結論
HSホールディングスは、モンゴルのハーン銀行の約5割を持つ持株会社だ。利益のほとんどはこの銀行の持分法利益で、本業の営業利益はほぼゼロである。ほかにブランド品のリユース店、キルギスとロシアの銀行を持つ。
筆者の結論は、事業の稼ぐ力に比べて今の値段は安い、というものだ。ただしそれは、安さが報われる場合に限る。ハーン銀行の持分の市場価値だけで、当社の時価総額を上回っている。にもかかわらず安いままなのは、資本の使い方に信用がないからだ。
最大の山場は2026年末である。モンゴルの法律は、1つの株主が銀行の株の20%超を持つことを認めない。当社は約50%だから、期限までに約3割を手放す必要がある。持分法利益はそのぶん細り、代わりに数百億円の現金が入る。
10年後の中立では、ハーン銀行の持分利益は今より3割ほど小さく、現金が積み上がった会社になる。この現金が株主に戻るか、割高なリユース買収や関係者向けの貸付に消えるかで、価値は大きく変わる。配当性向が2%台、自社株が発行済みの27%という実績は、前者を信じる材料に乏しい。
確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を大きく上回る。それでも筆者が「手放しの安さ」と言わないのは、現金の戻り方を半分に見積もっているからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは3つだ。
第1に、事業の質。ハーン銀行は預金の厚い、高収益の銀行である。ただしその持分は少数株主の立場で、経営に口を出せず、配当も決められない。新興国の1行に利益が集中している点は、分散の利かない弱みでもある。
第2に、資本の使い方。ここが最も悪い。稼いだ利益の97%以上を内部に残し、その使い道は買収や貸付で、成果が見えない。バリュー投資家は、現金を預かる経営者がオーナーのつもりで動くかを重く見る。この会社は、そうは見えない。
第3に、安全域。ハーン銀行の持分の市場価値だけで、当社の時価総額を上回る。これは強い安全域に見える。しかし20%への引き下げ、MNTの下落、現金の使い方の3つが同時に悪い方向へ動く筋書きがあり、その場合は帳簿の資産も大きく目減りする。
結論として、事業の稼ぐ力から見れば本質価値は今の値段を上回る、というのが筆者の見立てだ。ただし、資本配分に信用がない会社の現金は満額で数えない。安さの半分は、この信用の欠如への正当な割引と見ている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はモンゴルのハーン銀行である。農村から都市まで支店網を持つ、国内最大級の個人向け銀行だ。2025年の純利益は約6,950億MNT(トゥグルグ)、自己資本利益率は27%前後と高い。当社は2003年に取得し、2023年のモンゴル取引所への上場後は持分法の関連会社として49.77%を持つ。
この持分利益が、当社の経常利益の8割超を占める。連結の営業損益は赤字に近いが、それは持分法の利益が営業利益の外に置かれるためで、実態は「ほぼ1行の持株会社」である。
2つ目の柱はリユースだ。子会社のSTAYGOLDがブランドの時計やバッグを買い取り、卸し、店で売る。売上は前期のセグメントで348億円、直営は50店前後に広がった。2025年4月にはPRICING DATAを3.5億円で買い、連結した。ただし営業利益はほぼゼロ圏で、利益の柱とはまだ言えない。
残りは、キルギスのキルギスコメルツ銀行(議決権52.9%の連結子会社)と、ロシアのソリッド銀行(46.8%の持分法)である。前者は融資を絞って貸倒引当金を積み、赤字が続いた。後者は高金利のロシアで増益だが、制裁の下にあり、利益を円で受け取れる保証はない。
親会社が受け取るのは、各社からの配当と受取利息だ。ハーン銀行は利益の6割近くを配当に回す年もあり、現金はこの配当から生まれる。
優良さと弱いところ
優良さは、ハーン銀行という1つの資産に大きく依存している。銀行自体は強い。支店網と預金の厚みで、資金を安く集められる。自己資本利益率は27%前後と、日本の銀行とは桁が違う。
一方、当社がこの強みを自分のものにできているかは別の話だ。持分は49.77%でも、経営を握っているわけではない。配当の額も、モンゴルの規制と銀行の判断で決まる。
弱みは4つある。第1に、モンゴル経済は石炭・銅など資源の輸出に依存し、通貨のMNTは長期で円に対して下がってきた。円で見た利益は、現地の成長ほど増えない。第2に、法律で持分を20%以下に下げなければならず、稼ぎの源が自動的に細る。第3に、ロシアの銀行は制裁と為替のリスクを抱える。第4に、経営の資本配分が疑われている。
株主提案を出した投資会社は、STAYGOLDの買収額が買収前の純資産の十数倍だったこと、赤字のPRICING DATAを買ったこと、関係者向けの貸付があったことを指摘している。これは当事者の主張だが、配当性向2.5%、自社株が発行済みの27%という実績とあわせると、利益が株主に届きにくい会社だとは言える。
