結論
野村総合研究所は、証券・銀行・保険の基幹システムを共同利用で動かす国内最大級のITサービス会社だ。筆者の結論は割高で、堀の強さは認めるが、AIエージェントが技術者の時間で売る部分を削るぶんだけ利益が今より小さくなる、というものだ。
国内事業は売上の86%。このうち証券バックオフィスの共同システムや投信販売の基盤、つまり顧客が逃げられない「記録の正本」が4割強を占める。ここは数量がほぼ保たれ、価格も物価並みに上がる。残る6割弱はコンサルや個別開発の人月で、AIエージェントが肩代わりする。コンサルにはAI導入支援の需要があり、同業より傷は浅いと見て、国内全体では数量を今の0.79倍とした。海外は北米・豪州の買収が減損に終わった人月型で、より重く置いた。
中立の売上は今の0.97倍の7,878億円、純利益は1,108億円。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ+0.75%で8.25%、倍率は、共同利用の部分(利益の約55%)だけ長期の名目の伸びg+1.5%の式、人月の部分はg0%の式で、合わせて12.6倍。本質価値は3.2兆円に対して10,205億円、差は-68%となった。やや悲観と悲観の確率は合わせて37%にとどめ、堀の強さを確率でも倍率でも引き直していない。
バリュー投資の観点から
事業の堀の面では、証券・銀行の基幹システムに深く組み込まれた共同利用型システムという切り替えにくい構造を高く評価できる。再投資の負担は大きくなく、稼いだ利益の多くを株主に戻せる体質で、オーナー利益は見た目の純利益に近いと考えやすい。一方、資本配分については、2021年以降の海外M&Aで積み上げたのれんの大半を2026年3月期に減損した事実が重く、経営が買った会社の価値をどこまで見極めて買っているかに疑問を残す。10年後もこの事業が存在し今より強いかという点では、国内の基幹システム事業は極めて確度が高いが、海外事業の再建力は未知数で、その分だけ全体の確信度を下げて見るべきだと考えられる。安全域の観点では、国内事業だけなら高い倍率を払う理由があるが、海外ののれん減損という資本配分の失敗を経た今、同じ値段を払うにはより高い安全域を求めるのが筋だろう。
何で稼ぐ会社か
NRIの事業は4つの国内セグメントと海外事業に分かれる。コンサルティングは経営・ITコンサルティングと機関投資家向けの経済調査を担い、AI活用支援の需要が伸びている。金融ITソリューションは証券・銀行・保険向けの基幹システムが中心で、証券バックオフィスの共同利用型システム「THE STAR」(83社が利用)や投資信託販売を支える「BESTWAY」など、業界の取引の根幹を担うインフラ的なシステムを多数運用し、投資信託販売関連で約8割、東証出来高の約5割に関わるという高いシェアを持つ。産業ITソリューションは製造・流通・公共分野向けのシステム構築・運用で、IT基盤サービスはサイバーセキュリティ・クラウド基盤・デジタルトラスト関連の需要が伸びている。海外事業は2021年に米国のITコンサル会社Core BTSを522.9億円で買収して北米拠点を築き、豪州のソフトウェア検証会社Planitグループが英Shift Left・ニュージーランドQual IT Solutionsを買収して拠点を広げてきたが、2026年3月期に北米での金利高止まりによるIT投資抑制と豪州での事業統合の遅れが重なり、両社でのれん等969億円の減損を計上した。顧客は金融機関・官公庁・製造業など幅広く、一度導入したシステムは切り替えコストが高いため保守・運用によるストック収益が安定した収益基盤になっている。
優良さと弱いところ
NRIの堀は、証券・銀行・保険という金融機関の基幹システムに深く組み込まれた共同利用型システム群にある。THE STARやBESTWAYのように複数の金融機関が同じシステムを使う共同利用モデルは、1社あたりの開発コストを下げながら乗り換えコストを高め、競合(SCSK・TIS・日鉄ソリューションズ・BIPROGY・電通総研)が同じ地位を奪うのは容易ではない。ROEは減損前の実力ベースで20%前後と業界でも高く、無借金に近い財務(純有利子負債は時価総額の2.2%)と自己資本比率45%の健全性を併せ持つ。弱点は海外事業で、Core BTS・Planitという買収した会社の統合・ガバナンスに課題を抱え、2026年3月期にのれんの大半を減損した実績が示すように、海外でのM&Aを軌道に乗せる力はまだ証明されていない。