結論
日産証券グループは、商品先物と株式・為替証拠金の取引を仲介する老舗の証券会社だ。強みは金の取引にあるが、2026年3月期の利益は金相場の急騰が押し上げた山で、筆者は今の値段を割高側と見る。
金標準先物の取引代金は34兆円で、前の期の2.3倍に膨らんだ。受入手数料は76億円、営業利益は15億円と過去最高になった。ところが翌期の第1四半期は、手数料が前年同期比で16%減り、純利益は3分の1以下に戻っている。
本業の稼ぎは、相場が荒れた年にだけ大きく出る。過去の営業利益率は、赤字から17%まで振れた。10年の平均で見れば、利益は今期の半分から6割ほどに戻ると置く。
資本の使い方は株主寄りだ。総還元性向60%以上を掲げ、配当性向は4年続けて6割を超えた。ただ、自己資本利益率は10年の中央値で3%台にとどまり、資本コストに届かない。
筆者がいちばん見ているのは、金相場の熱が冷めたあとも、顧客と預かり資産が残るかどうかだ。口座は減り、手数料改定で他社への移管も出ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この事業の好ましい点は、お金を仲介するだけで、設備が要らないことだ。相場が荒れれば、大きく稼げる。
だが、稼ぎが顧客の取引の気分に左右される。堀がなく、手数料は下がる方向にある。10年後も顧客が残る保証は弱く、将来の利益を読みにくい事業だ。筆者は、読めないものに高い値は払わない。
会社が株主を大事にしているのは救いだ。利益の大部分を配当と自社株買いで返し、経営者の持株が厚い。ただ、返せる利益そのものが、平均では資本コストを下回る。
今の値段は、今期の利益の山を前提にすれば手頃に見える。しかし、平準化した利益で測ると、純資産に対して事業の稼ぐ力が足りない。安全域は薄いと見る。
待つなら、金相場が落ち着き、利益が谷に戻った場面だ。急いで持つ理由は見当たらない。経営者が株主に報いる姿勢を見せている点だけは、評価したい。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は、金融商品取引と商品先物取引の受託だ。顧客が株や先物を売買するたびに、手数料が入る。主な子会社の日産証券が、株式・投資信託、くりっく365、株価指数先物・オプション、商品先物、金地金の販売まで幅広く扱う。
稼ぎの中心は商品の取引だ。2026年3月期の受入手数料76億円のうち、商品関連の市場デリバティブが33億円、商品関連取引が6億円を占めた。株式は14億円、取引所の株価指数証拠金取引は10億円である。
顧客は個人だけでなく、法人や専門投資家にも広がる。2026年6月末の預かり資産は5,447億円で、リテールが3,339億円、ホールセールが2,108億円。口座数は約4万4,000で、残高のない口座は順次閉じている。
グループには、自己売買のNSトレーディング、貸金業のNSフィンテック、金融商品仲介の日産証券インベストメントなどがある。金地金を担保にした資金調達で、専門投資家へ短期の貸付も行う。
連結の従業員は254人で、人件費が販管費の半分近くを占める。業績予想は、相場の影響が大きいとして出していない。
優良さと弱いところ
強みは、金と商品先物に特化してきた専門性だ。金標準先物の売買は、同社の営業の柱である。相場が荒れる局面では、取引が一気に増え、少ない人数で大きな手数料を稼ぐ。
ただ、この強みは堀と呼べるほど固くない。手数料は他社と比べられ、同社も手数料の改定で顧客の一部を失った。国内の商品先物は市場が小さく、ネットの大手が同じ顧客を狙う。
利益の安定感は乏しい。過去12年で営業赤字の年が何度もあり、営業利益率は最悪で約マイナス25%、最良で17%だった。上場後も、自己資本は何度か増資で補った経緯がある。
資本効率も低い。純資産は127億円あるが、普通の年の純利益は数億円で、自己資本利益率は10年の中央値で3.4%。株主にお金を返す姿勢は強く、配当性向は直近で79%、自社株買いも続けている。
商品先物取引業の許可は2028年12月に期限を迎える。商品先物をめぐる訴訟が2件あり、訴額は合計3.7億円。法令を守る体制そのものが、事業の前提条件になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
証券業界は、手数料のゼロ化とネット化が続いている。株の売買手数料は主要ネット証券で条件次第でゼロになり、収益源は信用取引の金利、投資信託、外国株、為替などへ移った。同社のような中小の対面型は、価格で戦えない。
