結論
丸三証券は、日本株と投資信託を中心に、対面で個人の資産運用を手伝う独立系の証券会社である。創業以来、銀行や大手証券の系列に入らず自主独立を保つ。
筆者の結論は、今の値段は割高だ。理由は利益の水準にある。直近の営業利益率は約 25% だが、過去 10 年の中央値は 17% 弱で、営業利益が 10 億円を割った年も 3 回ある。ROE は直近 9.8% でも、10 年の中央値は 5% 台にとどまる。
会社の変化は本物である。株式投信の残高は 1 兆 2 千億円を超え、信託報酬が営業費用の半分ほどを賄うようになった。売買手数料に頼る体質から、残高に応じて収入が入る形へ動いている。
ただ、残高連動の収入は相場が下がれば同じだけ減る。投信の手数料率は下がる方向で、営業員の人件費は物価で上がる。顧客の高齢化も続く。
財務は強い。純現金は時価総額の 4 割を超え、還元も厚い。それでも中立の筋書きの ROE は 7% 前後で、資本コストに届かない。悲観の筋書きでは売買が細り、利益が消える。今の値段は、追い風が長く続くことを織り込んでいる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、丸三は「悪くはないが、払う値段が高い」会社だ。
よい点は三つある。まず財務が厚い。純現金は時価総額の 4 割を超え、借金に頼らない。次に資本の配り方が誠実だ。稼いだ利益の大半を株主に返している。最後に、残高連動の収入が育ち、売買の波に頼る割合が下がっている。
悪い点は、予測のしにくさだ。10 年の純利益は 5 億円から 50 億円まで振れた。収入の半分近くが相場と連動する事業では、10 年後の利益を言い切れない。確信を持って置ける価値には限りがある。
株主の手元に残る利益、つまりオーナー利益も、見た目より小さい。営業員の確保とシステムの更新に毎年お金がかかる。規制資本も保たねばならない。
堀は浅い。日本株の提案力という強みは、人に宿る。担当者が移れば顧客も動く。
直近の利益は相場の追い風で膨らんでいる。平時の利益に置き直すと、ROE は資本コストに届かない。そういう会社に高い倍率は払えない。
安全域は、純現金と保有株にある。悲観の筋書きでも資産の一部は残る。しかし今の値段は、その床よりずっと上にある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は大きく二つある。
一つ目は、投資信託に連動する収入だ。信託報酬が 84 億円、投信の募集手数料が 52 億円で、営業収益 217 億円の 6 割を占める。株式投信の残高は 1 兆 2,104 億円で、前の期より 2 割近く増えた(ファンドラップを含む)。残高が増えるほど、毎年の信託報酬が積み上がる。
二つ目は、日本株の売買に連動する収入だ。委託手数料は 73 億円で、収益の約 3 分の 1 を占める。前の期は 28% だったので、相場の追い風で比重が上がった。引受、トレーディング、信用取引の金融収支もここに入るが、規模は小さい。
営業の中身は、日本株の個別銘柄と投信を組み合わせた提案だ。推奨銘柄を持ってもらい、投信の長期保有を勧める。「マルサンネット」というネット取引も併設し、営業の効率を上げる。
預り資産は合計で 2 兆 8,566 億円。従業員は 1,130 人(歩合外務員を除く)で、拠点の多くは賃借だ。
利益を決めるのは費用の重さだ。販売費・一般管理費は 163 億円で、人件費が大半を占める。信託報酬はこの費用の 5 割強を賄う。会社は、この比率を 2029 年 3 月期に 55% へ引き上げる目標を掲げている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、あるが浅い。
強みは二つある。一つは、日本株の個別銘柄を顧客と一緒に選ぶ営業の力だ。推奨銘柄の純増は 2 年で 523 億円と、計画を 3 割上回った。投信の純増も 1,462 億円で、目標の 1.2 倍だった。計画をやり切る営業の規律は、同規模の独立系では貴重だ。
もう一つは、どの系列にも属さない自由さだ。商品を親会社の都合で選ばなくてよく、顧客の立場で提案できる。
弱みは、規模と値決め力だ。大手の野村・大和とは営業収益で 2 けた違う。ネット証券の SBI や楽天は売買手数料を事実上ゼロにしており、対面の手数料にも下げの圧力がかかる。信託報酬も、低コストの投信に流れれば下がる。
顧客の高齢化も気がかりだ。相続の後に資産がネットへ移れば、今の関係は引き継がれない。
資本効率は上がってきた。ROE は直近 9.8% だが、過去 10 年の中央値は 5% 台である。直近は相場の追い風が大きく、平時の力とは言えない。
資本の配り方は誠実だ。上場来の総還元性向は 84% で、ため込まない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
