結論
イー・ギャランティは、会社どうしの売掛金に保証をつける会社だ。取引先が倒産して代金が入らなくなった時、その損失を肩代わりする。見返りに、売り手から保証料を受け取る。引き受けたリスクの大半は、ファンドや金融機関に移す。保証残高は 9 千億円を超え、伊藤忠商事が筆頭株主に残っている。
筆者の結論は「割高」だ。事業そのものは良い。営業利益率は 47%、資本は軽く、利益の大半を株主に返す。それでも今の値段は、これらの良さを先取りしすぎている。
理由は、残高の伸びと売上の伸びが食い違っているからだ。残高は前期に 10% 増えたが、売上は 8% の増加だった。直近の四半期は、残高が 10% 増えて売上は 2% しか増えていない。保証料率が下がっている。
中立の筋書きで、10 年後の利益は今の 5 割増しにとどまる。成長の中身は、残高の積み上げから料率の下落を引いた分だ。悲観の筋書きでは、不況で引き受け先のファンドが細り、利益は 4 割弱まで縮む。株主に還元する利益は大きいが、それだけで今の値段を支えるのは難しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業」だが、「安い会社」ではない。
事業の経済性は申し分ない。工場も在庫もなく、成長に必要な投資は小さい。利益の大半を配当と自社株買いで返せる。株主が自由に使えるお金、つまりオーナー利益が、利益とほぼ同じ大きさになる。
一方で、バリュー投資家が見るのは、利益の裏にある約束だ。同社は売掛金の保証を引き受ける。景気が悪くなれば、取引先の倒産が相次ぐ。大半のリスクは移してあるが、自社が抱える 1,467 億円は、自己資本の 7 倍に当たる。この抱え込みが、小さな資本の会社にとっての急所だ。
値段の面では、今の PER は 22 倍ほどだ。10 年の中立で、利益は 5 割増しにとどまる。残高が伸びても、料率の下落で利幅が薄くなる。成長と安定の質を考えると、この水準は先走りだと筆者は見る。楽観の筋書きでようやく今の値段に追いつく程度で、安全域は取れない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。会社が取引先に商品を売ると、代金は後から入る。この売掛金が回収できなくなるリスクを、同社が引き受ける。売り手は保証料を払い、取引先が倒産しても代金を受け取れる。
保証の形は 2 つある。1 つは包括保証で、10 社ほどの売掛金をまとめて引き受ける。もう 1 つは個別保証で、1 社ごとに引き受ける。料金は売上高に応じて決まる方式と、保証の限度額に応じて決まる方式がある。契約は原則 1 年で、更新が続く。ストック型の収益で、更新率の高さが利益の安定を支える。
同社は引き受けたリスクを自分で抱え込まない。匿名組合を通じて、ファンドや金融機関へ移す。保証残高 9,113 億円のうち、自社グループが抱えるのは 1,467 億円、約 16% だ。売上は保証料、原価はリスクを移す先への支払い。その差が利益になる。
販路は地方銀行が中心で、信用金庫、商社、税理士・会計事務所にも広がる。2026 年 1 月には、弥生が会計ソフトの利用者向けに同社の保証を案内し始めた。もう 1 つの柱が金融法人向けの RMS だ。金融機関が持つ立替払い債権や売掛債権の信用リスクを受け、運用商品に仕立てて売る。営業拠点は東京と全国の支店で、従業員は約 190 人、平均年齢は 31 歳と若い。
優良さと弱いところ
同社の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、リスクを広く分けて売る仕組みにある。引き受けたリスクを多くの投資家に分散して移すため、保証できる相手の範囲と限度額が広い。自分では 16% しか持たないので、資本は小さくて済む。営業利益率が 47%、ROE が 18% になるのは、この軽さのおかげだ。
利益の質は安定している。経常利益の目標は、上場以来 20 期連続で達成した。原価は複数年の保証履行の実績で決まるため、1 年の突発的な損失が原価に跳ねにくい。景気が悪化した時は、保証料に転嫁する方針を掲げる。
弱みは 3 つある。第 1 に、知名度と信用力は、大手金融機関系や損保に劣る。第 2 に、保証料率が下がっている。営業利益率は 2024 年 3 月期の 53% から 47% へ落ちた。第 3 に、事業の土台がリスクを移す先の機嫌に左右される。ファンドが引き受けを渋れば、移転のコストは跳ね上がる。
人についての事実では、代表取締役社長が株式の 7.1% を持つ。大株主のデータによる。経営陣が株主として会社の利益を共有している点は、安心材料だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
会社間の取引で生じる信用リスクの受け皿は、約 219 兆円の市場だと同社は見ている。同社のシェアは 1% 程度で、残高は 9 千億円規模だ。伸びしろは大きいが、競合も多い。
競争相手は 2 つある。1 つは大手金融機関系のファクタリング会社が出す保証ファクタリング。もう 1 つは損害保険会社の取引信用保険だ。どちらも知名度と信用力で同社に勝る。同社は、保証できる債権の範囲が広い点と、限度額の幅で差をつける。新規参入も多い。
