結論
インテグラルは、日本の中堅企業を買って育て、売る PE(プライベート・エクイティ)ファンドの運用会社だ。稼ぎは 2 つある。預かった資金にかかる管理報酬と、投資先を高く売れた時だけ入る成功報酬だ。筆者の結論は、10 年の価値は今の時価総額をやや上回るが、安全域が厚いとは言えない、である。
効いているのは成功報酬だ。営業利益は 2024 年に 260 億円へ膨らみ、2025 年は 93 億円に落ちた。同じ会社で利益が 3 倍動く。固定の管理報酬から費用を引いて残る利益は、20 億円前後にすぎない。会社の価値は、5 号ファンド(出資約束 2,500 億円)の投資先を、これから何年かけて、いくらで売れるかにほぼ尽きる。
10 年で見ると、預かり資産は 2 倍強に育ち、成功報酬も 1 年あたりで今の平均を上回る。それでも ROE(自己資本利益率)は 10% 前後にとどまる。配当は自己資本の 2% と控えめで、稼ぎの大半は会社に残る。残した資金が自己資金の投資で実を結ぶかが、次の勝負になる。
懸念は 3 つある。創業者 2 人が株の過半を持ち、人への依存が大きい。成功報酬は景気と金利で動く。流通株式の比率は上場維持の基準に近い。
支えもある。3 号・4 号の投資先が相次いで上場し、実績は確かめられた。純現金が厚く、未実現の成功報酬も積み上がっている。悲観の筋書きでも、元手を大きく割り込む姿にはなりにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を見る時の問いは 3 つある。10 年後も成功報酬を稼ぐ力は残るか。その稼ぎを経営者は上手に使うか。そして、払う値段に余裕はあるか。
利益の質は高くない。営業利益は 110 億円、260 億円、93 億円と動き、半分以上が売却のタイミング次第だ。オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、平均で見るしかない。筆者は直近の山を高いと見て、先の稼ぎはそれより低めに置いた。
経営者は資本を大切にしている。創業者が株の半分を持ち、ファンドの成績で報酬が決まる仕組みは、株主と利害がそろう。ただし、配当を抑えて自己資金の投資を増やす道は、うまくいけば複利になり、失敗すれば自己資本を削る。ここは実績を見ながら判断するしかない。
安全域は、純現金と、すでに積み上がった未実現の成功報酬(約 240 億円)にある。悲観の筋書きでも、これを大きく割り込む姿は考えにくい。それでも人に頼る事業は先が読みにくい。確信度は低めに置く。
何で稼ぐ会社か
インテグラルは 2007 年に始まった独立系の PE ファンドの運用会社だ。年金や金融機関から資金を預かってファンドをつくり、中堅企業を買う。数年かけて育て、上場や売却で現金にして投資家に返す。入口は、後継者のいない会社の事業承継、経営陣による買収(MBO)、大企業の事業の切り出しが中心になる。
売上は 3 つに分かれる。1 つ目は管理報酬で、ファンドの出資約束額や投資残高に年 1.85〜2.0% がかかる。2 つ目は成功報酬(キャリー)で、年 8% の最低リターンを超えた利益の 20% を受け取る。3 つ目は自己資金の運用益で、ファンドと並んで案件に出資した分の値上がりだ。
管理報酬が土台で、成功報酬が屋根にあたる。管理報酬は安定しているが、人件費などの費用も同じ規模で要る。だから管理報酬だけで残る利益は小さい。大きな利益は、売却が決まった年の成功報酬と自己資金の益に集中する。
ファンドは 2 号から 5 号まである。5 号シリーズは出資約束 2,500 億円で、2025 年 1 月に投資期間が始まった。直近の売却には、3 号の投資先プリモグローバルホールディングスの上場(2025 年 6 月)と、4 号の投資先テクセンドフォトマスクの上場・売出し(同年 10 月)がある。
新しい領域も加わった。2024 年 11 月に不動産ファンド、2025 年 3 月にグローバルテックのグロース投資を始めている。2026 年 10 月には持株会社の体制へ移り、自己資金の投資事業を切り分ける。投資先に社員を常駐させる経営支援(i-Engine)が、同社の売り物だ。
優良さと弱いところ
