結論
第四北越フィナンシャルグループは、新潟県で貸出の半分を握る第四北越銀行の持株会社だ。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額(約6,596億円)に対し10年で−10.1%、やや割高と見る。資本コストは8.25%で、10年後の利益だけで測っている。
稼ぎの源は貸出の利ざやだ。短期金利が2%へ向かう間に、貸出の金利は早く上がり、預金の金利は遅れてついてくる。県内企業のメインバンクの56%を握る強みが、この差をそのまま利益に変える。一方、新潟県の人口は年1.3%のペースで減り、県内の貸出量は伸びない。量の停滞を、利ざやの拡大と、首都圏など県外の貸出で補う構図だ。
今期(2027年3月期)の純利益予想は530億円で、前期の421億円から大きく増える。ただ政策保有株の売却益が混じるので、続く稼ぐ力はこれより低いと見るのが堅い。単独で10年を測ると、中立の純利益は780億円ほどで、ROEは9%台前半。資本コストを1.5ポイントほど上回る程度だ。
群馬銀行との経営統合は2027年4月に予定されているが、この分析は今の会社だけで書いている。統合が成立すれば、今の株主の持ち分は38.2%に薄まる。その場合の見方は、リスクと分かれ目の欄に書いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、事業は好ましい。新潟県で貸出の半分を握る基盤は、時間がたっても崩れにくい。金利が上がれば、その基盤が利益を押し上げる。大きな設備投資は要らず、稼いだ利益の半分近くを株主に返せる。
気になるのは二つある。一つは人口減だ。守る市場が縮むので、利益の伸びは利ざやの拡大と県外の貸出に頼る。もう一つは資本の薄さだ。自己資本比率は5%台で、有価証券は2.5兆円ある。リーマン級の不況が来れば、薄い自己資本が先に削られる。
予測のしやすさは中程度だ。利ざやは読みやすい。だが与信費用と有価証券の評価損は、景気しだいで大きく振れる。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額に対し−10.1%で、今の値段はやや割高と見る。良い事業を、安全域の無い値段で持つことになる。筆者なら、払ってよい値段を高くは置かない。
群馬銀行との統合は、成立すれば規模を得る一方、今の株主の持ち分は38%に薄まる。その見方は統合が決まってから置き直す。
何で稼ぐ会社か
収益の土台は、第四北越銀行による新潟県内の融資と預金だ。県内企業のメインバンクシェアは56.09%(帝国データバンク、2025年10月末)で、2位の大光銀行は11.20%にとどまる。貸出の県内シェアは5割、預金は4割強。業種を問わず1位という、地方銀行でも指折りの寡占状態にある。
事業は三つに分けると見やすい。法人向け貸出は、県内の中小企業に加え、首都圏など県外の事業性貸出が伸びている。2025年12月末の貸出残高は5.88兆円で、前年同月比6%増だった。個人向けは住宅ローンが中心で、新潟県の人口減少をまともに受ける。資産運用・ソリューションは、投資信託・保険の販売や、事業承継・M&Aの助言などの手数料収入で、法人向けの役務が好調だ。
グループには銀行のほか、証券、リース、カード、信用保証、ファンド運営、コンサルティング、システム、人材紹介、地域商社が並ぶ。連結の従業員は約3,500人、銀行の国内拠点は135。
群馬銀行との株式交換による経営統合は、2027年4月の予定で最終合意済みだが、株主総会の承認はこれからで、まだ成立していない。この分析は今の第四北越FG単独で測っている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他行がまねできない強みの中心は、新潟県内の顧客基盤だ。メインバンクを選ぶ企業の56%が第四北越銀行である。いったん決まった取引は簡単には動かない。預金も4割強を持ち、資金を安く集められる。この強みは、金利が上がる局面でいちばん効く。
弱点は三つある。一つ目は人口だ。新潟県は年1.3%のペースで人口が減り、減少率は過去最大になった。国の推計では2050年に2020年比で3割減る。65歳以上が3割を超え、住宅ローンの量は伸びにくい。二つ目は利益の質だ。2026年3月期の純利益には政策保有株の売却益が乗っている。ならした稼ぐ力は、これより小さい。三つ目は自己資本の薄さだ。単純な自己資本比率は5%台で、景気が悪くなると有価証券の評価損が資本に響く。
資本の使い方は堅実と言ってよい。配当性向は40%程度を目安に累進配当を掲げ、自社株買いは機動的に足す。中期経営計画の目標は、1年前倒しで達成した。政策保有株は、2027年3月末までに簿価で200億円減らし、2030年3月末までに連結純資産の20%未満へ下げる。
筆者は、この堀を10年先も続く強みと見る。ただ守る土地の人口が減るので、堀の価値は利ざやの広さで決まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の銀行業は、長い低金利が終わり、「金利のある世界」に入った。短期金利は2%へ向かう。貸出の金利は早く上がり、預金の金利は遅れて上がる。この差が利ざやの拡大になる。量が伸びない地方銀行にとっては、価格で稼ぎを増やせる数十年ぶりの追い風だ。
もう一つの流れが再編である。「1県1行」へ向かう動きが進み、千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFGと名古屋銀行が経営統合で基本合意した。第四北越FGと群馬銀行は、県境をまたぐ大型の統合を2027年4月に予定している。SBIホールディングスは提携地銀を束ねる構想を進める。
