産の時価が縮む一方で負債の実質的な重みが増すという、両面から効いてくる局面が最も警戒される。
ビジョンファンドの投資失敗の再来
WeWorkのような過大評価投資を過去に経験しており、OpenAIを含む現在の大型投資でも同様に、期待された収益化に届かず評価を引き下げる事態が繰り返される可能性がある。生成AI企業の企業価値は将来の期待に基づく部分が大きく、同じ構造の失敗が再び起こり得る。
Armの技術的な代替(RISC-V)
無償で使えるオープンな命令セットアーキテクチャRISC-Vの採用が広がれば、Armのライセンス・ロイヤルティモデル自体への構造的な挑戦になり、10年という時間軸では侮れない変化になる。スマートフォン以外の新しい用途(AIデータセンター等)で先にRISC-Vが定着すれば、Armの出荷台数の前提そのものが崩れる。
国内通信事業への規制・政治圧力
NTT法見直しの議論や携帯料金への政治的な引き下げ圧力が再燃すれば、相対的に安定していた国内通信子会社の収益にも影響し、安定資産としての役割が弱まる。変動の大きいArm・ビジョンファンドを支える基盤が揺らぐと、全体のリスクバランスが崩れる。
経営の持続性(後継者問題)
孫正義氏個人への意思決定の集中度が高いため、将来の経営体制の移行が円滑に進まない場合、資本配分の規律や投資判断の質に不確実性が生じる。後継者がどのような投資哲学を持つかによって、この会社の本質的な価値の評価軸そのものが変わりうる。
今後の分かれ目
- Arm株式の一部売却・先渡し売却による資金化が進んだら
- 有利子負債が圧縮され、NAVディスカウントの縮小要因として楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただしArmの保有比率低下が将来の価値成長を取りこぼす面も合わせて見る。
- OpenAIが安定した収益化(有料会員・API収入等)を示す決算を続けたら
- SVF2全体の価値の前提を上方修正し、楽観側に重みを移す。
- AIデータセンター投資への期待が急速に後退し、半導体関連株が総じて急落したら
- Armの企業価値前提を下方修正し、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 自社株買いの規模がさらに拡大し、NAVディスカウントの縮小が決算ごとに確認できたら
- 中立の筋書きの割引率前提を上方修正し、価値を見直す。
- ビジョンファンドの主要投資先で大型の減損・清算が相次いだら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移し、ガバナンスへの警戒も合わせて強める。
- 孫正義氏の後継体制が明確に示され、情報開示が改善したら
- ガバナンス不信に起因するディスカウントの一部が解消されるとみて、楽観側に重みを移してよい。
見ておくもの
- 四半期ごとのNAV(保有株式価値と純有利子負債)の開示とディスカウント率の推移
- Arm・OpenAIそれぞれの企業価値(市場での評価・資金調達ラウンド)の変化
- 自社株買いの規模とペース
- 有利子負債の総額とArm株式担保・先渡し売却の動向
倍率と資本コストの決め方
保有資産(Arm、ビジョンファンド・国内通信子会社等のその他資産)の時価を積み上げて純資産の時価(NAV)を計算し、そこに市場が付ける割引(NAVディスカウント)を倍率として乗じて株価を出した。今の株価は、会社が開示する時点のディスカウントよりもなお深い割引になっており、今の株価に寄せて倍率を決めたものではない。中立の筋書きでもディスカウントは4割程度残る前提とし、楽観側でも全部が解消されるとは置いていない。資本コストは基本7.5%に品質の調整+2.5%で10.0%とし、個別のリスクは確率で表した。NAV倍率(ディスカウント)は資本コストの式でなく、持株会社の割引の幅として筋書きごとに置いている(前の版と同じ)。直し3(2026-10-18)で、子会社の価値も同じ利益ベースで確かめ、NAVのうちArmは市場の時価をやめて、Armの純利益×利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 10.0%・g 5%・強い堀で残る割合2/3、上限約15.8倍まで)の7〜9.5割で測った(中立13.4倍)。その他の資産は赤字や未上場の投資が多く利益で測れないので前の版の値のまま。結果は前の版のやや割安から約-47%の割高に大きく動いたが、今の株価を見て動かしたのではなく、Armの市場の時価が利益で説明できる値を大きく上回っていることから出た結果である。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。
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