結論
ヒロセ通商は、個人向けの外国為替証拠金取引(FX)を『LION FX』のブランドで営む。取引システムは自社で開発し、顧客口座は45万に迫る。筆者の結論は割高である。10年で測った価値は、今の時価総額を3割強下回る。
稼ぐ力は高い。2026年3月期の営業利益率は29%で、過去12年の最高は2024年3月期の40%に近づく。直近の四半期は、相場の動きに乗って営業収益が過去最高を更新し、経常利益は前年同期の5割増になった。
弱みは商品に差がないことだ。客は口座を複数持ち、スプレッドの狭い会社へ動く。業界の再編で上位の競争は一段と激しくなる。レバレッジの規制が変われば、取引高そのものが縮む。
もうひとつは利益のため方だ。配当は2期連続で同額、自社株買いを足しても還元は利益の2割台にとどまる。自己資本は年々厚くなり、10年後の自己資本利益率は7%台まで下がる計算だ。中立の10年後は、営業収益約136億円、営業利益約39億円、純利益約26億円と置く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、利益率の高い事業だが、長く持ちたい種類の会社ではない。事業は単純で、顧客が取引するたびに収益が入る。システムの固定費が重いので、取引高が増えると利益がよく伸びる。
だが、価格を決める力が弱い。FXの商品はどこも同じで、客は安い口座へ移る。規制が強まればその前提も変わる。利益の大半は、相場が荒れた年に稼いだ分だ。10年先まで同じ利益率が続くとは言えない。
資本の使い方は、利益の大半をためる形で、株主にはやや不満が残る。ためたお金は自己資本規制のために必要な分もあるが、利益を生む力が資本コストを下回れば、ためたお金は額面どおりの価値にならない。ここがこの会社の評価を分ける。
安全域は、今の値段にはあまり見えない。高い利益率がそのまま続く前提で、ほぼ公正な値段が付いている。
経営者の誠実さや後継の体制は、公開された情報からは評価しきれない。
何で稼ぐ会社か
事業は、個人の顧客を相手にした店頭FXが中心だ。顧客が通貨を売買するとき、ヒロセ通商が取引の相手方となり、買値と売値の差(スプレッド)を収益にする。顧客の損益は会社のカバー取引で調整する。営業収益は2026年3月期に105億円。主要な取引は米ドル円やポンド円などだ。
2026年3月期の第3四半期までの9か月で、外国為替の取引高は8.7兆通貨(前年同期比5%増)、顧客口座数は約44.7万口座だった。業界全体では店頭FXの取引高が月に約1,000兆円、業者は46社で、そのなかでヒロセ通商は中堅の位置にある。FXのほかに、少額のCFDや外貨取引、金融収益がある。
顧客から預かる証拠金は、会社の資産と分けて信託銀行などで管理される(分別管理)。そのため、貸借対照表の自己資本比率は16%と低く見えるが、会社が負う借金とは性質が異なる。金融の事業の借金は仕入れのようなもので、通常の借入とは別に考える。
2027年3月期の業績予想は出していない。為替の変動で予測が難しいためで、営業収益、口座数、取引高、預り証拠金を毎月開示している。
優良さと弱いところ
事業の質は高いが、堀は浅い。ヒロセ通商の強みは、自社開発の取引システムによる低い運営費と、狭いスプレッドで客を集める規模の経済だ。営業利益率は29%と、製造業や小売の水準をはるかに上回る。
しかし、FXの商品は、どの会社もほぼ同じだ。客は複数の口座を持ち、スプレッドが少しでも狭い会社に注文を出す。強い値決め力はなく、規制も大きな変数になる。個人のレバレッジは最大25倍に抑えられており、規制が強まれば取引高が縮む。
財務は、顧客の資金を分けて管理しているため、自己資本比率の低さを心配する会社ではない。ただし自己資本のかなりの部分は、自己資本規制(金融当局が求める資本の厚み)を満たすための資金で、自由に使える現金とは言えない。
経営は代表取締役社長の野市裕作氏が率いる。集計サイトによれば、大株主は個人が並び、上位は友延雅昭氏の8.6%、渋谷誠一氏の7.0%、石原愛氏の6.6%、野市氏の5.8%。上場子会社ではなく、少数株主の立場が強い会社だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
個人向け店頭FXの国内市場は、取引高が月に約1,000兆円と大きいが、相場の動きで大きく振れる。2025年1月は約1,292兆円、12月は約1,010兆円だった。取引高が伸びても、スプレッドは長い年月で縮み続けてきた。量は増えても単価が下がるのがFXの宿命である。
競争の形は寡占に近い。GMOクリック証券(取引高シェア約2割)、外為どっとコム、DMM FX、SBI FXトレード、楽天証券、松井証券が上位を争い、2025年6月には外為どっとコムがマネーパートナーズを統合した。再編が進むほど、残った会社のスプレッド競争は激しくなる。
相場が荒れる年に稼ぎ、凪の年に細る。金利の上昇も追い風と逆風の両面がある。金利が上がれば、顧客の預り金の運用益が増えるが、為替の方向感が定まれば取引は減る。日米の金利差が縮む局面は、取引高を減らしやすい。
