結論
九州リースサービスは、福岡を地盤に、企業の設備リースと不動産の開発・賃貸・販売を手がける会社である。西日本シティ銀行の流れをくむ地場のリース会社で、筆者の結論は、ROE が資本コストにほぼ並ぶ堅い会社で、今の値段は適正の範囲、というものだ。
稼ぎの中心は、安く借りて貸す利ざやである。資金の調達コストは 0.5% 前後と低く、営業資産は 2,000 億円を超えた。利益の4割は不動産が稼ぐ。九州では熊本の半導体工場や福岡の再開発で、物件の需要が厚い。
ただ、これから 10 年は金利の上昇が逆風になる。調達コストが先に上がり、リース料の改定は後から追いかける。借入は 1,500 億円を超え、自己資本比率は 2 割ほどと薄い。
また、不動産の売却益は年によって大きく振れる。直近の営業利益率 17% は、過去最高である。筆者は、この水準が続くとは見ない。
中立の筋書きでは、利益は名目で年 4〜5% 伸び、ROE は 7% 台後半になる。資本コストをわずかに下回るため、10 年後の時価総額は今の 1.8 倍ほどで、配当を足して年率は資本コストをほぼ満たす。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「堅い地場の金融だが、資本の稼ぎが突出していない」と映る。理由は、利益の質を決めるのが、資本の厚さではなく、調達の低コストと不動産の景気だからだ。
事業は 10 年後も続く。企業は設備を借り、不動産は需要があり続ける。だが、堀は浅い。リース料は金利と手数料の横並びで、他社と大きな差が出にくい。調達コストの低さは強みだが、金利が上がれば優位が薄れる。
株主のものになる利益で見ると、純利益の約 3 分の 1 を配当に回し、残りは営業資産の積み上げに使う。資産が増えるほど利益も増えるが、自己資本比率は 2 割ほどと薄く、信用コストの悪化に弱い。
安全域は、資産の堅さにある。リース物件や不動産には担保性がある。ただ、純負債が自己資本の 3 倍を超えるため、景気後退で売却益が消えると、利益の落ち込みは大きい。
筆者は、今の値段には安全域が厚くないが、割高とも言えないと見る。割安と言えるのは、不動産の利益が落ち着いた時の水準でも、ROE が 7% を保つ場合だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、企業に設備を貸し、不動産を開発して売り貸す、2 本の柱だ。2026 年 3 月期の売上は約 358 億円、営業利益は約 61 億円。営業資産は約 2,060 億円で、前の期から 8% 増えた。
最大の売上は、リース・割賦である。工作機械、産業機械、車両、航空機や船舶まで貸す。売上は約 218 億円で、利益率は 9% 弱と薄い。件数が多く、地場の中小企業が顧客の中心だ。
利益の稼ぎ頭は、不動産だ。賃貸用の物件を持ち、開発した物件を売る。売上は約 96 億円だが、営業利益は約 28 億円と、利益率は 3 割に近い。西日本不動産開発をグループ化して、開発から販売までを手がける。販売用の不動産は約 134 億円ある。
ファイナンスは、不動産開発の資金などの融資で、売上は約 26 億円と小さいが、利益率は 6 割ある。環境ソリューションは、太陽光発電所の売電や設備のリースで、営業資産は 300 億円台に増えた。フィービジネスは、カーリースや保険の代理店である。
調達は、銀行借入が中心で、社債とコマーシャルペーパーも使う。有利子負債は約 1,530 億円。調達コストは 0.4〜0.5% と低く、これが貸し出しの利ざやを支える。為替は 1 ドル 150 円で置く。
優良さと弱いところ
優良さは「地場で手堅く、資本の稼ぎはほどほど」だ。顧客は地元の中小企業と、地場の不動産事業者。大手のリース会社が入りにくい小口の案件と、地元の情報が武器になる。銀行系のため信用の調達にも強い。
強みは、調達コストの低さと、不動産の目利きにある。不動産の利益は、2024 年 3 月期に 7 割近く増えた。熊本や福岡の需要が追い風になり、開発から売却までを自前で回す。
弱みは、資本の薄さだ。自己資本比率は 2 割ほどで、純負債は自己資本の 3 倍を超える。信用コストが跳ねれば、利益が一気に削られる。リーマン級の不況では、リース業界の取扱高が 2〜3 割減った前例がある。
ROE は過去 10 年の中央値が 8.3% で、資本コストとほぼ同じだ。突出して高いわけではない。株主構成は、西日本フィナンシャルホールディングスが約 3 割、福岡地所が約 15% と、地元の大株主が厚い。経営は安定するが、少数株主の発言力は弱い。
経営は、保守的な増配を続けている。1 株の配当は 4 年で 3 倍ほどに上がり、配当性向は 33% 台になった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のリース市場は、成熟している。業界全体の取扱高は、2025 年度で約 5 兆 2,000 億円と、前の年から 3% 増えた。設備投資の循環に左右され、人口減で名目の伸びは年 0〜2% ほどだ。九州は、半導体工場の進出で投資が厚いが、全国と同じく成熟の側にいる。
金利の上昇が、一番の変化だ。短期金利が 2% に上がると、調達コストが先に上がる。リース料は契約時に決まるので、既存の契約の利回りは変わらず、新しい契約から料率を上げる。転嫁が追いつくまでの数年は、利ざやが薄くなる。九リースの調達コストは低い水準から始まるため、上げ幅の影響が大きい。
