結論
アイザワ証券グループは、個人の資産運用を相談で支える独立系の対面証券である。投資信託、株式、アジア株の売買と、預かった資産に応じた報酬で稼ぐ。創業は大正 7 年にさかのぼる。
筆者の結論は、今の値段は割高だ。本業の稼ぐ力が資本コストに届かないからだ。2026 年 3 月期の営業利益はほぼゼロで、純利益 27 億円の大半は投資有価証券の売却益だった。
中身が悪いわけではない。総預り資産は 2.4 兆円に増え、投資信託などの「ストック商品」も 5,600 億円を超えた。相場に左右されにくい収入が育っている。
ただし、人件費など経費が毎年増え、売上の伸びを食う。今の利益水準は 10 年の平均像ではなく、相場の追い風の上にある。
7% 台の配当利回りに目が行きがちだが、6 割ほどは特別配当で、2028 年 3 月期までの約束だ。原資は保有株の売却益であり、毎年の稼ぎではない。
保有株という資産は確かに厚い。筆者はこれを事業と切り離し、別に評価した。それでも、事業の価値が薄いため、中立の筋書きで 10 年後の価値は今を大きく下回る。
上振れの筋書きでも、今の値段をわずかに超える程度だ。楽観を重ねなければ、今の値段は正当化できない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ち続けたい事業」とは言いにくい。
理由は、本業が資本コストを稼げないからだ。営業利益は 10 年のうち大半が小さな数字にとどまり、直近もほぼゼロだった。純利益は、保有株の売却益に頼っている。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見た目の純利益より小さい。人を抱える費用が毎年物価で上がり、システムへの投資も要るからだ。
堀は、顧客との関係にある。しかし規模が小さく、世代交代で切れやすい。強い堀とは呼べない。
資本の使い方は、方向がよい。還元を明文で約束し、売却益を配当に回している。ただ、それは資産を換金して返しているのであって、事業が稼いだお金ではない。
安全域で見ると、この会社の価値は二つに分かれる。事業そのものは、稼ぐ力に見合う小さな価値しかない。保有株は、時価で見ればまとまった額になる。
筆者は、その保有株だけを事業と切り離して足した。足しても、今の値段は事業の価値を高く見積もりすぎている。
逆に悲観の筋書きでも、保有株の売却で一定の下値は残る。ただ、割安と言えるほどの余裕はない。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は証券事業で、営業収益の 95% を占める。残りは投資事業と運用事業だ。
証券事業の収入は大きく三つに分かれる。
一つ目は売買に連動する手数料だ。株式の委託手数料と、自己資金で売買するトレーディング損益がこれにあたる。2026 年 3 月期は委託手数料が好調で、受入手数料の合計は 167 億円と 2 割近く増えた。相場が荒れれば急に増え、冷えれば急に減る。
二つ目は、預り資産に連動する収入だ。投資信託の販売手数料に加え、持ち続けてもらう間に入る信託報酬、ラップ口座の報酬がある。会社は、この「ストック型」の収益で販管費の 4 割を賄うことを目標に掲げている。
三つ目は、信用取引の貸付などから入る金融収益だ。金利が上がっても、資金調達の費用も同じように増えるため、利ざやは薄い。
連結の社員は約 700 人。営業収益は 1 人あたり 3,000 万円ほどで、経費が重い構造だ。
新しい取り組みも二つある。一つは、IFA(独立系の資産アドバイザー)や預金金融機関と組み、積立投資の口座を集めるプラットフォーム事業だ。その預り資産は 3,600 億円を超え、前の期から 900 億円ほど増えた。もう一つは、顧客の人生設計から逆算して提案する「ゴールベース型」の営業で、2026 年 4 月に全店へ広げた。
投資事業はアイザワ・インベストメンツが担い、上場株、未上場ファンド、国内の賃貸住宅に投資する。運用事業のあいざわアセットマネジメントは、未公開株のセカンダリー投資が中心で、ヘッジファンドからは撤退した。両方とも直近は赤字だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、あるが小さい。
強みは、相談を重ねて築いた顧客との関係と、アジア株など幅広い商品を扱える点にある。対面で資産の悩みを聞く営業は、手数料の安さだけでは奪われにくい。
弱みは、規模と収益性だ。営業収益は 200 億円台で、野村や大和の数十分の 1 にすぎない。システムも商品開発も、大手と同じ水準では投資できない。
値決めの力も弱い。ネット証券は売買手数料をゼロに近づけており、対面にも値下げの圧力が及ぶ。会社が信託報酬へ軸足を移すのは、その圧力に備えた動きだ。ただし信託報酬の単価は、売買手数料より薄い。
