結論
TSMCは、世界の先端半導体を実際に製造する、代えの利きにくい企業である。筆者は10年後もその優位が続くと見るが、現在の株式価値は割高と判断する。世界屈指の事業であることと、どんな値段でも買えることは別の話だからだ。
強さの源は、半導体の設計だけでは埋められない量産技術の壁にある。2026年第2四半期の世界ファウンドリー市場で約72.5%を占め、2ナノメートルの量産も本格化した。エヌビディア、アップル、AMD、ブロードコムなどは優れた半導体を設計できても、それを高い歩留まりで大量に作るにはTSMCの生産基盤が必要となる。工場、技術者、設計支援の仕組みが積み重なり、顧客が簡単には移れない。
2026年第3四半期の売上は467億ドル、営業利益率は58.7%となった。2026年通期の売上成長見通しもドル建てで約44%へ引き上げられた。AI向け需要は当面きわめて強い。ただし、この利益率を10年間そのまま続けられるとは考えない。米国工場の費用、次世代工程の償却、競争の再燃が、現在の高収益を薄めるからである。
中立では2036年に売上約3366億ドル、営業利益約1621億ドル、純利益1440億ドルを見込む。現在より大きく成長するが、必要な設備投資も膨大で、自己資本利益率は成熟とともに下がる。10年後の中立時価総額は約2兆3310億ドルとなる。
5つの筋書きを確率で加重し、資本コスト8%で割り引いた現在の本質価値は約1兆3840億ドルである。2026年10月23日の時価総額約2兆1704億ドルとの差は約マイナス36%となり、判定は割高である。技術的な堀は深いが、巨額投資と地政学上の危険まで無視できるほどの安全域はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、TSMCは長期保有に値する事業の条件を数多く満たしている。半導体は10年後も必要であり、先端工程の製造には膨大な知識、設備、人材と顧客の信頼が要る。高い価格を提示しても顧客が簡単に離れない力があり、競争優位は一過性の流行だけに依存しない。
しかし、企業の価値を考える際には利益と現金を区別する必要がある。2025年の純利益は約551億ドルだったが、フリーキャッシュフローは約346億ドルにとどまった。先端工程の設備は寿命が短く、競争力を保つための更新投資を止めることはできない。成長投資と維持投資を完全に分けることも難しい。会計利益のすべてが自由に分配できるオーナー利益ではないのである。
再投資の利回りは過去には非常に高かった。増分利益と増分自己資本の単純比較でも、資本コストを大幅に上回る成果が見える。ただし米国工場の建設費と新工程の償却が増える2030年代には、追加投資の利回りが現在ほど高くない可能性がある。高いROEを、そのまま将来の成長率に読み替えてはいけない。
最大の不確実性は地政学である。台湾の生産基盤は技術の源泉であると同時に、事業継続上の集中リスクでもある。分散投資は進んでいるが、世界の先端半導体供給を支える主要工場が同時に使えなくなる事態では、通常の財務指標が意味を失う可能性がある。
筆者が長く保有する株主として重視するのは、現在の高収益ではなく、2036年以降も新しい投資が資本コストを超えるかという問いだ。優位は続く可能性が高いが、その利益を得るための投資額も上がっている。企業の質を高く評価する一方、現在の時価総額には追加的な安全域を求める。
何で稼ぐ会社か
TSMCの商売は、顧客が設計した半導体を工場で製造し、製造技術と生産能力の対価を受け取ることである。自社ブランドのCPUやGPUを販売して顧客と競合する会社ではない。顧客は設計を自社の競争力として保持しながら、量産だけをTSMCに任せられる。この専業製造という仕組みが、1987年の創業以来の競争力の土台となっている。
2025年の売上は、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)が約58%、スマートフォンが約29%、自動車・IoT・民生機器などが残り約13%だった。HPCではAIアクセラレーター、サーバーCPU、ネットワーク半導体を製造する。スマートフォンではアップルなどが採用する先端プロセッサーを製造する。自動車や産業機器には、長期供給と信頼性が重視される成熟工程や特殊工程も提供する。
売上の約86%はウエハー製造から生じ、残りは主にパッケージング、検査、マスク製造、設計関連のサービスである。CoWoSは複数の半導体と高帯域メモリを高密度に接続する先端パッケージング技術であり、AI半導体の性能と供給量を左右する。製造から実装まで一体で支えられることが、単純なウエハー価格以上の価値を生む。
2025年には12インチ換算で約1500万枚のウエハーを出荷した。先端工程の売上構成比は、7ナノメートル以下がウエハー売上の74%だった。2026年第3四半期には同79%へ上昇し、2ナノメートルも8%を占めるようになった。先端工程ほど設備と研究開発に巨額の資金が要るが、顧客が求める電力効率と歩留まりを実現できれば高い価格を維持できる。
会社の正式な報告セグメントは実質的に半導体製造の一つである。本分析では、公開されている用途別売上をもとにHPC、スマートフォン、その他の3事業へ分ける。ウエハー枚数の用途別内訳は開示されないため、全社出荷枚数と工程別売上構成を使って数量を推計した。各用途の平均単価には、該当する製造・実装サービスの売上を含めている。
優良さと弱いところ
TSMCの堀、つまり他社が容易にまねできない強みは、技術だけではなく量産の経験そのものにある。新しい工程を開発するだけなら競合にも可能性はある。しかし、顧客が求める時期に必要な数量を、高い歩留まりで安定して供給することは別の難しさを持つ。設計から製造まで共同で最適化する経験が、次の世代の受注を呼ぶ。
2025年には534社の顧客向けに1万2682種類の製品を製造し、305種類の製造技術を提供した。設計ソフト、半導体IP、設計規則、製造工程が一体で整備され、顧客が別の工場へ移るには設計変更と再認定が必要になる。先端工程ほどこの負担は大きい。TSMCの優位は、市場シェアだけでなく、顧客が新製品を作る際の出発点になっていることにある。
値決め力にも証拠がある。会社は価格が提供価値を反映する方針を示し、2025年は先端工程の構成比上昇による平均販売価格の上昇が増収を支えた。2026年には顧客別に2027年の製造価格を最大10%程度引き上げるとの報道もあった。ただし、個別契約の条件は非公開であり、すべての顧客に同じ値上げが確定したわけではない。
