結論
Casa は、賃貸住宅の入居者の家賃を家主に保証する独立系の会社だ。入居者が滞納すれば家主に立て替え、後で本人に請求して回収する。筆者の結論は、価値は今の時価総額とほぼ同じ、というものだ。
件数は伸びている。2026 年 1 月期の保有契約は 68 万 3,602 件で前年より 5.9% 増え、売上は 127.5 億円と 10 年で 1.8 倍になった。一方、利益は崩れた。損失の見積りと回収の見込みを外して貸倒引当金を 35 億円繰り入れ、営業損益は −0.6 億円の赤字だった。会社は審査を締め、承認率が下がった。
会社自身の見込みも慎重だ。2027 年 1 月期の営業利益率は 2.6%、中間期はまだ赤字だった。2016〜2020 年の 14〜16% には遠い。
10 年後の中立は、保有契約が 1.4 倍、売上が約 205 億円、営業利益率は 7%、ROE は 11% と置いた。強気は回収の立て直しで利益率が 12% に戻る姿、弱気は不況で滞納が急増して赤字が続く姿だ。確率で重ねた価値は今の時価総額を 2% ほど下回り、ほぼ見合う。
バリュー投資の観点から
事業の質と、経営の腕を分けて見る。
事業の質は、並みだ。家賃の保証は住まいがある限り続き、件数は毎年 5〜6% ずつ増えてきた。保証料を先に受け取るので、成長に大きな設備は要らない。ただ、入居者は保証会社を選ばず、窓口の不動産会社に手数料を払って件数を買う形だ。差を付けられるのは審査と回収の腕しかない。
その腕に疑問が出た。2026 年 1 月期は、見積りの誤差で引当を積み増し、赤字になった。2023 年 1 月期にも純利益が 2 億円に落ちている。2020 年までの営業利益率 15% 前後は、今の手数料と競争の中では戻りにくい。
経営の資本の使い方は、悪くない。利益が細る中でも自己株を買い、配当を続けた。ただ、のれん 22 億円の買収は利益をまだ生んでいない。
安全域はほぼない。自己資本 66 億円は時価総額に近いが、有形の部分は 8 億円ほどしかない。筆者が見たいのは、引当の繰入が売上の何割に戻るかと、会社が見込む利益率の回復の速さだ。
何で稼ぐ会社か
Casa は、家賃債務保証の会社だ。賃貸住宅を借りる人は、連帯保証人の代わりに保証会社と契約し、初回の保証料と年ごとか月ごとの保証料を払う。入居者が家賃を滞納すると、保証会社が家主に立て替えて払う。これを代位弁済といい、立て替えた分は求償債権として入居者に請求して回収する。2013 年に設立し、東京の新宿に本社を置く。
報告セグメントは家賃債務保証事業だけだ。2026 年 1 月期の売上 127.5 億円のうち、ほぼ全部が保証料である。賃貸経営を支える「COMPASS」、電話の窓口を担うプロフィットセンター、ひとり親の養育費保証といった新しい事業は、まだ小さい。
売り先は入居者だが、窓口は不動産の管理会社と仲介会社、つまり代理店だ。会社は代理店の開拓と利用率の向上で申込を 7.6% 増やした。費用の中心は三つある。回収できない立替の損失(貸倒引当金の繰入 35.2 億円)、代理店に払う紹介手数料(15.8 億円)、そして人件費などの販管費(61.5 億円)だ。保証料は契約時に先に受け取るので、前受金が 54.6 億円ある。立て替えた家賃の未回収分である求償債権は 65.4 億円あり、その半分強の 36.8 億円を引当金で見込んでいる。
優良さと弱いところ
堀は弱い。代理店の網と回収の仕組みはあるが、入居者は保証会社を選ばず、選ぶのは不動産会社だ。
競合は 200 社を超え、大手の信販系や管理会社の自社保証もある。不動産会社に払う紹介手数料は前年より 9% 増え、売上の伸び 4.9% を上回った。値決めの力は乏しい。
事業の質を決めるのは審査と回収の腕だが、2026 年 1 月期にここで失敗した。損失の見積りと回収の傾向の両方で予測を外し、長期に滞った債権の回収も計画より遅れた。会社は債権を初期・中期・長期に分けた体制に組み直し、弁護士への委託を早めている。成果はまだ数字に出ていない。
資本効率は落ちた。ROE は 2016〜2020 年の 12〜19% から、直近 5 年は 2〜9% に下がった。自己資本 66 億円のうち、のれん 22 億円と繰延税金資産 29 億円とソフト 7 億円で 58 億円を占め、有形の厚みは薄い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、保証会社を使う慣行で支えられている。2020 年の民法改正で個人の連帯保証人に上限額が必要になり、家主は保証会社を求めるようになった。単身、高齢者、外国人の世帯は増えており、保証人を立てにくい借り手が多い。同業のジェイリースの推定では、住居用の市場は約 2,360 億円、利用率は 77% に達した。利用率はすでに高く、件数の伸びは緩やかになっていく。
