結論
ジェイリースは、賃貸住宅や店舗の家賃を家主に保証する専業の会社だ。入居者が滞納すれば立て替え、後で本人に請求する。筆者の結論は、価値は今の時価総額を上回る、というものだ。
稼ぐ力は伸びた。2026年3月期の売上は216億円、営業利益は36億円で、5年前の4倍になった。住居用の保証は市場2,360億円のうち5.0%、事業用は385億円のうち11.7%を持つ。店は44、協定する不動産会社は3万1千にのぼる。
一方、利益は貸倒れで大きく振れる。代位弁済の発生率が7%を超えた2019年3月期と2020年3月期は、営業利益がほぼゼロだった。直近は6.5%で、営業利益率は18.0%から16.8%に下がった。M&Aで借入が増え、自己資本比率も37.8%から33.4%に下がった。
10年後の中立は、売上が約440億円、営業利益が約67億円、ROEは16.7%。強気は首都圏でシェアが伸びる姿、弱気は料率の崩れと貸倒れの急増だ。確率を重ねた価値は、今の時価総額を上回る。
バリュー投資の観点から
事業の質と、資本の使い方を分けて見る。
事業の質は、よい。家賃の保証は、景気が悪くても住まいがある限り続く。利用率が上がり、事業用はまだ25%だ。店の多さと、代位弁済の発生率6.5%、回収率97.4%という管理の実績は、独立系の大手として際立つ。ROEは33%と高い。
ただ、利益の質には注意が要る。直近の営業利益率の低下は、貸倒れの増加と、不動産会社への手数料の増加が原因だ。2019年3月期と2020年3月期は、発生率が7%台に上がっただけで、営業利益がほぼ消えた。
資本の使い方は、攻めている。借入で小さなM&Aを重ね、のれんが21億円に増えた。買収額は小さいが、数が増えれば、減損の種になる。配当は性向40%で、増配が続くのは望ましい。
安全域は薄い。純資産74億円は時価総額の3割で、資産の裏づけは小さい。価値は稼ぐ力で測るしかない。筆者が見たいのは、発生率が上がる局面で利益率がどこまで落ちるかと、借入の増え方だ。
何で稼ぐ会社か
ジェイリースは、家賃債務保証の会社だ。賃借人が家賃を払えなくなったとき、保証会社が家主へ立て替えて払う。これを代位弁済といい、後で賃借人に請求して回収する。2004年に大分で設立され、九州から全国へ広げた。
2026年3月期の売上216億円のうち、保証関連が193億円で9割を占め、営業利益では97%を稼ぐ。内訳は、住居用が120億円、事業用が45億円、医療費保証が2億円だ。残りの約28億円は、一棟保証や収納代行などの付帯の保証である。
保証以外には三つの子会社がある。ソフト開発のエイビス(売上15億円)、外国人向け賃貸のあすみらい(7億円)、広告のエイエフビイだ。2024年にエイビスを12.65億円で、2025年にK-netを買い、保証の周辺へ広げている。
売り先は入居者だが、窓口は不動産会社だ。全国44店の営業が、協定する不動産会社3万1千件を回る。費用の中心は、回収できない代位弁済、人件費、不動産会社に払う事務手数料だ。代位弁済の発生率は6.5%、回収率は97.4%だった。発生率は、保証契約のうち滞納で立て替えた件数の割合で、低いほど利益になる。
優良さと弱いところ
堀は、店と人の網、事業用の保証の経験、審査の仕組みにある。ただ、強い堀ではない。
店は44と、比較された同業4社の8〜19店を大きく上回る。事業用は住居用と審査も営業も異なり、専業の保証会社が入りにくい。ここで11.7%のシェアを持つ。AIを使った審査と、立て替えを3営業日で払う速さが、不動産会社に評価されている。
値決めの力は弱い。住居用は競合が200社を超え、不動産管理会社の自社保証もある。会社は、競争で不動産会社に払う事務手数料が増えていると述べた。
資本効率は高い。ROEは33%、営業利益率は17%だが、利益率は低下した。店と人が多い分、1人あたりの売上は同業より低く、規模の割に薄い。
経営は攻めに寄った。借入を33億円増やしてM&Aを重ね、自己資本比率は50%を目標とするが、33%に下がった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、保証会社の利用が標準になったことで増えた。会社の推定では、住居用の市場は2,360億円で、利用率は2010年の39%から77%に上がった。2020年の民法改正で、連帯保証人の上限が決まったことが大きい。利用率はすでに高く、これから先の伸びは緩やかになる。
事業用は385億円で、利用率は25%と低い。敷金を減らせるうえ、貸主のリスク意識も高まっているので、伸びしろが残る。会社の事業用の売上は、2022年3月期の22億円から45億円へ倍増した。
競争は住居用で激しい。200社超が競い、保険会社やカード会社、不動産管理会社の自社保証もある。同業の売上は54億〜257億円と開きが大きい。
数量の物差しは、契約件数とする。今は住居用ほかで36万件、事業用で2.6万件と推定する。10年後の中立は、住居用ほかが56万件、事業用が4.9万件。1件あたりの売上は、物価で1.34倍になるところ、住居用は競争で1.25倍、事業用は1.30倍と置いた。これは、家賃が上がれば保証料も上がるが、不動産会社への手数料の増加で、会社の取り分は物価に届かないと見るためだ。