資本効率は低い。ROE の過去 10 年の中央値は 4.6%で、資本コストを下回り続けた。2023 年 3 月期は赤字、営業利益が 10 億円を超えた期は、過去 12 期で 4 回だけだ。
直近の 5.8% も、保有株の売却益に支えられた数字で、本業の力ではない。
経営の資本配分には、変化の兆しがある。総還元性向 50% 以上と特別配当を約束し、株主への還元を明確にした。一方で、投資事業は評価損が出ており、その資金の使い方には疑問が残る。
創業家の藍澤不動産が約 16%(大株主表の要約)を持つ安定株主で、経営の方向は長い目で保たれる。ただし、外からの圧力は働きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
証券業は、相場そのものに収益が連動する。株価が上がれば預り資産も売買も増え、下がれば逆に動く。
今は追い風が吹いている。新しい NISA のおかげで、個人が預金から投資へお金を動かしている。物価が年 3% で上がる世界では、株価と預り資産の名目額も押し上げられる。
一方で、手数料の単価は下がり続ける。ネット証券は国内株の売買手数料を無料にした。対面証券はこれに直接さらされにくいが、安さに慣れた世代が顧客になれば、対面の高い手数料を払う理由は薄れる。
競争は三方向から来る。大手の野村・大和・SMBC 日興は、富裕層を囲い込む。同じ独立系の岡三証券、東海東京フィナンシャル・ホールディングス、岩井コスモ証券、丸三証券は、地域や顧客層で同じ顧客を取り合う。そして SBI 証券や楽天証券は、若い世代の最初の口座を押さえている。
人口の動きも逆風だ。国内の人口は年 0.5% ほど減る。対面の顧客は高齢層に偏り、相続のたびに資産が他社へ移る恐れがある。
追い風もある。小さな会社の経営者が高齢になり、事業承継や株式の売却の相談が増える。地域に根を張る証券には、その入り口がある。ただし地銀や大手も同じ市場を狙う。
もう一つ、IFA や預金金融機関と組む動きは、業界の新しい流れだ。自前の営業社員を増やさずに預り資産を伸ばせる。アイザワがこの分野で先行できるかは、まだ見えない。
業界の収益は数年ごとに大きく振れる。足元は山に近く、今の利益を平時の姿と見るのは危うい。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、2025 年からの中期経営計画の還元方針だ。総還元性向 50% 以上、株主資本配当率 2% 程度以上、これに年 22 億円ほどの特別配当(2028 年 3 月期まで)を加える。
2026 年 3 月期の配当は、金額で純利益を超える水準になった。特別配当の原資は、投資有価証券の売却益だ。
この資金源に限りがある点が要になる。売却益は持っている株を売って得る一回限りの利益であり、売れる株が減れば原資も減る。2025 年 3 月期に 250 億円ほどあった投資有価証券も、売れば売っただけ減る。
投資事業は、上場株、未上場ファンド、国内の賃貸住宅へ資金を投じる。直近は評価損などで赤字になった。会社は「グレードアップ」を掲げており、再建の途上にある。
運用事業は、ヘッジファンドから撤退した。M&A は小さく、事業の入れ替えで進める。
株主は、創業家の資産管理会社である藍澤不動産が最大で、代表取締役の藍澤卓弥氏もその資産管理会社を通じて保有する。大量保有報告書には、安定株主として持つと書かれている。外部の投資家による提案は、確認できていない。
TOB や再編の可能性はあるが、創業家の持ち分が厚く、筆者は評価に上乗せしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
預り資産は 2.4 兆円まで増え、中期経営計画の目標 2.5 兆円は目前だ。ストック商品も 5,600 億円を超えた。相場に左右されにくい収入が、確実に積み上がっている。
IFA や預金金融機関と組むプラットフォーム事業は、1 年で預り資産が 900 億円以上増えた。自前の営業社員を増やさず、他社の顧客を取り込む形で伸びている。この仕組みが広がれば、固定費をかけずに預り資産が増える。
ゴールベース型の営業も、全店に広がった。顧客のライフプランから逆算して提案する営業は、売買の回数ではなく預り資産の大きさで稼ぐ。対面の強みを生かせる。
物価が年 3% で上がる世界では、預り資産の名目額も自然に増える。新しい NISA で投信を長く持つ人も増え、信託報酬は積み上がる。
投資事業と運用事業の赤字は、整理の過程にすぎない。ヘッジファンドから撤退し、損失の出る事業を絞った。再建が進めば、足を引っ張る赤字が消える。
還元の約束も明確だ。総還元性向 50% 以上、年 22 億円ほどの特別配当、DOE 2% 以上。株主に報いる姿勢は、はっきりしている。
ここまでうまく運べば、10 年後の預り資産は実質で 4 割多い 3.4 兆円。営業利益は 50 億円規模に達する。
