結論
小林洋行は、商品先物と取引所の為替取引のフジトミ証券を核に、保険の代理、千葉のゴルフ場、東京・中央区の賃貸不動産、ネット広告を抱える小さな複合企業だ。筆者の結論は「割高」で、いちばんの理由は、100 億円の自己資本から年に 3 億円ほどしか稼げていないことだ。
株価は帳簿の 6 割ほどで、一見すると安い。手元には現金と上場株、都心の不動産がある。だが少数株主がそれを受け取れるのは、会社が売るか清算する時だけだ。そうでない限り、価値は毎年の稼ぎで決まる。
稼ぎの柱である個人の商品先物と取引所の為替取引は、長い目で細ってきた。賃料は確かだが、4 億円の本社費をまかなうのがやっとだ。過去 10 年の ROE の中央値はマイナスで、筆者はこの形が 10 年で大きく変わるとは見ていない。帳簿の安さは、資本の使い方の悪さの裏返しだ。
値打ちが動くのは、会社が資産を売って配る時か、誰かが会社ごと買う時だ。どちらも今は兆しが無いので、筆者は筋書きの外に置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産は良いが、事業は持ちたくない」と筆者は見る。
オーナーの目で見ると、稼ぎの源は賃料と相場の手数料だ。賃料は確かだが、4 億円の本社費を払うと手元にはほとんど残らない。相場の手数料は、10 年先に今より厚い姿が描けない。
資本の使い方も問題だ。100 億円の自己資本で年 3 億円しか稼げない状態が続き、ためた利益は額面未満の価値しか生まない。現金と上場株と不動産をただ持っている形で、株主のために働かせていない。
株価が帳簿の 6 掛けでも、安全域があるとは言えない。少数株主は資産の売却を決められず、手に入るのは毎年の小さな配当だけだからだ。価値が上がる道は、会社が資産を売って配るか、誰かが会社ごと買うかだ。それは筆者の筋書きの外にある。払う値段が帳簿より安いことは、それだけでは安全域にならない。
何で稼ぐ会社か
中核は子会社のフジトミ証券だ。東京金融取引所の為替証拠金取引「くりっく365」の取り次ぎ、商品先物の委託売買、金地金の販売で手数料を得る。営業収益の 4 割強を占めるが、手数料は相場の荒れ方で大きく変わる。直近は為替の受取手数料が 35% 減った。
生活・環境事業は、生命保険と損害保険の代理、広告用の電設資材の卸、LED 照明の販売だ。売上は 11 億円あるが利益は薄い。
スポーツ施設は、千葉県長生郡のゴールデンクロスカントリークラブの運営だ。100 万㎡の土地を持つが、帳簿の値は 5 億円ほどにすぎない。
不動産業は、本社のある中央区の賃貸マンションとビジネスホテルの賃貸だ。売上は 9 億円弱だが、部門の利益は 2.6 億円と全社でいちばん厚い。
最後に、SEO 対策やサイト制作のネット広告の子会社がある。
5 つの部門の利益の合計は 6 億円近いが、本社の費用が 4 億円かかり、連結の営業利益は 2 億円に縮む。
このほか、受取配当と利息が年に 1 億円ほど入る。上場株の配当と手元の現金の利息だ。純利益が営業利益より大きいのはこのためで、稼ぎの 3 分の 1 は資産を持っているだけで入ってくる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは見当たらない。個人向けの商品先物と取引所の為替取引は、ネット証券の安い手数料と店頭の FX、暗号資産の取引に客を取られてきた。フジトミ証券の強みは、昔からの客と自動売買の仕組みくらいだ。
資本の効率は悪い。自己資本は 100 億円あるが、ROE は 3% 前後で、過去 10 年の中央値はマイナスだ。現金・上場株・都心の不動産という良い資産を持ちながら、本社の費用が利益を食う。
良い所は、賃貸不動産の立地だ。中央区の住宅とホテルは空室が出にくく、物価に合わせて賃料を上げやすい。建物の減価償却は建てた時の値段のままなので、賃料が上がれば利益は少し厚くなる。
経営は「不採算部門からの撤退と M&A」を掲げるが、10 年以上同じ形が続いている。部門の数が多いのに、どれも規模が小さく、本社の手間だけがかかる形だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
個人の商品先物は、2000 年代半ばに大きく縮んだ業界だ。勧誘の規制が強まり、商品先物の会社は合併や廃業で数を減らした。小林洋行もこの時期に長い赤字を経験した。
今の取引の主役は、ネット証券の安い取引と店頭の FX、それに暗号資産だ。取引所の為替取引「くりっく365」は透明さが売りだが、手数料の安さでは店頭の FX に勝てない。金の値上がりで金地金と金の先物は注目されるが、相場が落ち着けば量は戻る。
保険の代理は、手数料の体系の見直しと大手の代理店の統合が進み、小さな代理店は利益を出しにくい。
ネット広告の制作と運用は、AI の自動運用と検索の要約に置き換わる仕事の典型だ。量は 10 年で 4 割減ると筆者は見る。
都心の賃貸住宅とホテルは、人口の集まる東京で需要が底堅い。家賃は物価に近く上がる。ただし建て替えの費用は建築費の上昇で膨らむ。
