結論
オリエントコーポレーション(オリコ)は、車や家電の分割払い、カード、銀行ローンの保証で稼ぐ信販会社だ。筆者の結論は、割安とは言えず、今の値段は妥当かやや高い、というものだ。PBR(株価を純資産で割った倍率)は 0.5 倍だが、これは安さの証拠にならない。
理由は稼ぐ力が資本コストに届かないことだ。自己資本は 2,500 億円あるが、純利益は 130 億円前後で ROE は 5% 台にとどまる。利益の質も弱い。足元の 4〜6 月期は、経常利益が前年の 4 割ほどに落ちた。
借金の重さも気になる。純有利子負債は 1.9 兆円で、自己資本比率は 8% 台だ。金利が上がるほど、調達費が先に増える。貸出の金利に転嫁できるまでの間、利ざやは削られる。ここが一番の弱点だ。
一方で、材料は多い。みずほ銀行が持ち株の一部をアイフルの持株会社へ譲り、物言う株主は親子上場の解消を求めた。中計は 2030 年 3 月期に ROE 12% を掲げる。ただ、前の中計は未達だった。筆者は計画をそのまま信じず、中立の利益を計画の半分ほどに置いた。
確率で重みをつけた本質価値は、今の時価総額をわずかに下回る。配当の厚みが下値を支えるが、買収の期待で値段を決めるのは危うい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を長く持ち続けたいとは思わない。理由は、事業の経済性が弱いからだ。
事業の本質は、1.9 兆円を借りて貸す仕事である。自己資本の 7 倍超の借金で、ROE は 5% 台に過ぎない。借金を積んでも資本コストに届かない会社は、成長しても価値が増えない。株主のものになる利益、つまり事業を続けるのに必要な投資を引いた利益も、計画の通りには残らない。債権が増えるたびに、自己資本が要る。
堀は狭い。販売店と銀行の網は価値があるが、ジャックスに首位を譲り、ネット銀行と後払いに削られている。広げられる堀は、保証とビジネスカードだけだ。
経営は誠実だが、実行の実績が足りない。前の中計は未達で、今期の 4〜6 月期も経常利益は 6 割近く減った。配当を厚く出す余裕もない。
安全域は、PBR 0.5 倍の見た目ほど厚くない。ROE が資本コストを下回る会社の正しい PBR は、1 倍を割るのが自然だ。筆者が欲しいのは、利益が回復する確かな理由か、買収で価値が出る確かな値段だ。いまはどちらも見えない。ただし、悲観の筋書きでも自己資本の 4 分の 1 は残るので、致命傷になる会社でもない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 4 本ある。いちばん古いのは個品割賦だ。車を買う時に販売店で申し込む分割払いで、国内のオートローンの利用は 167 万件ある。リフォームや家電のショッピングクレジットも同じ仕組みだ。販売店と提携先の信用が、この事業の入口になる。
2 本目はカードと決済だ。会員は 1,075 万人、加盟店は 91 万ある。イオンなど流通系との提携カードが多い。家賃の保証も 146 万件を抱え、不動産会社を通じて安定して入る。
3 本目は銀行ローンの保証だ。提携する銀行・信金は 553 に上る。借り手が返せない時にオリコが肩代わりし、その見返りに保証料を受け取る。大株主のみずほ銀行とのつながりが太く、法人向けの売掛金決済保証も、みずほの取引先を通じて広げている。保証は借金を増やさずに稼げるので、全社でいちばん利益の質がよい。
4 本目は個人向けのオートリースで、保有は 18.7 万台だ。会社は 2030 年 3 月期に 26.5 万台を目指す。海外は、アジアのオートローンを細々と続ける程度で、成長の主役ではない。
事業の形は、お金を借りて貸す金融業だ。純有利子負債は約 1.9 兆円。社債や銀行借入で調達し、貸出の利回りとの差で稼ぐ。自己資本比率は 8% 台と薄い。会社は新しい分野(デジタル分割払い「ワケタラ」・売掛金決済保証・ビジネスカード)へ人と資本を移し、約 900 人を自然減で減らす計画だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、あるにはあるが広くはない。強みは 3 つだ。全国の販売店網、553 の提携金融機関、みずほの信用である。みずほの後ろ盾のおかげで、格付けは A 格を保ち、調達費が抑えられる。
弱みは、稼ぐ効率の低さだ。ROE は 5% 台で、過去 10 年の中央値でも 8% 台にとどまる。営業収益に対する一般経費の比率は 60% を超え、会社自身が下げる必要を認めている。人員は約 9,000 人、拠点は 107 か所と、体が重い。
