結論
バルカーは、配管や装置のすき間から漏れを防ぐ「シール」の専業メーカーだ。半導体製造装置向けの高機能品が利益の中心で、フッ素樹脂の加工品やタンクも手がける。筆者の結論は、事業は良いが今の値段は先を織り込みすぎ、というものだ。
稼ぎの源は、顧客の装置に組み込まれて消耗する部品にある。装置が動き続ける限り交換需要が出て、一度採用されると外されにくい。2026 年 3 月期は先端産業向けが伸び、シール事業の利益が 3 割以上増えた。
2027 年 3 月期の会社予想では営業利益が 110 億円まで跳ねる。創業 100 周年の節目に合わせた強い計画だが、半導体の投資は山と谷を繰り返す。この水準をそのまま続くものとは置けない。
10 年のうちには、先端産業向けの伸び、フッ素樹脂のタンクの立ち上がり、アジアでの能力増強が数量を押し上げる。物価の分の値上げも通る。それでも、中立の 10 年後の純利益は 110 億円ほどで、今の値段が求める利回りには届かない。
財務は堅く、借金は軽い。慎重な側の筋書きでも会社は残る。一方で、中国の装置メーカーが育てば顧客ごと失う怖さがあり、フッ素系素材への環境規制も長い影を落とす。値段は適正より一段高いと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、バルカーは「小さいが質の良い消耗品の会社」として見られる。顧客の装置に入り込み、使えば減る部品で稼ぐ形は、長く続きやすい。借金も軽く、資本の使い方も大きく外れていない。
問題は値段だ。2027 年 3 月期の利益は山の予想で、これを土台に値段を考えれば、先の景気の谷を忘れることになる。バリュー投資家は、山の利益ではなく、ならした利益で会社を測る。
半導体は、需要が伸びる業界だが、投資の山谷が激しい。バルカーは、その波の中で、10 年かけて利益をゆっくり積み上げる会社だ。安全域とは、谷が来ても会社が傷まないことと、払う値段が余裕を持って利益に見合うことの両方を指す。前者は満たすが、後者は今の値段では満たしにくい。
中国の装置メーカーが育つ展開と、フッ素規制の行方が、事業の寿命を左右する。この 2 つは、確率で読むしかない。筆者は、事業の質は認めるが、より安い値段で出会えるなら持ちたい、という立場だ。
何で稼ぐ会社か
バルカーは、シール製品と機能樹脂製品の 2 つの事業で成り立つ。2026 年 3 月期の売上は約 586 億円で、シールが 75%、機能樹脂が 25% を占める。
シール製品は、配管のつなぎ目や機器の回転部に使うガスケット、パッキン、Oリングなどだ。ふつうの産業用はファイバーやゴムが中心で、先端向けはフッ素樹脂やフッ素ゴムの高機能品になる。半導体製造装置、液晶、電子部品の装置メーカーと、その先の工場が顧客だ。薬液やプラズマに触れる場所で使うので、性能と純度が求められる。
機能樹脂製品は、フッ素樹脂(PTFE など)を削って、成形して、貼り合わせて作る部材だ。半導体工場で薬液をためるライニングタンクが代表で、愛知県の田原工場で 2025 年 8 月に国内一貫生産を再開した。タンクは据え置き型で世界の 3 割を握るという報道がある。ほかに化学プラント向けの配管部材もある。
売り先は 3 つに分けて語られる。先端産業市場が半分近く、プラント市場と機器市場が残りを分ける。海外比率は上がっており、アジアは 27% まで伸びた。ベトナムで工場の設備が約 2 倍に増えている。
シリコンウエハーのリサイクル子会社は 2025 年に売却した。半導体の景気に強く連動する資産を手放し、本業のシールとタンクに絞る形になった。
優良さと弱いところ
堀は、顧客の装置に採用されることから生まれる。高機能シールは、装置メーカーが設計の段階で指定する。ほかの会社の部品に替えるには、試験をやり直す手間がかかる。この切り替えの面倒さが、値下げ圧力を和らげている。
ただし、世界で独占というほどではない。競合には、国内ではNOK、ニチアス、日本ピラー工業があり、海外にも大手がいる。バルカーの先端向けシェアは確かな数字が見つからず、推定にとどまる。筆者は「強い堀」ではなく「普通より少し良い堀」と評価する。
機能樹脂は、利益率が 3% 台と低い。タンクは国内の中興化成工業、ダイキンファインテックと競う。新工場の立ち上げ費用もかさみ、しばらくは稼ぐ力が弱い。
資本効率は、ROE が過去 10 年の中央値で約 10%。資本コストを少し上回る程度で、突出してはいない。自己資本比率は 64% と厚く、借金は軽い。設備投資を増やしたことで、純現金から純有利子負債へ変わった。
