結論
TOKAIホールディングスは、静岡県の3世帯に2世帯と取引する生活インフラの会社だ。LPガス、ケーブルテレビ、インターネット、宅配水を一つの顧客基盤で売る。筆者の結論は、今の時価総額は本質価値とほぼ釣り合う、やや割高寄りの適正圏というものだ。安く買える水準ではなく、買い増してよい水準でもない。
稼ぎの中心はLPガスだ。顧客数は全国3位で、静岡では首位に立つ。ただ、人口が減る国内で既存の顧客は毎年細る。それを埋めるのは、廃業や事業譲渡が続く中堅のガス販売店の買収だ。筆者がいちばん気にしているのは、この買収を高い価格で続けないかどうかだ。
情報通信は伸びる側だ。法人向けのクラウド運用はAWSの最上位パートナーとして実績を積み、中期経営計画でも利益の伸びを最も大きく見込む。一方、個人向けの通信は値下がりが続き、全体の足を引く。
経営の姿勢は変わりつつある。長年は借金を減らして財務を直すことに注力してきたが、今は配当性向を引き上げ、自社株買いも始めた。ただ、前の計画で売上と顧客数の目標を外した実績は軽く見られない。10年の中立では、利益は物価に少し上乗せした程度で伸びる。10年後の時価総額と還元を足しても、今の値段をわずかに下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、TOKAIは「悪くないが、強くはない」会社に映る。
事業の本質は、地域の家庭に毎月の請求を送る課金型の商売だ。需要は景気に左右されず、キャッシュが読みやすい。ここは評価できる。ただし、LPガスは規制が厳しくなり、人口は減り、脱炭素の流れも向かい風になる。10年後も続くことは確かだが、今より強くなるとは言いにくい。
堀は静岡の顧客密度にある。しかしそれは、規制と乗り換えのしやすさで、少しずつ薄まる性質のものだ。強い堀とは見ず、中程度とした。
資本の使い方では、買収が最大の論点になる。LPガス事業の買収は、顧客1件あたりの価格が上がれば、買うほど割高になる。再編の波に乗って買い急ぐと、のれんの減損で価値を壊しかねない。中期経営計画の買収枠200億円は、利益全体から見れば身の丈に合った規模で、この点は安心できる。
経営が借金返済から還元強化へ舵を切ったのは、資本を持て余していた時期の終わりを意味する。評価できるが、同時に自己資本比率を下げる方向でもある。
安全域は薄い。中立の筋書きで、10年後の価値は今の時価総額とほぼ同じだ。大きな安全域で買う対象とは言えない。ただし、割高とも言えない。待つ価値のある水準は、今より1〜2割低い値段だろう。
何で稼ぐ会社か
TOKAIは1950年の創業で、静岡市に本社を置く。2011年に持株会社体制へ移り、今は五つの事業を持つ。
最大はエネルギー事業で、売上の4割を占める。LPガスの需要家は約82万件で、都市ガスも売る。機器の販売と保安も手がける。顧客は家庭が中心で、配送と保安の網を張った地域ほど利益が出る。静岡で圧倒的な顧客密度を持つため、配送の効率が高い。
情報通信事業は売上の3割弱を占める。法人向けは約1.2万キロメートルの光ファイバー網と、AWS最上位パートナーの認定を持ち、エンジニアは約700人いる。個人向けはインターネットや携帯の取り次ぎが主だ。
CATV事業は、放送92万件と通信43万件の契約を持つ。放送と通信の両方に入る世帯は46%まで増え、1契約あたりの売上を押し上げてきた。東京湾岸の東京ベイネットワークを買収したのが大きい。
建築設備・不動産は給排水や空調の工事が主で、中京圏の買収で伸びた。アクアは宅配水で、利益は小さい。
これらを貫く武器は顧客との接点の多さだ。会員サイトの会員数は約130万件で、1人の顧客に複数のサービスを売れる。ガスの検針、水の配達、回線の工事と、家の中に入る回数が多いのが他社との違いだ。
優良さと弱いところ
優良さの核は、静岡県内の顧客密度だ。3世帯に2世帯が顧客という地盤では、配送車1台あたりの訪問件数が増え、1件ごとのコストが下がる。新しい事業者が同じ密度を作るには長い年月と投資が要るため、参入しにくい。
ただ、筆者はこの堀を強いとは見ていない。LPガスは2024年の省令改正で、機器の無償貸与による囲い込みが禁じられた。三部料金制の徹底で料金の中身も見えやすくなり、乗り換えの壁は下がる。堀は、規制で少しずつ削られる方向にある。
資本効率は改善中だ。ROEは8%台から11%まで上がった。借金を減らして財務を直した後、利益が積み上がる局面に入った。ただ、10年の中央値は11%台で、傑出した水準ではない。
もう一つの弱点は計画の精度だ。前の計画では売上と顧客数の目標に届かず、さらにその前の計画で掲げた顧客432万件は、実際には347万件にとどまった。利益の目標は達成してきたが、成長の見込みは割り引いて見るのが妥当だ。
強みは、規模の割に守りが厚いことだ。生活に欠かせないガスと通信を抱え、景気で需要が大きく振れない。2012年以降、赤字の年は一度もない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