国内の人材不足を背景に単価の決定力は強まっているが、生成AIが人月商売そのものの前提を変えるリスクも抱えている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は2025年に7.5兆円規模(IDC Japan)で、2030年まで年6%前後の成長が見込まれる。レガシー基幹系の刷新、データ活用、AI実装の需要が牽引役で、技術者不足を背景に人月単価は物価3%を上回って上昇しやすい局面にある。NRIは金融分野で高いシェアを持つが、同じ領域にはSCSK・TIS・日鉄ソリューションズ・BIPROGYが並び、コンサルティングでは電通総研、中小企業向けでは大塚商会が競合する。生成AIは人月商売の供給構造を変える最大の論点で、開発工数の削減が単価の下落につながるのか、逆に高度化で単価が上がるのかはまだ見えていない。NRIはAIコンサルや開発支援の需要を取り込む側に立とうとしているが、SHIFTのような特化型やオフショア開発の拡大が中堅以下の単価競争を強めている。海外事業はNRIにとってM&Aで買った複数の中小ITコンサル会社の集合体であり、金利環境や景気によるIT投資の振れをそのまま受ける構造にある。2026年3月期の北米IT投資抑制と豪州の金融分野での失注は、海外のこうした脆さを露呈させた。循環は国内ITサービス全体では緩やかだが、海外のM&Aで積み上げた事業は景気や金利の影響をより強く受ける。
【AIエージェント代替】国内ITの市場全体は伸びても、人の時間で売る受託の数量は減る。共同利用型の記録の正本は残るので、NRIは中立で売上が今の0.97倍と、同業より縮みが小さい。
資本政策と M&A
配当は増配を続け、2026年3月期も前期比増配、自社株買いも700億円を実施する方針で、株主還元は純利益の落ち込みにかかわらず維持された。これは国内事業のキャッシュ創出力が厚いことの裏返しでもある。M&Aは海外展開の主な手段で、2021年のCore BTS買収(522.9億円)、Planitグループによる英Shift Left・NZ Qual IT Solutionsの買収と、北米・豪州で拠点を広げてきたが、2026年3月期にその多くを減損する結果になった。今後は海外事業の損益トントン化(2027年3月期目標)を目指す一方、国内で稼いだ資金を使った追加の海外M&Aをどこまで規律を持って続けられるかが問われる。政策保有株や買われる側としてのTOBの可能性は低く、野村証券グループの一角という位置づけが安定株主構造を支えている。
点検済み:中立の営業利益率20.2%は会社の27年3月期予想20.9%・28年3月期21.7%より低い(26年3月期は一時的に7.1%)。直近のピーク17.6%を超えるのは予想が前提で、数字は据え置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内のITサービス需要は技術者不足を背景に拡大が続き、NRIは金融機関の基幹システムという切り替えコストの高い領域で2026年3月期も全セグメント増収増益を達成した。コンサルティングはAI活用支援の需要で伸び、金融ITソリューションは営業利益21%増と価格決定力の強さを示している。中期経営計画が掲げる2029年3月期売上9,500億円・営業利益2,000億円・ROE25%・AI関連売上3,000億円という目標は、国内事業の実力だけで十分届く範囲にあり、海外事業がこの先トントンに戻るだけでも上振れ要因になる。2026年3月期の969億円の減損はすでに計上済みの過去の清算であり、同じ失敗を繰り返さない限り、今後はキャッシュを生む国内事業の成長とAI関連の新規需要が業績を押し上げる。前期を上回る配当と700億円の自社株買いは、海外の躓きがあっても国内のキャッシュ創出力が揺らいでいないことの証拠であり、ROE20%台への回復は時間の問題だと見ることができる。
慎重な見方
NRIの海外事業は2021年のCore BTS買収、Planitグループによる複数の買収で積み上げてきたが、2026年3月期にそのほとんどを減損した。これは一時的な不運ではなく、海外のガバナンス・統合力の不足という構造的な問題を示している。経営が海外事業は2027年3月期に損益トントンと言っても、同じ経営が同じ見通しを外した直後の言葉であり、額面通りには受け取りにくい。中期経営計画が掲げるROE25%・AI関連売上3,000億円という目標も、ここ数年の国内事業の実績の延長に過ぎず、海外の再建が進まなければ全社のROEは20%にも届かない可能性がある。さらに、生成AIによる開発工数の削減は、NRIの稼ぎの大きな部分を占める人月商売の単価決定力そのものを脅かす構造変化であり、技術者数×単価という積み上げ方自体が今後10年で成り立たなくなるリスクがある。今の時価総額は過去の実力ベース営業利益の高い成長を前提にしたもので、海外の失敗が続けば倍率の圧縮だけで値段が下がる場面が起こりやすい。
