結論
ネットプロテクションズは、ネット通販の「後払い」を 20 年以上手がけてきた決済会社だ。商品が届いてから払えて、未払いは同社が全額を引き受ける。この与信の技術を、企業間取引の掛け払いと、分割払いの atone に広げている。筆者の結論は、事業の筋は悪くないが、取扱高の伸びほど利益が伸びない構造があり、今の値段はそれを織り込んだ水準に近い、というものだ。
稼ぎの源は単純だ。取引が 1 件成立するたびに、加盟店から手数料が入る。だから取扱高が増えれば売上は増える。2026 年 3 月期の取扱高は 7,643 億円で、前の期より 19% 増えた。営業利益も 35% 増の 28 億円と、2 年連続で最高を更新した。
ただ、利益の質には注意が要る。伸びているのは手数料率の低い大型の取引先ばかりだ。掛け払いの手数料率は 2 年で 1.96% から 1.67% に下がった。後払いも、決済大手との競争と低料率の商品の構成比の上昇で、取扱高あたりの収益が薄くなっている。
中立の筋書きでは、10 年後に営業利益が今の 3.5 倍の 100 億円になる。会社の中長期目標と同じ水準だ。それでも、確率で重みをつけた本質価値は今の時価総額と大きくは違わない。安く放置された株ではなく、成長がほぼ正しく値付けされた株というのが筆者の見方だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を長く持ちたいかと問われれば、答えは「条件付き」だ。
事業の本質は、与信を売る商売にある。他人の信用を見極めて、未払いの危険を引き受け、手数料をもらう。うまくいけば、設備投資がほとんど要らず、利益の大半を株主に回せる。この点は魅力だ。
一方で、10 年先に堀が広がっているかは疑わしい。取扱高は増えても、取扱高あたりの手数料が落ちている。決済は大手が束ねる流れにあり、後払いが独立した事業であり続ける保証はない。利益の質は、まだ安定していない。
株主のものになる利益を考えると、運転資金の増加は借入で賄えるが、金利が上がる分だけ負担になる。経営が資本をどう配分するかも、まだ見えない。無配で、自社株買いの方針も示されていない。
安全域は薄い。悲観の筋書きでは、今の値段の 3 割以下まで下がる。楽観で 5 倍ほどだ。上と下の幅が大きく、確率で重みづけした値は今の値段の近辺に収まる。安く放置された会社ではなく、見通しが適正に値付けされた会社だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 3 つのサービスだ。
1 つ目は「NP後払い」。通販サイトの買い物で、商品が届いてから請求書やコンビニで払う仕組みだ。クレジットカードを持たない人や、カード情報を入れたくない人が使う。同社は加盟店に代金を先に払い、消費者から回収する。未払いの危険は同社が 100% 引き受ける。この見返りが手数料だ。ここには、低料率の白地型の「NP後払い air」も含まれる。取扱高は約 3,600 億円だ。
2 つ目が「NP掛け払い」。企業間の取引では、売り手が代金を後で受け取る掛け売りが普通だ。同社は買い手の与信、請求書の発行、入金の確認、未払いの保証までを代行する。2026 年 3 月期の取扱高は 3,438 億円で、前の期から 38.5% 伸びた。2025 年 5 月に大型の取引先が稼働した影響が大きい。
3 つ目が「atone」。会員がアプリで今買って後で払う、いわゆる BNPL だ。取扱高は 620 億円と小さいが、55% 伸びている。非物販のネット決済にも広げており、これから会員の獲得に本腰を入れる段階だ。
費用の中心は与信とシステム、そして販売管理費だ。全社の売上総利益は 120 億円、営業利益は 28 億円。事業の形は金融業だが、営業債権 437 億円の資金は加盟店への支払い待ちの営業債務などで多くを賄い、有利子負債は 60 億円ほどにとどまる。2024 年 3 月期までは営業赤字が続き、2025 年に黒字化した。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできにくい強みは、あるにはあるが、薄く狭い。
強みは 2 つある。1 つ目は与信のデータだ。20 年分の後払いの履歴が、延滞や未払いの予測を支える。未払い率を 0.5% 台まで下げる目標を掲げ、原価の改善として表れている。2 つ目は取引先の網だ。決済の窓口に組み込まれ、一度入ると切り替えにくい。掛け払いでは、JCB と三井住友カードという大手との提携が、新しい取引先の入口になる。
弱みは、値段を自分で決める力が乏しい点だ。後払いは Paidy や GMO ペイメントサービスなど、決済大手と同じ加盟店を取り合う。掛け払いの手数料率も、大型の取引先ほど低い。取扱高は伸びるのに、取扱高あたりの収益は落ちている。これが一番の懸念だ。
資本の効率はこれからだ。ROE は 2026 年 3 月期で 8% 台。過去 7 年の中央値は 1% 台と低い。赤字の年が 3 回あり、2021 年には増資もした。新しい事業や海外への投資で体力を削った経緯がある。
経営は、組織の運営に独自の工夫がある。管理職を全廃したと本にまとめている。一方、資本の戻し方は決まっていない。無配のままだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
後払いの市場は、国内でおよそ 1.5 兆円とされ、2028 年度には 2.8 兆円まで広がる予測がある。数字は調査会社ごとに差が大きいが、現金やカードから後払いへの切り替えが進む方向は一致している。
