結論
阪和興業は、鉄鋼を軸に非鉄金属・食品・燃料まで手広く扱う独立系の商社だ。メーカーの系列にも総合商社にも属さず、自力で稼いできた。売上は2.7兆円、営業利益率は2%強と薄い。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。会社が悪いのではない。薄利の仲介業が、借金で在庫と売掛金を支えているため、利益が伸びても株主の手元に残る分が少ない。
稼ぎの柱は国内の鉄鋼だ。セグメント利益の3分の2を占める。ところが国内の鋼材需要は人口とともに細る。会社もそれを承知で「東南アジアに第二の阪和を」と動いている。
次の山は海外の買収だ。2026年6月に米国の鉄骨メーカーを、日本政策投資銀行と組んで買う。会社として過去最大の買収になる。成功すれば北米に足場ができる。外せば借金だけが残る。
資本の使い方は改善している。配当は純資産の3.5%を下限にし、総還元性向は40%を目指す。ただ、利益が増えても自己資本が積み上がるため、ROEは10年後にむしろ下がると筆者は見る。
10年後の中立の時価総額は今を上回る。しかし年9%の収益を求めて割り引くと、本質価値は今より1割半ほど低い。安くはないが、悲観するほどの値段でもない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、阪和興業は「長く続く商売」だが「資本を食う商売」だ。鉄鋼は10年後も使われる。商社の機能もなくならない。しかし、利益のうち株主が自由に使える分は多くない。
理由は単純で、売上が増えるたびに在庫と売掛金も増え、その分を借金か内部留保で賄うからだ。名目の売上が年3%伸びれば、必要な運転資金も年3%増える。利益の多くは、事業をそのままの形で回すために消える。筆者は、オーナー利益は純利益の半分前後と見る。
次に、値段を決める力がない。鋼材の相場は製鉄所と中国が決める。利益率が上がる局面があっても、長くは続かない。山の利益に高い倍率を付けるのは危うい。
安全域の面では、純有利子負債が営業利益の4倍を超える点が気になる。景気の底でも配当と借り換えを続けられるかを確かめておく必要がある。ただし格付けは前の計画で目標を上回り、財務の運営は堅い。
結局、この会社を長く持つ理由は、海外の買収で北米と東南アジアに足場を築けるかにかかる。それは魅力だが、成否はまだ見えていない。見えていないものに、今の値段で払う余裕は小さいと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
阪和興業は1947年創業の専門商社で、鉄鋼を中心に取引を広げてきた。セグメントは七つに分かれる。稼ぎの形を見るには、大きく五つに束ねるのが早い。
鉄鋼は売上の4割、利益の3分の2を占める本丸だ。建設用の鋼材や鋼板を製鉄所から仕入れ、全国のゼネコン・加工業者に売る。即納・小口・加工を売りにし、在庫を持って現場の細かい注文に応じる。加工機械メーカーのシンクスを傘下に収め、加工まで自前でやる。
海外販売子会社は東南アジアが中心だ。鋼材やスクラップなど冷鉄源の取引が伸びている。売上は5,000億円を超え、会社は「第二の阪和」に育てるつもりでいる。
非鉄金属は、ステンレス用のニッケルやクロムを扱うプライマリーメタルと、アルミ・銅のスクラップを扱うリサイクルメタルに分かれる。2025年度は市況の悪化と持分法損失で利益がほぼ消えた。電池材料のリサイクルにも手を広げている。
エネルギー・生活資材は、バイオマス燃料のPKS(パームの殻)、舶用燃料、石油製品、建材を扱う。PKSの輸入では国内首位を保つ。食品は、米国子会社の外食向け販売が好調で、利益が改善している。
優良さと弱いところ
筆者がこの会社に見る強みは、現場に入り込む商売の細かさだ。鋼材の即納・小口・加工は、大手が手を出しにくい。顧客が小さいほど、在庫を持って待っている商社は頼りにされる。独立系なので、特定のメーカーに縛られず仕入れ先を選べる点も大きい。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは深くない。鉄鋼の値段を決めるのは製鉄メーカーと中国の生産調整で、商社は値段を受け取る側だ。利益率が2%強に張り付くのはそのためである。
資本の効率は悪くない。ROEは過去10年の中央値で10%、2022年3月期には18%に達した。ただし、利益の山で出た数字だ。純有利子負債は営業利益の4倍を超える。在庫と売掛金を借金で支える仕組みなので、金利が上がると利益が削られる。
経営は規律を保っている。リスクマネジメント部を新設し、在庫や与信、国ごとの危険を一括で見るようにした。ゲームセンター事業は売却し、事業の入れ替えも進む。株主還元の目標も引き上げた。