強みは、中堅企業の経営に入り込む力と、実績の積み重ねだ。社員が投資先に常駐する経営支援は、資金を出すだけの投資家と違う。堀、つまり他社がまねしにくい強みは、人の力と信用にある。資金を預ける投資家は、過去のファンドの成績を見て次のファンドに出す。同社は 3 号・4 号で上場による売却を続け、5 号で 2,500 億円を集めた。この循環が続く間は、預かり資産が積み上がる。
一方で、堀は深くない。日系のアドバンテッジパートナーズ、ユニゾン、J-STAR、日本産業パートナーズ、外資系の大手と、案件を奪い合う。値決めの力も弱い。管理報酬の率は投資家との交渉で決まり、ファンドが大きくなるほど下がりやすい。
資本の効率は年によってまるで違う。ROE は 2024 年に 31% あったが、2025 年は 10% を割った。成功報酬が入るかどうかで決まるため、平均で見るべきだ。
最大の弱点は人への依存だ。創業者の山本礼二郎氏と佐山展生氏で株の過半を持つ。5 号には、主要な 7 人が投資から離れると投資期間が止まる条項がある。腕の良い投資家が抜ければ、会社の価値に直結する。流通株式の比率が約 28% と、上場維持の基準に近い点も弱さだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の PE は成長期にある。買収の投資額は 2023 年に過去最高の約 5 兆円に達し、2025 年も前年を上回る勢いだ。理由は 3 つある。後継者のいない中堅企業の事業承継、大企業が不採算の事業を切り出す動き、そして資本効率を問われた上場企業の非公開化だ。どれも人口が減る 10 年のあいだ続く。筆者は、買収の件数が緩やかに増え続けると見る。
競争は強まっている。日系の同業に加え、KKR、ベインキャピタル、カーライルなどの外資が日本に力を入れる。案件が増えるほど買収の価格は上がり、同じ会社を買っても利益は薄くなる。
金利は逆風だ。物価と金利が 3% 台へ上がる前提では、借入を使う買収の収益が削られる。売却先の上場市場や事業会社も、高い値段を払いにくくなる。これまでの高いリターンがそのまま続く保証はない。
運用会社の稼ぎ方も変わりつつある。管理報酬だけでは利益が薄いため、各社は不動産、インフラ、信用、グロース投資へ広げて預かり資産を増やす。インテグラルも同じ道を進む。広げた先でも、本業と同じ質の投資ができるかが問われる。
資金の出し手には海外の投資家も多い。日本株の評価が崩れたり、円の価値が揺れたりすれば、次のファンドの募集は難しくなる。募集の成否が、10 年の預かり資産を左右する。
資本政策と M&A
資本の使い方は、控えめな配当と厚い手元資金に表れている。2025 年 12 月期から、自己資本に対する配当率(DOE)2% を基準に配当する方針だ。稼ぎのうち配当に回る割合は小さく、大半は会社に残る。
残した資金の行き先は、ファンドへの出資と自己資金の投資だ。ファンドの資金の約 2% を会社が出し、案件ごとに 3〜34% を自己資金で出す。シリーズ全体では投資総額の 20% が上限になる。手元の純現金は約 160 億円あるが、この拠出に充てる性格が強い。
会社を買う M&A は目立たない。広がり方は事業を足す形で、2024 年の不動産、2025 年のグローバルテックの立ち上げ、2026 年 10 月の持株会社化がそれにあたる。利益の相反を整理し、資産の種類が増えても資金の配分を切り分ける狙いと読める。
買われる側になる可能性は低い。創業者 2 人が株の過半を持ち、流通株式が少ないためだ。逆に、流通株式の比率が上場維持の基準に近いので、株の売出しで流通を増やす動きは起こりうる。
(点検済み:2024年が山・2025年が谷なので、起点は3年平均の110億円にならして置いた。成功報酬は預かり資産の伸び(約2倍)に沿い、今の平均の1.4倍にとどめた。余り資産・株数の二重は無し。)
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
預かり資産が伸び、成功報酬が大きくなる。5 号シリーズは 2,500 億円で、4 号の約 2 倍だ。投資が進んで売却が始まる 2029 年ごろから、成功報酬は今の平均を超えていく。次の 6 号は、5 号の実績を見せて、さらに大きく集められる。管理報酬の土台が太るほど、利益の谷が浅くなる。
成績の裏付けもある。3 号・4 号の投資先が相次いで上場し、成功報酬を受け取っている。開示された投資の総収益倍率は 2.7 倍、年率は 26% だ(2024 年第 3 四半期)。この成績が続けば、海外の資金も集まり続ける。
