結論
横浜フィナンシャルグループは、神奈川県内のメインバンクシェア20.3%・14年連続首位という国内地方銀行で最も強い顧客基盤を持つ横浜銀行を中核に、東日本銀行を傘下に持つ地銀最大手である。2025年10月にコンコルディア・フィナンシャルグループから社名を変更し、地元ブランドへ回帰した。中期経営計画(2025〜27年度)はROE9%超・純利益1,200億円超を掲げ、政策金利0.75%を前提にしつつ、金利が0.25%上がるごとにROEが約1%改善する感応度を持つ。短期金利が2%へ向かう「金利のある世界」では、法人・個人の貸出利ざやが構造的に拡大し、これが10年後の利益を押し上げる最大の要因になる。加えて、首都圏の上場・大企業向けM&A・ストラクチャードファイナンス、資産家向け不動産融資、L&Fアセットファイナンスの買収やMILIZEへの出資といった戦略的投資が非金利収益を広げている。ここでは法人貸出・個人貸出・資産運用・ソリューション業務の3つを数量×価格で積み上げ、その時点のROEと資本コストから倍率を決めて株価を出した。含み益は純資産に入済み)。中立は10年後にROE10.5%・PER12.1倍(k 8%の正当化PERの上限の8.5割)に置いた。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の面では、神奈川県内で既に確立した顧客基盤を使って、金利上昇に伴う利ざやの拡大がほぼ自動的に利益を押し上げる構造になっており、追加の大きな設備投資を伴わずに資本効率が改善しやすい点を、バリュー投資の観点では評価できる。堀の広さについては、14年連続で守り続けている神奈川県内シェア20.3%という顧客基盤の厚さと、東京都内へのストラクチャードファイナンス・資産家ローンによる横展開の余地を評価する。しかし銀行業は規制業種であり、信用サイクルの悪化時には自己資本が傷みやすいという構造的な制約は消えないため、堀の強さと業績の読みやすさは別問題として扱うべきだと考える。資本配分については、政策保有株式の圧縮と総還元性向80%を掲げた機動的な自己株買いの組み合わせを評価するが、L&Fアセットファイナンスの買収やMILIZEへの出資のような非金利収益への戦略投資がどこまで収益化するかは未知数である。最後の安全域の判断では、確率で重みづけた本質価値は今の時価総額に対し−9.4%で、値段に見合う程度で、安全域は薄いと見る。
何で稼ぐ会社か
横浜銀行による神奈川県内の法人・個人向け融資と預金業務が収益の土台で、県内企業数の20.3%(約1.5万社)をメインバンクとして取り込み、業種・企業規模のあらゆるカテゴリーで県内シェア1位という圧倒的な顧客基盤を持つ。傘下の東日本銀行は東京都心部を拠点とする第二地方銀行で、独自ブランドを維持しながらグループ内で機能を連携させている。事業は大きく3つの柱からなる。法人向けは上場企業・大企業を対象に、M&Aアドバイザリーやストラクチャードファイナンス(LBOローン・資本性劣後ローン等)といった高度なソリューションを提供し、首都圏立地を生かした差別化を図る。個人向けは資産形成層から富裕層まで500万人超の顧客基盤を持ち、特に首都圏の地主による不動産建設資金融資(資産家ローン)に力を入れている。預金面では金利競争に頼らず、店舗網と営業力による粘着性の高い預金確保を重視する。非金利収益の強化策として、不動産担保ローン事業を手掛けるL&Fアセットファイナンスを総投資額500億円超で買収し、AI・DX領域ではMILIZEに出資して持分法適用会社とした。東京都内では、きらぼし銀行とストラクチャードファイナンス分野で業務提携し、メガバンクが主導する東京市場の顧客争奪戦に地銀連合で対抗する動きも進めている。
優良さと弱いところ
神奈川県という人口900万人超の大きな経済圏で14年連続シェア首位を守り続けている顧客基盤の厚さが最大の堀であり、法人の多くが横浜銀行をメインバンクに選ぶことで生まれる取引基盤が価格決定力の源になっている。地銀再編が進む業界の中で、横浜FGは規模的に自ら買収される側になる可能性が低く、むしろきらぼし銀行との提携のように再編の受け皿・ハブになりやすい立場にある(kabufuのTOB・買収確率推定は10年以内12.7%と低め)。弱点は、国内の銀行業が規制業種であるため急激な収益改善は難しく、信用サイクルの悪化局面では自己資本が傷みやすい構造が変わらない点である。東京都内でのシェアは3メガバンクが58%を握る一方で横浜銀行は1%にとどまり、首都圏での規模拡大はきらぼし銀行との提携など連合によって補っている段階にある。経営の規律という点では、政策保有株式を2030年3月末までに連結純資産比10%未満へ圧縮する方針を掲げ、配当性向40%程度+総還元性向80%を目指す機動的な自己株買いを進めるなど、資本配分の規律は明確に改善している。