競争の形は領域ごとに違う。通販の後払いでは、PayPal 傘下の Paidy、GMO ペイメントサービス、メルペイの後払いなどが並ぶ。同社は老舗で加盟店数が多いが、料率の引き下げ圧力は強い。一部の通販事業者は自社で後払いを運営しており、それを同社に置き換える営業を続けている。
企業間の掛け払いは、さらに競争が増えている。Paid、マネーフォワードケッサイ、クロネコ掛け払い、掛払い.com などだ。インボイス制度への対応や請求書の電子化が追い風で、企業の経理が決済代行に任せる流れが強まっている。同社は取扱高でシェア首位を自称している。
この領域で成長を決めるのは、大手との連携だ。三井住友カードとは 2026 年 7 月に提供を始めた。JCB とも 2026 年 2 月に基本合意した。銀行や決済網が自社の顧客に掛け払いを売るなら、同社は裏方としての地位を得る。ただし、大手が自前で作るなら、裏方の立場が消える危険もある。
規制の面では、割賦販売法の改正や消費者団体の動きに注意したい。後払いは個人の与信を伴うため、過剰与信の議論が起きれば、手数料や延滞の収益が削られる。会社は消費者機構日本の訴訟について、影響は軽微と説明している。
資本政策と M&A
資本の使い方は、成長を優先してきた。配当は出しておらず、株主還元の方針は「フリーキャッシュフローと成長に必要な資金、調達の状況を見て機動的に行う」というものだ。数字の約束はない。
株主の顔ぶれには意味がある。リコーリースが 10.9% を政策投資として持つ。JCB は 8.8% を持ち、2021 年の第三者割当増資で入り、2026 年には掛け払いの提携も結んだ。アドバンテッジパートナーズのファンドも 1 割ほど持つとされる。売却が出やすい株主がいることは、株価の上値を抑える要素だ。
M&A は、これまで自社の事業の拡大が中心で、大型の買収はない。台湾の事業は子会社へ譲渡し、整理した。ベトナムに子会社を作る動きと、貸付事業のための新会社も作っている。買収される側になる可能性も否定できない。大手の決済会社や銀行にとって、与信の技術は魅力だからだ。kabufu の試算では、10 年以内に TOB や買収が起きる確率は約 24% だ。
資金調達は借入が中心で、分割払いの拡大に伴って借入は増える見通しだ。自己資本比率は 25%。借入の金利が上がる局面で、分割払いの利ざやが薄くならないかが焦点になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
掛け払いと atone という 2 つの新しい柱が、利益の構造を変える局面にある。強気の見方はこうだ。
第 1 に、すでに結果が出ている。営業利益は 2 年連続で最高を更新し、前の中期計画の 2027 年 3 月期の目標を 2 年前倒しで達成した。次の 3 か年計画では、取扱高 1.4 兆円、営業利益 60 億円を掲げ、中長期では取扱高 2 兆円、営業利益 100 億円を目指す。
第 2 に、掛け払いの取引先の網が広がる。三井住友カードと JCB という大手が、自社の顧客に同社の仕組みを売る。同社は営業の人員を割かずに、大型の取引先を取り込める。取扱高は 2 年で 1.8 倍に増えた。
第 3 に、手数料率が下がるのは、大型の取引先が増える構造の裏返しだ。販売管理費は取扱高の 1.2% 台まで下がり、規模の利益が出る。1 件あたりの収益が薄くなっても、利益は増える。
第 4 に、atone は分割払いで手数料を取り始め、赤字から抜ける。会員が増えれば、使われるたびに手数料が入る。
最後に、現金が厚く、営業キャッシュフローは 90 億円ある。成長のための資金には困らない。
慎重な見方
取扱高の伸びは、利益の伸びを保証しない。慎重な見方はこうだ。
まず、手数料率が下がり続けている。掛け払いの率は 2 年で 1.96% から 1.67% に落ちた。後払いは、競合と低料率の商品の比率上昇で、営業収益が前年を下回った四半期がある。取扱高が 19% 増えても、営業収益は 9.5% しか増えていない。
次に、競合が大きい。Paidy は PayPal の資本を持ち、GMO ペイメントサービスは決済網を握る。加盟店が後払いを標準機能として買うなら、独立系の同社は値下げに応じるしかない。
第 3 に、株主構成だ。ファンドと事業会社が合わせて 3 割近く持つ。売却の圧力は上値を抑える。
第 4 に、金融の性質だ。分割払いの拡大には、資金調達が要る。短期金利が 2% まで上がれば、利ざやが薄くなる。景気が悪化すれば、未払い率が跳ねる。掛け払いでは、直近でも一時的に回収が悪化した。
最後に、規制だ。後払いと分割払いは個人の与信に近く、過剰与信の議論や手数料の規制が起きれば、収益構造が一気に変わる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の中心は、実績にある。計画の前倒し達成と、掛け払いの伸びは数字の裏付けがある。中立の利益は会社の中長期目標の水準に置き、確率も中立から上に厚めに配った。
