結論
山田再生系債権回収総合事務所は、金融機関などから焦げ付いた債権を買い取って回収する、債権回収会社(サービサー)だ。登記などの事務の人材を派遣する事業と、不動産の売買の事業も持つ。売上は23億円ある。
筆者の結論は、今の値段は割高だ、というものだ。一番の理由は稼ぐ力の弱さにある。3つの事業の利益を足すと6億円近くあるが、本社の費用が5億円を超え、営業利益は0.7億円しか残らない。ROE(自己資本利益率)は2%で、資本コストの9.25%に遠く届かない。
派遣の売上の大半は、創業家が率いる司法書士法人山田合同事務所などの山田グループ向けだ。身内の仕事なので契約は安定しているが、登記の事務はAIと手続きのオンライン化で人手が要らなくなっていく。
債権回収は、金利の上昇で企業の倒産が増えれば仕事が増える面もある。ただ、買取債権の残高は前期に3割減った。創業家が議決権の6割を持ち、資産が株主に戻る道も細い。10年で見て、稼ぐ力が資本に見合う姿は描きにくいと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産はあるが、株主のための稼ぎが残らない会社」と見る。
債権回収の事業は悪くない。前期は3.5億円を稼いだ。身内の派遣も安定している。それでも、本社の費用が利益の大半を消し、ROEは2%にとどまる。オーナーとして見れば、ためた資本がほとんど稼いでいない。
資産の中身は、買い取った債権と不動産、現金だ。帳簿の自己資本は34億円ある。ただ、創業家が議決権の6割を持ち、その使い道を決める。少数株主が資産の値打ちを受け取れる道は、配当のほかにない。
もう1つ気になるのは、身内の取引の多さだ。売上の半分強が山田グループ向けで、値段が公正かを外から確かめにくい。
筆者は、稼ぐ力で測った価値は今の値段を大きく下回ると見る。安全域は取れていない。見方が変わるのは、本社の費用を削り、稼ぎが株主に残る形に変わった時だ。
何で稼ぐ会社か
事業は3つある。人材の派遣が売上の6割弱の13.3億円、債権回収が7.3億円、不動産の売買が2.5億円だ。
債権回収は、法務大臣の許可を得て営む。銀行やノンバンクが回収をあきらめた債権を額面より安く買い、借り手と話し合って返済を受ける。買った値段と回収した額の差が稼ぎだ。前期は7.8億円の債権を買い、28億円を回収した。期末の買取債権の残高は34億円で、前期から3割減った。利益は3.5億円と、3つの事業で最も大きい。
派遣は、登記や測量の事務に慣れた人を送り出す。派遣の社員は195人いる。送り先の大半は、創業家が率いる司法書士法人山田合同事務所と土地家屋調査士法人山田合同事務所、山田エスクロー信託だ。この3つで会社全体の売上の57%を占める。
不動産は、債権回収で関わった不動産の買い取りと再販売や仲介だ。件数は少なく、年によって利益が大きく動く。
3つの事業の利益の合計は5.9億円あるが、本社の費用が5.2億円かかり、営業利益は0.7億円にとどまった。事業の稼ぎは確かにあるが、それを株主に届ける前に本社で使い切る形だ。
優良さと弱いところ
事業の質は、身内の仕事で安定しているが、稼ぐ力が弱い、という形だ。
強みは、山田グループとの結びつきだ。司法書士法人や土地家屋調査士法人と一体で、登記や不動産、債権の回収の仕事を回せる。派遣の売上は身内向けが中心で、景気で急に減ることはない。債権回収の許可も、誰でも取れるものではない。
弱みは3つある。1つ目は、本社の費用の重さだ。3つの事業で6億円近く稼いでも、本社の費用で大半が消える。会社の規模に比べて、上場を保つ費用と管理の費用が大きい。
2つ目は、債権回収の市場の細りだ。銀行の不良債権は長く低い水準にあり、買い取る債権の量は限られる。入札では大手のサービサーと値段を競う。
3つ目は、事務の派遣の先行きだ。登記の手続きはオンライン化が進み、書類の作成はAIが担えるようになる。身内の顧客でも、人の数は減らせる。
ROEは過去10年の中央値で2%台だ。営業利益率が25%あった2010年代の半ばから、稼ぐ力は大きく落ちた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
債権回収の市場は、長く縮んできた。銀行の不良債権の比率は1%台と低く、売りに出る債権の量は2000年代の山から大きく減った。サービサーの数も減り、大手は金融グループの子会社が占める。
これからは、金利の上昇が流れを変えうる。短期金利が2%に上がれば、借金の多い中小企業の返済は重くなる。コロナの時期の実質無利子の融資の返済も続き、倒産の件数は増えている。不良債権が増えれば、買い取る債権の量も増える。会社が社名に「再生」を入れ、事業の立て直しに力を入れるのは、この流れを見てのことだ。
事務の派遣は、別の大きな変化の中にある。AIの代理人、つまり人の代わりに書類を作り手続きを進めるソフトが、登記や測量の事務を置き換え始めている。法務局の手続きもオンライン化が進む。人の時間で売る仕事は、10年で2〜4割減るというのが筆者の見立てだ。
不動産の売買は、地方の空き家や相続の物件が増える中で、小さな仕事の種は尽きない。ただ、利益は年ごとにぶれる。