不動産は、地価と建築費が上がる局面にある。福岡の再開発や熊本の半導体関連で、需要は強い。ただ、不動産の売却益は、景気と金利で大きく振れる。金利が上がれば、買い手の利回りの要求も高くなる。
構造の変化は、新リース会計基準だ。借りる側の企業が、リースを貸借対照表に載せる。貸す側の収益構造への影響は限定的とされるが、不要なリースを減らす動きが出れば、取扱高の逆風になる。
競合は、大手のリース会社、地銀系のリース会社、メーカー系の販売金融である。九リースは九州の地場に特化し、小口と不動産の併営で差別化する。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当を基本とし、利益の成長に応じて水準を上げるものだ。2026 年 3 月期の配当性向は 33% 台で、株主資本配当率は 3% だった。増配を続け、2027 年 3 月期も増配を見込む。自社株買いの実績は見当たらず、株主還元は配当に限られる。
資本の使い道は、営業資産の積み上げだ。第 1 次の中期経営計画「共創 2027」(2027 年 3 月期まで)では、純利益 40 億円、ROE 8% 超、営業資産 1,820 億円を掲げた。営業資産はすでに 2,060 億円と目標を超え、純利益も 2026 年 3 月期に 39 億円と、目標にほぼ届いた。次の計画は、2027 年 4 月から始まる見込みだ。
買収は、西日本不動産開発のグループ化が中心で、新規事業では少額出資や事業会社との提携を掲げる。大型の買収は想定していない。
西日本フィナンシャルホールディングスが、約 3 割を持つ。2022 年に資本・業務提携を結び、持分法適用会社にした。完全子会社化や TOB の可能性は、10 年で 2 割台半ばと見られている。実現すれば、少数株主に有利な価格が付く可能性がある。
株主優待は見当たらなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
九州は、投資が集まる地域だ。熊本の半導体工場、福岡の再開発、観光の回復と、設備と不動産の需要が重なる。九リースは、地場の小口案件と不動産の併営で、他社が入りにくい領域を持つ。営業資産は 2026 年 3 月期に 8% 増え、2,060 億円になった。
利益の質も上がった。不動産とファイナンスは利益率が高く、全体の営業利益率は 17% と過去最高だ。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、営業利益が 5 割増えた。
金利の上昇も、味方になる面がある。融資や不動産の利回りは、金利とともに上がる。調達コストは 0.5% 前後と低く、銀行系の信用で安く借り続けられる。新規のリース料率を上げられれば、利ざやは拡大する。
資本政策も前向きだ。配当性向を 3 割台まで引き上げ、増配を続けている。西日本フィナンシャルホールディングスが後ろ盾にいて、完全子会社化なら、少数株主に有利な価格が付く可能性が高い。ROE が 9% を超える持続は、十分に現実味がある。
慎重な見方
今の利益は、ピークに近い。営業利益率 17% は過去最高で、その一部は不動産の売却益に支えられている。売却益は、景気と金利で大きく振れる。販売用の不動産は約 134 億円あり、金利が上がって買い手の利回りが高くなれば、在庫の売却が難しくなる。
金利の上昇は、逆風になる。調達コストは 0.5% 前後から、数年で 3% 近くに上がる。借入は 1,500 億円を超え、1 ポイント上がるだけで 15 億円の費用が増える。リース料の転嫁は、契約の更新を待つので遅れる。利ざやが薄くなる期間が長引く。
資本が薄い。自己資本比率は 2 割で、純負債は自己資本の 3 倍を超える。信用コストが跳ねると、一気に利益が削られる。リーマン級の不況では、業界の取扱高が 2〜3 割減った。
成長には限界もある。九州は成熟した市場で、大手や地銀系の競合も多い。営業資産を積み上げるには、さらに借入を増やすしかない。ROE が 8% 台にとどまるなら、資本コストに届かず、倍率は上がらない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、九州の需要と調達の低コストを正しく捉えている。慎重な見方は、金利の上昇と、不動産の利益の振れ、資本の薄さを的確に突いている。
確率は中立を中心に置き、悲観側をやや厚くした。強気の筋書きは、金利の転嫁が早く進み、不動産の利益が続く場合に限った。悲観は、不動産の市況悪化と信用コストの上昇が重なる場合だ。二つの見方は拮抗していて、確率の差は小さい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,660 円602 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 697 円158 億円)。 今の値に割り戻すと 1,640 円371 億円、今との差 +10.8%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,602 円1,042 億円 | 1,016 円230 億円 | +279.3% | +14.3% | 449 円102 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,781 円856 億円 | 883 円200 億円 | +214.9% | +12.2% | 933 円211 億円 |