資本政策と M&A
還元は、配当性向40%程度が基準だ。2026年3月期の配当は総額9.9億円で、純利益の4割にあたる。2027年3月期は性向42%の予想で、増配が続く。自社株買いの方針は示されていない。従業員向けの株式給付信託のために、1.4億円の自己株式を取得した。
財務は、急速に厚みが薄れた。有利子負債は58億円で、1年で33億円増えた。現金は27億円しかない。増えた借入には、子会社株式の取得資金18億円が含まれる。のれんは21億円に増えた。自己資本比率は33.4%で、目標の50%から遠い。
代位弁済のための立替金は86億円、貸倒引当金は33億円。保証料を先に受け取る前受金は42億円ある。契約が増えるほど、立て替えと引当の資金が先に出る。
大株主は、JLホールディングス(23.7%)と日本マスタートラスト信託銀行(8.7%)だ。M&Aの買い手として動いており、買われる側になる確率は、kabufuの推計で10年に2割とされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、首都圏のシェア拡大と、事業用の伸びに頼る。
住居用の市場で、同社のシェアは5.0%にすぎない。大都市の1都3県、愛知、大阪はシェアが低く、ここに人と店を送っている。2027年3月期には全47都道府県への出店を終える。事業用は25%の利用率で、市場が倍になる余地がある。売上は直近で、住居用が+29%、事業用が+23%と伸びた。
中期経営計画の2027年3月期の目標は、売上212億円、営業利益35億円だった。実績はすでに上回った。会社の毎年の予想は控えめで、売上は目標を超えてきた。
AI審査と債権管理で、代位弁済の発生率は5.8%から6.5%の間に収まっている。回収率は97%台を保つ。
10年後、住居用のシェアが8.5%、事業用が4倍になるなら、売上は565億円、営業利益は約97億円になる。利益率は店と人の網の固定費が薄まり、17%台で保たれる。この筋書きの確率は6%とした。ただし、大都市で取る顧客は審査が難しく、シェアを倍近くにして発生率を保つことは、過去に実現できていない。
慎重な見方
慎重な見方は、貸倒れの循環と、利益率の低下を指摘する。
営業利益率は18.0%から16.8%に下がり、2027年3月期の予想では15.5%に下がる。理由は、貸倒れの増加と、不動産会社に払う事務手数料の増加だ。会社自身が、競争の激化を理由にあげている。利益率の低下は、新しく取る契約ほど条件が悪くなることを意味する。
貸倒れは、景気とシェアの伸ばし方で動く。代位弁済の発生率が6.3%だった2017年3月期から、7.2%の2019年3月期と2020年3月期にかけて、営業利益は赤字や2億円に落ちた。当時と今では規模も体制も違うが、利益が発生率に敏感な構造は変わらない。シェアの低い大都市に人を送り、新しい顧客層を取れば、発生率は上がりやすい。
財務の余裕も減った。借入は58億円で、現金の2倍を超え、自己資本比率は33%に下がった。のれんは21億円ある。不況で立替金が膨らめば、資金繰りと引当が同時に重くなる。
競争の面では、全国の大手の保証会社に加え、不動産管理会社の自社保証や、カード・信販系が料率を下げれば、1件あたりの売上が削られる。住居用は競合が200社を超えて分散し、料率の主導権は不動産会社にある。
どちらに重みを置いたか
結論は、価値は時価総額を上回る、というものだ。確率を重ねた価値は約295億円で、時価総額240億円を上回る。
分かれ目は、シェアを伸ばしながら、発生率を6〜7%の範囲に抑えられるかだ。会社の予想(営業利益39億円)を物価並みに10年伸ばせば高い評価になる。しかし、直近の利益率の低下と借入の増加を見れば、10年の中立は営業利益67億円、ROE16.7%と、足元より落ち着いた姿に置くのが妥当だ。
安全域は大きくない。資産の裏づけは薄く、悲観の筋書きでは価値が大きく削られる。一方、強気の筋書きは900億円を超える。
見るべき点は三つ。代位弁済の発生率と回収率、営業利益率が15%台で止まるか、借入とのれんの増え方だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,014 円537 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 766 円137 億円)。 今の値に割り戻すと 1,806 円322 億円、今との差 +35.8%、 期待の年率 +11.0%(資本コスト 8.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,719 円1,020 億円 | 1,066 円190 億円 | +410.1% | +17.7% | 407 円73 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,569 円815 億円 | 925 円165 億円 | +313.1% | +15.2% | 1,099 円196 億円 |