3つの事業のうち、追い風を受けるのは債権回収だけで、残る2つは良くて横ばいだと筆者は見る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。前期は総額0.42億円を払い、今期も同じ額を予定する。純利益の6割を配当に回した計算になる。自社株買いはしていない。
資本の多くは、買い取った債権と不動産に置かれている。前期は回収が買い取りを大きく上回り、借入を8億円返した。手元は少し純現金になった。
創業家の山田晃久氏が、同意する株主と間接の保有を含めて議決権の62%を持つ。経営の方針は創業家が決め、少数株主の声が届きにくい形だ。山田グループの法人との取引も多く、その値段の決め方は外からは見えにくい。
M&Aでは、創業家が株の過半を持つ以上、外から買われる筋はほぼない。逆に、創業家が非上場に戻す選択はありうる。その時の値段は、本社の費用の重さを映した稼ぐ力ではなく、資産の値打ちで決まる面がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社には、時代の追い風が吹き始めている。金利が上がり、借金の多い中小企業の返済は重くなった。コロナの時期の融資の返済も続き、倒産は増えている。不良債権が増えれば、債権回収の会社の出番だ。社名に「再生」を入れたのは、この流れに乗る意思の表れだ。
債権回収の稼ぐ力は落ちていない。前期の利益は3.5億円と、4割近く増えた。買取債権の残高は減ったが、それは回収が進んだ結果で、手元の現金は増え、借入は8億円返した。次の買取の余力は十分にある。
山田グループとの一体の運営は、他のサービサーにない強みだ。登記と不動産と債権の回収をまとめて扱える。派遣の売上も身内の仕事で安定している。
帳簿の自己資本は34億円あり、今の値段はほぼその水準だ。創業家が非上場に戻す時も、資産の値打ちが下支えになる。
本社の費用も、事業が大きくなれば重さは薄れる。費用の多くは上場と管理の固定費で、売上が増えても同じだけは増えない。債権回収が戻れば、利益は一気に厚くなる。
慎重な見方
この会社の問題は、事業ではなく本社にある。3つの事業で6億円近く稼いでも、本社の費用が5億円を超え、営業利益は0.7億円しか残らない。ROEは2%で、資本コストに遠く届かない。この形は過去10年変わっていない。
派遣の先行きは暗い。売上の大半は創業家の司法書士法人などの山田グループ向けで、仕事は登記や測量の事務だ。AIの代理人と手続きのオンライン化が最も置き換えやすい種類の仕事で、身内の顧客でも人は減らせる。
債権回収の市場も細い。銀行の不良債権は低い水準にあり、倒産が増えても大手のサービサーとの入札は厳しい。前期は買取債権の残高が3割減った。
創業家が議決権の6割を持ち、資産の使い道を決める。身内の取引の値段も外から見えない。少数株主が資産の値打ちを受け取れる保証はない。
倒産の増加も、この会社だけの追い風ではない。金融グループの子会社の大手サービサーは資金も人も厚く、良い債権は先に押さえる。小さな会社に回ってくるのは、回収の難しい残りだ。
どちらに重みを置いたか
倒産の増加が債権回収の追い風になる点は、強気の言い分に理がある。ただ、本社の費用の重さと事務の派遣のAIによる縮みが、その追い風を打ち消す。ROEは資本コストに遠く届かず、稼ぐ力で測った価値は今の値段を大きく下回る。確率は中立を中心に置き、AIの代替と身内への依存を見て慎重な側を4割に厚くした。本社の費用を削る計画が数字で出れば、見方を変える。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 228 円10 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 87 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 156 円7 億円、今との差 −81.7%、 期待の年率 −9.4%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 831 円35 億円 | 188 円8 億円 | +20.0% | +1.8% | 61 円3 億円 |
| やや楽観 | 17% | 455 円19 億円 | 141 円6 億円 | −29.8% | −3.5% | 101 円4 億円 |
| 中立 | 37% | 188 円8 億円 | 99 円4 億円 | −66.3% | −10.3% | 106 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 96 円4 億円 | 47 円2 億円 | −83.1% | −16.3% | 36 円2 億円 |
| 悲観 | 15% | 47 円2 億円 | 23 円1 億円 | −91.7% | −22.0% | 11 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 228 円10 億円 | 87 円4 億円 | −62.9% | −9.4% | 315 円13 億円 |
