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SBIアルヒ 7198

フラット35の件数で首位を守る専業。稼ぎの回復を織り込んでも、今の値段はほぼ適正とみる

適正
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)822 円365 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)778 円346 億円差 +5.7%
10 年後から見ると 適正 価値 822 円365 億円 · 差 +5.7% · 期待の年率 +8.1%
期待の年率リターン(10 年)+8.1%資本コスト比 −0.6 pt
推定の資本コスト8.8%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 8.8% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

SBIアルヒは、住宅ローン「フラット35」の取扱件数で 16 年連続の首位に立つ専業会社だ。貸したローンは住宅金融支援機構などへ売り、実行時の手数料と、売ったあとの回収報酬で稼ぐ。自分でローンを抱え続ける銀行とは違う商売である。

筆者の結論は、今の値段はほぼ適正で、割安とも割高とも言い切れない、というものだ。一番の理由は稼ぐ力の戻りの遅さにある。営業利益は 2021 年 3 月期の 81 億円から、直近は 28 億円まで落ちた。ROE は 4% 台で、資本コストに届いていない。

戻る道筋は見える。銀行がフラット35から手を引き、変動金利との差も縮んで、固定金利を選ぶ人が増えた。実行件数は前期に 1 割増えた。収益の中でも、回収報酬のように積み上がる部分が育っている。

足を引っぱるのは、売り先が住宅金融支援機構にほぼ限られる点だ。実行の約 9 割がそこ向けで、制度が変われば稼ぎ方ごと変わる。親会社 SBI のもとで事業を広げているが、その成果はまだ利益に出ていない。

10 年で見ると、中立は営業利益 70 億円台への回復だ。会社が掲げる 2030 年 3 月期の税引前 100 億円には、10 年かけても届かない。それでも ROE は資本コストの手前まで戻り、配当をほぼ全額出し続ける今の姿より、価値は積み上がる。

バリュー投資の観点から

バリュー投資の観点で言えば、この会社は「持ち続けたい事業」の条件を、まだ満たしていない。

一つめの条件は、稼ぐ仕組みが長く続くことだ。フラット35の商売は、機構の制度に支えられた安定収益だが、制度の変更に弱い。実行の 9 割を一つの買い手に頼る事業は、強い堀とは呼べない。

二つめは、利益が現金として株主に残ることだ。ここは悪くない。ローンを売って現金に変える商売なので、設備投資は軽い。ただ、売るまでの在庫は借入でまかなう。自己資本比率の低さは、その形の表れだ。

三つめは、経営が資本を賢く使うことだ。配当を出し切る姿勢は誠実だが、のれんの重さとSBI向けの小さな買収が続く点は、冷静に見たい。

10 年後の本質価値は、事業の稼ぐ力で測る。中立の営業利益は 70 億円台、純利益は 50 億円ほどになる。ROE は資本コストの手前で、高い倍率は払えない。

だから筆者は、安全域のある値段の水準を、今の時価総額の近くに見る。割安ではないが、悲観が深く出る場面でも、有形の純資産が下値を支える。

何で稼ぐ会社か

稼ぎの源は、フラット35を使うお客を窓口で受け止め、ローンを実行する手数料にある。実行のたびに収益が入り、ローンは住宅金融支援機構などへ売るので、貸し倒れのリスクはほぼ売り先に移る。

収益は 3 つに分かれる。実行時に入る手数料などの「オリジネーション関連」が 95 億円、回収や保険の「リカーリング」が 89 億円、不動産担保融資などの「アセット・その他」が 67 億円だ(2026 年 3 月期、合計 251 億円)。

窓口は全国に 90 拠点ある。うち 75 がフランチャイズ(FC)の店で、実行の約 7 割をここが占める。直営店と非対面の窓口が残りを担う。不動産会社や住宅メーカーの紹介を受けて売る、紹介型の商売だ。

実行は前期に 1 万 1,318 件、1 件あたりの手数料収入は 70 万円台になる。シェアが 0.1 ポイント動くと実行額で約 200 億円、収益で約 4 億円動く、と会社は説明している。小さなシェアの差が、利益に大きく響く事業だ。