| 中立 | 38% | 3,634 円648 億円 | 841 円150 億円 | +236.5% | +12.9% | 1,700 円303 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,396 円249 億円 | 617 円110 億円 | +51.3% | +4.2% | 503 円90 億円 |
| 悲観 | 11% | 248 円44 億円 | 393 円70 億円 | −51.8% | −7.0% | 70 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,014 円537 億円 | 766 円137 億円 | +184.2% | +11.0% | 3,780 円674 億円 |
今の株価時価総額 1,330 円237 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 首都圏でシェアが伸び、事業用が育って営業利益は約97億円 利益 66 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 5,719 円1,020 億円
大都市圏のシェアが伸び、住居用ほかの契約件数は10年で1.9倍の68万件になる。事業用は利用率が25%から50%近くに上がり、2.4倍の6.2万件に増える。1件あたりの売上は物価に近く上がり、住居用は1.30倍、事業用は1.34倍になる。
子会社群は、ITとAIの業務の提供で1.8倍に伸びる。売上は565億円になる。
営業利益率は、店と人の網の固定費が薄まり、住居用で16.5%、事業用で23%に上がる。営業利益は約97億円、純利益は約66億円で、ROEは21%。10年の還元は190億円に達する。会社の目標を大きく超える姿だが、店を増やしながら発生率を6%台に保ち続ける条件が要る。
- 住居用賃料保証ほか:数量 68.4(契約件数(万件。推定))× 価格 5.34(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 365 億円・営業利益 60 億円。数量 1.90 倍 × 値段 1.30 倍、営業利益率 16.5%
- 事業用賃料保証:数量 6.2(契約件数(万件。推定))× 価格 23(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 146 億円・営業利益 33 億円。数量 2.40 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 23.0%
- IT・不動産・広告の子会社群:数量 225(子会社の従業員数(人。推定))× 価格 0.24(1人あたり売上(億円。売上÷人数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 55 億円・営業利益 4 億円。数量 1.80 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.38 倍、時価総額 1,020 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シェア拡大と事業用の急伸を同時に実現しつつ、発生率を抑え、料率も保つ必要がある。競争が激しい市場で条件が厳しく、確率は低い。
やや楽観 20% シェアが緩やかに伸び、営業利益は約81億円 利益 55 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 4,569 円815 億円
住居用ほかの契約件数は10年で1.7倍の61万件、事業用は2.1倍の5.5万件になる。料率は競争で少し削られ、1件あたりの売上は住居用で1.28倍、事業用で1.32倍にとどまる。
営業利益率は、住居用で16%、事業用で21.5%と、足元に近い水準を保つ。売上は496億円になる。
営業利益は約81億円、純利益は約55億円で、ROEは18%。還元は165億円になり、配当は純利益の4割台で増え続ける。会社の勢いがほぼ続く姿だが、利益率の低下は止まるという前提に立つ。首都圏の店が育ち、新しい基幹システムとAIで事務の費用が抑えられるので、発生率が6%台半ばに収まれば成り立つ。
- 住居用賃料保証ほか:数量 61.2(契約件数(万件。推定))× 価格 5.26(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 322 億円・営業利益 51 億円。数量 1.70 倍 × 値段 1.28 倍、営業利益率 16.0%
- 事業用賃料保証:数量 5.5(契約件数(万件。推定))× 価格 23(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 125 億円・営業利益 27 億円。数量 2.10 倍 × 値段 1.32 倍、営業利益率 21.5%
