結論
全保連は、賃貸住宅の入居者の家賃を家主に保証する専業の会社だ。入居者が滞納すれば立て替え、後で本人に請求する。筆者の結論は、今の値段は事業の価値に近い、というものだ。
稼ぐ力は上向いている。2026年3月期の営業利益は32億円で、3年前の1.7倍になった。2025年4月に三菱UFJニコスの公開買付けでMUFGの連結子会社になり、2027年3月期の営業利益予想は40億円へ引き上げられた。AIによる審査と回収の強化で、貸倒れの負担が軽くなっている。
強みは、全国5万8千拠点の協定会社網と、ROE20%台の軽い資本だ。一方、市場はすでに成熟している。保証会社を付けるのは賃貸の標準に近く、新規契約は年に26万件ほどと、2年続けて減速した。参入の壁は高くなく、料率は下がりやすい。
10年後の中立は、売上が約375億円、営業利益が約56億円、ROEは18.7%。強気はMUFGのカード連携と高齢者向けが育つ姿、弱気は料率の崩れと貸倒れの急増だ。確率を重ねた価値は、今の時価総額とほぼ等しい。
バリュー投資の観点から
事業の質と、資本の使い方を分けて見る。
事業の質は、悪くない。家賃の保証は、景気が悪くても住まいがある限り続く。回収率は96%を超え、AI審査で貸倒れの負担が減っている。軽い資本で、ROEが20%を超える。
ただ、成長の余地は限られる。保証会社の利用は標準に近づき、新規契約は2年続けて減速した。料率の相場は競争で下がりやすく、参入の壁も高くない。営業利益率が12%から17%へ上がる計画は、貸倒れの低下に頼っている。景気が悪くなれば、この改善は戻る。
資本の使い方は、堅実だ。無理な拡大を避け、利益の半分以上を配当に回す方針は、成熟した事業に合っている。親会社のMUFGが後ろにいることで、信用とカード連携の追い風が加わった。
安全域は、あまり大きくない。純資産は81億円で、時価総額の4分の1にすぎず、資産の裏づけは薄い。価値は稼ぐ力で測るしかない。筆者が見たいのは、貸倒れの低下が景気の悪化でも保たれるかと、親会社との関係が少数株主に不利にならないかだ。
何で稼ぐ会社か
全保連は、家賃債務保証の単一事業の会社だ。賃借人が家賃を払えなくなったとき、保証会社が家主に立て替えて払う。これを代位弁済といい、後で賃借人に請求して回収する。
収入は三つある。2026年3月期の売上262億円のうち、初回保証料が120億円で46%を占める。契約のとき、月額賃料の半分ほどを受け取る形が一般的だ。次が年間保証料の87億円(33%)。更新のたびに入る。三つ目が事務手数料や収納代行などのその他収入で54億円(21%)だ。
売り先は個人の入居者だが、集客の窓口は不動産会社だ。全国の管理会社や仲介会社と協定を結び、その拠点数は5万8千を超える。累計の保証契約は450万件に達した。営業の拠点は国内19カ所で、従業員は575名と少ない。
費用の中心は、代位弁済のうち回収できない分と、人件費、協定会社への手数料だ。30日以内に入金されず代位弁済に回る率は0.45%、立て替えた額の回収率は96.4%だった。審査と回収が、利益を左右する。
2026年2月には「三菱UFJカードプラン」を始めた。家賃をカードで払える形で、MUFGの顧客網を使って優良な入居者を取り込む狙いだ。
優良さと弱いところ
堀は、協定会社の網と、審査・回収のノウハウにある。ただ、強い堀ではない。
家賃債務保証に許認可は要らず、参入は形式上自由だ。国は2017年に登録制度を作ったが、登録は任意だ。会社も、保険会社やカード会社の参入をリスクに挙げている。全保連の強みは、5万8千拠点の協定会社と、長年の回収の実績だ。これは時間をかけた蓄積で、新規の参入者がすぐには真似できない。
値決めの力は弱い。保証料の相場は、初回が月額賃料の半分程度と決まっており、競争で下がる方向に動く。管理会社は複数の保証会社から選べる。
資本効率は高い。2026年3月期のROEは21.3%、営業利益率は12.1%。保証料を先に受け取る仕組みで、借入はほぼない。ただ、利益の半分以上を配当に回すので、自己資本が薄く保たれ、ROEが高く出る面もある。
経営は、守りに寄った。無理な売上の拡大を避け、低採算の取引先を解消する方針を掲げる。社長の茨木氏への依存を、会社自身がリスクに挙げている。2026年3月期には、退任取締役への退職慰労金6億円を特別損失にした。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、世帯の形が決める。国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計では、単身世帯が総世帯に占める割合は、2050年に44%に達する。65歳以上の世帯のうち、単身の割合も、2020年の35%から2050年の45%に上がる。高齢で単身の入居者は、連帯保証人を立てにくく、保証会社の出番が増える。
