結論
キユーピーはマヨネーズとドレッシングの国内最大手である。稼ぎの柱は、家庭用、外食・中食向けの業務用、海外の三つだ。筆者の結論は、良い会社だが利益が薄く、今の値段はそれを織り込みすぎている、というものだ。10 年先の本質価値は今の時価総額を 3 割ほど下回り、総合では「割高」と出た。
国内は動かない市場である。マヨネーズとドレッシングの生産量は 20 年ほぼ横ばいで、人口が減る中で数量は伸びない。仕事は、卵などの原料高を値上げで吸収し、付加価値の高い品へ寄せることだ。営業利益率は 7% 前後と、食料品の中でも薄い。
成長は海外が担う。米国で 2 つ目の工場が動き、タイとインドネシアも増産に入った。海外の売上は 1,000 億円を超え、利益率は国内の倍ある。中立で見ても、海外の売上は 10 年で 2.8 倍に育つ。ただ、国内の薄い稼ぎと本社費が全体の利益率を押さえ、全社でも 8% 台にとどまる。
値段の見方も整理しておく。今の PER は 19 倍台に見えるが、2025 年度の純利益には一時の益が混じる。今期の予想で測れば 23 倍だ。中立の 10 年先の純利益は 450 億円ほどで、妥当な倍率の上限は 15 倍台で、中立は 13.5 倍に置いた。配当と自社株買いを足して資本コスト 7% で割り引くと、今の値段を 3 割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業の分かりやすさを評価する。マヨネーズは 10 年後も食卓にある。海外の工場増設も、需要の見える投資だ。
次にオーナー利益、つまり再投資を引いたあとに株主のものになる利益で見る。設備投資は年 250 億円の計画で、営業利益の 7 割に当たる。稼ぐそばから、工場に消えていく構造だ。
資本の使い方は、方向は正しいが見返りが小さい。中計の ROE 目標は 8.5% で、資本コストを少し上回るだけだ。複利で価値が膨らむ会社ではない。
もう一つ、利益の質を見たい。2025 年度の純利益には一時の益があり、実力は今期予想の 255 億円に近い。ここを基準にすると、今の PER は 23 倍だ。
安全域はない。強気にも慎重にも倒れる余地が小さく、価格が低い局面だけが買い場になる会社である。
何で稼ぐ会社か
キユーピーの商品は、マヨネーズ、ドレッシング、タマゴ加工品、パスタソース、離乳食、サラダ・惣菜である。売る相手で三つに分かれる。
市販用は売上の 37%、約 1,900 億円だ。スーパーで買われるマヨネーズやドレッシング、パスタソースなどで、事業利益は 126 億円、利益率は 7% 弱である。
業務用は約 1,860 億円で、売上の 36% を占める。外食、中食、食品メーカーに、マヨネーズ、液卵や加熱卵などのタマゴ加工品、カット野菜、惣菜を卸す。卵を割る所から手がける一貫生産が強みで、利益率は 6% 台だ。
海外は売上 1,000 億円強で、事業利益は 136 億円。利益率は 13.6% と、三つの中でいちばん高い。中国、タイ、インドネシア、米国が主力だ。中国は家庭用マヨネーズのシェアが北京で 9 割、上海で 5 割強と高い(会社調べ、2019 年)。米国には現地法人の Q&B FOODS があり、和風マヨネーズを外食店と家庭に広げている。
残りは、果実加工のフルーツソリューション、ヒアルロン酸などのファインケミカル、共通部門で、合わせて売上約 380 億円。利益は薄い。
利益で見れば、海外が全体の 3 割強を稼ぐ。国内は規模が大きい割に利益率が低い。経営は、国内の収益改善と海外の増産投資を同時に進めている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは二つある。一つは、マヨネーズという品目の支配力だ。国内首位で、味の素やケンコーマヨネーズが追うが、長年の慣れが指名買いを生み、値上げが通りやすい。もう一つは卵の扱いだ。殻を割って液にし、殺菌して使う加工の力と、養鶏場との長い付き合いがある。2025 年度は鶏卵高で利益を押し下げられたが、価格改定を素早く入れ、営業利益は過去最高を更新した。
弱い所もはっきりしている。まず利益率だ。営業利益率は 7% 前後で、過去の最高でも 7.1% にとどまる。ROE も、この十数年の平均は 7% 台だ。原因は、卵や野菜のような相場に振れる原料と、人手のかかる業務用・サラダ事業の比率が高いことにある。
堀はマヨネーズの外に出ると薄くなる。カット野菜や惣菜は、競合と値段で争う商売だ。堀の中心は、利益の薄い業務用ではなく、家庭用のブランドと海外にある。
財務は固い。自己資本比率は 67% で、借金より現金が多い。一方で、中計の ROE 目標は 8.5% 以上と控えめだ。守りは堅いが、資本をもっと稼げる所に回せるかが問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の市場は、静かに横ばいだ。マヨネーズとドレッシングの生産量は、2005 年以降ほぼ 40 万トン前後で動かない。2024 年は 40.4 万トンで、ピークの 2017 年から 3% 以内に収まる。人口は減るが、単身世帯の増加と調理の簡便化が、量を支えてきた。筆者は 10 年の数量を、中立で市販用 0.92 倍、業務用 0.97 倍と見る。
