結論
中道リースは、札幌を本拠に北海道の中小企業へ機械や車、建設機械を貸す地場のリース会社だ。営業資産は約1,100億円で、ビルや店舗の賃貸も営む。札幌証券取引所だけに上場し、創業家の資産会社と芙蓉総合リースが大株主に並ぶ。
筆者の結論は、今の値段は割安だ、というものだ。時価総額は約50億円で、純利益11億円の5倍に満たない。自己資本は約140億円あり、時価総額はその4割に届かない。
もちろん安い理由はある。自己資本比率は1割に満たず、借入は1,100億円を超える。金利が上がれば調達の費用が先に増え、リース料の値上げは契約の満了を待つので遅れる。北海道の企業の倒産が増えれば、貸倒れが利益を削る。
それでも筆者は、10年で見れば調達の費用はリース料に転嫁され、利益は物価に沿って伸びると見る。ROE(自己資本利益率)は6%台で資本コストに少し届かないが、今の値段はその弱さを大きく超えて低い。札幌の単独上場で売買が少なく、創業家が株を握り、配当性向が1割台と低いことが、値段を押し下げている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「平凡な事業を、大きく割り引いた値段で売っている」と見る。
リースは堀の浅い商売だ。金利と手数料で値段が決まり、利益は借金の厚さで稼ぐ。オーナーとして長く持ちたい種類の事業ではない。地元の銀行と組んだ小口の顧客の地盤は、ささやかな強みにとどまる。
それでも、値段が安すぎる。10年たてば、調達の費用はリース料に転嫁され、利益は物価に沿って増える。自己資本は今の2倍近くに積み上がる。ROEが資本コストに少し届かないことを割り引いても、今の値段は自己資本の4割に届かない。
安全域はある。ただし、それは帳簿の数字の上の安全域だ。自己資本比率が9%弱の会社では、貸倒れが重なると帳簿の価値は速く削られる。筆者が見ておきたいのは、信用コストの動きと、金利の転嫁の速さの2つだ。創業家と大株主が少数株主に報いる形をとるかも、値段が埋まるかを左右する。
何で稼ぐ会社か
事業は3つに分かれる。リース・割賦・営業貸付、不動産賃貸、その他だ。売上の9割強はリース・割賦が占める。
リース・割賦は、北海道の中小企業が使う工作機械、建設機械、車、医療機器、事務機などを買って貸し、月々のリース料や分割の代金を受け取る仕事だ。2026年1〜6月の新規の受注は205億円で、前年同期から13%増えた。営業資産の残高は約1,080億円ある。
利益の源は、借りたお金の金利とリース料の差だ。1つの契約は5〜7年続くので、金利が変わっても利益にはゆっくり効く。企業が倒産すれば、残りのリース料が取れず、貸倒れとして利益が削られる。
不動産賃貸は、札幌などに持つビルや店舗を貸す。営業資産は約170億円、半年の売上は22億円で、利益率は2割を超える。リースより利幅が厚く、全社の利益のかなりの部分を支える。
その他は、医療機関向けの支援などの小さな事業だ。従業員の平均年齢は40歳で、地場の金融機関と組んで顧客を開いてきた。2023年には函館のリース会社を買い、道南の地盤を広げた。
利益の形を数字で見ると、薄い利ざやを借金の厚さで増やす形だ。営業資産1,250億円ほどに対して、自己資本は140億円にすぎない。資産が1%の利ざやを生めば、自己資本には9%近い利益が残る。逆に、資産の1%が貸倒れになれば、利益は1年分ほぼ消える。
優良さと弱いところ
事業の質は、地場のリース会社として標準的だ。強みも弱みも、地元に根を張っていることから来る。
強みは、北海道の中小企業との長い付き合いだ。大手のリース会社が手間をかけない小口の契約を、地元の銀行と組んで拾う。北洋銀行と北海道銀行が株主に入り、顧客の紹介も受ける。この地盤は、よそから来た会社がすぐにはまねできない。
弱みは、値段を自分で決められないことだ。リース料は金利と手数料で決まり、競争相手と横並びになる。営業利益率は売上の2〜3%で、過去20年で最も良い年でも3.3%だった。
もう1つの弱みは、自己資本の薄さだ。自己資本比率は9%弱と、同業の総合リース会社の多くより低い。貸倒れが重なれば、自己資本は一気に削られる。
資本の使い方は守りに寄る。配当性向は1割台で、利益の大半を自己資本に積み、営業資産を増やす原資にしてきた。ROEは過去10年の中央値で7%だ。
それでも、この会社は過去20年で赤字を1度しか出していない。リーマン後の谷でも自己資本を大きく傷めずに乗り切った。小口の契約を数多く積み、1社の倒産が全体を揺らさない形にしてきたからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のリースの市場は、数量で見ると横ばいだ。全国のリースの取扱高は年5.2兆円前後で、設備投資の波に合わせて上下する。中小企業の数は減るが、機械の値段は上がるので、金額では緩やかに伸びる。
北海道は、人口が減る地域の中でも減り方が速い。ただ、ここ数年は追い風もある。千歳では次世代の半導体工場の建設が進み、データセンターや再生可能エネルギーの投資も集まる。建設機械や車の需要は、工事が続く間は強い。
金利の上昇は、リース会社にとって二重の効果を持つ。調達の費用は借入の借り換えのたびに上がるが、リース料は新しい契約からしか上げられない。転嫁が追いつくまでの数年は、利ざやが細る。10年たてば、ほぼすべての契約が新しい金利で結び直される。