弱みは三つある。国内鋼材の長期的な縮小、非鉄金属の不安定な利益、そして米国買収が初めての大きな賭けであることだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
鉄鋼商社の市場は、製鉄所と顧客の間に入る仕事で、数量は鋼材の需要で決まる。国内の鋼材需要は、人口減と建設投資の縮小で毎年1〜2%ずつ細っていく。筆者は、国内で数量を伸ばすのは難しいと見る。
競合は三つの型に分かれる。総合商社系のメタルワンと伊藤忠丸紅鉄鋼、製鉄メーカー系の日鉄物産とJFE商事、そして岡谷鋼機のような独立系だ。阪和は独立系の最大手で、系列の縛りがない代わりに、メーカーの後ろ盾もない。
世界に目を向けると、中国の過剰生産が最大の重しになる。安い鋼材が輸出に回り、東南アジアでも採算を悪くしている。2025年度は、海外販売子会社でも中国の安値輸出が利益を削った。一方、インドや東南アジアの建設需要は伸びる。
非鉄金属は、電池向けのニッケル・リチウムの市況が低迷し、欧米のEV政策も後退した。金属リサイクルは、アルミや銅の価格に左右される。長い目では資源の再利用は伸びるが、10年のどこかで投資が空振りする恐れもある。
エネルギーは、バイオマス燃料の需要が脱炭素で増え、国内の独占的な地位が効く。ただ、燃料や原油の値動きに利益が左右される。
資本政策と M&A
還元は厚くなってきた。2026年5月に発表した中期計画で、配当の下限を純資産の3.5%に上げ、総還元性向も4割程度とした。自己株の取得と消却も決めた。4月には1対5の株式分割も行い、個人も買いやすくなっている。
一方で、投融資枠は3年で1,600億円と、前の計画の2倍以上になった。海外の買収と電池材料に積極的に振り向ける。
最大の案件は米国のAssociated Steel Groupだ。非住宅向けの鉄骨を作る会社で、取得総額は約560億円。日本政策投資銀行と組み、阪和の米国子会社が過半を持つ。営業利益は年70億円近いが、純資産はマイナスだ。買値は営業利益の8倍ほどで、極端な高値ではない。ただし、米国の建設の景気に左右される。
親会社はなく、TOBの対象になる可能性は一定ある。外部の推計では10年以内に2割弱だ。ただ、具体的な材料は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、阪和が鉄鋼商社から供給網を作る商社に変わりつつある点に注目する。東南アジアの海外販売子会社は、取扱量が上期だけで1.5倍に伸びた。ここに電炉・直接還元鉄の出資が加われば、数量は10年で2倍近くにできる。
米国の鉄骨メーカーの買収も、鉄の商いを部品づくりに広げる一歩だ。営業利益70億円近い会社を、営業利益の8倍ほどで取る。北米のインフラと工場投資が続けば、利益は伸びる。
非鉄金属は、いまが底だ。プライマリーメタルは赤字、リサイクルも利益がほぼ消えた。中期計画の目標どおり、2028年度に二つで100億円近くに戻れば、全体の利益の質が上がる。電池材料の需要は、EVの揺り戻しがあっても長期では伸びる。
還元も厚い。配当の下限が引き上げられ、総還元性向は4割になる。会社の計画は経常利益750億円で、10年かけて物価の分を乗せれば、純利益は700億円を超えうる。これは十分に現実的な筋書きだ。
慎重な見方
慎重な見方は、まず稼ぐ力の弱さを突く。営業利益率は2%強で、2%を割れば利益は半分に減る。鋼材の値段は製鉄所と中国が握り、商社は受け取る側にとどまる。
前の中期計画は、経常利益も鉄鋼取扱量も目標に届かなかった。次の計画は、経常利益を522億円から750億円へ4割以上伸ばす。国内の鋼材が毎年細る中、無理のある数字に見える。
借金も重い。純有利子負債は営業利益の4倍を超える。金利が上がると、借り換えのたびに利払いが膨らむ。10年でおよそ70億円の利益が削られる計算だ。
米国の買収も不安がある。買う会社は純資産がマイナスで、利益は建設の景気に左右される。のれんの減損を出せば、数年分の利益が消える。南アフリカのクロム、インドネシアのニッケルなど、持分法の投資は赤字に転じている。
中国の安値輸出が東南アジアにも広がれば、「第二の阪和」の採算は崩れる。構造的に負ける筋書きは、1割台半ばある。
加えて、ROEの水準も割り引いて見るべきだ。過去10年の中央値は10%だが、利益の山の年を含んでいる。売上が物価で増えるほど運転資金の借金も増え、自己資本の積み上がりに利益の伸びが追いつかない。10年後のROEは、資本コストを下回る可能性が高い。
どちらに重みを置いたか
確かな強みは、独立系ならではの現場の細かさと、還元の厚みにある。しかし利益率の薄さと借金の重さは、10年を通じて消えない。慎重な見方の指摘が重いと判断し、確率は中立を最も厚くしたうえで、やや悲観と悲観を楽観側より厚く置いた。