競争は激しい。大手の信販系、独立系、管理会社の自社保証が並ぶ。不動産会社は保証会社を選べるので、代理店への手数料と料率で争う。景気が悪くなると滞納と代位弁済が増え、貸倒れのコストが保証料を上回ることがある。
数量の物差しは保有契約件数とした。今は 68.4 万件で、1 件あたりの年間売上は約 1.87 万円だ。10 年後の中立は、件数が 1.4 倍の約 96 万件、1 件の売上は 1.15 倍と置いた。家賃が上がれば保証料も上がるが、紹介手数料と料率の競争で、物価の 1.34 倍には届かないと見るためだ。審査を締めた分、件数の伸びは直近の年 6% より遅くなる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026 年 1 月期の配当は 15(前期 32)に下げ、総額は 3.2 億円だった。2027 年 1 月期は 20 に戻す予定だ。2025 年には立会外の自己株買い(ToSTNeT-3)で約 7.8 億円を使い、株数は約 908 万株になった。
財務は軽く見えるが、余裕は小さい。現金預金は 28 億円、借入は 6 億円で純現金だが、前受金 55 億円と預り金 17 億円が負債にある。現金は立替と回収を回すための運転資金だ。
大株主は、提携先のリコーリースが約 15%、創業者の宮地正剛氏が約 10% を持つ(第三者サイトの集計)。親会社はない。kabufu の推計では、10 年で買収される確率は 2 割とされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、今回の赤字を一度きりの見積りの修正と見る。
貸倒引当金の繰入は、前年の 19.8 億円から 35.2 億円に増えた。その多くは、長期に滞った債権の回収の見込みを直した分で、毎年続く損失ではない。2025 年 1 月期の営業利益率は 10.7% で、2021〜2025 年の平均も 9% あった。繰入が売上の 15% 前後に戻れば、利益率は 9〜10% に戻る。
件数の基盤は崩れていない。申込は 7.6% 増え、保有契約は 5.9% 増えた。新しい代理店の開拓は続いている。審査を締めた分だけ承認率は下がったが、それは損失を減らすための選択だ。
のれんの償却 2.9 億円は 2034 年ごろに終わり、その分だけ利益が厚くなる。今の PBR は 1 倍で、利益率が戻れば ROE は 15% 前後になる。この筋書きなら、価値は今の 2 倍を超える。ただし、会社自身は 2 年後も利益率 3% 前後と見ており、市場はその見込みを信じている。
慎重な見方
慎重な見方は、見積りを外したことそのものを問題にする。
家賃保証の会社にとって、審査と引当は事業の中心だ。そこで二つの予測を同時に外した。長期に滞った債権の回収も計画を下回った。体制を組み直すと言うが、成果が数字に出るのは先で、中間期もまだ赤字だった。
費用の構造も悪くなっている。紹介手数料は 9% 増え、売上の伸びを上回った。競合は 200 社を超え、代理店を取り合うほど手数料は上がる。審査を締めれば件数の伸びが落ち、緩めれば貸倒れが増える。どちらにも逃げ道がない。
資産の裏付けも薄い。自己資本 66 億円のうち、のれん 22 億円と繰延税金資産 29 億円は、利益が戻らなければ消える資産だ。純現金 22 億円も、前受金 55 億円の裏にある運転資金にすぎない。不況で滞納が増えれば、赤字が数年続き、値段は有形の純資産の 10 億円前後まで下がりうる。
値段の面でも余裕は小さい。今の時価総額は約 67 億円で、2016〜2020 年の利益の水準に戻ることを半ば前提にしている。会社の見込みどおり利益率が 3% 前後で止まれば、純利益は 4 億円ほどで、稼ぐ力に見合う値は今の半分になる。
どちらに重みを置いたか
筆者は、今の値段はほぼ見合うと判断する。強気の言う一度きりの修正という面はあるが、会社自身が回復を遅く見ており、中間期もまだ赤字だった。中立の営業利益率 7% は、直近 5 年の平均 9% と会社の見込み 3% の間に置いた。件数の伸びは本物だが、紹介手数料と信用コストがその果実を削る。確率で重ねた価値は今の時価総額を 2% ほど下回る。買う理由も売る理由も弱く、引当の繰入が売上の 2 割を下回るかを待って判断を見直したい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 1,416 円129 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 359 円33 億円)。 今の値に割り戻すと 848 円77 億円、今との差 +16.1%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 8.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,556 円323 億円 | 750 円68 億円 | +489.8% | +19.4% | 431 円39 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,294 円208 億円 | 532 円48 億円 | +287.1% | +14.5% | 622 円56 億円 |