競争相手は、銀行系の大手の総合リース会社と、地元の銀行系のリース会社だ。大手は大きな案件に強く、地場の会社は小口の案件に強い。芙蓉総合リースは中道リースの大株主でもあり、提携と競争の両面がある。
業界の再編は続いている。中堅のリース会社が大手の傘下に入る例は多く、中道リースもその候補になりうる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向は1割台と低い。配当の総額は年1億円強にとどまり、2026年12月期の予想は前期より少ない。自社株買いは時折行い、従業員に株を渡す信託も持つ。
利益の大半は自己資本に積まれ、リースの営業資産を増やす原資になってきた。自己資本比率が9%弱と薄いので、資本を積むこと自体には理がある。ただ、株主から見ると、ROEが資本コストに届かない事業に利益を積み続ける形だ。
大株主は、創業家の資産会社とみられるNam(24%)、芙蓉総合リース(11%)、ノースパシフィック(11%)、北洋銀行、北海道銀行だ。上位5者で半分を超える。親会社はいない。
この株主の形は、買収の道を開いている。芙蓉総合リースが持株を増やす、あるいは創業家が非公開化を選ぶ、といった動きはありうる。kabufuのモデルでは、10年内のTOBの確率は約3割と出ている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
中道リースは、自己資本の4割に届かない値段で買える。純利益は年11億円あり、時価総額はその5倍に満たない。これほど安いリース会社は、全国を見ても珍しい。
事業の足元は強い。2026年上期の新規の受注は13%増えた。千歳では次世代の半導体工場の建設が進み、周りの工場やデータセンター、再生可能エネルギーの設備の投資も続く。建設機械と車のリースは、その工事が続く間は伸びる。
金利の上昇も、10年で見れば味方だ。新しい契約は上がった金利で結ばれ、リース料は物価と金利に沿って上がる。転嫁が追いつけば、利益は名目で増える。
株主の形も、値段を埋めるきっかけになる。芙蓉総合リースが11%を持ち、地場の銀行も株主だ。業界の再編が続く中で、大手が中堅の地場のリース会社を取り込む例は多い。今の値段は、そうした道をまったく織り込んでいない。
利益を積んできたことも、裏を返せば強みだ。自己資本は10年で1.6倍になり、貸倒れに耐える厚みは増した。リーマン後の谷でも赤字は1年で終わった。小口の契約を数多く持つ形は、1社の倒産で揺らがない。
慎重な見方
安いのには理由がある。自己資本比率は9%弱で、借入は1,100億円を超える。金利が1%上がれば、調達の費用は年10億円近く増えうる。リース料の値上げは契約の満了を待つので、その間の利ざやは細る。2026年12月期の会社の予想が減益なのは、もう始まっている証拠だ。
北海道の中小企業は減り続ける。半導体工場の追い風は数年で終わるかもしれず、その後に残るのは人口減の地域だ。倒産が増えれば、薄い自己資本はすぐに削られる。
少数株主に報いる形もない。配当性向は1割台で、利益の大半は自己資本に積まれる。創業家と大株主が株の半分を握り、札幌だけの上場で売買も少ない。値段が安いまま10年続いても不思議はない。
ROEは資本コストに届かない。利益を積むほど、株主の価値は帳簿ほどには増えない。
大手の総合リース会社も、地方の案件を取りに来ている。料率で競えば、地場の会社の利ざやはさらに細る。帳簿の自己資本は、こうした逆風の下では見かけほどの価値を持たない。
どちらに重みを置いたか
利ざやの圧迫と自己資本の薄さについては、慎重な見方に理がある。ただ、今の値段はその弱さを大きく超えて低い。10年で転嫁が追いつく中立でも、価値は今の値段を上回る。確率は中立を中心に、自己資本の薄さと北海道の人口減を見て慎重な側をやや厚くした。値段が埋まるきっかけが見えにくいことは、確率でなく文章で注意した。10年の価値は、少数株主が株を持ち続けた時に受け取る額で測っている。値段がいつ埋まるかは、大株主の動きしだいだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,958 円142 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 273 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 1,026 円74 億円、今との差 +49.6%、 期待の年率 +12.5%(資本コスト 8.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,742 円271 億円 | 414 円30 億円 | +505.9% | +19.7% | 333 円24 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,000 円217 億円 | 359 円26 億円 | +389.7% | +17.2% | 672 円49 億円 |
| 中立 | 36% | 2,400 円174 億円 | 304 円22 億円 | +294.1% | +14.7% | 973 円70 億円 |