競争の形は、市販用と業務用で違う。市販用はキユーピーが首位で、味の素やスーパーの PB(自社ブランド)が追う。業務用は、タマゴ加工、カット野菜、惣菜ごとに競合が分かれ、ケンコーマヨネーズなどが値段で争う。
2025 年度の逆風は原料高だった。上期だけで、鶏卵が 21 億円、野菜などが 33 億円、物流が 8 億円、利益を削った。会社は価格改定を素早く入れ、2026 年度の上期は国内事業利益率を 7.7% まで戻した。下期は、中東情勢による容器・包材の値上がりと、値上げ効果の一巡が重しになる。
海外は、市場ごとに顔が違う。米国はマヨネーズが生活に根づいた市場で、大手ブランドが強い。キユーピーは和風マヨネーズという別の需要を狙い、2026 年度の米州売上は前年比 19% 増を見込む。中国とアジアは、家庭用の高いシェアを持つ一方、現地ブランドの追い上げを受ける。
業界の数量は国内が横ばい、海外が伸びる、という二つの速度で動く。会社の将来は、この二つの速度の配分で決まる。
資本政策と M&A
還元は手厚い。中計は、総還元性向 50% 以上を基準にし、配当は下限を決めて段階的に上げる。自社株買いは年 100 億円を目安にする。前半 2 年の総還元性向は 67% の見込みだ。
稼いだ利益の 6〜7 割を返しながら、設備投資にも 4 年で 1,000 億円を使う。営業キャッシュフローは 4 年で約 1,700 億円の見込みで、投資と還元でほぼ使い切る計算になる。有利子負債も使い、資本コストを下げる方針だ。
政策保有株(持ち合い株)の売却は、収益改善策に含めた。ただ、保有額と含み益は確かめられなかった。
M&A は、大型買収より自前の工場増設が中心だ。創業家に近いとみられる法人が上位株主に並び(中島董商店 8.1%、董花 8.0%)、買収で一気に動く構図は考えにくい。ただ、kabufu の推計では 10 年以内の TOB・買収の確率が 13.9% あり、ゼロとは言えない。
株主優待は、100株以上で1,000〜1.5千円相当、500株以上で3,000〜5千円相当の自社グループ商品。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約3万人(自社商品の原価と送料)から年4億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
点検済み:中立の営業利益率8.4%は会社予想(27年11月期7.4%)を1pp超えるが、事業別は国内7.3%・業務用6.6%・海外14%と今に近く、超えは利益率の高い海外の売上が2.8倍になる構成の変化。数字は据え置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
海外の成長が、市場の想像より速く、しかも利益を伴って進む。米国の 2 つ目の工場が稼働し、米州の売上は 2026 年度に 19% 伸びる見込みだ。タイとインドネシアも増産に入った。海外は利益率が国内の倍あるので、売上の構成が海外に移るだけで全社の利益率は上がる。
国内も立て直しが進む。中計は国内事業利益率 8% を掲げ、価格改定、付加価値品への寄せ、工場の自動化で、薄い利益を厚くする。2026 年度の上期は、すでに 7.7% まで戻した。卵の相場が落ち着けば、さらに上がる。
株主還元も追い風だ。総還元性向 50% 以上に、年 100 億円の自社株買いが加わる。政策保有株を売れば、その資金は還元と成長投資に回る。
この見方が当たれば、3 年後に営業利益は会社計画の 450 億円を上回る。10 年後には海外の売上が 3,600 億円に育ち、全社の営業利益は 950 億円に届く。ROE は 12% を超え、倍率も 21 倍前後に上がる。
慎重な見方
国内の利益は、構造的に薄い。人口が減るなか、数量は伸びない。値上げが続けば、消費者は PB や安い業態へ移る。業務用は、外食の人手不足と原料高に挟まれ、利益が出にくい。
卵という原料が最大の弱点だ。鳥インフルエンザで相場が跳ねると、値上げが追いつかない期間が必ず生まれる。2025 年度の上期だけで、鶏卵が 21 億円、利益を削った。
海外は成長の中身を疑うべきだ。米国は大手が強く、新しい工場の稼働は初期の費用が重い。会社の目標(海外売上 1,800 億円)は 3 年で 1.8 倍という高さで、達成できなければ、成長ストーリーそのものが崩れる。
さらに、今の利益は割り引いて見る必要がある。2025 年度の純利益は一時の益で膨らんでおり、今期の予想は 255 億円まで下がる。ここに 20 倍を超える倍率が付くのは、先の成長を先取りしすぎている。
