結論
スパークスは、日本株を中心に運用資産を預かり、残高に応じた手数料と成果報酬を得る独立系の運用会社だ。運用資産は約2.6兆円、営業利益率は4割台半ばと高い。
筆者の結論は「ほぼ適正」。本質価値は今の時価総額を5%ほど上回るだけで、割安とは言えない。いちばんの理由は、利益の源が株式相場と、一人の創業者に乗っていることだ。
強みは三つある。上場株のほかに再エネ発電所と未上場株のファンドを持ち、収益が散っていること。長期ファンドは実質的に解約がなく、手数料が安定すること。成果報酬の付く残高が3割台あり、うまくいけば利益が跳ねることだ。
足元の勢いは強い。運用資産は2025年3月期末の1.9兆円から、2026年8月末に2.7兆円まで増えた。ただ、増分の多くは株価の上昇だと筆者は見る。手数料率は薄くなる方向にあり、相場が冷えれば残高も利益も戻る。
10年先の中立は、実質の残高が4割ほど増え、純利益は今の1.7倍になる姿だ。創業者と資産管理会社で株の過半を持つので経営は安定するが、後継と資本政策は外から見えにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは二点だ。この利益は10年後も続くか。続くなら、株主が自由に使える分はいくらか。
利益の質は良い。設備はほとんど要らず、稼いだ利益の大半を現金で株主に返せる。借金もない。資本をうまく使う事業という点で、筆者は好感を持つ。
ただし、利益の持続力は読みにくい。残高は株価に連動し、解約もある。運用の腕が人に宿るため、10年後に今の運用担当が残っている保証もない。わかりやすい事業とは言いにくい。
経営者は創業者で、会社の過半を持つ。利害は株主と重なる。一方で、後継の道筋は外から見えない。ここは安全域を厚く取る理由になる。
中立で今の値段と釣り合い、強気の筋書きは大きく上振れる。悲観の傷は、運用残高の流出という形で深いが、財務が軽いので存続は揺らがない。値段が十分に下がる局面があれば、手を出したくなる会社だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、預かった運用資産に掛かる手数料だ。年金や投資信託、富裕層から資金を預かり、運用して、残高の一定割合を毎年受け取る。運用がうまくいけば、成果報酬が上乗せされる。残高手数料率は手数料を引いた後で0.7%弱、成果報酬の付く残高は全体の3.5割だ。
事業は四本柱に分かれる。日本株式は残高の約7割で、ロング・ショート(割安株を買い割高株を空売りする手法)や長期厳選、中小型などの戦略を持つ。OneAsiaは韓国とアジアの株式で、残高は約3,100億円。実物資産は再エネ発電所を中心に約3,300億円。プライベート・エクイティ(未上場株ファンド)は約2,100億円だ。
残高の安定度は柱ごとに違う。上場株の投信は、解約もすぐ出る。一方、実物資産と未上場株ファンドは10年ほどの契約で、実質的に解約がない。残高手数料が毎年入るので、収益の土台が固くなる。
未上場株ファンドは、トヨタ自動車や三井住友銀行などが出資者に並ぶ。ベンチャー投資では、国内の資金調達規模で3位に付ける。宇宙関連に特化した2号ファンドも2024年に立ち上げた。
費用の大半は人件費だ。売上が増えても、人と拠点はそれほど増えない。だから残高が伸びる時は利益率が高く、縮む時は固定費が重くなる。2009年から2013年には赤字の期が4回あった。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、運用の腕に宿る「人」と、ファンドの長い契約にある。
運用の腕は本物だ。調査を積み上げて仮説を作る社風で、運用担当も自分で企業調査をする。残高手数料率が0.7%弱と、指数連動型より高いのは、その腕に払われる対価と読める。営業利益率は43〜46%で、SBIグループの運用会社の2割弱を大きく上回る。
ただし、堀は一本調子ではない。上場株のアクティブ運用は、安い指数連動型に押される構造にある。成績が落ちれば、解約は早い。堀として硬いのは、契約の長い実物資産と未上場株のファンドだ。残高の約2割にとどまる。
資本の使い方は評価できる。利益の5割強を配当に回し、自社株買いで自己株式も発行済みの約5%まで積んだ。自己資本比率は約7割、純現金もあり、財務は軽い。
弱みは二つ。ひとつは、創業者の阿部修平氏が筆頭株主で、運用の顔でもあること。もうひとつは、2026年3月期までに3兆円とした運用資産の目標に届かず、目標を改めたことだ。数字の置き方が甘かった前例になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
運用業の収益は、相場と資金の流れで決まる。株価が上がれば残高が増え、手数料も増える。逆の時は逆になる。
追い風は強い。公募投信の純資産総額は2026年9月末に361兆円で、16か月連続で資金が入っている。新NISAの積立が、残高を下から押し上げる。
ただ、流れ込む先は偏る。受け皿の中心は、手数料の安い指数連動型と、販売網を持つ大手だ。SBIグループの運用会社は残高6.7兆円で、その伸びは指数型が支える。アクティブ運用の代表格、SBIレオス・キャピタルワークスの残高は1.3兆円。スパークスの1.9兆円(2025年3月期末)は、中堅の上位にいる。
