結論
アメリカ・モビルは、メキシコのテルセルとテルメックス、ブラジルなどのクラロ、欧州のA1を通じて通信回線を提供する中南米最大級の通信会社である。筆者の結論は割高だ。通信需要が10年後も消えないことには確信を持てるが、今の時価総額には、契約者を増やしながら値上げも続けるという、少し強すぎる期待が含まれている。
堀、つまり競争相手が簡単にはまねできない強みは本物である。メキシコの携帯市場でテルセルは約58%の回線シェアを持ち、ブラジルのクラロも約33%を占める。周波数免許、基地局、光ファイバー、販売網は、後から入る会社が簡単には築けない。ただし、メキシコの圧倒的な地位には規制が付き、ブラジルではビボとTIMが顧客を奪い合う。通信需要の成長を、そのまま株主利益の成長と考えてはいけない。
2025年の売上は491.5億ドル、営業利益は102.8億ドル、純利益は43.1億ドルだった。フリーキャッシュフローは67億ドルあるが、純有利子負債は368億ドルで、設備の更新にも多額の資金が要る。2026年第3四半期には後払い契約が310万件増え、サービス収入も恒常為替ベースで5.3%伸びた。足元の事業は堅調であり、経営危機を前提とする評価ではない。
中立では2035年の売上を約683億ドル、営業利益を約146億ドル、純利益を60億ドルと考える。携帯契約数は大きく伸びないが、後払いへの移行と固定ブロードバンドの普及が収入を支える。利益が増えても、多額の設備投資と借金、競争を考えると、高い資本効率が永久に続くわけではない。
5つの筋書きを資本コスト8.5%で割り引いた確率加重の本質価値は約495億ドルとなる。台帳の時価総額744億ドルを約33%下回り、判定は割高である。これは通信網の価値を否定する結論ではない。良い事業と、長く保有する株主にとって十分な安全域のある価格は、別の問題なのである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、通信網を何年保有しても顧客が使い続けるかを最初に考える。アメリカ・モビルには明確な答えがある。通信は生活、商取引、医療、物流を支える社会基盤であり、10年後も必要だ。巨大な通信網と周波数免許、既存顧客の積み上げは、新規参入を難しくする。この事業の寿命そのものを疑う必要は小さい。
次に問うべきは、増えた通信需要から誰が利益を得るかである。顧客が動画を多く見ても、競合が大容量プランを安く売れば利益は増えない。メキシコの高いシェアは強みだが、同時に規制を呼ぶ。ブラジルとコロンビアでは、強い競争相手がいるからこそ、契約者の流出を防ぐ費用が要る。堀があっても、料金を自由に決められるわけではない。
2025年のフリーキャッシュフロー67億ドルは魅力的に見える。しかし、光ファイバー、基地局、周波数、通信システムの更新は毎年必要である。設備を守るための支出を、自由に配当に回せる利益と取り違えてはいけない。純利益43億ドルを出発点とし、成長のために留保する資本と、株主に戻せる資本を分けて見るべきだ。
資本の再投資利回りには選別が要る。メキシコの既存網で顧客密度を高める投資は魅力的だが、地域の光回線会社を高く買うだけでは価値は生まれない。増分ROICが資本コストを上回る証拠を、契約者数と営業利益の両方で確かめたい。配当と自社株買いを続けながら借金も減らせるなら、株主にとっての事業の質は高まる。
筆者はこの会社を、保有し続けたい通信資産を持つが、あらゆる価格で買いたい会社ではないと見る。支配株主の影響、規制、価格競争、将来の設備投資を含めると、必要な安全域は大きい。現在の時価総額では、良い事業であることはすでにかなり評価されている。
何で稼ぐ会社か
アメリカ・モビルの稼ぎ方は、周波数免許と通信網という大きな固定資産に、数億件の契約を載せることである。2025年末には携帯契約約3.31億件と固定通信約7,937万件を持ち、通信サービスの料金、端末販売、法人向けネットワーク、テレビ、ITサービスから収入を得ていた。2026年9月末の携帯契約は約3.32億件、固定通信は約8,030万件である。