追い風は、新NISAで個人の投資参加が広がったことだ。個人の金融資産は2,500兆円を超え、預金から投資への流れは続く。ただ、その恩恵はネットの大手に集まりやすい。
商品先物は、金の高騰で熱を帯びた。地政学リスクと物価上昇で、金は資産の逃げ場として買われた。しかし、相場の熱は永遠に続かない。金価格が落ち着けば、取引代金も手数料も細る。
競合は、ネット大手のSBI証券や松井証券、楽天証券、商品先物では専業の各社だ。対面の独立系証券は、資産承継や富裕層向けの助言へ軸足を移している。同社は金とIFAを軸に、別の道を探る。
顧客の高齢化も構造的な逆風だ。相続のたびに、資産がネットの証券会社に流れる。口座数の減少が、その兆しである。同社は2026年6月末で約4万4,000口座を抱え、前の四半期から2%減った。
資本政策と M&A
資本政策は株主寄りだ。総還元性向60%以上を目標に、配当性向は4年続けて6割を超えた。2026年3月期の配当は前の期から増え、配当性向は79%になった。自社株買いは4.5億円で、中間配当は資本剰余金から払っている。
2027年3月期の配当予想は未定である。業績予想を出さない以上、配当も相場次第になる。
支配株主はNSHDで、持株比率は4割前後だ。経営トップが代表を務める資産管理会社である。2020年に岡藤ホールディングスと日産証券が株式交換で統合し、2022年に今の社名になった。2024年には、徳島インベストメントを子会社にしている。
自己資本比率は4.7%と低く見えるが、顧客から預かる証拠金や保証金が総資産の大半を占めるためだ。純現金の数字も、顧客の資産を含む。余った現金として切り分けるのは適切でない。
TOBや非公開化の公表はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金の高騰は、一時の熱ではなく、通貨の信認が揺らぐ時代の構造変化だ。国の借金が膨らみ、物価が上がるなかで、金を持つ個人と法人は増える。同社は金の取引に特化してきた数少ない会社で、その顧客を取り込める。
預かり資産は5,400億円を超え、外国株や投資信託も増えている。外国株の預かり残高は一四半期で2割近く伸びた。自己売買と貸金のグループ会社が、金融収益を支える。支配株主は経営の安定に寄与し、総還元性向60%以上という方針も心強い。
人件費を絞りながら、取引の増加で収益を伸ばす構造がある。販管費は前年と変わらず、売上が増えれば利益が膨らむ。利益が今期の水準に近いまま続けば、10年の価値は今の値段を大きく上回る。
さらに、IFAや仲介の新しい子会社で、対面の顧客を広げる余地もある。金に強いブランドは、他社が簡単にまねできない。割安な値段で買えるうちに、変化に賭ける意味がある。景気の不安が続く限り、国の借金や地政学リスクへの不安が消えず、安全資産としての金の取引は途切れない。
慎重な見方
今期の利益は、金相場の急騰という特殊な環境が作った山だ。第1四半期は手数料が16%減り、純利益は3分の1以下になった。相場が落ち着けば、取引代金も手数料も戻る。
過去を見れば、営業赤字の年がいくつもあり、自己資本利益率の中央値は3%台だ。資本コストを下回る事業に、帳簿の純資産より高い値はつけられない。
手数料のゼロ化で、対面型の価格は圧迫される。口座数は減り、手数料の改定でも顧客が他社へ移った。高齢の顧客から、資産がネット大手に流れる構造も変わらない。
商品先物の許可は2028年末に期限を迎え、訴訟も2件ある。さらに、自己売買や金地金を用いた貸付は、相場が逆に動けば損失を生む。そのうえ、貸付先の信用リスクも負う。支配株主の持株が厚い点も、少数株主にとっては有利とは限らない。配当の一部が資本剰余金からの払い出しである点も、利益の裏づけが薄いことを示す。第1四半期の営業利益は半分以下に減っており、足もとの勢いはすでに鈍っている。
どちらに重みを置いたか
事業の質と相場への依存度を考えると、慎重な見方が強い。強気の言う金の構造変化は否定しないが、手数料の稼ぎ方が変わらない限り、利益は平準化に向かう。