バリュー投資の目で見ると、資産は良く、経営の信用は低い。この組み合わせでは、資産の価値を満額で評価できない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ハーン銀行が属するモンゴルの銀行業は、人口約350万人の小さな市場で、上位5行が利益の大半を握る。貸出は個人の消費・住宅ローンと牧畜・小口の事業向けが中心で、預金は個人から集める。金利が高く、国の経済成長が名目で年10%を超えるため、銀行の利益も大きく伸びてきた。
成長の源は2つある。1つは、預金と貸出が経済規模に比べてまだ浅いこと。もう1つは、現金決済からスマートフォンの決済への移行で、手数料収入が増えることだ。
一方で逆風もある。政府が住宅ローンなどに低利の公的制度を設けるため、民間銀行の貸出利ざやには上限がかかりやすい。資源価格が下がると外貨が不足し、MNTが下がり、貸倒れが増える。2020年の新型コロナ時にも、貸出の伸びは止まり、利益が落ちた。
制度面の大きな変化は、2021年の銀行法の改正である。1つの株主とその関係者が持てるのは20%まで、という上限を決め、期限は2026年末まで延ばされた。34%に緩め、期限も延ばす改正案が出ているが、成立はしていない。
リユースは、日本の中古ブランド市場が拡大している分野だ。大手のコメ兵、ブランディア、大黒屋、セカンドストリートなどが並び、買取の仕入れ競争は厳しい。売上が伸びても利益率は薄い。
銀行持分とリユースは業界がまるで違う。当社は共通の成長を狙うというより、持分の現金をリユースに回して、薄い利益の事業を買い足している形だ。
資本政策と M&A
資本政策が、この会社の最大の問題である。年間の配当は3億円ほどで、配当性向は2.5%にすぎない。自己株式は発行済み株式の27%に達し、その使い道は明らかでない。
現金は主に3つに使われてきた。1つはリユースの買収(STAYGOLD約13億円、PRICING DATA約3.5億円)、2つ目は関係会社への貸付や出資、3つ目は大東銀行株などの有価証券だ。投資会社が試算した大東銀行株の収益率は、年6%台とされる。
2026年6月の総会では、投資会社が出した、3年の中期経営計画の策定を義務づける定款変更案が、否決された。筆頭株主のウプシロン投資事業有限責任組合(議決権42.2%)が会社側に付いた形で、少数株主の声は通りにくい。
これから起きるのは、ハーン銀行の持分を約3割手放すことだ。期限は2026年末である。当社が公式に売却方針を開示したとは確認できていない。売却すれば、推定で300億円台の現金が入る。これを配当や自社株買いで株主に戻すのか、買収に使うのかが、価値を決める最大の分かれ目になる。
筆者は、この現金を半分しか株主のものと数えない。実績がそれを求めるからだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ハーン銀行の持分だけで、当社の時価総額を上回る。同行は自己資本利益率が27%前後で、モンゴルの経済成長と金融の深まりを背景に、利益が10年で2倍近くになる余地がある。法律で持分を20%に下げても、売却で入る現金は300億円台にのぼり、残る20%の持分も中立で年100億円近い利益を生む。
問題は現金の行き先だが、ここは変わる可能性が高い。投資会社がすでに株主代表訴訟を起こし、取締役会議事録の閲覧を裁判所に認めさせた。ガバナンスへの圧力は強まっており、売却で現金が入れば、配当や自社株買いの要求は避けにくい。自社株27%の消却と、保有ハーン株の現物分配という案も出ている。
リユースも、中古ブランド品の市場拡大に乗って売上が伸びている。店舗網が育てば、利益率が3〜4%に上がり、年30億円ほどの利益を生む。MNTが安定し、ハーン銀行が成長を続けるなら、利益は今の水準を保ち、現金は株主に戻る。この筋書きの価値は、今の値段の数倍になる。
慎重な見方
安いのには理由がある。利益の9割は1つの新興国の1行に依存し、しかもその持分は法律で3割減る。モンゴル経済は資源価格に左右され、MNTは円に対して年5%前後で下がってきた。円で見た利益は、現地の成長ほど伸びない。2020年のように貸倒れが増えれば、27%の自己資本利益率は一気に崩れる。
もっと重いのは経営だ。配当性向が2%台で、株主への還元は10年にわたって事実上ゼロだった。買収は買収前の純資産の十数倍の価格で行われ、関係者への貸付もある。2026年の総会で、投資会社の提案が筆頭株主の42.2%の議決権で否決されたことは、少数株主の声が反映されにくいことを示した。
売却で入る現金は、戻ってこない可能性が高い。リユースの追加買収、ロシアへの再投資、不透明な貸付に回れば、現金は額面を下回る価値でしか数えられない。ロシアのソリッド銀行は、制裁で利益を円で受け取れる保証がない。キルギスの銀行は赤字だ。