L&Fアセットファイナンスの買収やMILIZEへの出資は、ソリューション・DX人材を外部から取り込む資本配分として評価できるが、買収した事業の収益化がどこまで進むかは未知数である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の銀行業は長い低金利時代を経て、2024年の政策金利解除以降「金利のある世界」に入った初期段階にある。短期金利が2%に向けて上がっていく過程で、預金の約定利回りの追随が遅れるため預貸ざやは構造的に拡大しており、横浜FGの中期経営計画が前提とする政策金利0.75%から2%への上昇過程は、地方銀行に共通する最大の追い風になる。一方、神奈川県内の貸出需要そのものは人口減少や企業の内部留保志向で伸びが鈍く、量でなく価格(利ざや)で稼ぐフェーズが続く。地方銀行最大の構造要因は再編であり、「1県1行」体制への収束が進む中、千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行がそれぞれ経営統合で基本合意するなど再編ドミノが進行している。横浜FG自身は神奈川県内で既に独占的な地位を確立しており、再編の対象というより、きらぼし銀行との業務提携のように再編ドミノの受け皿・提携の軸になる立場にある。東京市場では3メガバンクが法人取引の58%を握る寡占構造が続き、横浜銀行・きらぼし銀行のような地銀連合がストラクチャードファイナンス等のニッチで対抗する構図である。中長期的には、政策保有株式の売却が進むほど資本の安定性が高まり、信用コストの急増というリーマン級の悲観シナリオが来ない限り、ROEの改善トレンドが続くと見られている。資産運用・資産管理の分野ではNISA拡充・高齢化に伴う相続需要が追い風で、公募投資信託残高は2026年6月末に359兆円と過去最高を更新しており、横浜FGのソリューション収益の拡大余地も大きい。
資本政策と M&A
株主還元は配当性向40%程度に加え、総還元性向80%を目指す機動的な自己株式取得を組み合わせている。長期的な企業価値向上に資する戦略的投資案件が見当たらない場合は、配当に加えて自己株買いに資本を回す方針を明確にしている。政策保有株式は2025年度に目標を見直し、2030年3月末までに連結純資産に対する時価保有残高比率を10%未満に抑える方針で、他のメガバンク(20%未満目標)より厳しい水準を掲げている。M&Aは、不動産担保ローン事業を手掛けるL&Fアセットファイナンスの買収(総投資額500億円超)や、AI・DX人材を補強するMILIZEへの出資(持分法適用会社化)という形で、非金利収益の強化に資本を配分している。ガバナンスでは2025年6月に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行し、取締役7名以内・監査等委員3名、独立社外取締役6名という体制で取締役会の活性化を図っている。国内では地銀再編の受け皿・提携の軸になる立場にあり、自らが買収対象になる可能性は実質的に低い規模にある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
短期金利が2%に向けて上がる過程で、法人・個人の貸出利ざやは構造的に拡大し、横浜FG自身の試算でも政策金利が0.25%上がるごとにROEが約1%改善する。中期経営計画が掲げるROE9%超・純利益1,200億円超は、2026年3月期にコア業務純益が30%増・2期連続で過去最高益を更新した勢いを考えれば十分に射程に入っており、金利が2%まで上がればROE12%超も視野に入る。神奈川県内で14年連続・8業種全てで首位というシェアの厚さは、地銀再編が進む中でも揺らがない競争優位であり、東京都内へはきらぼし銀行との業務提携を通じてストラクチャードファイナンス等のニッチで着実に横展開できる。L&Fアセットファイナンスの買収やMILIZEへの出資は、自前で築くには時間のかかる非金利収益源・DX機能を取り込む優れた資本配分であり、500万人超の個人顧客基盤に対する資産家ローン・資産運用ソリューションの深掘りと合わせて、金利サイクルへの依存度を下げながら収益を積み上げていける。政策保有株式の圧縮が計画通り進めば資本の安定性が高まり、総還元性向80%を目指す自己株買いの原資も厚くなる。地方銀行の中で最大の規模と最も確立した地域基盤を持つ横浜FGは、金利正常化のメリットを最も安定して取り込める位置にある。
慎重な見方
金利が上がる過程は利ざやの拡大と同時に、神奈川県内の中小企業の資金繰りを厳しくし信用コストを押し上げる副作用も伴う。短期金利が2%まで上がりきった後に世界的な信用収縮が来れば、国内の与信費用が急増し、保有する株式・債券の評価損も重なってROEは一時的に大きく落ち込む。神奈川県内の貸出需要そのものは人口減少と企業の内部留保志向で伸びが鈍く、利ざや拡大の効果が一巡すれば成長の軸は資産運用・ソリューション収益に移るが、東京都内では3メガバンクが法人取引の58%を握り、横浜銀行のシェアはわずか1%にとどまっており、きらぼし銀行との提携だけでメガバンクの牙城を崩すのは容易ではない。L&Fアセットファイナンスの買収やMILIZEへの出資は、のれんの減損や期待した収益化が進まないリスクを常に抱える。地方銀行の再編ドミノが進む中、横浜FG自身は買収対象になりにくい規模だが、裏を返せば再編による大きなコスト削減効果も自ら得にくい立場にあり、県内シェアが既に飽和している以上、さらなる成長は東京都内での苦しい競争か、金利サイクルの恩恵だけに依存することになる。今の株価は神奈川県内シェア首位という既知の強みと中期経営計画の順調な進捗をすでに織り込んでおり、金利正常化のペースが計画より遅れるだけでも割高に見える値段である。