資本効率も高い。2025年のROEは約32%、営業利益率は50.8%で、過去10年のROE中央値25.4%を上回った。2015年から2025年にかけて純利益は約455億ドル増え、自己資本は約1353億ドル増えた。この単純比較は厳密な増分ROICではないが、過去の再投資が大きな利益を生んだ証拠にはなる。今後も同じ効率が維持されるかは、新しい工場の稼働率次第である。
弱みは、優れた事業ほど資本が重くなっていることである。2026年の設備投資予算は600億〜640億ドルに達する。米国や日本への工場分散は供給の安全性を高めるが、建設費、人件費、償却費も増やす。AIエージェントによる人月・席課金ソフトの代替は、この物理的な半導体製造事業には直接当てはまらない。むしろAI需要の拡大が当面の追い風となるが、需要の循環は残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
TSMCが属するのは半導体製造装置市場ではなく、半導体の受託製造市場である。添付の業界ノートにあるウエハー製造装置市場は、TSMCが設備を購入する相手側の市場だ。アプライド・マテリアルズ、ラムリサーチ、KLAは重要な装置供給会社であり、直接の受託製造競合ではない。この違いを踏まえ、需要は完成するウエハーの枚数と製造単価で考える。
TrendForceによる2026年第2四半期の世界ファウンドリー売上上位10社の合計は約535億ドルだった。TSMCのシェアは72.5%、サムスン電子のファウンドリー事業は5.9%、中国のSMICは5.4%、UMCは3.9%、グローバルファウンドリーズは3.2%だった。先端工程ではTSMCの優位が全体平均よりさらに強く、AI向け製品の需要増加が売上と平均単価を押し上げている。
競争の形は工程によって異なる。2〜3ナノメートルでは、サムスンとインテルの量産歩留まりや顧客認定がTSMCの支配力を左右する。成熟工程では、SMIC、UMC、グローバルファウンドリーズとの競争が激しい。グローバルファウンドリーズの2025年営業利益率は約12%であり、成熟工程中心の事業とTSMCの高収益には大きな差がある。単純な半導体製造であっても、工程の難しさによって収益性は大きく違う。
市場の長期的な数量需要はAIだけではない。通信、電力効率の改善、車載電子化、産業制御、データ処理の増加も製造需要を支える。ただしAI向け設備投資は、顧客側の収益化が遅れると急減する可能性がある。現在の供給不足を恒久的な状態と考えるのは危険だ。
中立では2036年の受託製造市場を名目約5300億ドルと想定する。TSMCの売上は約3366億ドルで、概算シェアは約64%となる。市場は成長しても、海外への生産分散と競合の技術回復で現在よりシェアが下がる筋書きである。楽観では市場が約7600億ドルへ拡大し、TSMCが約76%を維持する。悲観では市場が約3300億ドルにとどまり、同社のシェアは5割を下回る。これらの将来市場規模は外部機関の確定予測ではなく、数量・単価と競争条件から組み立てた仮説である。
台湾への生産集中は、通常の企業競争とは違う危険をもたらす。地震、水・電力の供給制約に加え、台湾海峡の緊張が物流や設備の保守を止める可能性がある。海外工場の拡大はその危険を減らすが、台湾の技術者集積や生産能力を短期間で完全には移せない。
資本政策と M&A
資本配分の中心は、買収ではなく自社工場への再投資である。2025年のフリーキャッシュフローは約346億ドル、配当は約150億ドルだった。利益を全額還元せず、先端工程と生産能力の拡大に資金を回してきた判断は、過去10年の売上と利益の成長を見る限り、株主に大きな価値を生んだ。
会社は2024〜2029年のドル建て売上成長率を年平均25%近くとする戦略目標を掲げ、景気循環を通じて粗利益率56%以上、ROEは20%台後半を目指している。2026年10月時点では、同年の売上成長見通しを約44%とし、設備投資予算600億〜640億ドルを維持した。2027年以降の設備投資額については確定した数字の約束はなく、2026〜2028年の投資規模が過去3年間を大きく上回るとの方向性を示している。
海外への投資はアリゾナ州の複数工場、日本の熊本工場、ドイツのドレスデン工場が中心である。地政学リスクの分散と顧客への安定供給には役立つが、2026年の会社説明では海外工場による粗利益率の押し下げが今後数年間で3〜4ポイントに広がる可能性が示された。補助金だけで採算が保証されるわけではない。
株主還元は継続的な現金配当が中心であり、大規模な自社株買いには依存していない。2004年の配当開始以来、年間の配当額を継続して支払ってきた実績があり、経営陣は年間・四半期とも持続可能な増配を目指す。固定の総還元性向や大型自社株買い枠を将来にわたり保証する数字の約束はない。
大型買収で成長を買うより、技術と生産能力を自社で築く経営である。支配的な創業家の種類株やVIEによって一般株主の利益を別に移す構造ではないが、台湾法に基づく企業統治とADSの預託契約を通じて権利を保有する点には注意が必要だ。2026年10月時点で、成立済みの非公開化合意や上場廃止予定、継続企業の前提に重大な疑義を示す事実は確認されない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
先端半導体の製造は、単なる製造請負から世界の計算基盤を支える産業へ変わっている。AIの計算量が増えるほど、半導体には高い電力効率と複雑な接続技術が求められる。TSMCは2ナノメートル、次世代のA16、先端パッケージングを組み合わせ、顧客が製品を実現するための最も重要な生産基盤になりつつある。
2026年第3四半期にはHPCが全社売上の68%を占めた。エヌビディアのGPUだけでなく、クラウド大手が設計する独自AI半導体、サーバーCPU、ネットワーク半導体まで需要が広がっている。特定顧客への依存はなお大きいが、多数の設計会社が同じ製造基盤を必要としている。設計会社が自社チップを増やす動きも、受託製造の需要を増やす。
競合との隔たりは大きい。サムスンは先端工程の歩留まり改善を進めているものの、2026年第2四半期の市場シェアは5.9%にとどまる。インテルも製造技術を再構築しているが、顧客の信頼と量産実績を短期間で獲得するのは難しい。先端工程を安定供給できる企業が限られることは、TSMCの値決め力を高める。
製造工程の難しさも増している。トランジスタ構造の変化、裏面給電、チップレット化、広帯域メモリとの一体化が進めば、ウエハー1枚当たりに提供する技術とサービスの価値が高くなる。製造数量だけでなく平均単価も上昇するため、利益の伸びが市場全体の出荷数量を上回る可能性がある。