TOKAIの事業は、人口が減る国内の生活インフラだ。ここで鍵になるのはLPガスの再編である。
LPガスの販売事業者は、2015年の約1.95万社から2024年には約1.52万社に減った。後継者がいない中堅店が増え、廃業や事業譲渡が続く。大手の寡占化が進む構図で、顧客数3位のTOKAIは買い手の側に立つ。2024年7月に商慣行是正の省令が施行され、2025年4月には三部料金制が始まった。無償貸与で顧客を囲い込む手法が使えなくなり、小さな事業者ほど経営が厳しくなる。同時に、料金が見えやすくなり、安い事業者への乗り換えは増える。
人口減とオール電化・省エネ機器の普及で、LPガスの使用量は長期で細る。2050年のカーボンニュートラルも逆風になる。
CATVと固定ブロードバンドは、市場全体がゆるやかに伸びる程度だ。世帯数の伸びが鈍るなか、光回線や固定型の5Gが競合になる。ケーブルテレビ同士の再編は続き、買い手の側に回れる会社は限られる。
法人向けのクラウドは国内市場が年10%ほどで伸びる。エンジニア不足が続き、AWSの運用を請け負える人材を抱える会社に仕事が集まる。競合は大手のSIerとクラウド専業のパートナー会社で、価格競争は避けにくい。
資本政策と M&A
資本政策は大きく転換した。2011年の持株会社化以降は、借金を減らし自己資本を積み上げる方針だった。有利子負債は1,240億円から541億円(2016年度)に減り、自己資本比率は7.7%から2016年度に34.5%、今は46%へ改善した。
2026年5月の中期経営計画2028では、配当性向を従来の40〜50%から45%以上に引き上げた。3年間で100億円以上の自社株買いも掲げ、総還元性向は70%程度になる。自己資本比率は40%を目安に、借金を適切に使う方針だ。今の46%から下げる余地を、買収と還元に回す。
買収の枠は3年で約200億円。うち約150億円はエネルギー、約50億円は情報通信とCATVに向ける。実績は、東京ベイネットワーク(約26万件)、ガス事業の譲受、中京の建築設備事業者などだ。2026年4月には長田ガスの子会社化を発表した。
大株主は信託銀行と鈴与商事、静岡銀行などで、特定の支配株主はいない。政策保有株は毎年検証し、縮減する方針だ。TOB(株式公開買い付け)を受ける可能性は、運営の独立性が高く、時価総額も小さくないため、高くは見ていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
LPガス業界の再編は始まったばかりだ。販売事業者は9年で約4,000社減り、後継者のいない中堅店の売り物が次々に出る。TOKAIは顧客数で3位、静岡で首位という地位と、買収した事業を自社の配送網に載せる運用力を持つ。東京ベイネットワークの約26万件を取り込んだ実績が、買収後の統合力を示している。中期経営計画の買収枠200億円は、今の営業キャッシュ創出力(3年で約900億円)から見れば小さく、枠を超えて広げる余地がある。
情報通信の法人向けは、クラウド市場が年10%で伸びる追い風を受ける。AWS最上位パートナーの認定を持ち、エンジニアを700人抱える会社は少ない。生成AIの導入が進めば、運用を請け負う需要はさらに増える。営業利益は49億円から68億円への増加が、計画で見込まれている。
CATVは、放送と通信の両方に加入する世帯が46%に増え、1契約あたりの売上が上がり続けている。静岡では3世帯に2世帯が顧客で、他事業のクロスセルの土台も厚い。
経営は、借金を減らす守りの時代を終え、配当性向45%以上と100億円超の自社株買いに舵を切った。ROE13%、2030年に15%という目標を、事業の伸びと還元の両面から達成する道筋が見えている。
慎重な見方
TOKAIの成長の大半は買収で、既存事業は人口減で縮んでいる。前の計画では、顧客数の目標に10万件届かず、さらにその前の計画で掲げた顧客432万件は、実際には347万件に終わった。買収頼みの成長計画を外し続けてきた実績が、今回の計画への信頼を下げる。
LPガスは規制が逆風に変わった。無償貸与の禁止で囲い込みの手段が消え、三部料金制で料金が見えやすくなる。大手の寡占化が進むなか、全国規模の事業者が価格で攻めれば、静岡の顧客密度も安泰とは言えない。買収の価格は再編が進むほど上がり、買うほど利益率が薄くなる。
CATVは光回線と固定型の5Gに押される。世帯数の伸びも鈍る。個人向けの通信は携帯各社の値下げ競争の影響が大きく、利益が出にくい。法人向けのクラウドは、運用を請け負う仕事が中心で、同業との価格競争に巻き込まれやすい。
ROEは過去10年の中央値が11%台で、資本コストをわずかに上回るだけだ。計画のROE13%を達成しても、倍率が大きく上がる水準ではない。借金を使った自己資本比率の引き下げは、利益が減る局面で財務を弱くする。
どちらに重みを置いたか