設備投資は営業利益の 7 割に及ぶ。稼ぎが工場に消え、株主の手に残る利益は小さいままだ。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方である。国内の利益率が薄く、海外の成長が順調でも、全社の営業利益率は 8% 台にとどまる。ROE は 10% 前後で、資本コストを少し上回るだけだ。一方で、マヨネーズの堀と海外の成長は否定しにくい。そこで、確率は中立を最も厚くし、やや悲観と悲観に寄せた。海外の失速や卵相場の急騰を、10 年では悲観に厚めに見ている。 総合では割高(−3 割強)になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 4,851 円6,562 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,460 円1,974 億円)。 今の値に割り戻すと 3,507 円4,744 億円、今との差 −22.8%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,583 円1.16 兆円 | 1,997 円2,701 億円 | +132.9% | +8.8% | 846 円1,145 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,980 円9,442 億円 | 1,788 円2,419 億円 | +93.0% | +6.8% | 1,754 円2,372 億円 |
| 中立 | 38% | 5,613 円7,592 億円 | 1,606 円2,173 億円 | +58.9% | +4.7% | 2,743 円3,711 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,423 円3,277 億円 | 1,190 円1,610 億円 | −20.5% | −2.3% | 831 円1,124 億円 |
| 悲観 | 11% | 714 円966 億円 | 528 円714 億円 | −72.7% | −12.2% | 137 円185 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,851 円6,562 億円 | 1,460 円1,974 億円 | +38.9% | +3.3% | 6,311 円8,537 億円 |
今の株価時価総額 4,543 円6,145 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外が 2.6 倍に育ち、全社の利益の半分以上を稼ぐ 利益 632 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 8,583 円1.16 兆円
10 年後、海外の売上は 3,600 億円に育つ。米国・タイ・インドネシアの工場が稼働率を上げ、利益率は 16% に乗る。海外の事業利益は 580 億円で、全体の 6 割近くを占める。国内は数量が細るものの、付加価値品に寄せて利益率を 8% 前後まで上げる。卵の相場に左右されにくい構造になる。全社の売上は 9,400 億円、営業利益は 950 億円、純利益は 632 億円で、ROE は 12% を超える。マヨネーズのブランドは海外でも根づき、市場は海外比率の高い食品会社として 19.5 倍の倍率を付ける。還元も厚く、10 年で 2,700 億円に近い。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 市販用:数量 23.7(販売数量(万トン、家庭用の食品全体の推定合計))× 価格 1,104(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,620 億円・営業利益 215 億円。営業利益率 8.2%
- 業務用:数量 38.2(販売数量(万トン、業務用の食品全体の推定合計))× 価格 690(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,638 億円・営業利益 198 億円。営業利益率 7.5%
- 海外:数量 43.5(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 828(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 3,599 億円・営業利益 576 億円。営業利益率 16%
- その他(果実加工・ファインケミカル・共通):数量 4.3(販売数量(万トン、単価の差が大きい品の換算合計))× 価格 1,340(1kg あたりの平均単価(円、換算。名目))→ 売上 582 億円・営業利益 49 億円。営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 632 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍。全体の PER 18.37 倍、時価総額 11,610 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が 2.6 倍に育ち、国内も利益率を 8% 台に上げて ROE が 12% を超える筋書き。可能だが、前提が多いので 8%。