どちらに重みを置いたか
強気は共同システムの堀とAI実装の需要を言い、慎重は人月の部分の置き換えを言う。どちらも正しい。人月は縮むが堀は残るので、縮みは中立の数量に入れ、確率はやや悲観と悲観を37%にとどめた。堀の強さは倍率の残る割合で見ており、確率では引いていない。AI代替の重さは同業の人月型より軽く、差は-68%と会社ごとの違いが出た。共同利用の部分だけ、堀の証拠が2つ以上そろうので長期の名目の伸びを+1.5%に置いたが、差はなお大きい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,827 円1.52 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,272 円6,853 億円)。 今の値に割り戻すと 2,344 円1.26 兆円、今との差 −62.2%、 期待の年率 −4.0%(資本コスト 7.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,713 円2.54 兆円 | 1,714 円9,235 億円 | +3.7% | +0.4% | 450 円2,424 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,864 円2.08 兆円 | 1,501 円8,084 億円 | −13.4% | −1.4% | 1,180 円6,358 億円 |
| 中立 | 34% | 3,270 円1.76 兆円 | 1,353 円7,288 億円 | −25.4% | −2.9% | 1,572 円8,467 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,818 円9,792 億円 | 1,062 円5,720 億円 | −53.5% | −7.4% | 720 円3,878 億円 |
| 悲観 | 12% | 670 円3,610 億円 | 804 円4,332 億円 | −76.2% | −13.4% | 177 円953 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,827 円1.52 兆円 | 1,272 円6,853 億円 | −33.8% | −4.0% | 4,099 円2.21 兆円 |
今の株価時価総額 6,195 円3.34 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 共同システムとAI実装が伸びを支える 利益 1,671 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 4,713 円2.54 兆円
AI導入支援が金額つきの受注として表れ、共同利用型システムの更新も続く筋書き。国内の数量は今の1.00倍とほぼ横ばいで、価格は1.36倍、利益率は24%。海外は再建が進み、北米の収益が戻る。売上は1.1兆円、純利益は1,671億円で、10年の還元は9,235億円。ただしAIを自社の売り物にして売上が出ている開示はまだ確かめられないので、数量は今以上には置かない。 内訳は国内IT事業=数量1.00倍・価格1.36倍・利益率24.1%、海外事業=数量0.80倍・価格1.30倍・利益率10.0%。 この筋書きの確率は7%。結果は、売上が今の1.31倍の1.1兆円、営業利益2,400億円、純利益1,671億円、自己資本8,457億円、10年の還元9,235億円、時価総額2.1兆円(PER14.29倍)。
- 国内IT事業(コンサル・金融IT・産業IT・IT基盤):数量 13,000(国内中心のグループ従業員数(人))× 価格 7,324(従業員1人当たり売上収益(万円))→ 売上 9,522 億円・営業利益 2,295 億円。数量1.00倍・価格1.36倍・営業利益率24.1%(人月と記録の正本の混合)
- 海外事業(北米Core BTS・豪州Planitグループ等):数量 3,200(海外事業の従業員数(人))× 価格 3,705(従業員1人当たり年間売上(万円))→ 売上 1,186 億円・営業利益 119 億円。数量0.80倍・価格1.30倍・営業利益率10.0%(人月型)