経営は、2024 年からの中期計画で能力増強と研究開発に最大 300 億円を投じる。成長に意欲的だが、投資が先行する年は利益が削られる。実行の精度を見る局面が続く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体の製造装置市場は、AI向けの先端ロジックとメモリの投資で、2026 年は山に向かっている。この山の恩恵が、バルカーの先端産業向けの伸びにそのまま出ている。2027 年 3 月期の予想が強いのは、この波に乗るからだ。
半導体の需要は、長い目では右肩上がりだが、年ごとには大きく振れる。投資が止まれば、装置の出荷が減り、新品の部品需要がしぼむ。ただしシールは消耗品なので、稼働中の装置が増えるほど交換需要は積み上がる。この「ならした需要」を、筆者は 10 年の数量の土台に置く。
中国は、半導体装置と部材の国産化を急いでいる。装置メーカーが育てば、部品も現地の会社から買う動きが強まる。バルカーは「技術情報の防衛」を中計で掲げており、中国向けの出し方を慎重にしている。この動きは、10 年の悲観の筋書きの核になる。
フッ素系素材には、PFAS(有機フッ素化合物)の規制という影がある。欧州で規制案が議論されており、フッ素樹脂の使い方が制限されれば、材料の確保も技術開発も難しくなる。会社も研究開発でこの規制を意識している。半導体用途は代わりが利かないので除外される可能性が高いが、確実ではない。
プラントと機器の市場は、国内の設備更新と海外の需要が中心で、景気にほぼ連動する。水素、原子力、防衛装備品の国産化といった新しい用途は、まだ小さいが、数量を少し押し上げる材料になる。
資本政策と M&A
還元は、配当と自社株買いを合わせた性向 50% が目標だ。年 2 回の配当が基本で、2027 年 3 月期は創業 100 周年の記念配当を足して増配の予想になっている。自社株買いは、小さい年が多い。
投資は、2024 年からの 3 年で最大 300 億円。能力増強に 100 億円、研究開発に 90 億円、DX に 55 億円、M&A に 55 億円を見込む。ウエハーのリサイクル子会社を売った一方、タンクの工場と海外の設備に資金を振り向けている。
株主は、信託銀行の名義が最大で 13% 台、メガバンクが 3% 前後と続く。支配株主はいなく、親子上場でもない。買収される側になる可能性は、公開情報からは見えない。ダイキン工業が 1% 台で上位に入るが、事業の提携関係までは確認できていない。
買う側の M&A は、中計で 55 億円の枠と小さい。大型の買収で価値を壊す心配は薄いが、規模を一気に伸ばす手段にもならない。筆者は、資本配分は堅実だと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
先端産業向けの伸びは、一時の波ではなく構造的に続く。AI向けの半導体は、先端ロジック、メモリ、パッケージングのどれも投資が続き、装置の稼働台数は 10 年で大きく増える。装置が増えれば、シールの交換需要も積み上がる。バルカーは顧客との距離を縮める拠点を増やし、顧客内のシェアを広げようとしている。値段も、高機能品の比率が上がれば、物価以上に取れる。
タンクの工場は、2025 年に国内で一貫生産を再開したばかりで、立ち上がりの費用が重いのは今だけだ。世界の 3 割という据え置きタンクの実績に、国内生産の短い納期が加われば、機能樹脂の利益率は計画の 10% 台まで届く可能性がある。
計画では 2027 年 3 月期に営業利益 120 億円を目指していて、すでに 110 億円の予想まで来た。創業 100 周年の節目に、中計が前倒しで達成されそうな勢いだ。ウエハーのリサイクル事業を売って、本業のシールとタンクに集中した判断も良い。財務は堅いので、能力増強の投資も、増配も、両方できる。
10 年の純利益が今の 2 倍を超え、ROE が 13% を超えるなら、値段は割安に見える余地がある。
慎重な見方
2027 年 3 月期の予想は、半導体の山の上にある。営業利益率は 16% 近いが、過去 10 年の平均は 10% 前後だ。山の後には谷が来て、2020 年のように利益が 3 割落ちる年もあった。この谷を忘れて、山を基準に値段を付けるのは危うい。
中国が装置と部材の国産化を進めており、日系の部品メーカーは徐々に中国向けを失う恐れがある。バルカー自身が、技術情報の流出防止を中計に掲げているのは、この危機意識の表れだ。