証券業は、相場と一緒に動く。株価が上がれば売買も預り資産も増え、下がれば逆に動く。物価が年 3% で上がる世界では、株価の名目の上昇が預り資産を押し上げる。ただし、これは追い風であって、事業の実力ではない。
個人の資金は、預金から投資へ動いている。新しい NISA で投信を長く持つ人が増え、売買で稼ぐ収入は細り、信託報酬が増えている。丸三が掲げる残高連動への転換は、この流れに乗る動きだ。
競争は三方向から来る。大手の野村・大和は、富裕層を資金力で囲う。独立系の岡三証券グループ、東海東京フィナンシャル・ホールディングス、岩井コスモは、地域と商品で近い顧客を奪い合う。そして SBI や楽天のネット証券は、若い層の最初の口座を握った。
丸三は日本株に絞って勝負する点が違う。個別銘柄の提案力で、ほかの独立系との差をつけたい。ただし日本株の相場が崩れると、売買も預り資産も一度に傷む。
国内の人口は年 0.5% ほど減り、対面の顧客は高齢層に偏る。相続のたびに資産が動く。ここは業界共通の弱点だ。
追い風もある。中小企業オーナーの世代交代で、事業承継や株式売却の相談が増える。引受主幹事に再び力を入れるのは、その入口をねらうためだ。ただし大手や地銀系も同じ市場を狙っている。
収益は 2〜4 年の周期で振れる。今は山に近い。足元の利益を平時の姿と見るのは危うい。
資本政策と M&A
還元は厚い。普通配当は連結配当性向 50% 以上を掲げ、2026 年 3 月期から非連結の純利益を基準にした。特別配当は 2028 年 3 月期まで続く。上場来の累計の総還元性向は 84% だ。
特別配当には期限がある。終われば、還元は普通配当の 50% 台に下がる。今の高い還元を前提にしない方がよい。
財務は厚い。自己資本比率は 58%、自己資本規制比率は 577% で、規制上の余裕は大きい。純現金は 347 億円ある。ただし証券会社の現金は、顧客対応や信用取引の運転資金にも使う。全額を余剰とは見ない。
保有株は、事業に関係のない上場株が 40 銘柄で 76 億円、純投資目的が 9 銘柄で 94 億円。東京応化工業や三菱 UFJ が上位に並ぶ。会社は政策保有株を削減したと説明している。売却益は一度きりで、繰り返せる利益ではない。
M&A は目立たない。創業以来どの系列にも属さない方針で、買収で規模を追ってはいない。TOB や再編の話は、小さな証券にはいつでもありうる。筆者は評価に上乗せしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
相場の追い風を受けただけではない。投信の純増は 2 年で 1,462 億円と目標の 1.2 倍、日本株の純増も 523 億円と 3 割超過した。営業の力が数字に出ている。
投信の残高は 1 兆 2 千億円に達し、信託報酬で販管費の 5 割強を賄う。相場が下がっても、この収入はすぐには消えない。会社は 2029 年 3 月期に 55% を目指す。残高が増えれば、利益率は大きく上がる。
ファンドラップの開始で、顧客の資産を預かる形が増える。手数料は残高に連動し、売買を促さなくても入る。長期の関係が収入に変わる。
財務は盤石だ。純現金は 347 億円で、自己資本規制比率は 577%。景気が悪くなっても、資本不足で追い込まれる心配は小さい。
還元も約束している。普通配当は性向 50% 以上、特別配当は 2028 年 3 月期まで続く。上場来の総還元性向は 84% で、ため込まない会社だ。
新 NISA で日本株と投信の裾野が広がり、物価 3% の世界では預り資産の名目額は自然に増える。10 年たてば、営業利益は 100 億円に迫る。
慎重な見方
今の利益は追い風が作った。営業利益率は 25% に乗せたが、過去 10 年の中央値は 17% 弱で、2017・2019・2023 年の 3 期は営業利益が 10 億円を割った。ROE の中央値は 5% 台で、資本コストを超えた期は少ない。
投信の残高が増えたのは、相場の上昇の分が大きい。顧客が増えたのでなく、評価額が増えた。相場が 3 割下がれば、信託報酬も同じだけ減る。残高連動は安定収入ではなく、相場の影を映すだけだ。
手数料は下がる。ネット証券が売買手数料を無料にし、低コストの投信が増えれば、信託報酬の率も下がる。残高が増えても、単価の低下で収入は伸びない。
人件費は物価で上がる。営業員を増やせば固定費が重くなり、売上が伸びなければ利益率が削られる。
顧客の世代交代も止まらない。相続の後、子の世代はネット証券を選ぶことが多い。
特別配当は 2028 年 3 月期で終わる。高い還元は続かない。今の利益水準が続くという前提でしか、今の値段は説明できない。
どちらに重みを置いたか
強気の指摘のうち、残高連動の収入の積み上がりと、営業の規律は本物だ。財務の厚さも確かである。ただし、足元の利益水準は相場の追い風が大きく、平時の力と見るのは危うい。