経営の軸は 3 つある。フラット35のシェアを圧倒的な首位にすること。シングル、シニア、外国籍のお客に向けた自社ローンを育てること。積み上がる収益を全体の半分超にすることだ。

グループには、不動産担保融資のSBIエステートファイナンス、リースバックのSBIスマイル、2025 年に保証を始めたSBI信用保証がある。2025 年には優良住宅ローンとSBIノースアセットも連結に加えた。親会社SBIの網を借りて、フラット35以外の収益を増やす狙いだ。

優良さと弱いところ

優良さを測る物差しは、手数料の質と資本の使い方だ。ここでは、強みと弱みがはっきり分かれる。

強みは、首位の座そのものにある。シェアは 27.7% で、16 年続けて 1 位だった。取扱いをやめる銀行が増えるなか、SBI新生銀行のように系列のアルヒへお客を回す例もある。紹介元の不動産会社にとって、迷ったらここへ出す、という存在だ。

弱みは、値段を自分で決められないことだ。金利も手数料の枠も機構の商品設計で決まる。競合のモーゲージバンクは 17 社あり、条件の差で件数を取り合う。堀は広くない。

資本の薄さも気になる。自己資本比率は 18% で、貸出金の流れが滞れば資金繰りに響く。主な借入に付いた特約には、資本合計を前期末の 75% 以上に保つ条項がある。格付けは A で、今のところ余裕がある。

のれんも見ておく。2022 年の親会社化に伴って積まれた 245 億円が自己資本の 6 割近くを占め、ここが減損されれば帳簿は一気に痩せる。

経営の資本配分は、稼ぎに見合わない。配当は純利益のほぼ全額で、方針の下限(性向 35〜40%、DOE 約 4%)を大きく上回る。株主には優しいが、稼ぎを積み増す力は弱い。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

日本の住宅ローンは年間約 20 兆円の市場だ。そのうち約 9 割が変動金利で、フラット35は 5% 前後の脇役にすぎない。

脇役の規模は、金利で大きく動く。この数年は、変動金利が低いままで固定の割高感が強く、買取型の貸出は 2023 年度から 2024 年度にかけて細った。2024 年度は約 8,000 億円と 1 割減っている。

風向きは 2025 年から変わった。長期金利が上がり、変動金利との差が縮み、さらなる金利上昇を恐れて固定を選ぶ人が増えた。2025 年 10〜12 月期の買取型は 2,694 億円と 37% 増えた。2026 年にはフラット35の金利も過去最高を更新している。

制度の追い風もある。2026 年 4 月から融資限度額が 8,000 万円から 1 億 2,000 万円に上がった。都心の高額物件でも使いやすい。子育て支援の金利引き下げも借換に広がった。

銀行側では、みずほ銀行や三菱UFJ銀行、SBI新生銀行が取扱いをやめた。窓口が減れば、専業が取りやすくなる。ただし、機構の商品設計が変われば、専業は一斉に影響を受ける。

人口は減り、新築の着工は細る。10 年で見る市場は、実質で 1 割増えるかどうかとみる。伸びるとすれば、固定を選ぶ人の割合が高い水準に居座る場合だけだ。

資本政策と M&A

資本政策の軸は、配当をほぼ全額出すことだ。2026 年 3 月期の年間配当は総額 18 億円ほどで、純利益とほぼ同じになる。会社の方針は性向 35〜40%、DOE 約 4% を最低とするが、実績はそれを上回る。自社株買いはなく、実行済みの買い戻しもない。

親会社のSBIノンバンクホールディングスが 62.8% を持つ。2022 年に TOB でSBIグループの傘下に入った。そのとき、上場は続ける方針が示されている。完全子会社化の話は確認できないが、SBIグループでは上場子会社の整理が進むことも多く、可能性は消えない。

M&A はグループの中で進んでいる。2023 年にSBIエステートファイナンス、スマイル、ギャランティを取り込み、2025 年に優良住宅ローンとSBIノースアセットを連結した。いずれも規模は小さく、利益に出るのはこれからだ。

資金は、借入と社債でまかなう。主な借入は無担保で、金利は短期の指標に連動する。前期は借入が約 200 億円増えた。ローンの在庫が増えると借入も増える。

のれんが総資産の 1 割を占める。減損が出れば自己資本が削られ、借入の特約にも触れかねない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