新しい領域も上積みになる。不動産ファンドは目標 100 億円に対し 235 億円を集めて締めた。グローバルテックは始めたばかりだ。報酬率の低い領域が増えても、預かり資産が 2 倍、3 倍になれば報酬の総額は増える。
事業が使う資本は小さい。社員が経営に入る手法は、工場も在庫も要らない。稼いだ現金は新しいファンドへの出資に回せる。10 年後の営業利益が今の 3 倍に届く筋書きは、特別に強気ではない。
慎重な見方
成功報酬は読めない稼ぎだ。2024 年に 260 億円あった営業利益は、翌年に 93 億円へ落ちた。安定した管理報酬は、費用を引くと残りが小さい。今の高い利益は 3 号・4 号の当たり年に支えられており、それがそのまま続くと考えるのは危うい。
金利が上がる世界は PE に向かない。借入で買う収益は削られ、売却先の評価も下がる。2.7 倍という総収益倍率は、平均で見れば高すぎる。平均並みの 2 倍に近づけば、成功報酬の取り分は 2 割ほど減る。
5 号の 2,500 億円は大きいが、投資の期間は数年続き、売却は 2030 年代に入ってからが中心になる。10 年のうちに全部を回収し切れない可能性がある。次の 6 号の募集も景気に左右される。資金の出し手が減れば、預かり資産は止まる。
人への依存も重い。主要な 7 人が抜ければ 5 号の投資は止まる。創業者 2 人が株の過半を持ち、流通株式は 28% 程度と少ない。売りたい時に売れず、少数株主の声も通りにくい。
自己資金の投資を増やす方針も諸刃だ。配当を抑えて投資へ回すほど、悪い年に自己資本が削られる。うまくいけば称賛され、失敗すれば会社の価値を壊す。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠があり、確率は中立にいちばん厚く置いた。強気の根拠は、5 号の大きさと 3 号・4 号の実績だ。慎重な根拠は、利益の波と人への依存だ。
波の大きさは、事実として確かめられている。そこで、成功報酬の取り分は直近の山より低く置き、強気と慎重の側にほぼ同じ厚みで確率を置いた。ただし純現金と未実現の成功報酬が下値を支えるため、悲観は 1 割にとどめた。
この会社は、当たれば 10 年で利益が 2 倍以上になり、外れても元手を割る深さは限られる。その非対称を、確率の置き方に反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 7,880 円2,686 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 788 円269 億円)。 今の値に割り戻すと 4,009 円1,367 億円、今との差 +44.9%、 期待の年率 +12.1%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 17,333 円5,909 億円 | 1,320 円450 億円 | +574.4% | +21.0% | 2,238 円763 億円 |
| やや楽観 | 22% | 11,876 円4,049 億円 | 968 円330 億円 | +364.4% | +16.6% | 2,826 円963 億円 |
| 中立 | 34% | 7,661 円2,612 億円 | 733 円250 億円 | +203.5% | +11.7% | 2,854 円973 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,394 円816 億円 | 587 円200 億円 | +7.7% | +0.7% | 656 円224 億円 |
| 悲観 | 10% | 555 円189 億円 | 381 円130 億円 | −66.2% | −10.3% | 94 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,880 円2,686 億円 | 788 円269 億円 | +213.4% | +12.1% | 8,668 円2,955 億円 |