どちらに重みを置いたか
金利正常化の恩恵が神奈川県内の厚い顧客基盤にほぼ自動的に効くという点では強気の見方に分があるが、県内シェアが既に飽和に近く、東京都内での成長は提携頼みで時間がかかるという慎重な見方の指摘も軽くない。確率は中立に最も重みを置き、地銀最大手としての基盤の確かさを踏まえて楽観側をやや厚めに置いたが、信用コストの循環リスクと戦略投資の収益化が未知数である点から、悲観の尾も相応に残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,399 円2.66 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 866 円9,614 億円)。 今の値に割り戻すと 1,701 円1.89 兆円、今との差 +2.1%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,501 円3.89 兆円 | 975 円1.08 兆円 | +168.8% | +10.4% | 537 円5,962 億円 |
| やや楽観 | 25% | 3,410 円3.78 兆円 | 1,021 円1.13 兆円 | +166.1% | +10.3% | 1,108 円1.23 兆円 |
| 中立 | 30% | 2,571 円2.85 兆円 | 933 円1.04 兆円 | +110.4% | +7.7% | 1,051 円1.17 兆円 |
| やや悲観 | 21% | 1,446 円1.61 兆円 | 885 円9,825 億円 | +40.0% | +3.4% | 490 円5,434 億円 |
| 悲観 | 12% | 430 円4,770 億円 | 234 円2,596 億円 | −60.1% | −8.8% | 80 円884 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,399 円2.66 兆円 | 866 円9,614 億円 | +96.1% | +7.0% | 3,265 円3.62 兆円 |
今の株価時価総額 1,665 円1.85 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 首都圏ソリューション戦略と戦略的投資が結実する10年 利益 2,587 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 3,501 円3.89 兆円
10年間で短期金利2%・長期金利3%が定着し、神奈川県内の貸出利ざやは構造的に高い水準で安定する。L&Fアセットファイナンスの不動産担保ローン事業は規模を大きく伸ばし、MILIZEとのAI・DX連携も事務効率化と新たな収益源の両面で結実する。きらぼし銀行との提携は深化し、東京都内でのストラクチャードファイナンス・法人取引の存在感が着実に高まる。政策保有株式の売却はほぼ完了し、浮いた資本は大規模な自社株買いに回る。資産運用・ソリューション業務もNISA定着後の資産形成の広がりを取り込み、ROEは10年後も高水準を維持する、地方銀行として最も理想的な10年になる。
- 法人貸出:数量 14.3(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 2.0%(貸出利ざや(%))→ 売上 2,789 億円・営業利益 1,968 億円。残高 14.3 兆円(名目)× 利ざや 1.95%、利益率 70%
- 個人貸出:数量 8.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.7%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,342 億円・営業利益 958 億円。残高 8.0 兆円(名目)× 利ざや 1.68%、利益率 71%
- 資産運用・ソリューション:数量 10.5(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 894 億円・営業利益 668 億円。残高 10.5 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 75%