実行件数は前期に 1 割増えた。固定金利への関心は 2026 年も強く、フラット35の金利が過去最高を更新するなかでも、変動との差は縮んでいる。銀行の撤退が続けば、首位のアルヒに案件が集まる。

融資限度額の引き上げも効く。1 件あたりの金額が増え、都心の高額物件も取れる。1 件あたりの手数料収入は、金額に連動して上がりやすい。

収益の質も変わっている。回収報酬のようなストック収益は前期に 18% 増えた。ストックが半分を超えれば、実行件数の波に左右されにくくなる。SBIグループの顧客網と保証事業が重なれば、自社ローンも育つ。

営業利益は 2021 年 3 月期に 81 億円あった。件数が戻れば、固定費の重さが利益率を押し上げる。計画どおり 2030 年 3 月期に営業収益 550 億円まで伸びれば、ROE は 10% を超える。

資本コストを超える稼ぎが戻るなら、帳簿の自己資本以上の価値がつく。

慎重な見方

利益の回復は、金利の追い風が続くという前提に立つ。変動金利が上がれば、その逆の風も吹く。固定金利の魅力は金利差次第で、いつでも元へ戻る。

実行の 9 割が機構向けという集中は重い。機構が買い取りの条件や手数料の枠を変えれば、稼ぎ方ごと変わる。銀行が取扱いを減らしたのは、儲からなかったからでもある。専業 17 社が奪い合う市場は、値引きに向かう。

拡大の中身にも疑問が残る。自社ローンやSBI連携の事業は、利益が出ていない。買収を重ねてものれんが増え、成果が薄ければ減損になる。

財務は薄い。自己資本比率は 18% で、配当は純利益をほぼ使い切る。稼ぎが戻らなければ、配当を保てない。借入の特約も、利益の悪化に弱い。

この 5 年の利益は 2021 年の 52 億円から 18 億円まで細った。同じ形の谷は、また来る。

自己資本の 6 割近くがのれんという点も、見かけほど強くない理由だ。有形の純資産は 176 億円で、時価総額の半分にとどまる。成長のための買収が成果を生まなければ、帳簿は一度に削られる。回復の物語は、前提が一つ崩れるだけで価値が大きく動く。

どちらに重みを置いたか

強気の言い分は、金利の追い風と銀行の撤退という、足元で起きている事実に支えられている。ただし、それが 10 年続くかどうかは分からない。実行の集中と薄い資本は、慎重な見方の重みを増す。

確率は中立に最も厚く置き、楽観の 1 割と悲観の 1 割をほぼ対にした。やや悲観は、回復が一巡して谷に戻る形で、やや楽観よりわずかに厚くした。

結論は、強気にも慎重にも倒れない。だから適正に近い水準で釣り合う。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 1,311 円583 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 389 円173 億円)。 今の値に割り戻すと 822 円365 億円、今との差 +5.7%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 8.8%)→ 適正

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 10% 3,042 円1,352 億円 524 円233 億円 +358.4% +16.4% 357 円159 億円
やや楽観 22% 2,010 円893 億円 450 円200 億円 +216.1% +12.2% 541 円241 億円
中立 36% 1,234 円549 億円 414 円184 億円 +111.8% +7.8% 593 円264 億円
やや悲観 22% 395 円176 億円 371 円165 億円 −1.5% −0.2% 169 円75 億円
悲観 10% 332 円147 億円 67 円30 億円 −48.7% −6.5% 40 円18 億円
加重平均100% 1,311 円583 億円389 円173 億円 +118.4% +8.1% 1,699 円755 億円

今の株価時価総額 778 円346 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。

楽観 10% 固定金利が定着し、首位の座が広がる 利益 99 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 3,042 円1,352 億円

固定金利を選ぶ人の割合が高い水準で居座り、フラット35の市場は実質で 25% 広がる。銀行の撤退が続き、アルヒのシェアは 34% に伸びる。融資限度額の引き上げで、都心の高額物件も取り込む。