一方、新しく建つ賃貸住宅は減っている。2026年3月期の賃貸住宅の新規着工戸数は、前年から13.5%減った。保証会社の利用はすでに標準に近く、新規契約は自然に増える余地が小さい。全保連の累計契約の増分は、2年前の30万件から26万件に減速した。
市場の大きさは、ある保証会社の推計で2024年に約2,500億円だ。公的な統計ではない。この会社の売上は262億円で、その1割ほどにあたる。
競争は三層だ。大手のカード会社や信販系は、自社の決済網を使う。独立系は協定会社の網で戦う。三つ目が保険会社の参入だ。保証料の相場は、初回が月額賃料の半分程度、以後は年1万円が多いが、この相場は競争で下がりやすい。
数量の物差しは、保有契約件数とする。今は約200万件と推定し、10年後の中立は235万件。1件あたりの売上は、物価で1.34倍になるところ、競争で1.22倍にとどまると置いた。
資本政策と M&A
還元は、累進配当が軸だ。長期経営計画の期間中は、配当を一定額以上か、配当性向50%以上の高いほうにし、減配しない。2026年3月期は総額10.5億円で、純利益の6割にあたる。2027年3月期の配当は、これを大きく上回る予想だ。自社株買いの方針は示されていない。
財務は、見かけ上は強い。現金は94億円で、借入はほぼない。ただ、この現金の大半は事業の約束だ。保証料を先に受け取って、毎期少しずつ収益にするため、前受けの分と預り金が負債にある。負債168億円は総資産の7割近くを占める。自己資本比率は32.5%だ。
2025年4月、三菱UFJニコスの公開買付けで、MUFGの連結子会社になった。買付価格は直前の終値に3割強のプレミアムを乗せた水準で、上場は維持された。親会社が持つ議決権の割合は、確認できていない。親子上場のため、少数株主の利益と親会社の都合が食い違うおそれはある。
希薄化は、過去20年に2025年3月期の一度だけだった。設備投資は小さく、2026年3月期は6億円弱で、営業キャッシュフローの1割ほどだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、親会社の後ろ盾と、貸倒れの低下の定着に頼る。
2026年3月期の営業利益は32億円だったが、2027年3月期の予想は40億円に引き上げられた。第1四半期は営業利益が19%増え、営業利益率は14.4%から16.7%に上がった。会社の長期計画は、2030年3月期に営業利益63億円、ROE27%を掲げる。
MUFGの連結子会社になり、三菱UFJカードプランが始まった。カードと家賃の支払いが結びつけば、優良な入居者が集まり、貸倒れも減る。AI審査で求償債権の残高も減り、回収率は96.4%まで上がった。
需要は構造的に増える。単身世帯は2050年に44%に達し、高齢の単身者は連帯保証人を立てにくい。地銀との提携と事業用の保証も加わる。
10年後、保有契約が275万件に増え、営業利益率が19%に達すれば、営業利益は92億円になる。保証会社の網が全国に広がるほど、新規契約の1件あたりの費用は下がる。この筋書きの確率は7%とした。
慎重な見方
慎重な見方は、成熟した市場と、貸倒れの循環を指摘する。
新規契約は、累計の増分で30万件、29万件、26万件と減速した。賃貸住宅の新規着工も前年から13.5%減った。保証会社を付けるのは標準に近く、市場そのものは大きく伸びない。
参入の壁は低い。許認可は要らず、保険会社やカード会社が入ってくる。保証料の相場は競争で下がる方向にあり、料率が崩れれば、売上の46%を占める初回保証料が最初に傷む。
貸倒れは、景気で戻る。直近の改善は、優良先への絞り込みとAI審査の効果が大きい。ただ、不況になれば代位弁済は増え、回収率も下がる。営業利益率17%の計画は、この改善が続く前提だ。優良先に絞るほど、取引先の数と新規契約の件数は減り、売上の伸びが削られる。会社の予想の売上は、利益ほどは伸びない。
親子上場の問題もある。親会社の都合が少数株主の利益と食い違えば、価値は割り引かれる。2025年の公開買付けで大株主の持分が入れ替わり、株式の需給も変わった。社長への依存も、会社自身がリスクに挙げている。
どちらに重みを置いたか
結論は、今の値段は妥当圏、というものだ。確率を重ねた価値は約308億円で、時価総額310億円とほぼ等しい。
分かれ目は、直近の利益率の改善が、景気の悪化でも保たれるかだ。会社の予想(営業利益40億円)をそのまま10年伸ばせば、高い評価になる。しかし、貸倒れは循環し、料率は下がりやすい。10年の中立は、営業利益56億円、ROE18.7%と、足元より落ち着いた姿に置いた。
安全域は薄い。資産の裏づけは小さく、純資産は81億円と時価総額の4分の1だ。悲観の筋書きでも、事業の稼ぎが残り、価値は60億円ほどと見る。一方、ROEが20%を超えて続けば、価値は430億円を超える。