海外工場は当初の利益率を押し下げるが、十分な稼働率に達すれば新しい顧客と需要を取り込める。米国と日本の生産拠点が国際的な顧客の供給不安を減らせば、値上げを伴う長期契約も結びやすくなる。10年後には製造能力と先端パッケージングが一体化し、より強い競争力を持つ世界的な基盤企業になるという見方には十分な根拠がある。
慎重な見方
現在の利益にはAI設備投資の異例の拡大が含まれている。2026年第3四半期の営業利益率58.7%は製造業として非常に高く、供給不足と先端工程の製品構成に支えられた水準である。需要が強い時期に増設した工場は、需要が鈍った後にも減価償却と維持費を生む。利益率の高さを永続的なものと考えるのは危険だ。
顧客側の設備投資が実際のAI収益に見合わなければ、半導体需要の伸びは急に鈍る。巨大データセンターの建設計画が先送りされれば、GPUや独自AI半導体の発注も減る。TSMCには多くの顧客がいるものの、最終需要の源は同じ世界のAI投資に集中している。売上先が複数でも、景気の変化に対する分散効果は限られる。
サムスンとインテルの技術回復も無視できない。先端工程の歩留まりが改善すれば、顧客は価格交渉のためにも第二の生産先を確保する。米国の産業政策が国内生産を後押しすると、原価が高くてもTSMC以外を使う選択が広がりうる。成熟工程ではSMICなど中国企業の生産能力が増え、数量と単価の両方に圧力がかかる。
海外生産の拡大には別の危険がある。2026年の設備投資計画は600億ドルを超え、今後数年間はさらに巨額の投資が続く。米国では建設費と人件費が高く、先端設備の更新も必要となる。生産能力を増やしても資本効率が下がれば、会計利益の成長ほど株主に戻る現金は増えない。
台湾海峡の緊張は、通常の半導体循環とは比較にならない損失を生みうる。工場や設備が物理的に無事でも、輸送、電力、材料、技術者の移動が止まれば生産が続かない。こうした尾部リスクを完全に測ることはできない。巨額の時価総額を払う投資家には、技術の優位だけでなく、事業の継続と将来利益への高い確信が要求される。
どちらに重みを置いたか
事業の長期的な優位については強気の根拠が勝る。量産歩留まり、顧客の設計資産、先端パッケージングの蓄積は競合が短期で再現しにくい。AI向け需要も2026年の決算で明確に確認できる。
ただし株主価値では慎重な見方を重視する。今の利益率が高く、海外投資の回収には時間がかかり、台湾の地政学的な危険も消えない。楽観とやや楽観は合計32%、中立33%、やや悲観と悲観は35%とした。堀を評価して成長側も十分に残すが、需要循環と損失の非対称性を反映して下振れ側をやや厚くする。確率加重後の現在価値は時価総額を約36%下回り、結論は割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 473.10 ドル2.45 兆ドル(+ 還元の換算額還元の合計 70.13 ドル3,637 億ドル)。 今の値に割り戻すと 266.87 ドル1.38 兆ドル、今との差 −34.3%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 1,104 ドル5.72 兆ドル | 115.69 ドル6,000 億ドル | +200.2% | +12.4% | 146.32 ドル7,588 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 755.93 ドル3.92 兆ドル | 96.41 ドル5,000 億ドル | +109.9% | +8.3% | 170.47 ドル8,841 億ドル |
| 中立 | 33% | 449.47 ドル2.33 兆ドル | 71.34 ドル3,700 億ドル | +28.2% | +2.7% | 171.87 ドル8,913 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 158.56 ドル8,223 億ドル | 46.28 ドル2,400 億ドル | −49.6% | −7.3% | 47.11 ドル2,443 億ドル |
| 悲観 | 12% | 39.06 ドル2,026 億ドル | 23.14 ドル1,200 億ドル | −84.7% | −19.4% | 7.46 ドル387 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 473.10 ドル2.45 兆ドル | 70.13 ドル3,637 億ドル | +33.8% | +3.2% | 543.23 ドル2.82 兆ドル |
今の株価時価総額 406.13 ドル2.11 兆ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% AI計算需要が拡大し、先端製造の圧倒的優位が続く 利益 2,730 億ドル · PER 20.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,104 ドル5.72 兆ドル
2036年には世界の受託製造市場が名目約7600億ドルへ成長する。AI半導体の需要はGPUだけでなく、独自ASIC、ネットワーク、サーバーCPUへ広がり、TSMCは先端製造とパッケージングを一体で供給する。世界市場シェアは約76%を維持し、サムスンとインテルが技術を改善しても量産規模の差は埋まらない。
HPC向けウエハー数量は1900万枚となり、実効単価は1枚当たり約2.4万ドルへ上がる。スマートフォン向けは620万枚、その他は800万枚となる。数量増加に加え、2ナノメートル以降の工程とCoWoSなどの実装価値が高まり、全社売上は約5811億ドルに達する。
海外工場の高い費用を生産規模と技術改善で吸収し、営業利益率は約53%を維持する。営業利益は約3062億ドル、純利益は2730億ドルとなる。エヌビディアやアップルなどの顧客が競争を続けるほど、共通の製造基盤を提供するTSMCの役割が強まる。
2027〜2036年の純利益累計は約1兆8410億ドルとし、正味還元6000億ドルを差し引いた自己資本は約1兆4135億ドルとなる。巨額の増設を続けるため現金がすべて自由になるわけではなく、末期の余剰純現金は1400億ドルと見る。2036年の年間成長率は既に一桁台へ落ち着き、その後は成熟した長期成長へ移る。
