結論
SBIアルヒは、住宅ローン「フラット35」の取扱件数で 16 年連続の首位に立つ専業会社だ。貸したローンは住宅金融支援機構などへ売り、実行時の手数料と、売ったあとの回収報酬で稼ぐ。自分でローンを抱え続ける銀行とは違う商売である。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正で、割安とも割高とも言い切れない、というものだ。一番の理由は稼ぐ力の戻りの遅さにある。営業利益は 2021 年 3 月期の 81 億円から、直近は 28 億円まで落ちた。ROE は 4% 台で、資本コストに届いていない。
戻る道筋は見える。銀行がフラット35から手を引き、変動金利との差も縮んで、固定金利を選ぶ人が増えた。実行件数は前期に 1 割増えた。収益の中でも、回収報酬のように積み上がる部分が育っている。
足を引っぱるのは、売り先が住宅金融支援機構にほぼ限られる点だ。実行の約 9 割がそこ向けで、制度が変われば稼ぎ方ごと変わる。親会社 SBI のもとで事業を広げているが、その成果はまだ利益に出ていない。
10 年で見ると、中立は営業利益 70 億円台への回復だ。会社が掲げる 2030 年 3 月期の税引前 100 億円には、10 年かけても届かない。それでも ROE は資本コストの手前まで戻り、配当をほぼ全額出し続ける今の姿より、価値は積み上がる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で言えば、この会社は「持ち続けたい事業」の条件を、まだ満たしていない。
一つめの条件は、稼ぐ仕組みが長く続くことだ。フラット35の商売は、機構の制度に支えられた安定収益だが、制度の変更に弱い。実行の 9 割を一つの買い手に頼る事業は、強い堀とは呼べない。
二つめは、利益が現金として株主に残ることだ。ここは悪くない。ローンを売って現金に変える商売なので、設備投資は軽い。ただ、売るまでの在庫は借入でまかなう。自己資本比率の低さは、その形の表れだ。
三つめは、経営が資本を賢く使うことだ。配当を出し切る姿勢は誠実だが、のれんの重さとSBI向けの小さな買収が続く点は、冷静に見たい。
10 年後の本質価値は、事業の稼ぐ力で測る。中立の営業利益は 70 億円台、純利益は 50 億円ほどになる。ROE は資本コストの手前で、高い倍率は払えない。
だから筆者は、安全域のある値段の水準を、今の時価総額の近くに見る。割安ではないが、悲観が深く出る場面でも、有形の純資産が下値を支える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、フラット35を使うお客を窓口で受け止め、ローンを実行する手数料にある。実行のたびに収益が入り、ローンは住宅金融支援機構などへ売るので、貸し倒れのリスクはほぼ売り先に移る。
収益は 3 つに分かれる。実行時に入る手数料などの「オリジネーション関連」が 95 億円、回収や保険の「リカーリング」が 89 億円、不動産担保融資などの「アセット・その他」が 67 億円だ(2026 年 3 月期、合計 251 億円)。
窓口は全国に 90 拠点ある。うち 75 がフランチャイズ(FC)の店で、実行の約 7 割をここが占める。直営店と非対面の窓口が残りを担う。不動産会社や住宅メーカーの紹介を受けて売る、紹介型の商売だ。
実行は前期に 1 万 1,318 件、1 件あたりの手数料収入は 70 万円台になる。シェアが 0.1 ポイント動くと実行額で約 200 億円、収益で約 4 億円動く、と会社は説明している。小さなシェアの差が、利益に大きく響く事業だ。
経営の軸は 3 つある。フラット35のシェアを圧倒的な首位にすること。シングル、シニア、外国籍のお客に向けた自社ローンを育てること。積み上がる収益を全体の半分超にすることだ。
グループには、不動産担保融資のSBIエステートファイナンス、リースバックのSBIスマイル、2025 年に保証を始めたSBI信用保証がある。2025 年には優良住宅ローンとSBIノースアセットも連結に加えた。親会社SBIの網を借りて、フラット35以外の収益を増やす狙いだ。
優良さと弱いところ
優良さを測る物差しは、手数料の質と資本の使い方だ。ここでは、強みと弱みがはっきり分かれる。
強みは、首位の座そのものにある。シェアは 27.7% で、16 年続けて 1 位だった。取扱いをやめる銀行が増えるなか、SBI新生銀行のように系列のアルヒへお客を回す例もある。紹介元の不動産会社にとって、迷ったらここへ出す、という存在だ。
弱みは、値段を自分で決められないことだ。金利も手数料の枠も機構の商品設計で決まる。競合のモーゲージバンクは 17 社あり、条件の差で件数を取り合う。堀は広くない。
資本の薄さも気になる。自己資本比率は 18% で、貸出金の流れが滞れば資金繰りに響く。主な借入に付いた特約には、資本合計を前期末の 75% 以上に保つ条項がある。格付けは A で、今のところ余裕がある。
のれんも見ておく。2022 年の親会社化に伴って積まれた 245 億円が自己資本の 6 割近くを占め、ここが減損されれば帳簿は一気に痩せる。
経営の資本配分は、稼ぎに見合わない。配当は純利益のほぼ全額で、方針の下限(性向 35〜40%、DOE 約 4%)を大きく上回る。株主には優しいが、稼ぎを積み増す力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の住宅ローンは年間約 20 兆円の市場だ。そのうち約 9 割が変動金利で、フラット35は 5% 前後の脇役にすぎない。
