結論
全国保証は、銀行や信用金庫が貸す住宅ローンに保証をつけて稼ぐ会社だ。借り手が返せなくなれば、代わりに銀行へ残りを全額返す。その見返りに借り手から保証料を受け取る。特定の銀行グループに属さない独立系で、提携先は約 720 機関。保証債務の残高は 21 兆円を超えた。
筆者の結論は「やや割安」だ。いちばんの理由は、稼ぎ方の堅さにある。保証料は契約時に入り、長い返済期間にわたって収益になる。残高が積み上がっているので、新しい貸出が鈍っても売上は崩れにくい。営業利益率は 7 割を超え、ROE(自己資本の稼ぐ力)も 13% 台を保つ。
弱みははっきりしている。人口が減り、住宅ローン市場の総量は伸びない。銀行が保証を自前で持つ動きが広がれば、独立系の出番は減る。不況で返済が滞れば、損失は保証会社がほぼ全額を負う。
それでも、残高の積み上げと提携先の広さが生む利益の安定は、長く持ちたい種類のものだ。10 年後の中立の筋書きで、売上は今の 4 割増しになる。悲観の筋書きでも時価総額は今の 6 割ほどが残る。今の PER 12〜13 倍は、この安定への評価としては低い。ただし資本コストを 7.25% と、普通よりやや低く置いた結果である点は、読む側も頭に置いてほしい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、全国保証は「長く持てる事業」に近い。保証料は長期にわたって積み上がり、売上の大半は過去に結んだ契約から出る。数年先の利益が、他の金融業より読みやすい。
オーナー利益、つまり株主の自由になる利益も大きい。工場も在庫もなく、成長に必要な再投資は小さい。稼いだ利益の半分を配当に、残りを自社株買いや運用に回せる。ROE の高さは、この軽さの裏返しだ。
一方で、バリュー投資家が気にするのは、利益の裏側にある保証の約束だ。景気が悪くなれば、損失は全額こちらが負う。住宅価格が下がる局面では、担保の価値も同時に落ちる。上場前の 2010 年 3 月期には、営業利益率が 22% まで下がった年もあった。平時の数字だけで安全と言い切れない。
値段の面では、利益の安定と財務の厚さを買う価格として、PER 12〜13 倍は控えめだ。中立の筋書きで、10 年後の時価総額は今の 1.8 倍になる。やや悲観でも今を上回る。安全域は広いと見る。ただし、その計算は資本コストを 7.25% に置いた結果である。7.5% で測れば、安さはかなり縮む。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。住宅ローンが 1 本実行されるたびに、銀行は全国保証と保証契約を結ぶ。借り手は保証料を払い、銀行は返済が止まった時の損失から解放される。全国保証は代位弁済、つまり借り手に代わる全額の返済を引き受け、そのあと借り手や担保の不動産から回収する。
保証料は、契約時にまとめて受け取る型と、金利に上乗せして毎年受け取る型がある。どちらも保証期間(多くは 30〜35 年)にわたって営業収益に入る。このため売上は、保証債務残高にほぼ比例して動く。残高は 21 兆円超で、営業収益はその約 0.28% にあたる。
顧客は銀行・信用金庫・信用組合・JA(農協)など。中日本総合信用のような地域の保証会社を持分で取り込む動きもある。2026 年 3 月の中期経営計画「Go for 50」では、保証を中核に住生活の周辺へ広げる方針を示した。家賃保証、住宅ローン比較サイトを営む MFS への出資、中古住宅の買取再販を手がけるインテリックス HD との提携がその例だ。
連結の営業収益は 2026 年 3 月期で 587 億円、営業利益は 414 億円。経費は人件費と代位弁済にかかる費用が中心で、設備はほとんど要らない。稼いだ現金は債券などで運用し、運用益が営業外で 50 億円ほど加わる。
優良さと弱いところ
全国保証の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、提携先の広さと切り替えの難しさにある。メガバンク系や地銀系の保証子会社は、親の銀行の貸出しか扱わない。全国保証は系列を問わず、地銀・信金・JA などと並行して契約できる。銀行にとっては、審査や回収の仕組みを丸ごと預ける相手であり、いったん組み込むと入れ替えにくい。
利益の質も高い。営業利益率は 70% を超え、ROE は過去 10 年 13〜25% で推移した。営業費用の中で大きいのは代位弁済に伴う費用だが、延滞割合は低位で、会社は中長期で残高の 0.03% 程度という費用の水準を見込む。中期計画は ROE 12〜15% を目標に置く。