- HPC・AI・データセンター向け半導体製造:数量 19.0(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。パッケージングの売上も対象製品のウエハー枚数へ対応させる。)× 価格 24(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造に加え関連する実装・検査収入を含む実効単価。)→ 売上 4,560 億ドル・営業利益 2,554 億ドル。HPCウエハー数量は2025年比3.17倍、実効単価は2.05倍。先端工程の高価格と実装価値が続き、営業利益率56%。
- スマートフォン向け半導体製造:数量 6.2(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 13(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造・関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 787 億ドル・営業利益 402 億ドル。数量1.38倍、価格1.60倍。高級端末の先端工程採用が進み、営業利益率51%。
- 自動車・IoT・産業機器・その他半導体製造:数量 8.0(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 5.80(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造と関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 464 億ドル・営業利益 176 億ドル。数量1.78倍、価格1.61倍。車載・産業用途が伸び、特殊工程の付加価値も増える。
倍率:kは8.0%、gは4.5%、moatはstrongで超過収益の残存割合2/3。余剰現金1400億ドルに対応する受取利息19.6億ドルを除いた事業利益2710.4億ドルと、余剰現金控除後の事業自己資本12734.9億ドルから事業ROE約21.3%。RONICは約16.9%、来期利益ベースの正当化PERを2036年利益ベースに換算した上限は約21.9倍。20.6倍はその約94%。長期gの内訳は市場の実質数量年約1.0%、シェア概ね維持、名目価格年約3.5%。高い技術優位を認めながらも、設備投資負担と需要循環を反映する。純利益はT-IFRSの報告利益を使い、株式報酬を戻さない。
確率:2ナノメートル以降の技術世代と先端パッケージングが順調に量産され、AI・HPC需要が10年にわたり高成長を維持する世界である。2026年の会社見通しと高い先端工程シェアは上振れの根拠になるが、2029年以降も高成長が続くかは未確認である。需要循環と巨額の設備投資を考慮し、12%とした。
やや楽観 20% 先端工程の需要が続き、海外増設も採算に乗る 利益 2,060 億ドル · PER 18.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 755.93 ドル3.92 兆ドル
2036年の世界受託製造市場は名目約6700億ドルとなり、TSMCは約69%のシェアを保つ。エヌビディアや独自AI半導体の顧客が成長し、サムスンも一部の先端案件を獲得するが、主要顧客はTSMCを中心に製品開発を続ける。CoWoSと次世代の実装技術が高い付加価値を生む。
HPC向け数量は1600万枚、平均単価は2.2万ドルとなる。スマートフォン向けは590万枚、その他は720万枚へ増える。市場全体の需要と価格上昇の両方が売上を支え、全社売上は約4617億ドルに育つ。
米国と日本の工場は当初の費用負担が残るものの、生産量の増加で採算を改善する。営業利益は約2332億ドル、純利益は2060億ドルとなる。グローバルファウンドリーズやUMCとの成熟工程の競争は続くが、利益の大半を先端工程で稼げる。
2027〜2036年の純利益累計は約1兆5710億ドルとし、正味還元は5000億ドルを見込む。残る利益の多くを工場に再投資するため、自己資本は約1兆2435億ドルになる。余剰純現金は1200億ドルと想定し、収益の拡大と資本効率の低下が同時に進む世界である。
- HPC・AI・データセンター向け半導体製造:数量 16.0(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。パッケージングの売上も対象製品のウエハー枚数へ対応させる。)× 価格 22(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造に加え関連する実装・検査収入を含む実効単価。)→ 売上 3,520 億ドル・営業利益 1,901 億ドル。数量2.67倍、価格1.88倍。AI・サーバー向けの需要拡大を受けるが、海外製造費が利益率を一部押し下げる。
- スマートフォン向け半導体製造:数量 5.9(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 12(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造・関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 708 億ドル・営業利益 347 億ドル。数量1.31倍、価格1.52倍。先端工程への移行が成熟端末市場での売上成長を支える。
- 自動車・IoT・産業機器・その他半導体製造:数量 7.2(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 5.40(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造と関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 389 億ドル・営業利益 144 億ドル。数量1.60倍、価格1.50倍。車載・産業用途が増え、成熟工程の競争は残る。
倍率:k8.0%、長期g4.25%、strongの堀による残存割合2/3を使用。現金受取利息16.8億ドルを除いた事業利益2043.2億ドルを、事業自己資本11234.9億ドルで割るとROE約18.2%。RONICは約14.8%、2036年利益に対応する正当化PER上限は約19.8倍。18.6倍は約94%。長期成長の内訳は市場実質数量年約0.8%、シェア概ね横ばい、価格年約3.4%。海外投資の費用と競合の技術改善を織り込む。報告純利益には株式報酬を費用として含める。