慎重な見方
今の利益は、相場の追い風に乗っているだけだ。営業利益は 2026 年 3 月期でほぼゼロ。過去 10 年を見ても、2017 年、2019 年、2022 年、2023 年と、本業は何度も赤字になった。
純利益が出ているのは、投資有価証券の売却益のおかげだ。売却益は持ち株を売って得る一回限りの利益で、いつまでも続かない。特別配当の原資もそこにある。
預り資産が 2.4 兆円に増えたのは、相場の上昇が大きい。評価額が増えただけで、顧客が増えたわけではない。相場が 3 割下がれば、預り資産も信託報酬も同じだけ減る。
経費は毎年増える。2026 年 3 月期の販管費は 10% 近く増えた。人件費は物価で上がり、売上が物価ほど伸びなければ、利益率は削られる。
投資事業と運用事業は、赤字が続いている。「グレードアップ」「再構築」と言うが、成果は数字に表れていない。ヘッジファンドからの撤退は、失敗を認めたとも読める。
顧客の高齢化も止まらない。相続された資産は、ネット証券に流れやすい。担当者の顔を知らない子の世代が、対面の手数料を払い続けるとは限らない。
営業収益が 200 億円台の会社は、システムや規制対応の固定費を薄められない。野村・大和・SBI との差は広がる一方だ。
前の中期経営計画では、預り資産 2 兆円と固定費カバー率 50% の目標が届かなかった。今回だけ違う結果になる保証はない。
どちらに重みを置いたか
強気の指摘のうち、預り資産とストック商品の積み上がりは本物だ。プラットフォーム事業が伸びていることも確かだ。ただし、その増加の多くは相場の上昇による。
慎重な指摘が、より強い。10 年の ROE の中央値が資本コストを下回り、営業利益の赤字が何度もあった事実は、会社の実力そのものを示している。純利益が売却益に支えられている点も重い。
確率は、中立を最も厚くしつつ、悲観側に寄せた。楽観とやや楽観で 3 割弱、やや悲観と悲観で 3 割強とした。保有株という下支えがあるため、悲観の深さは限られる。
楽観の筋書きでも、事業の稼ぐ力が資本コストを少し超える程度にとどまり、今の値段をわずかに超えるだけだ。全体の価値は、今を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 994 円310 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 389 円121 億円)。 今の値に割り戻すと 698 円218 億円、今との差 −54.2%、 期待の年率 −1.0%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,079 円649 億円 | 608 円190 億円 | +76.3% | +5.8% | 188 円59 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,486 円464 億円 | 480 円150 億円 | +29.0% | +2.6% | 393 円123 億円 |
| 中立 | 38% | 1,086 円339 億円 | 400 円125 億円 | −2.4% | −0.2% | 565 円176 億円 |
| やや悲観 | 24% | 430 円134 億円 | 320 円100 億円 | −50.8% | −6.8% | 180 円56 億円 |
| 悲観 | 11% | 320 円100 億円 | 192 円60 億円 | −66.4% | −10.3% | 56 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 994 円310 億円 | 389 円121 億円 | −9.3% | −1.0% | 1,383 円432 億円 |
今の株価時価総額 1,524 円476 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 預り資産が実質で 4 割増え、投資事業の赤字も消える 利益 42 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 2,079 円649 億円
IFA や預金金融機関と組むプラットフォーム事業が広がり、他社の顧客を取り込む形で預り資産が増える。総預り資産は実質で 4 割多い 3.4 兆円に達し、ストック商品が収益の柱になる。
ゴールベース型の営業が定着し、売買の回数に頼らず預り資産の大きさで稼ぐ形ができる。売買手数料の単価は下がるが、売買代金そのものは増え、収入は物価並みに伸びる。
投資事業は整理が進んで黒字に転じ、運用事業の赤字も消える。経費は物価で上がるが、預り資産の伸びが吸収し、営業利益は 50 億円規模まで増える。