国内の主力であるオートローンでは、首位の座を譲った。ジャックスが 2023 年 3 月期に取扱高でオリコを抜き、その後も伸ばしている。販売店への手数料と、ネット銀行の自動車ローンに挟まれ、値段を自分で決める力は弱い。
経営の資本の使い方は、堅実だが控えめだ。大きな買収で資本を壊した過去は最近ない。配当は 4 期続けて同じ額に据え置き、純利益の約半分を回している。ただ、前の中期経営計画は、利益・ROE・経費率の三つとも未達だった。計画を掲げる力は強いが、実行の実績は薄い。
新しい中計は、人を縮小する分野から成長する分野へ移す。ビジネスカードのシェアを 18% から 32% へ倍近くに上げる目標など、強気の数字が並ぶ。筆者は、目標の半分でも届けば上出来と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の信販は、需要が増えない成熟市場だ。人口は減り、自動車の購入台数は伸びない。一方でカードの取扱高は、キャッシュレス化で 2025 年に 134.6 兆円、前年比 15% 増となった。分割払いの需要は、車からカードや後払いへ、ゆっくり移っている。
競争の形は変わりつつある。車のローンでは、銀行がネットで直接貸し、ジャックスのような独立系が販売店を押さえる。カードでは三井住友カードや楽天カードが経済圏の集客力で会員を取り込む。後払い(BNPL)や QR 決済も、一般層の小口の分割を奪う。オリコは、この三方向から削られる位置にいる。
金利の変化は、業界全体の重しだ。借金で貸す事業は、短期金利が上がると調達費が先に増える。貸出金利を上げられるのは、新規の分だけだ。中計は政策金利を 2028 年 3 月期に 1.25% と置くが、筆者は、10 年かけて短期金利が 2% へ上がるとみる。転嫁が遅れるほど、利益は薄くなる。
追い風は、保証の分野にある。銀行が個人ローンの審査を外部に任せる流れは続き、法人は手形の電子化を機に売掛金の保証を求めている。デジタル分割払いの市場も数兆円規模で、AI で審査を速くできる会社が有利だ。ただ、ここは新規参入も多い。
規制も見ておきたい。割賦販売法は、カードの不正対策の費用を重くしてきた。貸金業法の上限金利の規制と合わせ、貸出金利を自由に上げられない点は、これからも変わらない。
資本政策と M&A
還元は安定しているが、増える見通しは立たない。配当を 4 期続けて同じ額で出し、純利益のおよそ半分を回している。中計は配当性向 30〜40% を目安にし、増配は経常利益が 250 億円を超える 3 年目ごろと見ている。つまり、当面は据え置きだ。
資本の厚みは薄い。自己資本比率は 8% 台で、会社はストレス時も 8% 程度を保つとする。増資は不要との立場だ。4〜6 月期は 8.3% まで下がった。配当を増やす余裕は小さく、成長投資と財務の健全さが先に立つ。
株主の動きは、この会社の最大の変数だ。2026 年 5 月、みずほ銀行は議決権の 15% 分をアイフルの持株会社ムニノバへ譲った。みずほの比率は約 49% から約 34% へ下がり、オリコの親会社としての色が薄まる。アイフルとは業務提携と資本提携を結んだ。
そこへ物言う株主のストラテジックキャピタルが 12.8% を持って現れた。親子上場の解消、つまりみずほによる完全子会社化か売却を求めている。買収の可能性は消えていない。kabufu の試算でも、10 年以内の TOB(株式の公開買い付け)の確率は 2 割だ。
筆者は、買収の期待を本質価値に入れていない。価格がいくらになるかも、実現するかも読めないからだ。確率の裏付けが持てる範囲で、悲観の厚みを下げる材料として扱った。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益は底を打ち、会社は事業の形を変えつつある。強気の見方はこうだ。
第 1 に、利益の回復が始まった。2026 年 3 月期の経常利益は 144 億円と前の期より 17% 増え、予想の 120 億円を超えた。中計は 2030 年 3 月期に 500 億円を掲げる。人員を 900 人減らし、拠点を半分にするので、経費率の改善は確実に効く。
第 2 に、保証の事業が育つ。提携金融機関は 553 に上り、みずほの取引先を通じた売掛金の保証も伸びている。借金を増やさずに稼げるので、ROE を押し上げる。ビジネスカードも市場の伸びの 18% に乗る。
第 3 に、株主構成が変わった。みずほの比率は 3 分の 1 台に下がり、物言う株主は親子上場の解消を迫る。完全子会社化なら、PBR 0.5 倍の値段は大きな上げ代になる。
第 4 に、金利上昇は貸出金利で吸収できる。オートローンもカードも、新規の貸出は新しい金利でできる。2 年ほどの辛抱だ。
