結論
ジャフコは、日本でいちばん古い独立系のベンチャーキャピタルだ。年金や金融機関から集めたファンドと自己資金で、未上場企業に投資する。上場や売却で投資を回収し、その利益と運用手数料で稼ぐ。
結論から言う。筆者は、今の値段を「ほぼ適正かやや割高」と見る。稼ぐ力が資本コストに届かない会社に、帳簿の厚みを理由に高い値段は付けられない。
財務は極めて堅い。自己資本比率は85%で、現預金は約610億円ある。ただしこの現金の大半は、ファンドへ出資するための手持ちの資金だ。事業に要らない余り金とは言えない。
利益はIPO(新規上場)市場に振り回される。2023年3月期の純利益は約400億円、翌年は約75億円だった。直近の営業利益は56〜125億円で、ROEは5〜7%にとどまる。
10年先の中立は、ファンドの規模が実質で3割増え、手数料と投資の回収益が物価とともに伸びる姿だ。純利益は今の1.6倍で、ROEは8%前後になる。
強気の筋書きでは、大型ファンドの成功報酬が効き、純利益は190億円ほどになる。慎重な筋書きでは、IPO市場が細り、財務が堅いだけの低収益の会社になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るのは「株主のものになる利益」と、「長く続く稼ぎの力」の二点だ。
この会社の利益は、ほとんどが投資の値上がり益で、毎年は安定しない。人手が主な費用で、工場や設備への投資は要らない。その点で資本はあまり食わない。ただ、利益が毎年の稼ぎとして読めず、予測しにくい事業だ。
財務の安全域は広い。現金が厚く、借金に追われることもない。しかし、その現金はファンドに出資するための手持ち資金で、自由には使えない。帳簿の自己資本に対し、稼ぎのROEは5%前後にとどまる。資本が稼ぎを生む力は、資本コストに届いていない。
経営の資本の使い方は、近年は改善している。必要資金の半減、自社株買い、配当の下限の設定は、株主を意識した動きだ。
持ち続けたい会社かと問われれば、答えは割れる。事業は長く続くが、値段が帳簿を下回る今も、割安とは言い切れない。ROEが資本コストを超える兆しが見えれば、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。ファンドの運用手数料と、投資先を売って得る利益だ。
一つ目は運用の仕事だ。ジャフコは「JAFCO SV」シリーズなど、複数のファンドを組成し、年金基金や金融機関から資金を預かる。預かった額に応じて管理報酬が入り、成績が良ければ成功報酬が加わる。2026年3月期の管理報酬は約32億円、成功報酬は約4億円だった。成功報酬は前の期の約13億円から大きく減った。
二つ目は自己資金の投資だ。ファンドに会社自身も出資し、投資先の上場や売却で値上がり益を得る。2026年3月期のキャピタルゲインは約80億円。国内の投資は約95億円の利益で、海外は赤字だった。
投資の中身は、スタートアップへのベンチャー投資が件数の中心で、成熟企業を買うバイアウト投資が金額の一部を占める。この期の投資実行は約194億円、45社。うちベンチャーが40社だった。
会社は2026年3月期の第3四半期から、連結をやめて単体の決算に移った。収益の形は単純で、売上のほとんどが投資の売却収入と手数料だ。人手が主な費用で、年間の経費はおよそ60億円とみる。
新しいファンドは動いている。2025年12月に設立したSV8シリーズには、約580億円が集まった。目標は前のSV7シリーズの約980億円を超えることだ。
優良さと弱いところ
ジャフコの強みは、50年以上の実績と、投資先の上場まで面倒を見る力にある。累計の出資約束は1兆円を超え、上場させた投資先は1,000社を超える。年金などの機関投資家に、継続して選ばれていることがその証拠だ。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは、手数料の高さにはない。ファンドの手数料率は、世界の運用業界の相場で決まる。ジャフコだけが高く取れるわけではない。堀と呼べるのは、良い起業家に早く会える関係と、実績という信用だ。これは長く続くが、薄れもする。
競合は多い。国内にはSBIインベストメント、グロービス・キャピタル、ANRI、WiLなどの独立系がある。大手金融系のベンチャー部門も同じ土俵だ。海外の大型ファンドも、有望な投資先を取りにくる。