- IT・不動産・広告の子会社群:数量 200(子会社の従業員数(人。推定))× 価格 0.24(1人あたり売上(億円。売上÷人数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。数量 1.60 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 815 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏の店の増設が数字に出ており、事業用も伸びている。直近の伸びの延長で、中期経営計画の実績超過とも整合する。
中立 38% 件数は緩やかに伸び、利益率は15%まで下がって落ち着く 利益 45 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 3,634 円648 億円
住居用の利用率は77%から85%台に上がり、シェアも5%から7.5%ほどに伸びる。住居用ほかの契約件数は10年で1.55倍の56万件になる。事業用は1.9倍の4.9万件だ。
料率は競争で削られ、1件あたりの売上は住居用で1.25倍、事業用で1.30倍と、物価の1.34倍には届かない。売上は441億円になる。
営業利益率は、住居用で15%、事業用で20%に下がる。不動産会社への手数料の増加と、発生率の上昇が続くためだ。営業利益は約67億円、純利益は約45億円で、ROEは16.7%。還元は純利益の4割強の150億円になる。堅実だが、驚きのない筋書きである。
- 住居用賃料保証ほか:数量 55.8(契約件数(万件。推定))× 価格 5.13(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 286 億円・営業利益 43 億円。数量 1.55 倍 × 値段 1.25 倍、営業利益率 15.0%
- 事業用賃料保証:数量 4.9(契約件数(万件。推定))× 価格 23(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 112 億円・営業利益 22 億円。数量 1.90 倍 × 値段 1.30 倍、営業利益率 20.0%
- IT・不動産・広告の子会社群:数量 175(子会社の従業員数(人。推定))× 価格 0.24(1人あたり売上(億円。売上÷人数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。数量 1.40 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.43 倍、時価総額 648 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要は増え続けるが、競争で料率と手数料が圧迫され、直近の利益率の低下が続く。実績に最も近い筋書きとして、38%に置いた。
やや悲観 25% 料率と手数料の圧力で利益率が11.5%まで下がり、営業利益は横ばい 利益 25 億円 · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 1,396 円249 億円
競争で料率が下がり、1件あたりの売上は住居用で1.15倍、事業用で1.2倍にとどまる。契約件数は住居用ほかで1.25倍の45万件、事業用で1.5倍の3.9万件に増えるが、シェアは伸びない。
不動産会社への手数料が増え、発生率も7%台に上がる。営業利益率は、住居用で11.5%、事業用で15%に下がる。売上は324億円になる。
営業利益は約37億円で、今とほぼ同じ。名目では10年間ほぼ横ばいだ。純利益は約25億円、ROEは11.6%で、資本コストを少し上回るだけだ。還元は純利益の45%ほどの110億円。規模は大きくなるが、稼ぎは増えない姿である。
- 住居用賃料保証ほか:数量 45.0(契約件数(万件。推定))× 価格 4.72(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 213 億円・営業利益 24 億円。数量 1.25 倍 × 値段 1.15 倍、営業利益率 11.5%
- 事業用賃料保証:数量 3.9(契約件数(万件。推定))× 価格 21(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 81 億円・営業利益 12 億円。数量 1.50 倍 × 値段 1.20 倍、営業利益率 15.0%
- IT・不動産・広告の子会社群:数量 138(子会社の従業員数(人。推定))× 価格 0.22(1人あたり売上(億円。売上÷人数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。数量 1.10 倍 × 値段 1.20 倍、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益は25億円、ROEは11.6%で資本コストを少し上回る。成長も鈍いのでgは3.5%。RONIC=8.75%+1/2×(11.6%−8.75%)=10.2%から、正当化PER=(1−3.5%÷10.2%)÷(8.75%−3.5%)=約12.5倍。利益が足元から伸びず、貸倒れも重いので、上限の8割弱の9.8倍に置いた。