買収による成長と、人口減・規制による縮みが、ほぼ拮抗している。強気の言い分は、買収の余地と、法人向けクラウドの伸びという具体的な追い風だ。慎重な言い分は、前の計画の目標未達と、LPガスの規制強化という、すでに起きた事実に立っている。事実の重みで、慎重な見方がやや勝つと見た。
確率は中立を4割強に置き、残りを楽観側(合計3割弱)と悲観側(合計3割)にほぼ均等に振ったが、悲観側をわずかに厚くした。悲観側のほうが、確率の高い要素(規制と人口減)に支えられているためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,848 円2,368 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 656 円840 億円)。 今の値に割り戻すと 1,380 円1,768 億円、今との差 +2.0%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,073 円3,938 億円 | 773 円990 億円 | +184.3% | +11.0% | 308 円394 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,514 円3,221 億円 | 718 円920 億円 | +138.8% | +9.1% | 646 円828 億円 |
| 中立 | 42% | 2,153 円2,759 億円 | 695 円890 億円 | +110.5% | +7.7% | 1,196 円1,532 億円 |
| やや悲観 | 20% | 836 円1,071 億円 | 617 円790 億円 | +7.4% | +0.7% | 290 円372 億円 |
| 悲観 | 10% | 279 円357 億円 | 351 円450 億円 | −53.4% | −7.4% | 63 円81 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,848 円2,368 億円 | 656 円840 億円 | +85.0% | +6.3% | 2,504 円3,208 億円 |
今の株価時価総額 1,353 円1,734 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 買収が実り、クラウドも伸びる 利益 224 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 3,073 円3,938 億円
LPガス業界の再編が加速し、販売事業者の廃業と事業譲渡が続く。TOKAIは顧客数で業界3位の地位を生かし、西日本や東北の中堅事業者を毎年のように買い、需要家は110万件を超える。買収の価格規律も保たれる。情報通信ではAWSの最上位パートナーとしての実績が効き、生成AIやクラウド移行の工事・運用が増え続ける。CATVはクロスセル率が5割を超え、他地域のケーブルテレビ事業者の買収で契約数を積む。経営はROE15%の長期目標をほぼ達成し、自社株買いも続く。10年で営業利益は2倍強に育つ。それでも中心は人口減の国内インフラであり、利益の質は大きく変わらない。LPガスの規制はこの筋書きでも残るが、顧客密度と買収の統合力がそれを上回る。
- エネルギー(LPガス・都市ガス):数量 112(LPガス・都市ガス等の需要家件数(万件))× 価格 17(1 件あたり年間売上(万円・名目。ガスの原料代・機器販売を含む))→ 売上 1,888 億円・営業利益 208 億円。LPガス需要家 112 万件(M&A が続く)
- 情報通信(法人・個人):数量 245(法人・個人の取引件数(万件・推定))× 価格 5.36(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,312 億円・営業利益 138 億円。取引 245 万件、クラウドが伸びる
- CATV:数量 148(放送と通信の契約数(万契約))× 価格 3.79(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 562 億円・営業利益 104 億円。148 万契約、他地域の買収も加わる
- 建築設備・不動産:数量 9.2(工事・販売の年間件数(万件・推定))× 価格 47(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 433 億円・営業利益 45 億円。中京の設備工事が伸びる