やや楽観 20% 海外が 2.35 倍に伸び、国内の改善も進む 利益 538 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 6,980 円9,442 億円
海外は米国と東南アジアが中心になり、売上は 3,200 億円に達する。国内は価格改定の定着で、市販用の事業利益率が 7.6% に上がる。業務用の付加価値品も数量を保つ。全社の売上は 8,800 億円、営業利益は 805 億円、純利益は 538 億円となる。ROE は 11% で、資本コストを 5 ポイント近く上回る。市場は、海外が育った堅実な食品会社として 17.5 倍の倍率を与える。国内の数量は 0.96 倍まで細るが、タマゴ加工などの付加価値品が下支えする。人手不足で外食が簡便化を進め、業務用の需要が底堅い。卵の相場が荒れても、価格改定の仕組みが整い、利益の振れは小さくなる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 市販用:数量 22.8(販売数量(万トン、家庭用の食品全体の推定合計))× 価格 1,088(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,478 億円・営業利益 188 億円。営業利益率 7.6%
- 業務用:数量 37.1(販売数量(万トン、業務用の食品全体の推定合計))× 価格 680(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,524 億円・営業利益 177 億円。営業利益率 7.0%
- 海外:数量 39.3(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 816(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 3,206 億円・営業利益 481 億円。営業利益率 15%
- その他(果実加工・ファインケミカル・共通):数量 4.2(販売数量(万トン、単価の差が大きい品の換算合計))× 価格 1,340(1kg あたりの平均単価(円、換算。名目))→ 売上 556 億円・営業利益 44 億円。営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 538 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.55 倍、時価総額 9,442 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が 2.35 倍で伸び、国内の改善も一部進む筋書き。会社の方針が実を結ぶ形で、2 割。
中立 38% 国内は細り、海外が 2.8 倍の売上に育つ成熟した姿 利益 456 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 5,613 円7,592 億円
10 年後、国内の数量は人口減で市販用が 0.92 倍、業務用が 0.97 倍に細る。値上げは物価並みに通り、売上は両方とも 2,400 億円前後を保つ。事業利益率は 7% 前後で、10 年たっても大きく上がらない。海外は新工場が稼働し、数量が 2.1 倍、売上は 2,800 億円に育つ。利益率は 14% で、事業利益は 400 億円に近い。全社の売上は 8,100 億円、営業利益は 677 億円、純利益は 456 億円。ROE は 10% 近くに落ち着き、資本コストを 4 ポイント近く上回る程度の、普通の優良企業になる。還元は総還元性向 6 割ほどで続き、10 年で 2,100 億円を超える。卵などの相場の波は、価格改定の仕組みでならされる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×1.0=40億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 市販用:数量 21.8(販売数量(万トン、家庭用の食品全体の推定合計))× 価格 1,072(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,340 億円・営業利益 171 億円。営業利益率 7.3%
- 業務用:数量 36.0(販売数量(万トン、業務用の食品全体の推定合計))× 価格 670(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,413 億円・営業利益 159 億円。営業利益率 6.6%
- 海外:数量 35.1(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 804(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,823 億円・営業利益 395 億円。営業利益率 14%