弱みは 3 つある。第 1 に、住宅ローンの総量は人口減で伸びにくく、残高の伸びは提携先の拡大とシェア獲得に頼る。第 2 に、営業利益率は 2020 年代前半の 80% 台から 70% 台へ下がっており、費用の増加を保証料の値上げで補えていない。第 3 に、住生活分野への広がりは、本業ほどの利益率が見込めない可能性がある。
経営陣の資本の使い方は堅実だ。配当性向を 50% に置き、活用できる余剰資本を約 500 億円と見て自社株買いを機動的に行う。成長投資のハードルレートは 10% 以上とし、割に合わない買収は避ける姿勢が読み取れる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の住宅ローンは、新規の貸出が年 19 兆円ほど、残高が約 190 兆円ある。ほとんどの民間ローンに保証会社がつく。全国保証の残高 21 兆円は、この市場の 1 割強にあたる。
需要は人口と住宅の取引で決まる。世帯数は 2030 年前後から減り、新築の着工は頭打ちだ。一方で、都市部では中古住宅の取引が増え、物価の上昇で 1 件あたりの借入額は大きくなっている。実質の貸出件数は横ばいから微減、金額は物価で押し上げられる。これが筆者の基本の見方だ。
競争の形は、銀行系の保証子会社と独立系の対立だ。メガバンクや大手地銀は、グループ内に保証会社を持つ。一方、2024 年には三井住友信託銀行が保証子会社の株式 85% をコンコルディア FG との共同事業に出すなど、保証会社を手元から離す銀行も出ている。地域金融機関の再編や経営の効率化が進めば、保証を外部に任せる銀行は増える。全国保証が中日本総合信用の持分を取得したのも、この流れに乗る動きだ。
金利は逆風にも追い風にもなる。住宅ローン金利が上がれば借り手の返済負担が増し、新規の貸出と延滞に響く。一方、運用している債券の利回りは上がり、営業外の収益が増える。会社は運用利回り 2.0% を計画に置く。住宅価格が下がる局面では、担保から回収できる額が減り、代位弁済の損失が膨らむ点に注意が要る。
資本政策と M&A
還元は配当性向 50% の維持が基本で、そこに自社株買いを機動的に足す。2026 年 3 月期の配当性向は 49.2% だった。中期計画は、2031 年 3 月期までに活用できる資本を約 500 億円と見ている。ROE 12〜15% を守るため、事業に要らない資本は自社株買いで返す考えだ。
M&A は本業の補強に絞られている。2026 年 6 月、あいち銀行ほかから中日本総合信用の議決権 19.4% を取得し、子会社分と合わせて 23.0% の持分法適用会社にする。MFS には 10.0% を出資した。計画は、買収による保証残高の純増を 2 兆円(残高の 1 割ほど)と置く。
筆者が見たいのは買収の価格だ。保証会社は利益の質が高く、買い手が多い。高く買えば、成長投資のハードルレート 10% は守れない。政策保有株は目立たず、純現金は 255 億円と時価総額の 6% にとどまる。TOB(公開買付け)で買われる可能性を示す材料は、今のところ見当たらない。
還元の点検(P3 2026-10-19):配当性向50%+余剰資本約500億円を自社株買い。中立の還元は約65%で整合。直さず。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
全国保証の稼ぎは、景気に左右されにくい積み上げ型だ。保証料は契約時に入り、30 年以上にわたって収益になる。残高は 21 兆円を超え、中期計画は 5 年後に 27 兆円まで伸びると見ている。新規の保証実行額は 2026 年 3 月期で 7.3% 増えた。住宅ローンの市場全体が伸びなくても、シェアを上げる余地はある。
提携先は約 720 機関。銀行系の保証会社と違い、地銀・信金・JA を系列を問わず取り込める。地方の金融機関は人手不足と再編で、保証の外部化を進めざるをえない。三井住友信託銀行が保証子会社を共同事業に出した 2024 年の動きは、その先ぶれだ。全国保証は中日本総合信用の持分取得で、地域の保証会社を取り込む道も開いた。
物価が上がる世界は追い風になる。住宅の価格と借入額が増え、保証の対象になる残高の名目が膨らむ。債券の運用利回りも上がる。ROE は 13% 台で、資本コストを 6 ポイント近く上回る。この差は、10 年たっても大きくは縮まない。
不安材料とされる代位弁済は、延滞割合が低く、目標の費用水準も 0.03% 程度と小さい。仮に平時の 3 倍に跳ねても、売上が崩れるわけではない。今の PER 12〜13 倍は、積み上げ型の利益に対して安すぎる。