確率:先端半導体とパッケージングの需要が拡大し、海外工場の稼働も順調に上がる筋書きである。2026年の需要と会社目標はこの方向を支持するが、競合の技術改善と循環によって現在の支配力が多少弱まると考える。楽観ほど高い世界シェアを長期に維持する必要がないため、確率は20%とした。
中立 33% 先端製造の堀は続くが、利益率と資本効率は正常化する 利益 1,440 億ドル · PER 15.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 449.47 ドル2.33 兆ドル
2036年の世界受託製造市場は名目約5300億ドルとなる。TSMCは先端工程の優位を守るが、サムスンとインテルが一部の大型顧客を獲得し、成熟工程ではSMICやUMCの生産能力が増える。全社の概算市場シェアは約64%まで下がるが、依然として最大の受託製造会社であり続ける。
HPC向けの数量は1350万枚となり、平均実効単価は1.8万ドルへ上がる。スマートフォンは540万枚、その他は650万枚とし、物価上昇と工程高度化が数量の緩やかな伸びに加わる。全社売上は約3366億ドルとなる。2026年の急成長からは大きく減速するが、10年後も必要とされる製造基盤であることは変わらない。
営業利益率は約48%へ正常化し、営業利益は約1621億ドル、純利益は1440億ドルとなる。先端工程の値決め力は強いものの、米国工場の償却と人件費が増える。グローバルファウンドリーズなど成熟工程中心の会社よりはるかに高い利益率を維持できるが、2026年第3四半期の利益率は再現しない。
2027〜2036年の純利益累計は約1兆2530億ドルと想定する。2027年の利益を約1000億ドルとし、その後は一時的な調整を挟みながら2036年の1440億ドルへ増える道筋である。正味還元3700億ドルを差し引き、自己資本は約1兆554億ドルとなる。増設への再投資が続くため、自由に評価へ加える期末純現金は900億ドルとする。長期的には利益の成長より株主に戻る現金の成長が緩やかになる。
- HPC・AI・データセンター向け半導体製造:数量 13.5(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。パッケージングの売上も対象製品のウエハー枚数へ対応させる。)× 価格 18(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造に加え関連する実装・検査収入を含む実効単価。)→ 売上 2,430 億ドル・営業利益 1,264 億ドル。数量2.25倍、価格1.53倍。AI向け需要は増えるが伸びは正常化し、海外投資費用を反映して利益率52%。
- スマートフォン向け半導体製造:数量 5.4(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 11(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造・関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 605 億ドル・営業利益 284 億ドル。数量1.20倍、価格1.41倍。端末台数は成熟するが先端工程の採用と物価上昇で単価が増える。
- 自動車・IoT・産業機器・その他半導体製造:数量 6.5(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 5.10(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造と関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 332 億ドル・営業利益 113 億ドル。数量1.44倍、価格1.42倍。車載と産業用が伸びるが、中国勢などとの競争で利益率34%。
倍率:k8.0%、長期g4.0%、moatはstrongで超過収益残存割合2/3。現金900億ドルの受取利息12.6億ドルを除いた事業利益は1427.4億ドル。余剰現金を除く事業自己資本9654.9億ドルに対するROEは約14.8%、RONICは約12.5%。正当化PERの2036年利益に対する上限は約17.7倍であり、15.7倍は約89%。市場数量の実質成長年約1.0%、シェアの小幅低下年約0.5%、価格上昇年約3.5%から名目g約4.0%を導く。海外設備の償却と資本効率低下を反映し、上限満額を与えない。純利益はT-IFRSの報告利益であり、株式報酬や通常の減価償却を足し戻さない。
確率:2030年代にもAI・HPC向け半導体製造は成長する一方、供給不足と現在の高収益が永久には続かない筋書きである。技術優位を重視しつつ、海外工場の費用、競合回復、成熟工程のシェア低下を見込む。2026年の強い実績を出発点としながら、将来の利益率を低下させる中立的な判断として33%を置く。
やや悲観 23% AI投資の調整と競合回復で、量産の利益率が下がる 利益 680 億ドル · PER 11.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 158.56 ドル8,223 億ドル
2036年の世界受託製造市場は名目約4200億ドルにとどまる。AIデータセンターへの設備投資が2020年代後半に行き過ぎ、2030年代には半導体の生産能力が需要を上回る。サムスンとインテルが一部の先端案件を奪い、中国勢は成熟工程の国内需要を取り込む。TSMCの概算シェアは約54%へ下がる。
HPC向けウエハー数量は1000万枚となり、実効単価は1.55万ドルにとどまる。スマートフォン向けは470万枚、その他は530万枚となる。全社売上は約2273億ドルとなり、2026年の急拡大後も一定の成長は残るが、先端工程の値決め力は今より弱い。
海外工場の減価償却と国内外の設備維持費は需要が鈍っても残る。HPCの営業利益率は39%、スマートフォンは35%となり、全社営業利益は約793億ドルまで低下する。純利益は680億ドルとなる。依然として利益を稼ぐ会社だが、増分の設備投資が株主に十分な利益を返せない時期が長くなる。
2027〜2036年の累計純利益は約9030億ドルとする。2027〜2029年に利益が高い時期を経て、2030年代に低下するため、初年度と最終年度の単純平均より累計が大きい。正味還元2400億ドルを差し引いた自己資本は約8355億ドルとなる。余剰純現金は400億ドルに縮むが、事業は継続し、売却可能な設備と顧客基盤が株主価値を支える。