規制は、レバレッジの引き下げやCFDの扱いなど、個人投資家保護の流れが続く。暗号資産の取引所が台頭し、若い個人客が分散するのも、10年の逆風だ。
海外の業者は日本の個人客に直接は届きにくく、国内の登録業者が中心の市場だ。
資本政策と M&A
還元は小さい。年間配当は2025年3月期と2026年3月期で同額、配当性向は10%台にとどまる。自社株買いは2026年3月期に約2.6億円、配当は約2.4億円で、合わせて利益の24%ほどだ。会社は『内部留保とのバランスを見ながら業績に見合った還元』を方針とするが、具体的な水準は示さない。
結果として、自己資本は2015年3月期の30億円から2026年3月期の217億円まで積み上がった。自己資本規制のための余裕を持つ意味もあるが、ROEは16%台から9.5%に下がっている。
M&Aは目立たない。取締役への株式報酬として、自己株式の処分(6.8万株)を決めた。株主優待は確かめられなかった。外部の推計では、10年以内にTOBなどで買われる確率は17.3%。個人の大株主が分散しており、再編の可能性は他の上場子会社より低いとみる。
本社の賃借など、リースの約束は小さい。新リース会計基準で数字の形が変わるが、規模は限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
直近の業績は強い。2027年3月期の第1四半期は営業収益が前年同期比で2割増え、3期ぶりに過去最高を更新した。経常利益は5割以上増えている。相場の振れが戻り、個人投資家の取引が活発になったことが背景だ。
国内のFX業者は再編で数が減り、残った会社の寡占が進む。ヒロセ通商は、自社開発のシステムによる低コストの運営で、スプレッドを絞りながら利益率を保てる。顧客口座は約45万、取引高は9か月で8.7兆通貨と、中堅の中では堅調だ。
金利が上がる世界では、預り証拠金の運用益が増える。ヒロセ通商は無借金に近く、財務の安全性も高い。自社株買いや増配に回せる余力もあり、経営が還元を強めれば、評価は一段上がる。2026年3月期の営業利益30億円は、2024年3月期の43億円を下回っており、まだ回復の途中という見方もできる。
さらに、個人の資産形成の流れが続き、為替や商品に分散投資する客が増えれば、口座の裾野が広がる。取引システムに投じた固定費が、取引の増加でよく回収される。
慎重な見方
営業利益率は高いが、その大半は相場の荒れた年に稼いだ分だ。2026年3月期の4月から12月の営業利益は前年同期より27%減っており、相場の動きひとつで利益が大きく動く構造は変わらない。第1四半期の好調は、荒れた相場の恩恵で、10年続く保証はない。
FXの商品に差はなく、客は口座を複数持って安い会社へ動く。上位の会社が規模の力でスプレッドを絞れば、中堅は追随せざるを得ない。レバレッジの規制が強まれば、取引高が縮む。暗号資産に流れる若い客も増えている。
利益を内部にため続ける経営も気がかりだ。還元は利益の2割台で、自己資本が積み上がるほどROEは下がる。ためた資金の多くは自己資本規制のために必要な分で、株主に戻せるお金ではない。
また、取引高の増加が続いても、単価が下がる限り利益は伸びない。大手が低スプレッドを武器に客を奪えば、中堅は追随か撤退を迫られる。
配当を含む還元が利益の2割台にとどまる点は、持ち続ける株主の立場から見て不満が残る。
どちらに重みを置いたか
事業の足元は強いが、利益の質と、ためる経営の資本効率に、慎重な見方の指摘が上回る。中立は今の営業利益率より少し低く置き、確率は中立に最も厚く、悲観側にやや寄せた。事業の質は高いが、10年先の利益率を今のまま置く根拠は弱い。確率は中立に最も厚く、悲観側にやや寄せて置いた。今期の好調な数字は、相場の荒れ具合に支えられたもので、10年の稼ぐ力とは分けて見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,273 円266 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,396 円87 億円)。 今の値に割り戻すと 2,765 円172 億円、今との差 −24.7%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 7,677 円478 億円 | 2,186 円136 億円 | +168.7% | +10.4% | 888 円55 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,824 円362 億円 | 1,768 円110 億円 | +106.9% | +7.5% | 1,670 円104 億円 |