本業の ROE は 10% 近くに届き、資本コストをわずかに超える。還元は総還元性向 7 割程度に高まる。ただし、これが実現しても、今の値段を大きくは超えない。
- 預り資産連動(信託報酬・投信募集など):数量 3.4(総預り資産残高(兆円・今の値段で測った実質))× 価格 44(預り資産 1 兆円あたりの手数料収入(億円・名目))→ 売上 148 億円・営業利益 30 億円。総預り資産 3.4 兆円(実質 1.42 倍)× 1 兆円あたり 43.51 億円(今の 1.30 倍)、営業利益率 20%
- 売買連動(委託手数料・トレーディング):数量 1.7(株式の年間売買代金に換算した数量(兆円・実質。推定))× 価格 95(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 157 億円・営業利益 17 億円。売買代金換算 1.65 兆円(実質 1.10 倍)× 1 兆円あたり 95.4 億円(今の 1.28 倍。物価 1.34 倍に対し、ネットとの競争で手数料率が約 1 割下がる)、営業利益率 11%
- 金融収支・その他:数量 38.0(貸付・運用に回る残高に相当する数量(百億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの金融収益(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。金融収益の元になる残高 38(百億円・実質 1.27 倍)× 0.344(今の 1.34 倍)、営業利益率 5%
- 投資・運用事業:数量 70.0(投資・運用に回る残高に相当する数量(十億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの収益(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。投資・運用残高 70(十億円・実質 1.75 倍)× 0.3417(今の 1.34 倍)、営業利益率 12%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 12.64 倍、時価総額 649 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:預り資産の伸び、売買の活況、投資事業の黒字化がすべてそろう必要がある。本業の ROE が資本コストを超えたことが 10 年で一度もない会社なので、1 割未満とした。
やや楽観 20% ストック収入が育ち、利益は 30 億円台へ 利益 29 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,486 円464 億円
預り資産は実質で 3 割ほど増え、総預り資産は 3 兆円に乗る。ストック商品が着実に増え、売買手数料の落ち込みを補う。
プラットフォーム事業は伸びるが、他社の顧客を取り込む競争も激しく、単価は物価ほど上がらない。営業社員の生産性は上がり、経費の増加は何とか売上で吸収できる。
投資事業は赤字が止まり、損益はほぼ均衡する。運用事業の赤字も縮む。営業利益は 30 億円台に乗る。
ROE は 7% 台で、会社の目標 8% の手前にとどまる。資本コストには届かず、ためた利益は額面未満の価値にしかならない。還元は総還元性向 5 割強で続く。
- 預り資産連動(信託報酬・投信募集など):数量 3.0(総預り資産残高(兆円・今の値段で測った実質))× 価格 43(預り資産 1 兆円あたりの手数料収入(億円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 22 億円。総預り資産 3.0 兆円(実質 1.26 倍)× 1 兆円あたり 42.84 億円(今の 1.28 倍)、営業利益率 17%
- 売買連動(委託手数料・トレーディング):数量 1.5(株式の年間売買代金に換算した数量(兆円・実質。推定))× 価格 92(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 139 億円・営業利益 13 億円。売買代金換算 1.5 兆円(実質 1.00 倍)× 1 兆円あたり 92.42 億円(今の 1.24 倍。物価 1.34 倍に対し、ネットとの競争で手数料率が約 1 割下がる)、営業利益率 9%
- 金融収支・その他:数量 34.0(貸付・運用に回る残高に相当する数量(百億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの金融収益(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。金融収益の元になる残高 34(百億円・実質 1.13 倍)× 0.344(今の 1.34 倍)、営業利益率 -10%