- アクア(宅配水・浄水器):数量 22.0(宅配水などの契約数(万件・推定))× 価格 6.34(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 139 億円・営業利益 13 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 224 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.58 倍、時価総額 3,938 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収が毎年うまく積み上がり、クラウドも想定を超える筋書きは、連続した成功が条件になる。過去の中期経営計画で顧客数と売上の目標を外してきた実績から、確率は低く置いた。
やや楽観 20% 買収が着実に積み上がる 利益 190 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 2,514 円3,221 億円
中期経営計画2028の道筋がおおむね実現する。エネルギーは新エリアでの買収が年に数件のペースで進み、需要家は100万件を超える。情報通信の法人向けは、クラウド市場の伸びに沿って営業利益が計画どおり増える。CATVは放送と通信のセット販売で1契約あたりの売上が伸びる。人口減の逆風は残るが、買収と単価の上昇がそれを上回る。還元は配当性向45%以上を守りつつ、買収の機会を見て自社株買いに回す。計画の売上目標を毎回外してきた癖は残り、10年の伸びは年4〜5%にとどまる。買収の価格は上がるが、規律を保てば収益性は大きく崩れない。CATVの置き換えもゆっくりで、営業利益は計画の延長線上に収まる。
- エネルギー(LPガス・都市ガス):数量 102(LPガス・都市ガス等の需要家件数(万件))× 価格 17(1 件あたり年間売上(万円・名目。ガスの原料代・機器販売を含む))→ 売上 1,719 億円・営業利益 186 億円。需要家 102 万件
- 情報通信(法人・個人):数量 210(法人・個人の取引件数(万件・推定))× 価格 5.27(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,108 億円・営業利益 111 億円。取引 210 万件
- CATV:数量 140(放送と通信の契約数(万契約))× 価格 3.71(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 520 億円・営業利益 96 億円。140 万契約
- 建築設備・不動産:数量 8.8(工事・販売の年間件数(万件・推定))× 価格 47(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 414 億円・営業利益 41 億円。件数微増
- アクア(宅配水・浄水器):数量 21.0(宅配水などの契約数(万件・推定))× 価格 6.34(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 133 億円・営業利益 11 億円。ほぼ横ばい
倍率:事業の純利益 190 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.95 倍、時価総額 3,220 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画2028の達成に近い筋書き。利益目標は前の計画で上回った実績があり、買収も着実に進めてきたため、一定の重みを置いた。
中立 42% 買収が人口減を打ち消し、利益は物価並みに伸びる 利益 167 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 2,153 円2,759 億円
人口減による既存顧客の目減りを、LPガスの買収でほぼ打ち消す10年になる。既存の需要家は年1%ほど減るが、買収で約18万件が加わり、需要家は92万件になる。情報通信はクラウドの追い風で件数が伸びる一方、個人向けの通信は値下がりが続き、1件あたりの売上は物価に届かない。CATVは件数が横ばいで、セット販売による単価上昇が収益を支える。建築設備と宅配水は小さく、全体の動きを決めない。全社費用は買収した事業の管理で増える。営業利益は物価に少し上乗せした年4.7%ほどの伸びで、中期経営計画の目標は達成するが、その後の伸びは緩やかになる。
- エネルギー(LPガス・都市ガス):数量 92.0(LPガス・都市ガス等の需要家件数(万件))× 価格 17(1 件あたり年間売上(万円・名目。ガスの原料代・機器販売を含む))→ 売上 1,551 億円・営業利益 155 億円。需要家 92 万件(買収で増え、既存は細る)
- 情報通信(法人・個人):数量 220(法人・個人の取引件数(万件・推定))× 価格 5.15(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,133 億円・営業利益 108 億円。取引 220 万件、1 件あたりは電話の値下がりで物価に届かない