実行件数は 1 万 7,000 件台に達する。収益の中では、積み上がった回収報酬が 5 割を超える。SBIグループの顧客網から自社ローンと保証が育ち、1 件あたりの収益は物価を上回って上がる。

営業収益は 570 億円台となり、計画の 2030 年 3 月期の目標を過ぎて、さらに先へ進む。営業利益率は 26% で、2021 年の水準(30%)には届かない。

ROE は 14% まで戻り、配当は純利益の 4 割台に下がっても、DOE 4% を保てる。

  • 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 1.7(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 332(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 577 億円・営業利益 150 億円。市場 1.25 倍 × シェア 34%、価格は物価 1.34 倍に収益構成の改善 1.12 倍

倍率:事業の純利益 99 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.66 倍、時価総額 1,352 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:金利差の縮小が定着し、銀行の撤退も続いたうえで、SBI連携の商品も実る必要がある。条件が重なるため 1 割に置いた。

やや楽観 22% 回復が続き、利益は 100 億円近くへ 利益 71 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 2,010 円893 億円

固定金利への関心は続き、市場は実質で 18% 広がる。シェアは 31〜32% に上がり、実行件数は 1 万 7,000 件に近づく。

回収報酬は積み上がり、収益の半分に届く。保証事業とSBIエステートファイナンスの商品が加わり、1 件あたりの収益は物価の 1.34 倍を少し上回る。

営業利益率は 22% まで戻る。営業収益は 490 億円ほど。会社の 2030 年の目標には、数年遅れで届く姿だ。

ROE は 11% 台で、資本コストをわずかに上回る。配当は純利益の 5 割強に落ち着き、自己資本は厚みを増す。

  • 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 1.5(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 321(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 488 億円・営業利益 107 億円。市場 1.18 倍 × シェア 31.5%、価格は物価 1.34 倍に収益構成の改善 1.08 倍

倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.6 倍、時価総額 893 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:足元の追い風が続けば届く水準。ただし回復の力は金利次第で、確率を中立より薄い 2 割台に置いた。

中立 36% 中立:回復は半分、営業利益は 70 億円台 利益 48 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,234 円549 億円

市場は実質で 1 割広がり、シェアは 29% へ上がる。実行件数は 1 万 3,000 件ほどになる。人口が減り着工が細る向かい風を、固定金利への移行が相殺する。

1 件あたりの収益は、物価の 1.34 倍に収益構成の改善が少し乗る。回収報酬が積み上がり、収益の 45% に届く。営業収益は 400 億円台に乗る。

営業利益率は 18% に戻る。2021 年の 30% には遠く、会社が目指す 2030 年の税引前利益 100 億円にも届かない。人件費やFCへの手数料が物価で上がり、手数料の枠は動かないためだ。

ROE は 8% 台で、資本コストにわずかに届かない。配当は純利益の 5〜6 割で、ためた利益は帳簿の価値を超えない。

  • 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 1.3(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 310(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 404 億円・営業利益 73 億円。市場 1.10 倍 × シェア 29%、価格は物価 1.34 倍に収益構成の改善 1.045 倍

倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 549 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:金利差の縮小と銀行の撤退は続くが、機構向けの集中とシェア争いが利益の上振れを抑える。最も起こりやすい形として、最も厚く置いた。

やや悲観 22% 追い風が一巡し、利益は今と同じ水準にとどまる 利益 16 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 395 円176 億円

変動金利との差が再び開き、固定金利の人気は一巡する。市場は実質で 5% 縮み、シェアは 27% 前後で横ばいになる。実行件数は 1 万 1,000 件を切る。

手数料の枠は動かない一方で、人件費は物価で上がる。FCへの手数料も物価で増える。営業収益は 310 億円ほどで、営業利益率は 8%。名目の利益は今と変わらない。

実質で見れば、10 年かけて稼ぎが目減りしたことになる。ROE は 3% 台で、資本コストに遠く及ばない。ためた利益は帳簿ほどの価値を持たない。

配当は純利益をほぼ使い切る水準を続けるが、自己資本は増えない。

  • 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 1.0(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 297(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 311 億円・営業利益 25 億円。市場 0.95 倍 × シェア 27%、価格は物価 1.34 倍のみ