- 投資・運用事業:数量 50.0(投資・運用に回る残高に相当する数量(十億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの収益(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。投資・運用残高 50(十億円・実質 1.25 倍)× 0.3417(今の 1.34 倍)、営業利益率 0%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 464 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ストック商品とプラットフォーム事業が伸びているのは事実で、会社の目標も届く範囲にある。ただし経費の増加が利益を削ってきた実績があり、2 割にとどめた。
中立 38% 預り資産は小幅に増えるが、経費に食われて利益は 20 億円前後 利益 18 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,086 円339 億円
預り資産は実質で 1 割強の増加にとどまる。相場の上昇で名目額は増えるが、顧客の高齢化と相続による流出が、増加分の多くを食う。
売買に連動する収入は細る。個人の売買はネット証券に移り、対面は投信の長期保有に軸足を移す。売買代金は実質で 1 割強減り、1 兆円あたりの収入も物価ほどは上がらない。
信託報酬は増えるが、売買手数料の減少を完全には補えない。営業社員は増やせず、人件費は物価で上がる。投資事業と運用事業は、小さな赤字が残る。
営業利益は 20 億円前後で、今の会社予想の延長にとどまる。ROE は 5% 前後で、資本コストには届かない。特別配当は 2028 年 3 月期で終わり、還元は利益の 7 割ほどに落ち着く。会社の姿は、今とあまり変わらない。
- 預り資産連動(信託報酬・投信募集など):数量 2.7(総預り資産残高(兆円・今の値段で測った実質))× 価格 42(預り資産 1 兆円あたりの手数料収入(億円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 16 億円。総預り資産 2.7 兆円(実質 1.13 倍)× 1 兆円あたり 41.84 億円(今の 1.25 倍)、営業利益率 14%
- 売買連動(委託手数料・トレーディング):数量 1.3(株式の年間売買代金に換算した数量(兆円・実質。推定))× 価格 90(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 9 億円。売買代金換算 1.3 兆円(実質 0.87 倍)× 1 兆円あたり 90.18 億円(今の 1.21 倍。物価 1.34 倍に対し、ネットとの競争で手数料率が約 1 割下がる)、営業利益率 8%
- 金融収支・その他:数量 30.0(貸付・運用に回る残高に相当する数量(百億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの金融収益(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 −4 億円。金融収益の元になる残高 30(百億円・実質 1.00 倍)× 0.344(今の 1.34 倍)、営業利益率 -34%
- 投資・運用事業:数量 40.0(投資・運用に回る残高に相当する数量(十億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの収益(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 −2 億円。投資・運用残高 40(十億円・実質 1.00 倍)× 0.3417(今の 1.34 倍)、営業利益率 -15%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 339 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の指摘と慎重な指摘のちょうど中間で、最も起こりやすい筋書き。相場の山と谷をならして置いた。
やや悲観 24% 世代交代と手数料の低下で、本業はほぼ利益が出ない 利益 5 億円 · PER 6.6 倍 · 株価時価総額 430 円134 億円
顧客の世代交代が進み、相続のたびに預り資産が他社へ流れる。預り資産は実質で 4% ほど減る。
売買手数料はネットとの競争で大きく下がり、売買代金は 3 割近く減る。信託報酬は残るが、投信の乗り換えも細る。
人件費は物価で上がり続け、営業社員の削減は進めにくい。拠点を絞っても、費用の下げは売上の下げに追いつかない。営業利益は 2 億円ほどに落ちる。