| やや悲観 | 23% | 630 円46 億円 | 193 円14 億円 | +20.0% | +1.8% | 189 円14 億円 |
| 悲観 | 13% | 387 円28 億円 | 111 円8 億円 | −27.5% | −3.2% | 65 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,958 円142 億円 | 273 円20 億円 | +225.3% | +12.5% | 2,232 円162 億円 |
今の株価時価総額 686 円50 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 半導体工場と再開発の投資が続き、営業資産が4分の1増える 利益 24 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,742 円271 億円
筆者が描く上振れは、北海道の投資の波に乗る姿だ。千歳の半導体工場とその周りの工場、データセンター、再生可能エネルギーの設備が10年続けて増える。建設機械と車、工作機械のリースが伸び、営業資産は実質で4分の1増える。
金利の転嫁は早く進む。新しい契約は上がった金利で結ばれ、資産あたりの売上は物価を上回って伸びる。営業利益率は3%と過去最高の水準を保つ。不動産賃貸も札幌の再開発で賃料が上がる。
純利益は24億円近くになり、ROEは資本コストに迫る。配当は増やし、10年で30億円を返す。芙蓉総合リースとの提携が深まり、やがて買収の提案につながる道も、この筋書きに含まれる。
- リース・割賦・営業貸付:数量 1,363(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.45(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価10年1.34倍+金利の転嫁))→ 売上 848 億円・営業利益 25 億円。営業資産1.25倍・転嫁が早い
- 不動産賃貸:数量 200(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.40(資産あたり売上の指数(今=1.00。賃料は物価並み))→ 売上 70 億円・営業利益 19 億円。再開発で賃料が上がる
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 271 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:千歳の半導体工場とデータセンター、札幌の再開発は既に動いているが、10年続くかは不確か。転嫁も早く進む必要があるので1割に届かない確率とした。
やや楽観 20% 投資の追い風で受注が伸び、転嫁も追いつく 利益 19 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,000 円217 億円
千歳の半導体工場の周りで工事と設備の投資が続き、建設機械と車のリースが伸びる。北海道の中小企業の数は減るが、1社あたりの設備の値段が上がり、営業資産は実質で15%増える。
金利の転嫁は5年ほどで追いつく。資産あたりの売上は物価より少し速く上がり、営業利益率は2.7%に戻る。不動産賃貸は賃料が物価並みに上がり、償却は建てた時の値段のままなので利益率が少し上がる。
純利益は19億円になる。配当性向は少し上がり、10年で26億円を返す。積まれた自己資本は営業資産の伸びを支え、自己資本比率は1割台に乗る。貸倒れに耐える厚みが増し、調達の金利の上乗せも小さくなる。
- リース・割賦・営業貸付:数量 1,250(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.42(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価10年1.34倍+金利の転嫁))→ 売上 761 億円・営業利益 21 億円。営業資産1.15倍
- 不動産賃貸:数量 190(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.37(資産あたり売上の指数(今=1.00。賃料は物価並み))→ 売上 65 億円・営業利益 17 億円。賃料は物価並み・償却は据え置き
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 217 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新規の受注は2026年上期に13%増えており、半導体関連の投資は始まっている。転嫁が数年で追いつく姿は十分ありうるので2割。
中立 36% 転嫁は追いつくが、利ざやは今より少し薄い 利益 15 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,400 円174 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、北海道の設備投資が横ばいからやや増える姿だ。半導体関連の追い風と人口減の向かい風が打ち消し合い、営業資産は実質で5%増える。