今の株価時価総額 849 円36 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 倒産の増加で債権の買取が倍増し、事業の再生で稼ぐ 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 831 円35 億円
上振れの姿は、金利の上昇が不良債権の山を生むことだ。借金の多い中小企業の倒産が増え、銀行は焦げ付いた債権を売りに出す。会社は事業の再生を掲げて買取を増やし、残高は今の2倍に膨らむ。
山田グループとの連携も効く。登記と不動産と債権の回収を一体で回せる強みで、回収の率は高まる。派遣はAIで人が減るが、身内の顧客の仕事が増えて減り方は小さい。
営業利益は4.5億円になり、純利益は3億円を超える。ROEは7%近くに戻るが、資本コストにはまだ届かない。本社の費用の重さは、最も良い姿でも消えない。それでも株主に残る額は、今よりはっきり増える。
- サービサー事業(債権の買取と回収):数量 70.0(買取債権の残高(億円、名目))× 価格 0.21(残高に対する年の収益率(倍))→ 売上 15 億円・営業利益 8 億円。不良債権の増加で買取が倍増
- 派遣事業(登記・測量などの事務):数量 176(派遣の社員数(人))× 価格 920(1人あたりの年の売上(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。身内の仕事が増え減り方は小さい
- 不動産ソリューション事業:数量 15.0(売買・仲介の件数(件、推定))× 価格 3,500(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。再生の物件が増える
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 35 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利の上昇で倒産は増えているが、買取債権の残高は前期に3割減ったばかりだ。買取が倍増し派遣も保たれる姿は1割に届かない確率とした。
やや楽観 17% 倒産の増加で買取が戻り、本社の費用を吸収し始める 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 455 円19 億円
金利の上昇で倒産が増え、会社は買取を少しずつ増やす。残高は今の1.7倍になり、回収の利益は6億円台に増える。
派遣は、登記の手続きのオンライン化とAIで人が少しずつ減る。それでも身内の顧客の仕事は続き、1人あたりの売上は物価並みに上がる。不動産も再生の物件が増える。
本社の費用は物価並みに増えるが、事業の利益の伸びがそれを上回る。営業利益は2.5億円になり、純利益は1.7億円になる。ROEは4%台で、資本コストの半分ほどだ。債権回収の追い風が、本社の費用の重さを少しずつ押し返す姿だ。ただ、AIによる派遣の縮みは止まらない。
- サービサー事業(債権の買取と回収):数量 60.0(買取債権の残高(億円、名目))× 価格 0.21(残高に対する年の収益率(倍))→ 売上 12 億円・営業利益 6 億円。買取が戻る
- 派遣事業(登記・測量などの事務):数量 160(派遣の社員数(人))× 価格 900(1人あたりの年の売上(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。人は少しずつ減る
- 不動産ソリューション事業:数量 13.0(売買・仲介の件数(件、推定))× 価格 3,400(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。件数が増える
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 19 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:倒産の件数は増えており、買取の機会が増える筋は確かにある。派遣の減りも身内の顧客で緩やかなので2割弱。
中立 37% 買取は少し戻るが、派遣の縮みと本社の費用で利益は残らない 利益 1 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 188 円8 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、事業の利益が少し増えても、本社の費用でほとんど消える姿だ。倒産の増加で買取は戻り、残高は今の1.5倍になる。回収の利益は5億円になる。
派遣は、AIの代理人と手続きのオンライン化で人の数が4分の3に減る。1人あたりの売上は物価並みに上がるが、売上は横ばいにとどまる。不動産は小さな黒字を続ける。
本社の費用は物価並みに少し増え、営業利益は0.9億円にとどまる。純利益は0.7億円で、配当を払うとほとんど残らない。ROEは2%前後で、今と変わらない。事業は回っていても、株主にとっては何も積み上がらない10年になる。
- サービサー事業(債権の買取と回収):数量 50.0(買取債権の残高(億円、名目))× 価格 0.20(残高に対する年の収益率(倍))→ 売上 10 億円・営業利益 5 億円。買取が少し戻る