市場の大きさは、公募投信に年金などの機関投資家の委託を足したものだ。スパークスの残高2.6兆円は、公募投信だけで見ても1%に満たない。シェアが小さいぶん、数量の伸びしろはある。ただ、取れる残高は運用成績に縛られ、乗り換えも早い。
数量は、金融資産の積み上がりと株価で伸びる。実質の伸びは年数%が上限と筆者は見る。価格にあたる手数料率は、同業の値下げで薄くなる。実際、スパークスの率も2023年3月期の0.73%から0.67%まで下がった。
資本政策と M&A
還元は厚い。配当は利益の5割強で、2026年3月期は前の期より増配した。さらに、自己株式を発行済みの約5%まで積んでおり、配当と自社株買いで利益の大半を戻してきたとみる。
買収は少ない。2021年に野村ホールディングスと共同で、未上場企業に投資する投資法人の運用会社を作った。大きな買収で資本を使う会社ではない。運用会社は少ない資本で足りるので、利益の大半を返せる。
株主構成が最大の論点だ。阿部修平氏が約37%、その資産管理会社が約15%を持ち、合わせて5割を超える。経営は安定する。一方、TOBの芽は小さく、少数株主は創業者の判断に従うことになる。
運用資産の目標を3兆円としていたが、2025年3月期末では1.9兆円と届かず、目標を改めた。会社は2027年3月期の業績予想を出していない。相場次第で振れるので、出さない姿勢は理解できるが、外から見通しにくい。
還元の点検(P3 2026-10-19):配当5割強+自社株買いで利益の大半を戻す実績どおり(中立70%)。直さず。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
運用資産はまだ伸びる。2025年3月期末の1.9兆円から、2026年8月末には2.7兆円に届いた。日本株は企業統治の改善で資金が戻りつつあり、運用の腕に払う対価も高い。残高手数料率は0.7%弱、営業利益率は4割台半ばだ。
柱が四つあり、傷みにくい。再エネ発電所と未上場株のファンドは契約が10年ほどで、実質的に解約がない。残高手数料が毎年入り、利益の土台になる。未上場株では、国内の資金調達規模で3位に付ける。宇宙などの新しい分野のファンドが次々に立ち上がり、残高の積み上げが続く。
成果報酬の付く残高が3.5割あるのも大きい。相場が上向く局面で、利益が残高の伸びを超えて増える。未来創生ファンドでは、初めての成果報酬を2025年3月期に得た。ファンドが成熟するにつれ、成果報酬は厚みを増す。
財務は軽い。純現金があり、利益の大半を配当と自社株買いで返す。運用資産が10年で実質2倍近くになれば、純利益は今の3倍に近づく。
慎重な見方
利益は株価に乗った借り物だ。運用資産の増分の多くは相場の上昇で、相場が冷えれば残高も手数料も戻る。2009年から2013年は、赤字の期が4回あった。成果報酬は、好調な年にしか入らない。
手数料は下がる。アクティブ運用は、安い指数連動型に押される。残高手数料率はすでに0.73%から0.67%へ落ちた。販売会社が主導権を握る投信では、値下げの圧力が続く。
運用の腕は人に宿る。創業者が経営と運用の顔を兼ね、株の過半を握る。代替わりで運用担当が流れれば、残高は一気に出ていく。上場株の投信は解約が早く、長期ファンドの割合は2割ほどしかない。
目標の置き方にも癖がある。運用資産を2026年3月期までに3兆円とした目標は、届かず改めた。足元の高い営業利益率も、費用が人件費中心で、残高が縮めば固定費が重くのしかかる。10年後に今の利益率を保てる保証はない。
創業者への依存も重い。株の過半を握る人が経営を続ける間は安定するが、その先は誰にも読めない。運用の腕を買って預けた顧客は、人が変われば預け先を変える。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方が勝つ。契約の長いファンドと高い手数料率、軽い財務は本物だ。ただ、利益が相場と人に乗っている点は、慎重な見方の指摘が正しい。
確率は中立に35%、強気側に35%、慎重側に30%を置いた。相場の追い風は強いが、手数料率の低下と人への依存を重く見て、慎重側を厚めにした。上振れと下振れがほぼ釣り合い、本質価値は今の時価総額を少し上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,429 円1,752 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,480 円585 億円)。 今の値に割り戻すと 3,059 円1,210 億円、今との差 +22.3%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 8,597 円3,401 億円 | 2,096 円829 億円 | +327.7% | +15.6% | 1,283 円508 億円 |
| やや楽観 | 23% | 6,279 円2,484 億円 | 1,777 円703 億円 | +222.2% | +12.4% | 1,853 円733 億円 |
| 中立 | 35% | 4,606 円1,822 億円 | 1,524 円603 億円 | +145.2% | +9.4% | 2,146 円849 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,542 円610 億円 | 1,181 円467 億円 | +8.9% | +0.9% | 545 円215 億円 |