悲観は、中国の安値輸出と米国買収の失敗が重なる構造的な負けとして、1割台半ばを置いた。借金が重く、値段を自分で決められない商売だからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,776 円5,333 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,119 円2,150 億円)。 今の値に割り戻すと 2,047 円3,933 億円、今との差 +10.5%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,494 円1.06 兆円 | 1,465 円2,814 億円 | +275.5% | +14.1% | 418 円802 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,328 円8,315 億円 | 1,306 円2,510 億円 | +204.1% | +11.8% | 1,014 円1,948 億円 |
| 中立 | 38% | 3,314 円6,368 億円 | 1,157 円2,222 億円 | +141.3% | +9.2% | 1,699 円3,264 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,353 円2,599 億円 | 1,005 円1,930 億円 | +27.2% | +2.4% | 566 円1,087 億円 |
| 悲観 | 14% | 592 円1,137 億円 | 824 円1,584 億円 | −23.6% | −2.7% | 198 円381 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,776 円5,333 億円 | 1,119 円2,150 億円 | +110.2% | +7.7% | 3,895 円7,482 億円 |
今の株価時価総額 1,853 円3,560 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:海外と電池材料が当たる 利益 743 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 5,494 円1.06 兆円
10年後、東南アジアの海外販売子会社が「第二の阪和」に育つ。取扱量は2倍近くになり、鉄鋼商社というより、アジアと北米の供給網を持つ商社になる。米国の鉄骨メーカーも伸び、北米の足場が実る。
非鉄金属は、電池材料のリサイクルが軌道に乗り、赤字を脱して稼ぎの柱の一つになる。食品は米国の外食向けが伸び、バイオマス燃料も脱炭素の追い風を受ける。国内の鋼材は細るが、加工への投資が利益率を支える。
純利益は740億円ほどで、会社の計画に近い。ROEは10%台を保つが、大きな買収で自己資本も膨らむ。それでも倍率は、薄利で相場に左右される商社の域を出ない。
- 鉄鋼(国内・海外の鋼材取引):数量 840(鋼材取扱量(万トン))× 価格 17(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 14,364 億円・営業利益 546 億円。加工投資で利益率を保つ
- 海外販売子会社(東南アジアなど)+米国鉄骨の買収:数量 1,075(取扱重量(万トン。鉄骨は換算))× 価格 13(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 13,841 億円・営業利益 280 億円。東南アジアが2倍近く、米国の買収も伸びる
- 非鉄金属(プライマリー・リサイクル):数量 464(取扱量(万トン換算))× 価格 20(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 9,113 億円・営業利益 146 億円。電池材料のリサイクルが軌道に乗る
- 食品:数量 48.9(取扱量(万トン換算))× 価格 54(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 2,661 億円・営業利益 69 億円。米国の外食向けが伸びる
- エネルギー・生活資材・その他:数量 910(取扱量(万トン換算))× 価格 9.91(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 9,019 億円・営業利益 198 億円。バイオマス燃料が伸びる
倍率:事業の純利益 743 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.18 倍、時価総額 10,536 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年続けて海外・買収・非鉄がそろって当たる筋書きで、起こりにくいため小さく置いた。