新潟県の中の競争は穏やかだ。2位の大光銀行でも11%で、第四北越銀行との差は大きい。新潟県信用組合や三条信用金庫といった協同組織の金融機関が続く。競争が厳しいのは県外だ。首都圏の事業性貸出では、メガバンクや都市部の地銀と顧客を取り合う。
循環のどこにいるか。金利上昇の初期で、利ざやは広がり始めたばかりだ。一方で与信費用(貸し倒れへの備え)は低く抑えられた「いい時期」にある。景気が悪くなればここが反転する。地銀の10年は、利ざやの拡大と人口減少のどちらが勝つかで決まる。
資本政策と M&A
還元は、配当性向40%程度の累進配当を軸に、自社株買いを機動的に足す方針だ。政策保有株の売却は還元の原資にもなる。自己資本比率が5%台と薄いので、還元は利益の範囲で進み、資本を削ってまで増やすことはしにくい。
群馬銀行とは、第四北越FGが群馬銀行を完全子会社にする株式交換で最終合意した(交換比率は1対1.125、効力発生は2027年4月1日の予定)。株主総会の承認がまだで、成立していない。成立すれば新しい株が約4.26億株出て、今の株主の持ち分は38.2%になる。この分析は統合を織り込まず、単独で測っている。
TOB(株式公開買い付け)の標的になる可能性は、統合が成立すれば低い。単独のままなら、地銀再編の受け皿に回るか、相手に選ばれる側に立つかのどちらもありうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利の上昇は始まったばかりだ。短期金利が2%まで上がれば、法人・個人の貸出の利ざやは構造的に広がる。新潟県内の貸出シェアは5割。貸出先を失う心配が小さく、値上げも通りやすい。2026年3月期の純利益は421億円だったが、2027年3月期の予想は530億円に引き上げられた。しかもこの予想は政策金利1%の据え置きを前提にしており、2%に向かえば上振れる。
量の減少は、県外で補える。首都圏などの事業性貸出は前年比6%の伸びで、法人向けの手数料(事業承継・M&A・人材紹介)も好調だ。政策保有株の売却は還元の原資になり、自社株買いで1株の価値も上がる。
資本の使い方も堅実だ。中期経営計画は1年前倒しで達成し、累進配当を掲げる。地域に深く根を張り、顧客が離れにくい。再編が進む業界で、規模と地盤を両方持つ側に立てることは大きい。
経費の面でも余地がある。店舗網は135拠点を抱えるが、デジタル化で窓口の負担は軽くなる。人口が減る県でも、人手不足の中小企業は資金と人材の相談を銀行に持ち込む。事業承継やM&Aの助言は、人口減がむしろ需要を生む分野だ。県内の取引を押さえたまま、手数料の柱を育てられる。
慎重な見方
今の利益は、売却益と金利の追い風で膨らんだ水準だ。2026年3月期の純利益421億円には、政策保有株の売却益が乗っている。ならした稼ぐ力は、まだこれより低い。
新潟県の人口は年1.3%のペースで減り、減少率は過去最大を更新した。住宅ローンも中小企業の資金需要も、量は伸びない。利ざやが広がっても、預金の競争が激しくなれば、その果実は預金者に流れる。実際、2026年3月期の預金は前期末から減った。
県外・首都圏の貸出は、メガバンクや都市の地銀との競争で、利ざやが取りにくい。成長の穴埋めに頼るには危うい。
自己資本比率は5%台と薄い。リーマン級の不況が来れば、有価証券2.5兆円の評価損と与信費用で利益はほぼ消える。会社の予想は、金利が想定どおり進み、景気も崩れない、うまくいった場合の数字にすぎない。
手数料でも安心はできない。事業承継やM&Aの助言は景気に左右され、案件の数は読みにくい。投資信託や保険の販売は、市況が悪くなれば一気に細る。利ざや、手数料、売却益のどれもが、いまの追い風に乗った数字だと見るのが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
金利と地盤という事業の強さは、強気の見方のほうが説得力がある。一方で、人口減で量が伸びないこと、利益の一部が売却益であること、薄い自己資本が景気の悪化に弱いことは、慎重な見方の指摘が重い。中立に最も重みを置き、悪い側(やや悲観と悲観の合計)を10年で35%と、やや厚めにした。統合の成否は確率に入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,517 円9,253 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,109 円2,919 億円)。 今の値に割り戻すと 2,338 円6,152 億円、今との差 +0.5%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,563 円1.73 兆円 | 1,680 円4,420 億円 | +254.4% | +13.5% | 824 円2,169 億円 |
| やや楽観 | 23% | 5,024 円1.32 兆円 | 1,411 円3,713 億円 | +176.7% | +10.7% | 1,480 円3,894 億円 |
| 中立 | 32% | 3,751 円9,870 億円 | 1,186 円3,120 億円 | +112.3% | +7.8% | 1,580 円4,157 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,019 円5,313 億円 | 845 円2,224 億円 | +23.2% | +2.1% | 630 円1,658 億円 |