投資事業の赤字は続き、運用事業は縮む。純利益は保有株からの配当に頼る形になり、ROE は 1% 前後。還元は DOE の最低線まで下がる。配当や自社株買いを保有株の売却で払う局面も出てくる。
- 預り資産連動(信託報酬・投信募集など):数量 2.3(総預り資産残高(兆円・今の値段で測った実質))× 価格 39(預り資産 1 兆円あたりの手数料収入(億円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 7 億円。総預り資産 2.3 兆円(実質 0.96 倍)× 1 兆円あたり 39.49 億円(今の 1.18 倍)、営業利益率 8%
- 売買連動(委託手数料・トレーディング):数量 1.1(株式の年間売買代金に換算した数量(兆円・実質。推定))× 価格 83(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 2 億円。売買代金換算 1.05 兆円(実質 0.70 倍)× 1 兆円あたり 83.47 億円(今の 1.12 倍。物価 1.34 倍に対し、ネットとの競争で手数料率が約 1 割下がる)、営業利益率 2%
- 金融収支・その他:数量 26.0(貸付・運用に回る残高に相当する数量(百億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの金融収益(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 −4 億円。金融収益の元になる残高 26(百億円・実質 0.87 倍)× 0.344(今の 1.34 倍)、営業利益率 -45%
- 投資・運用事業:数量 30.0(投資・運用に回る残高に相当する数量(十億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの収益(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 −3 億円。投資・運用残高 30(十億円・実質 0.75 倍)× 0.3417(今の 1.34 倍)、営業利益率 -30%
倍率:ROE 1.0%(事業の純利益÷自己資本)。k 8.5% を大きく下回り、稼ぐ力が細る筋書きなので、上限 11.1 倍の 7 割へ引き上げず、6.56 倍に置いた。
確率:顧客の高齢化と手数料の低下は、すでに進行中の変化。本業の赤字を何度も出した実績もあり、強気側より厚く置いた。
悲観 11% 相続でネットへ流出し、対面の営業が赤字に沈む 利益 −8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 320 円100 億円
相続で資産の流出が止まらず、預り資産は実質で 3 割近く減る。大幅な相場の下落が重なり、信託報酬も縮む。
売買代金は半分近くに縮み、手数料の単価も下がる。営業社員の採用は止まり、中核の人材は大手やネット系に移る。店舗を絞っても、賃借料は契約が残る間は固定費として重く、赤字を止められない。
営業利益は 10 億円規模の赤字に沈み、投資事業の損失も続く。配当は最低限になり、保有株を売って穴を埋める。
市場は、もう優良な会社とは見ない。保有株の売却と、顧客基盤や拠点の他社への譲渡が、価値の下支えになる。大手や地銀による買収・再編に組み込まれる可能性も出る。
- 預り資産連動(信託報酬・投信募集など):数量 1.7(総預り資産残高(兆円・今の値段で測った実質))× 価格 37(預り資産 1 兆円あたりの手数料収入(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 1 億円。総預り資産 1.7 兆円(実質 0.71 倍)× 1 兆円あたり 36.82 億円(今の 1.10 倍)、営業利益率 2%
- 売買連動(委託手数料・トレーディング):数量 0.8(株式の年間売買代金に換算した数量(兆円・実質。推定))× 価格 78(売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 −3 億円。売買代金換算 0.8 兆円(実質 0.53 倍)× 1 兆円あたり 78.26 億円(今の 1.05 倍。物価 1.34 倍に対し、ネットとの競争で手数料率が約 1 割下がる)、営業利益率 -5%
- 金融収支・その他:数量 20.0(貸付・運用に回る残高に相当する数量(百億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの金融収益(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 −4 億円。金融収益の元になる残高 20(百億円・実質 0.67 倍)× 0.344(今の 1.34 倍)、営業利益率 -60%
