結論
フィード・ワンは、牛・豚・鶏の餌と養殖魚の餌を作る飼料メーカーだ。国内の販売数量でJA全農に次ぐ約15%を持つ2位で、民間では首位に立つ。筆頭株主は三井物産で、持分法適用の関連会社でもある。
筆者の結論はこうだ。今の値段は、事業の実力をほぼ織り込んでいる。安全域は厚くない。直近の決算は全利益段階で過去最高で、ROEも10%を超えた。だが営業利益率は2.8%にすぎず、その水準も売値の改定と採算重視の販売で押し上げた山だ。
飼料は商品である。売値はとうもろこしや魚粉の相場に連動して3か月ごとに改定され、値決めの主導権はこちらにない。原料の急変を転嫁しきれなかった2023年3月期は、営業利益が14億円まで落ちた。
需要も追い風ではない。酪農や畜産の担い手が減り、国内の配合飼料は約2,400万トンで横ばいから緩やかな減少に向かう。会社は北海道の子牛用代用乳、昆虫たんぱくや無魚粉の養殖飼料で伸ばす構えだが、利益の大半は今も畜産飼料の薄い利ざやだ。
10年先の中立は、国内の数量が1割弱減り、売値は物価並みに上がり、利益率は山から少し戻る姿である。利益はほぼ横ばいで、ROEは資本コストに届かない。確率で重ねた本質価値は、今の時価総額を1割半ほど下回った。割安と呼べる材料はなく、結論はやや割高だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は手を出す前に値段を問うべき事業である。長く持ちたい堀を持った会社ではなく、安く買えた時だけ報われる会社だ。
事業の本質は、世界の穀物相場と日本の畜産農家をつなぐ加工業である。強い堀は無い。値段は他社と横並びで、原料の上げ下げを数か月遅れで転嫁するだけだ。利益は転嫁の巧拙で動き、2023年3月期のように薄い利益が消える年もある。
資本の使い方は評価が分かれる。採算の悪い商いを切って利益率を上げた手腕は確かで、キャッシュフローも厚くなった。一方、需要が縮む産業で10年に800億円を投じる計画は、回収の確かさが見えにくい。稼いだ利益の半分近くを事業に再投資する会社は、ROEが資本コストを上回り続けて初めて報われる。
筆者がオーナー利益として見るのは、過去最高の今期ではなく、利益率2%台前半の平常な年である。この年の利益を物価で伸ばすと、10年後も利益は今とほぼ同じ規模にとどまる。そこに、需要の縮小と原料の波という2つの不確実さが乗る。
安全域は、倍率が低いことではなく、悲観の筋書きでも元本が大きく削れないことで測る。この会社の悲観は、価格競争と新工場の稼働不足が重なる姿で、時価総額は半分以下になりうる。上振れはあっても、下振れの方が深い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。餌が1トン売れるたびに、数千円の利ざやが残る。
セグメントは3つある。主力は畜産飼料で、売上の約77%を占める。酪農・肉用牛・養豚・養鶏の農家に、とうもろこしや大豆かすを配合した飼料を卸す。販売数量は年360万トン台。2026年3月期の利益は約102億円で、会社全体の利益の大半がここから出る。
水産飼料は売上の約9%で、ブリやマダイの養殖業者に餌を売る。主原料は魚粉で、高値が続いている。愛知県豊川市に168億円をかけて新工場を建てており、完成すれば稼働率が利益を左右する。食品事業(豚枝肉と鶏卵)は売上の約14%だが、利益は2億円に満たない。飼料の顧客である畜産農家と結びつきを深める川下の事業で、鶏卵の新工場は当面は減価償却の負担になっている。
売り方は、原料価格の変動を3か月ごとの改定で売値に載せる仕組みだ。急騰した時は飼料安定基金も使える。この転嫁の速さと、銘柄を絞って採算の悪い商いを切る販売方針が、直近の増益をつくった。
調達では三井物産との結びつきが強い。穀物の買い付けは商社の力を借りる部分が大きく、規模のメリットはあるが、独自の調達力で差をつけているわけではない。工場は全国に十数か所あり、統合前の2社の拠点を整理して効率を上げてきた。一方で、畜産の農家は大規模化しており、大口の顧客ほど価格交渉の力が強くなる点は無視できない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、規模と全国の工場網にある。厚い堀とは言えない。