- 派遣事業(登記・測量などの事務):数量 146(派遣の社員数(人))× 価格 889(1人あたりの年の売上(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。AIで人が4分の3に
- 不動産ソリューション事業:数量 12.0(売買・仲介の件数(件、推定))× 価格 3,300(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。小さな黒字
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.9% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 8 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:倒産の増加による買取の回復と、AIによる事務の派遣の縮みが打ち消し合う姿を中心に置いた。本社の費用が重い形は過去10年変わっていないので4割弱。
やや悲観 25% 事務の派遣が大きく縮み、本業が赤字になる 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 96 円4 億円
AIの代理人が登記の書類の作成と手続きを担い、山田グループの法人も派遣の人を減らす。派遣の社員は今の6割に減り、利益も薄くなる。
債権回収も伸びない。大手のサービサーとの入札で買取の値段は上がり、回収の利益率は下がる。残高はほぼ今のままだ。
本社の費用は残り、営業利益は赤字に落ちる。配当は細る。価値を支えるのは買い取った債権と不動産だが、使い道を決めるのは創業家だ。少数株主には、その一部しか届かない。会社は続いても、株主には長い停滞になる。事務の派遣という柱が細る怖さが表に出る。登記の書類を人が作る時代は、静かに終わっていく。
- サービサー事業(債権の買取と回収):数量 35.0(買取債権の残高(億円、名目))× 価格 0.19(残高に対する年の収益率(倍))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。入札の競争で利幅が縮む
- 派遣事業(登記・測量などの事務):数量 120(派遣の社員数(人))× 価格 850(1人あたりの年の売上(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。AIで人が6割に
- 不動産ソリューション事業:数量 8.0(売買・仲介の件数(件、推定))× 価格 3,000(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。件数が減る
倍率:本業は赤字で稼ぐ力は消える。床は売れる資産だが創業家の支配で戻り方は0.5で、中立の値を超えては置かない。今の自己資本34億円に0.12倍を掛けた約4億円とする。 資産の床(買取債権の回収と現金・上場株で約28億円に戻り方0.5で約14億円)は、創業家の判断なしには株主に届かず、清算もされないので値に入れない(穴9)。
確率:登記の事務は書類の作成と手続きのどちらもAIとオンライン化の対象で、人月で売る仕事の典型だ。AIの代替を重く見て、やや悲観と悲観で4割とした。
悲観 15% 身内の派遣が打ち切られ、債権回収も細って赤字が続く 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 47 円2 億円
山田グループの法人が登記の事務をAIで内製化し、派遣の契約を大きく減らす。派遣の社員は今の4割に減る。債権回収は大手との競争に負け、買取がほぼ止まり、残高は今の6割に細る。
本社の費用は削っても追いつかず、赤字が続く。10年の間に自己資本の半分近くを失う。
会社は清算されず、創業家の判断で事業を縮めて続く。買い取った債権と不動産は残るが、少数株主に届くのはわずかだ。身内の取引に頼った形の弱さが、最も強く出る姿だ。山田グループの方針ひとつで、売上の半分が消えうる。身内の取引に頼る会社にとって、それが最も重い筋書きだ。
- サービサー事業(債権の買取と回収):数量 20.0(買取債権の残高(億円、名目))× 価格 0.18(残高に対する年の収益率(倍))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。買取がほぼ止まる
- 派遣事業(登記・測量などの事務):数量 80.0(派遣の社員数(人))× 価格 800(1人あたりの年の売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。身内の契約が減る
- 不動産ソリューション事業:数量 5.0(売買・仲介の件数(件、推定))× 価格 2,800(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。赤字