| 悲観 | 13% | 465 円1,222 億円 | 395 円1,039 億円 | −63.1% | −9.5% | 112 円294 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,517 円9,253 億円 | 1,109 円2,919 億円 | +98.9% | +7.1% | 4,626 円1.22 兆円 |
今の株価時価総額 2,326 円6,120 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 金利が高めに定着し、新潟で稼ぐ力が一段上がる 利益 1,186 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 6,563 円1.73 兆円
短期金利2%・長期3%が定着し、貸出の利ざやは高い水準で安定する。預金の金利は貸出ほど上がらず、県内シェア5割の基盤がその差をそのまま利益に変える。首都圏のシ・ローンや事業性貸出が県内の細りを補い、事業承継やM&Aの助言、資産運用の手数料が貸出に並ぶ柱になる。与信費用は低く、政策保有株の売却益と縮減で浮いた資金は自社株買いに回る。純利益は1,200億円ほどに育ち、ROEは12%台後半に届く。単独のまま、地方銀行の中でも資本効率の高い側に立つ姿だ。群馬銀行との統合が成立するかどうかは、この筋書きの前提に入れていない。
- 法人貸出:数量 5.5(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 2.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,147 億円・営業利益 821 億円。単体:残高等 5.5 兆円 × 率 2.08%、利益率 72%
- 個人貸出:数量 3.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 602 億円・営業利益 424 億円。単体:残高等 3.3 兆円 × 率 1.80%、利益率 70%
- 資産運用・ソリューション:数量 4.3(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 389 億円・営業利益 290 億円。単体:残高等 4.3 兆円 × 率 0.90%、利益率 75%
倍率:事業の純利益 1,186 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.56 倍、時価総額 17,268 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利が高めに定着し、首都圏の貸出と手数料も伸びる上振れ。新潟の人口減がある中で起きにくいので10%にとどめる。
やや楽観 23% 利ざやが広がり、県外の貸出と手数料が県内の細りを補う 利益 967 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 5,024 円1.32 兆円
金利は高めに定着し、貸出の利ざやは広い水準が続く。新潟県内の貸出量は人口減で細るが、首都圏など県外の事業性貸出が名目で年6%近い伸びを保ち、全体の残高は名目で伸びる。法人向けの役務(事業承継・M&A・人材紹介)と預かり資産の手数料も育つ。経費は抑えられ、与信費用は平時の水準。純利益は970億円ほど、ROEは10%台後半。政策保有株は縮減が済み、売却資金は還元に回る。大きく崩れる要素は少なく、地方銀行の標準より一段よい姿だが、新潟の人口減を考えると、ここまで伸びるには県外の貸出が計画以上に育つ必要がある。
- 法人貸出:数量 5.1(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 893 億円・営業利益 631 億円。単体:残高等 5.1 兆円 × 率 1.76%、利益率 71%
- 個人貸出:数量 3.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 481 億円・営業利益 335 億円。単体:残高等 3.1 兆円 × 率 1.55%、利益率 70%
- 資産運用・ソリューション:数量 4.0(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 357 億円・営業利益 263 億円。単体:残高等 4.0 兆円 × 率 0.90%、利益率 74%
倍率:事業の純利益 967 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.67 倍、時価総額 13,219 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利が想定どおりに進み、県外の貸出と手数料が育つ。地方銀行の標準よりやや良い筋書きとして23%を置く。
中立 32% 金利は定着し、人口減が貸出の量を抑えて利益は緩やかに伸びる 利益 779 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 3,751 円9,870 億円