やや楽観 18% やや楽観:計画に近い成長 利益 621 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,328 円8,315 億円
10年後、東南アジアは取扱量が7割ほど伸び、米国の買収も計画の範囲に収まる。非鉄金属は底から回復し、プライマリーメタルが黒字に戻る。国内の鋼材は数%の縮小にとどまり、加工への投資で利益率を守る。
純利益は620億円ほどになる。会社の計画の山には届かないが、物価の分を乗せた成長は果たす。ROEは9%台で、自己資本の積み上がりに利益の伸びが追いつかない。還元は純利益の半分を保つ。
倍率は10倍に届かない。値段を決められない商売で、利益の山には高い倍率を付けにくいからだ。
米国の買収先は、のれんを抱えながらも収益を保つ。ただ、10年のどこかで建設の景気が冷える時期は来る。その谷でも利益は大きく崩れない。それが、この筋書きの前提だ。
- 鉄鋼(国内・海外の鋼材取引):数量 815(鋼材取扱量(万トン))× 価格 17(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 13,933 億円・営業利益 509 億円。国内の縮小は数%
- 海外販売子会社(東南アジアなど)+米国鉄骨の買収:数量 963(取扱重量(万トン。鉄骨は換算))× 価格 13(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 12,416 億円・営業利益 229 億円。東南アジアが7割増
- 非鉄金属(プライマリー・リサイクル):数量 427(取扱量(万トン換算))× 価格 19(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 8,263 億円・営業利益 107 億円。赤字を脱する
- 食品:数量 45.1(取扱量(万トン換算))× 価格 54(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 2,438 億円・営業利益 56 億円。2割増
- エネルギー・生活資材・その他:数量 840(取扱量(万トン換算))× 価格 9.91(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 8,325 億円・営業利益 166 億円。2割増
倍率:事業の純利益 621 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.34 倍、時価総額 8,284 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外と買収が概ね計画どおり進む筋書き。会社の計画は強気で、前の中計は未達だったため、中立より薄く置いた。
中立 38% 中立:国内の縮小を海外が補う 利益 506 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,314 円6,368 億円
10年後、国内の鋼材は数量が7%ほど減る。その分を、東南アジアの海外子会社が補う。取扱量は5割増える。米国の鉄骨メーカーも加わり、売上は物価の分を乗せて4兆円を超える。営業利益率は今と同じ2%強にとどまる。
非鉄金属は、赤字からは抜けるが、市況の波は続く。食品とバイオマス燃料が小幅に伸びる。純利益は500億円ほどで、今より3割多い程度だ。借金の利払いが増え、営業利益の伸びの一部を食う。
ROEは8%弱まで下がる。利益を半分近く内部に残すため、自己資本が積み上がるからだ。筆者は、これが物価で膨らむ商社の自然な姿と見る。
- 鉄鋼(国内・海外の鋼材取引):数量 781(鋼材取扱量(万トン))× 価格 17(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 13,358 億円・営業利益 468 億円。国内縮小で数量7%減
- 海外販売子会社(東南アジアなど)+米国鉄骨の買収:数量 850(取扱重量(万トン。鉄骨は換算))× 価格 13(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 10,990 億円・営業利益 181 億円。東南アジアが5割増、米国買収が加わる
- 非鉄金属(プライマリー・リサイクル):数量 390(取扱量(万トン換算))× 価格 19(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 7,433 億円・営業利益 74 億円。赤字を脱するが市況の波は続く