需要は企業の取引量と倒産の動きで決まる。倒産件数は増える傾向にあり、直近の四半期も前年より 6.6% 増えた。倒産が増えると、保証の需要が高まる一方、保証履行も増える。同社は価格に転嫁する力で、この両面をこなす構えだ。
人口の減る日本でも、会社間の取引量は実質でほぼ横ばいだ。同社の残高が伸びる理由は、市場そのものの拡大ではない。保証を使う会社が増える、つまり使われ方の広がりが残高を押し上げる。地方銀行の提携、会計ソフト経由の中小企業向けの販売、税理士ネットワークがその入口だ。金利の上昇は、同社にはおおむね追い風になる。手元の現金の利息が増える。
資本政策と M&A
還元は手厚い。配当性向 100% を目安とし、2028 年 3 月期末までに累計 100 億円の自社株買いを行う方針だ。2026 年 3 月期はすでに 60 億円を実施した。自己資本が 242 億円から 202 億円に縮み、ROE は 14% 台から 17% 台へ上がった。
株主構成は特徴的だ。伊藤忠商事が 14.2% を持つ筆頭株主で、設立もこのグループの子会社だった。社長は 7.1% を保有する。外国の機関投資家の保有も大きい。親会社が連結するほどの持分ではなく、親子上場の弊害は小さい。
買収は目立たない。中期計画「Accelerate2028」は、提携の拡大、審査の自動化、保証対象債権の広がり、周辺事業への進出を掲げる。大型買収は想定していない。アールジー保証という子会社は、清算の手続き中だ。
純現金は 87 億円、時価総額の 1 割ほどだ。ただ、この現金には前受の保証料や保証履行の備えが含まれる。TOB(公開買付け)の可能性を示す材料は、今のところ見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
保証残高は前期に 10% 増え、直近の四半期も 9.9% 増えた。会社間の信用リスクの市場は 219 兆円ある。同社のシェアは 1% 程度で、伸びしろは大きい。
同社の仕組みは強い。リスクの大半を投資家に移すため、小さな資本で大きな残高を支えられる。営業利益率は 47%、ROE は 17% を超える。2027 年 3 月期の会社予想は ROE 19% だ。利益の目標は 20 期連続で達成した。
中期計画の「Accelerate2028」は、提携の拡大と審査の自動化を進める。地方銀行に加え、税理士や会計事務所の紹介網に代理権を持たせる。会計ソフトの弥生が 2026 年 1 月に保証の案内を始めたのは、小規模事業者の入口が開いた証拠だ。審査を自動化すれば、小口でも採算が取れる。
還元も厚い。配当性向 100% を目安にし、3 年で 100 億円の自社株買いを行う。景気が悪化して倒産が増えれば、保証の需要が高まる。物価の上昇は取引額を押し上げ、保証の対象も膨らむ。大半のリスクは移してあるので、損失は限られる。
慎重な見方
売上の伸びが残高の伸びに追いつかない。直近の四半期は、残高が 10% 増えたのに、売上は 2% しか増えていない。保証料率が下がっている。残高を増やしても、利益が増えない。
営業利益率は 2024 年 3 月期の 53% から 47% に落ちた。会社の予想でも、2028 年 3 月期は 45% まで下がる。損保の取引信用保険や銀行系のファクタリング会社は、知名度と信用力で上回る。同社は料率で勝負するしかない。
事業の土台は、リスクを移す先に頼る。ファンドや金融機関が引き受けを渋れば、移転のコストが跳ね上がる。保証料に転嫁できる保証はない。しかも自社が抱えるリスクは 1,467 億円で、自己資本の 7 倍だ。不況で倒産が重なると、想定を超える保証履行が起きかねない。
株主構成にも注意が要る。伊藤忠商事が 14% を持つ。売却に動けば、需給が崩れる。資本は軽いが、薄い。今の PER 22 倍は、この脆さに見合う値段ではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと筆者は考える。成長の鈍りと割高さが、同時に重なっている。強気の見方が掲げる残高の伸びは事実だが、売上に回る分は料率の下落に削られる。10 年後の利益は、中立で今の 5 割増しにとどまる。確率は中立と、やや悲観・悲観に厚く置いた。やや悲観を 22%、悲観を 12% とした。保証は、不況と同時にリスクが膨らむ約束だからだ。楽観・やや楽観は合わせて 34% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,782 円793 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 854 円380 億円)。 今の値に割り戻すと 1,356 円603 億円、今との差 −24.2%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,294 円1,466 億円 | 1,092 円486 億円 | +145.2% | +9.4% | 439 円195 億円 |
| やや楽観 | 24% | 2,510 円1,117 億円 | 980 円436 億円 | +95.1% | +6.9% | 838 円373 億円 |