今の株価時価総額 2,766 円943 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 12% 6 号以降が大きく育ち、売却が続く 利益 395 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 17,333 円5,909 億円
5 号の 2,500 億円の投資先が順調に育ち、2029 年ごろから売却が続く。実績を見た投資家が 6 号、7 号へ大きな資金を出し、報酬の対象になる預かり資産は 10 年で 4 倍近くに膨らむ。不動産、グローバルテック、信用投資にも広がり、管理報酬だけで費用を引いても 4 割近くが残る体制になる。
成功報酬は、毎年大きな売却が続く姿だ。国内の上場市場と事業会社の買い手が厚く、総収益倍率は今の高い水準を保つ。自己資金の投資もうまく回り、売却代金あたりの取り分は今と同じになる。年間の売却代金は、実質で今の平均の 2 倍半に当たる。
経営は創業者から次の世代へ円滑に移り、主要な投資家も残る。ROE は 16% 前後で、資本コストを大きく上回る。配当は DOE の方針に加えて、自社株買いも出る。
- 管理報酬(ファンドの運用):数量 10,519(報酬の対象になる預かり資産(億円・実質))× 価格 0.02(実効の報酬率 × 物価の指数)→ 売上 254 億円・営業利益 96 億円。預かり資産が 10 年で 4 倍弱。費用の規模のわりに報酬が伸び、利益率が 38%
- 成功報酬と自己資金の運用益:数量 2,300(年間のエグジット(売却)代金(億円・実質))× 価格 0.23(売却代金に対する会社の取り分率 × 物価の指数)→ 売上 524 億円・営業利益 493 億円。売却代金が毎年大きく、総収益倍率は今の高さを保つ
倍率:事業の純利益 395 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.96 倍、時価総額 5,909 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:5 号の大きさと 3 号・4 号の上場実績は強いが、売却が毎年続く保証はなく、成功報酬の水準も高止まりを前提にしている。強気の根拠は十分にあっても、波の大きい事業なので 1 割強にとどめた。
やや楽観 22% 5 号が計画どおり進み、6 号は 5 号を超える 利益 289 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 11,876 円4,049 億円
5 号は計画どおりに売却が進み、6 号は 5 号を上回る規模で集まる。預かり資産は 10 年で 3 倍近くになる。管理報酬の率は大型化で少し下がるが、規模が補う。不動産とグローバルテックが加わり、費用に対する管理報酬の余裕は広がる。
成功報酬は、今の平均を大きく上回る。ただし総収益倍率は、過去の 2.7 倍から 2.5 倍前後へ落ち着く。物価と金利が 3% の世界では、買収の値段も売却の値段も無理がきかない。それでも件数と規模で稼ぐ。
ROE は 13% 前後になる。自己資金の投資が増え、手元の現金は使われる。配当は DOE の方針どおりで、流通株式を増やすための売出しが行われても、経営の主導権は創業者に残る。
- 管理報酬(ファンドの運用):数量 8,030(報酬の対象になる預かり資産(億円・実質))× 価格 0.02(実効の報酬率 × 物価の指数)→ 売上 197 億円・営業利益 71 億円。預かり資産が 10 年で 3 倍弱。報酬率は大型化で小幅に低下
- 成功報酬と自己資金の運用益:数量 1,750(年間のエグジット(売却)代金(億円・実質))× 価格 0.22(売却代金に対する会社の取り分率 × 物価の指数)→ 売上 387 億円・営業利益 360 億円。売却は今の平均の 2 倍弱。総収益倍率は 2.5 倍前後
倍率:事業の純利益 289 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14.01 倍、時価総額 4,049 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:5 号の規模と実績から、計画どおりに進む筋書きは十分ありうる。ただし 6 号の募集と売却の波は不確かで、中立より少し薄く置いた。