稼ぐ力はむらが大きい。営業利益は2015年3月期の約380億円から、2026年3月期の約56億円まで振れた。ROEの過去10年の中央値は6.5%で、資本コストを下回る。
経営は資本の使い方を改めた。2022年に野村総合研究所の株を売り、その代金で自社株を買った。必要資金を1,200億円から600億円へ半減させ、配当も株主資本の6%か純利益の5割の大きい方にした。筆者は、この姿勢を評価する。ただ、稼ぎそのものはまだ追いついていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の未上場投資は、安定して拡大してきた。ベンチャーエンタープライズセンターの集計では、2024年度の国内外の投資額は約3,544億円で、過去最高を更新した。人口が減っても、起業と投資の裾野は広がっている。
市場は大きくなったが、お金は上位に集まる。国内のスタートアップの調達額は2025年に約7,600億円でほぼ横ばいだった。上位5社がAI関連で調達額の約7割を占めた。ジャフコのような幅広く投資する会社には、選ぶ目がいっそう問われる局面だ。
鍵を握るのは出口、つまり投資先がどう現金になるかだ。国内の出口は、小粒の新規上場が中心で、米国のような巨大な上場や大型の買収は少ない。グロース市場の上場が増えれば追い風になり、市場の信頼が揺らげば直撃する。
競争は二つの顔を持つ。国内の独立系とは、良い投資先と機関投資家の資金を奪い合う。海外のファンドは、有望な企業に高い評価額を付けて持っていく。ファンドの規模は大きくなる傾向だが、手数料率はなかなか上がらない。
数量は、ファンドの運用残高と、会社自身の投資残高で測る。人口に直結する需要ではないので、ここでは実質で10年に1〜1.5倍の幅で置く。価格は、手数料と投資の回収益が物価とともに上がるとみて、10年で1.34倍を基本にした。
資本政策と M&A
資本政策は、ここ数年で大きく変わった。2022年に、保有していた野村総合研究所の株を全部売り、税引き後の代金のうち420億円で自社株を買った。必要資金は1,200億円から600億円へ減らした。
背景には、旧村上ファンド系の投資会社が約2割を保有していた事情がある。会社は2022年12月に公開買付けで自社株を買い、大株主の持ち分を整理した。いま大株主の顔ぶれは当時と変わっている。
配当の方針は、2026年3月期から株主資本の6%と純利益の5割の大きい方だ。純利益が落ちても、株主資本にもとづく下限が配当を支える。2026年3月期は純利益を上回る水準の配当を出した。自社株買いも約50億円実施した。
長期の目標は、運用総額を6,700億円、純利益を220〜250億円、ROEを15〜20%とするものだった。新しいファンドへの会社の出資比率は、40%から20%へ下げる計画だ。出資を減らす分、手数料と成功報酬で稼ぐ割合を増やす。
筆者は、この目標を大きく割り引いて読む。直近の純利益は66億円で、目標の3分の1に届かない。買収される側になる可能性は、利益の安定しない会社として小さくないが、大株主の構成から決め打ちはできない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
いまは谷にいて、これから利益が戻る。2026年3月期の純利益は約66億円で、IPO(新規上場)が少なく成功報酬も細った年だ。国内のベンチャー投資額は2024年度に過去最高を更新した。投資先の上場が増えれば、利益は大きく跳ねる。
資本の使い方が変わった。野村総合研究所株の売却と自社株買いで、会社は資産をふくらませる路線をやめた。必要資金は600億円へ半減し、配当は株主資本の6%を下限にする。出資比率は新しいファンドで40%から20%へ下がるので、同じ資本でより大きなファンドを動かせる。
新しいファンドも育っている。SV8シリーズは設立から数か月で約580億円を集め、目標はSV7の約980億円超だ。管理報酬は、預かる額に比例して積み上がる。成績が出れば、成功報酬は前の期の約13億円のように大きく乗る。
財務の厚みも効く。自己資本比率は85%で、不況でも会社は揺らがない。市場の谷でも投資を続けられるのは、強い。10年で投資の回収益が名目で伸びれば、純利益は190億円規模まで見える。
慎重な見方