最後に、配当が下値を支える。純利益の半分を出し続け、利回りが高い。物価が 3% 上がる世界では、債権残高も収益も名目で伸びる。
慎重な見方
稼ぐ力の低さは、構造的なものだ。慎重な見方はこうだ。
まず、ROE が資本コストに届かない。5% 台の ROE が過去 10 年の中央値より低い。会社の言う資本コストの 9.8% には遠い。1.9 兆円を借りて、この水準しか稼げない事業に、高い倍率は付かない。
次に、利益の回復は一過性だ。2026 年 3 月期は貸倒の引当が軽く、利益を押し上げた。4〜6 月期は経常利益が 6 割近く減り、自己資本比率も 8.3% まで下がった。会社の目標の 2030 年の 500 億円は、前の中計の未達を見れば信用できない。
第 3 に、金利だ。固定金利で貸した債権は、調達費が上がっても貸出金利が変わらない。短期金利が 2% に向かえば、10 年かけて利益が数百億円規模で削られる。転嫁は競争で進まない。
第 4 に、シェアを失っている。オートローンはジャックスに首位を譲り、カードは経済圏の大手に、小口の分割は後払いに削られる。
最後に、買収期待は幻だ。みずほは持ち分を売る側に回り、買い手が現れるとは限らない。物言う株主の提案は、すでに一部取り下げられたとの報道もある。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の中心は、保証の伸びと株主構成の変化だ。数字の裏付けはあるが、利益の回復は計画ほど確実ではない。慎重な見方の指摘、つまり ROE の低さと金利の重さのほうが、事業の経済性に近いと筆者は考える。
そのため、中立の利益は会社の計画の半分ほどに置き、確率は中立と悲観の側へ寄せた。買収の期待は価格に入れていない。結果として、本質価値は今の時価総額を少し下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,099 円1,882 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 373 円638 億円)。 今の値に割り戻すと 720 円1,233 億円、今との差 −5.2%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,332 円3,993 億円 | 584 円1,000 億円 | +283.7% | +14.4% | 175 円300 億円 |
| やや楽観 | 15% | 1,743 円2,983 億円 | 514 円880 億円 | +196.9% | +11.5% | 338 円579 億円 |
| 中立 | 37% | 1,369 円2,343 億円 | 432 円740 億円 | +137.0% | +9.0% | 666 円1,141 億円 |
| やや悲観 | 26% | 511 円876 億円 | 315 円540 億円 | +8.8% | +0.8% | 215 円368 億円 |
| 悲観 | 16% | 366 円626 億円 | 117 円200 億円 | −36.5% | −4.4% | 77 円132 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,099 円1,882 億円 | 373 円638 億円 | +93.7% | +6.8% | 1,472 円2,520 億円 |
今の株価時価総額 760 円1,301 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:保証とビジネスカードが育ち、ROE が 9% に届く 利益 346 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 2,332 円3,993 億円
経費の改善と保証の成長が、会社の計画に近い形で進む。ビジネスカードは市場の伸びに乗ってシェアを大きく上げ、売掛金の保証はみずほの取引先の外へ広がる。オートリースも 26 万台台に乗る。個品割賦は、デジタル分割払いで新しい客を取り込み、残高は 1 割ほど増える。人員の削減が経費率を押し下げ、営業利益は 400 億円台に乗る。金利は貸出金利への転嫁でこなす。ROE は 9% に達し、資本コストを少し上回る。配当も増え、みずほとアイフルとの協業が新しい取引を生む。とはいえ、自己資本比率は薄いままで、貸倒の波が来れば利益は揺れる。会社の目標の 2030 年の 500 億円には届かないが、近い水準まで来る筋書きだ。