ゴルフ場は、プレーする人の高齢化で来場が細る業界だ。首都圏から遠い千葉の郊外のコースは、値上げで客を保つのが難しい。
まとめると、この会社が立つ 5 つの業界のうち、伸びるのは都心の賃貸だけで、残りは横ばいか縮む。全社の稼ぎを押し上げる力は、業界の側からは来ない。
資本政策と M&A
配当は安定を基本とし、2026/03 期の配当性向は 26% だった。今期の配当は「先行きが不透明」として未定だ。一方で自社株買いは続けており、2025 年から 2026 年 8 月までに発行済の 6% ほどを買った。期末後に買った分は自己資本の起点から外し、10 年の還元には入れていない。10 年の還元は配当と自社株買いを合わせて利益の 45% とみる。
純現金は約 18 億円ある。証券子会社の規制の自己資本に要る分を残し、8 億円を余った現金とみた。戻り方は、自社株買いの実績はあるが配当が薄いので 0.75 とした。
上場株は 16 億円あり、三井住友トラストやリゾートトラストの株だ。配当は利益に入っているので、別に足していない。会社は M&A を掲げるが、大きな案件は 2022 年のフジトミ証券の完全子会社化くらいだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の 6 割で買える。自己資本 100 億円の中身は、現金、三井住友トラストなどの上場株、東京・中央区の賃貸マンションとホテル、千葉の 100 万㎡のゴルフ場だ。都心の不動産は帳簿より時価が高いはずで、実際の資産の値打ちは株価をかなり上回る。
稼ぎも底を打った。4 期続けて黒字で、賃貸不動産は物価に合わせて賃料を上げられる。減価償却は昔の値段のままなので、賃料が上がるほど利益は増える。金の値上がりで金地金と金の先物の取引も増えている。
資本政策も動き始めた。自社株買いで 1 年余りに発行済の 6% を買った。会社は不採算部門の撤退と M&A を掲げており、ネット広告や電設資材を整理すれば本社費は軽くなる。
小さな会社で資産が厚いので、ファンドや同業の買収の的にもなりうる。資産の値打ちが外から見直される日が来る。今の値段は、悪い筋書きをすでに十分に映している。資産を持っているだけで年 1 億円の配当と利息が入ることも、下値を支える。
慎重な見方
資産が厚いことと、株主が報われることは別だ。この会社は 100 億円の自己資本で年 3 億円しか稼がず、過去 10 年の ROE の中央値はマイナスだ。良い資産を持ちながら、本社の費用 4 億円が稼ぎを食い続けている。
稼ぎの柱も細っている。取引所の為替取引の手数料は直近で 35% 減り、商品先物の売買高も 1 割減った。個人の客は高齢化し、若い客はネット証券と暗号資産に行く。ネット広告は AI の自動運用に置き換わる仕事だ。
不採算部門の撤退は 10 年以上言い続けてきたが、形は変わっていない。自社株買いは良いが、配当の性向は 26% にとどまり、今期は未定だ。
資産の値打ちを少数株主が受け取るには、会社が売るか清算する必要がある。経営にその気配はない。帳簿の安さは、資本の使い方の悪さを映しているだけだ。安い株が 10 年安いままという例は、この業界に多い。稼ぎが増えない限り、株価が帳簿に近づく理由は無い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと筆者は判断した。資産の厚さは事実だが、少数株主が受け取れるのは毎年の稼ぎと小さな還元だけで、その稼ぎは自己資本の 3% に満たない。強気の見方の根拠である資産の売却や買収は、起きる証拠が無い。確率は中立を真ん中に、悲観側(35%)を楽観側(30%)より厚くした。資産の売却や配る方針が出たら、見方を改める。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 227 円27 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 84 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 150 円18 億円、今との差 −69.4%、 期待の年率 −4.5%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 477 円56 億円 | 143 円17 億円 | +26.2% | +2.4% | 62 円7 億円 |
| やや楽観 | 20% | 325 円38 億円 | 112 円13 億円 | −11.0% | −1.2% | 87 円10 億円 |
| 中立 | 35% | 212 円25 億円 | 88 円10 億円 | −39.0% | −4.8% | 105 円12 億円 |
| やや悲観 | 20% | 136 円16 億円 | 55 円7 億円 | −61.1% | −9.0% | 38 円4 億円 |