倍率:事業の純利益 1,671 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 21.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.29 倍、時価総額 23,873 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIを自社の売り物にして売上が出ている金額の開示がまだ無いので、楽観でも数量は今以下。NRIはAI導入支援の需要を取れているぶん、他社より楽観に少し厚く7%を置いた。
やや楽観 22% 堀が効き、人月の減りが緩やか 利益 1,338 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,864 円2.08 兆円
THE STARなど共同システムの更新が続き、コンサルの一部がAI実装の成果報酬へ移る。国内の数量は今の0.88倍、価格は1.31倍。海外は小幅の黒字にとどまる。売上は9,108億円、営業利益は1,921億円、純利益は1,338億円と、今の水準を少し下回る。堀が効いて人月の減りが緩やかな分、他の人月型よりこの筋書きの確率を厚く置いた。野村証券グループという安定した顧客の存在も、この筋書きを支える。 内訳は国内IT事業=数量0.88倍・価格1.31倍・利益率23.0%、海外事業=数量0.70倍・価格1.25倍・利益率7.0%。 この筋書きの確率は22%。結果は、売上が今の1.12倍の9,108億円、営業利益1,921億円、純利益1,338億円、自己資本7,943億円、10年の還元8,084億円、時価総額1.7兆円(PER14.29倍)。
- 国内IT事業(コンサル・金融IT・産業IT・IT基盤):数量 11,502(国内中心のグループ従業員数(人))× 価格 7,051(従業員1人当たり売上収益(万円))→ 売上 8,110 億円・営業利益 1,864 億円。数量0.88倍・価格1.31倍・営業利益率23.0%(人月と記録の正本の混合)
- 海外事業(北米Core BTS・豪州Planitグループ等):数量 2,800(海外事業の従業員数(人))× 価格 3,563(従業員1人当たり年間売上(万円))→ 売上 998 億円・営業利益 70 億円。数量0.70倍・価格1.25倍・営業利益率7.0%(人月型)
倍率:事業の純利益 1,338 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 20.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.29 倍、時価総額 19,114 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:共同システムの更新と一部の成果報酬化が進む筋書き。堀の強さを映して22%と、人月主体の同業より厚い。
中立 34% 共同システムは残り、個別開発は縮む 利益 1,108 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,270 円1.76 兆円
共同システムは顧客の業務に組み込まれて残るが、産業ITや個別開発の人月はAIエージェントが肩代わりする。国内の数量は今の0.79倍、価格は1.27倍。海外は数量が0.62倍で、利益はほぼ出ない。売上は7,878億円、営業利益は1,591億円、純利益は1,108億円。10年の配当と自社株買いは7,288億円で、時価総額は1.4兆円になる。 内訳は国内IT事業=数量0.79倍・価格1.27倍・利益率22.3%、海外事業=数量0.62倍・価格1.20倍・利益率4.0%。 この筋書きの確率は34%。結果は、売上が今の0.97倍の7,878億円、営業利益1,591億円、純利益1,108億円、自己資本7,589億円、10年の還元7,288億円、時価総額1.4兆円(PER14.29倍)。
- 国内IT事業(コンサル・金融IT・産業IT・IT基盤):数量 10,270(国内中心のグループ従業員数(人))× 価格 6,845(従業員1人当たり売上収益(万円))→ 売上 7,030 億円・営業利益 1,569 億円。数量0.79倍・価格1.27倍・営業利益率22.3%(人月と記録の正本の混合)