20%への引き下げが期限に間に合わず、投げ売りに近い価格になる筋書きもある。帳簿の資産が大きくても、それを株主が手にできないなら、安いのは当たり前だ。
どちらに重みを置いたか
資産の質は強気の見方が優勢で、資本配分の信用は慎重な見方が優勢である。両者の分かれ目は、売却で入る現金が株主に届くかにある。現金の戻り方を半分と置き、ハーン銀行の成長も、MNTの下落を織り込んで円で見て年5%台に抑えた。確率は、中立に最も厚く置き、悪いほうの筋書きに3割強を寄せた。好転の可能性は残るが、これまでの実績が重いので、強気の筋書きには1割に満たない確率しか置いていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,778 円1,438 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 948 円285 億円)。 今の値に割り戻すと 2,634 円793 億円、今との差 +143.2%、 期待の年率 +18.1%(資本コスト 9.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,482 円3,155 億円 | 3,472 円1,045 億円 | +1,188.5% | +29.1% | 977 円294 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,339 円2,510 億円 | 2,193 円660 億円 | +872.5% | +25.5% | 2,106 円634 億円 |
| 中立 | 38% | 5,013 円1,509 億円 | 548 円165 億円 | +413.5% | +17.8% | 2,113 円636 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,750 円527 億円 | 213 円64 億円 | +81.3% | +6.1% | 432 円130 億円 |
| 悲観 | 13% | 665 円200 億円 | 83 円25 億円 | −31.0% | −3.6% | 97 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,778 円1,438 億円 | 948 円285 億円 | +428.7% | +18.1% | 5,726 円1,723 億円 |
今の株価時価総額 1,083 円326 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 持分を34%で残し、現金も株主に戻る 利益 231 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 10,482 円3,155 億円
モンゴルが上限を34%に緩め、当社は持分を約34%まで下げて残す。売却で約170億円が入り、投資会社の圧力で、10年の利益の半分を超える額が配当と自社株買いで戻る。自社株の消却も進む。ハーン銀行は金融の深まりとスマホ決済で実質の総資産が1.8倍に伸び、総資産利益率も2.8%を保つ。MNTは物価差の分だけ下がるにとどまる。リユースは店が80に増え、利益率が4%まで上がる。ロシアの持分も利益を円で受け取れる。当社は『モンゴルの銀行の優良な持分と、現金を株主に返す会社』として評価される10年になる。
10年後のハーン銀行は、預金と貸出が経済に深く浸透した成熟期に入り、利益の伸びは落ち着く。当社はその時点で、少数株主の持分としては最も条件の良い形、つまり配当が安定して出て、現金は株主に戻る形になっている。ここまで行けば、ガバナンスの割引は大きく縮む。
- ハーン銀行(モンゴル)の持分利益:数量 14.6(ハーン銀行の総資産のうち当社持分の分(兆MNT・実質。今の通貨の値打ちで測る))× 価格 16(実質1兆MNTあたりの利益(億円)=総資産利益率×換算定数420.9×円換算の物価指数)→ 売上 230 億円・営業利益 230 億円。実質総資産42.8兆MNT(今の1.8倍)、持分34%、総資産利益率2.8%、円換算指数1.34
- リユース事業(STAYGOLD・PRICING DATA):数量 80.0(店舗数(直営+加盟、推定))× 価格 13(1店あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,056 億円・営業利益 42 億円。80店 × 1店13.2億円(今の1.5倍)、営業利益率4%
倍率:事業の純利益 228 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.8% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 12.97 倍、時価総額 3,155 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:期限の延長・上限の緩和という法改正、ガバナンス圧力による還元の強化、ハーン銀行の高成長がすべて重なる必要があり、今の実績からは遠い。