倍率:ROE 3.9% が k 8.75% 以下で、ためた利益は帳簿の価値を持たない。稼ぐ力(純利益 16.4 億円 ÷ k = 187 億円)と有形純資産 176 億円(自己資本 421 億円 − のれん 245 億円)の近くを床とし、今の自己資本 421 億円に 0.415 倍を掛ける。

確率:固定金利ブームは金利差で動くため、元に戻る危うさが現実にある。過去 5 年の利益が細ったことを踏まえ、やや楽観と同じ 2 割台に置いた。

悲観 10% 悲観:機構の制度変更とシェア争いで、稼ぎが損失に沈む 利益 −15 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 332 円147 億円

機構が買取条件や手数料の枠を見直し、専業の取り分が下がる。銀行が一部の取扱いを再開し、モーゲージバンク 17 社の値引き競争も強まる。市場は実質で 25% 縮み、シェアも 24% へ下がる。

実行件数は 7,000 件台に落ち、1 件あたりの収益は物価の上昇に追いつかない。営業収益は 200 億円を割る。費用を絞っても追いつかず、営業損失が続く。

のれんに減損が出て、自己資本は半分近くまで痩せる。借入の特約に触れかねず、資金調達の費用も上がる。配当は大きく削られる。

SBIグループの支援で上場は続くが、株主の取り分は、稼ぐ力ではなく帳簿の価値で測られる。

  • 住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資):数量 0.7(年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア)× 価格 266(実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目))→ 売上 195 億円・営業利益 −20 億円。市場 0.75 倍 × シェア 24%、価格は物価 1.34 倍に届かず 1.20 倍

倍率:営業損失が続き、稼ぐ力は値にならない。床は有形純資産 176 億円から、貸付金の評価減と店舗整理の費用で約 15% を引いた 150 億円。今の自己資本 421 億円に 0.35 倍を掛ける。のれんの減損 147 億円と累積損失で、筋書きの自己資本は 220 億円まで減る。

確率:実行の 9 割が機構向けの集中、のれんの重さ、薄い自己資本が同時に出る構造的な負け筋。起きれば深いので 1 割に置いた。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

住宅ローン事業(フラット35を軸にした実行・回収・周辺融資)

ローンの実行手数料、回収などの報酬、不動産担保融資などを合わせた全社の事業。単一セグメントで開示される。

数量年間の実行件数(万件)=フラット35の市場件数 × シェア価格実行 1 件あたりの営業収益(万円・名目)売上営業利益
今 2026/03 1.1 222 251 28
10 年後 中立 1.3 310 404 73

取り方:数量は 2026 年 3 月期の融資実行件数 1 万 1,318 件(フラット35のシェア 27.7%、市場は約 4.1 万件と逆算)。価格は営業収益 250.9 億円を件数で割った 221.65 万円で、実行手数料のほかに回収報酬・不動産担保融資の収益を含む。物価の分と、積み上がる回収収益の分は価格に入れる。営業利益は IFRS の税引前利益 27.8 億円。費用は店舗への手数料や人件費が中心で、約 65% は件数に連動し、残りは固定とみた。

リスクと懸念

売り先が住宅金融支援機構に集まっている

実行の約 9 割が機構向けだ。機構が買取りの条件や手数料の枠、対象物件を見直せば、専業の取り分が一斉に変わる。2026 年の限度額引き上げのような追い風も、制度ゆえに逆回転する。分散は進んでおらず、悲観の筋書きの第一の理由になる。

金利差が縮んだ追い風は戻りやすい

固定金利の人気は、変動金利との差が縮んだことが主因だ。差が再び開けば、フラット35の実行は細る。2023 年度から 2024 年度の買取型の貸出は 1 割減った前例がある。10 年のうちに金利の波は何度か来る。

FC店舗の網とシェア争い

実行の約 7 割がFC店舗経由だ。条件のよい別の専業にFCが流れれば、件数が減る。モーゲージバンクは 17 社あり、手数料の値引きも起こりうる。件数が動くと固定費の重さで利益が大きく振れる。