- 個品割賦(オートローン・ショッピングクレジット):数量 14,300(個品割賦などの営業債権残高(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 0.11(残高あたりの営業収益(金利・手数料)の名目の指数。物価の倍率(10 年 1.34 倍)に、競争による金利の伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 1,603 億円・営業利益 104 億円。残高 1.10 倍・営業利益率 6.5%
- カード・決済(家賃保証を含む):数量 19,600(カード・決済の取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.04(取扱高あたりの営業収益の名目の指数。物価の倍率に、加盟店手数料率の低下を引いたもの)→ 売上 874 億円・営業利益 87 億円。取扱高 1.40 倍・営業利益率 10%
- 銀行保証・売掛金決済保証:数量 40,000(保証の対象となる取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.03(取扱高あたりの保証料などの名目の指数。物価の倍率に、保証料率の競争による伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 1,201 億円・営業利益 192 億円。取扱高 1.60 倍・営業利益率 16%
- オートリース・その他:数量 26.5(オートリースの保有台数(万台))× 価格 26(1 台あたりの年間収益(万円)の名目の指数。物価の倍率を基本にした)→ 売上 692 億円・営業利益 59 億円。26.5 万台(会社の目標)・営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 346 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.5 倍。全体の PER 11.54 倍、時価総額 3,993 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保証の高成長と個品の底打ちが重なり、会社の計画に近づく筋書き。前の中計が未達だった実績を考え、6% にとどめた。
やや楽観 15% やや楽観:経費の改善と保証の伸びで、利益が倍になる 利益 261 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,743 円2,983 億円
経費の改善が進み、保証が堅調に伸びる。個品割賦は残高が横ばいから微増で、デジタル分割払いが車の細りを補う。カードは経済圏との提携で取扱高が 3 割増える。営業利益は 300 億円台に乗り、今の 2 倍ほどになる。金利の逆風は、新規貸出の金利引き上げで 3〜4 年かけて吸収する。ROE は 7% 台で、資本コストにはまだ届かない。配当は据え置きから少し増える。みずほとアイフルとの協業は、与信と IT の共同開発に限られ、収益への寄与は小さい。株主構成の変化は、経営の規律を高める方向に働くが、買収には至らない。
- 個品割賦(オートローン・ショッピングクレジット):数量 13,650(個品割賦などの営業債権残高(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 0.11(残高あたりの営業収益(金利・手数料)の名目の指数。物価の倍率(10 年 1.34 倍)に、競争による金利の伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 1,507 億円・営業利益 83 億円。残高 1.05 倍・営業利益率 5.5%
- カード・決済(家賃保証を含む):数量 18,200(カード・決済の取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.04(取扱高あたりの営業収益の名目の指数。物価の倍率に、加盟店手数料率の低下を引いたもの)→ 売上 803 億円・営業利益 68 億円。取扱高 1.30 倍・営業利益率 8.5%
- 銀行保証・売掛金決済保証:数量 36,250(保証の対象となる取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.03(取扱高あたりの保証料などの名目の指数。物価の倍率に、保証料率の競争による伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 1,072 億円・営業利益 145 億円。取扱高 1.45 倍・営業利益率 13.5%