| 中立 | 36% | 1,302 円118 億円 | 355 円32 億円 | +126.9% | +8.5% | 596 円54 億円 |
| やや悲観 | 20% | 369 円34 億円 | 163 円15 億円 | −27.1% | −3.1% | 106 円10 億円 |
| 悲観 | 12% | 110 円10 億円 | 55 円5 億円 | −77.4% | −13.8% | 20 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,416 円129 億円 | 359 円33 億円 | +143.1% | +9.3% | 1,775 円161 億円 |
今の株価時価総額 730 円66 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 回収の立て直しが効き、利益率が 2020 年以前の水準に近づく 利益 21 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 3,556 円323 億円
回収の体制を初期・中期・長期に分けて組み直し、弁護士への委託を早めた効果が出る筋書きだ。貸倒引当金の繰入は売上の 2 割強から 1 割台前半に戻り、見積りの誤差も消える。代理店の開拓が続き、単身と高齢者と外国人の世帯の増加で、保有契約は 10 年で 1.7 倍の約 116 万件になる。家賃の上昇で 1 件あたりの売上も 1.25 倍に増える。売上は約 270 億円、営業利益率は 12% まで戻り、のれんの償却も 2034 年ごろに終わる。純利益は約 21 億円、ROE は 19% に上がる。配当と自社株買いで利益の 6 割を返し、今の値段の何倍もの価値が付く。
- 家賃債務保証:数量 116(保有契約件数(万件・期末))× 価格 2.33(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 271 億円・営業利益 33 億円。保有契約 1.70 倍 × 1 件の売上 1.25 倍(家賃に連動するが紹介手数料と料率の競争で物価に届かない)、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.04 倍、時価総額 323 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2016〜2020 年 1 月期には営業利益率 14〜16% を出した実績がある。ただ当時より紹介手数料と信用コストが重く、審査を締めながら件数も伸ばす必要があるので 1 割にした。
やや楽観 22% 信用コストが平年に戻り、件数の伸びが続く 利益 15 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 2,294 円208 億円
今回の引当の積み増しは、長期に滞った債権の回収の見込みを直した一度きりの痛みで、数年で信用コストは平年に戻る筋書きだ。保有契約は年 4〜5% ずつ増え、10 年で 1.55 倍の約 106 万件になる。1 件あたりの売上は家賃の上昇に合わせて 1.2 倍になる。売上は約 237 億円、営業利益率は 9.5% と、2025 年 1 月期の 10.7% に近い水準で落ち着く。純利益は約 15 億円、ROE は 15% 前後で、資本コストを上回る。不採算の代理店を絞り、AI で事務を減らした分が、紹介手数料の上昇を打ち消す。配当は利益の 6 割を出し、自己株の取得も続ける。
- 家賃債務保証:数量 106(保有契約件数(万件・期末))× 価格 2.24(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 237 億円・営業利益 23 億円。保有契約 1.55 倍 × 1 件の売上 1.20 倍(家賃に連動するが紹介手数料と料率の競争で物価に届かない)、営業利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14 倍、時価総額 208 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2021〜2025 年 1 月期の営業利益率は 7〜11% で、今回の損失は見積りの誤差という一度きりの面もある。平年の信用コストに戻るのは十分ありうるので 2 割強にした。