のれんの減損と借入の特約

のれんは 245 億円で、自己資本の 6 割近くを占める。事業の稼ぎが戻らなければ減損の対象になり、自己資本は大きく減る。借入の特約には、資本合計を前期末の 75% 以上に保つ条項がある。減損が重なると資金繰りの条件に触れかねない。

SBI連携の新規事業が利益になるか

保証、不動産担保融資、リースバック、自社ローンといった新しい収益源は、今のところ利益に出ていない。買収が続けばのれんと借入が増える。成果が出ない場合、資本が重くなるだけに終わる。

配当をほぼ全額出す水準は続けにくい

年間配当は純利益に近い 18 億円ほどだ。稼ぎが戻らなければ、減配か自己資本の目減りのどちらかになる。自己資本比率が 18% と薄いため、利益を貯める余裕は小さい。

AIによる代替と審査の標準化

ローン審査や申込の窓口は、AIで一部が置き換わりうる。コストは下がるが、お客への手数料の根拠も薄まる。紹介元との関係が価値の中心であり、窓口の効率化だけでは稼ぎは増えない。

今後の分かれ目

フラット35と変動金利の差が再び開き、実行件数が 2 期続けて減る
やや悲観の確率を上げる。固定費の重さが出て、営業利益は 20 億円台まで戻りうる。
機構が買取条件や手数料の枠を見直す
悲観の確率を大きく上げる。機構向けが 9 割の事業は、稼ぎ方ごと変わる。
回収などのストック収益が収益の半分を超え、営業利益が 60 億円を超える
楽観側の確率を上げる。実行件数の波に左右されにくくなり、倍率も上がる。
SBIグループがアルヒの完全子会社化を発表する
TOB の値付けは本質価値と別の話になるが、少数株主の持ち分は現金化される。条件は価値との差で判断する。
のれんの減損や、借入の特約に触れる事態が起きる
悲観の筋書きに近づく。帳簿の自己資本は床にならず、有形純資産を下値の目安にする。
自社ローンや保証が、フラット35を除く収益で 100 億円に届く
機構への依存が下がり、倍率の根拠が強まる。やや楽観の確率を上げる。

見ておくもの

  • フラット35の実行件数とシェア(27.7% の維持)
  • 回収などストック収益の比率(50% 超の達成)
  • 機構の買取条件・限度額・金利の変更
  • 営業利益の回復(50 億円を超えるか)
  • のれんの減損の有無と自己資本比率
  • SBIグループの再編(完全子会社化の動き)

倍率と資本コストの決め方

倍率は式から置いた。基本の k 8.75%、g 4%、堀は普通で、ROE が資本コストを少し下回る中立は 1÷k の 11.4 倍の約 9 割とした。今の株価やPERは見ていない。今の PER が高いのは、利益が谷にあるためで、10 年後の値付けの根拠にはしていない。IFRS を適用済みの会社なので、新リース会計基準による数字の形の変更はない。純有利子負債は貸付金の在庫が主なので、金利の上昇による利払いの増加は、売却価格に織り込まれる前提で、利益の純額には入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→13.66 倍・やや楽観 PER 11.5→12.6 倍・中立 PER 10.5→11.43 倍)。

