結論
アサックスは、首都圏の不動産を担保に事業者や個人へ貸すノンバンクだ。筆者の結論は、今の値段はやや安い、というものだ。ただし割安の幅は2割ほどで、確信を持てる大きさではない。
稼ぎの源は、貸す金利と借りる金利の差だ。平均の貸出金利は5.9%、借入の平均金利は1.5%で、差は4ポイントを超える。貸倒償却は過去5期でゼロ。自己資本比率は4割と、ノンバンクとしては際立って厚い。
弱みは二つある。一つは金利の上昇だ。借入は銀行からの調達が中心で、金利は3%台半ばへ上がっていく。貸出金利をどこまで引き上げられるかが、10年の利益を決める。もう一つは資本の抱え込みだ。純利益の8割を内部にためるため、ROEは7%台にとどまる。
10年の中立は、貸付残高が実質で1.25倍、営業利益が約106億円、純利益が約71億円。強気の見方は、銀行が不動産向けの貸出を絞り、同社が顧客を取り込む姿だ。慎重な見方は、不動産市況の悪化と金利負けが重なる姿である。
バリュー投資の観点から
事業は分かりやすい。資金需要のある事業者に、担保を取って貸し、金利の差で稼ぐ。貸倒れが少なく、費用も軽い。
良い点は三つある。第一に、担保の見方が保守的で、5期連続で貸倒償却がゼロだ。第二に、自己資本比率が4割あり、不況の耐久力が高い。第三に、営業利益率が66%と高く、人が57名で回る。
気になる点も三つある。第一に、利益の源が借入と貸出の金利差で、金利の上昇に弱い。第二に、担保が首都圏の不動産に集まり、市況が崩れると全体が同時に痛む。第三に、資本の使い方が悪い。利益の8割をため、ROEは7%台で、ためた資本が稼いでいない。
筆者は、この会社を「質の良い、ただし資本を持て余す貸し手」と見る。株主として持ち続けたいかは、配当を厚くするか、貸付の拡大で資本を使い切るかにかかる。今の時価総額は、純資産の5割台にとどまる。その差は、資本の使い方への割引として受け止めるべきで、割安の証明ではない。
安全域は薄くない。貸倒れの履歴と自己資本の厚さが下支えになる。ただし、利益を伸ばす力は金利の局面次第だ。
何で稼ぐ会社か
アサックスは、不動産を担保に事業者や個人へお金を貸す会社だ。1969年に自営業者向けの貸付で創業し、1995年に今の社名になった。貸付金の使い道は問わず、担保は不動産に限る。営業は首都圏が中心だ。
2026年3月期の営業収益は88億円で、うち84億円が貸付、3億円が賃貸だ。貸付残高は1,120億円、貸付件数は5,305件で、顧客は約4,200先。1顧客の平均は2,600万円台と、銀行の大口融資より小さい。
残高の75%は事業者向け、25%は個人向けだ。業種別では不動産賃貸業が25%、不動産業が14%を占める。つまり、不動産で稼ぐ人に、不動産を担保に貸している。平均の貸付期間は5.1年。利率は5〜7%の帯に7割が集まる。
費用は、借入の利息、人件費、貸倒れに備える引当だ。従業員は57名と少なく、1人当たりの貸付残高は約19億円になる。借入は744億円で、平均金利は1.50%。都市銀行、地方銀行、信託銀行のほか、貸付債権の証券化でも調達する。
関連事業は三つある。信用保証、不動産賃貸、債権回収のために取得した不動産の販売だ。いずれも小さく、利益の大半は貸付の利ざやで決まる。
優良さと弱いところ
堀は、審査の速さと担保の見方にある。ただ、広い堀ではない。
強みは、貸倒れの少なさだ。過去5期の貸倒償却はゼロで、引当率は0.11%だ。担保は不動産で、評価額に対して控えめに貸す姿勢を、格付会社の日本格付研究所も評価している(長期格付けはA−、見通しは安定的)。銀行が断る案件を、担保を厳しく見ることで拾う。この審査の力は、長い貸金業の歴史で磨かれた。
自己資本比率は40%を超える。ノンバンクとしては際立って厚く、不況でも借り換えに困りにくい。
一方、値決めの力は強くない。貸出金利は5.9%と、銀行より高い。それでも、顧客は銀行に断られたり、時間がかかったりする人たちで、金利より速さを選んでいる。銀行が不動産向けの審査を緩めれば、顧客は戻る。商品は単一で、他社がまねしやすい。
資本効率は低い。ROEは7.5%、資本コストを下回りかねない水準だ。原因は、利益の8割を内部にためる配当政策にある。事業そのものの収益性は高く、営業利益率は66%に達する。借金を増やして貸付を伸ばす余力があるのに、使い切っていない。
経営は、オーナー色が濃い。34.56%を持つフレキシブルの代表者は、開示上アサックスの社長と同じ名前だ。意思決定は速いが、少数株主の意見は届きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は成熟しており、景気より不動産の価格と銀行の姿勢に左右される。