- HPC・AI・データセンター向け半導体製造:数量 10.0(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。パッケージングの売上も対象製品のウエハー枚数へ対応させる。)× 価格 16(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造に加え関連する実装・検査収入を含む実効単価。)→ 売上 1,550 億ドル・営業利益 605 億ドル。数量1.67倍、価格1.32倍。先端工程の競争と設備稼働率低下で価格上昇は物価を下回る。
- スマートフォン向け半導体製造:数量 4.7(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 10(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造・関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 479 億ドル・営業利益 168 億ドル。数量1.04倍、価格1.29倍。端末市場は停滞し、製造先分散による価格交渉力の低下が起きる。
- 自動車・IoT・産業機器・その他半導体製造:数量 5.3(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 4.60(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造と関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 244 億ドル・営業利益 61 億ドル。数量1.18倍、価格1.28倍。成熟工程の価格競争が強まり、利益率25%。
倍率:k8.0%、長期g3.0%。現金400億ドルの受取利息5.6億ドルを除いた事業利益674.4億ドルを、事業自己資本7954.9億ドルで割るとROE約8.5%。strongの残存割合2/3を使ったRONICは約8.3%、正当化PER上限は約13.2倍。11.6倍は約88%だが、中立より明確に低い。長期の名目gは市場数量年約1.0%、シェア年約1%低下、価格年約3.0%の組み合わせ。超過利益がほぼ失われ、利益の質が低下したため倍率を縮める。
確率:AI設備投資が2020年代後半に過剰となり、2030年代に需要が低迷する世界である。サムスンやインテルの技術改善、成熟工程での中国勢の拡大も加わる。ただしTSMCの顧客基盤と製造技術が全面的に失われるわけではないため、破綻ではなく収益性の大幅低下を中心に考え、23%とした。
悲観 12% 先端技術の優位が崩れ、設備が低収益資産になる 利益 195 億ドル · PER 9.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 39.06 ドル2,026 億ドル
2036年の世界受託製造市場は名目約3300億ドルにとどまり、TSMCのシェアは約47%へ下がる。サムスンとインテルが先端工程で量産認定を獲得し、中国ではSMICなどが国内市場を広く支配する。AI向け需要の調整と台湾の物流障害が重なり、TSMCの重要顧客が製造先を分散する。
HPC向け数量は800万枚にとどまり、実効単価も1.3万ドルしか得られない。スマートフォン向けは380万枚、その他は400万枚となる。売上は約1544億ドルで、2025年より増えていても、2026年の旺盛な需要を前提に建設した工場の能力を十分に使い切れない。
HPCの営業利益率は20%、スマートフォンとその他は16%まで下がる。全社営業利益は約234億ドル、純利益は195億ドルとなる。技術と顧客が全滅するわけではないが、かつての高い価格決定力は失われ、増設した工場の一部は経済的な価値を持たない。成熟工程の価格競争に巻き込まれた会社へ変質する。
2027〜2036年の純利益累計は約5745億ドルで、初期の高収益期の利益を含む。2030年以降の大幅な減速を経て、配当などの正味還元は1200億ドルに縮む。自己資本は約6270億ドル残るが、古くなった製造設備の売却価値は帳簿額を大幅に下回る。末期の自由な純現金を200億ドルとし、売却できる施設・設備の税引き後価値を加えた約2000億ドルを悲観の床とする。完全な戦争によって資産への支配を失う、さらに極端な事態はこの床でも保証できない。
- HPC・AI・データセンター向け半導体製造:数量 8.0(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。パッケージングの売上も対象製品のウエハー枚数へ対応させる。)× 価格 13(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造に加え関連する実装・検査収入を含む実効単価。)→ 売上 1,040 億ドル・営業利益 208 億ドル。数量1.33倍、価格1.11倍。技術優位が失われ、物価上昇を価格に転嫁できない。
- スマートフォン向け半導体製造:数量 3.8(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 8.80(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造・関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 334 億ドル・営業利益 54 億ドル。数量0.84倍、価格1.11倍。主要顧客が製造先を分散し、稼働率と価格が下がる。
- 自動車・IoT・産業機器・その他半導体製造:数量 4.0(用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。)× 価格 4.25(12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造と関連サービスを含む実効単価。)→ 売上 170 億ドル・営業利益 27 億ドル。数量0.89倍、価格1.18倍。成熟工程の競争が強く、設備稼働率も低い。
倍率:事業自己資本は6069.9億ドル、余剰現金の受取利息2.8億ドルを除いた事業利益は192.2億ドルで、事業ROEは約3.2%。k8.0%を下回るため、PERの上限は1÷kの12.5倍である。利益の質と設備の低い換金性を考え9.5倍とした。長期gは市場数量年約0.5%、当社シェア年約2%低下、製造単価年約3%の組み合わせから名目約1.5%。2036年の時価総額は利益に9.5倍を掛けた1825.9億ドルに、自由な純現金200億ドルを足した2025.9億ドルである。これは売却可能資産による床2000億ドルをわずかに上回る。過去の谷のPBRを基準にはしていない。