慎重な見方が、やや強い。過去 10 年の利益と ROE の実績は、資本コストに届かない会社であることを示す。手数料の低下と顧客の世代交代も、打つ手が限られる。
確率は、同じ領域の会社より少し楽観側に置いた。強気の中身(投信の積み上がり・厚い還元・財務)に実績があるためだ。それでも中立の価値は、今を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,079 円716 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 491 円326 億円)。 今の値に割り戻すと 789 円524 億円、今との差 −32.6%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,068 円1,372 億円 | 717 円476 億円 | +138.0% | +9.1% | 278 円185 億円 |
| やや楽観 | 23% | 1,546 円1,026 億円 | 612 円406 億円 | +84.5% | +6.3% | 496 円329 億円 |
| 中立 | 36% | 1,049 円696 億円 | 506 円336 億円 | +33.0% | +2.9% | 560 円372 億円 |
| やや悲観 | 21% | 460 円305 億円 | 372 円247 億円 | −28.9% | −3.4% | 175 円116 億円 |
| 悲観 | 10% | 421 円279 億円 | 181 円120 億円 | −48.6% | −6.4% | 60 円40 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,079 円716 億円 | 491 円326 億円 | +34.2% | +3.0% | 1,570 円1,042 億円 |
今の株価時価総額 1,170 円776 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 投信の残高が積み上がり、残高連動の収入が費用の 7 割を賄う 利益 86 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 2,068 円1,372 億円
投信の残高が積み上がり、残高連動の収入が営業費用の 7 割を賄うようになる。新 NISA で長く持つ客が増え、ファンドラップが定着する。
日本株の提案でも実績を重ねる。推奨銘柄を持つ顧客が増え、売買の収入も今の水準を保つ。引受主幹事に再び力を入れ、中小型の上場や増資の案件を取る。事業承継の相談が、オーナー層の顧客を呼び込む。
営業員は増やしすぎない。ネット取引の「マルサンネット」で効率を上げ、人件費の増加を収入の伸びで吸収する。営業利益率は 28% 前後で定着する。
ROE は 12% 近くになり、資本コストを超える。還元は性向 7 割で続く。それでも、日本の対面証券としての規模は小さいままである。
- 投信連動(信託報酬・募集手数料):数量 1.8(株式投信の預り残高(兆円・実質))× 価格 146(残高 1 兆円あたりの収入(億円・名目))→ 売上 256 億円・営業利益 87 億円。投信残高 1.755 兆円(実質 1.45 倍)× 1 兆円あたり 146 億円(物価分 1.34 倍に手数料率 3% 減)、営業利益率 34%
- 株式売買ほか(委託・引受・トレーディング・金融収支):数量 1.6(日本株の年間売買代金(兆円・実質。推定))× 価格 64(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 20 億円。売買代金 1.6 兆円(横ばい)× 1 兆円あたり 64.4 億円(物価分 1.34 倍に手数料率 5% 減)、営業利益率 19%
倍率:事業の純利益 83 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)189 億円。全体の PER 14.19 倍、時価総額 1,372 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:投信の積み上がり、ファンドラップの定着、売買の維持、引受の再開が重なる必要がある。ROE が資本コストを超えた期の少ない会社なので 1 割にとどめた。
やや楽観 23% 投信の残高が着実に増え、ROE は 9% 台で落ち着く 利益 66 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 1,546 円1,026 億円
投信の残高は実質で 3 割強増える。信託報酬は手数料率が下がる中でも着実に積み上がり、販管費のカバー率は 55% を超える。