日本貸金業協会の2025年度の調査では、協会員の事業者向け貸付残高は2023年から増えているが、コロナ前の2020年の水準には戻っていない。2025年は無担保が4.6%増えた一方、有担保は0.5%減った。つまり、不動産担保の貸出市場は、業界全体では伸びていない。
登録の貸金業者は1,473者ある。市場の大きさは公的な統計から取れなかった。筆者の粗い推定では、不動産を担保にした事業者向けの貸付残高は、ノンバンク全体で1〜3兆円の範囲にある。アサックスの事業者向けの残高は約840億円で、シェアは数%と見る。根拠は弱い。
競争は三つある。第一に、地方銀行と信用金庫だ。金利はずっと低いが、審査に時間がかかり、不動産業者向けは絞られやすい。第二に、同じ不動産担保を扱うほかのノンバンクだ。名前を挙げて残高を比べられる開示は確認できなかった。第三に、ネット系の貸し手や不動産の証券化といった新しい調達の形が、中小の不動産オーナーの選択肢を広げている。
数量の物差しは、実質の平均貸付残高とした。物価の分は価格の欄に入れた。金利が上がる世界では、借入の費用が先に上がり、貸出金利の引き上げが後から追う。この遅れの大きさが、10年の利益を決める。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は年1回で、2026年3月期の配当性向は18.4%だった。自社株買いの方針は確認できなかった。
利益の8割を内部にため、貸付の原資と自己資本にあてる。自己資本は528億円で、時価総額298億円の1.8倍ある。株価純資産倍率は0.56倍だ。ただし、これは割安の根拠にはならない。資本が稼ぐ力、つまりROEが7.5%にとどまるためだ。
借入は744億円。主に無担保で、都市銀行や地方銀行から借りる。一部の契約に財務制限条項がある。証券化の実績もあり、調達の窓口は広い。
大株主は、フレキシブルが34.56%を持つ。ほかに大株主の一覧はない。10年以内の買収の確率は、kabufuの推計で28%だが、支配株主の意向が決め手になる。M&Aの歴史は乏しく、米国子会社のASAX Americaを連結に入れた程度だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、銀行の後退と、この会社の審査の強さを組み合わせる。
2026年3月期の貸付残高は1,120億円で、前期から9%増えた。期中の貸付は474億円で、回収の380億円を94億円上回る。直近の四半期は営業収益が24%増え、営業利益は28%増えた。会社は2027年3月期の営業利益を63億円と見込み、5期連続の最高益を狙う。
銀行は不動産向け貸出の規制や自己資本の制約を受ける。金利が上がり、不動産の評価が厳しくなれば、断られる案件は増える。アサックスの顧客は、銀行から断られる案件を担保の力で拾う。残高が毎年1割前後伸びる勢いが、10年続く姿は荒唐無稽ではない。
金利の上昇も、味方になる。自己資本4割で、借金に頼らない部分が厚い。貸出金利が借入金利の上昇に合わせて上がれば、自己資本で賄う部分の利益は丸ごと増える。貸出の平均期間は5.1年と短めで、新規の貸付はすぐ新しい金利になる。
貸倒れはほぼゼロだ。5期連続で償却がなく、引当率も0.11%と低い。10年後、貸付残高が名目で2,500億円台に増え、営業利益が152億円になる。この筋書きの確率を7%とした。
慎重な見方
慎重な見方は、金利と不動産の両方に目を向ける。
借入は744億円で、平均金利は1.50%。この水準は10年は続かない。借り換えのたびに、金利は3.5%に近づく。借入が増えれば、費用の増え方はさらに大きい。貸出金利の平均は5.9%で、7割が5〜7%に集まる。この水準を上げるには、顧客に高い金利を受け入れてもらう必要がある。顧客は銀行にも相談できる。
担保の不動産は、首都圏に偏る。貸付先の4割弱が不動産賃貸業と不動産業で、不動産が下がれば、担保の価値と顧客の返済力が同時に落ちる。貸倒償却が5期ゼロなのは、価格が上がり続けた期間の結果でもある。
協会員の有担保の事業者向け残高は、2025年に0.5%減った。市場は伸びていない。アサックスは、シェアの上昇に頼って伸びている。
資本の使い方も問題だ。利益の8割をためるため、残高が増えてもROEは7%台のままだ。ためた資本は、資本コストを下回る稼ぎしか生まない。
最後に、支配株主が34.56%を持つ。社長との関係は、少数株主にとって、意思決定の読みにくさになる。
どちらに重みを置いたか
結論は、今の値段はやや安い、というものだ。確率を重ねた価値は約356億円で、時価総額298億円を2割ほど上回る。