利益は小さく、しかも荒い。2023年3月期の純利益約400億円は、保有していた株の売却益が主だった。それを除けば、過去10年のROEの中央値は6.5%で、資本コストを下回る。直近3年の営業利益は56〜125億円で、会社が掲げる純利益220〜250億円はまだ遠い。
手数料率は上がらない。管理報酬はファンドの規模で決まる。成功報酬は、ほとんど運に近い。2026年3月期は約4億円まで縮み、前の期の3分の1にも届かなかった。
国内の出口は小粒だ。IPOは小ぶりな企業が中心で、巨大な上場や大型の買収は少ない。調達額は上位のAI企業に集まっており、幅広く投資する会社に有利とは限らない。海外の投資は赤字だった。
財務が堅いことは、稼ぎの弱さの裏返しでもある。現金の大半は、ファンドへの出資に回す資金だ。自己資本の厚みで、価値が支えられるわけではない。ROEが資本コストに届かない限り、帳簿より安い値段が妥当だ。
不況が来れば、出口が止まり、ファンドの評価額が下がる。成功報酬は消え、会社は手数料だけで経費を賄う姿になる。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力の弱さの指摘が強い。直近の実績が、ROEの低さと利益のむらをはっきり示している。
財務の堅さと資本政策の改善は評価できるが、これは下値を支える材料で、利益の水準を押し上げる材料ではない。ファンドの規模の拡大と出資比率の引き下げは、10年かけて効くが、まだ成果は見えていない。
確率は中立に33%を置いた。強気側(楽観・やや楽観)に32%、慎重側(やや悲観・悲観)に35%とし、わずかに慎重側を厚くした。過去10年のROEの低さと、出口市場の小ささを重く見たためだ。大きく崩れる悲観は13%にとどめた。財務の厚みで、事業が壊れる筋書きは起きにくいと見たからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,380 円1,253 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,534 円808 億円)。 今の値に割り戻すと 2,147 円1,130 億円、今との差 −3.9%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,695 円2,999 億円 | 2,184 円1,150 億円 | +252.7% | +13.4% | 788 円415 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,174 円1,671 億円 | 1,861 円980 億円 | +125.4% | +8.5% | 1,108 円583 億円 |
| 中立 | 33% | 2,564 円1,350 億円 | 1,614 円850 億円 | +87.0% | +6.5% | 1,379 円726 億円 |
| やや悲観 | 22% | 790 円416 億円 | 1,329 円700 億円 | −5.1% | −0.5% | 466 円246 億円 |
| 悲観 | 13% | 713 円376 億円 | 627 円330 億円 | −40.0% | −5.0% | 174 円92 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,380 円1,253 億円 | 1,534 円808 億円 | +75.2% | +5.8% | 3,915 円2,061 億円 |
今の株価時価総額 2,234 円1,176 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 出口市場が広がり、大型ファンドの成功報酬が効く 利益 192 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 5,695 円2,999 億円
投資の出口が広がる10年だ。新規上場の件数と規模が伸び、大型の買収も増える。SV8以降のファンドは、前の世代を大きく超える規模で集まり、運用総額は実質で今の6割増になる。
会社の出資比率は下がり、同じ資本で動かすファンドが大きくなる。成功報酬が毎年のように乗り、手数料の稼ぎは今の2倍を超える。自己資金の投資も、残高が8割ほど増え、回収の率も上がる。