- CATV:数量 135(放送と通信の契約数(万契約))× 価格 3.63(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 490 億円・営業利益 86 億円。135 万契約、件数は横ばい
- 建築設備・不動産:数量 8.4(工事・販売の年間件数(万件・推定))× 価格 47(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 395 億円・営業利益 38 億円。件数微増
- アクア(宅配水・浄水器):数量 20.9(宅配水などの契約数(万件・推定))× 価格 6.34(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 132 億円・営業利益 11 億円。契約 5% 減
倍率:事業の純利益 167 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.52 倍、時価総額 2,759 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収で人口減を打ち消し、利益は物価並みに伸びるという、いちばん起こりやすい筋書き。LPガス再編の追い風と、人口減・規制の逆風を打ち消し合うものとして置いた。
やや悲観 20% 人口減と規制で、成長が止まる 利益 102 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 836 円1,071 億円
人口減と規制が収益を圧迫し、成長が止まる。2024年の省令改正と三部料金制の徹底で、LPガスの機器の無償貸与による囲い込みと、料金の見えにくさが消える。顧客は料金を比べやすくなり、乗り換えが増え、買収で増やした分が流出で相殺される。需要家は80万件に減り、1件あたりの利益も薄くなる。情報通信は同業との値下げ競争で利益率が下がり、CATVは光回線と固定型の5Gに契約を取られる。経営は買収を急いで高い価格を払い、のれんの減損も出る。営業利益は今とほぼ同じ水準にとどまり、物価の分だけ実質で目減りする。
- エネルギー(LPガス・都市ガス):数量 80.0(LPガス・都市ガス等の需要家件数(万件))× 価格 17(1 件あたり年間売上(万円・名目。ガスの原料代・機器販売を含む))→ 売上 1,328 億円・営業利益 120 億円。需要家 80 万件、三部料金で利益率が下がる
- 情報通信(法人・個人):数量 190(法人・個人の取引件数(万件・推定))× 価格 4.74(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 900 億円・営業利益 72 億円。取引 190 万件、値下げ競争
- CATV:数量 120(放送と通信の契約数(万契約))× 価格 3.49(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 418 億円・営業利益 63 億円。120 万契約
- 建築設備・不動産:数量 7.6(工事・販売の年間件数(万件・推定))× 価格 46(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 347 億円・営業利益 28 億円。件数減
- アクア(宅配水・浄水器):数量 18.0(宅配水などの契約数(万件・推定))× 価格 5.91(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 106 億円・営業利益 5 億円。契約 18% 減
倍率:ROE 8.0% は k 7.25% をわずかに上回るだけで、新しく投じるお金の稼ぎは資本コスト並み。g を 2% に落とすと正当化 PER は 13 倍強。人口減と規制で伸びも堀の持ちも低く見て、上限の 8 割ほどの 10.5 倍に置いた。
確率:顧客数の目標を何度も外してきた実績と、LPガスの規制強化の影響を重く見た。買収で高い価格を払う失敗も十分ありうるため、確率は楽観側と同じ程度に置いた。
悲観 10% LPガスの顧客が流出し、本業が縮む 利益 42 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 279 円357 億円
LPガスの囲い込みが崩れ、本業が構造的に縮む。大手の寡占化が進み、全国規模の事業者が安値で顧客を奪う。オール電化やヒートポンプへの切り替えが進み、脱炭素の流れでガス機器の需要も細る。需要家は61万件まで減り、値上げも原料高の転嫁にとどまって利益が出なくなる。クラウドの運用は大手との値下げ戦に巻き込まれ、CATVは光回線と衛星・5Gの置き換えで契約が3割減る。買収の失敗で減損も重なり、配当は減る。ROEは資本コストを大きく割り、市場は成長企業ではなく、縮む地域インフラ会社として値付けする。静岡の顧客密度という堀も、規制と大手の攻勢で守り切れなくなる。この筋書きでは、中期経営計画の目標は大半が未達に終わる。