| 中立 | 34% | 4,832 円301 億円 | 1,511 円94 億円 | +72.8% | +5.6% | 2,157 円134 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,090 円130 億円 | 1,157 円72 億円 | −11.5% | −1.2% | 714 円44 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,527 円95 億円 | 321 円20 億円 | −49.6% | −6.6% | 240 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,273 円266 億円 | 1,396 円87 億円 | +54.5% | +4.4% | 5,669 円353 億円 |
今の株価時価総額 3,670 円228 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 9% 相場が荒れ寡占が進み、利益率が過去の山近くへ 利益 40 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 7,677 円478 億円
相場の荒れた年が多く、個人投資家の取引が活発に続く。業界の再編で上位の寡占が進み、ヒロセ通商は口座を増やして取引高14兆通貨に達する。スプレッドは物価ほどは上がらないが、規模の経済で利益率は33%まで上がる。金利の定着で預り資産の運用益も増える。経営は還元を強め、利益の45%ほどを配当と自社株買いに回す。それでも利益率は、過去の最高(40%)には届かない。
配当と自社株買いの増額が株主の評価を高める。取引システムも更新され、障害のリスクも抑えられる。
10年後も個人のFXは参加者の裾野が広い市場として残り、同社は上位の一角を保つ。
- 外国為替証拠金取引(LION FX):数量 14.0(年間の外国為替取引高(兆通貨・実質))× 価格 11(取引高当たりの営業収益(億円/兆通貨))→ 売上 150 億円・営業利益 49 億円。営業利益率33%
- CFD・金融収益・その他:数量 0.3(顧客預り資産などの運用規模(兆円・推定))× 価格 83(運用規模当たりの収益(億円/兆円))→ 売上 25 億円・営業利益 11 億円。営業利益率45%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12 倍、時価総額 478 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:荒れた相場が続き、再編で寡占が進む好循環が10年続く必要がある。2024年3月期の40%に近づくには、競合との値下げ競争を免れる前提がいる。
やや楽観 22% 直近の好調が一部続き、中堅の地位を保つ 利益 32 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 5,824 円362 億円
直近の好調が一部続き、取引高は12.5兆通貨に増える。上位との差は広がらないが、再編後の市場で中堅の地位を保つ。営業利益率は31%と、今期の29%と来期の会社外部予想(32%)の間に置く。金利の定着で運用益が増える。還元はやや強まり、利益の4割ほどになる。
商品の差は小さいままだが、取引システムの安定性とサポートで口座の流出を抑える。海外のFC的な展開は限定的だ。
再編後の市場でも、狭いスプレッドと使いやすい取引画面で、顧客の満足度は保たれる。
相場の荒れが続く年と凪の年が交互に来て、10年の平均では今期の好調が一部残る形になる。
- 外国為替証拠金取引(LION FX):数量 12.5(年間の外国為替取引高(兆通貨・実質))× 価格 11(取引高当たりの営業収益(億円/兆通貨))→ 売上 132 億円・営業利益 41 億円。営業利益率31%
- CFD・金融収益・その他:数量 0.3(顧客預り資産などの運用規模(兆円・推定))× 価格 81(運用規模当たりの収益(億円/兆円))→ 売上 20 億円・営業利益 8 億円。営業利益率42%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 362 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の第1四半期は営業収益が過去最高で、予想も上向き。ただしFXの利益は相場次第で、持続の確度は高くない。
中立 34% 取引高は横ばい、単価は物価ほど伸びない 利益 26 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 4,832 円301 億円
取引高は今と大差がなく、11.5兆通貨で落ち着く。スプレッドは物価ほどは上がらず、価格の伸びは10年で25%ほど。営業利益率は28%と、今期の29%より少し低く置く。人件費とシステム費は物価で増える。金利の定着で運用益が増える。還元は利益の4割ほどに引き上げるが、自己資本規制のためにためる分もあり、自己資本は358億円まで積み上がる。ROEは7%台に下がる。
顧客口座は緩やかに増え、取引高は相場の振れに応じて上下するが、10年の平均では横ばいになる。システムの更新費用は物価で増える。
配当と自社株買いは増えるが、自己資本規制の維持のために利益の半分以上は内部に残る。