売買の収入は少し細る。ネット証券の影響で手数料率が下がるが、日本株の提案で顧客をつなぎとめる。
営業員の生産性は上がる。人件費は物価で上がるが、収入の増加で吸収できる。利益率は今より少し下がるが、営業利益は 70 億円台を保つ。ファンドラップと日本株の推奨銘柄で、顧客との取引が深まる。
特別配当は終わるが、普通配当の性向 50% 以上は守る。ROE は 9% 台で、資本コストにほぼ並ぶ。
- 投信連動(信託報酬・募集手数料):数量 1.6(株式投信の預り残高(兆円・実質))× 価格 140(残高 1 兆円あたりの収入(億円・名目))→ 売上 224 億円・営業利益 67 億円。投信残高 1.597 兆円(実質 1.32 倍)× 1 兆円あたり 140 億円(手数料率 7% 減)、営業利益率 30%
- 株式売買ほか(委託・引受・トレーディング・金融収支):数量 1.5(日本株の年間売買代金(兆円・実質。推定))× 価格 61(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 14 億円。売買代金 1.47 兆円(実質 0.92 倍)× 1 兆円あたり 61 億円(手数料率 10% 減)、営業利益率 15%
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)189 億円。全体の PER 13.21 倍、時価総額 1,026 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:投信の純増が計画を上回った実績は強い。ただし相場と手数料率の変動があるので、2 割強にとどめた。
中立 36% 投信は増えるが手数料率が下がり、利益は平時の水準に戻る 利益 46 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 1,049 円696 億円
投信の残高は実質で 2 割増える。ただし低コストの投信への流れで手数料率が 1 割ほど下がり、残高 1 兆円あたりの収入は物価の伸び 1.34 倍に届かず 1.21 倍にとどまる。
売買の収入は細る。個人の売買はネット証券に流れ、対面は長期保有の提案に軸足を移す。売買代金は今の 85% に、手数料率は物価ほど上がらず 1.14 倍にとどまる。
営業員は増やせない。人件費は物価で上がり、システムと規制対応の費用も重い。営業利益率は 18% 前後で、足元の 25% には戻らない。過去 10 年の中央値に近い姿だ。
相場の山と谷は 10 年のうちに何度か来る。平均すれば ROE は 7% 前後で、資本コストに届かない。特別配当は終わり、還元は性向 7 割程度に下がる。会社の姿は今とあまり変わらない。
- 投信連動(信託報酬・募集手数料):数量 1.5(株式投信の預り残高(兆円・実質))× 価格 136(残高 1 兆円あたりの収入(億円・名目))→ 売上 197 億円・営業利益 51 億円。投信残高 1.452 兆円(実質 1.2 倍)× 1 兆円あたり 135.6 億円(手数料率 10% 減)、営業利益率 26%
- 株式売買ほか(委託・引受・トレーディング・金融収支):数量 1.4(日本株の年間売買代金(兆円・実質。推定))× 価格 58(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 9 億円。売買代金 1.36 兆円(実質 0.85 倍)× 1 兆円あたり 57.6 億円(手数料率 15% 減)、営業利益率 12%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)189 億円。全体の PER 11.7 倍、時価総額 696 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重な指摘の中間で、最も起こりやすい筋書き。相場の山を平準化して置いた。
やや悲観 21% 顧客の世代交代で残高が伸びず、利益が半減する 利益 26 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 460 円305 億円
顧客の世代交代が進み、相続のたびに預り資産が他社へ流れる。投信の残高は実質で増えず、手数料率は 15% ほど下がる。
売買代金は 3 割ほど減る。個人の売買はネットに移り、日本株の提案も差がつきにくくなる。
費用は物価で上がる。拠点の統廃合に踏み切るが、費用の下げは売上の下げに追いつかない。営業利益は 25 億円前後まで落ちる。足元の 54 億円の半分に満たない水準である。
ROE は 4% 前後で、資本コストを大きく割る。普通配当は守るが、自社株買いは止まる。M&A で規模を求める動きも出るが、成果は出にくい。株式市場は、この会社を高い倍率で評価する理由を見つけられない。