慎重な見方
成長の源がどこにあるのか、はっきりしない。人口は減り、住宅ローンの新規貸出は年 19 兆円前後で止まる。残高が増えるのは、他社から保証を奪う場合だけで、それは銀行側の再編という他人の都合に左右される。
銀行が保証を外に出す動きは、まだ少数派だ。メガバンクと大手地銀は、グループ内の保証会社から得る利益を手放さない。ネット銀行や新しい貸し手が自前の保証を持つ流れが広がれば、独立系の出番はさらに狭くなる。
利益率は下がり続けている。営業利益率は 80% 台から 70% 台に落ちた。人件費は物価で上がるのに、保証料は競争で上げにくい。住生活への展開は、本業と違って競合が多く、利益率が低い。MFS への出資は 2.7 億円と小さいが、買収が大きくなれば、ハードルレート 10% は守りにくい。
保証の本質は、景気が悪い時に全額の損失を負う約束だ。住宅ローン金利が 3% まで上がれば、変動金利の借り手の返済が重くなり、延滞が増える。住宅価格が下がれば、担保で回収できる額も減る。上場前の 2010 年 3 月期には営業利益率が 22% まで落ちた年があった。平時の 70% を前提にした倍率は、危うい。
どちらに重みを置いたか
強い方は、積み上げ型の収益と提携先の広さを重く見る見方だと筆者は考える。売上の大半は過去の契約から出るため、数年先の利益は読みやすい。慎重な見方が突く利益率の低下と内製化は事実だが、10 年で利益を半分にするほどの力ではない。確率は楽観・やや楽観側に厚めに置き、中立に最大の重みを残した。ただし悲観の確率は 10 年で 10% と落とさなかった。保証は景気が悪い時に損失を引き受ける約束だからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,470 円7,268 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,823 円2,422 億円)。 今の値に割り戻すと 4,001 円5,316 億円、今との差 +28.5%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 8,340 円1.11 兆円 | 2,241 円2,977 億円 | +239.7% | +13.0% | 1,270 円1,687 億円 |
| やや楽観 | 26% | 6,896 円9,162 億円 | 2,040 円2,711 億円 | +186.9% | +11.1% | 2,323 円3,087 億円 |
| 中立 | 34% | 5,801 円7,707 億円 | 1,887 円2,507 億円 | +146.8% | +9.5% | 2,614 円3,473 億円 |
| やや悲観 | 18% | 3,038 円4,037 億円 | 1,558 円2,070 億円 | +47.6% | +4.0% | 827 円1,099 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,571 円2,087 億円 | 1,018 円1,353 億円 | −16.9% | −1.8% | 259 円344 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,470 円7,268 億円 | 1,823 円2,422 億円 | +134.1% | +8.9% | 7,293 円9,690 億円 |
今の株価時価総額 3,115 円4,139 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 12% 独立系が地域金融の保証を取り込む 利益 591 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 8,340 円1.11 兆円
10 年かけて、地域金融の再編が保証の外部化を後押しする。地銀や信金は人手と費用を抑えるため、自前の保証会社を手放し、全国保証に集約する。全国保証は中日本総合信用のような地域の保証会社を、割に合う価格で取り込み続ける。残高は実質で 3 割増え、市場に占めるシェアは 1 割強から 14% 近くへ上がる。保証料は物価を上回って 1.38 倍になる。中古住宅向けの保証や家賃保証が付加価値を生む。営業利益率は 72% を保ち、ROE は 14% 台に乗る。独立系という唯一の位置が、そのまま堀の広がりになる 10 年だ。