- 外国為替証拠金取引(LION FX):数量 11.5(年間の外国為替取引高(兆通貨・実質))× 価格 10(取引高当たりの営業収益(億円/兆通貨))→ 売上 118 億円・営業利益 34 億円。営業利益率29%
- CFD・金融収益・その他:数量 0.2(顧客預り資産などの運用規模(兆円・推定))× 価格 79(運用規模当たりの収益(億円/兆円))→ 売上 17 億円・営業利益 7 億円。営業利益率40%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 301 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の寡占と価格競争が釣り合い、取引高は今と大差がない。直近の好調を10年に延ばさず、利益率は今期より少し低めに置く。
やや悲観 22% スプレッド競争で単価と取引高が細る 利益 11 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 2,090 円130 億円
スプレッド競争が激しくなり、価格は物価に追いつかず、取引高も10.5兆通貨に減る。再編で上位の会社に客が集まり、中堅の営業利益率は18%まで落ちる。システム投資が先行して費用が重い。レバレッジの規制が一部強まり、取引高を押し下げる。還元は据え置きに近く、ためた資金が積み上がる。
人件費とシステム費が物価で増える一方、単価が上がらないため、利益率が圧迫される。経営は新しい商品の開発に動くが、成果は限定的だ。
景気や相場の凪が長引けば、取引高の落ち込みが利益の落ち込みを増幅する。
新しい客の獲得費用も上がり、広告や販促の負担が重くなる。
- 外国為替証拠金取引(LION FX):数量 10.5(年間の外国為替取引高(兆通貨・実質))× 価格 8.23(取引高当たりの営業収益(億円/兆通貨))→ 売上 86 億円・営業利益 16 億円。営業利益率18%
- CFD・金融収益・その他:数量 0.2(顧客預り資産などの運用規模(兆円・推定))× 価格 73(運用規模当たりの収益(億円/兆円))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。営業利益率30%
倍率:事業の純利益11億円・事業ROE約3.7%でk 8.75%以下。稼ぐ力(11億円×PER 8倍)の約90億円より、事業が生きたまま売れる資産の税後(約130億円)が大きいので、その床を今の自己資本217億円に掛けたPBRに直すと約0.60倍。
確率:業界再編後の価格競争と、レバレッジ規制の強化が重なる確率を厚く置いた。FXの商品に差がなく、顧客は安い会社へ動きやすい。
悲観 13% 規制と値下げで利益が消える 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,527 円95 億円
レバレッジの引き下げなど規制の強化と、暗号資産への客の流出で、取引高は7兆通貨まで縮む。スプレッドも半年ごとに削られ、営業赤字に近づく。システムの障害や急な相場変動による損失も重なる。自己資本規制の維持に資金が要り、配当は大きく減る。顧客の証拠金は会社のものではなく、分別管理されて拘束されるため、売れる資産は自己資本の半分以下となる。
上位の業者に集約が進み、小規模な業者は撤退する。少数株主の価値は、自己資本規制で拘束された資産が解放される条件に左右される。
最悪の場合は、自己資本規制の悪化を避けるために増資や事業の売却に追い込まれる。
- 外国為替証拠金取引(LION FX):数量 7.0(年間の外国為替取引高(兆通貨・実質))× 価格 6.17(取引高当たりの営業収益(億円/兆通貨))→ 売上 43 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-5%
- CFD・金融収益・その他:数量 0.1(顧客預り資産などの運用規模(兆円・推定))× 価格 66(運用規模当たりの収益(億円/兆円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。営業利益率10%
倍率:純利益は赤字で稼ぐ力から価値は出せない。顧客の証拠金は分別管理され、自己資本も自己資本規制で拘束される。売れる資産の税後(約95億円)を、今の自己資本217億円に掛けたPBRに直すと約0.44倍。
確率:個人FXに対する規制の強化と、暗号資産への流出が同時に起きる構造的な縮小。過去にスイスショックのような急変動で破綻した業者もある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
外国為替証拠金取引(LION FX)
個人向けの店頭FX。スプレッドと、顧客取引のカバーによる収益。
| 数量年間の外国為替取引高(兆通貨・実質) | 価格取引高当たりの営業収益(億円/兆通貨) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.6 | 8.23 | 95 | 29 |
| 10 年後 中立 | 11.5 | 10 | 118 | 34 |