倍率:赤字が続き稼ぐ力は消える。価値は残る資産の一部で、今の自己資本34億円に0.06倍を掛けた約2億円とする。 資産の床(買取債権の回収と現金・上場株で約28億円に戻り方0.5で約14億円)は、創業家の判断なしには株主に届かず、清算もされないので値に入れない(穴9)。
確率:派遣の売上の大半が山田グループ向けで、グループが内製化すれば一気に失う。債権回収の市場の細りと重なる姿として15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
サービサー事業(債権の買取と回収)
金融機関などから不良債権を買い取り、回収して差額を稼ぐ。
| 数量買取債権の残高(億円、名目) | 価格残高に対する年の収益率(倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 34.3 | 0.21 | 7 | 4 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 0.20 | 10 | 5 |
取り方:2025年12月期のサービサーの売上7.27億円・利益3.53億円、買取債権の残高34.25億円(有報)。残高を名目で置くので、収益率に物価は掛けない。
派遣事業(登記・測量などの事務)
司法書士法人山田合同事務所など山田グループを中心に、事務の人材を派遣する。
| 数量派遣の社員数(人) | 価格1人あたりの年の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 195 | 684 | 13 | 2 |
| 10 年後 中立 | 146 | 889 | 13 | 2 |
取り方:2025年12月期の派遣の売上13.33億円・利益1.90億円、派遣事業の従業員195人(有報)。1人あたりは売上÷人数。AIエージェント代替の人月の型として見る。
不動産ソリューション事業
債権回収で関わった不動産の買取・再販売と仲介。
| 数量売買・仲介の件数(件、推定) | 価格1件あたりの売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.0 | 2,470 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 3,300 | 4 | 1 |
取り方:2025年12月期の不動産ソリューションの売上2.47億円・利益0.47億円(有報)。件数の開示は無く10件と置いた推定。
リスクと懸念
身内の取引への依存
派遣の売上の大半は、創業家が率いる司法書士法人山田合同事務所などの山田グループ向けで、会社全体の売上の57%に当たる。グループの方針が変われば売上は一気に減る。値段の決め方も外からは確かめにくい。
AIエージェントによる事務の代替
登記や測量の書類の作成と手続きは、AIの代理人と法務局のオンライン化で人手が要らなくなっていく。人の時間で売る派遣は、10年で2〜4割縮むと筆者は見る。
本社の費用の重さ
3つの事業で6億円近く稼いでも、本社の費用が5億円を超え、営業利益は1億円に届かない。費用が物価で増えれば、利益はすぐに消える。
債権回収の市場の細り
銀行の不良債権は長く低い水準にあり、買い取る債権の量は限られる。大手のサービサーとの入札で買取の値段が上がれば、回収の利益は薄くなる。前期は買取債権の残高が3割減った。
創業家の支配
創業家が議決権の62%を持ち、経営と資本の使い方を決める。少数株主が資産の値打ちを受け取れる道は配当のほかに乏しく、非上場化の値段も創業家の側で決まりやすい。
今後の分かれ目
- 買取債権の残高が2期続けて増える
- 倒産の増加が買取に結びついている。サービサーの残高の中立を引き上げ、強気の側に確率を寄せる。
- 山田グループ向けの派遣の売上が1割以上減る
- 身内の内製化かAIの代替が始まった。派遣の人数を下げ、慎重な側に確率を寄せる。
- 本社の費用を削る計画を数字で出す
- 稼ぐ力が残る形に変わる。調整の費用を見直し、中立の利益を引き上げる。
- 創業家が非上場化を提案する
- TOBの値段が資産の値打ちで決まる。筋書きをTOBの値段に置き直す。
- 自社株買いを行う
- 資本が株主に戻り始めた。戻り方を見直す。
見ておくもの
- 買取債権の残高と買取額
- 山田グループ向けの売上
- 派遣の社員数
- 本社の費用(セグメントの利益の合計と営業利益の差)
- 企業の倒産件数
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト8.75%を大きく下回るため、式の上限1÷k=10.8倍を基準に中立は8割の8.6倍とした。今のPER・PBRは見ていない。サービサーは買取債権の残高を名目で置き、収益率に物価は掛けていない。事務の派遣はAIエージェント代替の人月の型で数量を4分の3に置いた。純現金は時価総額の1割に届かず、余った現金は分けていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.7→11.43 倍・やや楽観 PER 9.2→11.43 倍・中立 PER 8.6→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。