| 悲観 | 15% | 84 円10 億円 | 34 円4 億円 | −75.8% | −13.2% | 18 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 227 円27 億円 | 84 円10 億円 | −36.8% | −4.5% | 310 円36 億円 |
今の株価時価総額 491 円58 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 金と商品の相場が沸き、本社を絞る 利益 5 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 477 円56 億円
金や原油の相場が大きく動き続け、個人の商品先物と取引所の為替取引が息を吹き返す筋書きだ。フジトミ証券は自動売買の仕組みと新しい支店で口座を増やし、預り証拠金は 2 割増える。手数料の率は下がるが、取引の量が補う。
同時に会社は掲げてきた「不採算部門からの撤退」を実行し、ネット広告や電設資材の小さな部門を整理する。本社の費用は物価ほどは増えず、全社の営業利益は 5 億円を超える。中央区の賃貸マンションとビジネスホテルは、都心の家賃の上昇を受けて賃料を上げる。
それでも事業の稼ぐ力は自己資本の 4% 程度で、資本コストには届かない。
- 投資・金融サービス(フジトミ証券):数量 144(預り証拠金(億円・推定))× 価格 0.22(預り 1 億円あたりの年の営業収益(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 5 億円。預り証拠金 144 億 × 収益率(今の 1.2 倍)、営業利益率 15%
- 生活・環境(保険代理・電設資材):数量 1,100(取引先(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。取引先 1,100 社 × 1 社あたり売上(今の 1.34 倍)、6%
- ゴルフ場:数量 48,000(年の来場者(人・推定))× 価格 0.00(1 人あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。来場 4.8 万人 × 1 人あたり単価(今の 1.34 倍)、8%
- 不動産(中央区の賃貸):数量 400(賃貸の部屋(室・推定))× 価格 0.03(1 室あたりの年の賃料(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。賃貸 400 室 × 1 室あたり年の賃料(今の 1.34 倍)、32%
- インターネット広告:数量 240(顧客(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。顧客 240 社 × 1 社あたり売上(今の 1.1 倍)、7%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 56 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:商品先物とくりっく365 の手数料は相場の荒れ方しだいで、10 年続けて追い風が吹く根拠は無い。本社費の削減も実績が乏しいので 1 割。
やや楽観 20% 相場はほどほど、賃料が支える 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 325 円38 億円
個人の商品先物は細り続けるが、金地金の販売と取引所の為替取引が量を保ち、預り証拠金は 5% 増える。手数料の率は、ネット証券の値下げに押されて物価ほどは上がらない。金融の部門の利益率は 12% まで戻る。
賃貸不動産は中央区という立地のおかげで空室が出にくく、賃料は 10 年で 3 割上がる。建物の減価償却は建てた時の値段のままなので、賃料が上がるほど利益率は少しずつ良くなる。ただ古い建物の更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、その分の現金は出ていく。
本社費は物価並みに増え、全社の営業利益は 3 億円台にとどまる。
- 投資・金融サービス(フジトミ証券):数量 126(預り証拠金(億円・推定))× 価格 0.21(預り 1 億円あたりの年の営業収益(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。預り証拠金 126 億 × 収益率(今の 1.15 倍)、12%
- 生活・環境(保険代理・電設資材):数量 1,100(取引先(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。取引先 1,100 社、5.5%
- ゴルフ場:数量 47,040(年の来場者(人・推定))× 価格 0.00(1 人あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。来場 4.7 万人、7%