良い点から挙げる。国内の畜産飼料で約15%を握り、全農系を除けば最大手だ。工場網が全国にあるため、輸送費を抑えながら大小の農家に配送できる。営業キャッシュフローは過去最高の170億円で、自己資本比率は46%まで上がった。借金に追われる会社ではない。配当は累進(減らさず増やす)を方針とし、自己資本に対する配当率3%を掲げている。
弱い点も明確だ。まず、価格を決める力が弱い。飼料の原料は世界相場で動き、完成品も同業が横並びで改定するため、ブランドで上乗せを取りにくい。営業利益率は過去10年のほとんどで1.5〜2.8%に収まる。2026年3月期の2.8%は最高水準で、これが続くと見るのは楽観だ。
次に、顧客の側に力がある。養豚・養鶏・酪農の大規模経営が増え、全農系や商社系の他社と見積もりを競わせる。水産では養殖業者の餌代が経費の約8割を占め、魚粉高で採算が悪化すれば値上げは通りにくい。
経営は、資本の使い方で評価が割れる。今期の営業キャッシュフローを大きく上回る投資を10年で約800億円計画しており、水産新工場など1件ごとの稼ぐ力が問われる。ROICは畜産で13%台に達したが、水産は新工場の建設仮勘定で6.6%に下がっている。投資の回収が見えるまでは、資本効率は高いと言い切れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の飼料市場は、緩やかに縮む成熟産業である。
国内の配合飼料の生産は、約2,400万トンで長く横ばいだ。農林水産省の資料でも、家畜の飼養頭羽数の減少で緩やかに減ったあと、近年は2,400万トン前後で推移している。ただ酪農や肉用牛では小規模な農家の離農が続く。国は肉用牛の生産量を2030年に37万トンと小幅な増加で描くが、頭数を押し上げる力は乏しい。
競争の形は、全農系が最大で、フィード・ワンが約15%、日清丸紅飼料が約10%と続く。この3社に中部飼料、日本農産工業などが並ぶ。飼料の品質に大差はなく、勝負は価格・配送・技術相談である。原料の穀物は米国産が中心で、為替と相場で売値が動く。ドル円は150円で固定して見るが、相場そのものの上下は避けられない。
水産は事情が違う。国は2030年にブリ類24万トン、マダイ11万トンを目標に掲げるが、2022年のブリ類は11万トンで目標の半分に届かない。魚粉はペルーの漁獲減と円安で高く、国会図書館の整理でも餌代が海面魚類養殖の支出の約78%に達する。魚粉を減らした飼料や昆虫たんぱくの需要は伸びるが、養殖業者の採算が悪ければ数量が伸びない。
もう1つの論点が再編である。需要が縮む中で、工場の統廃合と製造コストの引き下げは業界の課題と位置づけられている。フィード・ワン自身が統合で生まれた会社で、次の再編の担い手にも、対象にもなりうる。
資本政策と M&A
資本政策は、自己資本比率を50%前後に保ちながら、投資と還元を両立させる方針だ。
還元は累進配当を軸とする。自己資本に対する配当率は3%を基本とし、2026年3月期は3.1%、2027年3月期は3.3%の予定である。自社株買いはこれまで大きくない。
投資は10年で約800億円。うち、水産の新工場に168億円、苫小牧工場の代用乳設備に約20億円を充てる。ただし、飼料の工場投資は稼働率が全てで、需要が縮む中では回収が遅れやすい。
M&Aは、統合で生まれた会社らしく再編への備えがある。大口の買収は直近で見当たらないが、同業の統合や三井物産との連携強化が起こりうる。三井物産は議決権の約25.6%を握り、売却や買い増しの動きがあれば株価に効く。
会社は株価についても、PER15倍、PBR1倍、中長期1.5倍の目標を掲げている。目標は評価に値するが、本質価値を決めるのは利益の持続性で、掲げた倍率そのものではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の水準が1段上がったと見る。畜産飼料は銘柄を絞り、採算の悪い取引を切り、価格改定を徹底した。数量が減っても利益が2割増えたのは、販売の質が変わった証拠だ。ROICも畜産で13%台に達し、資本コストを大きく上回る。
次の成長の種もある。北海道は酪農・肉用牛の大産地で、子牛用の代用乳に約20億円の設備を入れる。水産では魚粉に頼らない飼料と昆虫たんぱくを商品化しており、魚粉が高い今は、養殖業者に乗り換える動機が強い。愛知の新工場が動けば、水産の利益は過去最高を更新し続ける。
財務も軽い。営業キャッシュフローは過去最高で、自己資本比率は50%に近づく。累進配当に加え、会社自身がPBR1倍超を掲げて資本効率を意識している。三井物産の調達力も後ろ盾だ。