資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。

同じ業種(その他金融業)の AI 分析

割安 中道リース8594 北海道の中小企業に設備を貸す地場のリース会社。稼ぐ力は資本コストに少し届かないが、今の値段はそれを大きく下回る 本質価値との差 +49.6% · 10 年 割安(年 +12.5%) 割安 インテグラル5842 日本の中堅企業を買って育てる PE の運用会社。利益の大半は売却時の成功報酬で、年ごとに大きく動く。10 年で見ると値打ちは今の値段をやや上回るが、安全域は厚くない 本質価値との差 +44.9% · 10 年 割安(年 +12.1%) 割安 ジェイリース7187 家賃保証の独立系大手。件数と利益は急伸したが、利益率は貸倒れ次第で振れ、借入も増えた。今の値段はやや安い 本質価値との差 +35.8% · 10 年 割安(年 +11.0%) 割安 アサックス8772 首都圏の不動産担保ローン専業。貸倒れがほぼ無く自己資本比率も4割だが、資本を抱え込みROEは7%台。金利上昇の転嫁が10年の分かれ目 本質価値との差 +35.6% · 10 年 割安(年 +11.0%) 割安 プレミアグループ7199 中古車ローンと故障保証を束ねる独立系。伸びは本物だが、借金と中古車一本足が安全域を削る 本質価値との差 +31.7% · 10 年 割安(年 +10.4%) やや割安 全国保証7164 銀行の住宅ローンに保証をつけて稼ぐ独立系。利益の安定に比べ、今の値段は安いと筆者は見る 本質価値との差 +28.5% · 10 年 やや割安(年 +8.9%) やや割安 クレディセゾン8253 カードに頼らない稼ぎ方へ変わりつつあるが、借金の重さが安全域を削る。事業の力に対して値段は低い 本質価値との差 +28.1% · 10 年 やや割安(年 +9.8%) やや割安 みずほリース8425 みずほ・丸紅・日鉄興和不動産を株主に据え、リースから不動産と海外へ軸足を移す。借金が仕入れの薄利の商売で、利ざやの守り方が値打ちを決める 本質価値との差 +23.6% · 10 年 やや割安(年 +9.5%) やや割安 オリックス8591 法人営業・不動産・事業投資・環境エネルギー・金融を束ねる複合金融グループ。中計ROE11%は道半ばで、今の株価は新中計の実行をかなり素直に織り込む水準 本質価値との差 +19.3% · 10 年 やや割安(年 +8.6%) やや割安 東京センチュリー8439 航空機と海外に厚みのある独立系総合リース。中計2030の利益倍増は7割強の達成と見て、10年の価値は今の時価総額とほぼ釣り合う 本質価値との差 +17.6% · 10 年 やや割安(年 +9.0%) やや割安 ニッポンインシュア5843 福岡発の家賃保証会社。回収の腕で高い利益率を保つが、初回の件数は横ばいで、現金を株主に返す気配は薄い 本質価値との差 +16.2% · 10 年 やや割安(年 +9.9%) やや割安 Casa7196 独立系の家賃保証。引当の見積りを外して赤字になり、回復は遅い。今の値段はほぼ見合う 本質価値との差 +16.1% · 10 年 やや割安(年 +9.3%) やや割安 芙蓉総合リース8424 みずほ系の総合リース。再エネ債権の失敗で利益が沈んだ今期を、傷が癒える前の底と見るか、体質の表れと見るかが分かれ目 本質価値との差 +14.6% · 10 年 やや割安(年 +8.6%) やや割安 ネットプロテクションズホールディングス7383 後払いの老舗が、企業間決済と分割払いで利益の柱を替えつつある。ただし料率の下落が利益を削る 本質価値との差 +12.8% · 10 年 やや割安(年 +9.0%) やや割安 NECキャピタルソリューション8793 NEC の販売金融から SBI 新生銀行の持分法会社へ。自己資本比率 10% を切る薄い資本で稼ぐ、小さなリース会社 本質価値との差 +11.8% · 10 年 やや割安(年 +8.6%) やや割安 九州リースサービス8596 地方銀行系のリースと不動産の二刀流。低い調達コストが武器だが、金利上昇で利ざやが試される。10 年で見ると適正の範囲 本質価値との差 +10.8% · 10 年 やや割安(年 +8.5%) 適正 全保連5845 家賃債務保証の専業で、MUFG傘下に入って利益率が上がり始めた。ROEは20%台と高いが、市場は成熟し料率は下がりやすい。今の値段は妥当圏と見る 本質価値との差 +6.1% · 10 年 適正(年 +8.1%) 適正 三菱HCキャピタル8593 航空機・エンジン・コンテナのグローバルリースで稼ぐ総合リース最大手。