確率:2030年代に先端工程の競争優位が大きく失われ、AI設備投資の長い調整と台湾海峡の物流・供給網の障害が重なる世界である。現在の圧倒的な技術と顧客基盤を考えると中心的な結果ではないが、巨額の固定資産と地政学の集中が損失を非対称にするため、12%を確保する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
HPC・AI・データセンター向け半導体製造
AIアクセラレーター、GPU、サーバーCPU、ネットワーク半導体、独自ASICなどの製造と関連する先端パッケージング。先端工程の技術優位と需要拡大が最も大きく現れる事業である。
| 数量用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。パッケージングの売上も対象製品のウエハー枚数へ対応させる。 | 価格12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造に加え関連する実装・検査収入を含む実効単価。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6.0 | 12 | 704 | 380 |
| 10 年後 中立 | 13.5 | 18 | 2,430 | 1,264 |
取り方:2025年20-FのHPC売上構成比57.57%をfactsの全社売上1222.4億ドルに適用し、703.8億ドルとした。2025年の全社ウエハー出荷1502万枚のうち600万枚をHPCへ割り当てる推計で、製造・実装込みの実効単価は約1.173万ドルとなる。会社は用途別の実際のウエハー枚数と利益を開示しないため、この数量と利益380億ドルは推計値であり実績開示ではない。2025年の先端工程売上比率74%、HPCの高価格工程への集中、他用途の単価との整合性を使って算定した。2025年のHPC向け世界受託製造市場を概算870億ドル、当社シェア約81%と仮定する。これは公開された用途別の世界市場統計ではなく、TrendForceの全体市場シェアと先端工程の競争地位から逆算した目安である。主要競合はサムスンとインテルで、先端工程の量産能力と顧客認定がシェアを決める。
スマートフォン向け半導体製造
スマートフォンのアプリケーションプロセッサー、通信関連半導体、画像処理向け半導体などの製造。成熟した端末市場でも先端工程への移行が製造単価を押し上げる。
| 数量用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。 | 価格12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造・関連サービスを含む実効単価。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.5 | 7.92 | 356 | 178 |
| 10 年後 中立 | 5.4 | 11 | 605 | 284 |
取り方:2025年20-Fのスマートフォン用途売上構成比約29.16%から356.4億ドルを算出した。用途別の枚数は非開示のため、全社出荷枚数1502万枚とHPC・その他用途の推計を整合させ、450万枚とした。平均単価は約7920ドルとなる。顧客はアップルの先端プロセッサーが代表例であり、クアルコムやメディアテックなどの製品も対象となる。2025年のスマートフォン向け受託製造市場を概算450億ドル、当社シェア約79%と推計するが、用途別世界市場は会社が開示する数字ではない。競合はサムスンと一部の成熟工程を扱う受託製造会社であり、端末台数よりも先端工程の採用比率が平均単価を左右する。利益178億ドルは全社営業利益から推計配賦したものである。
自動車・IoT・産業機器・その他半導体製造
車載半導体、産業用制御、IoT、民生機器、画像センサー、電源管理などを支える製造サービス。成熟工程と特殊工程が中心で、HPCより競争が強い。
| 数量用途別の12インチ換算ウエハー出荷枚数、百万枚。 | 価格12インチ換算ウエハー1枚当たりの用途別平均売上、千ドル。製造と関連サービスを含む実効単価。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.5 | 3.60 | 162 | 63 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 5.10 | 332 | 113 |
取り方:2025年20-FのIoT、自動車、民生機器、その他用途の売上を合計し、factsのドル建て売上と整合させて162.2億ドルとした。用途別枚数は非開示であり、全社1502万枚からHPC600万枚、スマートフォン450万枚を差し引いた約450万枚を使用する。平均単価は約3604ドルと推計した。2025年の対象用途の世界受託製造市場を概算420億ドル、当社シェア約39%と仮定する。これは世界の受託製造総市場と各社の成熟工程事業を参考にした粗い市場分解であり、独立に公表されたセグメント市場規模ではない。競合はSMIC、UMC、グローバルファウンドリーズ、サムスンである。2025年のグローバルファウンドリーズの営業利益率は約12%で、成熟工程の競争が収益性を抑えることを示す。営業利益63.2億ドルは推計配賦である。
リスクと懸念
台湾海峡の地政学リスク
先端半導体の重要な製造能力が台湾に集中している。軍事的衝突だけでなく、海上輸送の遮断、電力・水の供給停止、重要部材の輸送制限によっても操業が止まる。米国、日本、ドイツへの工場分散は進んでいるが、2036年までに台湾の技術者集積と設備能力を完全に代替できるとは限らない。通常の需要循環と異なり、事業そのものへの支配や資産価値を損なう危険がある。
AI設備投資の循環と需要集中
2026年の増収はAI関連の先端工程需要に大きく依存している。クラウド事業者の設備投資がAIサービスの収益に見合わなければ、GPU、独自ASIC、ネットワーク半導体の発注が同時に鈍る可能性がある。顧客数は多くても、最終需要が同じ投資循環に結びついているため、見かけほど分散されていない。工場の減価償却費は需要が減っても残る。
サムスン・インテルの先端工程回復