再編が進めば、同業の統合で工場の稼働率と調達コストが改善する。利益率が4%台で定着し、水産と食品が加わるなら、10年後のROEは9%を超え、資本コストを上回る。
慎重な見方
今の利益は山である。営業利益率2.8%は過去10年で最高で、平均は2%強にすぎない。畜産飼料の4.6%という利益率が続くなら、同業が黙っていない。全農系も日清丸紅飼料も、価格で取り返しにくる。
飼料は商品で、売値は原料相場の後追いである。とうもろこしや魚粉が急騰すれば転嫁が遅れ、2023年3月期のように利益が数分の1になる。しかも数量は構造的に減る。酪農や肉用牛の離農が続き、頭数が減れば飼料は減る。会社自身も数量を落としながら利益を取る路線で、守りの経営だと言える。
投資の回収にも疑問がある。水産の新工場はROICを6.6%まで押し下げており、養殖業者は魚粉高で苦しんでいる。顧客が減れば工場は遊ぶ。食品の鶏卵も、新工場の減価償却が利益を食っている。
さらに、10年で800億円という投資は、縮む市場では回収が遅い。稼いだ利益を再投資しても、ROEは資本コストに届かないなら、ためた利益は額面未満の価値しかない。PER15倍という会社の目標は、事業の経済性からは遠い。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方である。今の利益は採算重視の販売が重なった山で、数量が構造的に減る産業では平常に戻る力が働く。強気の根拠である代用乳や昆虫たんぱくは、まだ利益を動かす規模ではない。
そこで確率は、楽観・やや楽観の合計を28%に抑え、やや悲観を26%、悲観を10%に置いた。中立は、利益率が山から少し戻り、数量が1割弱減る姿である。
一方、強気の主張にも根拠がある。財務は軽く、畜産の採算改善は一時の運ではなく、販売方針の変化が含まれる。だから悲観は10%にとどめ、構造的な負けまでは置かなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,231 円854 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 727 円278 億円)。 今の値に割り戻すと 1,552 円594 億円、今との差 +7.8%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,288 円1,641 億円 | 1,045 円400 億円 | +270.3% | +14.0% | 427 円163 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,454 円1,322 億円 | 888 円340 億円 | +201.6% | +11.7% | 869 円332 億円 |
| 中立 | 36% | 2,551 円976 億円 | 888 円340 億円 | +138.8% | +9.1% | 1,238 円474 億円 |
| やや悲観 | 26% | 855 円327 億円 | 523 円200 億円 | −4.4% | −0.4% | 358 円137 億円 |
| 悲観 | 10% | 564 円216 億円 | 105 円40 億円 | −53.5% | −7.4% | 67 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,231 円854 億円 | 727 円278 億円 | +105.4% | +7.5% | 2,958 円1,132 億円 |
今の株価時価総額 1,440 円551 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 採算改善が定着し、水産と食品も稼ぎ頭になる10年 利益 104 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 4,288 円1,641 億円
畜産飼料は、採算重視の販売がそのまま根づく。数量は国内の縮小を小さく抑え、北海道の代用乳が下支えする。利益率は5%近くを保つ。水産は愛知の新工場が稼働し、低魚粉・無魚粉の飼料が主流になって、数量が1割強増える。利益率は6%台に乗る。
食品の鶏卵は新工場の償却を吸収して黒字が定着する。会社全体の営業利益は130億円台に乗り、ROEは9〜10%で資本コストを超える。