最大の利益源はメキシコである。テルセルは携帯の前払いと後払いを扱い、2025年末に約8,468万契約を持つ。月額料金だけでなく端末販売も大きく、同年のメキシコ携帯部門の売上は連結の3割弱を占めた。テルメックスは固定電話と光ファイバーを提供し、約1,200万のブロードバンド契約を持つ。古い固定電話は減っても、光ファイバーと法人回線は成長する。
ブラジルのクラロは、携帯約8,953万件と固定通信約2,190万件を抱える。ビボ、TIMとの競争は厳しいが、前払いから後払いへの移行が進んでいる。2026年第3四半期の後払い純増は74.3万件だった。固定通信ではブロードバンドが伸びる一方、固定電話の減少が続く。2026年10月に買収を完了したデスクトップは、サンパウロ州の光ファイバー事業を補強する。
コロンビアではクラロが最大の携帯事業者であり、携帯と固定通信を合わせて収入を得る。ペルー、エクアドル、中米、カリブ海諸国、アルゼンチン、チリでも同じブランドを展開する。所得や通信料金が国ごとに異なるため、同じ契約数でも売上は大きく違う。これらの地域では後払い契約、データ利用、家庭向け光回線が伸びる反面、インフレと競争による収益の振れが大きい。
欧州ではオーストリアを中心とするA1グループを約61%保有する。通信回線に加え、法人向けクラウド、セキュリティー、IT運用も提供する。A1の2025年のICT関連売上は約5.73億ユーロだった。この部分にはAIエージェントによって作業が自動化される危険があるが、主力の通信回線そのものとは分けて考える必要がある。
収益の質にも違いがある。後払い携帯と光回線は毎月料金が入り、解約も比較的少ない。前払いは契約の入れ替わりが多く、端末販売は利益率が低い。企業向けネットワークには長期契約の強みがあるが、受託ITサービスは工数が減れば売上も減りうる。会社全体の魅力を知るには、接続数の増加より、料金を支払う優良顧客がどれだけ増えるかを見るべきである。
優良さと弱いところ
最大の強みは、広い通信網と顧客基盤である。メキシコの携帯回線シェア約58%、ブラジル約33%、コロンビア約53%という地位は、一朝一夕には築けない。携帯番号、家庭の光回線、法人の専用線を一緒に契約する顧客は、乗り換える時に一定の手間を負う。通信量が増えても既存網を利用できる範囲では追加費用が比較的小さく、規模の利益が生まれる。
ただし、規模がそのまま値上げの自由を意味するわけではない。メキシコでは支配的通信事業者への非対称規制があり、他社への網の提供条件や料金に制約がある。ブラジルではクラロの携帯シェアは2025年末から2026年夏まで約33%でほぼ横ばいだった。2026年第3四半期のメキシコ携帯ARPUは前年より5.6%上がったが、その一部は後払いへの移行によるもので、同じ顧客に無条件で値上げできた証拠ではない。
財務の数字も慎重に読む必要がある。2025年のROEは21.4%と高い一方、自己資本比率は20.1%で、純有利子負債は368億ドルある。2020年から2025年にかけて営業利益は約70億ドルから103億ドルへ増えたが、純利益は為替差損益と金融費用によって大きく振れた。高ROEの一部は借入によるもので、資本を追加しても同じ利回りを得られるとは限らない。
概算では、2025年の税引き後営業利益を約72億ドル、自己資本と純負債を合わせた投下資本を約569億ドルとすると、ROICは約13%となる。2020年との比較で見た増分の税引き後営業利益と投下資本の関係は約20%だが、買収、資産売却、為替換算の影響を含むため、そのまま将来の増分利回りとは呼べない。新たな光回線投資が資本コストを上回るには、十分な契約密度と継続的な料金収入が必要だ。
堀が最も厚いのはメキシコの既存通信網であり、次いでブラジルとコロンビアの規模である。欧州や競争の激しい中南米市場では、堀はもっと薄い。会社全体には強い事業と普通の事業が混在するため、10年後の超過利益が全社で同じように残るとは考えない。AIは通信網の運用費を下げる機会を与えるが、顧客が払う料金を高める保証にはならない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中南米の通信需要は消えないが、携帯電話の普及そのものは成熟している。伸びるのは、前払いから後払いへの移行、5Gによるデータ利用、家庭の光ファイバー、企業の通信需要である。10年後も接続は生活に欠かせない。ただし、通信量が増えることと、1回線から取れる料金が増えることは別だ。競合の値下げと通信技術の進歩が、データ単位当たりの収入を押し下げる。