こうして純利益は190億円ほどになる。資本は配当と自社株買いで株主に返し続け、ROEは13%台に乗る。会社は、日本のベンチャー投資の中核として、いまの低い評価を脱する。ただしこの水準は、会社が掲げた220〜250億円には届かない。
- ファンド運用(管理報酬・成功報酬):数量 6,500(ファンドの運用総額(億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.01(運用総額 1 億円あたりの手数料収入(億円・名目)=管理報酬と成功報酬の平均の率 × 物価の倍率)→ 売上 87 億円・営業利益 48 億円。運用総額 6,500 億円(実質、今の 1.6 倍)、手数料の率は物価並み+成功報酬の上積み、利益率 55%
- 自己資金の投資(キャピタルゲイン):数量 900(会社の投資残高(億円・取得原価ベースの実質))× 価格 0.28(投資残高 1 億円あたりの年間の回収益(億円・名目)=回収の率 × 物価の倍率)→ 売上 252 億円・営業利益 159 億円。投資残高 900 億円(実質、今の 1.8 倍)、回収の率は物価並みの 1.3 倍、利益率 63%
倍率:事業の純利益 192 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.62 倍、時価総額 2,999 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の出口市場の拡大、新ファンドの大型化、成功報酬の連続という三つがそろう必要がある。起きれば大きいが、直近の実績がそれを支えておらず、確度は高くない。
やや楽観 22% ファンドが大型化し、投資の回収も着実に伸びる 利益 125 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 3,174 円1,671 億円
ファンドは一回り大きくなり、運用総額は実質で今の4割増になる。SV8が目標に届き、次の世代も同じ規模を保つ。出資比率の引き下げで、自己資金の投資は伸びを抑えるが、残高は今の5割増になる。
成功報酬は年によって大きく振れるが、平均すると今よりずっと厚い。手数料の率は、競争で少し下がっても、物価並みに上がる分が補う。
利益は今の2倍弱の125億円ほどだ。配当は下限を守り、10年で1,000億円近くを返す。ROEは9%台で、資本コストをわずかに上回る。強い会社ではないが、財務の厚みと長い実績で、安定した評価を得る。
- ファンド運用(管理報酬・成功報酬):数量 5,600(ファンドの運用総額(億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.01(運用総額 1 億円あたりの手数料収入(億円・名目)=管理報酬と成功報酬の平均の率 × 物価の倍率)→ 売上 70 億円・営業利益 37 億円。運用総額 5,600 億円(実質、今の 1.4 倍)、手数料の率は物価並み+成功報酬の上積み、利益率 52%
- 自己資金の投資(キャピタルゲイン):数量 750(会社の投資残高(億円・取得原価ベースの実質))× 価格 0.24(投資残高 1 億円あたりの年間の回収益(億円・名目)=回収の率 × 物価の倍率)→ 売上 178 億円・営業利益 100 億円。投資残高 750 億円(実質、今の 1.5 倍)、回収の率は物価並みの 1.1 倍、利益率 56%
倍率:事業の純利益 125 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.37 倍、時価総額 1,671 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新ファンドが集まり、国内の投資額が高い水準を保つ筋書き。会社の方針(出資比率の引き下げ、配当の下限)が機能する、実現しやすい上振れ。
中立 33% 物価とともに伸びるが、ROEは資本コスト並みにとどまる 利益 108 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,564 円1,350 億円
投資の出口は今の延長で、ファンドは緩やかに大きくなる。運用総額は実質で今の3割増。手数料の率は物価並みに上がる。自己資金の投資は、出資比率の引き下げで残高の伸びが4割にとどまる。