見るべき点は三つ。新規契約の件数、代位弁済率と回収率、そしてMUFGのカード連携が数字に出るかだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,994 円523 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 613 円161 億円)。 今の値に割り戻すと 1,265 円332 億円、今との差 +6.1%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,859 円1,012 億円 | 877 円230 億円 | +297.0% | +14.8% | 332 円87 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,008 円789 億円 | 782 円205 億円 | +217.7% | +12.3% | 758 円199 億円 |
| 中立 | 38% | 2,247 円589 億円 | 667 円175 億円 | +144.3% | +9.3% | 1,107 円290 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,025 円269 億円 | 496 円130 億円 | +27.5% | +2.5% | 365 円96 億円 |
| 悲観 | 11% | 207 円54 億円 | 210 円55 億円 | −65.0% | −10.0% | 46 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,994 円523 億円 | 613 円161 億円 | +118.6% | +8.1% | 2,608 円684 億円 |
今の株価時価総額 1,193 円313 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% MUFGのカード連携が育ち、営業利益率は19%に 利益 64 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 3,859 円1,012 億円
MUFGのカード連携と地銀提携が育ち、優良な入居者が集まる。保有契約は275万件に増え、高齢者向けと事業用の保証が加わる。AI審査で貸倒れは低く保たれ、営業利益率は19%に上がる。
料率は物価並みに上がり、1件あたりの売上は10年で1.34倍になる。利益の多くを配当に回し、10年の還元は230億円に達する。
営業利益は約92億円、純利益は約64億円で、ROEは23%。会社の長期計画をほぼ達成し、その先も伸びる姿だが、成熟した市場で料率を保ち続ける条件が要る。保証会社の市場は2024年で約2,500億円と小さく、ここまで伸びるには、他社から契約を奪い続ける必要がある。
- 家賃債務保証:数量 275(保有契約件数(万件。推定))× 価格 17,546(1件あたり年間売上(円。売上÷保有契約。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 483 億円・営業利益 92 億円。保有契約275万件、売上は物価並み、利益率19%
倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.74 倍、時価総額 1,012 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:MUFGの連携、地銀提携、高齢者向けのすべてが育ち、貸倒れも低く保たれる必要がある。成熟した市場で、条件は厳しい。7%に置いた。
やや楽観 20% 営業利益率17%の計画に近づく 利益 51 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 3,008 円789 億円
カード連携と高齢者向けが着実に育ち、保有契約は255万件に増える。料率は競争で少し削られ、1件あたりの売上は1.28倍にとどまる。
貸倒れは低い水準を保ち、営業利益率は17%に上がる。会社の長期計画の営業利益率と同じ水準だ。この間に、協定会社の網は6万拠点を超え、電子申込も進んで、費用の増え方が売上の伸びより緩やかになる。
営業利益は約73億円、純利益は約51億円。ROEは21%で、今の水準が続く。還元は205億円になり、配当は純利益の4割から5割の間で増え続ける。会社の長期計画に近いが、そこまでは届かない姿だ。
- 家賃債務保証:数量 255(保有契約件数(万件。推定))× 価格 16,760(1件あたり年間売上(円。売上÷保有契約。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 427 億円・営業利益 73 億円。保有契約255万件、売上+28%、利益率17%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.47 倍、時価総額 789 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の営業利益率の改善は、MUFGの信用力とAI審査という構造的な理由がある。会社の長期計画に近い姿は十分ありうる。ただ、景気の悪化で戻る面もあるので、20%とした。