ただ、慎重な見方の指摘は的を射ている。料率の下落は止まっておらず、競合も大きい。10 年の悲観を 14% とやや厚くし、倍率も 11 倍と控えめにした。確率の重心は中立に置いたまま、悲観の側へ少し寄せている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 748 円744 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 132 円131 億円)。 今の値に割り戻すと 418 円417 億円、今との差 +12.8%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,909 円1,900 億円 | 333 円331 億円 | +504.1% | +19.7% | 179 円178 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,335 円1,328 億円 | 226 円225 億円 | +320.7% | +15.5% | 281 円280 億円 |
| 中立 | 36% | 843 円839 億円 | 144 円143 億円 | +166.0% | +10.3% | 355 円354 億円 |
| やや悲観 | 24% | 154 円153 億円 | 43 円43 億円 | −46.9% | −6.1% | 47 円47 億円 |
| 悲観 | 14% | 101 円101 億円 | 19 円19 億円 | −67.6% | −10.6% | 17 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 748 円744 億円 | 132 円131 億円 | +137.1% | +9.0% | 880 円876 億円 |
今の株価時価総額 371 円369 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:掛け払いと atone が伸び、金融の与信会社として一段上の評価を受ける 利益 120 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 1,909 円1,900 億円
掛け払いが日本の企業間取引の標準的な決済手段の一つになる。三井住友カードや JCB の取引先網に乗り、大型の取引先を次々と取り込む。取扱高は実質で 3.5 倍に増え、手数料率は薄まっても利益率は 28% まで上がる。atone は決済手段の一つとして定着し、会員の分割払いと非物販のネット決済で取扱高が 8 倍になる。後払いは通販の自社後払いを置き換えて、料率の下がりを数量で吸収する。営業利益は 190 億円台に乗り、ROE は 18% を超える。会社が掲げる中長期の営業利益 100 億円を、はるかに超える姿だ。資本は戻され、配当と自社株買いが定着する。ただ、ここまで運ぶには、競合する大手の追撃と与信の失敗をすべてかわす必要があり、起きる確率は低い。
- NP後払い他(B2C 後払い):数量 5,378(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.06(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 309 億円・営業利益 68 億円。数量 1.5 倍・営業利益率 22%
- NP掛け払い(B2B 後払い):数量 12,033(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.02(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 259 億円・営業利益 73 億円。数量 3.5 倍・営業利益率 28%
- atone(B2C 分割・BNPL):数量 4,960(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.07(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 336 億円・営業利益 67 億円。数量 8 倍・営業利益率 20%
倍率:事業の純利益 120 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.87 倍、時価総額 1,900 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:掛け払いの大型取引先と atone の会員がともに計画を大きく超える組み合わせは少なく、8% にとどめた。
やや楽観 18% やや楽観:会社の計画どおり、掛け払いと atone が利益の柱に育つ 利益 89 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 1,335 円1,328 億円
会社の 3 か年計画がほぼ実現し、その勢いが 10 年続く。掛け払いは取扱高が実質で 3 倍、atone は 6.5 倍になる。後払いは、競争で料率が下がる分を、通販の自社後払いの置き換えで取り戻す。営業利益は 140 億円台、ROE は 16% 前後になる。atone は 12 回分割の手数料を取り始めて収益化が進み、赤字から利益を出す側に移る。2 つの新しい柱が後払いの穏やかな減速を埋め、利益の質が上がる。還元は利益の 4 割ほどで、残りは成長に回る。会社は 2 年前倒しで前の計画を達成した実績があり、この筋書きは計画の延長として無理がない。資金調達の金利が上がっても、短期の貸付が中心で料率の見直しが追いつく。