金利の上昇で、調達の費用は借り換えのたびに上がる。リース料は新しい契約から上げるので、転嫁が追いつくのに5〜7年かかる。10年後の資産あたりの売上は物価に金利の分を足して1.4倍になるが、利益率は2.4%と今より少し薄い。倒産が増える年には信用コストもかさむ。
不動産賃貸は賃料が物価並みに上がる。本社の費用も物価並みに増える。純利益は15億円ほどだ。配当と時折の自社株買いで10年に22億円を返し、残りは自己資本に積まれる。ROEは6%台にとどまる。
- リース・割賦・営業貸付:数量 1,145(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.40(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価10年1.34倍+金利の転嫁))→ 売上 687 億円・営業利益 17 億円。営業資産1.05倍・転嫁は10年で追いつく
- 不動産賃貸:数量 180(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.34(資産あたり売上の指数(今=1.00。賃料は物価並み))→ 売上 60 億円・営業利益 16 億円。賃料は物価並み・償却は据え置き
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 174 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年のROEは5〜10%の間で、営業利益率は2〜3%。金利の上昇で利ざやが一時細り、10年で転嫁が追いつく最も自然な筋書きとして3割台半ば。
やや悲観 23% 調達の費用が先に上がり、利ざやが細ったままになる 利益 6 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 630 円46 億円
金利の上昇に、リース料の値上げが追いつかない。大手の総合リース会社が料率を抑えて地方の案件を取りに来るので、中道リースは値上げを控えて顧客を守る。営業資産は北海道の人口減で実質5%減る。
リースの営業利益率は1.2%まで細る。倒産の増加で信用コストもかさむ。不動産賃貸は空室が増え、賃料は物価に届かない。純利益は6億円を切る。
配当は据え置き、10年で14億円を返す。ROEは3%を下回り、積まれた自己資本は稼ぎを生まない。価値は、その筋書きの稼ぐ力を資本コストで割った額を少し下回るところまで落ちる。自己資本は帳簿の上では増え続けるが、稼がない資本は株主の価値にならない。
- リース・割賦・営業貸付:数量 1,036(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.30(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価10年1.34倍+金利の転嫁))→ 売上 578 億円・営業利益 7 億円。営業資産0.95倍・転嫁が進まない
- 不動産賃貸:数量 170(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.25(資産あたり売上の指数(今=1.00。賃料は物価並み))→ 売上 53 億円・営業利益 12 億円。空室が増える
倍率:ROEは約2.8%で資本コストを大きく下回る。稼ぐ力は純利益÷k=約65億円で、それより低い8倍に置く。PBRは0.23倍で中立より低い。
確率:2026年12月期の会社の予想は減益で、利ざやの圧迫は既に始まっている。大手との競争で転嫁が進まない筋は十分ありうるので2割強。
悲観 13% 北海道の不況で貸倒れが重なり、自己資本が削られる 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 387 円28 億円
北海道の景気が大きく落ち込む。半導体工場の計画が縮み、建設の仕事が止まり、中小企業の倒産が相次ぐ。中道リースは残りのリース料を回収できず、数年にわたって大きな貸倒れを出す。
調達の費用は上がり続け、利ざやは消える。自己資本は貸倒れで削られ、10年後も今を少し下回る水準にとどまる。配当は減らし、10年で8億円しか払えない。
会社は清算されず、リースの契約が満了するにつれて資本が少しずつ現金に戻る。ただ、その使い道は創業家と大株主が決める。床は、貸倒れの後に残る自己資本を、回収までの時間と戻り方で割り引いた額とみる。
- リース・割賦・営業貸付:数量 900(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.20(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価10年1.34倍+金利の転嫁))→ 売上 463 億円・営業利益 −2 億円。貸倒れが重なる
- 不動産賃貸:数量 160(営業資産の残高(実質・億円))× 価格 1.15(資産あたり売上の指数(今=1.00。賃料は物価並み))→ 売上 46 億円・営業利益 7 億円。空室と賃料の下落