| 中立 | 37% | 3,178 円720 億円 | 773 円175 億円 | +166.8% | +10.3% | 1,462 円331 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,346 円305 億円 | 530 円120 億円 | +26.7% | +2.4% | 431 円98 億円 |
| 悲観 | 12% | 419 円95 億円 | 265 円60 億円 | −53.8% | −7.4% | 82 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,660 円602 億円 | 697 円158 億円 | +126.7% | +8.5% | 3,357 円760 億円 |
今の株価時価総額 1,481 円335 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 転嫁が進み、不動産が続く 利益 83 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,602 円1,042 億円
九州の投資が続き、営業資産は実質で3割増える。新規のリース料率を速やかに引き上げ、調達コストの上昇を転嫁し切る。不動産は熊本と福岡の開発が当たり、売却益が毎年続く。ファイナンスは不動産開発向けの融資が 6 割伸びる。営業利益は 126 億円に増える。貸倒は低く抑えられ、配当性向は 3 割台で続く。完全子会社化の話が出れば、少数株主に有利な価格が付く可能性もある。ROE は 10% 近くに上がり、資本コストを超える。成長を評価され、地方リースの優等生になる。不動産と環境の物件は担保性が高く、貸倒に備える引当も厚い。調達は銀行の信用で安く回り、社債の格付けも上がる。地場の小口の案件を取り込む力が、同業との差になる。
- リース・割賦:数量 1,365(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.50(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 425 億円・営業利益 36 億円。営業資産 1.3 倍、利益率は転嫁で維持
- 不動産:数量 728(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.34(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 167 億円・営業利益 53 億円。営業資産 1.3 倍、売却益が続く
- ファイナンス:数量 640(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.50(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 62 億円・営業利益 37 億円。融資 1.6 倍
- 環境・手数料:数量 70.5(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.34(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 34 億円・営業利益 11 億円。営業資産 1.5 倍
倍率:事業の純利益 83 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.51 倍、時価総額 1,042 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利の転嫁が早く進み、不動産の利益も続き、貸倒も抑えられる必要がある。過去最高の利益率を更に超えるため、確率は低い。
やや楽観 20% 転嫁がほぼ追いつき、8% 台の ROE 利益 72 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 3,781 円856 億円
短期金利の上昇に、リース料率の改定がほぼ追いつく。営業資産は実質で 2 割増え、利益率は維持される。不動産は再開発の需要で、売却益が緩やかに増える。ファイナンスの融資は 4 割以上伸び、環境ソリューションも広がる。営業利益は 110 億円ほどになる。貸倒は平常の範囲に収まる。配当性向は 3 割台で、ROE は 9% 近くになる。ただ、九州の市場は成熟していて、大きな飛躍はない。地味だが堅い金融として評価される。新しい中期経営計画では、ROE の目標を 9% に引き上げ、営業資産を積み上げる。九州の大手リース会社との競争は続くが、小口と不動産の併営で居場所を保つ。
- リース・割賦:数量 1,260(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.50(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 392 億円・営業利益 32 億円。営業資産 1.2 倍
- 不動産:数量 683(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.34(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 157 億円・営業利益 47 億円。営業資産 1.22 倍