- 住宅ローン保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 27.7(実質の保証債務残高(兆円。今の値段のまま))× 価格 38(残高 1 兆円あたりの営業収益(億円・名目)=残高比 0.276% × 物価の倍率)→ 売上 1,054 億円・営業利益 759 億円。残高の実質 1.30 倍 × 価格の倍率 1.380、営業利益率 72%
倍率:事業の純利益 591 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.75 倍、時価総額 11,081 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年にわたり残高が実質で 3 割増える筋書き。地域金融の再編と中古住宅の活発化が重なる必要があり、1 割強に置く。
やや楽観 26% 提携が増え続け、周辺事業も育つ 利益 509 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 6,896 円9,162 億円
提携先の拡大がゆっくり続き、残高は実質で 18% 増える。保証料は物価並みの 1.34 倍に上がる。MFS やインテリックス HD との連携で、住宅ローンの入口に近い所からの紹介が増える。家賃保証などの周辺事業は、本業ほどの利益率は出ないが、全体の足を引っ張らない。営業利益率は 70% を保つ。ROE は 13% 前後で推移する。住宅ローン金利が緩やかに上がる中でも、都市部の中古住宅の取引が借入額を支え、新規の保証は堅調を保つ。債券の運用利回りは 2% を超え、営業外の収益が全体の利益を押し上げる。銀行の内製化は一部にとどまり、独立系の位置は揺らがない。
- 住宅ローン保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 25.1(実質の保証債務残高(兆円。今の値段のまま))× 価格 37(残高 1 兆円あたりの営業収益(億円・名目)=残高比 0.276% × 物価の倍率)→ 売上 929 億円・営業利益 650 億円。残高の実質 1.18 倍 × 価格の倍率 1.340、営業利益率 70%
倍率:事業の純利益 509 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 18 倍、時価総額 9,162 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:提携先の拡大が続き、保証料も物価並みに上がる筋書き。実績の積み上げに近く、中立の次に重くする。
中立 34% 中立:残高は緩やかに伸び、利益率は少し下がる 利益 446 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 5,801 円7,707 億円
人口と世帯数が減り、住宅ローン市場の実質の総量は微減する。全国保証は提携先の拡大とシェアの伸びで、残高を実質 6% 増やす。保証料は物価並みの 1.34 倍。営業利益率は費用の増加で 68% まで下がるが、運用益が一部を補う。銀行の内製化は一部で進むものの、独立系の位置は保たれる。代位弁済の費用は平時の水準を少し上回る程度に収まる。ROE は 12% 前後で、資本コストを大きく上回る状態が続く。筆者が重く見るのは、残高が毎年積み上がるという構造そのものだ。新規の貸出が鈍っても、すでに結んだ契約の保証料は入り続ける。自社株買いが、1 株あたりの利益を少しずつ押し上げる。特別な成長はなく、「普通に強い安定企業」に落ち着く 10 年だ。
- 住宅ローン保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 22.6(実質の保証債務残高(兆円。今の値段のまま))× 価格 37(残高 1 兆円あたりの営業収益(億円・名目)=残高比 0.276% × 物価の倍率)→ 売上 834 億円・営業利益 567 億円。残高の実質 1.06 倍 × 価格の倍率 1.340、営業利益率 68%
倍率:事業の純利益 446 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍。全体の PER 17.28 倍、時価総額 7,707 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人口減で市場の実質は微減、その分をシェアの伸びで補い、残高が実質で 6% 増える。最も重い筋書き。