成功報酬は、年によって大きく振れる。平均すると今より厚いが、2026年3月期の13億円のような年は、数年に一度だ。経費は物価で上がり、人員も増えるので、営業利益率は今の水準から大きくは動かない。
純利益は今の1.6倍、約108億円。配当と自社株買いで、10年に850億円ほどを返す。自己資本は今とほぼ同じで、ROEは8%前後。物価分の伸びを除くと、利益は実質でほとんど増えない。会社は財務の堅い、資本コスト並みの稼ぎの会社のままだ。
- ファンド運用(管理報酬・成功報酬):数量 5,200(ファンドの運用総額(億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.01(運用総額 1 億円あたりの手数料収入(億円・名目)=管理報酬と成功報酬の平均の率 × 物価の倍率)→ 売上 63 億円・営業利益 30 億円。運用総額 5,200 億円(実質、今の 1.3 倍)、手数料の率は物価並み(1.34 倍)、利益率 48%
- 自己資金の投資(キャピタルゲイン):数量 720(会社の投資残高(億円・取得原価ベースの実質))× 価格 0.22(投資残高 1 億円あたりの年間の回収益(億円・名目)=回収の率 × 物価の倍率)→ 売上 155 億円・営業利益 87 億円。投資残高 720 億円(実質、今の 1.44 倍)、回収の率は物価並み(1.34 倍)、利益率 56%
倍率:事業の純利益 108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,350 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の実績(ROE 5〜7%、成功報酬の縮小)と、会社の方針が効き始める可能性を折り合わせた中心の筋書き。出口市場は今の延長で、大きな変化はないとみた。
やや悲観 22% 出口が細り、手数料も削られて低収益が続く 利益 52 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 790 円416 億円
国内の出口は小粒のまま広がらず、有望な投資先は海外のファンドや大型の買収に流れる。ファンドの運用総額は実質で今と変わらず、手数料の率は競争で5%ほど下がる。成功報酬は数年に一度、小さく出るだけだ。
自己資金の投資は、残高がやや増えるが、回収の率は2割弱落ちる。評価額の低迷で、投資損失の引当も増える。
営業利益は今を少し下回る約54億円。純利益は50億円ほどで、ROEは4%台に落ちる。それでも会社は、配当の下限で700億円ほどを返す。財務が堅く、経営が揺らぐことはないが、稼ぐ力は資本コストをはっきり下回る。
- ファンド運用(管理報酬・成功報酬):数量 4,000(ファンドの運用総額(億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.01(運用総額 1 億円あたりの手数料収入(億円・名目)=管理報酬と成功報酬の平均の率 × 物価の倍率)→ 売上 46 億円・営業利益 16 億円。運用総額 4,000 億円(実質、今と同じ)、手数料の率は今の 0.95 倍×物価、利益率 35%
- 自己資金の投資(キャピタルゲイン):数量 520(会社の投資残高(億円・取得原価ベースの実質))× 価格 0.18(投資残高 1 億円あたりの年間の回収益(億円・名目)=回収の率 × 物価の倍率)→ 売上 95 億円・営業利益 38 億円。投資残高 520 億円(実質、今の 1.04 倍)、回収の率は今の 0.85 倍×物価、利益率 40%
倍率:ROE 4.6%で k 8%を下回る。ためた利益は額面未満の価値なので、倍率は稼ぎで測る。RONIC=8.5%+1/2×(4.6%−8.5%)=6.6%、g 4%から正当化 PER=8.7倍が上限。稼ぐ力が資本コストを大きく下回る筋書きなので、上限より低い8.0倍に置いた。
確率:新規上場の低迷と手数料率の低下が続く筋書き。直近3年の営業利益の低さと海外投資の赤字が示すとおり、実際に起こりうる。
悲観 13% 出口が止まり、資金も集まらず、投資の価値が大きく傷む 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 713 円376 億円