倍率:事業の純利益 2,587 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.02 倍、時価総額 38,857 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%の定常化、L&Fアセットファイナンス・MILIZE等の戦略投資の収益化、きらぼし銀行との提携深化が10年間すべて噛み合う前提で、確度は高くない。
やや楽観 25% ソリューション収益を軸に安定成長 利益 2,508 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 3,410 円3.78 兆円
短期金利2%・長期金利3%への定常化が進み、神奈川県内の貸出利ざやは高水準で安定する。L&Fアセットファイナンス・MILIZEは安定した収益貢献を続け、きらぼし銀行との提携も東京都内でのストラクチャードファイナンス・法人取引を着実に伸ばす。政策保有株式の売却はほぼ完了し、自社株買いが継続する。資産運用・ソリューション業務もNISA定着後の資産形成の広がりと高齢化に伴う相続需要を取り込みながら安定的に拡大し、神奈川県内のリテール基盤と首都圏のソリューション収益を両輪にする体制が定着する10年になる。
- 法人貸出:数量 13.7(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 2,423 億円・営業利益 1,763 億円。残高 13.7 兆円(名目)× 利ざや 1.77%、利益率 73%
- 個人貸出:数量 7.6(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,154 億円・営業利益 849 億円。残高 7.6 兆円(名目)× 利ざや 1.51%、利益率 74%
- 資産運用・ソリューション:数量 9.7(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 824 億円・営業利益 634 億円。残高 9.7 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 77%
倍率:事業の純利益 2,508 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.09 倍、時価総額 37,846 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の方向性が10年間おおむね維持され、戦略的投資の収益化が県内貸出の成熟を補う、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 30% 中立:金利は定常化し県内シェアの強さが続く 利益 2,008 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 2,571 円2.85 兆円
10年の間に短期金利2%・長期金利3%が定着し、神奈川県内の貸出利ざやは高めの水準で安定する一方、県内の人口減少で貸出の量そのものは伸び悩む。与信費用も景気循環を1〜2周してならした水準に戻る。L&Fアセットファイナンス・MILIZEは計画どおりの収益貢献にとどまり、きらぼし銀行との提携も東京都内での地位を緩やかに高める。政策保有株式の売却は完了し、資産運用・ソリューション業務もNISA定着後の標準的な成長軌道に乗る。神奈川県内シェア首位としての顧客基盤の厚さは変わらず維持される、特別な上振れも下振れもない10年になる。
- 法人貸出:数量 12.7(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,975 億円・営業利益 1,433 億円。残高 12.7 兆円(名目)× 利ざや 1.55%、利益率 73%
- 個人貸出:数量 7.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 997 億円・営業利益 743 億円。残高 7.1 兆円(名目)× 利ざや 1.40%、利益率 74%
- 資産運用・ソリューション:数量 8.9(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 755 億円・営業利益 572 億円。残高 8.9 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 76%
倍率:事業の純利益 2,008 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.21 倍、時価総額 28,534 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、神奈川県内の与信費用も景気循環を経て平均的な水準に戻る、最も重みを置く中心シナリオ。
やや悲観 21% 東京進出が停滞し成長が鈍る 利益 1,391 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 1,446 円1.61 兆円