- 不動産(中央区の賃貸):数量 400(賃貸の部屋(室・推定))× 価格 0.03(1 室あたりの年の賃料(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。賃貸 400 室 × 賃料(今の 1.3 倍)、31%
- インターネット広告:数量 210(顧客(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。顧客 210 社、6%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 38 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金地金と商品の取引は細りつつも残り、都心の賃料は物価に近く上がる。今の形が少し良くなる道として 2 割。
中立 35% 賃料で本社費をまかなう低い稼ぎが続く 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 212 円25 億円
個人の商品先物と取引所の為替取引は、ネット証券の安い取引と暗号資産に客を取られ、預り証拠金は 1 割減る。手数料の率も物価に負け、金融の部門の利益率は 9% にとどまる。保険の代理と電設資材は物価並みに伸びるが、利益は薄い。
ゴルフ場は千葉の郊外にあり、ゴルフ人口の高齢化で来場はやや減る。賃貸不動産は物価に近く賃料を上げ、全社の利益の柱であり続ける。
本社の費用は物価で 3 割近く増え、部門の利益の大半を食う。全社の営業利益は今と同じく 2 億円前後で、純利益は受取配当を足しても 2 億円ほどだ。自己資本の 2% に満たない稼ぎが 10 年続く。
- 投資・金融サービス(フジトミ証券):数量 108(預り証拠金(億円・推定))× 価格 0.20(預り 1 億円あたりの年の営業収益(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。預り証拠金 108 億 × 収益率(今の 1.1 倍)、9%
- 生活・環境(保険代理・電設資材):数量 1,045(取引先(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。取引先 1,045 社、5%
- ゴルフ場:数量 45,600(年の来場者(人・推定))× 価格 0.00(1 人あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。来場 4.6 万人、6%
- 不動産(中央区の賃貸):数量 400(賃貸の部屋(室・推定))× 価格 0.03(1 室あたりの年の賃料(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。賃貸 400 室 × 賃料(今の 1.25 倍)、31%
- インターネット広告:数量 180(顧客(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。顧客 180 社、5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 10 年の ROE の中央値はマイナスで、ここ 4 年もようやく黒字という程度。今の形が続く筋書きを真ん中に置いた。
やや悲観 20% 手数料の柱が細り、本社費が残る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 136 円16 億円
取引所の為替取引は、店頭の FX とネット証券に客を奪われ、預り証拠金は 3 割減る。商品先物は個人の客が高齢化で減り続ける。金融の部門は手数料の率も上げられず、利益はほぼ消える。
ネット広告は AI の検索の要約と広告の自動運用に仕事を奪われ、利益が出なくなる。保険の代理も手数料の見直しで薄くなる。
賃貸不動産だけが利益を出すが、本社の費用を埋めきれず、全社の営業利益は小さな赤字になる。受取配当で純利益はかろうじてゼロ近くに残る。価値は稼ぎでなく、今の自己資本のうち換金しやすい部分で付く。それも会社が持ち続ける限り、少数株主の手には半分ほどしか届かない。
- 投資・金融サービス(フジトミ証券):数量 84.0(預り証拠金(億円・推定))× 価格 0.18(預り 1 億円あたりの年の営業収益(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。預り証拠金 84 億、4%
- 生活・環境(保険代理・電設資材):数量 990(取引先(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。取引先 990 社、4%
- ゴルフ場:数量 40,800(年の来場者(人・推定))× 価格 0.00(1 人あたりの売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。来場 4.1 万人、3%