- エネルギー(LPガス・都市ガス):数量 61.0(LPガス・都市ガス等の需要家件数(万件))× 価格 16(1 件あたり年間売上(万円・名目。ガスの原料代・機器販売を含む))→ 売上 959 億円・営業利益 72 億円。需要家 61 万件、値上げは物価に届かない
- 情報通信(法人・個人):数量 150(法人・個人の取引件数(万件・推定))× 価格 4.33(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 649 億円・営業利益 39 億円。取引 150 万件、クラウドは値下げ戦
- CATV:数量 95.0(放送と通信の契約数(万契約))× 価格 3.21(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 305 億円・営業利益 35 億円。95 万契約
- 建築設備・不動産:数量 6.5(工事・販売の年間件数(万件・推定))× 価格 42(1 件あたり平均売上(万円・名目))→ 売上 274 億円・営業利益 16 億円。受注減
- アクア(宅配水・浄水器):数量 14.0(宅配水などの契約数(万件・推定))× 価格 5.44(1 契約あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 2 億円。契約 36% 減、ほぼ利益なし
倍率:ROE 3.9% が k 7.25% 以下なので、伸びても価値は増えず、PER の上限は 1÷k=13.3 倍。縮む途中で利益はさらに減るため、稼ぐ力(純利益÷k)から上限の 6.4 割の 8.5 倍に置いた。減損で自己資本を 250 億円減らしてある。
確率:LPガスの顧客流出とクラウドの値下げが同時に起きる複合の筋書き。静岡での顧客密度の高さが乗り換えを抑えるので低頻度だが、構造的な負けとして一定の確率は残した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エネルギー(LPガス・都市ガス)
静岡を中心に東北から九州まで、家庭と業務用にLPガスと都市ガスを売る。機器販売と保安・配送もここに入る。
| 数量LPガス・都市ガス等の需要家件数(万件) | 価格1 件あたり年間売上(万円・名目。ガスの原料代・機器販売を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 82.0 | 13 | 1,032 | 106 |
| 10 年後 中立 | 92.0 | 17 | 1,551 | 155 |
取り方:売上 1,032 億円を需要家約 82 万件で割り、1 件あたり約 12.6 万円とした(LPガス需要家は 81.9 万件、中期経営計画の開示。都市ガス・機器販売・卸を含む合計売上なので、1 件あたりは割り算の結果)。営業利益は 106 億円。
情報通信(法人・個人)
法人向けの回線・クラウド(AWS)・データセンターと、個人向けのインターネット・携帯の取り次ぎ。
| 数量法人・個人の取引件数(万件・推定) | 価格1 件あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 163 | 4.12 | 672 | 59 |
| 10 年後 中立 | 220 | 5.15 | 1,133 | 108 |
取り方:顧客総数 347 万件からエネルギー・CATV・アクアの件数を引いた約 163 万件を取引件数とした(開示なし・推定)。売上 672 億円を割って 1 件あたり約 4.1 万円。営業利益 59 億円は法人 49 億円・個人 10 億円。
CATV
放送(テレビ)と通信(インターネット)をセットで売る、地域密着のケーブルテレビ。
| 数量放送と通信の契約数(万契約) | 価格1 契約あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 135 | 2.79 | 376 | 68 |
| 10 年後 中立 | 135 | 3.63 | 490 | 86 |
取り方:放送 92 万件と通信 43 万件の合計 135 万契約で売上 376 億円を割り、1 契約あたり約 2.8 万円。営業利益 68 億円。
建築設備・不動産
給排水・空調などの設備工事、ガス設備工事、不動産の販売と管理。
| 数量工事・販売の年間件数(万件・推定) | 価格1 件あたり平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 35 | 281 | 26 |
| 10 年後 中立 | 8.4 | 47 | 395 | 38 |