- ファイナンス:数量 580(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.50(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 57 億円・営業利益 33 億円。融資 1.45 倍
- 環境・手数料:数量 63.5(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.34(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 31 億円・営業利益 9 億円。営業資産 1.35 倍
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.91 倍、時価総額 856 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:調達コストの低さと九州の需要は実績がある。転嫁は数年かかるが、追いつく可能性は十分ある。
中立 37% 転嫁が追いつき、ROE は 7% 台後半 利益 61 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,178 円720 億円
営業資産は実質で1割ほど増え、物価の上昇を合わせて名目では 5 割増える。短期金利の上昇で調達コストが 3% 近くに上がり、数年は利ざやが薄くなる。やがてリース料率の改定が追いつき、利ざやは戻る。不動産は売却益が落ち着き、営業利益は 42 億円ほどになる。ファイナンスは不動産開発向けの融資が 3 割増える。全体の営業利益は 96 億円で、直近の約 1.6 倍だ。営業利益率は 16% 台で、過去最高の 17% を下回る。配当性向は 3 割台で、ROE は 7% 台後半。資本コストをわずかに下回る。
- リース・割賦:数量 1,155(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.50(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 360 億円・営業利益 28 億円。営業資産 1.1 倍、利益は物価並み
- 不動産:数量 644(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.34(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 148 億円・営業利益 42 億円。営業資産 1.15 倍、売却益は落ち着く
- ファイナンス:数量 520(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.50(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 51 億円・営業利益 28 億円。融資 1.3 倍
- 環境・手数料:数量 56.4(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.34(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 27 億円・営業利益 8 億円。営業資産 1.2 倍
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 720 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業資産は実質で緩やかに増え、利益率は過去の水準を保つ構造が最も起こりやすい。金利の転嫁に数年かかるが、10 年なら追いつく。
やや悲観 23% 利ざやの圧迫と不動産の悪化で ROE 5% 台 利益 38 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,346 円305 億円
短期金利の上昇に、リース料率の改定が追いつかず、利ざやが薄いまま続く。営業資産の増加は止まり、実質で横ばいにとどまる。不動産は市況が悪化して売却益が減り、販売用不動産の評価損も出る。貸倒も増える。営業利益は 61 億円と、今の水準で名目では増えない。実質では 4 分の 1 ほど目減りする。評価損や貸倒で自己資本が 30 億円ほど削られる。配当性向は保つが、金額は伸びない。ROE は 5% 台に下がり、資本コストを大きく下回る。優良という評価は消える。調達の面では、銀行の信用に頼る構造は変わらず、コストの上昇を吸収する余裕は小さい。新規の貸し出しにも慎重になり、成長の勢いは失われる。
- リース・割賦:数量 1,050(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.45(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 316 億円・営業利益 20 億円。営業資産は横ばい、利ざやは追いつかず
- 不動産:数量 560(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.30(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 125 億円・営業利益 28 億円。営業資産は横ばい、売却益が減る