中立 38% 件数は緩やかに増え、料率が削られてROEは19% 利益 40 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 2,247 円589 億円
保有契約は235万件に増える。単身世帯と高齢者の増加が支えるが、賃貸の新規着工は減り、増え方は年1.6%ほどにとどまる。1件あたりの売上は、料率が競争で削られて1.22倍と、物価の1.34倍に届かない。
貸倒れの改善は一部が戻る。営業利益率は15%で、会社の計画の17%には届かない。還元は純利益の約6割の175億円に落ち着く。
営業利益は約56億円、営業利益率は15%。純利益は約40億円で、ROEは18.7%。高い水準だが、足元の21%よりは低い。堅実だが、驚きのない筋書きである。MUFGの連携は一定の効果を出すが、それが料率の下落を打ち消すほどではないと見る。
- 家賃債務保証:数量 235(保有契約件数(万件。推定))× 価格 15,975(1件あたり年間売上(円。売上÷保有契約。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 375 億円・営業利益 56 億円。保有契約235万件、売上+22%、利益率15%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.92 倍、時価総額 589 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要は確かに増えるが、新規契約は減速し、料率は競争で下がりやすい。貸倒れの改善は一部が戻る。中立に最も近い姿として、38%に置いた。
やや悲観 24% 料率が下がり、名目の営業利益は10年横ばい 利益 26 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,025 円269 億円
競争で料率が下がり、1件あたりの売上は10年で1.12倍にとどまる。保有契約は215万件に増えるが、新規の着工が減り、伸びは鈍い。
貸倒れは平時の水準に戻り、景気の悪化の年には営業利益が大きく落ちる。営業利益率は11.5%と、足元より低い。協定会社への手数料と人件費は物価に合わせて増えるが、料率の低下で売上が追いつかない。
営業利益は約36億円で、今とほぼ同じ。名目では10年間ほぼ横ばいだ。純利益は約26億円、ROEは13.8%で、資本コストは上回るが、今の半分ほどの稼ぎだ。取引先の網は保たれるが、料率を競争で削られ、利益を物価に合わせて伸ばせない。
- 家賃債務保証:数量 215(保有契約件数(万件。推定))× 価格 14,665(1件あたり年間売上(円。売上÷保有契約。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 315 億円・営業利益 36 億円。保有契約215万件、売上+12%、利益率11.5%
倍率:事業の純利益は26億円、ROEは13.8%で資本コストを少し上回る。式の上限は約13.6倍。利益が足元の半分ほどに落ち、成長も鈍いので、上限の8割弱の10.5倍に置いた。
確率:競争で料率が下がり、貸倒れが平時の水準に戻る姿は、十分ありうる。参入の壁が低い事業なので、24%とした。
悲観 11% 料率の崩れと貸倒れの急増で、利益が細る 利益 7 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 207 円54 億円
構造的に負ける。保険会社やカード会社が入り、料率が崩れて、1件あたりの売上は10年で上がらない。景気の悪化で代位弁済が急増し、回収率も下がる。
保有契約は180万件に減り、営業利益率は4%に落ちる。親会社の都合で取引の見直しが入る可能性もあり、自己資本は約30億円削られる。
営業利益は約9億円、純利益は約7億円。配当は大きく減り、還元は55億円にとどまる。残る価値は、協定会社の網と回収の力で稼ぐ小さな利益だ。債務の重さはないので、倒れはしないが、稼ぐ力は大きく損なわれ、ROEも資本コストを下回る。
- 家賃債務保証:数量 180(保有契約件数(万件。推定))× 価格 13,094(1件あたり年間売上(円。売上÷保有契約。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 236 億円・営業利益 9 億円。保有契約180万件、売上据え置き、利益率4%
倍率:純利益7億円、ROEは4.9%で資本コスト8.75%に届かない。ためた利益は額面ほどの価値がなく、倍率は資本コストの逆数の約11.4倍が上限。成長がなく、親会社の都合も絡むので、上限の7割にあたる8.0倍に置いた。
確率:家賃の保証は景気が悪くても続く事業で、構造的に負ける可能性は低い。ただ、料率の崩れと貸倒れの急増が重なる姿は否定できない。11%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