国内の金利正常化は進むが、神奈川県内の人口減少・事業所数の減少が計画より加速し、法人・個人向け貸出の量の伸びがさらに鈍る。東京都内への展開はきらぼし銀行との提携だけでは計画どおり進まず、3メガバンクとの競争に阻まれる場面が増える。L&Fアセットファイナンス・MILIZEの収益化も不動産市況・デジタル競争の激化で計画より鈍る。政策保有株式の売却は完了するが、与信費用の増加分を自社株買いの抑制で吸収する場面も出る。資産運用・ソリューション業務の成長も市場環境の悪化で鈍化し、県内シェア首位という強みだけでは成長の鈍さを十分に補えない10年になる。
- 法人貸出:数量 10.7(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,350 億円・営業利益 809 億円。残高 10.7 兆円(名目)× 利ざや 1.26%、利益率 60%
- 個人貸出:数量 6.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 683 億円・営業利益 429 億円。残高 6.0 兆円(名目)× 利ざや 1.14%、利益率 63%
- 資産運用・ソリューション:数量 7.3(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 658 億円・営業利益 428 億円。残高 7.3 兆円(名目)× 率 0.90%、利益率 65%
倍率:10年後のROE8.4%(純利益1,391億円÷自己資本16,495億円)。k8%・g4.0%、残る割合1/2でRONIC=k+残る割合×(ROE−k)=8.2%、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.8倍(下限は1÷k=12.5倍)。競争や統合の遅れで稼ぐ力が鈍る姿。上限の9.0割に置き、11.54倍。還元を会社の方針(80%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:神奈川県内の人口減少が計画より加速し、きらぼし銀行との提携だけでは東京都内での成長が計画どおり進まない想定。10年という期間では停滞する年も相応に混ざる。
悲観 12% 構造的に負け、県内シェアだけでは資本効率が戻らない10年 利益 477 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 430 円4,770 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が発生し、神奈川県内の与信費用が急増する。人口減少が想定を超えて加速し、県内の貸出需要そのものが縮小する。L&Fアセットファイナンス・MILIZEへの戦略投資は期待した収益化に至らず、のれんの一部を減損する。東京都内への展開もデジタル専業銀行・ネット銀行との競争に阻まれ、きらぼし銀行との提携だけでは埋め合わせられない。政策保有株式の売却で資本は確保するものの、県内シェア首位という強みだけでは資本効率の低さを補えず、地方銀行としての存在意義そのものが問われる苦しい10年になる。
- 法人貸出:数量 8.6(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 359 億円・営業利益 168 億円。残高 8.6 兆円(名目)× 利ざや 0.42%、利益率 47%
- 個人貸出:数量 4.9(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 184 億円・営業利益 90 億円。残高 4.8 兆円(名目)× 利ざや 0.38%、利益率 49%
- 資産運用・ソリューション:数量 5.4(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.3%(実効手数料率等(%))→ 売上 162 億円・営業利益 71 億円。残高 5.4 兆円(名目)× 率 0.30%、利益率 44%
倍率:10年後のROE3.3%(純利益477億円÷自己資本14,365億円)は k8% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。構造的に負けて優良でなくなった姿。上限の8.0割に置き、10.00倍。今の自己資本14,039億円に対する倍率は0.34倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:リーマン級の信用収縮に加え、神奈川県内の人口減少の加速、戦略的投資(L&Fアセットファイナンス・MILIZE)の失敗、東京都内でのデジタル専業銀行への顧客流出といった複合的な悪材料が10年のどこかで重なる想定。10年という期間では相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