確率:直近の営業利益率の低下、借入の増加、競合の多さという具体的な懸念が重なる。参入の壁が低い事業なので、25%に置いた。
悲観 11% 料率の崩れと貸倒れの急増が重なり、利益がほぼ消える 利益 6 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 248 円44 億円
大手のカード・信販系や不動産会社の自社保証が料率を下げ、1件あたりの売上は10年で物価に追いつかず、ほぼ上がらない。契約件数は住居用ほかで0.9倍の32万件に減る。景気の悪化で代位弁済が急増し、回収率も下がる。
営業利益率は、住居用で4.5%、事業用で7%に落ちる。子会社群は損益が均衡する。売上は199億円で、今より少ない。
営業利益は約9億円、純利益は約6億円で、ROEは3.8%と資本コストを大きく下回る。配当は大きく減り、還元は70億円にとどまる。借入があるので、資金繰りは細るが、店と網による回収の力で小さな利益は残る。
- 住居用賃料保証ほか:数量 32.4(契約件数(万件。推定))× 価格 4.11(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 133 億円・営業利益 6 億円。数量 0.90 倍 × 値段 1.00 倍、営業利益率 4.5%
- 事業用賃料保証:数量 2.6(契約件数(万件。推定))× 価格 17(1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 45 億円・営業利益 3 億円。数量 1.00 倍 × 値段 1.00 倍、営業利益率 7.0%
- IT・不動産・広告の子会社群:数量 113(子会社の従業員数(人。推定))× 価格 0.18(1人あたり売上(億円。売上÷人数。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍 × 値段 1.00 倍、営業利益率 0.0%
倍率:純利益は6億円、ROEは3.8%で資本コスト8.75%に届かない。ためた利益は額面ほどの価値がなく、倍率は資本コストの逆数の約11.4倍が上限。成長がなく、借入の重さも残るので、上限の6割台半ばにあたる7.5倍に置いた。
確率:2019〜20年3月期に実際に利益が消えた前例がある。景気の悪化、競争、借入の重さが重なる複合の筋書きで、実現すれば深い。11%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住居用賃料保証ほか
賃貸住宅の入居者の家賃を保証する事業に、一棟保証(K-net)・医療費保証・収納代行などの付帯の保証を足したもの。滞納が出たら家主へ立て替え、後で入居者に請求する。
| 数量契約件数(万件。推定) | 価格1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36.0 | 4.11 | 148 | 25 |
| 10 年後 中立 | 55.8 | 5.13 | 286 | 43 |
取り方:2026年3月期の住居用賃料保証の売上は120.0億円。これに保証関連の残り27.9億円(保証関連の外部売上193.1億円から住居用と事業用を引いた分。一棟保証、医療費保証、収納代行など)を足し、147.8億円とした。件数は、2025年3月期に開示された申込件数29.6万件を手がかりに、住居用と一棟保証などを合わせて36.0万件と推定した(2026年3月期の申込件数は未開示)。1件あたり約4.1万円は売上を件数で割った値。営業利益は保証関連の35.35億円を、事業用の利益率を高めに見て配分し、25.4億円(17.2%)とした。
事業用賃料保証
店舗やオフィスの賃料を保証する事業。住居用と審査・営業・債権管理の方法が違い、1件の金額が大きい。
| 数量契約件数(万件。推定) | 価格1件あたり売上(万円。売上÷件数。物価で10年に1.34倍が中立の基準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.6 | 17 | 45 | 10 |
| 10 年後 中立 | 4.9 | 23 | 112 | 22 |
取り方:2026年3月期の事業用賃料保証の売上は45.25億円(前期比+23%)。会社推定の市場385億円に対しシェア11.7%。申込件数に占める事業用は開示がなく、約8%の2.6万件と推定した。1件あたり約17万円は売上を件数で割った値で、住居用の4倍強になる。営業利益は保証関連の利益を配分し、利益率22%の10.0億円と置いた。
IT・不動産・広告の子会社群
ソフト開発のエイビス、外国人向け賃貸と不動産売買のあすみらい、広告のエイエフビイなど、保証以外の子会社。
| 数量子会社の従業員数(人。推定) | 価格1人あたり売上(億円。売上÷人数。物価で10年に1.34倍が中立の基準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 125 | 0.18 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 175 | 0.24 | 43 | 2 |