分かれ目は、貸出金利をどこまで引き上げられるかだ。借入金利の上昇のうち、7割を転嫁できれば中立の姿になる。転嫁が3割台なら、利益は実質で細る。10年の中立は、営業利益106億円、ROE7.3%と置いた。
強気の言い分は、残高の伸びと貸倒れの少なさで、慎重な見方は金利と市況だ。どちらの根拠も強く、確率は中立の37%に集め、慎重側の筋書きに合計38%を置いた。
見るべき点は三つ。借入の調達金利と貸出金利の差、貸倒償却と担保の評価、そして配当政策の変化である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,193 円723 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 307 円101 億円)。 今の値に割り戻すと 1,199 円395 億円、今との差 +35.6%、 期待の年率 +11.0%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,845 円1,268 億円 | 528 円174 億円 | +394.7% | +17.3% | 306 円101 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,151 円1,039 億円 | 418 円138 億円 | +303.8% | +15.0% | 642 円212 億円 |
| 中立 | 37% | 2,599 円857 億円 | 340 円112 億円 | +232.4% | +12.8% | 1,087 円358 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,245 円411 億円 | 234 円77 億円 | +67.3% | +5.3% | 370 円122 億円 |
| 悲観 | 13% | 646 円213 億円 | 82 円27 億円 | −17.7% | −1.9% | 95 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,193 円723 億円 | 307 円101 億円 | +182.8% | +11.0% | 2,500 円824 億円 |
今の株価時価総額 884 円292 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 銀行が貸出を絞り、顧客を取り込んで残高が実質で7割増える 利益 100 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 3,845 円1,268 億円
銀行が不動産向けの貸出に慎重になり、断られた事業者がアサックスに流れる。貸付残高は実質で1.7倍になり、名目では2.3倍の2,500億円台へ進む。
貸出金利は借入金利の上昇を満額で映して上がり、利ざやは今の水準を保つ。担保の評価を厳しく見る姿勢は崩れず、貸倒れはほぼゼロのままだ。営業利益は約152億円、純利益は約100億円になる。
自己資本は約1,050億円で、自己資本比率は35%まで下がる。借金を増やして貸付を伸ばす分、資本の使い方は効率が上がる。ROEは9.5%と、資本コストをようやく上回る。それでも堀は広くない。値決めは銀行との競争に左右され、この姿は10年続けて顧客を取り続けた場合に限られる。
- 不動産担保ローン:数量 1,829(平均営業貸付金残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.14(実質残高1億円あたりの年間収益(億円・名目。物価の倍率に貸出金利の変化を重ねた指数))→ 売上 250 億円・営業利益 149 億円。実質残高1828億円、収益率10.2%(物価込みの名目)
- 不動産賃貸:数量 1.0(稼働の指数(今を1))× 価格 4.62(年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。賃料は物価並み、償却は取得時の値段のまま
倍率:事業の純利益 100 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.68 倍、時価総額 1,268 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏の中小事業者の資金需要は底堅いが、銀行が不動産向けを絞り続ける保証はない。残高が7割増えて、貸出金利の上昇も満額で転嫁できる姿は、うまくいった場合の上限に近い。7%とした。