- ファイナンス:数量 440(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.45(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 41 億円・営業利益 19 億円。融資 1.1 倍
- 環境・手数料:数量 47.0(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.30(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 22 億円・営業利益 5 億円。営業資産は横ばい
倍率:事業の純利益 38 億円、ROE 5.4% で資本コストを大きく下回る。正当化 PER は約 9.4 倍で、それをやや下回る 8.0 倍に置いた。
確率:金利の転嫁が遅れる、不動産の売却益が落ちる、という流れは現実味がある。直近の営業利益率は過去最高なので、反動が出やすい。
悲観 12% 金利と信用コストで構造的に負ける 利益 16 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 419 円95 億円
金利が上がっても料率の改定が通らず、利ざやが大きく縮む。不動産は市況が崩れ、売却が止まって在庫が積み上がる。九州の景気が悪化し、貸倒が急増する。営業資産は実質で 15% 減り、営業利益は 26 億円と、今の半分以下になる。評価損と貸倒で、自己資本が 120 億円削られる。配当は性向を下げて続けるが、金額は大きく減る。自己資本比率は 2 割を割り込み、新規の調達も細る。西日本フィナンシャルホールディングスの支援を受けるか、事業を縮小するかの岐路に立つ。優良なリース会社という評価は消え、割安な低成長株の扱いになる。
- リース・割賦:数量 893(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.40(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 259 億円・営業利益 12 億円。営業資産 0.85 倍、利ざや縮小
- 不動産:数量 448(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.20(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 92 億円・営業利益 12 億円。営業資産 0.8 倍、市況悪化
- ファイナンス:数量 340(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.40(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 31 億円・営業利益 10 億円。融資 0.85 倍
- 環境・手数料:数量 37.6(営業資産(実質・億円、推定の按分))× 価格 1.20(資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。営業資産 0.8 倍
倍率:事業の純利益 16 億円、ROE 2.8% で資本コストを大きく下回る。正当化 PER は約 6.5 倍で、それをやや下回る 6.0 倍に置いた。リース物件と不動産には担保性があり、清算の価値は自己資本を下回るものの一定程度は残る。ただ、構造的な負けでは調達が細り、成長と配当が止まる形で価値が削られるため、稼ぐ力で置いた。
確率:金利の転嫁が遅れ、不動産市況が崩れ、貸倒も同時に増える構造的な負け。自己資本が薄く、一度崩れると回復が遅いため、12% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リース・割賦
工作機械・産業機械・車両・航空機などのリースと割賦。地場の中小企業が顧客の中心。件数が多く、利益率は薄い。
| 数量営業資産(実質・億円、推定の按分) | 価格資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,050 | 1.00 | 218 | 19 |
| 10 年後 中立 | 1,155 | 1.50 | 360 | 28 |
取り方:今。営業資産の按分は推定(総額 2,057 億円のうち約 1,050 億円)。資産あたりの売上は 0.208。セグメント別の営業資産は開示が見つからず、総額を売上と利益率から按分した。実質の営業資産 × 資産あたり売上の指数で置く。
不動産
賃貸用の物件の保有、開発した物件の販売。西日本不動産開発をグループ化。利益の4割を稼ぐが売却益は振れる。
| 数量営業資産(実質・億円、推定の按分) | 価格資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 560 | 1.00 | 96 | 28 |
| 10 年後 中立 | 644 | 1.34 | 148 | 42 |
取り方:今。営業資産の按分は推定(約 560 億円、販売用不動産 134 億円を含む)。資産あたりの売上は 0.171。九州の再開発と熊本の半導体関連が需要を支える。