取り方:子会社群の外部売上は、IT(エイビス)14.6億円、不動産(あすみらい)6.8億円、その他(広告のエイエフビイなど)1.3億円の合計22.7億円。人数は、連結従業員576名から提出会社451名を引いた約125名とした。1人あたり売上は約1,800万円。営業利益はIT 0.93億円、不動産 0.12億円に、その他と調整を合わせた0.88億円。
リスクと懸念
代位弁済の発生率に敏感な利益
発生率が7.2%だった2019年3月期と2020年3月期は、営業利益がほぼゼロだった。5.8%だった2022年3月期の営業利益率は21%。景気の悪化や新しい顧客層への拡大で発生率が1ポイント動けば、利益が大きく変わる。直近は6.5%で、前期の6.3%からじりじり上がっている。
競争による料率と手数料の圧力
住居用の保証会社は200社を超える。会社は、競争の激化で不動産会社に払う事務手数料が増えたと述べた。営業利益率は18.0%から16.8%に下がり、2027年3月期の予想は15.5%。保険会社やカード会社、管理会社の自社保証が価格を下げれば、さらに削られる。
借入とのれんの増加
有利子負債は1年で33億円増えて58億円になり、現金27億円の2倍を超えた。のれんは21億円に増え、自己資本比率は33.4%に下がった。目標は50%以上。子会社の業績が計画を割れば、減損が出る。立替金が膨らむ不況期は、借入枠の維持も課題になる。
規制と制度の変更
有価証券報告書は、住宅セーフティネット法の改正への対応をリスクにあげている。家賃債務保証の登録や回収の方法に規制が入れば、遵守の費用が増え、回収率が下がるおそれがある。
事業用と首都圏での拡大の難しさ
事業用は審査が難しく、1件の金額が大きい。1件が不良化したときの影響は住居用より大きい。シェアの低い首都圏は、店と人を増やしても、競合との消耗戦になりやすい。2027年3月期は新人事制度、新基幹システム、本社の増床で費用が増え、営業利益は+6.4%にとどまる予想だ。
新規事業と子会社の不調
IT、不動産、広告の子会社群は売上が23億円で、営業利益は1億円足らずだ。エイビスは前期に売上が17%減った。保証以外の事業で資金を食い、本業の足を引く可能性がある。
今後の分かれ目
- 代位弁済の発生率が、7%を超えて上がった
- 2019〜20年3月期の局面に近づく合図だ。営業利益率の置き方を下げ、慎重な筋書きの確率を上げる。
- 営業利益率が、17%を超えて戻った
- 競争による圧力を新しい契約が吸収できている証拠だ。中立と強気の確率を上げる。
- 事業用の保証の売上が、2年続けて2割以上伸びた
- 事業用の市場が広がっている合図だ。数量を上げる。
- 有利子負債が現金の3倍を超え、自己資本比率が30%を割った
- 借入への依存が強まった。悲観側の確率を上げ、倍率を引き下げる。
- 会社が次の中期経営計画で営業利益率の目標を14%台に引き下げた
- 会社自身が利益率の低下を認めた合図だ。中立の利益率を下げる。
- 買収や完全子会社化の提案が出た(推定確率は10年で2割)
- 提案の価格を、稼ぐ力から出した価値と比べる。
見ておくもの
- 代位弁済の発生率と回収率(6.5%と97.4%)
- 営業利益率(16.8%から15.5%への低下が止まるか)
- 住居用と事業用の売上の伸びと、申込件数
- 有利子負債と自己資本比率(33.4%)、のれんの残高
- 次の中期経営計画(2027年3月期で終了)の目標
- 子会社群(IT・不動産・広告)の営業利益
倍率と資本コストの決め方
本稿は時価から出発していない。起点は2026年3月期の実績で、売上216億円、営業利益36億円だ。会社の2027年3月期の予想(営業利益39億円)は、新人事制度や新基幹システムなどの費用を織り込んだ控えめな数字なので、起点に置かなかった。10年後の中立は、営業利益67億円と、足元の1.85倍に置いた。
倍率は収益から決めた。ROEが資本コストを大きく上回る筋書きは、式の上限の8割台後半に置き、ROEが落ちる筋書きは8割弱に置いた。他社や過去の倍率は判断に使っていない。
資本コストは8.75%とした。同じ領域の全保連と同じ物差しにそろえた。ジェイリースは親会社がなく、借入が増えた点で不利だが、店の多さと事業用の経験で相殺した。
契約件数は、2025年3月期の申込件数29.6万件を手がかりに筆者が推定した値で、開示された最新の数ではない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.6→15.38 倍・やや楽観 PER 12.9→14.81 倍・中立 PER 12.4→14.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality 1.25%を足した。M&Aの減損や貸倒れの急増など個別の事情は、筋書きと確率で表した。同じ領域の全保連と同じ物差しにそろえた。