やや楽観 18% 残高は実質で45%増え、金利の転嫁もほぼ済む 利益 85 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,151 円1,039 億円
貸付残高は実質で1.45倍、名目で約2,100億円になる。顧客の中心は、銀行が扱いにくい中小の不動産オーナーと不動産業者だ。
貸出金利は借入金利の上昇のほぼ9割を映して上がる。利ざやは今よりわずかに縮むが、残高の伸びがそれを補う。貸倒れは平時の水準で、不動産市況が崩れる年は起きない。営業利益は約129億円、純利益は約85億円。
自己資本は約1,020億円。配当性向は2割台前半に上がるが、ためる利益の大半は残る。ROEは8.4%で資本コストにわずかに届き、ためた利益がその分だけ価値を持つ。
堀は広がらない。値決めは銀行との競争に縛られ、強気の筋書きほどシェアを奪えない。それでも、貸倒れが少なく自己資本が厚い体質は保たれ、配当も少しずつ増える。
- 不動産担保ローン:数量 1,572(平均営業貸付金残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.13(実質残高1億円あたりの年間収益(億円・名目。物価の倍率に貸出金利の変化を重ねた指数))→ 売上 211 億円・営業利益 126 億円。実質残高1571億円、収益率10.0%(物価込みの名目)
- 不動産賃貸:数量 1.0(稼働の指数(今を1))× 価格 4.62(年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。賃料は物価並み、償却は取得時の値段のまま
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.18 倍、時価総額 1,039 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近は残高が毎年1割前後伸びており、自己資本の余力もある。実質で45%の伸びは、この勢いが半分ほどに落ち着いて続く姿で、十分ありうる。18%とした。
中立 37% 残高は実質で25%増え、利ざやは少し縮んでROEは7%台 利益 71 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,599 円857 億円
貸付残高は実質で1.25倍、名目では約1,880億円と1.7倍になる。伸びの上限は、自己資本の積み上がりと、銀行が許す借入の枠で決まる。
借入金利は3.5%へ上がる。貸出金利は、その上昇の7割を映して上がる。差の3割は、銀行との競争と、既存の顧客の金利への抵抗で取れない。利ざやは今の6.7ポイントから6.1ポイントに縮み、営業利益は約106億円と、今の1.8倍になる。
純利益は約71億円。純利益の2割を配当に回し、残りをためるため、自己資本は約975億円に膨らむ。自己資本比率は45%に上がり、ROEは7.3%と今とほぼ同じだ。残高は増えるが、資本が稼ぐ力は変わらない。
- 不動産担保ローン:数量 1,365(平均営業貸付金残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.13(実質残高1億円あたりの年間収益(億円・名目。物価の倍率に貸出金利の変化を重ねた指数))→ 売上 176 億円・営業利益 104 億円。実質残高1364億円、収益率9.6%(物価込みの名目)
- 不動産賃貸:数量 1.0(稼働の指数(今を1))× 価格 4.62(年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。賃料は物価並み、償却は取得時の値段のまま
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 857 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏の中小向け不動産担保融資は成熟した市場で、協会員の有担保の事業者向け残高は直近で横ばいだった。その中でシェアを少しずつ取り、資本の増える範囲で伸ばす姿を中立とした。37%とした。
やや悲観 25% 転嫁が進まず、不良債権も増えて利益は伸びない 利益 47 億円 · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 1,245 円411 億円
銀行とネット系の貸し手が中小の不動産オーナーを取り込み、アサックスは貸出金利を借入金利の上昇に合わせきれない。転嫁できるのは3割台にとどまる。
貸付残高は実質で5%減り、名目では約1,430億円。担保の値上がりが止まり、評価額の見直しで貸倒れが増える。貸倒コストは平均で残高の0.5%に上がる。