横浜銀行による神奈川県内の法人・事業性融資と、上場・大企業向けM&A・ストラクチャードファイナンス関連の貸出。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.3 | 1.1% | 1,023 | 620 |
| 10 年後 中立 | 12.7 | 1.6% | 1,975 | 1,433 |
取り方:グループ貸出残高15.8兆円のうち法人・事業性向けを約6割の9.3兆円とおき、利ざやを1.1%とした。 2026-10-18 の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を 40% と置いた。短期金利が今の 1% 前後から 2% へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は 40% だけ上がるので、固定金利の住宅ローンや定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは 3 年で +0.27%、10 年で +0.45% 広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない)。 残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年 3.2%(物価 3% + 実質 +0.2%)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
個人貸出
住宅ローンと、首都圏の地主向け不動産建設資金融資(資産家ローン)を中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.3 | 1.0% | 530 | 330 |
| 10 年後 中立 | 7.1 | 1.4% | 997 | 743 |
取り方:グループ貸出残高の残り約3分の1を個人向け5.3兆円とおき、住宅ローン・資産家ローンの利ざやを1.0%とした。 2026-10-18 の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を 40% と置いた。短期金利が今の 1% 前後から 2% へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は 40% だけ上がるので、固定金利の住宅ローンや定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは 3 年で +0.24%、10 年で +0.40% 広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない)。 残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年 3.0%(物価 3% + 実質 +0.0%、地元の人口減を含む)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
資産運用・ソリューション
投資信託・保険等の預かり資産業務と、M&Aアドバイザリー・ストラクチャードファイナンス、L&Fアセットファイナンス(不動産担保ローン)・MILIZE(AI・DX)関連の非金利収益。
| 数量預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円) | 価格実効手数料率等(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 0.9% | 510 | 370 |
| 10 年後 中立 | 8.9 | 0.9% | 755 | 572 |
取り方:預かり資産残高とストラクチャードファイナンス等の取扱高合計を6.0兆円、実効手数料率を0.85%とおいた。L&Fアセットファイナンス・MILIZEの収益を含む概算。 預かり・受託資産はお金の量なので名目で伸びる:中立で年 4.0%(物価 3% + 実質の資産形成)以上。手数料率は率なので物価では上がらない。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。 (R23c 点検:率の10年の上昇を支える値上げの開示・金利などの事業の理由を、具体的な数字や出典つきで書けないので、楽観・やや楽観・中立は現在の0.85%の横ばいにした。やや悲観・悲観は据え置き。)
リスクと懸念
信用コストの急増
金利上昇が進む過程では神奈川県内の中小企業の資金繰りが悪化しやすく、与信費用が増える。リーマン級の信用収縮が起きれば保有する株式・債券の評価損も重なり、資本とROEが一時的に大きく傷む。信用コストは好況期に低く抑えられがちなため、今の低水準がそのまま続くと見るのは危うい。
神奈川県内の人口減少と貸出需要の縮小