- オートリース・その他:数量 25.7(オートリースの保有台数(万台))× 価格 25(1 台あたりの年間収益(万円)の名目の指数。物価の倍率を基本にした)→ 売上 652 億円・営業利益 46 億円。25.7 万台・営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 261 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 2,983 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:経費の改善と保証の伸びが、金利の逆風を上回る線。会社計画の半分以上が届く場合で、15% とした。
中立 37% 中立:計画の半分の改善にとどまり、ROE は 6% 前後 利益 205 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,369 円2,343 億円
利益は改善するが、計画の半分ほどにとどまる。個品割賦は残高が横ばいで、価格の上昇が収益を押し上げる程度だ。カードは取扱高が 2 割増え、手数料率は少し下がる。保証は取扱高が 3 分の 1 増え、堅調に利益を稼ぐ。営業利益は 250 億円ほどで、今の 7 割増しにとどまる。金利の転嫁は進むが、調達費の上昇を全部は吸収できない。ROE は 6% 前後で、資本コストを下回る。配当は少しずつ増えるが、増配の力は限られる。みずほの持ち分は縮み、オリコは独立色を強めるが、買収の提案は出ない。堀は広がらず、崩れもしない。
- 個品割賦(オートローン・ショッピングクレジット):数量 13,000(個品割賦などの営業債権残高(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 0.11(残高あたりの営業収益(金利・手数料)の名目の指数。物価の倍率(10 年 1.34 倍)に、競争による金利の伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 1,413 億円・営業利益 64 億円。残高 1.00 倍・営業利益率 4.5%
- カード・決済(家賃保証を含む):数量 16,800(カード・決済の取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.04(取扱高あたりの営業収益の名目の指数。物価の倍率に、加盟店手数料率の低下を引いたもの)→ 売上 733 億円・営業利益 55 億円。取扱高 1.20 倍・営業利益率 7.5%
- 銀行保証・売掛金決済保証:数量 33,750(保証の対象となる取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.03(取扱高あたりの保証料などの名目の指数。物価の倍率に、保証料率の競争による伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 983 億円・営業利益 118 億円。取扱高 1.35 倍・営業利益率 12%
- オートリース・その他:数量 25.0(オートリースの保有台数(万台))× 価格 25(1 台あたりの年間収益(万円)の名目の指数。物価の倍率を基本にした)→ 売上 625 億円・営業利益 38 億円。25.0 万台・営業利益率 6%
倍率:事業の純利益 205 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 2,343 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気・慎重の中間で、最も起こりやすい線。4 割弱。
やや悲観 26% やや悲観:金利と貸倒に利益を削られ、ROE が 3% 台 利益 106 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 511 円876 億円
金利の転嫁が遅れ、貸倒もやや増える。個品割賦はジャックスとネット銀行に押され、残高が 1 割減る。カードは取扱高が 1 割増えるが、手数料率の低下で利益は伸びない。保証の取扱高は伸びるものの、競争で保証料率が上がらず、利益は今と同じ水準にとどまる。営業利益は 130 億円ほどで、今とほぼ同じだ。ROE は 3% 台に下がる。会社の中計の目標は達成されず、人員削減の効果も金利の重さに消える。配当は維持されるが、増える見通しは立たない。自己資本比率は 8% を割りかけ、増資の懸念が出る。物言う株主の動きは、実を結ばない。