2028中計は前回の目標が半分しか埋まらなかった実績の延長で見る 本質価値との差 +6.0% · 10 年 適正(年 +7.4%) 適正 フィンテック グローバル8789 事業承継ファンドで稼ぐ軽い投資銀行。足元の純利益は一過性を含み、繰り返せる実力は営業利益で37億円前後と見る。今の値段はやや高い 本質価値との差 +3.3% · 10 年 適正(年 +7.9%) 適正 日本証券金融8511 日本で唯一の証券金融会社。独占の地位は本物だが、市況の山にいる利益に今の値段はほぼ見合っている 本質価値との差 +3.2% · 10 年 適正(年 +6.6%) 適正 イントラスト7191 家賃保証と医療・介護の費用保証の会社。ROEは20%台で増配も続くが、売上の6割強が一つの取引先に偏る。今の値段はほぼ適正と見る 本質価値との差 +2.3% · 10 年 適正(年 +7.5%) 適正 日本モーゲージサービス7192 中小の工務店にフラット35と住宅かし保険をまとめて売る会社。住宅の着工は細るが、顧客の工務店への入り込みで稼ぐ力は保つ。値段はおおむね妥当 本質価値との差 +1.6% · 10 年 適正(年 +7.4%) 適正 ジャックス8584 金利の上昇で利ざやが削られ、稼ぐ力が細る信販会社。MUFG の後ろ盾はあるが、値段はやや高め 本質価値との差 −1.6% · 10 年 適正(年 +7.0%) 適正 NEXYZ.Group4346 中小企業に省エネ設備を月払いで入れる仕組みが、地銀・信金の紹介で伸びる。ただ解約と貸倒れの重みは過去に一度会社を傾けた。値段はやや高い 本質価値との差 −3.0% · 10 年 適正(年 +7.3%) 適正 オリエントコーポレーション8585 車と分割払いを支える老舗の信販会社。利益は薄く借金は重い。みずほ・アイフル・物言う株主の動きが焦点 本質価値との差 −5.2% · 10 年 適正(年 +6.8%) 適正 アコム8572 金利の上限規制と貸し倒れの循環の中で、10 年の価値は今の値段を約 2 割下回る 本質価値との差 −9.4% · 10 年 適正(年 +6.3%) やや割高 Jトラスト8508 日本の保証が稼ぎ、アジアの銀行が足を引く。10 年の価値は今の時価総額を 3 割ほど下回る 本質価値との差 −17.5% · 10 年 やや割高(年 +5.9%) やや割高 イオンフィナンシャルサービス8570 イオン経済圏とアセアンで稼ぐが、資本の薄さと低い ROE が重い。事業の力に対して今の値段は高め 本質価値との差 −18.9% · 10 年 やや割高(年 +4.9%) やや割高 イー・ギャランティ8771 会社間の売掛金に保証をつける軽い資本の会社。事業は良いが、料率の下落に比べて今の値段は高いと筆者は見る 本質価値との差 −24.2% · 10 年 やや割高(年 +3.9%) やや割高 ヒロセ通商7185 個人向けFXの中堅で利益率は高いが、スプレッド競争と規制の影響を受ける。利益を内部にためて自己資本が膨らむ形で、今の値段は10年の価値を3割ほど上回り割高 本質価値との差 −24.7% · 10 年 やや割高(年 +4.4%) やや割高 日本取引所グループ8697 国内現物・デリバティブ・清算をほぼ独占する取引所インフラ。今の株価は中計目標超えの好決算が続く前提をすでに大きく超えて織り込む水準 本質価値との差 −25.4% · 10 年 やや割高(年 +3.0%) やや割高 リコーリース8566 ベンダーリースで中小企業を支える堅実な会社。ただ ROE が資本コストに届かず、10 年の本質価値は今の値段を下回る 本質価値との差 −25.9% · 10 年 やや割高(年 +3.5%) 割高 信金中央金庫8421 上場しているのは定額配当の優先出資。金庫がいくら稼いでも持ち主の取り分は増えにくく、今の値段は高い 本質価値との差 −54.8% · 10 年 割高(年 −2.6%) 割高 山田再生系債権回収総合事務所4351 債権回収と、創業家の司法書士法人への事務の派遣で稼ぐ小さな会社。本社の費用が稼ぎをほぼ食い、ROEは2%。今の値段は割高 本質価値との差 −81.7% · 10 年 割高(年 −9.4%)

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読んだ資料

  1. SBIアルヒ 有価証券報告書の要約(2026年3月期)
  2. SBIアルヒ M&A・株主・沿革
  3. 「フラット35」をやめる銀行が増えている

分析日 2026-10-19