中立 34% 預かり資産は 2 倍強、成功報酬は今の平均を超える 利益 202 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 7,661 円2,612 億円
5 号シリーズの投資は 2030 年ごろまでに終わり、売却は 2030 年代前半に山を迎える。6 号は 5 号並みに集まり、預かり資産は 10 年で 2 倍強になる。管理報酬の率は不動産やグローバルテックが加わって少し下がり、費用を引いて 3 割強が残る。
成功報酬は、2023〜2026 年の山より低い水準に落ち着く。総収益倍率は 2.4 倍前後で、金利が上がった分だけ買収と売却の両方で余裕が減る。売却代金は、実質で今の平均の 1.4 倍ほどだ。
利益は毎年一定にはならず、当たり年と外れ年が交互に来る。ROE は 10% 台に乗るが、資本コストを大きくは上回らない。配当は DOE の 2% を基準に、自己資本とともにゆっくり増える。創業者は経営に残り、人の入れ替えは緩やかに進む。
- 管理報酬(ファンドの運用):数量 6,108(報酬の対象になる預かり資産(億円・実質))× 価格 0.02(実効の報酬率 × 物価の指数)→ 売上 151 億円・営業利益 50 億円。預かり資産は 10 年で 2 倍強、利益率 33%(費用は年 5% 増)
- 成功報酬と自己資金の運用益:数量 1,300(年間のエグジット(売却)代金(億円・実質))× 価格 0.21(売却代金に対する会社の取り分率 × 物価の指数)→ 売上 270 億円・営業利益 251 億円。売却は今の平均の 1.4 倍。総収益倍率は 2.4 倍前後
倍率:事業の純利益 202 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.93 倍、時価総額 2,612 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:5 号の規模を見れば成功報酬が増える方向は強く、一方で 2023〜2026 年の山は高すぎる。強気と慎重の根拠がおおむね釣り合うので、中立にいちばん厚く置いた。
やや悲観 22% 募集と売却が伸び悩み、利益が細る 利益 102 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 2,394 円816 億円
金利が 3% 台に定着し、借入を使う買収の収益が削られる。売却先の評価も上がらず、総収益倍率は 2 倍程度まで下がる。5 号の売却は遅れ、年間の売却代金は実質で今の平均を下回る。
6 号の募集は 5 号より小さい。管理報酬の対象になる預かり資産は、10 年で 5 割増にとどまる。報酬率は投資家の交渉で下がり、人件費は物価で上がるため、費用を引いた管理報酬の利益率は 25% に下がる。
新しい領域は広がるが、本業ほどの質を出せない。自己資金の投資は、売却の遅れで資金が寝る。ROE は 7% 前後で、資本コストに届かない。配当は DOE の方針で出るが、利益の伸びは物価を下回る。会社は存続し、優良さだけが薄れていく。
- 管理報酬(ファンドの運用):数量 4,185(報酬の対象になる預かり資産(億円・実質))× 価格 0.02(実効の報酬率 × 物価の指数)→ 売上 98 億円・営業利益 25 億円。預かり資産は 10 年で 5 割増。報酬率と利益率が下がる
- 成功報酬と自己資金の運用益:数量 800(年間のエグジット(売却)代金(億円・実質))× 価格 0.17(売却代金に対する会社の取り分率 × 物価の指数)→ 売上 139 億円・営業利益 128 億円。売却は今の平均を下回る。総収益倍率は 2 倍前後
倍率:事業の ROE 7.2% は k 8.5% に届かず、新しく投じる資金の稼ぎ(RONIC)は ROE 並み。g 3.0% で正当化 PER は 9.7 倍。成功報酬の波を考えて約 8 割の 8.0 倍に置いた。
確率:金利が上がる世界で、買収と売却の両方に余裕が減る筋書きは十分ありうる。2023〜2026 年の山の後に平均へ戻るだけでもこの水準になるので、2 割強に置いた。
悲観 10% 人と資金が離れ、成功報酬が細る 利益 22 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 555 円189 億円