PFAS 規制は、フッ素樹脂とフッ素ゴムの根幹を揺らす。半導体用途の例外が認められても、その分野以外では使えなくなり、原材料の確保も難しくなる。機能樹脂は、利益率が 3% 台と低く、新工場の費用も重い。
資本効率も、ROE が 10% 前後で、資本コストを大きく上回っているわけではない。計画の 15% は、山の利益を基準にした数字だ。10 年のならした利益で割れば、今の値段は高い。
どちらに重みを置いたか
強い側は、事業の質が良く、半導体の需要が長く伸びるという点だ。慎重な側は、予想が山の利益に寄っていて、10 年の景気の谷と中国の追い上げを考えると、今の値段は先を織り込みすぎという点だ。事業の質は認めるが、値段の問題は消えない。
確率は、中立を最大の 38% に置き、強気の側の楽観・やや楽観を合わせて 32%、慎重な側のやや悲観・悲観を合わせて 30% とした。慎重な側の言い分が、数字の上でわずかに重いと見て、悲観側に少し寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 9,571 円1,688 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,440 円430 億円)。 今の値に割り戻すと 6,343 円1,119 億円、今との差 +0.1%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 16,346 円2,882 億円 | 3,567 円629 億円 | +214.1% | +12.1% | 1,991 円351 億円 |
| やや楽観 | 22% | 13,167 円2,322 億円 | 2,977 円525 億円 | +154.6% | +9.8% | 3,552 円626 億円 |
| 中立 | 38% | 10,553 円1,861 億円 | 2,484 円438 億円 | +105.6% | +7.5% | 4,954 円874 億円 |
| やや悲観 | 20% | 4,315 円761 億円 | 1,713 円302 億円 | −4.9% | −0.5% | 1,206 円213 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,667 円294 億円 | 1,418 円250 億円 | −51.3% | −6.9% | 309 円54 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,571 円1,688 億円 | 2,440 円430 億円 | +89.4% | +6.6% | 12,011 円2,118 億円 |
今の株価時価総額 6,340 円1,118 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 半導体の山が長く続き、タンクも伸びる 利益 161 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 16,346 円2,882 億円
AI向けの先端半導体の投資が 10 年にわたって続き、装置の稼働台数が大きく増える。シールの交換需要が積み上がり、高機能品の比率が上がって平均の単価も物価以上に上がる。
愛知の田原工場が軌道に乗り、フッ素樹脂のタンクは国内の短い納期で受注を取り込み、世界シェアを広げる。機能樹脂の利益率は、計画の 10% 台へ届く。
10 年後の売上は 1,300 億円に近づき、営業利益率は 17% に乗る。純利益は今の 3 倍を超え、ROE も 14% 台に乗る。ベトナムとアジアの工場が効いて、海外比率も高まる。
堅実な還元が続き、配当と自社株買いの合計が 600 億円を超える。中国との摩擦も、日系の技術優位が保たれる形で収まる。
- シール製品:数量 48.2(年間出荷点数(百万点・推定))× 価格 2,103(1 点あたり平均売価(円・推定))→ 売上 1,013 億円・営業利益 193 億円。先端向けの交換需要が積み上がる
- 機能樹脂製品:数量 1,029(フッ素樹脂材料の使用量(トン・推定))× 価格 28(材料 1 トンあたりの加工後売価(百万円・推定))→ 売上 284 億円・営業利益 28 億円。タンクが世界シェアを広げる