脇役の規模は、金利で大きく動く。この数年は、変動金利が低いままで固定の割高感が強く、買取型の貸出は 2023 年度から 2024 年度にかけて細った。2024 年度は約 8,000 億円と 1 割減っている。
風向きは 2025 年から変わった。長期金利が上がり、変動金利との差が縮み、さらなる金利上昇を恐れて固定を選ぶ人が増えた。2025 年 10〜12 月期の買取型は 2,694 億円と 37% 増えた。2026 年にはフラット35の金利も過去最高を更新している。
制度の追い風もある。2026 年 4 月から融資限度額が 8,000 万円から 1 億 2,000 万円に上がった。都心の高額物件でも使いやすい。子育て支援の金利引き下げも借換に広がった。
銀行側では、みずほ銀行や三菱UFJ銀行、SBI新生銀行が取扱いをやめた。窓口が減れば、専業が取りやすくなる。ただし、機構の商品設計が変われば、専業は一斉に影響を受ける。
人口は減り、新築の着工は細る。10 年で見る市場は、実質で 1 割増えるかどうかとみる。伸びるとすれば、固定を選ぶ人の割合が高い水準に居座る場合だけだ。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、配当をほぼ全額出すことだ。2026 年 3 月期の年間配当は総額 18 億円ほどで、純利益とほぼ同じになる。会社の方針は性向 35〜40%、DOE 約 4% を最低とするが、実績はそれを上回る。自社株買いはなく、実行済みの買い戻しもない。
親会社のSBIノンバンクホールディングスが 62.8% を持つ。2022 年に TOB でSBIグループの傘下に入った。そのとき、上場は続ける方針が示されている。完全子会社化の話は確認できないが、SBIグループでは上場子会社の整理が進むことも多く、可能性は消えない。
M&A はグループの中で進んでいる。2023 年にSBIエステートファイナンス、スマイル、ギャランティを取り込み、2025 年に優良住宅ローンとSBIノースアセットを連結した。いずれも規模は小さく、利益に出るのはこれからだ。
資金は、借入と社債でまかなう。主な借入は無担保で、金利は短期の指標に連動する。前期は借入が約 200 億円増えた。ローンの在庫が増えると借入も増える。
のれんが総資産の 1 割を占める。減損が出れば自己資本が削られ、借入の特約にも触れかねない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
実行件数は前期に 1 割増えた。固定金利への関心は 2026 年も強く、フラット35の金利が過去最高を更新するなかでも、変動との差は縮んでいる。銀行の撤退が続けば、首位のアルヒに案件が集まる。
融資限度額の引き上げも効く。1 件あたりの金額が増え、都心の高額物件も取れる。1 件あたりの手数料収入は、金額に連動して上がりやすい。
収益の質も変わっている。回収報酬のようなストック収益は前期に 18% 増えた。ストックが半分を超えれば、実行件数の波に左右されにくくなる。SBIグループの顧客網と保証事業が重なれば、自社ローンも育つ。
営業利益は 2021 年 3 月期に 81 億円あった。件数が戻れば、固定費の重さが利益率を押し上げる。計画どおり 2030 年 3 月期に営業収益 550 億円まで伸びれば、ROE は 10% を超える。
資本コストを超える稼ぎが戻るなら、帳簿の自己資本以上の価値がつく。
慎重な見方
利益の回復は、金利の追い風が続くという前提に立つ。変動金利が上がれば、その逆の風も吹く。固定金利の魅力は金利差次第で、いつでも元へ戻る。
実行の 9 割が機構向けという集中は重い。機構が買い取りの条件や手数料の枠を変えれば、稼ぎ方ごと変わる。銀行が取扱いを減らしたのは、儲からなかったからでもある。専業 17 社が奪い合う市場は、値引きに向かう。
拡大の中身にも疑問が残る。自社ローンやSBI連携の事業は、利益が出ていない。買収を重ねてものれんが増え、成果が薄ければ減損になる。
財務は薄い。自己資本比率は 18% で、配当は純利益をほぼ使い切る。稼ぎが戻らなければ、配当を保てない。借入の特約も、利益の悪化に弱い。
この 5 年の利益は 2021 年の 52 億円から 18 億円まで細った。同じ形の谷は、また来る。
自己資本の 6 割近くがのれんという点も、見かけほど強くない理由だ。有形の純資産は 176 億円で、時価総額の半分にとどまる。成長のための買収が成果を生まなければ、帳簿は一度に削られる。回復の物語は、前提が一つ崩れるだけで価値が大きく動く。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、金利の追い風と銀行の撤退という、足元で起きている事実に支えられている。ただし、それが 10 年続くかどうかは分からない。実行の集中と薄い資本は、慎重な見方の重みを増す。
確率は中立に最も厚く置き、楽観の 1 割と悲観の 1 割をほぼ対にした。やや悲観は、回復が一巡して谷に戻る形で、やや楽観よりわずかに厚くした。