10年のあいだに短期金利2%・長期金利3%が定着し、貸出の利ざやは高めの水準で安定する。新潟県の人口は年1%強のペースで減り、個人向けの貸出は名目でも年2%の伸びにとどまる。法人向けは県外・首都圏が補って年3%。与信費用は景気を1〜2周してならした水準に戻る。政策保有株の縮減は終わり、売却益は繰り返せない一時の利益として利益から外れる。純利益は780億円ほど、ROEは9%台前半で、資本コストを1ポイントほど上回る。県内の地盤は崩れないが、伸びは物価並みにとどまる。群馬銀行との統合が成立した場合の姿は、この筋書きに含めていない。統合は成立すれば効果も摩擦も別に生まれるので、別の話として扱う。
- 法人貸出:数量 4.7(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 712 億円・営業利益 482 億円。単体:残高等 4.7 兆円 × 率 1.50%、利益率 68%
- 個人貸出:数量 2.9(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 387 億円・営業利益 263 億円。単体:残高等 2.9 兆円 × 率 1.35%、利益率 68%
- 資産運用・ソリューション:数量 3.6(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 320 億円・営業利益 225 億円。単体:残高等 3.6 兆円 × 率 0.90%、利益率 70%
倍率:事業の純利益 779 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.67 倍、時価総額 9,870 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、与信費用も景気をならした水準に戻る。人口減で量は伸びない。最も重みを置く中心の筋書きで32%。
やや悲観 22% 預金競争と人口減が、利ざやの拡大を食う 利益 487 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 2,019 円5,313 億円
金利は定着するが、ネット銀行や証券会社への資金流出で預金の確保に費用がかかり、預金金利が貸出金利に追いつく速さも想定より速い。新潟県の人口減が加速し、県内の貸出量は実質で縮む。首都圏ではメガバンクや都市の地銀に押され、利ざやが取りにくい。与信費用は平均より高めに推移する。純利益は490億円ほど、ROEは資本コストを下回る。地盤は守られ危機にはならないが、優良とは呼べない水準にとどまる。配当は据え置きで、自社株買いに回す余力は小さい。経営が大きく傾くわけではなく、地元企業の取引は続くので、翌年度以降に立て直す土台は残る。
- 法人貸出:数量 4.0(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 485 億円・営業利益 298 億円。単体:残高等 4.0 兆円 × 率 1.22%、利益率 61%
- 個人貸出:数量 2.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 249 億円・営業利益 158 億円。単体:残高等 2.4 兆円 × 率 1.05%、利益率 64%
- 資産運用・ソリューション:数量 2.9(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 249 億円・営業利益 164 億円。単体:残高等 2.9 兆円 × 率 0.85%、利益率 66%
倍率:10年後のROE6.1%(純利益487億円÷自己資本8008億円)はk8.25%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。筋書きは「預金競争と人口減が、利ざやの拡大を食う」。上限の9割に置き、10.91倍。
確率:預金競争と人口減で利ざやの拡大が目減りし、与信費用も重い。構造的に負けるほどではないが、重く見て22%を置く。
悲観 13% 人口減で貸出需要が縮み、利ざやも与信費用に食われる 利益 126 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 465 円1,222 億円
新潟県の人口が想定を超えて減り、県内の貸出需要そのものが縮む。補おうとした首都圏の貸出は、都市の銀行との競争で利ざやが取れない。預金は他の金融機関へ流れ、調達費用が上がる。景気の悪化も重なり、与信費用と有価証券(2.5兆円規模)の評価損が利益を削り続ける。純利益は130億円まで落ち、ROEは2%前後になる。減配や資本の積み増しを迫られ、再編の相手を探す立場に戻る。10年の途中までは利益が出て配当も払われるが、年を追うごとに稼ぐ力が細り、最後には優良な地方銀行とは見られなくなる。還元の合計は終盤の利益だけでは説明できず、途中までの利益と有価証券の売却で払った分を含む。
- 法人貸出:数量 3.3(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 146 億円・営業利益 64 億円。単体:残高等 3.3 兆円 × 率 0.44%、利益率 44%
- 個人貸出:数量 2.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 78 億円・営業利益 35 億円。単体:残高等 2.0 兆円 × 率 0.40%、利益率 44%