やや楽観 20% 34%で残し、成長は堅調だが現金の戻りは半分 利益 189 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 8,339 円2,510 億円
34%への緩和と期限の延長が成立し、当社は持分を34%まで下げる。ハーン銀行は実質で総資産が1.65倍になり、総資産利益率は2.7%に下がる。貸出利ざやの競争と公的な低利制度が効く。MNTは物価差より少し速く下がり、円で見た価値は1.28倍にとどまる。リユースは70店、利益率3.5%で年30億円ほどの利益になる。配当は利益の4割まで上がるが、関係者向けの貸付や買収にも現金を使い、戻り方は半分のままだ。
ロシアの持分は制裁の下でも利益が出るが、円に直して受け取れるのは一部にとどまる。キルギスの銀行は赤字を脱し、小さな黒字になる。全体として、悪いことは起きないが、驚くほど良いことも起きない10年である。当社は『着実に稼ぐが、現金の使い方に疑問が残る持株会社』のまま評価される。
- ハーン銀行(モンゴル)の持分利益:数量 13.4(ハーン銀行の総資産のうち当社持分の分(兆MNT・実質。今の通貨の値打ちで測る))× 価格 15(実質1兆MNTあたりの利益(億円)=総資産利益率×換算定数420.9×円換算の物価指数)→ 売上 194 億円・営業利益 194 億円。実質総資産39.3兆MNT(今の1.65倍)、持分34%、総資産利益率2.7%、円換算指数1.28
- リユース事業(STAYGOLD・PRICING DATA):数量 70.0(店舗数(直営+加盟、推定))× 価格 12(1店あたり売上(億円・名目))→ 売上 862 億円・営業利益 30 億円。70店 × 1店12.3億円(今の1.4倍)、営業利益率3.5%
倍率:事業の純利益 185 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 11.97 倍、時価総額 2,510 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:34%への緩和は提案段階で成立していないが、モンゴル側の事情から否定はできない。成長と還元の両方が中程度に実現する筋書き。
中立 38% 20%まで下げ、現金は半分しか戻らない 利益 98 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 5,013 円1,509 億円
当社はハーン銀行の持分を2026年末までに20%まで下げ、約350億円を受け取る。残る20%の持分利益は、銀行の成長で今の6割ほど(94億円)になる。ハーン銀行は実質の総資産が1.5倍、総資産利益率は競争で2.5%に下がり、MNTは物価差より1%速く下がる。リユースは66店、利益率3%で年23億円。ロシアの持分とキルギスの銀行は、足し引きで小さな赤字になる。配当は利益の15%程度に上がるが、現金の大半は内部に残り、積み上がった現金を使う買収は薄い収益に終わる。10年後の当社は、『20%の銀行持分と現金の多い会社』であり、成長も配当も目立たない。
- ハーン銀行(モンゴル)の持分利益:数量 7.1(ハーン銀行の総資産のうち当社持分の分(兆MNT・実質。今の通貨の値打ちで測る))× 価格 13(実質1兆MNTあたりの利益(億円)=総資産利益率×換算定数420.9×円換算の物価指数)→ 売上 94 億円・営業利益 94 億円。持分分の実質総資産17.8兆MNT(持分20%、総資産1.5倍)、価格は総資産利益率2.9→2.5%と円換算1.25倍で今の1.07倍(物価1.34倍に届かないのはMNTの実質下落と利ざや競争のため)
- リユース事業(STAYGOLD・PRICING DATA):数量 66.0(店舗数(直営+加盟、推定))× 価格 12(1店あたり売上(億円・名目))→ 売上 778 億円・営業利益 23 億円。66店 × 1店11.8億円(今の1.34倍)、営業利益率3%
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)500 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 1,509 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:法律どおり20%まで下げる筋書きが最も確からしい。上限の緩和は未成立で、すでに期限は一度延ばされている。現金の使い方は実績どおり、還元が薄いまま。
やや悲観 22% 期限に追われて安く売り、成長は鈍る 利益 42 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 1,750 円527 億円