- 海外事業(北米Core BTS・豪州Planitグループ等):数量 2,480(海外事業の従業員数(人))× 価格 3,420(従業員1人当たり年間売上(万円))→ 売上 848 億円・営業利益 34 億円。数量0.62倍・価格1.20倍・営業利益率4.0%(人月型)
倍率:事業の純利益 1,108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 18.7%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.29 倍、時価総額 15,829 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:共同システムが残り、個別開発が縮む中心の筋書き。数量が既に縮むので、確率は34%と標準的に置いた。
やや悲観 25% 金融機関の内製化が進み、受託が細る 利益 654 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,818 円9,792 億円
金融機関が開発と運用を自前のAIエージェントで回し始め、外部への発注が減る。国内の数量は今の0.67倍、価格は物価に届かず1.21倍、利益率は17%に落ちる。海外は再建に失敗して赤字が残る。売上は6,315億円、営業利益は940億円、純利益は654億円。時価総額は8,714億円まで下がる。野村証券グループ以外の金融機関の発注が減ると、共同システムの稼働率も下がり、固定費が重くなる。 内訳は国内IT事業=数量0.67倍・価格1.21倍・利益率16.7%、海外事業=数量0.50倍・価格1.12倍・利益率0.0%。 この筋書きの確率は25%。結果は、売上が今の0.78倍の6,315億円、営業利益940億円、純利益654億円、自己資本6,890億円、10年の還元5,720億円、時価総額8,714億円(PER13.32倍)。
- 国内IT事業(コンサル・金融IT・産業IT・IT基盤):数量 8,730(国内中心のグループ従業員数(人))× 価格 6,503(従業員1人当たり売上収益(万円))→ 売上 5,677 億円・営業利益 950 億円。数量0.67倍・価格1.21倍・営業利益率16.7%(人月と記録の正本の混合)
- 海外事業(北米Core BTS・豪州Planitグループ等):数量 2,000(海外事業の従業員数(人))× 価格 3,192(従業員1人当たり年間売上(万円))→ 売上 638 億円・営業利益 0 億円。数量0.50倍・価格1.12倍・営業利益率0.0%(人月型)
倍率:国内の共同利用型システム(証券・保険の記録の正本)の営業利益が全体の約62%、残りは人月。共同利用の部分は、堀の証拠(運用サービス売上収益3,154億円、証券・自賠責保険の共同利用基盤、受注残4,286億円)が2つ以上そろうので、10年より先の名目の伸びg+1.5%、RONIC=k7%+残る割合2/3×(ROE9.5%−k)=9.1%、PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.4倍。人月の部分はg0%で1÷k=12.1倍。利益の割合で重ねて13.32倍。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:金融機関の内製化で受託が細る筋書き。25%。
悲観 12% AIエージェントが開発を置き換え、海外は撤退 利益 253 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 670 円3,610 億円
AIエージェントが開発の大半を置き換え、金融機関も共同システムの利用料の引き下げを迫る。国内の数量は今の0.51倍、利益率は10%に落ち、海外は撤退して赤字が出る。売上は4,420億円と今の半分ほど、純利益は253億円。この会社はもう優良ではなくなっている。堀があるぶん、人月主体の同業ほどは崩れない。記録の正本として残る共同システムの利用料が、赤字を防ぐ下支えになる。 内訳は国内IT事業=数量0.51倍・価格1.12倍・利益率10.0%、海外事業=数量0.35倍・価格1.00倍・利益率-8.0%。 この筋書きの確率は12%。結果は、売上が今の0.54倍の4,420億円、営業利益363億円、純利益253億円、自己資本6,271億円、10年の還元4,332億円、時価総額3,610億円(PER14.28倍)。