結論は、強気にも慎重にも倒れない。だから適正に近い水準で釣り合う。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,311 円583 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 389 円173 億円)。 今の値に割り戻すと 822 円365 億円、今との差 +5.7%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,042 円1,352 億円 | 524 円233 億円 | +358.4% | +16.4% | 357 円159 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,010 円893 億円 | 450 円200 億円 | +216.1% | +12.2% | 541 円241 億円 |
| 中立 | 36% | 1,234 円549 億円 | 414 円184 億円 | +111.8% | +7.8% | 593 円264 億円 |
| やや悲観 | 22% | 395 円176 億円 | 371 円165 億円 | −1.5% | −0.2% | 169 円75 億円 |
| 悲観 | 10% | 332 円147 億円 | 67 円30 億円 | −48.7% | −6.5% | 40 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,311 円583 億円 | 389 円173 億円 | +118.4% | +8.1% | 1,699 円755 億円 |
今の株価時価総額 778 円346 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 固定金利が定着し、首位の座が広がる 利益 99 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 3,042 円1,352 億円
固定金利を選ぶ人の割合が高い水準で居座り、フラット35の市場は実質で 25% 広がる。銀行の撤退が続き、アルヒのシェアは 34% に伸びる。融資限度額の引き上げで、都心の高額物件も取り込む。
実行件数は 1 万 7,000 件台に達する。収益の中では、積み上がった回収報酬が 5 割を超える。SBIグループの顧客網から自社ローンと保証が育ち、1 件あたりの収益は物価を上回って上がる。
営業収益は 570 億円台となり、計画の 2030 年 3 月期の目標を過ぎて、さらに先へ進む。営業利益率は 26% で、2021 年の水準(30%)には届かない。
ROE は 14% まで戻り、配当は純利益の 4 割台に下がっても、DOE 4% を保てる。
- 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 1.7(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 332(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 577 億円・営業利益 150 億円。市場 1.25 倍 × シェア 34%、価格は物価 1.34 倍に収益構成の改善 1.12 倍
倍率:事業の純利益 99 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.66 倍、時価総額 1,352 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利差の縮小が定着し、銀行の撤退も続いたうえで、SBI連携の商品も実る必要がある。条件が重なるため 1 割に置いた。
やや楽観 22% 回復が続き、利益は 100 億円近くへ 利益 71 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 2,010 円893 億円
固定金利への関心は続き、市場は実質で 18% 広がる。シェアは 31〜32% に上がり、実行件数は 1 万 7,000 件に近づく。
回収報酬は積み上がり、収益の半分に届く。保証事業とSBIエステートファイナンスの商品が加わり、1 件あたりの収益は物価の 1.34 倍を少し上回る。
営業利益率は 22% まで戻る。営業収益は 490 億円ほど。会社の 2030 年の目標には、数年遅れで届く姿だ。
ROE は 11% 台で、資本コストをわずかに上回る。配当は純利益の 5 割強に落ち着き、自己資本は厚みを増す。
- 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 1.5(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 321(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 488 億円・営業利益 107 億円。市場 1.18 倍 × シェア 31.5%、価格は物価 1.34 倍に収益構成の改善 1.08 倍
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.6 倍、時価総額 893 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の追い風が続けば届く水準。ただし回復の力は金利次第で、確率を中立より薄い 2 割台に置いた。
中立 36% 中立:回復は半分、営業利益は 70 億円台 利益 48 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,234 円549 億円