- 不動産(中央区の賃貸):数量 400(賃貸の部屋(室・推定))× 価格 0.03(1 室あたりの年の賃料(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。賃貸 400 室 × 賃料(今の 1.2 倍)、28%
- インターネット広告:数量 150(顧客(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。顧客 150 社、0%
倍率:稼ぎがほぼ消えるので PER でなく今の自己資本 99 億円に PBR 0.16 倍を掛けた。中身は余った現金 8 億円の 0.75 倍と、賃貸不動産の細い稼ぎ(賃料の利益 3 億円の税後を k で割り、本社費の分を引いた残り)。
確率:FX の受取手数料は直近で 35% 減った。取引所の為替と商品先物の個人の取引が細る流れは長く続いており、2 割を置いた。
悲観 15% 先物の商売が終わり、資産を食いつぶす 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 84 円10 億円
個人の商品先物と取引所の為替取引が細り切り、フジトミ証券は赤字を出し続ける。規制の自己資本の比率を保つために親会社が資金を入れ、手元の現金が減る。ネット広告とゴルフ場も赤字になる。
賃貸不動産の賃料だけが残るが、本社の費用と赤字の部門を埋められず、全社で毎年数億円の赤字が続く。会社は不採算部門の撤退を掲げてきたが、実行が遅れれば、その間に現金と有価証券が目減りする。
清算されない限り、少数株主は資産の使い道を決められない。価値は今の自己資本のごく一部まで落ちる。赤字の穴埋めに現金を使い、残った資産も株主に戻る見込みは薄い。
- 投資・金融サービス(フジトミ証券):数量 54.0(預り証拠金(億円・推定))× 価格 0.17(預り 1 億円あたりの年の営業収益(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 −1 億円。預り証拠金 54 億、赤字
- 生活・環境(保険代理・電設資材):数量 880(取引先(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。取引先 880 社、2%
- ゴルフ場:数量 33,600(年の来場者(人・推定))× 価格 0.00(1 人あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。来場 3.4 万人、赤字
- 不動産(中央区の賃貸):数量 400(賃貸の部屋(室・推定))× 価格 0.03(1 室あたりの年の賃料(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。賃貸 400 室 × 賃料(今の 1.15 倍)、26%
- インターネット広告:数量 90.0(顧客(社・推定))× 価格 0.01(1 社あたりの年の売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。顧客 90 社、赤字
倍率:赤字なので今の自己資本 99 億円に PBR 0.1 倍を掛けた。純現金 18 億円の半分ほどが赤字の穴埋めと規制の資本に消え、残りに戻り方を掛けた額と見た。ためた利益に床を掛けていない。
確率:商品先物の会社は 2000 年代から次々に消えた。フジトミ証券も同じ道をたどる可能性は低くないので、やや悲観と合わせて 35% にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
投資・金融サービス(フジトミ証券)
くりっく365・商品先物の委託売買と金地金の販売。手数料で稼ぐ。
| 数量預り証拠金(億円・推定) | 価格預り 1 億円あたりの年の営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.18 | 22 | 2 |
| 10 年後 中立 | 108 | 0.20 | 22 | 2 |
取り方:営業収益 22.07 億・利益 2.17 億(有報 2026/03)。預り証拠金は開示の数字が手元に無く、総資産 240 億から自己資本と固定資産を引いた残りから約 120 億と推定し、その 18% が年の営業収益とした。
生活・環境(保険代理・電設資材)
生命・損害保険の代理と、広告用の電設資材・LED 照明の卸。
| 数量取引先(社・推定) | 価格1 社あたりの年の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,100 | 0.01 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,045 | 0.01 | 14 | 1 |
取り方:営業収益 11.10 億・利益 0.57 億。取引先の数は開示が無く、1 社あたり年 100 万円として約 1,100 社と推定。
ゴルフ場
千葉県長生郡のゴールデンクロスカントリークラブ。