調達と工場の統合で同業との差がつき、再編でも主導権を握る。ただし、飼料が商品である点は変わらない。原料相場が急変しても、価格を通す力がある前提だ。
配当は累進で増え、自社株買いも加わる。会社が掲げる資本効率の目標を、利益の実力が追い越す10年になる。
- 畜産飼料:数量 353(畜産飼料の販売数量(万トン))× 価格 8.25(1トンあたり販売単価(万円))→ 売上 2,908 億円・営業利益 145 億円。シェアを守り採算も維持
- 水産飼料:数量 11.5(水産飼料の販売数量(万トン・推定))× 価格 33(1トンあたり販売単価(万円・推定))→ 売上 383 億円・営業利益 25 億円。低魚粉飼料で取り込む
- 食品(食肉・鶏卵):数量 10.8(食肉・鶏卵の取扱量(万トン・推定))× 価格 60(1トンあたり平均単価(万円・推定))→ 売上 648 億円・営業利益 13 億円。鶏卵が収益化
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.04 倍、時価総額 1,564 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:畜産の4%台後半の利益率が守られ、水産の新工場と低魚粉飼料が計画どおり立ち上がり、食品も黒字に乗る、という連続の成功が要る。実現すれば強いが、商品の加工業で複数が同時にうまくいく確度は高くない。
やや楽観 20% 畜産の採算が高止まりし、水産・食品が少し伸びる10年 利益 87 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,454 円1,322 億円
畜産飼料は、数量が約5%減る。そのかわり利益率を4.6%に保つ。銘柄の絞り込みと価格改定の徹底が続く。水産は新工場の効果が出て数量が7%伸び、利益率も5%台後半になる。食品は黒字が定着するが薄利のままだ。
会社全体の営業利益は110億円台となり、純利益は90億円近くまで伸びる。配当は累進で増え、自社株買いも小さく入る。
ROEは8%台前半で、資本コストをわずかに超える。ただし堀が厚いわけではなく、同業の値下げで崩れる余地は残る。
鍵になるのは、競合の出方である。全農系や日清丸紅飼料が数量を取りにこない限り、この筋書きは成り立つ。会社が掲げる数量を落としても採算を取る路線を、取引先が受け入れ続けるかが分かれ目だ。
- 畜産飼料:数量 345(畜産飼料の販売数量(万トン))× 価格 8.25(1トンあたり販売単価(万円))→ 売上 2,848 億円・営業利益 131 億円。採算重視が続く
- 水産飼料:数量 10.7(水産飼料の販売数量(万トン・推定))× 価格 33(1トンあたり販売単価(万円・推定))→ 売上 356 億円・営業利益 20 億円。新工場が効く
- 食品(食肉・鶏卵):数量 10.3(食肉・鶏卵の取扱量(万トン・推定))× 価格 60(1トンあたり平均単価(万円・推定))→ 売上 620 億円・営業利益 10 億円。黒字が定着
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.25 倍、時価総額 1,240 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画の延長で、畜産の利益率4%台半ばが続き、水産と食品が少し伸びる姿。ただし、同業が黙っていない点で、中立より確率を低くした。
中立 36% 数量は縮み、利益率は山から戻る、成熟した飼料加工業の10年 利益 70 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,551 円976 億円
10年後も、フィード・ワンは国内2位の飼料メーカーである。ただ畜産の飼養頭数が減り、販売数量は今より1割弱少ない。売値は物価並みに上がるので、売上は4,000億円近くになる。
問題は利益率だ。畜産飼料は4%強まで戻る。採算重視の効果は残るが、同業の競争で山の水準は保てない。水産は5%、食品は1%強で、会社全体の営業利益は90億円前後と、今とほぼ同じ規模にとどまる。物価で名目が増える分を、利益率の戻りと数量減が打ち消す。
配当は累進を守り、自己資本は1,000億円近くまで積み上がる。ROEは7%台前半と、資本コストに届かない。再編があっても、薄利の構造は変わらない。