| 悲観 | 10% | 327 円129 億円 | 501 円198 億円 | −66.9% | −10.5% | 83 円33 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,429 円1,752 億円 | 1,480 円585 億円 | +136.4% | +9.0% | 5,909 円2,337 億円 |
今の株価時価総額 2,500 円989 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 相場と新ファンドの追い風が続き、残高が倍増 利益 181 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 8,597 円3,401 億円
日本株の資金流入が10年続き、実質の残高が今の2倍近くになる。企業統治の改善を背景に、運用の腕への評価も高いまま保たれる。指数連動型との競争は続くが、成果報酬の付く戦略が手数料の薄れを補う。
未上場株ファンドは、宇宙などの新分野で後継ファンドが次々に立ち、残高が2.5倍になる。ファンドが成熟し、成果報酬が毎年のように入る。実物資産も発電所の積み上げが続く。
運用担当の厚みは保たれ、創業者から次の世代への移行もうまく進む。営業利益率は5割近い水準で動かない。純利益は今の2.8倍、配当と自社株買いの合計は800億円を超える。会社にとって最良の10年になる。
- 日本株式・OneAsia(上場株式の運用):数量 32,000(平均運用資産残高(億円・今の株価水準で測った実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率+成果報酬の取り分 × 物価の倍率)→ 売上 337 億円・営業利益 162 億円。残高は実質で今の2.0倍、手数料率の落ち込みは1割に収まる、営業利益率48%
- 実物資産(再エネ発電所などの運用):数量 5,500(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 42 億円・営業利益 19 億円。残高1.75倍、手数料率は物価並み
- プライベート・エクイティ(未上場株ファンド):数量 5,200(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.03(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 146 億円・営業利益 67 億円。残高2.5倍、手数料率は物価並み、成果報酬が厚い
倍率:事業の純利益 181 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.79 倍、時価総額 3,401 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:株価の上昇、未上場株ファンドの新設、成果報酬の厚みが同時にそろう必要がある。起きれば大きいが、10年続けてすべてがうまく回る確度は高くない。
やや楽観 23% 相場に支えられ、四本柱がそろって伸びる 利益 139 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 6,279 円2,484 億円
実質の残高は、上場株が今の1.6倍、実物資産が1.5倍、未上場株が2.0倍に増える。新NISAの資金は主に指数連動型に流れるが、運用の腕への評価は保たれ、スパークスにも一定の資金が来る。
手数料率は、上場株で今から1割弱薄れる。ただ、成果報酬の付く残高が3割台を保ち、利益率の低下は小さい。未上場株では、新しいファンドが立ち上がるたびに残高が積み上がる。
創業者は経営の舵を握り続け、運用の人材も定着する。純利益は今の2.2倍、10年で配当と自社株買いを合わせて700億円ほどを返す。利益は相場とともに年ごとに振れるが、傾向は右肩上がりだ。
- 日本株式・OneAsia(上場株式の運用):数量 26,500(平均運用資産残高(億円・今の株価水準で測った実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率+成果報酬の取り分 × 物価の倍率)→ 売上 271 億円・営業利益 125 億円。残高は実質で今の1.63倍、手数料率は今の0.92倍×物価、営業利益率46%
- 実物資産(再エネ発電所などの運用):数量 4,800(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 36 億円・営業利益 16 億円。残高1.5倍、手数料率は今の0.97倍×物価
- プライベート・エクイティ(未上場株ファンド):数量 4,200(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.03(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 115 億円・営業利益 50 億円。残高2.0倍、手数料率は今の0.97倍×物価