| 数量年の来場者(人・推定) | 価格1 人あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 48,000 | 0.00 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 45,600 | 0.00 | 5 | 0 |
取り方:営業収益 4.83 億・利益 0.32 億。1 人の来場あたり約 1 万円として年 4.8 万人と推定。コースの償却は取得の値段のまま(物価で増やさない)。
不動産(中央区の賃貸)
本社のある中央区の賃貸マンションとビジネスホテルの賃貸、宅地建物の取引。
| 数量賃貸の部屋(室・推定) | 価格1 室あたりの年の賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 0.02 | 9 | 3 |
| 10 年後 中立 | 400 | 0.03 | 11 | 3 |
取り方:営業収益 8.80 億・利益 2.57 億、賃貸等不動産の簿価 18.5 億。部屋の数は開示が無く、1 室年 220 万円として約 400 室と推定。償却は建てた時の値段のままで、賃料の上昇ほどは費用が増えない(10 年の償却は今と同じ年 1 億円弱)。更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。
インターネット広告
SEO 対策・サイト制作・広告の運用代行。
| 数量顧客(社・推定) | 価格1 社あたりの年の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 0.01 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 180 | 0.01 | 2 | 0 |
取り方:営業収益 3.66 億・利益 0.28 億。1 社年 120 万円として約 300 社と推定。AI エージェント代替の広告の制作・運用の型で、中立の数量は 10 年 0.6 倍、価格は物価なし。
リスクと懸念
個人の先物取引の縮小
個人の商品先物と取引所の為替取引は、ネット証券・店頭 FX・暗号資産に客を取られて細ってきた。為替の受取手数料は直近で 35% 減っており、柱の部門の利益が消える恐れがある。
本社費の重さ
5 つの部門の利益の合計 6 億円に対し、本社の費用が 4 億円かかる。物価で本社の費用が増えれば、部門の稼ぎが増えないかぎり連結の利益は消える。
資本の使い方
100 億円の自己資本のうち、現金・上場株・不動産が多くを占めるが、稼ぎは年 3 億円ほどだ。資産を売って配る方針は無く、少数株主は資産の値打ちを受け取れない。
AI エージェント代替
ネット広告の子会社の SEO 対策・サイト制作・運用代行は、AI の自動運用と検索の要約に置き換わる型の仕事だ。規模は小さいが、10 年で量は大きく減る。
規制と資本の要件
フジトミ証券は自己資本の規制の比率を保つ義務がある。赤字が続けば親会社が資金を入れる必要があり、手元の現金がそこに縛られる。
今後の分かれ目
- 不採算部門(ネット広告・電設資材など)の撤退や売却が実行されたら
- 本社費と赤字の種が減る。中立の利益を上げ、楽観側の確率を上げてよい。
- 賃貸不動産や上場株を売って特別配当や大きな自社株買いをしたら
- 資産の値打ちが少数株主に戻る道が開く。余った資産として足す額を見直す。
- くりっく365 と商品先物の手数料が 2 年続けて 2 割以上減ったら
- 柱の部門が細り切る筋書きが近いと見て、悲観側に重みを移す。
- ファンドや同業から買収の提案が出たら
- 本質価値の見方は変えず、提案の値段を資産の値打ちと比べる。
- 金の相場の上昇で金地金と金の先物の取引が大きく増えたら
- 一時の追い風か、口座の増加として定着するかを見て、中立の数量を見直す。
見ておくもの
- くりっく365 と商品先物の受取手数料
- 本社費(セグメントの利益の合計と連結の営業利益の差)
- 自社株買いと配当の方針
- 不採算部門の撤退の実行
- 賃貸不動産の賃料と空室
倍率と資本コストの決め方
倍率は今や過去の株価、PBR から置いていない。k 9.0%(基本 7.5% に循環・値決め力・寿命の各 +0.5%)で、事業の ROE が 2〜4% と k を大きく下回るので PER の上限は 1÷k の 11.1 倍とし、その 8.5〜9 割に置いた。やや悲観と悲観は稼ぎがほぼ消えるので、今の自己資本に低い PBR を掛けた(ためた利益には掛けていない)。政策保有株と賃貸不動産は配当と賃料を利益に残したので、資産の値打ちとしては足していない(二重を避けた)。金融の業種なので 10 年で溜まる現金の自動の上乗せは無い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.44→11.11 倍・中立 PER 9.44→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。