取り方:施工・販売の年間件数は開示がなく、約 8 万件と推定した。売上 281 億円を割って 1 件あたり約 35 万円。営業利益 26 億円。
アクア(宅配水・浄水器)
ウォーターサーバーによる宅配水の定期契約。
| 数量宅配水などの契約数(万件・推定) | 価格1 契約あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.0 | 4.73 | 104 | 8 |
| 10 年後 中立 | 20.9 | 6.34 | 132 | 11 |
取り方:宅配水の契約数は開示がなく、月額料金の平均(月 0.4 万円弱)から約 22 万件と推定した。売上 104 億円で 1 契約あたり約 4.7 万円。営業利益 8 億円。
リスクと懸念
LPガスの規制強化
2024年の省令改正で無償貸与による囲い込みが禁止され、2025年からは三部料金制が始まった。料金の中身が見えやすくなり、乗り換えが増える。これまでの利益率を守れない可能性があり、買収した顧客の収益性にも響く。
人口減と脱炭素
静岡を含む地方では世帯数が減り、LPガスの使用量も省エネ機器やオール電化で細る。2050年のカーボンニュートラルも長期の逆風だ。既存顧客の目減りは毎年続き、買収で補えなければ利益が縮む。
買収の価格と統合
LPガスの再編が進むほど、事業の売り手の値段は上がる。高い価格で買えばのれんが膨らみ、減損の火種になる。小さな会社の買収が続くため、統合の管理コストも増える。計画に買収の効果が入っていない点は余地だが、失敗の余地でもある。
計画の目標未達
前の中期経営計画では売上高と顧客数の目標に届かなかった。さらにその前の計画の顧客432万件は、実際には347万件にとどまった。成長を買収に頼る構造は変わらず、今回の計画の売上や顧客数も、そのまま信じにくい。
CATVの置き換え
CATVの放送92万件と通信43万件は、光回線、固定型の5G、動画配信の普及で、じわじわ置き換えられる。世帯数の伸びも鈍り、買収で件数を維持できなければ、収益の屋台骨が縮む。
金利上昇と借金の使い方
自己資本比率を46%から40%に下げ、借金を使って還元と買収を進める方針だ。金利が上がる局面では利払いが増え、利益を圧迫する。借り換えが進む10年で、利払いは数億円から十億円規模で増える見込みだ。
今後の分かれ目
- LPガスの買収が年に数件のペースで続き、需要家が100万件を超えたら
- 楽観側の確率を上げてよい。ただし買収価格の上昇でのれんが膨らんでいないかを、同時に確認する。
- 三部料金制の影響で、LPガスの乗り換えが目に見えて増えたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。静岡での顧客密度が防波堤になるかどうかが試される。
- 情報通信の法人向けで営業利益が計画の68億円に近づいたら
- 中立の利益前提を少し上向きに直す。クラウドの価格競争で利益率が崩れていないかも見る。
- のれんの減損が出たら
- 買収の規律に疑いが出るため、悲観の確率を上げ、還元の持続も見直す。
- CATVの契約数が連続して減少に転じたら
- セット販売で単価を上げる戦略が機能していないと見て、CATVの前提を下方修正する。
- 自己資本比率が40%を割り、借入が急に増えたら
- 買収の拡大か自社株買いの上積みかを確認する。収益の裏づけがない拡大なら、価値は下がる。
見ておくもの
- LPガス需要家数(81.9万件)の推移と、買収による増加の内訳
- 情報通信(法人)の営業利益と、AWS関連の取引件数
- CATVのクロスセル率(放送と通信の同時加入率、46.5%)
- 自社株買いの実施額と自己資本比率(40%目安)
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに件数×1件あたり売上で10年を置いた。物価の分は価格に入れ、LPガスの件数は人口減で既存が細る分を買収が補う形で置いた。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g))で決めた。g は物価並みの3%(人口減で件数が伸びない)、RONIC は k と ROE の間(堀は中程度で、規制で薄れるため)。中立は下限(1÷k=13.3倍)に近い上限の9割とした。今の株価や過去・同業の倍率は使っていない。純現金はなく、純負債が時価総額の25%あるため、余った現金は立てなかった。拠点などの賃借は小さく、リースの形の変更は営業利益と純負債に少し効くが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.9→17.58 倍・やや楽観 PER 13.8→16.95 倍・中立 PER 13.5→16.52 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。