やや悲観 18% 内製化と競争でシェアが伸びない 利益 365 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,038 円4,037 億円
メガバンクと大手地銀は保証をグループ内にとどめ、独立系への外部化は一部の地域金融機関にとどまる。ネット系の貸し手は自前の保証を持ち、新規の提携は増えない。保証料は競争で物価に追いつかず、1.30 倍にとどまる。残高は実質で 3% 減る。営業利益率は 62% まで下がる。住生活分野への投資は利益を生まず、費用だけが残る。ROE は 9% 台に下がるが、資本コストは上回る。保証会社としての位置は残るものの、提携先の数は横ばいで、既存契約の償却が進む一方、新規が少なく残高は緩やかに縮む。代位弁済の費用は平時の水準を少し上回って推移する。配当は維持されるが、自社株買いは細る。成長のない安定企業になる 10 年だ。
- 住宅ローン保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 20.7(実質の保証債務残高(兆円。今の値段のまま))× 価格 36(残高 1 兆円あたりの営業収益(億円・名目)=残高比 0.276% × 物価の倍率)→ 売上 741 億円・営業利益 459 億円。残高の実質 0.97 倍 × 価格の倍率 1.300、営業利益率 62%
倍率:事業の ROE 9.5%、k 7.25%、残る割合1/2 から RONIC 8.4%。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、g 3.7% で上限 15.8 倍。提携行が内製化へ動き、代位弁済の損失も増える年。ROE が 9% に落ち、上限の 7 割に置く。(上限の約 70% の 11.1 倍)
確率:銀行の内製化と保証料の競争で成長が止まる。住宅ローン市場が縮む中では、十分ありうる。
悲観 10% 独立系の役割が薄れる 利益 216 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 1,571 円2,087 億円
銀行が保証を自前で持つ動きが広がり、独立系の役割が薄れる。新規の提携は止まり、既存契約の償却だけが進む。残高は実質で 15% 減る。保証料は競争で物価に追いつかず 1.15 倍にとどまる。住宅価格の下落と金利の上昇が重なり、代位弁済の費用は平時の 3 倍の水準が数年続く。営業利益率は 45% まで下がる。住生活分野の投資は減損に至る。自己資本は厚いまま残るが、稼ぐ力は落ち、市場は「成長のない金融会社」として評価する。回収の費用も膨らむ。提携先の一部は解約に動き、保証残高の減り方が速まる。会社は買収を打ち切り、費用の削減を急ぐが、利益率の低下には追いつかない。ROE は 5% 台まで下がる。
- 住宅ローン保証(保証債務残高に対する保証料収益):数量 18.1(実質の保証債務残高(兆円。今の値段のまま))× 価格 32(残高 1 兆円あたりの営業収益(億円・名目)=残高比 0.276% × 物価の倍率)→ 売上 574 億円・営業利益 258 億円。残高の実質 0.85 倍 × 価格の倍率 1.150、営業利益率 45%
倍率:事業の ROE 5.7% が k 7.25% 以下なので PER は 1÷k=13.8 倍まで。銀行の内製化が進み、残高も減る構造的な負け筋。事業の純利益 216 億円の稼ぐ力を、上限の 7 割に置く。金融の仕入れ(借金)は無いので、売れる資産の床は数えない。(上限の約 70% の 9.7 倍)
確率:構造的に負ける筋書きは 1 割。新しい貸し手の内製化と、住宅価格の下落が重なる場合を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅ローン保証(保証債務残高に対する保証料収益)
銀行・信用金庫・JA などの住宅ローンに保証をつけ、保証料を受け取る事業。連結の営業収益の大半。
| 数量実質の保証債務残高(兆円。今の値段のまま) | 価格残高 1 兆円あたりの営業収益(億円・名目)=残高比 0.276% × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.3 | 28 | 587 | 414 |
| 10 年後 中立 | 22.6 | 37 | 834 | 567 |