- 食品:数量 41.4(取扱量(万トン換算))× 価格 54(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 2,219 億円・営業利益 44 億円。1割増
- エネルギー・生活資材・その他:数量 770(取扱量(万トン換算))× 価格 9.91(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 7,631 億円・営業利益 137 億円。1割増
倍率:事業の純利益 506 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 6,325 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の縮小を海外と買収が補う穏やかな成長。最も厚くした。
やや悲観 24% やや悲観:中国の安値と国内縮小が重い 利益 319 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 1,353 円2,599 億円
10年後、中国の安値輸出が続き、鉄鋼の採算は薄いままだ。国内の鋼材は1.5割ほど細り、東南アジアも思ったほど伸びない。米国の買収は計画に届かず、のれんの一部を落とす。
非鉄金属は、電池材料の需要が戻らず、赤字すれすれが続く。営業利益は640億円で、今より1割ほど多いだけだ。物価の分で売上は伸びても、利益は借金の利払いに食われる。
純利益は320億円ほどで、今より2割減る。ROEは5%台まで下がり、資本コストを大きく下回る。それでも赤字には落ちず、配当は維持する。
会社は経営の舵を切って、海外の買収を重ねる。しかし買った会社の利益は、価格の割に伸びない。経営陣が成長を急げば、資本の効率はさらに落ちる。株式市場は、成長を語る商社から、地味な還元で選ぶ商社へと見方を変える。
- 鉄鋼(国内・海外の鋼材取引):数量 714(鋼材取扱量(万トン))× 価格 17(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 11,845 億円・営業利益 355 億円。中国の安値輸出で採算が薄い
- 海外販売子会社(東南アジアなど)+米国鉄骨の買収:数量 681(取扱重量(万トン。鉄骨は換算))× 価格 13(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 8,619 億円・営業利益 118 億円。伸びが鈍り買収も計画に届かない
- 非鉄金属(プライマリー・リサイクル):数量 352(取扱量(万トン換算))× 価格 19(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 6,525 億円・営業利益 39 億円。赤字すれすれ
- 食品:数量 37.6(取扱量(万トン換算))× 価格 52(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,957 億円・営業利益 31 億円。横ばい
- エネルギー・生活資材・その他:数量 700(取扱量(万トン換算))× 価格 9.62(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 6,730 億円・営業利益 101 億円。横ばい
倍率:事業の純利益約320億円・事業 ROE 約5.4% は k 以下で上限は 1÷k=11.1倍。稼ぐ力が資本コストを大きく下回る局面で、上限の約7割の7.8倍に置いた。
確率:中国の安値輸出と国内の縮小で利益が伸び悩む筋書き。薄利と借金の重さから、強気より慎重の見方が強いと見て厚めに置いた。
悲観 14% 悲観:構造的に負ける 利益 145 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 592 円1,137 億円
10年のあいだに、構造的に負ける。中国の安値の鋼材が東南アジアにも流れ込み、「第二の阪和」は採算が合わない。国内の鋼材は3割近く細り、加工の投資も回収できない。
米国の鉄骨メーカーは景気の悪化で利益を落とし、のれんを大きく減損する。電池材料と持分法の投資も赤字が続く。売上は物価の分を乗せても今と同じ程度で、利益率は1%台前半まで下がる。
純利益は150億円ほどになる。借金の利払いが重く、配当は半分以下に減る。もう優良な商社ではなく、倍率は7倍まで下がる。
自己資本は、のれんと持分法の減損で700億円ほど削られる。財務の余裕がなくなると、新しい投資もできず、在庫を圧縮して凌ぐことになる。商社としての存在感が薄れ、業界再編の対象になる可能性が高まる。