- 個品割賦(オートローン・ショッピングクレジット):数量 11,700(個品割賦などの営業債権残高(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 0.11(残高あたりの営業収益(金利・手数料)の名目の指数。物価の倍率(10 年 1.34 倍)に、競争による金利の伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 1,252 億円・営業利益 31 億円。残高 0.90 倍・営業利益率 2.5%
- カード・決済(家賃保証を含む):数量 15,400(カード・決済の取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.04(取扱高あたりの営業収益の名目の指数。物価の倍率に、加盟店手数料率の低下を引いたもの)→ 売上 658 億円・営業利益 30 億円。取扱高 1.10 倍・営業利益率 4.5%
- 銀行保証・売掛金決済保証:数量 30,000(保証の対象となる取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.03(取扱高あたりの保証料などの名目の指数。物価の倍率に、保証料率の競争による伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 860 億円・営業利益 86 億円。取扱高 1.20 倍・営業利益率 10%
- オートリース・その他:数量 22.0(オートリースの保有台数(万台))× 価格 24(1 台あたりの年間収益(万円)の名目の指数。物価の倍率を基本にした)→ 売上 534 億円・営業利益 16 億円。22.0 万台・営業利益率 3%
倍率:事業の ROE 3.3% が k 8.75% 以下なので PER の上限は 1÷k の 11.4 倍。稼ぎが薄く、利益の質も低い。上限の約 72% の 8.3 倍に置く。
確率:金利の転嫁が遅れ、貸倒もやや増える線。利益が薄いまま続く。ROE が低く金利の重さが残るため、中立よりやや厚い 26% とした。
悲観 16% 悲観:構造的に負け、利益がほぼ消える 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 366 円626 億円
個品がネット銀行・自動車メーカー系・後払いに奪われ、構造的に負ける。個品割賦の残高は 3 割減り、ほぼ収支が合わない。カードは経済圏の大手に会員を奪われ、利益は消える。保証でも、銀行が自前の審査を強め、競争で保証料が落ちる。貸倒は不況で膨らみ、調達費の上昇が追い打ちをかける。営業利益はほぼゼロで、純利益も消える。自己資本比率は 6〜7% まで下がり、格付けが下がって調達が詰まる。配当は数年のうちに大きく削られ、それまでの分は貸出の圧縮と資産の売却で払う。市場は、もう稼ぐ会社とはみず、資産の価値で測る。自己資本の 4 分の 1 ほどで売買される姿だ。
- 個品割賦(オートローン・ショッピングクレジット):数量 9,100(個品割賦などの営業債権残高(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 0.10(残高あたりの営業収益(金利・手数料)の名目の指数。物価の倍率(10 年 1.34 倍)に、競争による金利の伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 913 億円・営業利益 −9 億円。残高 0.70 倍・貸倒で赤字
- カード・決済(家賃保証を含む):数量 13,300(カード・決済の取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.04(取扱高あたりの営業収益の名目の指数。物価の倍率に、加盟店手数料率の低下を引いたもの)→ 売上 538 億円・営業利益 0 億円。取扱高 0.95 倍・収支均衡
- 銀行保証・売掛金決済保証:数量 23,750(保証の対象となる取扱高(億円・実質・推定))× 価格 0.03(取扱高あたりの保証料などの名目の指数。物価の倍率に、保証料率の競争による伸び悩みを重ねたもの)→ 売上 612 億円・営業利益 31 億円。取扱高 0.95 倍・営業利益率 5%
- オートリース・その他:数量 18.7(オートリースの保有台数(万台))× 価格 22(1 台あたりの年間収益(万円)の名目の指数。物価の倍率を基本にした)→ 売上 419 億円・営業利益 0 億円。18.7 万台・収支均衡