家賃債務保証
賃貸住宅の入居者の家賃を家主に保証し、滞納時に立て替える。初回保証料、年間保証料、事務手数料や収納代行などを受け取る。
| 数量保有契約件数(万件。推定) | 価格1件あたり年間売上(円。売上÷保有契約。物価で10年に1.34倍が中立の基準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 13,094 | 262 | 32 |
| 10 年後 中立 | 235 | 15,975 | 375 | 56 |
取り方:2026年3月期の実績。売上261.9億円、営業利益31.7億円(利益率12.1%)。保有契約件数は開示されず、2024年3月期の193.6万件に、累計の契約が年26万件増えたことを重ね、約200万件と推定した。1件あたり約1.3万円は、売上を件数で割った値。
リスクと懸念
貸倒れの循環
代位弁済は景気の悪化で増える。直近は30日以内の代位弁済率が0.45%、回収率が96.4%と良好だが、不況ではこれが戻る。求償債権は売上の22.5%あり、回収が遅れると引当が膨らんで利益を削る。
料率の下落と競争
保証料の相場は競争で下がる方向にある。許認可は不要で、保険会社やカード会社が入ってくる。初回保証料が売上の46%を占めるので、料率が1割下がれば、利益への影響は大きい。
新規契約の減速
累計契約の増分は、30万件、29万件、26万件と減っている。賃貸住宅の着工も13.5%減った。件数が伸びない中で、低採算先を解消する方針は、売上の伸びを抑える。
親会社との関係
三菱UFJニコスの買付けで、MUFGの連結子会社になった。後ろ盾は信用になるが、親会社の事業の都合で、取引先の絞り込みや配当の方針が変わるおそれがある。少数株主の利益と食い違う可能性もある。
経営者と制度への依存
社長の茨木氏への依存を、会社自身がリスクに挙げている。家賃債務保証は2017年に登録制度ができ、2025年10月に改正された。規制が強まれば、遵守の費用や料率の制約が増える。
システムと情報の事故
システム障害や情報漏洩は、会社が影響度「大」と評価するリスクだ。電子申込が41.4%に増え、AI審査も使うので、事故が起きたときの影響は広がる。
今後の分かれ目
- 30日以内の代位弁済率が、0.6%を超えて上がった
- 貸倒れの改善が戻り始めた合図だ。営業利益率の計画を割り引き、慎重な筋書きの確率を上げる。
- 新規契約の件数が、年30万件を超えて戻った
- 三菱UFJカードプランや地銀提携が数字に出た証拠だ。強気の確率を上げる。
- 営業利益率が、17%を超える年が続いた
- 長期計画の営業利益63億円が現実味を帯びる。中立と強気の確率を上げる。
- 初回保証料の1件あたり収入が、前年を下回った
- 料率の下落が表に出た合図だ。競争の激化として、慎重な筋書きの確率を上げる。
- 親会社が、完全子会社化のための公開買付けを発表した
- 価格が付く可能性がある。ただし、価格が事業の価値を反映しているかを確かめる。
- 賃貸住宅の着工が、さらに1割以上減った
- 新規契約の自然増が細る合図だ。数量の置き方を下げる。
見ておくもの
- 新規契約の件数(累計の増分)と、保有契約件数
- 30日代位弁済率と、代位弁済の回収率
- 営業利益率(17%への道筋)
- 初回保証料と年間保証料の1件あたり収入
- 三菱UFJカードプランの契約数と、地銀提携の数
- 賃貸住宅の新規着工戸数
倍率と資本コストの決め方
本稿は時価から出発していない。起点は2026年3月期の実績で、売上262億円、営業利益32億円だ。会社の2027年3月期の予想(営業利益40億円、純利益28億円)は、第1四半期の好調を受けた上方修正の直後なので、起点に置かなかった。10年後の中立は営業利益56億円と、予想の40億円を物価並みに伸ばした姿だ。
倍率は、収益から決めた。ROEが資本コストを大きく上回る筋書きでは、式の上限の9割弱に置き、ROEが落ちる筋書きは8割弱に置いた。他社や過去の倍率は、判断に使っていない。
資本コストは8.75%とした。同じ保証の領域のイー・ギャランティは8.5%。こちらは親子上場で、貸倒れも景気に動くので、0.25ポイント高い。
保有契約の約200万件は、2024年3月期の193.6万件から推定した値で、開示された最新の数ではない。1件あたりの売上約1.3万円は、売上を件数で割った平均だ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.3→15.74 倍・やや楽観 PER 13.8→15.47 倍・中立 PER 12.8→14.92 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 1.25% を足した。親会社との関係や貸倒れの急増など個別の事情は、筋書きと確率で表した。