倍率:事業の純利益 161 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.87 倍、時価総額 2,882 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向けの先端半導体の投資が 10 年続き、顧客内のシェアが広がり、タンクが世界の 3 割を超えて伸びる。条件が多く重なる筋書きなので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% 先端向けが伸び、タンクも黒字が定着 利益 135 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 13,167 円2,322 億円
半導体の投資は山谷を挟みながら、全体では右肩上がりで進む。装置の稼働台数が増え、シールの交換需要が積み上がる。高機能品の比率が上がり、単価は物価をやや上回る。
タンクは、新工場の立ち上げ費用が一巡して黒字が定着する。利益率は 9% 前後まで上がり、機能樹脂が全社の利益に少しずつ寄与し始める。
10 年後の売上は 1,150 億円ほどで、営業利益率は 16% に乗る。中国との摩擦は、一部の顧客を失う程度で収まる。
増配と自社株買いは、目標の性向 50% の線で続く。計画が示した ROE 15% には届かないが、12% 台後半で資本コストを安定して上回る。
- シール製品:数量 43.8(年間出荷点数(百万点・推定))× 価格 2,043(1 点あたり平均売価(円・推定))→ 売上 895 億円・営業利益 161 億円。山谷を挟んで伸びが続く
- 機能樹脂製品:数量 956(フッ素樹脂材料の使用量(トン・推定))× 価格 27(材料 1 トンあたりの加工後売価(百万円・推定))→ 売上 260 億円・営業利益 23 億円。タンクの黒字が定着
倍率:事業の純利益 135 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍。全体の PER 17.25 倍、時価総額 2,322 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の長期の伸びを取り込むが、投資の山谷が途中に入り、タンクの利益率も計画の途中までにとどまる。強気のやや手前で、確率は 2 割強に置いた。
中立 38% 先端向けが堅実に伸び、谷は挟んで進む 利益 112 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 10,553 円1,861 億円
半導体の投資は、山と谷を繰り返しながら、10 年でならせば 3 割から 4 割ほど数量を押し上げる。高機能シールの交換需要が積み上がり、プラントと機器の市場は景気並みに推移する。
値段は物価並みに上がる。高機能品の比率が上がる分の上乗せは、中国勢との競争で相殺される。
タンクは、国内生産の強みで一定のシェアを保つが、国内の同業との競争で利益率は 8% 前後にとどまる。シールの利益率は、会社の計画(18%)より少し低い 17% でならされる。
10 年後の売上は 1,030 億円ほどで、営業利益は 150 億円強。2027 年 3 月期の予想より多いが、山の利益率より低いところで安定する。還元は目標の性向 50% の線で続き、財務の堅さは保たれる。
- シール製品:数量 39.4(年間出荷点数(百万点・推定))× 価格 2,013(1 点あたり平均売価(円・推定))→ 売上 793 億円・営業利益 135 億円。交換需要が積み上がる
- 機能樹脂製品:数量 882(フッ素樹脂材料の使用量(トン・推定))× 価格 27(材料 1 トンあたりの加工後売価(百万円・推定))→ 売上 236 億円・営業利益 19 億円。利益率は 8% 前後で安定
倍率:事業の純利益 112 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.57 倍、時価総額 1,861 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の長期の需要増と、中国の国産化、フッ素規制の影が、おおむね釣り合う姿。2027 年 3 月期の山の利益より低い、ならした利益を土台にしている。
やや悲観 20% 中国の国産化とフッ素規制が重なる 利益 64 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 4,315 円761 億円
中国の半導体装置メーカーが育ち、部品も現地調達が進む。バルカーのシールは、中国向けでシェアを失い、先端向けの数量の伸びが 1 割程度にとどまる。