確率は、中立の周りに厚く置いたうえで、やや悲観を2割台半ばに積んだ。悲観は、顧客の流出と相場の低迷が続く筋書きとして1割に置いた。株主還元の厚さは下支えになるが、稼ぐ力の弱さが全体を決める。事業が構造的に縮むわけではないので、悲観の確率は高くしすぎない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 166 円82 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 96 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 135 円67 億円、今との差 −36.5%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 384 円190 億円 | 183 円91 億円 | +167.2% | +10.3% | 45 円22 億円 |
| やや楽観 | 20% | 240 円119 億円 | 141 円70 億円 | +79.7% | +6.0% | 76 円38 億円 |
| 中立 | 37% | 150 円74 億円 | 101 円50 億円 | +18.5% | +1.7% | 93 円46 億円 |
| やや悲観 | 25% | 92 円46 億円 | 58 円29 億円 | −29.0% | −3.4% | 38 円19 億円 |
| 悲観 | 10% | 82 円41 億円 | 12 円6 億円 | −55.7% | −7.8% | 9 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 166 円82 億円 | 96 円48 億円 | +23.3% | +2.1% | 261 円129 億円 |
今の株価時価総額 212 円105 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 金の需要が定着し、預かり資産が大きく増える 利益 15 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 384 円190 億円
金が通貨の信認低下の逃げ場として定着し、個人と法人の取引が増え続ける。預かり資産は8,000億円に近づき、IFAや仲介の子会社が対面の顧客層を広げる。
取引高が増えても人員は大きく増やさず、営業利益率は14%まで上がる。収益率は物価の分だけ上がり、売上は150億円ほどになる。
配当は性向8割台を保ち、総還元性向60%以上の方針を守る。自己資本は増えすぎず、利益は株主に戻る。株価の水準を気にせず、自社株買いも続けられる。許可の更新も問題なく進み、訴訟は小さな和解で終わる。金に強いブランドが定着し、新しい顧客層にも届く。株主には厚い還元が続き、評価も改善する。
- 金融商品取引・商品先物取引の受託:数量 8,000(預かり資産(億円・今の値段))× 価格 0.02(預かり資産1億円あたりの営業収益(億円・名目))→ 売上 152 億円・営業利益 21 億円
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.41 倍、時価総額 190 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金の構造的な需要が続き、預かり資産が3割以上増える姿は、成功した場合の上限。口座数が減っている現実を考え、1割弱にとどめた。
やや楽観 20% 金の熱が緩やかに続き、収益率は物価並みを保つ 利益 10 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 240 円119 億円
預かり資産は6,800億円まで増える。金の取引は荒れた年と落ち着いた年を繰り返し、平均では今期の7割ほどの手数料を保つ。
人件費は物価で上がるが、取引量の増加で吸収し、営業利益率は11.5%。売上は125億円ほど。配当は性向8割台で、自社株買いも続く。顧客一人あたりの預かり資産は増え、外国株や投資信託の比率が高まる。
商品先物の許可は更新され、訴訟は重くならない。システムへの投資も続け、取引の安定を保つ。対面の顧客の高齢化は進むが、IFAなどで新しい層を取り込んで補う。大きな成長は望めないが、堅実に稼ぎ続ける会社として扱われる。
- 金融商品取引・商品先物取引の受託:数量 6,800(預かり資産(億円・今の値段))× 価格 0.02(預かり資産1億円あたりの営業収益(億円・名目))→ 売上 126 億円・営業利益 14 億円