| 中立 | 32% | 1,982 円882 億円 | 908 円404 億円 | +61.6% | +4.9% | 925 円411 億円 |
| やや悲観 | 22% | 840 円374 億円 | 735 円327 億円 | −11.9% | −1.3% | 347 円154 億円 |
| 悲観 | 12% | 256 円114 億円 | 474 円211 億円 | −59.2% | −8.6% | 88 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,782 円793 億円 | 854 円380 億円 | +47.3% | +3.9% | 2,635 円1,172 億円 |
今の株価時価総額 1,789 円796 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 独立系の保証が中小企業の標準になる 利益 86 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 3,294 円1,466 億円
10 年かけて、売掛金保証が中小企業の標準装備になる。地方銀行・信用金庫・税理士の紹介網が広がり、会計ソフトの利用者にも届く。審査の自動化で、小口の契約を安く大量にさばけるようになる。残高は実質で 1.7 倍、毎年 5% 超のペースで伸び続ける。保証料率は下がり方が緩み、物価を少し下回る程度で済む。営業利益率は 50% を保つ。リスクを移す先のファンドも十分に集まる。自己資本は配当後も積み上がるが、事業の ROE は 20% を大きく超える。独立系という立場が、そのまま『中立の保証の受け皿』という強みに育つ 10 年だ。
- 売掛債権保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 15,492(実質の保証債務残高(億円・今の値段のまま))× 価格 1.6%(残高 1 億円あたりの売上(億円・名目)=残高比 1.21% × 物価の倍率 × 料率の変化)→ 売上 244 億円・営業利益 122 億円。残高の実質 1.70 倍 × 価格の倍率 1.30、営業利益率 50%
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.14 倍、時価総額 1,466 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:残高が実質で 1.7 倍に伸びる筋書き。提携の拡大・審査の自動化・会計ソフト経由の販路が全部うまく回る必要があり、1 割に置く。
やや楽観 24% 提携が広がり、安定成長が続く 利益 67 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 2,510 円1,117 億円
提携先の拡大がじわじわ続き、残高は実質で 1.45 倍になる。中期計画が掲げる専門家ネットワークへの代理権の付与が効き、小口の新規契約が増える。保証料率は下がり続けるが、下がり方は年 0.7% 程度に収まる。営業利益率は 47% 台を守る。リスクを移す先は確保でき、保証履行の費用は平時の水準で推移する。配当性向は高いまま、自己資本は残高の伸びに合わせて少しずつ増える。ROE は 20% 台前半を保つ。上場以来、目標の利益を 20 期連続で達成してきた安定感が、そのまま続く筋書きだ。大きな買収はせず、自社株買いと配当で資本を回す。残高の伸びは物価と同じ速さで、料率の下落は続くが、経営は残高の積み上げで補う。
- 売掛債権保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 13,214(実質の保証債務残高(億円・今の値段のまま))× 価格 1.5%(残高 1 億円あたりの売上(億円・名目)=残高比 1.21% × 物価の倍率 × 料率の変化)→ 売上 199 億円・営業利益 95 億円。残高の実質 1.45 倍 × 価格の倍率 1.246、営業利益率 47.5%
倍率:事業の純利益 67 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.74 倍、時価総額 1,117 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足もとの勢いが落ちながらも続く筋書き。残高の伸びは今の 10% から実質 4% 弱へ落ち着く。中立の次に重くする。
中立 32% 中立:残高は伸びるが、料率の下落が利幅を削る 利益 54 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 1,982 円882 億円
残高は伸びるが、料率の下落がその分を食う。実質の残高は 1.3 倍、年 2.7% の伸びだ。保証料率は年 1% 下がり、物価の上昇を打ち消す。営業利益率は 47% から 44% へ下がる。損保や銀行系ファクタリングとの競り合いで、料率を守りきれない。審査と回収の費用も人件費の上昇で膨らむ。それでも保証履行はリスクを移した先が大半を負うため、損失は限られる。自己資本は残高の伸びに合わせて 245 億円ほどになり、ROE は 22% 前後。特別な成長はないが、軽い資本で稼ぐ堅実な会社として続く 10 年だ。