倍率:事業の純利益 139 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.87 倍、時価総額 2,484 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の残高の勢いと、長期ファンドの積み上がりを踏まえた、実現しやすい上振れ。相場の追い風が半分ほど続く筋書き。
中立 35% 市場とともに伸び、手数料率はじわり低下 利益 108 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 4,606 円1,822 億円
実質の残高は、上場株が今の1.4倍、実物資産が1.3倍、未上場株が1.6倍になる。年にして3%台の伸びで、足元の急な伸びよりは落ち着く。新規の資金と、実質的な運用の上積みで支えられる。
価格は物価並みに上がるが、手数料率は1割ほど薄れる。指数連動型との競争と、販売会社の値下げ圧力が理由だ。営業利益率は今の46%から43%へ少し落ちる。
純利益は今の1.7倍、約110億円。配当と自社株買いで利益の7割を返し、10年で600億円ほどになる。創業者の代替わりは混乱なく進み、運用の人材も保たれる。会社は今より大きいが、利益が相場に振れる点も変わらない、普通に強い運用会社として評価される。
- 日本株式・OneAsia(上場株式の運用):数量 22,500(平均運用資産残高(億円・今の株価水準で測った実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率+成果報酬の取り分 × 物価の倍率)→ 売上 225 億円・営業利益 99 億円。残高は実質で今の1.38倍、手数料率は今の0.90倍×物価、営業利益率44%
- 実物資産(再エネ発電所などの運用):数量 4,200(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 31 億円・営業利益 13 億円。残高1.33倍、手数料率は今の0.95倍×物価
- プライベート・エクイティ(未上場株ファンド):数量 3,300(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.03(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 88 億円・営業利益 37 億円。残高1.6倍、手数料率は今の0.95倍×物価
倍率:事業の純利益 108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.87 倍、時価総額 1,822 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:残高の伸びと手数料率の低下、利益が相場に振れる性質を折り合わせた中心の筋書き。強気と慎重の言い分の落としどころ。
やや悲観 20% 指数連動型に押され、手数料率と成果報酬が削られる 利益 61 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,542 円610 億円
相場は伸び悩み、運用成績も平凡になる。成果報酬が入る年が減り、成果報酬の付く残高の比率も下がる。新しい資金は指数連動型に流れ、上場株の実質の残高は今とほぼ同じにとどまる。
手数料率は、上場株で今から2割ほど落ちる。販売会社が値下げを求め、同業のSBIグループの運用会社などとの競争も強まる。営業利益率は4割を切る。人件費は物価で上がるので、売上の減りが利益の減りを増幅する。
未上場株は新ファンドの募集が難航し、残高は小幅な増加にとどまる。純利益は今とほぼ同じ約60億円で、10年間横ばいになる。配当は保つが、自社株買いは細る。会社は黒字を保つが、成長企業ではなくなる。
- 日本株式・OneAsia(上場株式の運用):数量 17,000(平均運用資産残高(億円・今の株価水準で測った実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率+成果報酬の取り分 × 物価の倍率)→ 売上 151 億円・営業利益 57 億円。残高は実質で今の1.04倍、手数料率は今の0.80倍×物価、営業利益率38%
- 実物資産(再エネ発電所などの運用):数量 3,300(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 22 億円・営業利益 8 億円。残高1.05倍、手数料率は今の0.88倍×物価
- プライベート・エクイティ(未上場株ファンド):数量 2,300(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.02(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 55 億円・営業利益 17 億円。残高1.12倍、手数料率は今の0.85倍×物価
倍率:事業のROE11.1%。k 8.00%。RONIC=8%+1/2×(11.1%−8%)=9.6%、g 4%から正当化PER=14.6倍が上限。競争で稼ぐ力が削られた筋書きなので、上限の約7割の10.0倍に置いた。