営業利益は約70億円、純利益は約47億円。名目では今の1.2倍だが、物価が1.34倍になるので、実質では細っている。ROEは5.4%と資本コストを大きく下回り、積み上がる自己資本は稼ぎを生まない。
自己資本比率は50%を超えるが、厚さは強みにならず、使い道のない資本になる。配当は性向を上げないかぎり増えず、株主の取り分は利益の伸びより遅れる。
- 不動産担保ローン:数量 1,051(平均営業貸付金残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.12(実質残高1億円あたりの年間収益(億円・名目。物価の倍率に貸出金利の変化を重ねた指数))→ 売上 125 億円・営業利益 68 億円。実質残高1051億円、収益率8.9%(物価込みの名目)
- 不動産賃貸:数量 1.0(稼働の指数(今を1))× 価格 4.62(年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。賃料は物価並み、償却は取得時の値段のまま
倍率:事業のROEは5.4%で資本コスト8.25%を大きく下回る。上限は1÷k=約12.1倍で、ためた利益の価値は額面を下回る。利益が実質で細り、成長も止まる筋書きなので、上限の72%の8.7倍とした。
確率:借入金利が3%台半ばに上がる一方で、貸出金利を上げられない局面は現実的にある。不動産市況の停滞と銀行の巻き返しが重なる姿として、25%とした。
悲観 13% 不動産市況の悪化と金利負けが重なり、利益が今を下回る 利益 28 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 646 円213 億円
首都圏の不動産市況が大きく崩れる。担保の評価額が下がり、ほぼゼロだった貸倒れが毎年残高の1%を超える。10年の途中で、回収の遅れと担保の処分損で自己資本が約100億円削られる。
銀行は貸出枠を絞り、借入金利は4%に上がる。貸出金利は借入金利の上昇の2割しか映せない。優良な顧客は銀行に戻り、残るのは銀行が断った案件が中心になる。貸付残高は実質で25%減り、名目では約1,130億円と横ばい。
営業利益は約41億円、純利益は約28億円で、今の7割にとどまる。配当は大きく細り、ROEは3.9%。倒れはしないが、資本を食いつぶしながら細る会社になる。
- 不動産担保ローン:数量 840(平均営業貸付金残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.12(実質残高1億円あたりの年間収益(億円・名目。物価の倍率に貸出金利の変化を重ねた指数))→ 売上 97 億円・営業利益 39 億円。実質残高839億円、収益率8.6%(物価込みの名目)
- 不動産賃貸:数量 1.0(稼働の指数(今を1))× 価格 4.16(年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。賃料は物価並み、償却は取得時の値段のまま
倍率:事業のROEは3.9%で資本コストを大きく下回り、稼ぐ力は純利益÷k=約340億円どまり。成長がなく、担保の質も落ちるので、上限の約6割の7.5倍とした。
確率:貸倒れがほぼ出ていない会社だが、担保は首都圏の不動産に集中する。市況の悪化と調達難が重なる構造的な負けとして、13%とした。この数字を、k の上乗せでも重ねて数えていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産担保ローン
不動産を担保に、事業者(残高の75%)と個人(25%)へ資金使途自由で貸す。金利差と手数料が収益。
| 数量平均営業貸付金残高(億円・今の値段の実質) | 価格実質残高1億円あたりの年間収益(億円・名目。物価の倍率に貸出金利の変化を重ねた指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,073 | 0.08 | 84 | 56 |
| 10 年後 中立 | 1,365 | 0.13 | 176 | 104 |
取り方:期首1,026億円と期末1,120億円の平均残高1,073億円に、貸付の収益84.35億円を割った7.9%。約定利率5.92%より高い差は、手数料など利息以外の収入と見る(内訳は未確認)。利益は営業利益58.2億円から賃貸の推定1.8億円を引いた値で、支払利息を引いたあとの利益。数量は実質、価格は物価込みの名目(二重がけなし)。
不動産賃貸
保有する賃貸不動産の賃料。規模は小さい。