買い手が限られ、当社は期限に間に合わせるため約25%安い価格で持分を20%まで下げ、約240億円を受け取る。ハーン銀行は資源価格の下落と公的低利制度の拡大で貸出が伸び悩み、実質の総資産は1.3倍、総資産利益率は2.0%に下がる。MNTは物価差の2倍の速さで下がり、円で見た価値は1.15倍にとどまる。リユースは競争が厳しく、店は増えず利益率も1%に落ちる。ソリッド銀行は制裁で損失計上、キルギスの銀行も赤字が続く。受け取った現金の一部を失敗した買収に使い、配当も絞る。
この筋書きの当社は、20%の持分が生む利益が今の4割に満たず、リユースの利益もほとんど出ない。現金は残るが、それを株主に戻す仕組みは弱いまま、少数株主の発言力も上がらない。事業の稼ぐ力に比べて資産が大きい会社として、割り引いて見られ続ける。
- ハーン銀行(モンゴル)の持分利益:数量 6.2(ハーン銀行の総資産のうち当社持分の分(兆MNT・実質。今の通貨の値打ちで測る))× 価格 9.68(実質1兆MNTあたりの利益(億円)=総資産利益率×換算定数420.9×円換算の物価指数)→ 売上 60 億円・営業利益 60 億円。実質総資産30.9兆MNT(今の1.3倍)、持分20%、総資産利益率2.0%、円換算指数1.15
- リユース事業(STAYGOLD・PRICING DATA):数量 53.0(店舗数(直営+加盟、推定))× 価格 9.86(1店あたり売上(億円・名目))→ 売上 523 億円・営業利益 5 億円。53店 × 1店9.9億円(今の1.12倍)、営業利益率1%
倍率:事業の自己資本利益率は3.0%で k 9% 以下のため、稼ぐ力から見て上限の約6割の6.0倍に置いた。現金は買収で目減りするため300億円とし、戻り方0.5で足した。
確率:期限に間に合わせるため買い手が限られ、割引で売る筋書き。モンゴルの景気後退と、ロシアの損失、買収の失敗が重なる。
悲観 13% 通貨危機と持分の投げ売りで資産が痩せる 利益 −18 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 665 円200 億円
資源価格が下がってモンゴルが外貨不足に陥り、MNTが物価差を大きく上回る速さで下がる。ハーン銀行は貸倒れが増え、総資産利益率は1.0%まで落ちる。当社は持分を投げ売りに近い価格で20%に下げ、受け取った現金も失敗した買収や関係者への貸付に消える。ソリッド銀行の持分は制裁で回収できず、損失になる。リユースも赤字に陥る。当社は『利益の乏しい持株会社』となり、帳簿の資産は大きく減損される。それでも20%の銀行持分と現金が残るため、資産の価値はゼロにはならない。
配当は事実上止まり、投資会社との対立も長引く。上場を続けるかどうかの議論が出て、買い取りの提案が出るとしても、価格は帳簿を大きく下回る。それでも資産がゼロにはならない点だけが、この筋書きの最後の支えになる。
- ハーン銀行(モンゴル)の持分利益:数量 4.8(ハーン銀行の総資産のうち当社持分の分(兆MNT・実質。今の通貨の値打ちで測る))× 価格 3.58(実質1兆MNTあたりの利益(億円)=総資産利益率×換算定数420.9×円換算の物価指数)→ 売上 17 億円・営業利益 17 億円。実質総資産23.8兆MNT(今と同じ)、持分20%、総資産利益率1.0%、円換算指数0.85
- リユース事業(STAYGOLD・PRICING DATA):数量 38.0(店舗数(直営+加盟、推定))× 価格 8.80(1店あたり売上(億円・名目))→ 売上 334 億円・営業利益 −3 億円。38店 × 1店8.8億円(今と同じ)、営業利益率−1%
倍率:純利益が赤字のため、稼ぐ力ではなく残る資産で測る。今の自己資本1,001億円に対し約0.2倍とした。減損で自己資本が916億円に減る前提でも、今の自己資本を下回る。
確率:資源価格の急落、MNTの急落、貸倒れの急増、ロシアの制裁が重なる複合の筋書き。一度崩れると10年で戻りにくい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ハーン銀行(モンゴル)の持分利益
モンゴル最大級の個人向け銀行の利益のうち、当社の持ち分。持分法で営業の稼ぎとして数える。
| 数量ハーン銀行の総資産のうち当社持分の分(兆MNT・実質。今の通貨の値打ちで測る) | 価格実質1兆MNTあたりの利益(億円)=総資産利益率×換算定数420.9×円換算の物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.9 | 12 | 145 | 145 |
| 10 年後 中立 | 7.1 | 13 | 94 | 94 |