市場は実質で 1 割広がり、シェアは 29% へ上がる。実行件数は 1 万 3,000 件ほどになる。人口が減り着工が細る向かい風を、固定金利への移行が相殺する。
1 件あたりの収益は、物価の 1.34 倍に収益構成の改善が少し乗る。回収報酬が積み上がり、収益の 45% に届く。営業収益は 400 億円台に乗る。
営業利益率は 18% に戻る。2021 年の 30% には遠く、会社が目指す 2030 年の税引前利益 100 億円にも届かない。人件費やFCへの手数料が物価で上がり、手数料の枠は動かないためだ。
ROE は 8% 台で、資本コストにわずかに届かない。配当は純利益の 5〜6 割で、ためた利益は帳簿の価値を超えない。
- 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 1.3(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 310(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 404 億円・営業利益 73 億円。市場 1.10 倍 × シェア 29%、価格は物価 1.34 倍に収益構成の改善 1.045 倍
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 549 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利差の縮小と銀行の撤退は続くが、機構向けの集中とシェア争いが利益の上振れを抑える。最も起こりやすい形として、最も厚く置いた。
やや悲観 22% 追い風が一巡し、利益は今と同じ水準にとどまる 利益 16 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 395 円176 億円
変動金利との差が再び開き、固定金利の人気は一巡する。市場は実質で 5% 縮み、シェアは 27% 前後で横ばいになる。実行件数は 1 万 1,000 件を切る。
手数料の枠は動かない一方で、人件費は物価で上がる。FCへの手数料も物価で増える。営業収益は 310 億円ほどで、営業利益率は 8%。名目の利益は今と変わらない。
実質で見れば、10 年かけて稼ぎが目減りしたことになる。ROE は 3% 台で、資本コストに遠く及ばない。ためた利益は帳簿ほどの価値を持たない。
配当は純利益をほぼ使い切る水準を続けるが、自己資本は増えない。
- 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 1.0(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 297(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 311 億円・営業利益 25 億円。市場 0.95 倍 × シェア 27%、価格は物価 1.34 倍のみ
倍率:ROE 3.9% が k 8.75% 以下で、ためた利益は帳簿の価値を持たない。稼ぐ力(純利益 16.4 億円 ÷ k = 187 億円)と有形純資産 176 億円(自己資本 421 億円 − のれん 245 億円)の近くを床とし、今の自己資本 421 億円に 0.415 倍を掛ける。
確率:固定金利ブームは金利差で動くため、元に戻る危うさが現実にある。過去 5 年の利益が細ったことを踏まえ、やや楽観と同じ 2 割台に置いた。
悲観 10% 悲観:機構の制度変更とシェア争いで、稼ぎが損失に沈む 利益 −15 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 332 円147 億円
機構が買取条件や手数料の枠を見直し、専業の取り分が下がる。銀行が一部の取扱いを再開し、モーゲージバンク 17 社の値引き競争も強まる。市場は実質で 25% 縮み、シェアも 24% へ下がる。
実行件数は 7,000 件台に落ち、1 件あたりの収益は物価の上昇に追いつかない。営業収益は 200 億円を割る。費用を絞っても追いつかず、営業損失が続く。
のれんに減損が出て、自己資本は半分近くまで痩せる。借入の特約に触れかねず、資金調達の費用も上がる。配当は大きく削られる。
SBIグループの支援で上場は続くが、株主の取り分は、稼ぐ力ではなく帳簿の価値で測られる。
- 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 0.7(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 266(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 195 億円・営業利益 −20 億円。市場 0.75 倍 × シェア 24%、価格は物価 1.34 倍に届かず 1.20 倍
倍率:営業損失が続き、稼ぐ力は値にならない。床は有形純資産 176 億円から、貸付金の評価減と店舗整理の費用で約 15% を引いた 150 億円。今の自己資本 421 億円に 0.35 倍を掛ける。のれんの減損 147 億円と累積損失で、筋書きの自己資本は 220 億円まで減る。
確率:実行の 9 割が機構向けの集中、のれんの重さ、薄い自己資本が同時に出る構造的な負け筋。起きれば深いので 1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資)