- 国内IT事業(コンサル・金融IT・産業IT・IT基盤):数量 6,676(国内中心のグループ従業員数(人))× 価格 6,024(従業員1人当たり売上収益(万円))→ 売上 4,021 億円・営業利益 404 億円。数量0.51倍・価格1.12倍・営業利益率10.0%(人月と記録の正本の混合)
- 海外事業(北米Core BTS・豪州Planitグループ等):数量 1,400(海外事業の従業員数(人))× 価格 2,850(従業員1人当たり年間売上(万円))→ 売上 399 億円・営業利益 −32 億円。数量0.35倍・価格1.00倍・営業利益率-8.0%(人月型)
倍率:事業のROE4.0%がk7%を下回るので、ためた利益は元の額を下回る価値で正当化PERは1÷k=14.28倍が上限。共同利用の堀による伸びは、この悲観では使わない。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:開発の大半が置き換わり海外も失敗する筋書き。堀が厚いので12%にとどめ、やや悲観と合わせて37%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内IT事業(コンサル・金融IT・産業IT・IT基盤)
証券・銀行・保険の基幹システム、製造・流通・公共向けシステム、コンサルティング、サイバーセキュリティ・クラウド基盤などの国内事業の合計。
| 数量国内中心のグループ従業員数(人) | 価格従業員1人当たり売上収益(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13,000 | 5,390 | 7,007 | 1,612 |
| 10 年後 中立 | 10,270 | 6,845 | 7,030 | 1,569 |
取り方:グループ従業員16,894人(2026年3月末)のうち海外子会社を除く国内中心の人員を13,000人と置き、海外売上収益比率14%(中間期実績)を2026年3月期の売上8,147億円に当てて国内売上7,007億円を逆算、1人当たり売上収益を算出した。 【AIエージェント代替の見直し】決算資料のセグメントから、共同利用型の金融ITと基盤が売上の4割強、コンサル・産業ITなど人月が6割弱と見た。前者は数量0.92倍・価格1.25倍、後者は0.68倍・1.28倍の加重で、中立は数量0.79倍・価格1.27倍。コンサルはAI導入支援の需要があり下限寄りにはしない。利益率は今の23%から22%へ。 【堀の見分け】共同利用の部分(営業利益の約55%)は、共同利用の基盤・受注残・制度改正対応を共同利用で吸収する採用理由の証拠で、10年より先のgを+1.5%とした。人月の部分はg0%のまま。数量・価格は記録の正本の範囲(0.85〜1.0倍・1.15〜1.34倍)に収まっている。
海外事業(北米Core BTS・豪州Planitグループ等)
2021年に買収した米ITコンサルCore BTSと、豪州のソフトウェア検証会社Planitグループ(英Shift Left・NZ Qual IT Solutionsを含む)を中心とする海外事業。
| 数量海外事業の従業員数(人) | 価格従業員1人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 2,850 | 1,140 | −1,019 |
| 10 年後 中立 | 2,480 | 3,420 | 848 | 34 |
取り方:海外売上収益比率14%(中間期実績)を2026年3月期の売上8,147億円に当てはめた売上約1,140億円を、北米Core BTS・豪州Planitグループ等の従業員数(推定約4,000人)で割り、1人当たり年間売上約2,850万円とした。従来の売上の置き方は名目だったので売上は据え置き、1人当たり売上を物価並みに上げて人数を逆算した。営業利益は豪州Planit・北米Core BTSののれん等減損969億円を含む2026年3月期の実態値。 【AIエージェント代替の見直し】北米Core BTS・豪州Planitは人月のITコンサルとテストで、記録の正本ではない。AIエージェントの影響を受ける人月型として中立で数量0.62倍、価格1.20倍。
リスクと懸念
AIエージェント代替(人月の部分の縮み)
NRIの売上のうち共同利用型システムは保たれるが、コンサルや個別開発の人月は、AIエージェントが設計・開発・運用を肩代わりして縮む。中立の売上は今の0.97倍、悲観では0.54倍まで縮むと置いた。AI導入支援の需要が受注の金額で開示されるまでは、伸びを織り込まない。
海外M&Aの再発リスク