- 資産運用・ソリューション:数量 2.5(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.4%(実効手数料率等(%))→ 売上 86 億円・営業利益 37 億円。単体:残高等 2.5 兆円 × 率 0.35%、利益率 43%
倍率:10年後のROE2.1%(純利益126億円÷自己資本5900億円。有価証券の評価損と与信費用で自己資本は流れより低い)はk8.25%以下なので、PERは1÷k=12.1倍までが上限。筋書きは「人口減で貸出需要が縮み、利ざやも与信費用に食われる」。稼ぐ力が細っていく構造から上限の8割に置き、9.70倍。今の自己資本5,694億円に対する倍率は約0.21倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:人口減の加速と景気悪化が重なる構造的な負けの筋書き。薄い自己資本は与信費用に弱く、13%を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
新潟県内の中小企業向け融資を土台に、首都圏など県外の事業性貸出、シンジケートローン、M&A・事業承継の助言までを含む法人向けの貸出。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.5 | 1.1% | 371 | 235 |
| 10 年後 中立 | 4.7 | 1.5% | 712 | 482 |
取り方:グループの貸出残高 5.88 兆円(2025 年 12 月末)のうち、法人・事業性向けを約 6 割の 3.53 兆円とおき、利ざやを 1.05% とした(開示に法人・個人の内訳が無いので、同じ領域の群馬銀行・千葉銀行と同じ 6 割:4 割の推定)。2026-10-18 の物差し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)は地銀共通の 40%。短期金利が 2% へ上がる間に、貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は 40% だけ上がる。中立の利ざやは 3 年で +0.27%、10 年で +0.45% 広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない)。残高はお金の量で、名目で年 3.0%(物価 3% + 実質 0%)。新潟県の人口減少は重いが、県外・首都圏の事業性貸出が伸びている(2025 年 12 月末で前年同月比 6% 増)ので、群馬銀行と同じ伸びとした。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+43%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出と、アパートローンなどの個人事業・資産家向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.4 | 1.0% | 223 | 130 |
| 10 年後 中立 | 2.9 | 1.4% | 387 | 263 |
取り方:貸出残高の残り約 4 割を個人向け 2.35 兆円とおき、住宅ローン中心の利ざやを 0.95% とした。預金ベータ 40% の物差しで、中立の利ざやは 3 年で +0.24%、10 年で +0.40% 広がる(群馬銀行・千葉銀行と同じ幅)。残高は名目で年 2.0%(物価 3% + 実質 −1.0%)。新潟県は推計人口が年 1.32% のペースで減っており(2025 年 10 月)、群馬銀行の年 2.5% より低く置いた。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+42%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
資産運用・ソリューション
投資信託・保険などの預かり資産の手数料と、M&A・事業承継・人材紹介・地域商社など法人向けのソリューション収益。
| 数量預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円) | 価格実効手数料率等(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.4 | 0.9% | 216 | 125 |
| 10 年後 中立 | 3.6 | 0.9% | 320 | 225 |
取り方:預かり資産残高 1.83 兆円(2025 年 12 月末、連結)に、事業承継・M&A・シ・ローンなどの取扱高を足して 2.4 兆円とおき、実効手数料率を 0.9% とした(群馬銀行・千葉銀行と同じ率)。預かり資産はお金の量なので名目で年 4%(物価 3% + 実質の資産形成)。手数料率は率なので物価では上がらず、値上げの開示もないので、10 年を通して中立・楽観とも 0.9% の横ばいに置いた(やや悲観・悲観は競争で下がる)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。(点検 2026-10-19・R23b:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。手数料率は10年とも横ばい。二重がけなし)
リスクと懸念
新潟県の人口減少と貸出の量