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 119 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金の取引が高止まりし、預かり資産も増える姿。手数料のゼロ化で単価は下がるが、取引量で補う。実績に近い上振れとして2割に置いた。
中立 37% 金の熱は冷め、収益は平準化する 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 150 円74 億円
金の相場は落ち着き、取引代金は今期の6割ほどに戻る。預かり資産は5,600億円と今より少ないが、物価の分で収益率は名目で保たれる。
売上は100億円ほど。人件費と事務費が物価で上がり、営業利益率は9%。今期の17%や、過去の最良の水準には届かない。取引量が落ち着く年は、営業利益が数億円に縮む。
配当は性向8割を守る。自己資本は140億円ほどでほぼ横ばい。自己資本利益率は4%台で、資本コストに届かない。顧客の高齢化とネットへの流出は続き、規模は小さいまま。金に強い専門会社としての位置は保つが、成長の物語は薄い。大きな買収や新規事業の話は出ず、既存の事業を守る経営が続く。
- 金融商品取引・商品先物取引の受託:数量 5,600(預かり資産(億円・今の値段))× 価格 0.02(預かり資産1億円あたりの営業収益(億円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 9 億円
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 74 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金の取引は平準化し、手数料の改定で顧客の一部は流出する。過去の営業利益率の中央値に近い水準を置いた。最も確からしい姿として最大の確率にした。
やや悲観 25% 手数料の低下と顧客流出で、利益が細る 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 92 円46 億円
対面の顧客が高齢化し、相続のたびに資産がネットへ移る。預かり資産は4,600億円まで減り、手数料は物価に追いつかない。売上は75億円ほど。
人件費の上昇を吸収できず、営業利益率は5%まで下がる。純利益は3億円前後で、配当は性向を守っても額は小さい。株主還元は続くが、成長への投資は後回しになる。
自己資本は取り崩さないが、収益力は資本コストに遠く届かない。自己売買の損失や、訴訟の和解金が数年に一度は出る。ネットの大手との価格差が広がり、新しい顧客はほとんど入らない。人員の削減も進むが、費用の削減は売上の減少に追いつかない。
- 金融商品取引・商品先物取引の受託:数量 4,600(預かり資産(億円・今の値段))× 価格 0.02(預かり資産1億円あたりの営業収益(億円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 5 億円
倍率:事業のROEは資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)より、継続企業としての売れる資産の税後が上回るため、今の自己資本に0.36倍を掛けた。
確率:ネット化と手数料ゼロ化の影響が強まり、口座と預かり資産が減る姿。過去12年に営業赤字の年が何度もある事業なので、2割台半ばに置いた。
悲観 10% 許可・顧客・相場の三重苦で、赤字が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 82 円41 億円
金価格の急落で取引が冷え込み、顧客の流出が続く。預かり資産は3,300億円まで減り、売上は50億円ほどに落ちる。固定費は残るため、営業利益率は赤字に沈む。人員を減らしても、システムや規制対応の費用は下がらない。
自己売買や金地金を用いた貸付で損失が出て、訴訟の和解金も重なる。のれんの償却と減損も加わり、自己資本は削られる。株主への還元も絞らざるを得ない。
事業の稼ぐ力は細り、価値は純資産のうち売れる分が支える。それでも預かり資産は分別管理されており、会社が倒れるわけではない。規模を縮めて存続する。支配株主の判断で、再編や売却の話が出る可能性もある。
- 金融商品取引・商品先物取引の受託:数量 3,300(預かり資産(億円・今の値段))× 価格 0.02(預かり資産1億円あたりの営業収益(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 −1 億円