取り方:数量は実質の保証債務残高 21.3 兆円(2026/03 末見込み。中期経営計画の資料)。価格は営業収益 587 億円 ÷ 21.3 兆円 = 残高 1 兆円あたり 27.6 億円(残高比 0.276%)。市場は住宅ローン残高約 190 兆円で、シェアは約 11%。物価 3% の分は価格の倍率に入れ、数量には混ぜない(10 年 1.34 倍)。営業利益 414 億円は利益率 70.5%。純利益は(営業利益 + 運用益などの営業外約 51 億円)× 0.7 で出す。 【数量・率の点検 2026-10-19】数量は実質・率は物価込み(B)。名目の伸びに物価を重ねていない(二重がけなし)。
リスクと懸念
代位弁済の急増
保証会社は、借り手が返せなくなると銀行へ残りを全額返す。景気が悪化して失業が増え、住宅価格が下がれば、延滞と回収の損失が同時に膨らむ。会社は費用を残高の 0.03% 程度と見るが、平時の 3 倍に跳ねる年は十分ありうる。利益率は 10 ポイント以上動く。
住宅ローン金利の上昇
金利が 3% 前後まで上がれば、変動金利の借り手の返済負担が増す。新規の貸出は細り、延滞も増える。運用している債券の利回りは上がり、営業外の収益は増えるが、保証料のもとになる新規契約が落ちる分を埋めるには足りない可能性がある。
銀行の保証内製化
メガバンクや大手地銀はグループ内に保証会社を持つ。ネット銀行や新しい貸し手が自前の保証を持てば、独立系に回る契約は減る。提携先の約 720 機関は多いが、1 行ごとの保証料の割合が下がれば、残高の伸びは鈍る。
人口減と住宅市場の縮小
世帯数は 2030 年前後から減り、空き家が増える。新築着工は頭打ちで、実質の貸出件数は横ばいか微減になる。中古住宅の取引が増えても、新築の減少を補いきれないと、残高の伸びは提携先の拡大だけに頼ることになる。
利益率の低下
営業利益率は 2020 年代前半の 80% 台から 70% 台へ下がった。人件費は物価で上がるが、保証料は競争で上げにくい。住生活分野への展開は、本業ほどの利益率を見込みにくく、全体の利益率をさらに押し下げる恐れがある。
買収の価格
中期計画は買収で残高を 2 兆円増やす構えだ。保証会社は買い手が多く、価格が上がりやすい。成長投資のハードルレート 10% を割る高値づかみをすると、ROE が下がり、積み上げ型の利益の良さを自ら削ることになる。
今後の分かれ目
- 国内の住宅ローン金利が 3% 前後まで上がり、新規貸出が 2 割以上減る
- 10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。残高の伸びが止まり、延滞の増加が利益率を押し下げる。
- 地銀・信金が保証会社を手放し、全国保証への集約が相次ぐ
- 10 年の楽観・やや楽観の確率を上げる。残高の伸びが計画を超え、独立系の堀が広がる。
- ネット銀行や大手地銀が保証を自前で持つ動きを強める
- 10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。独立系に回る契約が減り、保証料の競争も強まる。
- 代位弁済の費用が残高の 0.05% を超えて高止まりする
- 営業利益率の想定を 3〜5 ポイント引き下げる。倍率も上限の 7 割より低く置く。
- 買収で残高を増やす際、高い価格で買う案件が続く
- 成長の質が落ちるとみて、ROE と倍率の想定を下げる。自社株買いが減るかも確かめる。
見ておくもの
- 保証債務残高と新規の保証実行額(四半期ごとの伸び)
- 代位弁済率と延滞割合(残高比)
- 提携金融機関の数と、中日本総合信用のような持分取得の動き
- 営業利益率と営業外の運用益(運用利回り 2% の達成度)
- 住宅ローンの新規貸出額と変動金利の水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER 12〜13 倍を見ずに、k 7.25%・g 3.7% から出した正当化 PER の 7〜8 割台半ばに置いた。中立の PER 13 倍前後は、今よりやや高い。k を 7.5% にすれば 12 倍前後になり、割安の度合いは小さくなる。この差は読む側も知るべきなので本文に書いた。純現金 255 億円は時価総額の 6% で、事業に要らない現金とは分けなかった(保証の支払い準備と運用資産を兼ねるため)。借りている物件は事務所のみで、2028/03 期からの新リース会計基準の影響は小さい。数字は今と同じ形(家賃込みの営業費用)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.94→18.75 倍・やや楽観 PER 14.4→18 倍・中立 PER 12.96→17.28 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。