倍率:事業の ROE がほぼゼロで k 8.5% を大きく下回り、稼ぐ力(純利益÷k)は小さい。借金が仕入れの事業なので、床は債権の回収から借入を返した残りで置く。今の自己資本の 25%(PBR 0.25 倍)を上限にした。
確率:個品がネット銀行と後払いに奪われ、保証でも競争に負け、貸倒も増える構造的な負け。自己資本比率が 8% 台と薄く、ジャックスと同じ 16% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
個品割賦(オートローン・ショッピングクレジット)
車・リフォーム・家電などを買う時に、販売店で申し込む分割払い。国内外のオートローンが中心。
| 数量個品割賦などの営業債権残高(億円・今の値段で測った実質・推定) | 価格残高あたりの営業収益(金利・手数料)の名目の指数。物価の倍率(10 年 1.34 倍)に、競争による金利の伸び悩みを重ねたもの | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13,000 | 0.08 | 1,087 | 52 |
| 10 年後 中立 | 13,000 | 0.11 | 1,413 | 64 |
取り方:セグメント別の開示は薄い。営業収益 2,476 億円のうち、個品割賦と国内外の貸付に当たる分を約 1,087 億円と推定し、残高 1.3 兆円(推定)で割って利回り約 8.4% とした。国内オートローンの利用は 167 万件、海外は 10 万件(中計資料)。利益は全社の営業利益 144 億円を 4 本の柱と本社費に配分した推定で、個品割賦の利益率は 5% 弱とした。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
カード・決済(家賃保証を含む)
オリコカードや提携カードの加盟店手数料・分割・リボの利息、家賃決済保証の収益。
| 数量カード・決済の取扱高(億円・実質・推定) | 価格取扱高あたりの営業収益の名目の指数。物価の倍率に、加盟店手数料率の低下を引いたもの | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14,000 | 0.03 | 480 | 28 |
| 10 年後 中立 | 16,800 | 0.04 | 733 | 55 |
取り方:会員 1,075 万人、加盟店 91 万、家賃保証 146 万件(2025 年 3 月期・中計資料)。取扱高は会員 1 人あたり年 13 万円ほどと置いた約 1.4 兆円(推定)。営業収益は約 480 億円(推定)で、取扱高の 3.4%。利益は配分した推定で、利益率は 6% 弱。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
銀行保証・売掛金決済保証
提携する銀行や信金の個人ローンの保証、法人向けの売掛金決済保証。借り手が返せない時に肩代わりする見返りに保証料を受け取る。
| 数量保証の対象となる取扱高(億円・実質・推定) | 価格取扱高あたりの保証料などの名目の指数。物価の倍率に、保証料率の競争による伸び悩みを重ねたもの | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25,000 | 0.02 | 560 | 60 |
| 10 年後 中立 | 33,750 | 0.03 | 983 | 118 |
取り方:提携金融機関は 553、売掛金決済保証の利用は 27 万社(中計資料)。保証の取扱高は約 2.5 兆円(推定)、営業収益は約 560 億円(推定)で保証料率 2.2%。自己資金をあまり使わず、貸倒を保証料の範囲で抱える商いなので、利益率は 10% 強と全社でいちばん高いと置いた(推定)。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
オートリース・その他
個人向けのオートリース(オリコオートリース)と、周辺の小さな事業。
| 数量オートリースの保有台数(万台) | 価格1 台あたりの年間収益(万円)の名目の指数。物価の倍率を基本にした | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.7 | 19 | 349 | 20 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 25 | 625 | 38 |
取り方:個人向けオートリースの保有台数は 18.7 万台(2025 年 3 月期・中計資料)。1 台あたり月 1.5 万円強のリース料と置き、年 18.7 万円、営業収益約 349 億円(推定)。利益率は薄く 5% 台。会社は 2030 年 3 月期に 26.5 万台を目指す。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