- 畜産飼料:数量 334(畜産飼料の販売数量(万トン))× 価格 8.25(1トンあたり販売単価(万円))→ 売上 2,758 億円・営業利益 116 億円。頭数減で数量は1割弱減る
- 水産飼料:数量 10.0(水産飼料の販売数量(万トン・推定))× 価格 33(1トンあたり販売単価(万円・推定))→ 売上 333 億円・営業利益 17 億円。横ばい
- 食品(食肉・鶏卵):数量 9.8(食肉・鶏卵の取扱量(万トン・推定))× 価格 60(1トンあたり平均単価(万円・推定))→ 売上 592 億円・営業利益 7 億円。薄利のまま
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.09 倍、時価総額 916 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界ノートの中心の見通し(国内需要は緩やかに縮み、原料の上下は数か月遅れで転嫁する)と、直近の山の利益率が平常に向かうという見方を重ねた中心の筋書き。同業の中立と物差しを合わせた。
やや悲観 26% 競争で利ざやが縮み、水産の新工場が重荷になる10年 利益 30 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 855 円327 億円
畜産の離農が加速し、飼料の数量は15%減る。全農系と日清丸紅飼料が価格で取りにきて、売値は物価ほど上がらない。畜産の利益率は3%に落ちる。
水産は魚粉高で養殖業者の廃業が続き、数量は1割近く減る。新工場の稼働率が上がらず、減価償却が利益を削る。食品は鶏卵の相場次第で、赤字すれすれが続く。
会社全体の営業利益は40億円強となり、純利益は30億円ほどに落ちる。配当は累進を保つのが苦しくなり、増配は止まる。自己資本はためた利益で積み上がるが、稼ぐ力は細る。
再編は進むが、薄利の構造を変えるほどの効果は出ない。三井物産との調達連携も、相場の急変を和らげる程度にとどまる。市場は、利益が山を越えたと確認するまで、会社の資本効率の改善を評価しない。
- 畜産飼料:数量 309(畜産飼料の販売数量(万トン))× 価格 8.00(1トンあたり販売単価(万円))→ 売上 2,472 億円・営業利益 74 億円。数量が減り競争で利ざやが縮む
- 水産飼料:数量 9.2(水産飼料の販売数量(万トン・推定))× 価格 32(1トンあたり販売単価(万円・推定))→ 売上 293 億円・営業利益 10 億円。魚粉高と養殖業者の廃業
- 食品(食肉・鶏卵):数量 9.4(食肉・鶏卵の取扱量(万トン・推定))× 価格 59(1トンあたり平均単価(万円・推定))→ 売上 547 億円・営業利益 3 億円。相場次第で赤字すれすれ
倍率:ROE約3.3%がk7.8%以下なので、PERの上限は1÷k(12.05倍)。稼ぐ力(純利益÷k)の約7割(8.5倍)に置いた。薄利が続き、資本の稼ぎがkに遠いため、上限の7割にとどめた。
確率:同業の値下げ攻勢と酪農・畜産の離農が重なり、利益率が2〜3%台へ戻る姿。水産では魚粉高で養殖業者が減り、新工場の稼働率が上がらない。業界の弱めのレンジで、やや楽観より確率を高くした。
悲観 10% 価格競争に巻き込まれ、新工場が重荷になる構造的な負けの10年 利益 −45 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 564 円216 億円
畜産の数量は25%減る。大口の農家が全農系や商社系との価格競争を迫り、売値の上昇は物価に届かない。利益率は1.5%まで落ちる。
水産は新工場が稼働不足で、数量・単価の両方が落ちる。食品は鶏卵の新工場の償却が重く、赤字になる。工場の減損も出る。
会社全体の営業利益は赤字となり、配当は大きく減り、10年の還元は数十億円にとどまる。足りない分は遊休資産の売却で賄う。再編の流れでは、買われる側に回る可能性が高く、事業価値は売れる資産の水準まで下がる。
水産の新工場の稼働不足と鶏卵の新工場は、減損の対象になる。自己資本は一時的に減り、資本政策は借入の返済と投資の凍結に傾く。残るのは、全国の工場網と畜産農家との取引という、売れる資産である。
- 畜産飼料:数量 273(畜産飼料の販売数量(万トン))× 価格 7.69(1トンあたり販売単価(万円))→ 売上 2,097 億円・営業利益 32 億円。価格競争に巻き込まれる