主要な投資家が数人抜け、5 号の投資期間が止まる。投資家は次の募集に応じず、6 号は小さく終わる。報酬の対象になる預かり資産は、10 年たっても今と同じ名目の額にとどまり、実質では 3 割近く縮む。
5 号の投資先は、金利の上昇と景気の悪化で売るのが遅れ、売れても値段は伸びない。総収益倍率は 1.5 倍前後で、成功報酬の取り分はほとんど出ない。自己資金の投資は評価損を出し、自己資本が削られる。
費用の多くは人件費で、預かり資産が減っても下がりにくい。管理報酬の利益はほぼゼロになる。残る利益は小さく、ROE は 4% 程度にとどまる。創業者は経営に残るが、会社はもう成長する運用会社ではない。
- 管理報酬(ファンドの運用):数量 2,828(報酬の対象になる預かり資産(億円・実質))× 価格 0.02(実効の報酬率 × 物価の指数)→ 売上 61 億円・営業利益 5 億円。預かり資産は名目で横ばい。費用が下がらず利益はほぼゼロ
- 成功報酬と自己資金の運用益:数量 350(年間のエグジット(売却)代金(億円・実質))× 価格 0.09(売却代金に対する会社の取り分率 × 物価の指数)→ 売上 33 億円・営業利益 28 億円。売却が細り、総収益倍率は 1.5 倍前後。取り分はわずか
倍率:稼ぐ力(事業の純利益 ÷ k 8.5%)は約 243 億円だが、ROE が低い悲観はやや悲観(8.0 倍)より高い倍率にはならない。値は純現金と売れる資産の税後(約 189 億円、floor_assets_oku)の水準に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.6 倍・時価総額 189 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:主要な投資家の離脱、募集の失敗、自己資金の投資の損失が重なる筋書き。起こる確率は高くないが、人に頼る事業なので軽くは置けず、1 割にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
管理報酬(ファンドの運用)
ファンドに預けられた資金にかかる管理報酬と経営支援料。PE、不動産、グローバルテックのファンドを含む。費用は人件費など全部ここに載せる。
| 数量報酬の対象になる預かり資産(億円・実質) | 価格実効の報酬率 × 物価の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,789 | 0.02 | 66 | 22 |
| 10 年後 中立 | 6,108 | 0.02 | 151 | 50 |
取り方:報酬対象の預かり資産は 2025 年末で 3,789 億円(有報)。管理報酬の内訳は開示がなく、2025 年は約 66 億円と推計し、期中に残高が伸びたため期末残高に対する報酬率は 1.75% とした。2026 年の参考予想は管理報酬 75.8 億円と経営支援料 3.8 億円。営業費用は 2025 年の収益から営業利益を引いた約 44 億円を全部ここに載せ、営業利益は約 22 億円(推計)。 先の預かり資産の伸びは、新しいファンドの組成による実物(今の円で測った実質)で、名目の市場の伸びではない。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
成功報酬と自己資金の運用益
投資先を売って得る成功報酬(キャリー)と、自己資金で出資した分の値上がり益。売却が決まった年に集中し、年ごとの波が大きい。
| 数量年間のエグジット(売却)代金(億円・実質) | 価格売却代金に対する会社の取り分率 × 物価の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 415 | 0.17 | 71 | 71 |
| 10 年後 中立 | 1,300 | 0.21 | 270 | 251 |
取り方:開示に内訳がなく、2025 年の収益 136.5 億円から管理報酬の推計 66 億円を引いた約 70 億円を置いた。2025 年は売却の少ない谷の年で、売却代金は約 415 億円と推計。2023〜2026 年の平均は売却代金が約 900 億円・取り分率 17%(総収益倍率 2.7 倍、成功報酬 20%、自己資金の益を含む)と推計。変動費は小さく、営業利益は収益とほぼ同じ。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