ローンの実行手数料、回収などの報酬、不動産担保融資などを合わせた全社の事業。単一セグメントで開示される。
| 数量年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア | 価格実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.1 | 222 | 251 | 28 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 310 | 404 | 73 |
取り方:数量は 2026 年 3 月期の融資実行件数 1 万 1,318 件(フラット35のシェア 27.7%、市場は約 4.1 万件と逆算)。価格は営業収益 250.9 億円を件数で割った 221.65 万円で、実行手数料のほかに回収報酬・不動産担保融資の収益を含む。物価の分と、積み上がる回収収益の分は価格に入れる。営業利益は IFRS の税引前利益 27.8 億円。費用は店舗への手数料や人件費が中心で、約 65% は件数に連動し、残りは固定とみた。
リスクと懸念
売り先が住宅金融支援機構に集まっている
実行の約 9 割が機構向けだ。機構が買取りの条件や手数料の枠、対象物件を見直せば、専業の取り分が一斉に変わる。2026 年の限度額引き上げのような追い風も、制度ゆえに逆回転する。分散は進んでおらず、悲観の筋書きの第一の理由になる。
金利差が縮んだ追い風は戻りやすい
固定金利の人気は、変動金利との差が縮んだことが主因だ。差が再び開けば、フラット35の実行は細る。2023 年度から 2024 年度の買取型の貸出は 1 割減った前例がある。10 年のうちに金利の波は何度か来る。
FC店舗の網とシェア争い
実行の約 7 割がFC店舗経由だ。条件のよい別の専業にFCが流れれば、件数が減る。モーゲージバンクは 17 社あり、手数料の値引きも起こりうる。件数が動くと固定費の重さで利益が大きく振れる。
のれんの減損と借入の特約
のれんは 245 億円で、自己資本の 6 割近くを占める。事業の稼ぎが戻らなければ減損の対象になり、自己資本は大きく減る。借入の特約には、資本合計を前期末の 75% 以上に保つ条項がある。減損が重なると資金繰りの条件に触れかねない。
SBI連携の新規事業が利益になるか
保証、不動産担保融資、リースバック、自社ローンといった新しい収益源は、今のところ利益に出ていない。買収が続けばのれんと借入が増える。成果が出ない場合、資本が重くなるだけに終わる。
配当をほぼ全額出す水準は続けにくい
年間配当は純利益に近い 18 億円ほどだ。稼ぎが戻らなければ、減配か自己資本の目減りのどちらかになる。自己資本比率が 18% と薄いため、利益を貯める余裕は小さい。
AIによる代替と審査の標準化
ローン審査や申込の窓口は、AIで一部が置き換わりうる。コストは下がるが、お客への手数料の根拠も薄まる。紹介元との関係が価値の中心であり、窓口の効率化だけでは稼ぎは増えない。
今後の分かれ目
- フラット35と変動金利の差が再び開き、実行件数が 2 期続けて減る
- やや悲観の確率を上げる。固定費の重さが出て、営業利益は 20 億円台まで戻りうる。
- 機構が買取条件や手数料の枠を見直す
- 悲観の確率を大きく上げる。機構向けが 9 割の事業は、稼ぎ方ごと変わる。
- 回収などのストック収益が収益の半分を超え、営業利益が 60 億円を超える
- 楽観側の確率を上げる。実行件数の波に左右されにくくなり、倍率も上がる。
- SBIグループがアルヒの完全子会社化を発表する
- TOB の値付けは本質価値と別の話になるが、少数株主の持ち分は現金化される。条件は価値との差で判断する。
- のれんの減損や、借入の特約に触れる事態が起きる
- 悲観の筋書きに近づく。帳簿の自己資本は床にならず、有形純資産を下値の目安にする。
- 自社ローンや保証が、フラット35を除く収益で 100 億円に届く
- 機構への依存が下がり、倍率の根拠が強まる。やや楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- フラット35の実行件数とシェア(27.7% の維持)
- 回収などストック収益の比率(50% 超の達成)
- 機構の買取条件・限度額・金利の変更
- 営業利益の回復(50 億円を超えるか)
- のれんの減損の有無と自己資本比率
- SBIグループの再編(完全子会社化の動き)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。基本の k 8.75%、g 4%、堀は普通で、ROE が資本コストを少し下回る中立は 1÷k の 11.4 倍の約 9 割とした。今の株価やPERは見ていない。今の PER が高いのは、利益が谷にあるためで、10 年後の値付けの根拠にはしていない。IFRS を適用済みの会社なので、新リース会計基準による数字の形の変更はない。純有利子負債は貸付金の在庫が主なので、金利の上昇による利払いの増加は、売却価格に織り込まれる前提で、利益の純額には入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→13.66 倍・やや楽観 PER 11.5→12.6 倍・中立 PER 10.5→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。