- 投信連動(信託報酬・募集手数料):数量 1.2(株式投信の預り残高(兆円・実質))× 価格 128(残高 1 兆円あたりの収入(億円・名目))→ 売上 155 億円・営業利益 22 億円。投信残高 1.21 兆円(実質で横ばい)× 1 兆円あたり 128 億円(手数料率 15% 減)、営業利益率 14%
- 株式売買ほか(委託・引受・トレーディング・金融収支):数量 1.1(日本株の年間売買代金(兆円・実質。推定))× 価格 54(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。売買代金 1.12 兆円(実質 0.7 倍)× 1 兆円あたり 54.2 億円(手数料率 20% 減)、営業利益率 6%
倍率:ROE 3.9%(事業の純利益÷自己資本)。k 8.75% を大きく下回り、稼ぐ力が細る筋書きなので、上限 11.1 倍の 7 割へ引き上げず、6.8 倍に置いた。
確率:顧客の高齢化と手数料の低下は、すでに進んでいる変化。過去の ROE が低かったことも合わせ、強気側と同じ程度に置いた。
悲観 10% 相続でネットへ流出し、対面の営業が赤字になる 利益 −8 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 421 円279 億円
相続で資産の流出が止まらず、相場の下落も重なる。投信の残高は実質で 2 割減り、信託報酬も減る。
売買代金は半分に縮み、営業利益は赤字になる。ネット証券へ移った顧客は戻らない。営業員の流出も止まらず、人件費の削減と拠点の閉鎖が後手に回る。賃借の拠点は契約が残る間、固定費として重くのしかかる。
普通配当は最低限になり、自社株買いは止まる。
株式市場は、もう優良な会社とは見ない。保有株の売却と、顧客基盤の譲渡が値の下支えになる。大手や地銀系による買収・再編に組み込まれる可能性も出る。厚かった純現金も、赤字の穴埋めと拠点の整理で目減りする。
- 投信連動(信託報酬・募集手数料):数量 1.0(株式投信の預り残高(兆円・実質))× 価格 118(残高 1 兆円あたりの収入(億円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 9 億円。投信残高 0.968 兆円(実質 0.8 倍)× 1 兆円あたり 117.5 億円(手数料率 22% 減)、営業利益率 8%
- 株式売買ほか(委託・引受・トレーディング・金融収支):数量 0.8(日本株の年間売買代金(兆円・実質。推定))× 価格 51(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 −10 億円。売買代金 0.8 兆円(実質 0.5 倍)× 1 兆円あたり 50.9 億円(手数料率 25% 減)、営業利益率 −25%
倍率:事業の稼ぐ力は赤字で、売れる資産の方が大きい。今の自己資本 513 億円に PBR 0.544 倍を掛け、下の床の 279 億円に合わせた。
確率:相続による流出と大型の相場下落が重なる複合の筋書き。起これば損失が深く、手数料の低下も続くので 1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
投信連動(信託報酬・募集手数料)
株式投信の信託報酬と募集手数料。ファンドラップを含む。残高に連動して毎年入る収入が中心。
| 数量株式投信の預り残高(兆円・実質) | 価格残高 1 兆円あたりの収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 112 | 136 | 31 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 136 | 197 | 51 |
取り方:2026 年 3 月期の信託報酬 84 億円と投信の募集手数料 52 億円の合計 136 億円。期末の株式投信残高 1 兆 2,104 億円(有価証券報告書)で割ると 1 兆円あたり 112.4 億円(残高の約 1.1%)。数量は物価を除いた実質の残高、物価 3% は価格に入れた。営業利益 31 億円は費用の按分を推定した値で、開示はない。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
株式売買ほか(委託・引受・トレーディング・金融収支)
日本株の委託手数料が中心。引受、トレーディング損益、信用取引の金融収支などを含む。相場と売買の活発さで大きく振れる。
| 数量日本株の年間売買代金(兆円・実質。推定) | 価格売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.6 | 51 | 81 | 23 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 58 | 78 | 9 |