- 水産飼料:数量 8.0(水産飼料の販売数量(万トン・推定))× 価格 30(1トンあたり販売単価(万円・推定))→ 売上 239 億円・営業利益 2 億円。新工場が稼働率不足
- 食品(食肉・鶏卵):数量 8.4(食肉・鶏卵の取扱量(万トン・推定))× 価格 54(1トンあたり平均単価(万円・推定))→ 売上 454 億円・営業利益 −2 億円。赤字
倍率:赤字のため、PBRで置く。構造的な負けで、床は売れる資産の税後(約240億円)。今の自己資本617億円に0.35を掛けた約216億円で、床を下回る。
確率:同業の価格競争に巻き込まれ、畜産の数量が大きく減り、水産・鶏卵の新工場が稼働不足で減損になる、という重なり。商品の加工業は規模で負けると後退しやすいため、低くはない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
畜産飼料
牛・豚・鶏向けの配合飼料の製造・販売。国内の販売数量でJA全農に次ぐ約15%の第2位、民間企業では首位。全社売上の約77%、セグメント利益の大半を稼ぐ主力。
| 数量畜産飼料の販売数量(万トン) | 価格1トンあたり販売単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 364 | 6.16 | 2,237 | 102 |
| 10 年後 中立 | 334 | 8.25 | 2,758 | 116 |
取り方:販売数量は会社開示の363.5万トン(2026/03期)。売上2,237億円をその数量で割った6.16万円/トンが単価。セグメント利益102.4億円は開示値で、利益率は4.6%と過去の山。国内の配合飼料は約2,400万トン前後で横ばいが続き、同社は約15%を占める。数量は実質で、国内の飼養頭数が緩やかに減るため中立は10年0.92倍(市場は年0.5%減、採算重視の販売で一部のシェアを手放す分を加味)。単価は名目で、とうもろこし・大豆かす・運賃・人件費が物価並みに上がるとして中立は10年1.34倍。売値は3か月ごとの改定で原料の上下を遅れて転嫁する。
水産飼料
ブリ・マダイなどの養殖魚向けの配合飼料。国内の販売数量シェアは約18%で第2位。愛知県豊川市に新工場を建設中。
| 数量水産飼料の販売数量(万トン・推定) | 価格1トンあたり販売単価(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 25 | 249 | 14 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 33 | 333 | 17 |
取り方:売上248.6億円とセグメント利益14.3億円は開示値。販売数量は開示が見当たらないため、国内の養殖用配合飼料の需要(約55万トンと推定)に同社のシェア約18%を掛けて約10万トンと置き、売上をその数量で割った24.9万円/トンを単価とした(推定)。魚粉の高騰を価格に通す力はあるが、餌代は養殖の経費の約8割で、これ以上は通しにくい。数量は実質で、国の養殖目標は伸びを描くが実績は届かず、中立は10年1.0倍。低魚粉・無魚粉の製品で取り込めればシェアが上がる。単価は名目で中立1.34倍。
食品(食肉・鶏卵)
豚枝肉の販売と鶏卵の生産・販売。飼料事業の顧客との結びつきを生かす川下の事業で、利益は薄い。
| 数量食肉・鶏卵の取扱量(万トン・推定) | 価格1トンあたり平均単価(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.4 | 45 | 421 | 2 |
| 10 年後 中立 | 9.8 | 60 | 592 | 7 |
取り方:売上420.5億円とセグメント利益1.6億円は開示値。食肉と鶏卵の数量内訳は開示が見当たらない。豚枝肉が1トン約60万円、鶏卵が約30万円という卸売価格の水準から平均単価を約45万円と置き、取扱量を約9.4万トンと推定した。数量は実質で、鶏卵の新工場が立ち上がる分、中立は10年1.05倍。単価は名目で中立1.34倍(相場は上下するが10年では物価並み)。利益率は0.4%と薄く、会社は27/03期に3億円を見込む。
リスクと懸念
原料相場の急変と転嫁の遅れ
とうもろこしや魚粉が急騰すると、3か月ごとの改定では転嫁が間に合わない。2023年3月期は営業利益が14億円まで落ちた。飼料安定基金で緩和はされるが、利ざやが数分の1になる年は10年に一度では済まない。