- 投資・運用事業:数量 20.0(投資・運用に回る残高に相当する数量(十億円・実質。推定))× 価格 0.34(数量 1 あたりの収益(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 −5 億円。投資・運用残高 20(十億円・実質 0.50 倍)× 0.3417(今の 1.34 倍)、営業利益率 -80%
倍率:本業は赤字で、稼ぐ力(事業の純利益÷k)はゼロ。売れる資産の方が価値を持つ。今の自己資本 475 億円に 0.21 倍を掛け、下の床の 100 億円に合わせた。
確率:大型の相場下落と相続による流出が重なる複合の筋書き。確率は低いが、起これば本業が赤字に沈むので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
預り資産連動(信託報酬・投信募集など)
投資信託の募集手数料、信託報酬、ラップ口座の報酬など、預かった資産の残高に応じて入る収入。
| 数量総預り資産残高(兆円・今の値段で測った実質) | 価格預り資産 1 兆円あたりの手数料収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.4 | 33 | 80 | 8 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 42 | 113 | 16 |
取り方:2026 年 3 月期の受入手数料 167 億円のうち、募集・売出し取扱手数料とその他受入手数料(主に信託報酬)の合計を約 80 億円と推定した(内訳の開示は取れていない)。総預り資産は 2026 年 3 月末の 2 兆 3,855 億円で、1 兆円あたり 33.5 億円(残高の約 0.33%)。数量は物価を除いた実質の残高、物価 3% は価格に入れた。営業利益は証券事業の利益 10.5 億円を、人件費の按分で推定して 8 億円とした。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
売買連動(委託手数料・トレーディング)
株式の委託手数料と、自己資金で売買するトレーディング損益。相場と売買の活発さで大きく振れる。
| 数量株式の年間売買代金に換算した数量(兆円・実質。推定) | 価格売買代金 1 兆円あたりの収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 75 | 112 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 90 | 117 | 9 |
取り方:委託手数料を約 87 億円(推定)、トレーディング損益 24.7 億円の合計 111.8 億円。売買代金は開示がないため、手数料率を平均 0.6%(アジア株を含み高め)と置いて約 1.5 兆円と推定し、1 兆円あたり 74.5 億円とした。数量は物価を除いた実質。営業利益は推定で 5.5 億円。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
金融収支・その他
信用取引の貸付などの金融収益。資金調達の金融費用を差し引いて営業利益に入れる。
| 数量貸付・運用に回る残高に相当する数量(百億円・実質。推定) | 価格数量 1 あたりの金融収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 0.26 | 8 | −3 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.34 | 10 | −4 |
取り方:営業収益の合計から他の三つを引いた約 7.7 億円。金融費用は、営業利益 0.26 億円の逆算で約 10.7 億円と推定し、差し引いて営業利益は −3 億円とした。残高は開示がないので、貸付・運用に約 3,000 億円が回るとして数量を 30(百億円)とした。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
投資・運用事業
アイザワ・インベストメンツの上場株・未上場ファンド・賃貸住宅への投資と、あいざわアセットマネジメントの未公開株のセカンダリー運用。
| 数量投資・運用に回る残高に相当する数量(十億円・実質。推定) | 価格数量 1 あたりの収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.26 | 10 | −11 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.34 | 14 | −2 |