値段も、現地の競合との競争で物価に追いつかず、10 年で 3 割弱の上昇にとどまる。フッ素系素材の規制が一部の用途に及び、材料の確保費用が上がる。
タンクは、新工場を作ったものの競争が激しく、利益が出にくい。機能樹脂は薄利で、シールの利益率も 13% 前後に下がる。
10 年後の売上は 800 億円ほどで、営業利益は 90 億円弱。ROE は 8% 弱と、資本コストにわずかに届かない。会社は存続し配当も続くが、成長の物語は色あせる。
- シール製品:数量 32.1(年間出荷点数(百万点・推定))× 価格 1,953(1 点あたり平均売価(円・推定))→ 売上 627 億円・営業利益 82 億円。中国で採用が減り伸び悩む
- 機能樹脂製品:数量 735(フッ素樹脂材料の使用量(トン・推定))× 価格 26(材料 1 トンあたりの加工後売価(百万円・推定))→ 売上 188 億円・営業利益 8 億円。競争が激しく薄利
倍率:ROE 7.7% は k 7.5% に届かず、ためた利益は額面未満の価値。上限の 1÷k(12.5 倍)より低く、利益の落ち込みが続く途中の姿として 11.87 倍に置いた。
確率:中国の装置メーカーが育ち、日系の部品の採用が減る。フッ素系素材の規制も一部に及ぶ。完全な負けではなく、じわじわ削られる姿で、確率は 2 割に置いた。
悲観 10% 顧客を失い、フッ素規制が直撃する 利益 27 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,667 円294 億円
中国の装置メーカーが主要な顧客の地位を奪い、日系の部品の採用が大きく減る。さらに、PFAS 規制が半導体用途にも及び、フッ素樹脂とフッ素ゴムの使い方が制限される。
シールの数量は 10 年で 15% 減り、値段も競争で物価に追いつかず、利益率は 8% まで下がる。
タンクの新工場は稼働率が上がらず、機能樹脂は損益がほぼ均衡する。ベトナムなどの設備投資も、回収が遅れる。
10 年後の売上は 560 億円ほどで、営業利益は 40 億円を切る。優良な部品メーカーとは言えなくなり、事業の再編や縮小が経営課題として浮上する。財務の堅さだけが最後の支えとして残る。
- シール製品:数量 24.8(年間出荷点数(百万点・推定))× 価格 1,727(1 点あたり平均売価(円・推定))→ 売上 429 億円・営業利益 34 億円。顧客を失い規制も直撃
- 機能樹脂製品:数量 588(フッ素樹脂材料の使用量(トン・推定))× 価格 22(材料 1 トンあたりの加工後売価(百万円・推定))→ 売上 129 億円・営業利益 3 億円。稼働率が上がらず均衡
倍率:10 年の構造的な負け。純利益は 27 億円前後(ROE は k を大きく下回る)で、稼ぐ力では床が低い。工場・土地・在庫・売掛金・投資有価証券の売却価値(税後)から純有利子負債を引いた額を床とし、今の自己資本 535 億円に 0.55 倍を掛けた。
確率:中国の国産化が進み日系の部品が外され、PFAS 規制が半導体用途にも及び、新工場の投資が回収できない。もう優良ではなくなる筋書きで、確率は 1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
シール製品
ガスケット・パッキン・Oリングなどのシール。半導体製造装置や液晶向けの高機能品と、プラント・機器向けの汎用品がある。
| 数量年間出荷点数(百万点・推定) | 価格1 点あたり平均売価(円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.2 | 1,502 | 439 | 66 |
| 10 年後 中立 | 39.4 | 2,013 | 793 | 135 |
取り方:2026 年 3 月期のシール製品の売上 438.6 億円を、1 点あたり平均売価を約 1.5 千円と置いて、年間出荷点数を約 2,900 万点と推定した(開示はなく、ガスケット・パッキン・Oリングを平均した推定)。先端向けの高機能品は単価が高く、ミックスで平均が動く。
機能樹脂製品
フッ素樹脂の加工品と、半導体工場向けの薬液タンクなど。国内の田原工場で一貫生産を 2025 年に再開した。
| 数量フッ素樹脂材料の使用量(トン・推定) | 価格材料 1 トンあたりの加工後売価(百万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 735 | 20 | 147 | 5 |