ファイナンス
不動産開発の資金などの融資。売上は小さいが、利益率が高い。
| 数量営業資産(実質・億円、推定の按分) | 価格資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 1.00 | 26 | 16 |
| 10 年後 中立 | 520 | 1.50 | 51 | 28 |
取り方:今。営業資産の按分は推定(約 400 億円)。資産あたりの売上は 0.065 と融資の利回りに近い。不動産開発の資金需要が成長を左右する。
環境・手数料
太陽光発電所の売電と設備のリース(環境)と、カーリース・保険の代理店(手数料)。
| 数量営業資産(実質・億円、推定の按分) | 価格資産あたり売上の指数(今=1.00。物価 10 年 1.34 倍+金利の転嫁) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 47.0 | 1.00 | 17 | 5 |
| 10 年後 中立 | 56.4 | 1.34 | 27 | 8 |
取り方:今。営業資産の按分は推定(約 47 億円。環境関連の営業資産は 300 億円台だが一部は他の区分)。売電とカーリース・保険の手数料が中心。
リスクと懸念
金利上昇による利ざやの圧迫
調達コストは 0.5% 前後と低い。短期金利が 2% に上がると、先に費用が増え、リース料の改定は契約の更新まで遅れる。借入は約 1,500 億円で、1 ポイントの上昇が 15 億円の負担になる。
不動産の売却益の振れ
不動産は営業利益の4割を稼ぐが、売却益は年によって大きく動く。2026 年 3 月期の営業利益率 17% は過去最高。販売用不動産は約 134 億円あり、市況が崩れれば評価損と在庫の積み上がりが出る。
信用コストの悪化
地場の中小企業が顧客の中心で、不況では貸倒が増える。リーマン級では、業界の取扱高が 2〜3 割減った。自己資本比率が 2 割と薄く、信用コストの跳ねが利益を直接削る。
九州への集中
顧客も物件も、九州に偏る。熊本の半導体関連の投資が止まる、または福岡の地価が反落すれば、不動産とファイナンスが同時に傷む。全国に分散する大手より、地域の景気に左右される。
資金調達の依存
借入と社債・CP で約 1,530 億円を調達している。銀行系の信用が低コストを支えるが、親会社筋の信用や貸し出し姿勢が変われば、調達コストが一段と上がる。
大株主による資本政策の制約
西日本フィナンシャルホールディングスが約 3 割、福岡地所が約 15% を持つ。安定の面ではよいが、完全子会社化の価格や時期は大株主の意向が強く、少数株主の発言力は弱い。
今後の分かれ目
- 短期金利が 2% に上がっても、営業資産の利回りが同じ幅で上がった
- 転嫁が進み、利ざやは保たれる。楽観側の確率を上げてよい。調達コストの上昇を読み切れているかの証拠になる。
- 不動産セグメントの営業利益が 2 期続けて 20 億円を割った
- 売却益頼みの姿が表に出る。中立の営業利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 貸倒関連の費用が営業利益の 1 割を超えた
- 自己資本が薄いため、利益の落ち込みが大きい。悲観の確率を上げる。担保の評価と回収の状況を見る。
- 西日本フィナンシャルホールディングスが、完全子会社化または TOB を発表した
- 少数株主に有利な価格が付く可能性がある。事業の価値は変わらないが、時価総額は上振れうる。条件の中身を確かめる。
- 次の中期経営計画で、ROE 目標が 10% に引き上げられた
- 資本効率に本気で取り組む証拠になる。配当性向の引き上げや自社株買いを伴うかが、評価の分かれ目。
- 九州の地価が大きく下がり、熊本の半導体関連の投資が止まった
- 不動産とファイナンスが同時に傷む。悲観の筋書きに近づく。地場に集中している弱みが出る局面。
見ておくもの
- 不動産セグメントの営業利益と、販売用不動産の残高
- 調達コスト(資金原価率)とリース料率の改定の進み方
- 営業資産残高の伸びと、自己資本比率
- 貸倒関連の費用と延滞の状況
- 次の中期経営計画(2027 年 4 月〜)の目標と還元方針
- 西日本フィナンシャルホールディングスの持株の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コストをわずかに下回る事業として、正当化 PER の式(g は 4%)から上限を出し、その約 9 割に置いた。今の PER や PBR、過去の水準には寄せていない。営業資産は実質で積み、価格の欄は物価 1.34 倍と金利の転嫁を合わせた資産あたり売上の指数にした。セグメント別の営業資産は未開示で、総額を売上と利益率から按分した推定。金融の借入は利ざやの中で扱い、純利益に別に利払いを足していない。2026 年 3 月期の営業利益率 17% は過去最高なので、中立はそれ以下に置いた。新リース会計基準は、貸し手の収益構造への影響が限定的とみて、今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.51 倍・やや楽観 PER 10.5→11.91 倍・中立 PER 10→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した。個別の事情は筋書きと確率で表した。