- NP後払い他(B2C 後払い):数量 4,840(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.05(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 264 億円・営業利益 55 億円。数量 1.35 倍・営業利益率 21%
- NP掛け払い(B2B 後払い):数量 10,314(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.02(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 218 億円・営業利益 57 億円。数量 3.0 倍・営業利益率 26%
- atone(B2C 分割・BNPL):数量 4,030(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.07(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 264 億円・営業利益 45 億円。数量 6.5 倍・営業利益率 17%
倍率:事業の純利益 88 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.01 倍、時価総額 1,328 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 3 か年計画がそのまま続く線。計画を前倒しで達成した実績があるため、2 割弱を置いた。
中立 36% 中立:後払いは横ばいの安定、掛け払いと atone で営業利益が 3.5 倍になる 利益 61 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 843 円839 億円
後払いは安定した現金の源泉にとどまり、掛け払いと atone が利益を押し上げる。後払いの取扱高は実質で 1.25 倍と緩やかに増える一方、競合と低料率の白地型(NP後払い air)の比率が上がって、取扱高あたりの収益は 15% 下がる。掛け払いは取扱高が 2.4 倍、atone は 6 倍になる。営業利益は 100 億円、営業利益率は 16% で、会社が示す 3 か年計画(2029 年 3 月期に 60 億円)と中長期目標(営業利益 100 億円)に沿う。ROE は 13% 弱、資本コストを少し超える。還元は利益の 3 割台で、成長投資が優先される。利益の中身が変わり、堀は広がらないが崩れもしない。
- NP後払い他(B2C 後払い):数量 4,481(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.05(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 231 億円・営業利益 43 億円。数量 1.25 倍・料率は 15% 低下・営業利益率 18.5%
- NP掛け払い(B2B 後払い):数量 8,251(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.02(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 170 億円・営業利益 38 億円。数量 2.4 倍・料率 7% 低下・営業利益率 22%
- atone(B2C 分割・BNPL):数量 3,720(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.06(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 239 億円・営業利益 30 億円。数量 6 倍・料率 10% 低下・営業利益率 12.5%
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.85 倍、時価総額 839 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画より少し控えめで、最も起きやすい線。後払いの料率低下と掛け払いの伸びの綱引きで、4 割弱。
やや悲観 24% やや悲観:手数料の値下がりで、取扱高が伸びても利益が増えない 利益 17 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 154 円153 億円
取扱高は伸びるのに、手数料率の下落が利益を食う。後払いは Paidy や GMO など、決済大手との値引き競争で料率が 25% 下がる。掛け払いは大型の取引先が増える代わりに料率が 15% 下がり、未払いも一時的に増える。atone は点数還元の費用が重く、分割払いの手数料を取れるようになっても利益が出ない。営業利益は 30 億円と、今の水準から動かない。ROE は 5% 台で資本コストを下回る。成長のための資金調達は借入に頼り、金利上昇が重い。還元は少額にとどまる。事業は続くが、優良とは言えない。市場は低い倍率を長く付ける。
- NP後払い他(B2C 後払い):数量 3,764(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.05(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 171 億円・営業利益 21 億円。数量 1.05 倍・料率 25% 低下・営業利益率 12%