| 数量稼働の指数(今を1) | 価格年間賃料収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 3.44 | 3 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 4.62 | 5 | 3 |
取り方:賃貸の営業収益3.44億円。利益は未開示のため、減価償却と維持費を引いた推定1.8億円。賃料は物価で上がるが、減価償却は取得時の値段のままで増えないので、10年で利益率は少し上がる。
リスクと懸念
金利の上昇と転嫁の遅れ
借入の平均金利は1.50%で、3.5%近くまで上がる。貸出金利を同じだけ上げられるとは限らない。転嫁が3割台にとどまれば、10年後の利ざやは大きく縮み、営業利益が実質で細る。借入が貸付の原資の6割近くを占めるので、影響は直接に出る。
不動産市況の悪化
担保は不動産100%で、首都圏に偏る。貸付先の4割弱が不動産賃貸業と不動産業だ。市況が崩れると、担保の評価額が下がり、顧客の返済力も同時に落ちる。5期連続の貸倒償却ゼロは、上昇相場の結果でもある。担保の評価額に対する貸付比率は、開示から確認できなかった。
銀行との競争
銀行は金利が低い。不動産向けの審査を緩めれば、優良な顧客は戻る。残るのは銀行が断った案件で、質が落ちる。協会員の有担保の事業者向け残高は、2025年に前年から0.5%減っており、市場全体は伸びていない。
資金調達の依存
借入744億円の大半は銀行で、一部に財務制限条項がある。銀行が貸出態度を変えれば、貸付の伸びは止まる。格付けはA−で安定的だが、金融環境が急変すれば、調達の費用も量も影響を受ける。
単一商品と支配株主
利益の大半が不動産担保ローンで、商品は一本だ。従業員は57名と少なく、人への依存が大きい。34.56%を持つ支配株主の意向が、配当や資本政策に強く効く。少数株主が資本の使い方を変えさせるのは難しい。
規制の変化
貸金業法の総量規制は個人向けに適用され、個人は残高の25%を占める。事業者向けは対象外だが、金利の上限や貸金業の登録要件が変われば、事業の形が変わる。過去のグレーゾーン金利の返還のような制度変更は、業界の教訓として残る。
今後の分かれ目
- 借入の平均金利が3%を超えても、貸出の平均約定利率が6%台前半にとどまった
- 転嫁が進んでいない合図だ。利ざやの縮小として、慎重な筋書きの確率を上げる。
- 貸倒償却が初めて計上され、引当率が0.3%を超えた
- 担保の評価か審査に緩みが出た合図だ。貸倒コストの前提を引き上げ、やや悲観の確率を上げる。
- 貸付残高の伸びが年5%を割った
- 銀行の巻き返しか、会社が貸し控えている合図だ。数量の置き方を下げる。
- 配当性向が3割を超えた、または自社株買いを始めた
- 資本の使い方が改善する合図だ。ROEが上がり、中立の倍率の根拠が強まる。
- 首都圏の不動産価格が2割以上下落した
- 担保の評価額が下がる。貸倒れと自己資本の毀損を見込み、悲観の確率を上げる。
- フレキシブルが株式の買い増しや公開買付けを発表した
- 価格が付く可能性がある。ただし、価格が事業の価値を反映しているかを確かめる。
見ておくもの
- 借入の平均調達金利と、貸付の平均約定利率の差
- 貸倒償却額と貸倒引当率
- 営業貸付金の残高と、期中貸付額・回収額
- 自己資本比率と配当性向
- 首都圏の不動産価格と、貸付先の業種構成
- 日本貸金業協会の有担保の事業者向け貸付残高
倍率と資本コストの決め方
起点は2026年3月期の実績(営業収益88億円、営業利益58億円)で、時価からは出発していない。会社の2027年3月期予想(営業利益63億円)は、1Qの好調を受けた据え置きなので、10年の筋書きの出発点としては参考にとどめた。
倍率は式から決めた。資本コストは8.25%(基本7.5%+quality0.75%)。ROEが資本コストに届かない筋書きでは、PERの上限が1÷kの約12.1倍になる。中立はその83%、慎重側は72%と60%に置いた。他社や過去の倍率は、判断に使っていない。
金利は、借入が借り換えで3.5%に向かうとし、貸出金利は転嫁の割合(強気は10割、中立は7割、慎重は3〜4割、悲観は2割)で上がるとした。数量は実質の平均残高、価格は物価を含む名目の収益率で、二重がけはない。
数字の置き場所は、貸付の収益と費用を残高から積み上げた試算である(notes/8772.md)。賃貸の利益は未開示で、推定値だ。新リース会計基準の影響は小さい(事務所の賃借のみ)。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality0.75%を足した。不動産市況の悪化や支配株主との関係など個別の事情は、k に足さず、筋書きと確率で表した。