取り方:2025年のハーン銀行の純利益約6,950億MNT・総資産23.8兆MNT(総資産利益率2.9%)を円に直した(平均23.76MNT/円)。数量はモンゴルの物価を除いた実質の総資産に当社の持分比率49.77%を掛けた分、価格は総資産利益率と為替・物価の円換算指数。持分比率が20%へ下がる分は数量の側に入る。モンゴルの物価は年7%前後、MNTは円に対して年5%前後で下がる前提で、円で見た実質の値打ちは10年で1.25倍前後(日本の物価の1.34倍より低い)に置いた。MNTの実質的な下落が物価差を年1%ほど上回ってきた実績による。
リユース事業(STAYGOLD・PRICING DATA)
ブランド品の買取・卸売・小売。直営店と加盟店を全国に広げている。
| 数量店舗数(直営+加盟、推定) | 価格1店あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 53.0 | 8.80 | 466 | 5 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 12 | 778 | 23 |
取り方:前期のセグメント売上348億円に、新規7店とPRICING DATA(2025年4月に連結)が加わったとして、直営約48店と加盟店5店前後で1店あたり約8.8億円と推定した(開示値ではなく推定)。営業利益は前期の0.4億円から小幅に改善したとみて5億円。
リスクと懸念
持分を20%以下へ下げる期限(2026年末)
1株主20%の上限は法律で決まっている。当社が約3割を売るには買い手が要り、取引所の流動性は限られる。間に合わなければ制裁や議決権の制限が起きうる。売却価格が割引になるほど、持分の値打ちと現金が減る。
モンゴル経済とMNTの下落
石炭・銅の輸出に依存し、MNTは長期で円に対して年5〜6%下がってきた。現地で利益が増えても、円で受け取ると目減りする。貸倒れも資源価格の下落で増える。2020年にも貸出の伸びが止まった。
現金の使い道(資本配分)
配当性向は2%台、自社株は発行済みの27%。買収は買収前の純資産の十数倍の価格で、関係者向けの貸付もあると投資会社が主張している。売却で入る数百億円がどこへ行くかが、価値の大半を決める。
ロシアのソリッド銀行
46.8%の持分法で、制裁と為替の影響を受ける。利益は帳簿に出ても、円で受け取れる保証がない。関連の損失や出資の凍結は、一度に起きる可能性がある。
リユースの薄利と買収の割高
売上は伸びても営業利益はほぼゼロ圏で、仕入れの競争が厳しい。買収した会社の利益が思ったほど出なければ、のれんの減損が起きる。
少数株主の声が通りにくい
筆頭株主が議決権の42.2%を持ち、2026年の総会でも株主提案は否決された。ガバナンスの改善が会社の自発ではなく外圧頼みで、時間がかかる。
今後の分かれ目
- ハーン銀行の持分の売却時期・価格・買い手が開示されたら
- 売却価格が市場価値の9割以上なら、現金の入りは中立のとおり。大幅な割引なら、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 売却で入る現金について、配当・自社株買いの額や自社株の消却が公表されたら
- 戻り方0.5を1.0に近づけ、強気の筋書きに重みを移す。
- モンゴルが上限を34%に緩める改正を成立させたら
- 持分を34%で残す筋書きに重みを移す。売却額は小さくなるが、持分利益は大きく残る。
- MNTが円に対して年10%を超える速さで下がり、貸倒れが増え始めたら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、総資産利益率を下方修正する。
- 売却益を原資に、リユースや関係会社の買収が割高な価格で行われたら
- 現金の戻り方を下げ、中立の価値を引き下げる。
- ロシアの持分の売却や減損が開示されたら
- 損失の額だけ価値を引き、制裁の影響が広がるなら悲観側に寄せる。
見ておくもの
- ハーン銀行の持分比率の推移と、2026年末の期限への対応の開示
- ハーン銀行の四半期の純利益、総資産利益率、貸倒れ、MNTの対円レート
- 配当と自社株買い、自社株の消却や使い道の発表
- 取締役会議事録・株主代表訴訟・関連当事者取引の結果
倍率と資本コストの決め方
事業をハーン銀行の持分とリユースに分け、数量(ハーン銀行の実質の総資産、店舗数)と価格(総資産利益率×持分比率×円換算、1店あたり売上)で10年を積んだ。倍率は資本コスト9%(基本7.5%+品質2.5%)と g 4% の式から決め、今の株価やハーン銀行のモンゴル市場での倍率には寄せていない。法律による持分の縮小は筋書きの売却額と持分比率で表し、資本コストには重ねていない。現金は戻り方0.5を掛けた。新リース会計基準は店舗の賃借に関わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→12.97 倍・やや楽観 PER 8.5→11.97 倍・中立 PER 7→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。