| 10 年後 中立 | 882 | 27 | 236 | 19 |
取り方:2026 年 3 月期の機能樹脂製品の売上 147.0 億円を、材料 1 トンあたり加工後約 2,000 万円(成形品・ライニングタンクの付加価値を含む推定)で割って、材料使用量を約 735 トンと推定した(開示はない)。
リスクと懸念
半導体投資の循環
先端産業向けは売上の半分近い。装置の投資が止まれば、新品向けの部品需要が落ち、2027 年 3 月期の予想のような高い利益率は続かない。過去にも営業利益が 3 割ほど減った年がある。
中国の国産化と技術流出
中国の装置メーカーが育てば、部品も現地の会社から買う動きが強まる。バルカーは中計で技術情報の防衛を掲げているが、現地生産の拠点を持つ以上、技術の流出は完全には防げない。
PFAS 規制
欧州で有機フッ素化合物の規制案が議論されている。半導体用途が例外になる可能性は高いが、確実ではない。それ以外の用途や、原材料の確保が難しくなれば、シールと機能樹脂の両方に響く。
新工場とタンクの立ち上げ
愛知の田原工場の立ち上げ費用は重く、機能樹脂は利益率が 3% 台と低い。競合の中興化成工業が PTFE の能力を 2 倍にする計画で、競争は厳しくなる。投資の回収が遅れる恐れがある。
原材料の確保
フッ素樹脂とフッ素ゴムの原料は供給元が限られ、価格が上がりやすい。中計もサプライチェーンの強靭化を重点に挙げている。地政学の動きで原料が止まれば、製品の供給に影響する。
高い計画に対する実行リスク
中計の最終年度の営業利益 120 億円は、すでに 110 億円の予想まで来ている。これは山の利益を土台にした数字で、期待が高いほど外れた時の落胆も大きい。
為替の影響
海外比率が高まり、アジアが 27% を超えた。ドル円やアジア通貨の動きが売上と利益に響く。本分析は 150 円で固定しているが、実際の決算は為替でぶれる。
今後の分かれ目
- 半導体の投資が 2027 年以降も高水準で続く
- 高機能シールの交換需要が積み上がり、中立より上の筋書きに近づく。山の利益が定着するかどうかが分かれ目になる。
- 半導体の投資がいったん大きく落ち込む
- 先端向けの数量が減り、利益率が 10% 前後まで戻る。10 年の中立の姿は変わらないが、足もとの利益は大きく削られる。
- 中国の装置メーカーが日系の部品を外し始める
- 先端向けのシェアが落ち、やや悲観の筋書きに近づく。顧客ごとの採用動向が先に表れる。
- PFAS 規制の例外に半導体用途が入らない
- フッ素樹脂とフッ素ゴムの使い方が制限され、事業の寿命が大きく縮む。悲観の筋書きが現実味を帯びる。
- 田原工場のタンクが計画より早く黒字になる
- 機能樹脂の利益率が 8% を超えて上がり、楽観側の筋書きに近づく。世界シェアも広がる。
- 大型の買収や提携の話が出る
- 55 億円の枠を超える規模なら、価値を壊す危険と生む可能性の両方が出る。買い手の値段と事業の相性を見て判断する。
見ておくもの
- 半導体製造装置の世界の出荷額と投資計画
- バルカーのシール製品の受注高と受注残
- 田原工場の稼働率と機能樹脂の利益率
- 中国向けの売上比率と現地調達の動き
- 欧州の PFAS 規制の審議状況と半導体用途の扱い
倍率と資本コストの決め方
倍率は、今の PER や PBR を見る前に、セグメントごとの数量と価格、資本コスト 7.5%、ROE から式で求めた。中立の利益は、2027 年 3 月期の山の予想ではなく、営業利益率 15% 近いならした形で置いた。その結果、今の値段が山の利益を織り込んでいることが、式の上で割高として出た。悲観は、過去の PBR の底ではなく、売れる資産の税後から純有利子負債を引いて置いた。賃借の比重は大きくないとみられ、新リース会計の影響は軽いと考えたが、これは確認できていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.1→17.87 倍・やや楽観 PER 13.8→17.25 倍・中立 PER 13→16.57 倍・やや悲観 PER 11→11.87 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足して 8.0%。事業が傾いている様子はないので extra は 0。個別のリスクは k に足さず、筋書きの数量と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。