調達費の上昇が貸出の利ざやを削る
純有利子負債は約 1.9 兆円で、自己資本の 7 倍を超える。固定金利の貸出は、調達費が上がっても金利を変えられない。会社の資料でも、固定金利の資産が全体の半分を超える。短期金利が 2% へ向かう間、転嫁の遅れが利益を削り続ける。
国内の個品割賦でシェアを失い続ける
オートローンは、ジャックスが取扱高で首位に立った。銀行がネットで直接貸す動きも強い。販売店への手数料と金利の競争で、利益率が下がる。個品が縮む速さが、会社の人員削減より速ければ、計画は崩れる。
景気後退での貸倒の急増
車やローンの利用者は、失業が増えると延滞が増える。自己資本比率が 8% 台しかないので、リーマン級の不況では利益が消え、配当を削る事態になりうる。2000 年代前半には大きな赤字も出した。
自己資本比率の低下と資本政策の制約
4〜6 月期の自己資本比率は 8.3% で、前期末の 8.8% から下がった。会社は 8% 程度の維持を掲げる。利益が弱いと、増資か還元の抑制に迫られる。配当が 4 期据え置きなのも、この薄さが背景にある。
経営計画の実行力
前の中計は、経常利益・ROE・経費率の三つとも未達だった。新しい中計は、5 年で経常利益 500 億円超という高い目標を置く。人員 900 人の削減と拠点の半減が遅れれば、費用だけが先に出る。
株主構成の変化の不透明さ
みずほは議決権の約 15% をアイフルの持株会社へ譲った。物言う株主は 12.8% を持つ。どちらも、経営の方向を変える力があるが、結果は読めない。買収が起きなければ、期待が剥げて値段が下がる恐れもある。
不正利用・規制の費用
カードの不正対策や割賦販売法の改正で、システム費用が増える。貸出金利の上限規制もあり、費用を価格に載せにくい。大きな不正や情報流出が起きれば、補償と信用の失墜で会員が離れる。
今後の分かれ目
- 短期金利が上がっても、新規貸出の金利引き上げで利ざやが保たれたら
- 中立の利益が上振れし、やや楽観以上の確率を上げてよい。借金の重さが弱みから普通の水準へ変わる。
- 個品割賦の取扱高が、ジャックスとの差を広げられ続けたら
- 個品が縮む速さが計画より速い。やや悲観の確率を厚くし、中立の利益を下げる。
- 売掛金決済保証とビジネスカードが、中計の通りにシェアを伸ばしたら
- 保証の利益率が上がり、楽観に近づく。ROE が資本コストを超える見通しが立つ。
- 景気後退で失業が増え、貸倒が平時の 2 倍に跳ねたら
- 1〜2 年は利益が消え、配当も削られる。自己資本比率が 8% を割れば、増資の懸念が出る。
- みずほや第三者から、完全子会社化や TOB の提案が出たら
- PBR 0.5 倍の値段は一気に見直される。ただし提示価格が本質価値を超えるかは別に確かめる。
- アイフルとの提携が、与信や IT の共同開発から実際の取扱高の増加に結びついたら
- 新しい客層の獲得が確認できたことになり、中立の取扱高を上げる材料になる。
見ておくもの
- 貸倒率・調達コストと、貸出金利の差(利ざやの推移)
- 個品割賦(オートローン)の取扱高と、ジャックスとの差
- 売掛金決済保証・ビジネスカード・デジタル分割払いの収益と中計の進み具合
- 自己資本比率(8% の維持)と配当方針
- みずほ・アイフル・ストラテジックキャピタルの持ち株の動きと、完全子会社化や売却の提案
倍率と資本コストの決め方
今の株価と PER は見ずに、4 つの柱の数量×価格と利益率を先に置き、そのあとで事業の ROE と k 8.75%(基本 7.5% に循環・値決め・借金の調整 +1.25%)・g 4.0% から正当化 PER の上限を出し、その 8〜9 割に置いた。ROE が k 以下の筋書きが多いので、倍率は 1÷k の下に収まる。みずほとアイフルの動き、物言う株主の買収期待は、価格に入れていない。純現金ではない(純有利子負債は大きなプラス)ので、余った現金は立てない。金融事業の借金は各柱の利ざや(利益率)に含め、金利上昇の影響は利益率の低下で表した。リースの扱い:同社は日本基準で、新リース会計基準で数字の形が変わるが、事務所・店舗の賃借は小さく、10 年後の数字は今の形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.07→11.54 倍・やや楽観 PER 9.52→11.43 倍・中立 PER 9.23→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。