株価の急落が長引き、国内の新規上場がほとんど止まる。投資先は資金が尽き、評価額が大きく下がる。会社自身の投資残高は、取得原価の半分近くまで評価損が出る。
ファンドの募集も止まる。年金や金融機関は、成績が出ていない運用会社に新しい資金を出さない。運用総額は実質で今の6割まで縮み、手数料の率も下がる。成功報酬はなくなる。
営業利益はほぼゼロになり、経費を手数料で賄えない。配当は最初の数年だけ払い、あとは大きく削る。この間の配当は利益を超え、現金と投資の売却で払う。会社は、現金と売れる投資を持った、小さな運用会社になる。現金が厚いので存続は揺らがないが、もう成長する会社ではない。
- ファンド運用(管理報酬・成功報酬):数量 2,400(ファンドの運用総額(億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.01(運用総額 1 億円あたりの手数料収入(億円・名目)=管理報酬と成功報酬の平均の率 × 物価の倍率)→ 売上 25 億円・営業利益 3 億円。運用総額 2,400 億円(実質、今の 0.6 倍)、手数料の率は今の 0.85 倍×物価、利益率 10%
- 自己資金の投資(キャピタルゲイン):数量 300(会社の投資残高(億円・取得原価ベースの実質))× 価格 0.11(投資残高 1 億円あたりの年間の回収益(億円・名目)=回収の率 × 物価の倍率)→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。投資残高 300 億円(実質、今の 0.6 倍)、回収の率は今の 0.5 倍×物価、利益率 0%
倍率:この筋書きの稼ぐ力は純利益5億円÷k 8%=約60億円と小さく、価値は現金と売れる資産で決まる。今の自己資本1,341億円に0.28倍を掛けて約375億円に置いた。ファンドへの出資約束が重なり、純現金の全額は株主に戻らないとみた。売れる資産の内訳は floor_assets_why に書いた。PBR は中立の0.71倍を大きく下回る。
確率:世界的な株価の急落でIPO市場が閉じ、ファンドの募集も止まる筋書き。2000年前後と2008年にベンチャー投資が大きく傷んだ前例がある。財務の厚みで事業が壊れる形は避けられるとみて、13%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ファンド運用(管理報酬・成功報酬)
ファンドを組成して年金・金融機関から資金を預かり、運用額に応じた管理報酬と、成績に応じた成功報酬を得る。
| 数量ファンドの運用総額(億円・今の値段で測った実質) | 価格運用総額 1 億円あたりの手数料収入(億円・名目)=管理報酬と成功報酬の平均の率 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 0.01 | 36 | 16 |
| 10 年後 中立 | 5,200 | 0.01 | 63 | 30 |
取り方:2026年3月期の投資事業組合運用収益は約36.4億円(管理報酬32.1億円、成功報酬4.3億円)。運用総額は非開示で、2022年の基本方針の3,877億円と、その後のファンドの入れ替わり(米国・アジアの縮小、国内の新ファンドの大型化)を相殺して4,000億円と推定した。手数料収入÷運用総額で 1 億円あたり0.0091億円。経費は全社で約60億円(営業収益約116億円-営業利益56億円)とみて、運用側に約20億円を配分し、セグメント利益は16.4億円と置いた。運用総額は実質、物価の分は価格に入れる。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
自己資金の投資(キャピタルゲイン)
ファンドに会社自身も出資し、投資先の上場・売却で値上がり益を得る。バイアウト投資も含む。
| 数量会社の投資残高(億円・取得原価ベースの実質) | 価格投資残高 1 億円あたりの年間の回収益(億円・名目)=回収の率 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 0.16 | 80 | 40 |
| 10 年後 中立 | 720 | 0.22 | 155 | 87 |