確率:相場が一巡し、安い指数連動型への移行と販売会社の値下げ圧力が続く筋書き。2009年から2013年の低迷を見れば、実際に起こりうるので厚めに置いた。
悲観 10% 運用の腕が評価を失い、残高が構造的に流出 利益 14 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 327 円129 億円
世界的な株価の急落のあと、運用成績が長く低迷する。上場株の投信は解約が相次ぎ、残高は半分ほどに縮む。創業者の代替わりをきっかけに、運用担当が相次いで独立し、顧客がついていく。
手数料率は、残った顧客との交渉で3割ほど落ちる。成果報酬は入らず、人件費と拠点の固定費が残るので、営業利益率は1割台まで落ちる。未上場株ファンドは新規の募集ができず、残高は今を下回る。
純利益は10億円台に縮み、会社は黒字を保つのがやっとになる。配当は大きく削られ、10年の還元の大半は、利益がまだ高い最初の数年に払われる分だ。財務は軽いので存続は揺らがないが、もう優良な運用会社とは言えなくなる。
- 日本株式・OneAsia(上場株式の運用):数量 8,500(平均運用資産残高(億円・今の株価水準で測った実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率+成果報酬の取り分 × 物価の倍率)→ 売上 64 億円・営業利益 10 億円。残高は実質で今の半分、手数料率は今の0.68倍×物価、営業利益率16%
- 実物資産(再エネ発電所などの運用):数量 2,600(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.01(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。残高0.83倍、手数料率は今の0.75倍×物価
- プライベート・エクイティ(未上場株ファンド):数量 1,400(平均運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.02(残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率)→ 売上 28 億円・営業利益 3 億円。残高0.68倍、手数料率は今の0.70倍×物価
倍率:この筋書きの稼ぐ力は純利益14億円÷k 8%=約180億円と小さい。運用事業の価値が薄れる負けの筋書きなので、やや悲観(10倍)より低い、純利益の約9倍(約129億円)に置いた。今の自己資本392億円の0.33倍にあたる。積み増した利益は評価損と人材流出の費用で消えるとみて、自己資本は今の額のまま。
確率:相場の急落と、運用担当の流出、指数連動型への移行が重なる深い傷の筋書き。上場株の投信は解約が早く、人に宿る事業なので、起これば戻らない。一方、財務が軽く存続は揺らがないので10%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本株式・OneAsia(上場株式の運用)
日本株とアジア株の運用資産を預かり、残高手数料と成果報酬を得る。ロング・ショートや長期厳選などの戦略を持つ。
| 数量平均運用資産残高(億円・今の株価水準で測った実質) | 価格残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率+成果報酬の取り分 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16,300 | 0.01 | 135 | 62 |
| 10 年後 中立 | 22,500 | 0.01 | 225 | 99 |
取り方:2026年3月期の平均残高は開示を確認できず推定した。2025年3月期末の日本株12,925億円とOneAsia1,043億円(計1.40兆円)、2025年12月末のトラディショナル戦略15,757億円、2026年8月末の日本株18,109億円とOneAsia3,109億円から、期中平均を約16,300億円と置いた。営業収益195.8億円のうち、手数料は0.5%前後、成果報酬が約40億円、その他を足した135億円と見た。セグメント別の収益は非開示のため、残高手数料率(2025年3月期は全体で0.67%)と成果報酬付き残高の比率から割った推定。営業利益は営業利益率46%で置いた。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
実物資産(再エネ発電所などの運用)
太陽光・風力・バイオマスなどの発電所に投資するファンドを運用し、長期の残高手数料を得る。
| 数量平均運用資産残高(億円・実質) | 価格残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,150 | 0.01 | 18 | 8 |
| 10 年後 中立 | 4,200 | 0.01 | 31 | 13 |
取り方:2025年3月期末の残高3,021億円、2026年8月末の3,261億円から、期中平均を3,150億円と置いた。手数料率は発電所の運用で0.5〜0.6%と推定し、収益を18億円とした。実物資産は契約が10年ほどで実質的に解約がなく、成果報酬は小さいと見た。営業利益率は44%の推定。セグメント収益は非開示。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