取り方:委託手数料 73 億円と、引受・トレーディング・金融収支などの残り約 8 億円(営業収益 217 億円から投信連動の 136 億円を引いた分)の合計 81 億円。売買代金は開示がないため、委託手数料率を平均 0.45% として約 1.6 兆円と推定し、1 兆円あたり 50.6 億円とした。数量は物価を除いた実質。営業利益 23 億円は按分の推定で、2 つの合計 54 億円は全社の営業利益に合わせた。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
相場の下落と預り資産の目減り
投信の残高も信託報酬も、評価額に連動する。株価が 3 割下がれば、収入も同じだけ減る。売買の収入はさらに大きく落ちる。過去 10 年のうち 3 期は営業利益が 10 億円を割った。
手数料の低下
ネット証券の売買手数料はゼロに近い。対面にも値下げの圧力がかかる。低コストの投信が主流になれば信託報酬の率も下がり、残高が増えても収入が伸びない。
顧客の高齢化と相続による流出
対面の顧客は高齢層に偏る。相続された資産は、子の世代がネット証券へ移すことが多い。担当者との関係は引き継がれにくく、預り資産が静かに減る恐れがある。
人件費の上昇と営業員の確保
物価が上がれば賃金も上がる。販売費・一般管理費は 163 億円で、前期比 7% 増えた。営業員を増やすほど固定費は重くなる。売上が物価ほど伸びなければ利益率が削られる。
特別配当の終了
特別配当は 2028 年 3 月期で終わる。普通配当は性向 50% 以上だが、今の水準より還元は下がる。還元の厚さを理由に買ってきた株主が離れる恐れがある。
日本株の一本足
営業は日本株の個別銘柄の提案に絞っている。日本株の相場が長く崩れれば、売買も預り資産も同時に傷む。外国株や債券で穴を埋める力は小さい。
売却益に頼った利益の質
保有する上場株の売却益は、繰り返せる利益ではない。会社は政策保有株の削減を進めており、売れば利益は出るが、その分は先に食い尽くす。利益の中身を割り引いて見る必要がある。
今後の分かれ目
- 株式投信の残高が 1 兆 5 千億円を超え、信託報酬が販管費の 6 割を賄ったら
- 残高連動の収入が実際に育った証拠として、やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- 相場が 3 割下がり、投信の残高が 1 兆円を割り込んだら
- 安定収入という見方を取り下げ、やや悲観の確率を上げる。
- ファンドラップの残高が目立って伸びたら
- 売買に頼らない収入が増えるので、中立の利益率を少し上に直す。
- 特別配当の終了後に、普通配当の性向が 50% を割ったら
- 還元の約束が崩れたことになる。資本配分への評価を下げ、中立の還元を減らす。
- 投信の純増が止まり、純資金の流出に転じたら
- 顧客の世代交代の損失が出ているので、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 大手証券や地銀系による買収・資本提携が発表されたら
- 評価は買収の条件に近づく。条件次第で値は上にも下にも動く。
見ておくもの
- 株式投信の残高と、相場の増減を除いた純増(純資金の流出入)
- 信託報酬が販管費をどれだけ賄うか(会社の目標は 2029 年 3 月期に 55%)
- 営業利益率が 20% を保てるか(相場が崩れた時の落ち方)
- 特別配当の終了後の還元と、政策保有株の削減の進み方
倍率と資本コストの決め方
利益は投信連動と株式売買ほかの二つに分け、残高と売買代金は物価を除いた実質で置き、物価 3% は 1 兆円あたりの収入(価格)に入れた。倍率は k 8.75%(基本 7.5% に循環 +0.75%、値決め力 +0.25%、寿命 +0.5%)と ROE から式で出し、今の PER・PBR や過去の PBR の底からは置かなかった。今の時価総額(PBR 約 1.6 倍)に寄せず、中立の ROE 7% 前後の事業にそのまま式を当てた結果、価値は今を大きく下回った。余った現金は 150 億円だけ分けて足し、戻り方は実績どおり 1.0 とした。店舗の多くは賃借で、新リース会計基準(2028/03 期から)で営業利益と負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-19 の見直しで、持ち合い株の含み益(評価差額金 78 億円の半分)を余った現金に足し、余った分を除いた事業の ROE が k を超えるため中立の PER を 1÷k の 11.1 倍にした。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。