- NP掛け払い(B2B 後払い):数量 5,845(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.02(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 110 億円・営業利益 15 億円。数量 1.7 倍・料率 15% 低下・営業利益率 14%
- atone(B2C 分割・BNPL):数量 1,860(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.06(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 106 億円・営業利益 4 億円。数量 3 倍・料率 20% 低下・営業利益率 4%
倍率:事業の ROE 約 5% が k 8.5% 以下なので PER の上限は 1÷k の約 11.8 倍。料率の下落で稼ぐ力が資本コストに届かない筋書き。上限の約 75% の 8.8 倍に置く。
確率:取扱高は伸びても料率の下落が利益を打ち消す線。後払いの競争がすでに利益率を下げており、2 割台前半を置いた。
悲観 14% 悲観:大手の決済事業者に押されて手数料が潰れ、普通の小さな決済会社に戻る 利益 3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 101 円101 億円
構造的に負ける。PayPal 傘下の Paidy、クレジットカード会社、銀行系の決済が、後払いを標準機能として抱え込む。加盟店は手数料の低い自社決済へ移り、後払いの料率は 35% 下がる。掛け払いは、請求書の電子化と銀行の決済網に押されて料率が 3 割下がる。atone は規模が育たず、投資を止める。さらに、消費者保護の規制が強まり、延滞手数料や与信の収益が削られる。営業利益はほぼゼロ。もう優良な会社ではなく、BNPL の事業は小さな決済会社に戻る。値段は稼ぐ力ではなく、売掛金と現金から営業債務を引いた資産に近づく。
- NP後払い他(B2C 後払い):数量 2,868(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.04(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 113 億円・営業利益 9 億円。数量 0.8 倍・料率 35% 低下・営業利益率 8%
- NP掛け払い(B2B 後払い):数量 4,126(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.02(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 64 億円・営業利益 6 億円。数量 1.2 倍・料率 30% 低下・営業利益率 10%
- atone(B2C 分割・BNPL):数量 620(取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.05(取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの))→ 売上 33 億円・営業利益 −1 億円。数量 1.6 倍→据え置き 1.0 倍・営業利益率 −4%
倍率:純利益がほぼゼロで PER は使えず、PBR で置く。床は今の自己資本ではなく、売れる資産(下の floor_assets)。構造的に負けた筋書きで、自己資本の約半分を回収できる額に置く。
確率:決済大手の参入・規制・与信の失敗が重なる構造的な負け。単一ジャンルの後払いに依存し、大手が追う市場なので、14% とやや厚めにした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
NP後払い他(B2C 後払い)
通販・EC 向けの後払い。商品が届いてから払う。未払いは会社が全額保証する。NP後払い air などの白地型も含む。
| 数量取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質) | 価格取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,585 | 0.05 | 162 | 38 |
| 10 年後 中立 | 4,481 | 0.05 | 231 | 43 |
取り方:数量は取扱高。全社 7,643 億円から掛け払い 3,438 億円と atone 620 億円を引いた約 3,585 億円。営業収益は全社 252 億円から掛け払い 57 億円と atone の推定 33 億円を引いた 162 億円(推定)。売上総利益 79.5 億円、販管費の配分は推定で、営業利益 37.5 億円とした。 数量は実質・率は物価込み(二重がけなし)。
NP掛け払い(B2B 後払い)
企業間取引の請求書払いを代行する。与信、請求、入金の確認、未払いの保証までを一括で請け負う。
| 数量取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質) | 価格取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,438 | 0.02 | 57 | 7 |