- その他(果実加工・ファインケミカル・共通):数量 4.0(販売数量(万トン、単価の差が大きい品の換算合計))× 価格 1,340(1kg あたりの平均単価(円、換算。名目))→ 売上 531 億円・営業利益 37 億円。営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 456 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.65 倍、時価総額 7,592 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は数量が細り、海外が 2.1 倍に育つ中心値。ROE は 10% 近くに落ち着く。最も厚い。
やや悲観 23% 国内のPB移動と原料高が続き、海外も伸びきらない 利益 290 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 2,423 円3,277 億円
国内は値上げが続くうちに、PB や安い業態へ客が移り、市販用の数量は 0.86 倍に細る。卵と包材の高止まりで、利益率は 6% 前後に張りつく。業務用も人手不足と原料高で利益が薄い。海外は現地ブランドの追い上げと米国の競争で、数量は 1.6 倍止まり、売上は 2,050 億円になる。全社の売上は 6,700 億円、営業利益は 418 億円、純利益は 290 億円だ。ROE は 6% 台で資本コストに並ぶ。市場は成長のない食品会社として 14 倍の倍率しか付けない。国内の PB 移動が進めば、ブランド品の値上げは通りにくくなる。海外の失速が重なると、国内の薄い利益を補う成長役がいなくなる。工場の設備投資は積み上がり、減価償却が利益を圧迫し続ける。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×0.8=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 市販用:数量 20.4(販売数量(万トン、家庭用の食品全体の推定合計))× 価格 1,024(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,090 億円・営業利益 125 億円。営業利益率 6.0%
- 業務用:数量 33.4(販売数量(万トン、業務用の食品全体の推定合計))× 価格 640(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,138 億円・営業利益 115 億円。営業利益率 5.4%
- 海外:数量 26.8(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 768(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 2,054 億円・営業利益 236 億円。営業利益率 11.5%
- その他(果実加工・ファインケミカル・共通):数量 3.6(販売数量(万トン、単価の差が大きい品の換算合計))× 価格 1,280(1kg あたりの平均単価(円、換算。名目))→ 売上 458 億円・営業利益 27 億円。営業利益率 6%
倍率:ROE6.6%がk7%以下なので、PERの上限は1÷k=13.3倍(ためた利益は額面未満の価値)。その約8割(11.3倍)を採用。稼ぐ力(純利益÷k)の85%。海外の立ち上げが遅れる筋書き。
確率:国内の PB 移動と、卵・包材の高止まりが続き、海外も 1.6 倍止まりになる筋書き。構造的な利益の薄さが残る型で、23% と厚めにした。
悲観 11% 構造的に負け、もう優良ではない 利益 92 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 714 円966 億円
国内ブランドの棚が PB に削られ、市販用の数量は 3 割近く減る。業務用は外食の縮小と原料高で、利益がほぼ消える。海外は大手との競争に負け、新工場の投資を回収できず、売上は 1,300 億円止まりで利益率も 6% に落ちる。固定費の重い工場網が残り、全社の売上は 4,900 億円、営業利益は 108 億円、純利益は 92 億円まで下がる。ROE は 2% だが、純現金と工場の資産があり、PBR は 0.55 倍を床に評価される。会社は工場の統廃合や撤退を迫られ、特別損失が出る。配当は削られ、自社株買いも止まる。それでも財務は固く、倒れるまでは行かない。ただ、成長を期待される会社ではなくなる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年4億円×10年×0.5=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 市販用:数量 17.1(販売数量(万トン、家庭用の食品全体の推定合計))× 価格 960(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,641 億円・営業利益 57 億円。営業利益率 3.5%
- 業務用:数量 26.0(販売数量(万トン、業務用の食品全体の推定合計))× 価格 600(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,559 億円・営業利益 39 億円。営業利益率 2.5%