倍率:事業は赤字で、稼ぐ力では床を測れない。純資産のうち売れる資産の税後を床とみて、今の自己資本に0.32倍を掛けた。
確率:商品先物の許可の問題や相場の急落、顧客の大量流出が重なる構造的な負け。少数株主は支配株主の判断に左右される。1割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金融商品取引・商品先物取引の受託
株式・投資信託・商品先物・くりっく365などの売買を仲介して手数料を受け取り、自己売買と貸付で金融収益を得る。
| 数量預かり資産(億円・今の値段) | 価格預かり資産1億円あたりの営業収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,905 | 0.01 | 86 | 15 |
| 10 年後 中立 | 5,600 | 0.02 | 100 | 9 |
取り方:営業収益86.3億円と営業利益14.67億円は2026年3月期の決算の値。預かり資産5,905億円は同社の公表する2026年3月末の残高。単一セグメントの会社で、売上は預かり資産に収益率を掛けて置いた。金の急騰で取引が膨らんだ年なので、収益率は山の水準である。
リスクと懸念
相場への依存と利益の振れ
利益の大半は商品と株の取引手数料で、相場が荒れた年に大きく出る。2026年3月期の最高益は金の急騰の山で、翌期の第1四半期は手数料が16%減った。谷の年は営業赤字もありうる。
手数料のゼロ化と顧客の流出
ネット大手の手数料はほぼゼロで、対面の価格は比べられる。同社は手数料の改定で顧客の一部が他社へ移り、口座数も減った。高齢の顧客の相続で、資産が流出する構造も続く。
商品先物の許可と訴訟
商品先物取引業の許可は2028年12月に期限を迎える。商品先物をめぐる訴訟が2件あり、訴額は合計3.7億円。法令違反や不祥事があれば、事業の前提が揺らぐ。
自己売買と貸付の損失
自己売買のNSトレーディングや、金地金を担保にした専門投資家向けの貸付は、相場が逆に動くと損失を生む。金地金の評価損益は、税務上の認識とずれ、利益の見え方を乱す。
支配株主の影響
NSHDが4割前後を保有し、経営の判断は同社の意向に沿う。還元に積極的な今は有利だが、方針が変われば少数株主は手を打てない。
情報漏洩とシステム障害
取引の仲介は、システムの安定が命だ。障害や個人情報の漏洩が起きれば、顧客の信頼と取引高に響く。
今後の分かれ目
- 金相場が急落し、金標準先物の売買枚数が大きく減ったら
- 受入手数料の山が剥がれる。中立の営業利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 預かり資産が6,000億円を超えて増え続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 口座数の減少が続き、手数料の改定でさらに顧客が他社へ移ったら
- 悲観の筋書きに近づく。リテールの預かり資産の減り方を見る。
- 商品先物の許可の更新で問題が出たり、訴訟が増えたりしたら
- 事業の前提が揺らぐ。悲観の確率を上げる。
- 総還元性向が6割を下回り、還元の方針が弱まったら
- 資本の使い方への信頼が下がる。ROEの低さが重くのしかかる。
見ておくもの
- 四半期の受入手数料と、金標準先物の売買枚数
- 預かり資産、口座数、リテールとホールセールの内訳
- 総還元性向と自己資本の推移
- 商品先物取引業の許可の更新と訴訟の進展
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROEが資本コストを下回る筋書きは、PERの上限が1÷kなので、その7〜8割に置いた。今のPERや同業の倍率は使っていない。数量は預かり資産、価格は預かり資産あたりの営業収益で、物価の1.34倍は価格にだけ入れ、手数料率の低下を別に掛けた。償却は小さく、物価では増やしていない。リースは本社の賃借が中心で、新リース会計の影響は小さい。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.7→12.41 倍・やや楽観 PER 9.44→11.43 倍・中立 PER 8.89→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。