神奈川県は大都市圏の中では人口減少が緩やかだが、長期的には他の地域と同様に人口減少・企業の内部留保志向が続き、法人・個人向け貸出の量の伸びは鈍い。県内シェアが既に20.3%と高い水準にあるため、さらなるシェア拡大の余地は限られ、成長は利ざやと非金利収益に依存する度合いが強まる。
東京都内での競争劣位
東京都内のメインバンクシェアは3メガバンクが58%を握り、横浜銀行は1%にとどまる。きらぼし銀行との業務提携でストラクチャードファイナンス等のニッチを攻めるが、メガバンクの牙城を崩すには時間がかかり、提携が期待どおり機能しない可能性もある。
戦略的投資の収益化の不確実性
L&Fアセットファイナンスの買収(総投資額500億円超)やMILIZEへの出資は、非金利収益・DX機能の強化を狙うが、不動産担保ローン事業の質やAI・DX投資の収益化ペースは未知数で、のれんの減損リスクも常に伴う。
政策保有株式売却の遅れ
政策保有株式の売却は取引先との関係維持の観点から急には進められない面があり、2030年3月末までに連結純資産比10%未満とする目標が遅れれば資本効率の改善ペースも鈍る。取引先企業との関係悪化を避けながら進める難しさが常に伴う。
資産運用・資産管理の競争
NISA拡充や相続による資産の都市部シフトは追い風だが、ネット証券や独立系資産運用会社との競争も強まっており、受託資産の奪い合いで手数料率が下がる可能性がある。首都圏という競争の激しい市場に位置する分、この圧力は他の地方銀行より強く及ぶ。
財務の脆さと規制の制約
自己資本比率は単純指標では5.5%とkabufuの脆さスコアでは低めに判定される。銀行業の規制資本(バーゼル基準の自己資本比率)とは別の指標だが、信用サイクルの悪化局面では資本の余裕の乏しさが貸出姿勢の慎重化を招きやすい。規制業種である以上、資本増強や業務範囲の拡大には認可・規制対応のコストと時間がかかり、機動的な動きには限界がある。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%へ向けて計画より速いペースで上げたら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。神奈川県内の貸出利ざやの拡大ペースを決算で確認する。
- 神奈川県内の与信費用が四半期で急増したら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。中小企業のどの業種で信用コストが増えたかを確認する。
- L&Fアセットファイナンス・MILIZEで大きな損失・減損が発生したら
- 戦略的投資の前提を見直し、悲観側の確率を上げる。
- きらぼし銀行との提携が拡大し、東京都内でのストラクチャードファイナンス取扱いが計画を上回ったら
- 東京都内での成長ペースを上方修正し、楽観側の確率を上げる。
- 政策保有株式の売却が2030年目標に向けて計画を上回って進んだら
- 資本効率改善のペースが速いとみて楽観側の確率をやや上げる。
- 地銀再編ドミノの中で横浜FGが新たな提携・統合の軸になったら
- 規模の経済・システム共通化による経費率改善を前提に、楽観側の筋書きの前提を上方修正する。
見ておくもの
- 日銀の政策金利・神奈川県内の貸出利ざやの推移
- 神奈川県内の与信費用(信用コスト)の推移
- L&Fアセットファイナンス・MILIZEの業績貢献度
- きらぼし銀行との業務提携の拡大状況・東京都内でのシェア
- 政策保有株式の売却進捗(2030年3月末に連結純資産比10%未満)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8%(基本7.5%+quality)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9・8.5割に置いた(下限は1÷k=12.5倍。利ざや拡大が続き自社株買いで自己資本を抑える)。やや悲観・悲観はROEがk以下なので、PERは1÷k=12.5倍が上限で、その9割・8割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造からROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9%)と10年の中立のPERは12.1倍から10.0倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.27→15.02 倍・やや楽観 PER 13.59→15.09 倍・中立 PER 12.08→14.21 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β 0.75 × 5% + 規模 0.25%。基本7.5%に quality +0.5% を足して k 8%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(不動産担保ローンなど買収事業の実行)は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。