2021年のCore BTS買収、Planitグループの複数買収という海外M&Aの統合が思うように進まず、2026年3月期にのれん等969億円を減損した。今後も海外で買収を続ける方針を取る限り、同じ統合リスクが繰り返される可能性がある。
金融機関への顧客集中
証券・銀行・保険という少数の大口顧客の基幹システム更新計画に業績が直結しており、金融機関の統合・IT投資計画の変更が受注に大きく影響する顧客集中構造を抱えている。地方銀行の統合が進めば、システムの統廃合で受注機会が減る場面も考えられる。
技術者の確保と単価競争
IT人材の不足が単価の決定力を支える一方、同じ人材不足はNRI自身の技術者確保のコストも引き上げる。SCSK・TIS・日鉄ソリューションズなど競合との人材獲得競争が激しくなれば、採用・育成コストの増加が利益率の伸びを抑える。
海外金利・景気の影響
海外事業は北米の金利高止まりによるIT投資抑制の影響を強く受けた。海外景気・金利の変化がそのまま海外事業の損益に跳ね返る構造は、国内の安定した収益基盤とは異質のリスクであり、海外の比重が増えるほど業績の振れが大きくなる。
規制・システム障害のリスク
証券・銀行の基幹システムを多数運用しているため、システム障害や情報漏洩が起きれば金融機関への賠償責任や信頼の失墜につながる。個人情報保護法やサイバーセキュリティ規制の強化も対応コストを増やし、利益率を圧迫しうる。
今後の分かれ目
- 海外事業が2027年3月期に計画どおり損益トントンまで戻ったら
- やや楽観側の筋書きに重みを移してよい。ただし一度減損した事業の再建力なので、連続して改善が続くかを次の決算でも確認する。
- 追加の海外のれん減損が発生したら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。海外M&Aの統合力そのものに疑問が残ると見る。
- AI関連売上が中期経営計画の3,000億円目標に対して順調に積み上がったら
- 中立の筋書きの成長率前提を上方修正し、価値を見直す。
- 生成AIによる開発工数削減で人月単価が下落に転じたら
- 10年の悲観側の確率を上げ、技術者数×単価という積み上げの前提そのものを下方修正する。
- 金融機関の基幹システム更新需要(THE STAR等)の契約が他社に切り替わる動きが出たら
- 堀の強さの前提を見直し、金融ITソリューションの利益率前提を下げる。
- 自社株買い・配当が純利益の落ち込みにもかかわらず維持・拡大されたら
- 国内事業のキャッシュ創出力への確信を強め、楽観側の確率をやや上げてよい。
- AI関連の受注・売上が金額つきで開示され、国内売上の1割を超えたら
- 楽観の確率を上げ、数量を今の0.8倍より上で見直す。
- 金融機関が基幹システムの開発・運用を自前のAIエージェントへ切り替え始めたら
- 堀の前提(残る割合2/3)と、やや悲観・悲観の確率を見直す。
見ておくもの
- 海外事業(Core BTS・Planit)の損益トントン化の進捗(2027年3月期目標)
- 中期経営計画のAI関連売上3,000億円目標の達成度
- 金融ITソリューションの営業利益率と大口顧客(証券・銀行)の基幹システム更新契約の継続
- 国内ITサービス市場の人月単価・技術者数の動向(IDC Japan等の市場調査)
- AI関連の受注・売上の金額開示と、国内の技術者数・人月単価の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は縮みを数量に入れたうえで、10年先の名目の伸びを部分ごとに置き(共同利用の記録の正本は堀の証拠が2つ以上そろうのでg+1.5%、人月はg0%)、利益の割合で重ねて出し、過去のPERや同業の値付けは使っていない。kは基本7.5%に寿命の上乗せ+0.75%(記録の正本0.5〜1.0と人月1.0〜1.5の間)を足した8.25%。AI代替を数量・k・確率・gで重ねて引かないよう、確率はやや悲観と悲観で37%にとどめた。今の株価との差を狙って置いたのではない。リース会計の形は今と同じ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.77→14.29 倍・やや楽観 PER 12.7→14.29 倍・中立 PER 12.62→14.29 倍・やや悲観 PER 12.27→13.32 倍・悲観 PER 12.12→14.28 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。