成功報酬の波
営業利益は 2023 年から 110、260、93 億円と動いた。成功報酬は売却が決まった年にしか入らず、売却は景気と金利で延びる。管理報酬だけでは費用を引くと利益が小さいため、売却が止まる数年は利益が大きく落ち、配当も DOE の水準で止まる可能性がある。
創業者と主要投資家への依存
創業者の山本礼二郎氏と佐山展生氏で株の過半を持つ。5 号には、主要な 7 人が投資から離れると投資期間が止まる条項がある。腕の良い投資家が抜ければ、新しい募集も売却も影響を受ける。人の入れ替えがうまくいくかが、10 年の分かれ目になる。
金利と売却市場
物価と金利が 3% 台へ上がる世界では、借入を使う買収の収益が削られる。売却先の上場市場や事業会社も、高い値段を払いにくくなる。総収益倍率が 2.7 倍から 2 倍に下がれば、成功報酬の取り分は 2 割ほど減る。
次のファンドの募集
預かり資産は新しいファンドの募集で決まる。資金の出し手には海外の投資家も多く、日本株や円の評価が崩れると募集は難しくなる。6 号が 5 号より小さければ、管理報酬の土台は伸びず、費用だけが増える。
自己資金の投資の拡大
配当を抑えて自己資金の投資を増やす方針は、うまくいけば複利になるが、景気が悪い年は評価損で自己資本を削る。案件ごとに 3〜34%、シリーズ全体で 20% まで出せる決まりがあり、投資が重なると手元現金が細る。
流通株式の少なさと統治
流通株式の比率は約 28% で、上場維持の基準に近い。創業者 2 人の持株が大きく、少数株主の声が通りにくい。売買も細りやすい。2026 年 10 月の持株会社化で、利益の相反をどう整理するかも見ておく点だ。
クローバックと利益相反
受け取った成功報酬は、その後のファンドの成績が悪化すれば返す義務が生じる。自己資金とファンドが同時に売れない場合は、投資家との対立にもなりうる。新しい領域(不動産、グローバルテック)が増えるほど、管理の難しさも増す。
今後の分かれ目
- 5 号の投資先で、上場や売却が続けて決まったら
- 成功報酬が増える方向と見て、楽観側の確率を上げる。取り分率が今の 17% を保てるかを確かめる。
- 6 号の募集が 5 号を上回る規模で締まったら
- 預かり資産が 3 倍近くに育つ筋書きの確率を上げる。報酬率の低下が小さいかも見る。
- 主要な投資家が複数抜けたと発表されたら
- 5 号の投資が止まるおそれがあり、悲観側の確率を大きく上げる。後継の育ち方を確かめる。
- 売却の遅れで、成功報酬が 2 年続けて小さかったら
- 平均で見た稼ぎの水準を下げ、やや悲観の確率を上げる。配当が DOE の水準で維持されるかを見る。
- 自己資金の投資で大きな評価損が出たら
- 資本の使い方に問題があると見て、倍率を下げる。純現金が拠出約束を満たせているかを確かめる。
- 持株会社化のあと、自社株買いや大型の配当が出たら
- 資本の使い方が改善したと見て、ROE を引き上げる側へ確率を寄せる。
見ておくもの
- 5 号シリーズの投資の進み具合と、最初の売却の時期
- 報酬対象の預かり資産(Fee-earning AUM)の増え方と、報酬率
- 成功報酬と自己資金の益が、年ごとにどう動くか
- 6 号の募集の時期と規模
- 5 号の主要な投資家(キーパーソン)の顔ぶれの変化
- プリンシパル投資の残高と、純現金の水準
- 流通株式の比率と、持株会社化後の統治
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE・g 4%・k 8.5% から式で置き、今の株価や他社・過去の倍率は使っていない。k は基本 7.5% に、循環 +1.0% と創業者依存 +0.5% を足した。成功報酬は 2023〜2026 年の山を平均と見ず、取り分率を下げて置いた。10 年の悲観は、人と資金が離れる構造的な負けで置いた。今の時価総額は最後に比べただけだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→14.96 倍・やや楽観 PER 11.3→14.01 倍・中立 PER 10.43→12.93 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。