国内の飼養頭数の減少
酪農・肉用牛・養豚の離農が続けば、飼料の需要そのものが縮む。国内の配合飼料は約2,400万トンで横ばいだが、頭数の減少は止まらず、会社の数量は10年で1割弱減ると置いた。数量が落ちれば工場の稼働率も下がる。
今の利益率は山にある
畜産飼料のセグメント利益率は4.6%と過去最高で、会社全体でも2.8%。同業が値下げで取り返しにくれば、この水準は保てない。直近の増益は、採算の悪い取引を切った効果も含み、数量を落としながらの利益だ。
水産の新工場と魚粉高
水産飼料は魚粉が主原料で、高値で養殖業者の採算が悪化している。そこに168億円の新工場が加わり、稼働率が上がらなければ減価償却が利益を削る。水産飼料のROICは新工場の建設仮勘定で6.6%に下がっている。
食品事業の収益性
食肉と鶏卵を扱う食品事業は、売上が約420億円あるのに利益は1.6億円。鶏卵は相場高と新工場の償却で減益だった。この事業が飼料の販売を支える効果はあるが、単独の利益が伸びない限り、資本を食う側に回る。
大口顧客と大株主の存在
畜産の大規模化で、大口の農家と全農系が競わせる力を強める。筆頭株主の三井物産は議決権の約25.6%を持つ。持分を整理する場合は、市場への売り圧力が出るうえ、調達の連携の形も変わりうる。
今後の分かれ目
- とうもろこしや魚粉の相場が急騰したら
- 転嫁が遅れて利益率が薄くなる。やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 畜産飼料の利益率が4%台を保ったまま数量も維持できたら
- 採算改善が構造的だったと判断し、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 水産の新工場が計画どおり稼働し、無魚粉飼料と昆虫たんぱくの販売が伸びたら
- 水産の利益率が6%台で定着し、楽観側に寄せる。
- 同業の統合や工場の再編が進んだら
- 稼働率と調達コストが改善し、利益率が上がる。ただし統合の費用と減損の可能性も見る。
- 全農系や日清丸紅飼料が値下げ攻勢に出たら
- 畜産飼料の利益率が3%台に戻り、悲観側に重みを移す。
- 三井物産が持株を大きく動かしたら
- 調達や経営への影響を見直す。買い増しなら再編の可能性、売却なら需給の悪化。
見ておくもの
- 四半期ごとの畜産飼料の販売数量とセグメント利益率
- とうもろこし・魚粉の輸入価格と3か月ごとの改定の幅
- 水産新工場(愛知県)の稼働時期と稼働率
- 代用乳の設備(苫小牧)と昆虫たんぱく・無魚粉飼料の販売数量
- 鶏卵・食肉の収益性(食品事業の利益)
- 累進配当・自己資本に対する配当率3%の維持と自社株買い
- 三井物産の持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
畜産飼料・水産飼料・食品の3セグメントを、数量(実質)と単価(名目、物価並み)に分けて10年先を積んだ。畜産は数量0.92倍、利益率4.2%で、2026年3月期の4.6%から過去10年の平常に向けて少し戻した。倍率は式から決めた。中立のROEは約7.4%でk7.8%に届かないため、PERの上限は1÷k(12.05倍)で、利益の質が薄い(原料相場に連動する商品・利益率が薄い)ことから約8割の9.9倍に置いた。楽観側はROEがkを超えるが、残る割合を1/2とし、上限の9割台に置いた。悲観は稼ぐ力ではなく売れる資産の床で置き、今の自己資本に掛けた。借金は純有利子負債135億円と軽く、純現金ではないので余った現金は立てていない。自己資本は今の617億円に純利益を足し還元を引いて流した。会社は自らPER15倍を掲げるが、倍率の根拠にはしていない。今の値段に合わせる調整はしていない。工場は自社保有が中心でリース会計基準の影響は小さいが、2028年3月期以降の開示は形が変わるので、今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いた。資本コストは、同業の中部飼料と循環の物差しをそろえ、quality を+0.3%から+0.8%に直した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して8.3%。事業は傾いていないので上乗せはない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.30% → 7.80%。