| 10 年後 中立 | 8,251 | 0.02 | 170 | 38 |
取り方:数量は取扱高 3,438 億円(開示)。営業収益は 57 億円(1.67%)、売上総利益 31 億円(開示)。販管費の配分は推定で営業利益 7 億円。 数量は実質・率は物価込み(二重がけなし)。
atone(B2C 分割・BNPL)
ネット決済の分割・後払い。会員向けに今買って後で払う手段を提供し、加盟店から手数料を取る。
| 数量取扱高(GMV・億円・今の値段で測った実質) | 価格取扱高あたりの営業収益の名目の指数(物価 10 年 1.34 倍に、手数料率の変化を掛けたもの) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 620 | 0.05 | 33 | −16 |
| 10 年後 中立 | 3,720 | 0.06 | 239 | 30 |
取り方:数量は取扱高 620 億円(開示)。営業収益 33 億円は売上総利益の残差(約 9 億円)と、分割払いの手数料・加盟店手数料の水準から置いた推定。点数還元と会員獲得費で営業損失 16 億円と推定した(全社 28.5 億円に合うよう配分)。 数量は実質・率は物価込み(二重がけなし)。
リスクと懸念
手数料率の下落が止まらない
掛け払いの率は 2 年で 1.96% から 1.67% に下がった。後払いも低料率の白地型の比率が上がり、取扱高あたりの収益が落ちている。大型の取引先を取るほど率は下がる。取扱高が増えても利益が伸びない局面が、10 年続く危険がある。
決済大手に取り込まれる
Paidy は PayPal、GMO ペイメントサービスは決済網を持つ。クレジットカード会社や銀行系も後払いを標準機能に抱え込みつつある。加盟店が単独の後払いを買わなくなれば、独立系の同社は値下げに応じるか、取引先を失う。
未払い率の悪化(与信の失敗)
未払いは同社が 100% 引き受ける。景気の悪化や不正利用の増加で未払い率が跳ねれば、利益は一気に削られる。掛け払いでは直近でも一時的に回収が悪化した。取引先の倒産が増える局面で、大型の取引先が崩れる危険がある。
規制と消費者団体の動き
後払いと分割払いは個人の与信に近い。割賦販売法の改正、過剰与信の議論、延滞手数料の見直しが進めば、収益構造が変わる。消費者機構日本の訴訟は会社が影響軽微と説明するが、結果次第で手数料や延滞の収益が削られる。
金利の上昇と資金調達
分割払いの拡大には借入が要る。短期金利が 2% に上がると、調達費が先に増える。手数料の見直しが追いつくまで利ざやが薄くなる。自己資本比率は 25% と厚くなく、成長の速度が資金で縛られる。
大株主の売却と atone の赤字
リコーリース、JCB、ファンドが合わせて 3 割近くを持つ。売却が出れば株価の上値を抑える。atone は点数還元と会員獲得費で赤字が続き、収益化が遅れれば全社の利益の伸びが止まる。
今後の分かれ目
- 掛け払いの手数料率が 1.5% を割って下がり続けたら
- 取扱高が伸びても利益が増えない。やや悲観の確率を厚くし、中立の利益を下げる。
- 三井住友カード・JCB 経由の掛け払いの取扱高が計画どおり伸びたら
- 大型の取引先を安く取れる構造が確かめられる。楽観とやや楽観の確率を上げてよい。
- atone が分割払いの手数料を取り始め、営業損失が縮んだら
- 第 3 の柱として収益化が見える。中立の営業利益を上振れさせる。
- 景気が悪化し、後払いの未払い率が 1% に迫ったら
- 1〜2 年は利益が半分以下に落ちる。悲観に近づくが、戻りの速さで見直す。
- 決済大手が後払いを標準機能として加盟店に無料で付けたら
- 独立系の後払いの存在意義が揺らぐ。10 年の悲観が現実味を帯びる。
- 他社から買収の提案が出たら
- 与信の技術と加盟店網の価値が見直される。提案の価格は本質価値に近づく動きになりうる。
見ておくもの
- 掛け払い・後払いの手数料率(取扱高あたりの営業収益)の推移
- 掛け払いの取扱高と、三井住友カード・JCB 経由の比率
- atone の営業損益と、12 回分割の手数料の開始時期
- 後払い・掛け払いの未払い率
- 大株主(リコーリース・ファンド)の売却と株主還元の方針
倍率と資本コストの決め方
今の株価(時価総額約 390 億円)は見ずに、サービス別の取扱高 × 取扱高あたり収益から営業利益 100 億円を先に置き、事業の ROE 約 13% と k 8.5%・g 4% から正当化 PER の上限(約 13.8 倍)を出し、利益の質(黒字化して日が浅い・料率低下)から 8 割の 11 倍に置いた。同領域に当たる信販・カードの物差し(PER 9〜11 倍、k 8.2〜8.8%)と揃えたが、取扱高と収益の関係が違うため、サービス別に積み上げた。会社は IFRS で、リース(IFRS 16)はすでに BS にあり、新リース会計基準で形は変わらない。atone の営業収益と販管費の配分は推定。金融事業の借金は各サービスの利ざやで扱い、純現金の利息は別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→15.87 倍・やや楽観 PER 12.8→15.01 倍・中立 PER 11→13.85 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。