取り方:投資事業の営業収益 8.3 億円と運用事業 1.9 億円の合計 10.2 億円。セグメント利益は投資 −7.2 億円、運用 −3.6 億円で合計 −10.8 億円。残高は開示がないため約 400 億円と推定した。本社費などの調整はプラス 0.6 億円で、四つの合計は営業利益 0.3 億円に合わせた。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
本業の利益がほぼゼロという事実
2026 年 3 月期の営業利益は 0.3 億円。純利益の大半は投資有価証券の売却益だった。売れる株が減れば、特別配当の原資も細る。営業赤字の期は過去 12 期で 5 回ある。
相場の下落と預り資産の目減り
預り資産も信託報酬も、評価額に連動する。2026 年 3 月期の預り資産の増加 4,200 億円の多くは、相場の上昇によるとみられる。株価が 3 割下がれば、ストック収入も同じだけ減る。売買に連動する収入は、さらに大きく落ちる。
経費の増加
2026 年 3 月期の販管費は 10% 近く増えた。人件費は物価で上がり、人を増やすほど固定費が重くなる。売上が経費の伸びに追いつかなければ、営業利益は赤字に戻る。
投資・運用事業の赤字
投資事業は評価損で、運用事業はヘッジファンド撤退の費用で、それぞれ赤字だった。再建は途上にあり、赤字が長引けば、証券事業の稼ぎを毎年削る。
顧客の高齢化と相続による流出
対面の顧客は高齢層に偏る。相続された資産は、子の世代がネット証券へ移すことが多い。担当者との関係は引き継がれにくく、預り資産が静かに減る恐れがある。
手数料の低下と規模の小ささ
ネット証券の売買手数料はゼロに近い。対面にも値下げの圧力がかかる。営業収益が 200 億円台の会社は、システムと規制対応の固定費を薄めにくい。
店舗の賃借と新リース会計基準
店舗は賃借とみられ、家賃は売上が落ちても減らない固定費だ。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で、営業利益と負債の形が変わる。リースの約束の大きさは確認できていない。
今後の分かれ目
- 営業利益が 30 億円を超えて安定し、売却益を除いた純利益でも配当をまかなえたら
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。本業の稼ぐ力が資本コストに近づいた証拠になる。
- ストック商品の預り資産が 8,000 億円を超え、販管費の 4 割を賄えたら
- 売買の波に左右されない収益が育った証拠。中立の営業利益率を上方に直す。
- 相場が 3 割下がり、総預り資産が 2 兆円を割ったら
- ストック収入の安定という見方を取り下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 投資事業の赤字が解消せず、さらに評価損が出たら
- 投資・運用事業の整理が遅れている証拠。中立の営業利益から引く額を増やす。
- 2028 年 3 月期で特別配当が終わり、新しい還元方針が示されたら
- 還元が稼ぐ力に見合う水準に戻るかを見る。保有株の売却に頼る配当が続くなら、価値の評価は変えない。
- 大手証券や地銀による買収・資本提携が発表されたら
- 評価は買収価格に近づく。創業家の持ち分が厚いので、条件次第で値は上にも下にも動く。
見ておくもの
- ストック商品預り資産と総預り資産の推移、相場の増減を除いた純資金の流出入
- 実質販管費カバー率(目標 40%)と販管費の伸び
- 投資・運用事業のセグメント損益
- 投資有価証券の残高と、売却益を除いた純利益
倍率と資本コストの決め方
利益は預り資産連動・売買連動・金融収支・投資運用の四つに分け、預り資産と売買代金は物価を除いた実質で置き、物価 3% は 1 兆円あたりの収入(価格)に入れた。余った資産は、投資有価証券のうち売れる分 150 億円を事業と切り離して足した。倍率は k 8.5%(基本 7.5% に循環 +1.0%、値決め力 +0.25%、寿命 +0.25%)と ROE から、ROE が k を下回る時は上限 1÷k=11.1 倍、上回る時は正当化 PER の式で出し、今の PER や PBR、同業の倍率からは置かなかった。今の時価総額(約 503 億円)に寄せず、本業の ROE 5% 前後の事業に式をそのまま当てた結果、価値は今を大きく下回った。悲観は稼ぐ力ではなく、売れる資産の床 100 億円を置いた。店舗は賃借とみられるが、リースの約束の大きさは確認できていない。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で営業利益と負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。