プライベート・エクイティ(未上場株ファンド)
未来創生・宇宙フロンティアなどのファンドを運用し、10年ほどの長期の残高手数料と成果報酬を得る。
| 数量平均運用資産残高(億円・実質) | 価格残高1億円あたりの営業収益(億円・名目)=手数料率 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,050 | 0.02 | 43 | 20 |
| 10 年後 中立 | 3,300 | 0.03 | 88 | 37 |
取り方:2025年3月期末の残高は約1,700億円(総残高から他の三柱を引いた推定)、2026年8月末は2,138億円。期中平均を約2,050億円と置いた。ベンチャー投資のファンドは手数料率が高く、2%前後と推定して収益43億円とした。2025年3月期には未来創生ファンドから初の成果報酬(8億円)が入った。営業利益率は約46%の推定。セグメント収益は非開示。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
相場の下落と残高の目減り
残高手数料も成果報酬も株価に連動する。株価が急落すれば、残高は評価損で減り、解約も重なる。2009年から2013年には赤字の期が4回あった。足元の残高の増分の多くが株価の上昇である点も、反転の時に効く。
創業者と運用担当への依存
創業者の阿部修平氏が筆頭株主で、会社の運用の顔でもある。資産管理会社と合わせた持ち分は5割を超える。代替わりや運用担当の流出が起きれば、解約は早い。後継の道筋は開示から読み取れない。
手数料率の低下
安い指数連動型への移行と、販売会社の値下げ圧力で、手数料率は下がりやすい。スパークスの率は2023年3月期の0.73%から、2025年3月期に0.67%まで落ちた。値下げが続けば、残高の伸びが利益の伸びに結びつかない。
成果報酬のむら
成果報酬の付く残高は全体の3.5割あり、うまくいけば利益が跳ねる。裏を返せば、成績が落ちた年は入らない。未上場株ファンドの成果報酬は、投資先の上場やM&Aの時期に左右され、年ごとの振れが大きい。
運用資産の目標の未達
2026年3月期までに3兆円としていた運用資産の目標は届かず、目標を改めた。足元は2.6兆円台まで来たが、資金が入る一方で出ていく額も同程度で、純流入は見えにくい。計画の置き方に甘さがある。
少数株主の立場
創業者と資産管理会社で過半を持つので、TOBや大型の資本再編は創業者の判断次第になる。買収で価値が上がる局面でも、少数株主に有利に働くとは限らない。資本政策の見通しも外からは読みにくい。
今後の分かれ目
- 日本株の下落が続き、運用資産が2兆円を割り込む
- やや悲観の確率を引き上げて見る。成果報酬の付く残高の戦略別の動きも確かめる。
- 運用成績の高い戦略に資金が入り、残高の純流入が数四半期続く
- やや楽観の確率を上げてよい。ただ、相場による増分と見分けて、純流入だけを数える。
- 未上場株や実物資産で、新しい大型ファンドが立ち上がる
- 長期の残高手数料が増えるので、中立の筋書きの質を一段上げて見る。
- 創業者の役割変更や、主要な運用担当の退社が開示される
- 悲観の確率を上げて見る。解約の動きを毎月の残高で確かめる。
- 残高手数料率が年0.05ポイントを超えて下がる
- 手数料率の低下が速いと見て、やや悲観側に寄せる。
- 創業者の持ち株が動く、または会社が大型の自社株買いを出す
- 資本政策の転換を意識する。条件が少数株主にとって有利かどうかを確かめる。
見ておくもの
- 月次の運用資産残高と、日本株・OneAsia・実物資産・未上場株の内訳
- 残高手数料率と、成果報酬の付く残高の比率(決算説明資料)
- 未上場株・実物資産の新ファンドの募集額と、成果報酬の計上時期
- 創業者と主要な運用担当の動き、自己株式の取得の開示
倍率と資本コストの決め方
倍率は式と事業の経済性だけで決めた。k は基本7.5%に品質の+0.5%を足した8.0%。g は4%、残る割合は1/2。中立はROEがkを上回るので、1÷k=12.5倍が下限で、上限の16.9倍の8割に置いた。今の株価・PER、過去や同業の倍率は使っていない。悲観の床は、稼ぐ力と純現金で置き、過去のPBRの底は使っていない。同じ領域のJIA(k 9.0%・中立PER 11.2倍)とジャフコ(k 8.5%・9.0倍)より、スパークスは財務が軽く契約の長いファンドを持つので、k を低く、PERを高く置いた。純現金は105億円で、時価総額の約1割にとどまるため分けなかった。リースについて:スパークスは借り手として店舗を持たず、新リース会計基準の影響は小さい。10年後の数字は、今と同じ形で置いた。純利益には、現金の受取利息の増加(約2億円)を入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.9→18.79 倍・やや楽観 PER 15.2→17.87 倍・中立 PER 13.5→16.87 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の+0.5%を足して8.0%。ベータや規模の上乗せは使わない。創業者への依存や目標の未達は、k に足さず筋書きと確率で表した。