取り方:2026年3月期の第3四半期までの9か月の取引高8兆6,648億通貨を12か月に直し(×12÷9)、年間約11.55兆通貨とした(推定)。営業収益105億円のうち、FXが約95億円、CFD・金融収益・その他が約10億円と推定した(開示は内訳を分けておらず推定)。取引高は実質、収益率はスプレッドで決まる率で、競争で物価の1.34倍より低い1.25倍までしか上がらないと置いた(スプレッドは銭で決まり長く縮んできたため)。
CFD・金融収益・その他
CFD、株式、顧客の預り資産の運用益など。
| 数量顧客預り資産などの運用規模(兆円・推定) | 価格運用規模当たりの収益(億円/兆円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 66 | 10 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 79 | 17 | 7 |
取り方:営業収益105億円からFXの推定95億円を引いた約10億円を、顧客預り資産などの運用規模の推定0.15兆円で割った(推定、開示に内訳なし)。金利が2%に上がる世界では運用益の率が上がるが、CFD等の率は物価ほど上げず、中立は1.2倍に置いた。
リスクと懸念
レバレッジなど規制の強化
個人FXのレバレッジは最大25倍に抑えられている。規制がさらに強まれば、取引高そのものが縮む。CFDや暗号資産の扱いの変化も、事業の形を変えうる。
スプレッドの値下げ競争
商品がほぼ同じで、客は口座を複数持つ。2025年6月の外為どっとコムとマネーパートナーズの統合など、再編で上位の規模が増すほど、中堅の単価は削られる。
相場の荒れ具合への依存
利益は相場の振れに左右される。2026年3月期の4月から12月の営業利益は前年同期比27%減だったが、その後の四半期は2倍の経常利益を記録した。振れの大きさが、将来の利益の見えにくさにつながる。
カバー取引の損失とシステム障害
顧客と相対で取引する業者は、急変動でカバー取引に失敗すると大きな損失が出る。取引システムの障害は、顧客の信頼を損なう。
ためる経営と資本効率
還元は利益の2割台で、自己資本は10年で7倍に積み上がった。ROEは16%台から9.5%へ下がっており、ためた資金の多くは自己資本規制のために拘束される。
暗号資産などへの顧客流出
若い個人客が暗号資産の取引所や海外の証券へ流れれば、口座の入れ替わりが速くなる。FXに新しい客が入らなければ、長期の取引高は縮む。
今後の分かれ目
- 月次の営業収益が過去最高を更新し続け、取引高が前年を上回ったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし相場の荒れ具合による一時的な押し上げかを確認する。
- スプレッドの引き下げ競争が再燃し、営業利益率が25%を割ったら
- やや悲観側に重みを移す。単価の下落が構造化する兆候。
- レバレッジの上限が引き下げられたら
- 悲観側の確率を上げる。取引高の縮小が避けられない。
- 配当性向や自社株買いを引き上げると会社が表明したら
- 自己資本の積み上がりが止まり、ROEの下落が緩む。中立の倍率の確度が上がる。
- 他社が株式の取得を表明したら
- TOBの可能性を含めて見直す。ただし本質価値を基準にし、買収の期待で上げない。
- 急な為替の変動で、カバー取引の大きな損失が出たら
- 悲観側へ重みを移す。リスク管理の体制を確認する。
見ておくもの
- 月次の営業収益・顧客口座数・外国為替取引高・顧客預り証拠金
- 店頭FX業界全体の取引高と主要業者のシェア
- スプレッド水準と競合の値下げ
- レバレッジなど規制の動き
- 配当性向と自社株買いの水準、自己資本の積み上がり
倍率と資本コストの決め方
取引高(実質)×取引高当たりの収益率で積み、収益率はスプレッドの競争で決まる率なので、物価の1.34倍を上限として1.25倍に抑えた。営業利益率は過去12年の山(2024年3月期の39.7%)以下で、中立は直近の29%より少し低い28%に置いた。本社費は物価で増やした。純利益は営業利益の0.67倍(過去の中央値)。資本コストは基本7.5%にquality +1.5%を足した9.0%。金融の事業の借金は証拠金の運用に使う仕入れの性質なので、借換えの利払いの式は当てはめていない。弱い堀で、RONICはkを超える分の3分の1。ROEがk以下の中立〜やや楽観は、PERの上限1÷kの72〜88%に置いた。今の株価やPER(約11倍)は見ていない。自己資本は、今の217億円に純利益の合計から還元の合計を引いた流れで置き、利益をためるほどROEが下がる計算を受け入れた。悲観は赤字で、顧客の証拠金は分別管理され、自己資本も規制で拘束されるため、売れる資産の税後を床にした。新リース会計の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した(決まり v2)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。