- 海外:数量 18.4(販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計))× 価格 720(1kg あたりの平均単価(円、推定。名目))→ 売上 1,324 億円・営業利益 79 億円。営業利益率 6%
- その他(果実加工・ファインケミカル・共通):数量 3.0(販売数量(万トン、単価の差が大きい品の換算合計))× 価格 1,200(1kg あたりの平均単価(円、換算。名目))→ 売上 362 億円・営業利益 13 億円。営業利益率 3.5%
倍率:ROE2.3%がk7%以下なので、PERの上限は1÷k=13.3倍(ためた利益は額面未満の価値)。その約8割(10.5倍)を採用(先細る利益なのでやや悲観の11.3倍を超えない)。純利益92億円は稼ぐ力が約1,227億円(92÷k7%)にとどまる姿。純現金486億円より稼ぐ力の方が大きいので稼ぐ力から置き、その約8割。海外の失敗と卵相場の高止まりが重なる最悪の筋書き。
確率:国内ブランドの棚が縮み、海外の投資も回収できず、もう優良とは言えなくなる。10 年の悲観は構造的な負けなので、3 年より厚い 11%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
市販用
スーパーなどで売る家庭用のマヨネーズ・ドレッシング・パスタソース・ディップ・離乳食。国内首位の品が多い。
| 数量販売数量(万トン、家庭用の食品全体の推定合計) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 23.7 | 800 | 1,898 | 126 |
| 10 年後 中立 | 21.8 | 1,072 | 2,340 | 171 |
取り方:市販用の売上 1,898 億円を、1kg あたり八百円前後の品が年 24 万トン弱売れていると置いて分けた(推定。マヨネーズは単価が高く、サラダ・惣菜は安い)。国内のマヨネーズ・ドレッシングの生産量は 40 万トン前後で 20 年動かず、数量は人口減で中立 10 年 0.92 倍、価格は物価並み(3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍)。市場の大きさ:国内のマヨネーズ・ドレッシング生産 40 万トンのうち、キユーピーは家庭用・業務用を合わせて半分前後を握ると見る(推定)。競合は味の素、ケンコーマヨネーズ、小売のPB。
業務用
外食・中食・食品メーカー向けのマヨネーズ・タマゴ加工品(液卵・加熱卵)・カット野菜・惣菜。
| 数量販売数量(万トン、業務用の食品全体の推定合計) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 37.1 | 500 | 1,856 | 119 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 670 | 2,413 | 159 |
取り方:業務用の売上 1,856 億円を、1kg あたり五百円前後の品が年 37 万トン売れていると置いて分けた(推定。液卵とカット野菜が安く、マヨネーズ・ソースが高い)。数量は外食の人手不足と簡便化で国内の中でも強く、中立 10 年 0.97 倍。価格は物価並み。タマゴ加工は殻割りからの一貫生産が強みで、競合はケンコーマヨネーズや地場の卵加工会社と分散する。
海外
中国・東南アジア・米国で売るマヨネーズ・ドレッシング・タマゴ加工品。利益率は国内より高い。
| 数量販売数量(万トン、海外の食品全体の推定合計) | 価格1kg あたりの平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 16.7 | 600 | 1,003 | 136 |
| 10 年後 中立 | 35.1 | 804 | 2,823 | 395 |
取り方:海外の売上 1,003 億円を、1kg あたり六百円前後の品が年 17 万トン弱売れていると置いて分けた(推定。現地の物価が低く国内より安い)。数量は米国・タイ・インドネシアの新工場で、中立 10 年 2.1 倍(年 7.7% 増)。会社目標は現地通貨で年 2 桁増。価格は物価並みとして 10 年 1.34 倍。市場の大きさ:米国は大手が強い市場で、和風マヨネーズという別の需要を狙う。中国は家庭用の首位(北京 9 割・上海 5 割強、2019 年社調べ)。
その他(果実加工・ファインケミカル・共通)
果実加工のフルーツソリューション、ヒアルロン酸などのファインケミカル、共通部門。
| 数量販売数量(万トン、単価の差が大きい品の換算合計) | 価格1kg あたりの平均単価(円、換算。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 3.8 | 1,000 | 377 | 28 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 1,340 | 531 | 37 |