2026年第2四半期にTSMCの世界シェアは約72.5%と圧倒的だった。ただしサムスンは2ナノメートル工程の歩留まりを改善し、インテルも先端製造技術と外部顧客の獲得を進めている。いずれかが大規模な量産実績を積めば、顧客は供給分散と価格交渉のために発注を移す可能性がある。大幅なシェア低下がなくても、値上げ余地が縮むだけで利益率は下がる。
巨額設備投資の回収不足
2026年の設備投資予算は600億〜640億ドルに達する。次世代工程は設備投資額が増え、米国工場では建設費や人件費も高い。需要が計画より小さければ、追加投資の利回りが資本コストを下回り、自己資本だけが積み上がる。過去の高いROEを使って2036年以降の収益性を保証することはできない。配当余力にも直接影響する。
米中規制と成熟工程の国産化
米国の先端半導体輸出規制は、TSMCが中国向けに製造できる製品や顧客を制限する。中国ではSMICなどが成熟工程を拡大し、国内調達政策が競争を後押ししている。規制の強化は一部の先端需要を失わせ、規制の緩和は中国企業との価格競争を再び強める可能性がある。台湾・中国・米国にまたがる複雑な供給網は、技術だけでなく政策によっても変わる。
主要顧客への売上集中
2025年20-Fによれば、上位10社が売上の約78%を占め、最大顧客が19%、第2位の顧客が17%だった。主要顧客が製品設計を変更したり、他社製造へ切り替えたりすれば、特定工場の稼働率に大きな影響が出る。エヌビディアやアップルの事業競争が激しくなることは必ずしもTSMCの損失ではないが、顧客の総投資額が減る場合には受託製造売上も減少する。
災害・電力・水資源と製造停止
先端半導体工場は安定した電力、水、化学材料、精密な温度管理を必要とする。台湾の地震や渇水に加え、電力供給の制約が長期化すると、高価な装置の稼働停止と製造途中のウエハー損失が起きる。新工場の建設でも水・電力・環境規制が工程と費用を左右する。顧客が納期の確実性を重視するほど、供給停止はシェアを失うきっかけになる。
今後の分かれ目
- TSMCの先端工程シェアが70%前後を保ち、2ナノメートル以降の歩留まりが改善し続ける
- 技術優位が維持されている証拠となる。HPCの数量と価格を上方修正し、やや楽観と楽観の確率を引き上げる。
- 2027年以降のAI向け発注が鈍り、先端工程の稼働率低下が複数四半期続く
- AI設備投資の循環が下向きになったと判断する。HPCの数量と営業利益率を引き下げ、やや悲観の確率を厚くする。
- サムスンまたはインテルが複数の大型外部顧客で先端工程の量産認定を獲得する
- TSMCの切り替えコストによる堀が縮む兆候である。世界シェアと平均単価を再評価し、中立の利益率と正当化倍率を引き下げる可能性が高い。
- 海外工場による粗利益率の希薄化が会社の示した3〜4ポイントを大きく上回る
- 海外生産分散の費用が予想以上に重いと判断する。将来の増分ROICと自由現金を下方修正し、慎重な筋書きを厚くする。
- 2028年以降もフリーキャッシュフローが増え、増配後にも自由な純現金が積み上がる
- 再投資効率と資本配分が良好な証拠となる。期末余剰現金と累計還元を引き上げ、現在価値を再計算する。
- 台湾海峡で長期の輸送障害が起き、先端工場への材料・装置・技術者の供給が途絶える
- 通常の景気悪化と区別して事業継続を再評価する。工場資産の換金可能性と所有権の保全を確認し、悲観シナリオの床そのものを見直す。
見ておくもの
- 四半期のHPC売上構成比と売上成長率。2026年第3四半期のHPC構成比68%が維持されるか。
- 2ナノメートル、A16、次世代工程のウエハー売上構成比、歩留まり、顧客採用状況。
- CoWoS、SoICなど先端パッケージング能力の増設と顧客の供給待ち状況。
- 世界ファウンドリー市場でのTSMC、サムスン、SMIC、UMC、グローバルファウンドリーズのシェア。
- 2026年予算600億〜640億ドルを起点とする年間設備投資、減価償却、フリーキャッシュフローの推移。
- 海外工場の稼働率と粗利益率への影響。会社が説明する3〜4ポイントの希薄化見通しとの比較。
- 年間純利益、ROE、配当、自由な純現金の増減。会計利益の成長が株主還元へ変わっているか。
- サムスン・インテルの先端工程量産認定と、米中の半導体輸出規制の変更。
- 台湾の電力・水資源、地震、海峡の輸送状況、および米国・日本・ドイツ工場の稼働開始時期。
倍率と資本コストの決め方
2026年10月23日の台帳時価総額は約2兆1704億ドルであり、10月28日のYChartsによる約2兆2770億ドルとは日付差を考慮すれば大きな食い違いはない。ADS1単位が普通株5株を表す点を確認し、会社全体の価値を測った。
売上予測は2025年20-Fの用途別売上と全社ウエハー出荷1502万枚から組み立てた。HPC・スマートフォン・その他の数量は非開示のため推計だが、3事業の数量合計を公表出荷枚数へ合わせ、実効単価は用途別の売上構成から求めた。世界市場の規模と競合シェアでも需要の大きさを照合している。
倍率には現在や過去の市場PER・PBRを使っていない。k8%、強い堀による超過収益の残存割合2/3、用途別数量と価格から導いた長期g、余剰現金を除く事業ROEから正当化PERを計算した。中立の上限約17.7倍に対し15.7倍とした。純現金は受取利息との二重計上を避け、事業利益から該当利息を除いて帳簿の自由現金を加えた。
自己資本は期首1724.9億ドルに10年間の純利益累計を加え、正味還元を引いている。2026年の高成長が既に判明しているため、各シナリオの純利益累計は初年度と最終年度の単純平均に固定せず、成長と調整の道筋を考えて設定した。悲観の床は設備の売却可能額を税引き後で測り、過去の谷の市場倍率は使わない。
5つの筋書きの現在価値は、時価総額を10年間8%で割り引き、期間還元を5年目相当で割り引いて求めた。確率加重の本質価値は約1兆3840億ドル、台帳時価総額との差は約マイナス36%となる。現在の市場評価へ合わせるために利益や倍率を逆算していない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。資本コストは米国株共通の基本8.0%に、qualityの循環+0.5%と価格決定力-0.5%の合計0.0%を加えた8.0%。β、現在の株価、同業の市場倍率は使わない。比較対象のKLAの8.2%、アプライド・マテリアルズの9.0%より低いのは、TSMCの先端製造の市場地位と顧客の切り替え負担がさらに強いため。地政学と巨額投資の個別リスクはシナリオ側で扱う。