中立 36% 件数は伸びるが、信用コストと手数料で利益率は 7% 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,302 円118 億円
賃貸住宅で保証会社を使う慣行は定着し、保有契約は 10 年で 1.4 倍の約 96 万件に増える。ただ審査を締めた分だけ承認率は戻らず、件数の伸びは直近の年 6% から年 3〜4% に落ちる。1 件あたりの売上は家賃に連動するが、代理店への紹介手数料と料率の競争で、物価の 1.34 倍には届かず 1.15 倍にとどまる。貸倒れは今回ほどではないが、2020 年以前より重い水準が続き、営業利益率は 7% で落ち着く。売上は約 205 億円、営業利益は約 14 億円、純利益は約 9.5 億円になる。ROE は 11% で資本コストを少し上回るだけだ。配当は利益の 6 割を出し、残りは求償債権と運転の資金に回る。
- 家賃債務保証:数量 95.7(保有契約件数(万件・期末))× 価格 2.15(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 205 億円・営業利益 14 億円。保有契約 1.40 倍 × 1 件の売上 1.15 倍(家賃に連動するが紹介手数料と料率の競争で物価に届かない)、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.46 倍、時価総額 118 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社自身の見込みが 2027 年 1 月期の営業利益率 2.6%、翌期も 3% 前後と回復は遅い。一方で 2021〜2025 年の平均は 9% あった。その間をとり、もっとも起こりやすい筋書きとした。
やや悲観 20% 回収の遅れが続き、利益率は 3% 台から戻らない 利益 4 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 369 円34 億円
回収の体制を組み直しても、長期に滞った債権は思うように減らない。審査を締めたままなので新しい契約の伸びも鈍く、保有契約は 10 年で 1.2 倍にとどまる。大手の信販系や不動産管理会社の自社保証が料率を押し下げ、1 件あたりの売上は 1.05 倍しか上がらない。紹介手数料は代理店の取り合いで上がり続け、営業利益率は会社の今の見込みと同じ 3.5% 前後から抜け出せない。売上は約 160 億円、純利益は約 4 億円で、ROE は 5% と資本コストの半分ほどだ。配当は続けるが、値段は稼ぐ力に見合う水準まで下がる。のれんと繰延税金資産が自己資本の多くを占め、帳簿ほどの価値は付かない。
- 家賃債務保証:数量 82.0(保有契約件数(万件・期末))× 価格 1.96(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 6 億円。保有契約 1.20 倍 × 1 件の売上 1.05 倍(家賃に連動するが紹介手数料と料率の競争で物価に届かない)、営業利益率 3.5%
倍率:ROE は約 5% で k 8.75% を下回るので、PER の上限は 1÷k=11.1 倍。ためた利益は額面未満の価値なので、ROE÷k に合わせて上限の 8 割の 9.0 倍。値は稼ぐ力(純利益÷k)の範囲に収まる。
確率:会社の見込みどおり利益率が 3% 前後で止まる筋書き。長期に滞った債権の回収は計画を下回った実績があり、2 割にした。
悲観 12% 景気の悪化で滞納が急増し、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 110 円10 億円
景気が悪くなり、入居者の滞納と代位弁済が一度に増える。立て替えた家賃の回収は遅れ、貸倒引当金の繰入が売上の 3 割を超える年が続く。審査をさらに締めるので件数は増えず、料率も競争で上がらない。営業損益は赤字に沈み、利益が出ない間は繰延税金資産も取り崩しになりうる。配当はほぼ止まる。保証料を先に受け取った前受金は、これから起こる滞納の手当てに使う原資で、余った現金ではない。値段は、のれんとソフトと繰延税金資産を除いた有形の純資産に近づき、今の自己資本の 2 割ほどで止まる。求償債権の回収で現金は少しずつ戻るが、その多くは負債の返済に消える。
- 家賃債務保証:数量 68.4(保有契約件数(万件・期末))× 価格 1.87(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 128 億円・営業利益 −3 億円。保有契約 1.00 倍 × 1 件の売上 1.00 倍(家賃に連動するが紹介手数料と料率の競争で物価に届かない)、営業利益率 -2.0%