取り方:売上 377 億円(フルーツソリューション 176・ファインケミカル 118・共通 83)を、1kg あたり千円の換算で 3.8 万トンと置いた(推定。ヒアルロン酸のような高単価品と果実加工の安い品を均した値)。数量は国内中心で中立 10 年 1.05 倍、価格は物価並み。
リスクと懸念
卵相場の急騰
マヨネーズも液卵も卵が最大の原料だ。鳥インフルエンザで相場が跳ねると、値上げが追いつくまで利益が削られる。2025 年度の上期だけで、鶏卵が 21 億円、利益を押し下げた。値上げの頻度が増えるほど、消費者の離脱や PB への移動も起きやすくなる。
国内数量の細り
国内のマヨネーズ・ドレッシングの生産量は 40 万トンで 20 年動かない。人口減が続けば、この横ばいが減少に変わりうる。市販用の棚がPBに削られると、ブランドの値上げ余地も狭まる。国内で数量が年 1% 減るだけで、10 年で売上の 1 割が消える。値上げで穴を埋め続けるには、ブランドの力が試される。
業務用の利益が薄い
業務用は売上の 36% を占めるが、利益率は 6% 台だ。外食の人手不足、物流費、包材費の上昇が重なると、価格改定が遅れた期間は赤字に近づく。外食需要が急減する不況期には、固定費の重さが表に出る。売上の 3 分の 1 強がここに偏る点が、会社全体の弱さになる。
海外の成長が目標に届かない
会社は海外売上を 3 年で 1,800 億円まで伸ばす計画だ。米国の新工場は稼働初期の費用が重く、現地の大手との競争もある。中国やアジアではローカル勢が追い上げており、成長が鈍れば全社の利益率の改善シナリオが崩れる。
利益の質と一時益
2025 年度の純利益は一時の益で 42% 膨らんだ。今期予想は 255 億円に下がる。実力の利益を見誤ると、今の PER が実際より低く見える。同じ会社でも、一時益を除いた実力の利益と、倍率の高さを分けて見る必要がある。
資本効率の低さ
中計の ROE 目標は 8.5% で、資本コストを少し上回るだけだ。設備投資が営業利益の 7 割に及び、稼ぎが工場に消えやすい。新しい工場の稼ぎが想定を下回ると、ROE が資本コストを下回りうる。利益が増えても自己資本がそれ以上に増え、ROE が上がらない恐れがある。
今後の分かれ目
- 鳥インフルエンザなどで卵の相場が高止まりし、価格改定が遅れたら
- 国内の利益率は 6% 台前半へ戻り、中立の筋書きの利益は 1 割ほど下がる。やや悲観の確率を上げて見る。
- 米国の 2 つ目の工場が計画どおり立ち上がり、米州の売上が 2 桁増を続けたら
- 海外の売上は中立より速く伸びる。やや楽観・楽観側へ確率を寄せてよい。
- 海外の売上が 3 年で 1,300 億円に届かず、現地通貨での増収が 1 桁にとどまったら
- 成長ストーリーの前提が崩れる。中立を 10 年の海外 2.1 倍から下げ、やや悲観側へ寄せる。
- 政策保有株の売却資金が、自社株買いの上積みや高収益の投資に回ったら
- ROE の改善が速まる。資本効率の見方を引き上げる材料になる。
- 国内事業利益率が 8% の目標を 2028 年までに達成したら
- 経営の構造改革が実を結んだ証拠になる。10 年の国内の利益率を 7% 台後半に上げてよい。
- 創業家に近い株主や他社が動いて、TOB や資本提携の動きが出たら
- 買収価格が本質価値を上回る場合に限り、株価の水準に反映される。ただし、事業の見方は変えない。
見ておくもの
- 国内事業利益率の四半期ごとの推移(目標 8%)
- 海外セグメントの売上・事業利益と、米州・アジアの地域別の伸び
- 鶏卵・野菜・包材の相場と、価格改定の時期
- 米国テネシー工場など新工場の稼働率と立ち上げ費用
- 自社株買いの実績と政策保有株の売却額
倍率と資本コストの決め方
数量は国内を人口減並みの 0.92〜0.97 倍、海外を新工場による 2.1 倍とし、価格は物価の 1.34 倍で置いてから利益を積んだ。倍率は、ROE 9.8% と資本コスト 7%(基本 7.5% に quality 0)から出した正当化 PER(約 15.3 倍)の 9 割弱の 13.5 倍とし、今の PER(19〜23 倍)には寄せていない。純現金は 486 億円で時価総額の 8% にとどまり 1 割に満たないので、余った現金は分けていない。悲観は稼ぐ力(約 1,227 億円)の約 8 割に置いた。新リース会計基準(2028/03 期ごろから BS に載る)は営業利益などが少し変わるが、数字は今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.5→18.37 倍・やや楽観 PER 14→17.55 倍・中立 PER 13.5→16.65 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality を足して決める(β・規模は使わない)。quality の内訳と理由は quality_why に書いた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.00%。