- 売掛債権保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 11,847(実質の保証債務残高(億円・今の値段のまま))× 価格 1.5%(残高 1 億円あたりの売上(億円・名目)=残高比 1.21% × 物価の倍率 × 料率の変化)→ 売上 173 億円・営業利益 76 億円。残高の実質 1.30 倍 × 価格の倍率 1.206(物価 1.34 倍 × 料率 0.90 倍)、営業利益率 44%
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.36 倍、時価総額 882 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:残高は伸びるが料率は下がり続け、利益は今の 5 割増しにとどまる。最も重い筋書き。
やや悲観 22% 料率競争が強まり、利益率が落ちる 利益 35 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 840 円374 億円
損保の取引信用保険や銀行系の保証ファクタリングが、料率で攻めてくる。同社は知名度と信用力で劣るため、値下げで対抗するしかなくなる。保証料率は年 1.7% 下がり、物価の上昇を大きく下回る。残高は実質でほぼ横ばいの 1.05 倍。営業利益率は 38% まで落ちる。景気が冷え、倒産が増える年が重なると、料率を上げて転嫁する力も弱い。リスクを移す先の金融機関が条件を厳しくし、原価も上がる。利益は 10 年でほとんど増えない。ROE は 15% 台に下がるが、資本コストは上回る。配当は維持するが、自社株買いは縮む。
- 売掛債権保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 9,569(実質の保証債務残高(億円・今の値段のまま))× 価格 1.4%(残高 1 億円あたりの売上(億円・名目)=残高比 1.21% × 物価の倍率 × 料率の変化)→ 売上 130 億円・営業利益 50 億円。残高の実質 1.05 倍 × 価格の倍率 1.126(物価 1.34 倍 × 料率 0.84 倍)、営業利益率 38%
倍率:事業の ROE 15.3%、k 8.5%、残る割合 1/2 から RONIC 11.9%。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、g 4.0% で上限 14.7 倍。事業の ROE 15% が k を上回る。料率競争で利益の質は落ちる。上限の 7 割強に置く。(上限の約 72% の 10.6 倍)
確率:料率競争の激化は、すでに足もとで見えている。残高が止まり、利益率も落ちる筋書きを 2 割強に置く。
悲観 12% リスクの移転先が細り、保証が回らなくなる 利益 14 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 256 円114 億円
不況が重なり、倒産が急増する。保証履行が続き、リスクを移していたファンドや金融機関が、引き受けの条件を厳しくする。移転のコストが跳ね上がり、保証料への転嫁も追いつかない。大手が参入して料率は崩れ、残高は実質で 25% 減る。保証料率は年 3% 近く下がる。営業利益率は 25% まで落ちる。自社が抱えるリスクは残高の 16% あり、手元の資本はその損失に備えて温存され、還元は細る。会社は審査を絞り、新規契約を絞る。ROE は 6% を割る。堀といえるものは残らず、小さな保証会社になる。提携先の銀行や税理士は、料率の安い他社へ契約を移す。更新率は 90% を割り、既存の契約も細っていく。大株主は持分を手放し、需給も悪化する。成長の物語は消え、市場は同社を、利益の読みにくい小さな金融会社として見るようになる。
- 売掛債権保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 6,835(実質の保証債務残高(億円・今の値段のまま))× 価格 1.2%(残高 1 億円あたりの売上(億円・名目)=残高比 1.21% × 物価の倍率 × 料率の変化)→ 売上 80 億円・営業利益 20 億円。残高の実質 0.75 倍 × 価格の倍率 0.965(物価 1.34 倍 × 料率 0.72 倍)、営業利益率 25%
倍率:事業の ROE 5.8% が k 8.5% 以下なので PER は 1÷k=11.8 倍まで。事業の ROE が k を下回るので、PER は 1÷k=11.8 倍まで。稼ぐ力の 7 割に置く。純現金は前受の保証料・保証履行への備え・匿名組合の外部出資分で埋まっており、売れる資産としては数えない。(上限の約 70% の 8.2 倍)
確率:リスク移転先が細る構造的な負け筋。保証の引き受けが小口・無担保のため、不況と同時に起きやすい。1 割強に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
売掛債権保証(保証債務残高に対する保証料収益)