倍率:赤字なので PBR で置く。価値は稼ぐ力でなく、のれん・ソフト・繰延税金資産を除いた有形の純資産(約 10 億、floor_assets_why)。流した自己資本に対し 0.19 倍。
確率:不況で滞納と代位弁済が一度に増えれば、今回の 1 年の痛みが数年続く。自己資本のうち有形の部分は薄く、深い筋書きとして 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
家賃債務保証
賃貸住宅の入居者の家賃を家主に保証する事業。滞納があれば家主に立て替えて払い、後で入居者から回収する(求償債権)。初回保証料と年間・月額の保証料、代理店からの紹介手数料のほか、賃貸経営の支援(COMPASS)・養育費保証などの小さな事業を含む。
| 数量保有契約件数(万件・期末) | 価格1 件あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 68.4 | 1.87 | 128 | −1 |
| 10 年後 中立 | 95.7 | 2.15 | 205 | 14 |
取り方:報告セグメントは家賃債務保証事業のみ。2026 年 1 月期の売上 127.54 億円を期末の保有契約 683,602 件で割り、1 件あたり年間約 1.87 万円とした。営業損益は −0.63 億円で、売上原価 66.6 億円のうち貸倒引当金繰入 35.2 億円(前年比 +78%)と紹介手数料 15.8 億円が重い。
リスクと懸念
引当の見積りの誤差の再発
2026 年 1 月期は損失と回収の予測を外し、貸倒引当金の繰入が前年の 1.8 倍の 35 億円になった。見積りの体制はまだ組み直しの途中で、同じ誤差が出れば赤字が続く。
景気の悪化による滞納の増加
不況で入居者の滞納と代位弁済が一度に増えると、求償債権が膨らみ、回収も遅れる。保証料は先に受け取っているので、損失はあとから出る。
紹介手数料と料率の競争
競合は 200 社を超え、不動産会社に払う紹介手数料は前年より 9% 増えた。手数料が売上より速く増えれば、件数が伸びても利益は増えない。
のれんと繰延税金資産の取り崩し
自己資本 66 億円のうち、のれん 22 億円と繰延税金資産 29 億円が大きい。利益が戻らなければ、減損や取り崩しで自己資本が大きく減る。
審査の厳格化による件数の鈍化
承認率を下げたことで新しい契約の伸びは前年並みにとどまった。締めすぎれば代理店が他社に流れ、件数の基盤が細る。
今後の分かれ目
- 貸倒引当金の繰入が売上の 2 割を下回り、営業利益率が 6% を超えて戻る
- 回収の立て直しが効いた合図。やや強気と強気の確率を上げる。
- 2028 年 1 月期も営業利益率が 3% を下回る
- 会社の見込みどおり回復が遅い。やや弱気の確率を上げ、中立の利益率を下げる。
- 保有契約の伸びが年 3% を下回る
- 審査の厳格化か競争で件数の基盤が細っている。中立の件数を下げる。
- のれんの減損か、繰延税金資産の取り崩しが出る
- 弱気の筋書きに近づいた合図。悲観の確率を上げる。
- 買収や完全子会社化の提案が出る(kabufu の推計では 10 年で 2 割)
- 提案の値段を、確率で重ねた価値と比べる。
見ておくもの
- 貸倒引当金の繰入と売上の比(2026 年 1 月期 27.6%)
- 保有契約件数と新規契約件数(68.4 万件・13.7 万件)
- 紹介手数料の伸びと売上の伸びの差
- 求償債権と貸倒引当金の残高(65.4 億円・36.8 億円)
- 会社の営業利益率の見込み(2027 年 1 月期 2.6%)の達成
倍率と資本コストの決め方
本稿は時価総額から出発していない。起点は 2026 年 1 月期の実績で、売上 127.5 億円、保有契約 68.4 万件だ。会社の 2027 年 1 月期の見込み(営業利益率 2.6%)は回復の途中の数字なので、そのまま 10 年後に延ばさず、直近 5 年の平均 9% との間の 7% を中立とした。倍率は資本コストと ROE から出し、過去の倍率は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.2→15.04 倍・やや楽観 PER 10.8→14 倍・中立 PER 10.3→12.46 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 1.5% を足した。同業のジェイリース 8.75%・全保連 8.75% より、見積りの失敗の分だけ重く置いた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。