倍率:稼ぐ力はほぼ消え、価値は床の資産で測る。今の自己資本132億円に0.212倍をかけた28億円とする。
確率:自己資本比率が9%弱と薄く、リーマン後の2009年1月期には赤字を出した。地域の不況が重なれば深い谷になるので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リース・割賦・営業貸付
北海道の中小企業向けの機械・車・建設機械・医療機器のリースと割賦、営業貸付。
| 数量営業資産の残高(実質・億円) | 価格資産あたり売上の指数(今=1.00。物価10年1.34倍+金利の転嫁) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,091 | 1.00 | 468 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,145 | 1.40 | 687 | 17 |
取り方:営業資産は2025年12月末の約1,091億円(中間短信の1,082億円と前期末比−0.8%から逆算)。売上と利益は2025年12月期の全社の売上512億円・営業利益17億円から、不動産賃貸(中間×2で売上43.5億円・利益10.8億円)と本社費を除いた推定。利益には信託の精算益5.7億円を含む。
不動産賃貸
札幌などに持つビル・店舗の賃貸。
| 数量営業資産の残高(実質・億円) | 価格資産あたり売上の指数(今=1.00。賃料は物価並み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 174 | 1.00 | 44 | 11 |
| 10 年後 中立 | 180 | 1.34 | 60 | 16 |
取り方:営業資産は2025年12月末の約174億円(中間短信の168億円と前期末比−3.6%から逆算)。売上と利益は2026年1〜6月の21.73億円・5.37億円を2倍した年換算の推定。
リスクと懸念
金利の転嫁の遅れ
借入は1,100億円を超え、借り換えのたびに新しい金利になる。リース料は5〜7年の契約が満了するまで上げられないので、転嫁が追いつくまで利ざやが細る。2026年12月期の会社の予想が減益なのは、その表れとみる。
貸倒れと自己資本の薄さ
自己資本比率は9%弱と薄い。北海道の中小企業の倒産が増えれば、残りのリース料が取れず、貸倒れが自己資本を削る。2025年は倒産の増加で信用コストが増加に転じた。
北海道の人口減
北海道は人口の減り方が全国より速く、中小企業の数も減っていく。半導体工場の追い風が止まれば、営業資産を保つのも難しくなる。地盤が1つの地域に集まっていることは、強みであり弱みでもある。
大株主と少数株主
創業家の資産会社、芙蓉総合リース、ノースパシフィックが上位に並び、上位5者で半分を超える。配当性向は1割台と低く、利益の使い道は少数株主には決められない。非公開化の提案が出ても、その値段が本質価値を下回る恐れがある。
札幌の単独上場
札幌証券取引所だけに上場し、売買は少ない。値段が本質価値から離れたままになりやすく、埋まるきっかけも見えにくい。東証への上場や、芙蓉総合リースによる買収などが無ければ、割安は長く続きうる。
今後の分かれ目
- 2年続けて営業利益率が3%を超える
- 金利の転嫁が追いついている。中立の利益率を引き上げ、確率を上振れに寄せる。
- 信用コストが営業資産の0.5%を超える年が続く
- 貸倒れが重なり始めている。やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 芙蓉総合リースが持株を増やす、または買収を提案する
- 提案の値段と、10年の稼ぐ力で測った本質価値を比べる。今の値段は本質価値を下回るので、上乗せの大きさが焦点になる。
- 配当性向を3割以上に上げる、または東証に上場する
- 少数株主に報いる形に変わる。値段が本質価値に近づくきっかけになる。
- 千歳の半導体工場の計画が縮小・延期される
- 北海道の投資の追い風が止まる。営業資産の伸びの中立を下げる。
見ておくもの
- 新規の受注高と営業資産の残高
- リースの利ざや(資産あたり売上と調達の金利)
- 信用コストと倒産件数
- 配当性向と自社株買い
- 大株主の持株の動き(芙蓉総合リース・Nam)
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト8.75%を下回るため、式の上限1÷k=11.4倍を基準に、中立は8割の9.1倍とした。今のPER5倍・PBR0.4倍は見ていない。同じ領域の九州リースサービス(中立PER10倍・k8.5%)とは、自己資本の薄さ(k+0.25%)とROEの低さで差をつけた。リース会社なので借入の利払いは利ざやの中で扱い、純利益の利払いの調整には入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→11.43 倍・やや楽観 PER 9.7→11.43 倍・中立 PER 9.1→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。同じ領域の九州リースサービス(k 8.5%)より、自己資本の薄さの分だけ0.25%高くした。