会社どうしの売掛金に保証をつけ、保証料を受け取る事業。引き受けたリスクの大半は匿名組合を通じてファンドや金融機関へ移す。連結の売上のすべて。
| 数量実質の保証債務残高(億円・今の値段のまま) | 価格残高 1 億円あたりの売上(億円・名目)=残高比 1.21% × 物価の倍率 × 料率の変化 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,113 | 1.2% | 110 | 52 |
| 10 年後 中立 | 11,847 | 1.5% | 173 | 76 |
取り方:数量は実質の保証債務残高 9,113 億円(2026/03 末。有報)。価格は売上 110.3 億円 ÷ 残高 9,113 億円 = 残高比 1.21%。市場は会社資料で約 219 兆円、シェアは約 1%。物価 3% の分は価格の倍率に入れ、数量には混ぜない(10 年 1.34 倍)。直近は料率が年 2% 前後下がっているので、10 年の筋書きでは料率の変化も価格に載せる。営業利益 52.0 億円は利益率 47.2%。純利益は営業利益の約 0.69 倍で出す。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
リスクを移す先が細る
同社は引き受けたリスクの 8 割以上を、ファンドや金融機関に移す。不況で投資家が引き受けを渋れば、移転のコストが跳ね上がる。保証料への転嫁が追いつかなければ、利益は急に薄くなる。
保証履行の急増
倒産件数は増える傾向にある。大きな倒産が続けば、自社が抱える 1,467 億円のリスクから損失が出る。この額は自己資本の 7 倍にあたる。移転したリスクが戻ってくる可能性も残る。
保証料率の下落
直近の四半期は残高が 10% 増えたのに、売上は 2% しか増えていない。料率が年 2% 前後下がっている。損保や銀行系の保証ファクタリングとの競争が続き、1 年契約の間は料率が固定されるため、下落の影響は後から出る。
大手の競争と新規参入
損保の取引信用保険と、大手金融機関系のファクタリング会社は、知名度と信用力で勝る。会計ソフトやフィンテックの参入も増えている。同社は料率を下げて対抗せざるをえない場面が増える。
大株主の売却
伊藤忠商事が 14.2% を持ち、外国の機関投資家も大きく保有する。大株主が売れば、需給が悪化して値が崩れる。反対に、買い増しや TOB が起きれば値は上がる。どちらも読みにくい。
少人数の運営
従業員は約 190 人で、若い組織だ。審査と回収は人と仕組みに頼る。社長が 7.1% を持つ。人の入れ替わりや審査の誤りが、利益に響きやすい。
今後の分かれ目
- 保証料率の下落が止まり、売上の伸びが残高の伸びに追いつく
- 10 年のやや楽観・楽観の確率を上げる。営業利益率が 47% 前後を保ち、利益の伸びが残高並みになる。
- リスクを移す先のファンドが引き受けを絞り、移転コストが上がる
- 10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。原価が上がり、利益率が 40% を割る。
- 倒産件数が大きく増え、保証履行が自社保有分に及ぶ
- 悲観の確率を上げる。自己資本の厚みを疑い、倍率も上限の 7 割より低く置く。
- 会計ソフトや税理士経由の販路が、残高の伸びに目に見えて効く
- 10 年の楽観側の確率を上げる。小口の新規契約が増え、残高の実質の伸びが 5% を超える。
- 損保や銀行系が料率で攻め、更新率が 90% を割る
- 10 年のやや悲観の確率を上げる。料率の下落が速まり、利益率が下がる。
- 伊藤忠商事が持分を売却または買い増す
- 需給の変化として別に見る。売却なら下押し、買い増し・TOB なら上押しの材料になる。
見ておくもの
- 保証債務残高と売上の伸びの差(保証料率の動き)
- 更新率(90% 超を維持できるか)と新規契約の増え方
- 保証履行の件数・金額と、自社が抱えるリスクの額
- リスクの移転先(匿名組合・金融機関)の引き受け条件
- 自社株買いの進み方(累計 100 億円)と ROE の水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER 22 倍を見ずに、k 8.5%・g 4.0% から出した正当化 PER の 7〜8 割に置いた。中立の PER は 12 倍台で、今よりかなり低い。これは、利益の伸びが残高より遅い(料率の下落)のに、今の値段が成長を先に織り込んでいるという見方による。資本コストは全国保証の住宅ローン保証より高く(k 8.5% と 7.25%)、無担保で小口の売掛金を扱い、倒産の循環にさらされ、会社が小さいため。純現金は前受の保証料・保証履行の備え・匿名組合の外部出資分を含み、分けなかった。借りている物件は事務所のみで、2028/03 期からの新リース会計基準の影響は小さい。数字は今と同じ形(家賃込みの営業費用)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.71→17.14 倍・やや楽観 PER 13.05→16.74 倍・中立 PER 12.27→16.36 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。