取り方:2026年3月期のキャピタルゲインは約80.4億円(国内約94.7億円、海外は約14億円の損失)。国内投資の引当金残高約89億円は引当率19.3%と開示されており、国内の投資残高は約463億円と逆算できる。海外・その他を加えて投資残高を500億円と推定した。回収益÷残高で 1 億円あたり0.1608億円。経費の配分は約40億円で、セグメント利益は39.6億円(全社56.0億円との合計)。残高は実質、物価の分は価格に入れる。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
IPO市場と出口の細り
利益のほとんどが、投資先の上場や売却で決まる。新規上場が減ればキャピタルゲインが落ち、成功報酬も消える。2026年3月期の成功報酬は約4億円と、前の期の約13億円から縮んだ。国内の出口は小粒で、回復の時期も読みにくい。
利益のむら
純利益は2023年3月期に約400億円、翌期に約75億円と、年ごとに大きく振れる。過去10年のROEの中央値は6.5%で、資本コストを下回る。特定の年の好業績を、毎年の稼ぎとして読むと見誤る。
ファンドの募集
管理報酬は、集まるお金の額で決まる。SV8シリーズは約580億円が集まったが、目標は前のSV7の約980億円超だ。運用成績が落ちれば、年金や金融機関は次の資金を出さない。募集が止まれば、手数料の土台が細る。
海外投資の損失
2026年3月期は、国内の投資が約95億円の利益で、全体の約80億円を海外の損失が押し下げた。会社の投資は国内が中心だが、海外の残りの投資の評価が下がると、利益を食う。
資本の使い方
現金は厚いが、大半はファンドへの出資に回す資金で、自由には使えない。配当の下限(株主資本の6%)が純利益を上回る年は、資本を取り崩して払うことになる。還元が稼ぎを超え続けると、自己資本が細る。
競合と人材
国内の独立系や大手金融系、海外の大型ファンドが、同じ起業家と機関投資家の資金を争う。優秀なキャピタリストの流出は、成績と信用に直結する。人手が主な費用なので、人件費の上昇も利益率に効く。
今後の分かれ目
- 国内の新規上場が数四半期続けて増え、投資先の上場が相次ぐ
- やや楽観の確率を上げてよい。ただし利益は年ごとに振れるので、倍率までは上げない。
- SV8シリーズが目標の980億円を超えて集まる
- 運用総額の伸びが想定を上回るとみて、やや楽観の側に寄せる。
- 成功報酬が数年にわたって10億円を超えて続く
- 手数料収入の質が上がったとみる。中立の筋書きの利益を一段上げて見直す。
- 株価の急落でIPO市場が閉じ、投資先の評価損が増える
- やや悲観・悲観の確率を引き上げる。成功報酬が消え、自己資金の投資も傷む。
- ファンドの募集が目標に届かない、または出資者の離脱が相次ぐ
- 手数料の土台が細るとみて、慎重側に寄せる。
- 大株主が動く、または買収の提案が出る
- 条件が少数株主に有利かどうかを確かめる。ROEが低い間は、再編の圧力が強まる。
見ておくもの
- 国内の新規上場の件数と規模(グロース市場)
- SV8シリーズの募集額と、次のファンドの出資比率
- 成功報酬とキャピタルゲインの四半期の推移
- 配当(株主資本の6%)と自社株買いの実績
倍率と資本コストの決め方
倍率は式と事業の経済性だけで決めた。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)に、k 8%(基本7.5%+循環1.0%)、g 4%を入れた。中立はROEが k を下回るので 1÷k=11.8倍が上限で、利益が投資の売却益に偏る質の低さを見つつ、ROE÷k が0.93なので約9割の10.2倍に置いた。今の株価・PER・PBR、過去の倍率、同業の倍率は使っていない。悲観は、稼ぐ力と純現金・売れる投資で置いた。現金約610億円はファンドへの出資の手持ち資金が大半で、余った現金として分けていない。事業は貸す側のリースを持たず、新リース会計の影響は小さい。同領域のJIAは k 9.0%(借金と寿命の分が高い)で、ジャフコは純現金で寿命が長く k を低く置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→15.62 倍・やや楽観 PER 11.8→13.37 倍・中立 PER 10.2→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。