- 鉄鋼(国内・海外の鋼材取引):数量 605(鋼材取扱量(万トン))× 価格 15(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 8,876 億円・営業利益 222 億円。国内3割近く減、値段も上がらない
- 海外販売子会社(東南アジアなど)+米国鉄骨の買収:数量 539(取扱重量(万トン。鉄骨は換算))× 価格 11(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 6,062 億円・営業利益 61 億円。採算割れ、買収先も落ち込む
- 非鉄金属(プライマリー・リサイクル):数量 297(取扱量(万トン換算))× 価格 16(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 4,860 億円・営業利益 19 億円。赤字が続く
- 食品:数量 33.8(取扱量(万トン換算))× 価格 48(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,626 億円・営業利益 21 億円。1割減
- エネルギー・生活資材・その他:数量 595(取扱量(万トン換算))× 価格 8.88(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 5,281 億円・営業利益 69 億円。15%減
倍率:事業の純利益約150億円・事業 ROE 約2.7% は k 以下で上限は 1÷k=11.1倍。構造的に負けて優良な商社でなくなる筋書きで、稼ぐ力(純利益÷k)の手前の7.0倍に置いた。
確率:中国の安値輸出・国内縮小・米国買収の失敗が重なる構造的な負け。借金が重く値段を決められない商売で、1割台半ばを置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鉄鋼(国内・海外の鋼材取引)
建設用の鋼材・鋼板を製鉄所から仕入れ、ゼネコン・加工業者に即納・小口・加工つきで売る。会社の利益の3分の2。
| 数量鋼材取扱量(万トン) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 840 | 13 | 10,719 | 387 |
| 10 年後 中立 | 781 | 17 | 13,358 | 468 |
取り方:鉄鋼事業の売上10,719億円を、上期の鋼材取扱量421万トンの2倍にあたる840万トンと平均単価12.8万円に分けた推定値。利益は経常ベースのセグメント利益。国内の鋼材需要は毎年1〜2%細るため、数量の中立は10年で0.93倍。
海外販売子会社(東南アジアなど)+米国鉄骨の買収
東南アジアの販売子会社で鋼材・冷鉄源(スクラップ)を扱う。2026年6月に買収を発表した米国の鉄骨メーカーもここに入れる。
| 数量取扱重量(万トン。鉄骨は換算) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 560 | 9.25 | 5,177 | 55 |
| 10 年後 中立 | 850 | 13 | 10,990 | 181 |
取り方:海外販売子会社事業の売上5,177億円を、連結の取扱量1,433万トンから鉄鋼を引いた約560万トンと平均単価9.2万円に分けた推定値。利益は経常ベース。将来は米国鉄骨メーカー(年売上343億円・営業利益68億円)が加わり、その分の数量はトン換算で足し、単価は売上÷数量の平均になる。東南アジアは上期に取扱量が1.5倍に伸び、中立は10年で1.5倍。 数量は取扱重量(t、東南アジアの増加と米国鉄骨メーカーの買収による実物)。
非鉄金属(プライマリー・リサイクル)
ニッケル・クロムなど金属原料と、アルミ・銅のスクラップ、電池材料のリサイクルを扱う。
| 数量取扱量(万トン換算) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 371 | 14 | 5,283 | 12 |
| 10 年後 中立 | 390 | 19 | 7,433 | 74 |
取り方:プライマリーメタル(売上2,441億円・利益−1.5億円)とリサイクルメタル(同2,842億円・13億円)を合わせた5,283億円を、プライマリー約300万トン(上期150万トンの2倍)とリサイクル約71万トンの合計371万トンと平均単価14.2万円に分けた推定値。リサイクルの数量は開示が無く、スクラップ単価約40万円/トンから置いた。
食品
水産・畜産などの食品を扱う。米国子会社の外食向け販売が好調。
| 数量取扱量(万トン換算) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 37.6 | 40 | 1,505 | 30 |
| 10 年後 中立 | 41.4 | 54 | 2,219 | 44 |