新潟県の推計人口は年1.32%のペースで減り(2025年10月)、減少数・率とも過去最大になった。65歳以上が34.4%、15歳未満が10.2%。住宅ローンや中小企業の資金需要の量は伸びにくい。県外・首都圏の貸出で補っているが、そこはメガバンクや都市の地銀との競争になり、利ざやが取りにくい。
与信費用と有価証券の評価損
金利が上がる局面では、取引先の返済負担が増え、与信費用が上がりやすい。単純な自己資本比率は5%台と薄く、有価証券は2.5兆円ある。リーマン級の不況や金利の急上昇で評価損が出れば、自己資本が先に削られ、配当や自社株買いに響く。与信費用は今が低い「いい時期」で、平常に戻るだけでも利益は減る。
今期の利益に売却益が含まれる
2026年3月期の純利益421億円は、政策保有株の売却益などの株式等関係損益が押し上げた。売却は2027年3月末までの200億円の縮減目標や、2030年3月末までの時価比率20%未満の方針に沿って続くが、一度売った株の益は繰り返せない。今期の水準をそのまま続く利益と見ると、先の利益を高く見積もってしまう。
預金の競争と預金の伸び悩み
利ざやは、預金金利が貸出金利にどれだけ遅れて付いてくるかで決まる。預金の競争が激しくなれば、利ざや拡大の果実は預金者に流れる。2026年3月期の預金残高は前期末から86億円減り、8.5兆円で伸びていない。ネット銀行や証券会社への資金の流れが続けば、預金の確保に費用がかかる。
金利の想定が外れる
会社の2027年3月期予想は、政策金利1%の据え置きを前提にしている。金利が想定より早く上がれば追い風だが、景気後退で利上げが止まれば、利ざやの拡大は途中で止まる。この分析は短期金利2%が定着する前提で、その前提が崩れれば10年の利益は下振れする。
群馬銀行との統合(成立すれば)
群馬銀行との株式交換が成立すれば、新しい株が約4.26億株出て、今の株主の持ち分は38.2%になる。第四北越FGが持ち込む利益は2026年3月期で4割強なのに、受け取る持ち分は38%だ。基幹系システムの統合は2030年前後までかかり、費用が先に出る。この分析は統合を織り込んでいないので、成立すれば筋書きを置き直す。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%に向けて想定より速く上げたら
- 貸出の利ざやが早く広がるので、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし預金の競争も強まるので、預金金利の付き方を同時に確かめる。
- 新潟県・群馬県の与信費用が急に増え始めたら
- やや悲観・悲観の確率に重みを移す。自己資本比率が薄いので、利益の落ち込みが配当と自社株買いに早く響く。
- 群馬銀行との統合が株主総会で承認され、2027年4月に成立したら
- 今の株主の持ち分は38.2%になり、統合後グループの利益の4割弱が取り分になる。単独の筋書きは使えなくなるので、統合後の会社として置き直す。成立すれば、成立後の中期経営計画の目標とシステム統合の費用を確かめてからだ。
- 2026年12月の臨時株主総会で統合が否決または延期されたら
- 第四北越FGは単独で金利上昇の恩恵を受ける。この分析のとおりの見方がそのまま続く。再編の受け皿としての位置づけは弱まる。
- 地銀の再編が加速し、競合が広域の大型統合を次々に発表したら
- 規模の差が広がり、統合に乗った会社と乗らなかった会社の二極化が進む。単独での預金・貸出の競争力が保てるかを注視する。
- 政策保有株の売却が計画より早く進み、売却益が自社株買いに回ったら
- 1株の価値は上がるが、売却益は繰り返せない一時の利益として分けて見る。ならした利益の筋書きは変えない。
見ておくもの
- 貸出の利ざや、預金金利の付き方(資金利益の伸び)
- 与信費用、有価証券の評価損益、自己資本比率
- 新潟県内のメインバンクシェア(帝国データバンクの調査)と県外・首都圏の貸出の伸び
- 政策保有株の縮減の進み方と、売却益を除いた純利益
- 2026年12月23日の臨時株主総会と、群馬銀行との統合が成立した場合の効力発生(2027年4月1日予定)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8.25%(基本7.5%+quality +0.75%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9・9.5割(中立は下限の1÷k=12.1倍)に置いた。やや悲観・悲観はROEがk以下なので、PERは1÷k=12.1倍が上限で、その9・8割に置いた。悲観の利益は人口減で貸出が縮み、利ざやが競争で削られ、与信費用が重い構造から、ROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9.25%)と10年の中立のPERは下がる。群馬銀行との統合は未成立なので織り込んでいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.83→14.56 倍・やや楽観 PER 12.57→13.67 倍・中立 PER 12.03→12.67 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75% を足して k 8.25%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスクは k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。