取り方:食品事業の売上1,505億円を、平均単価約40万円/トン(水産・畜産の構成から推定)で割った約38万トンと置いた。開示は金額のみで数量は推定。
エネルギー・生活資材・その他
バイオマス燃料PKS・舶用燃料・石油製品・建材と、その他事業(不動産など)。
| 数量取扱量(万トン換算) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 7.40 | 5,177 | 107 |
| 10 年後 中立 | 770 | 9.91 | 7,631 | 137 |
取り方:エネルギー・生活資材(売上3,837億円・利益85億円)とその他(1,339億円・21億円)を合わせた5,177億円を、上期のバイオマス・燃料の取扱量260万トン(年520万トン)に建材・その他を足した約700万トン換算と平均単価7.4万円に分けた推定値。
リスクと懸念
中国の安値輸出
中国の鉄鋼は過剰生産が続き、安い製品が東南アジアに流れ込む。阪和の海外販売子会社は、2025年度上期に中国の安値輸出で利益が37億円から33億円に減った。『第二の阪和』が採算割れになる恐れがある。国内でも鋼材の値段を押し下げ、商社の取り分が薄くなる。
国内鋼材の長期的な縮小
利益の3分の2を占める国内鉄鋼は、人口減と建設投資の縮小で数量が毎年細る。加工や即納で付加価値を足しても、数量の減りを補うのは難しい。海外の伸びが遅れれば、会社全体の利益が下振れする。
米国買収の失敗
2026年6月に発表した米国の鉄骨メーカーの買収は、会社として最大の案件だ。買う会社は純資産がマイナスで、利益は米国の建設の景気に左右される。景気が冷えると、のれんの減損と借金の利払いが重なり、数年分の利益が消える恐れがある。
重い借金と金利の上昇
純有利子負債は営業利益の4倍を超える。借金は借り換えのたびに金利が上がり、10年でおよそ70億円の利益が削られる。金利の上昇と鋼材価格の下落が重なると、配当の維持が試される。
非鉄金属と持分法の不振
プライマリーメタルは2025年度に赤字へ転じ、リサイクルメタルも利益が大きく縮んだ。南アフリカのクロムなど持分法の投資損益もマイナスだ。電池材料の需要は、欧米のEV政策の後退で読みにくい。
商品相場と在庫
鋼材・金属・燃料の値段は、在庫を持つ商社の評価損益に直結する。相場が急落すると、在庫の評価損と売掛金の焦げ付きが出る。会社は在庫と与信を一括で管理する部署を作ったが、効果はこれからだ。
今後の分かれ目
- 国内外の鉄鋼取扱量が中計の1,700万トンへ向けて着実に伸びる
- 海外と国内の数量の前提を引き上げ、楽観側の確率を上げてよい。
- 中国の鋼材輸出が東南アジアでさらに増え、海外販売子会社の利益が2期続けて減る
- 『第二の阪和』の前提が崩れる。中立の数量を下げ、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 米国の鉄骨メーカーの買収が完了し、利益が営業利益で年70億円前後を保つ
- 買収は計画どおり。北米の足場として評価でき、悲観の確率を下げてよい。
- 買収先の利益が落ち、のれんの減損が出る
- 資本配分の規律に疑いが出る。悲観の確率を上げ、倍率を下げて見直す。
- プライマリーメタルとリサイクルメタルの利益が、計画どおり2028年度に100億円近くへ戻る
- 非鉄の回復を中立に織り込めるため、やや楽観の確率を上げる。
- 他社のTOBや再編の動きが報じられる
- 買収プレミアムが乗る可能性がある。ただし本質価値は変わらないため、値段が価値を超えていないかを見直す。
見ておくもの
- 鉄鋼取扱量(国内・海外別)と海外販売子会社の経常利益
- 非鉄金属(プライマリー・リサイクル)の利益が黒字に戻るか
- 米国の鉄骨メーカーの買収完了と利益の水準
- 純有利子負債と営業利益の比、借り換えの金利
- 総還元性向と自己株買いの実績、DOE 3.5% の維持
倍率と資本コストの決め方
先にセグメントごとに数量×価格で10年の営業利益を積み、金利の増加を引いた純利益と自己資本の流れからROEを出した。ROEは中立で8%弱と資本コスト8%を下回るため、倍率は1÷kを上限に事業の質で下げた。今の株価・PERから逆算していない。セグメント利益は経常ベースで、調整額で営業利益に合わせた。新リース会計基準で営業利益・借金の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に含める形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→14.18 倍・やや楽観 PER 9.6→13.34 倍・中立 PER 8.8→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。