メキシコの携帯市場では、2025年の公表値で約1.45億の稼働回線に対し、テルセルが57.9%、AT&Tが16.4%、モビスターが14.1%、ウォルマート系のBaitが7.0%を占めた。固定ブロードバンドではテルメックス系が約41%、イッシー、メガケーブル、トータルプレイがそれぞれ約2割を持つ。2026年10月にはAT&Tのメキシコ事業をテレビサなどへ売却する計画が発表された。成立すれば、固定回線と携帯を組み合わせる競争相手が強まる。
ブラジルでは2026年8月の携帯約2.80億回線に対し、ビボが37.8%、クラロが33.0%、TIMが22.0%だった。固定ブロードバンド市場は約5,790万接続で、クラロが18.8%、ビボが14.8%、地域事業者が大きな残りを占める。光ファイバーは携帯より成長余地があるが、参入する地域事業者も多い。デスクトップ買収はこの弱点を補う施策だが、買収価格に見合う新規契約が必要である。
コロンビアでは2026年の規制当局資料でクラロ系が約53%、統合後のティゴ・モビスター系が約39%となった。以前より二大事業者の力が接近している。ペルーでは2026年初めの稼働回線でクラロが約33%、ビテルが約24%、エンテルが約23%、モビスターが約20%だった。競争が激しく、利用者の増加だけで利益率を高めるのは難しい。欧州のオーストリアではA1が36.2%、マゼンタが24.9%、ドライが20.1%で、低価格ブランドのシェアも拡大している。
業界の中立的な長期成長は、実質の接続数が年0〜1%程度、料金が年2〜3%程度と考えるのが自然である。米国通信の物差しと比べても、料金競争と大型設備投資という構造は共通する。ただし中南米では後払いへの移行と固定回線の普及が残る反面、国ごとの規制、財務、所得水準の違いが大きい。市場の成長を全社に一律に当てはめることはできない。
技術面では5Gから6Gへの移行、衛星直接通信、仮想化された通信網、AIを使った網の運用が焦点になる。衛星は山間部や地方の固定通信を代替しうるが、人口の多い都市で地上網を全面的に置き換えるとは考えにくい。むしろ長期の脅威は、通信技術の進歩で供給能力が増え、競争によって料金の実質価値が下がることである。
資本政策と M&A
資本配分の中心は、通信網の更新、配当、自社株買い、地域での買収である。2025年の配当は17.3億ドル、自社株買いは6.2億ドル、フリーキャッシュフローは67.0億ドルだった。配当と買い戻しは利益の範囲内だが、設備投資を大幅に減らせる会社ではない。2025年の設備投資は約68億ドルで、2026年も約70億ドルを予算としている。
2026年4月には普通配当と、2026年4月から2027年4月までの自社株買いに最大100億メキシコペソを追加配分する枠が承認された。2026年9月までの9か月には、設備投資約759億ペソを行いながら、配当と買い戻しで約275億ペソを還元した。経営は2028年までのサービス収入成長を年4〜5%、設備投資を年約70億ドルとする見通しを投資家説明会で示したと報じられている。ただし、10年間の利益や還元総額について数字の約束はない。
過去の買収には、欧州A1への投資、チリのクラロVTRの支配権取得などがある。2022年には通信塔事業のシティオス・ラタムを分離し、資産を軽くする方向も取った。2026年10月にはブラジルの光回線会社デスクトップの72.83%取得を完了した。一方、同年7月に発表したペルーのWOW買収は規制承認などを条件とするため、成立を確認できない段階では予想利益に含めない。
株主統治には注意が必要である。2026年3月末の株式は単一のB種普通株であり、ADRは20株相当である。スリム家は家族信託、関連会社、直接保有を通じて約7割の株式を実質的に支配している。系列の通信塔会社や建設・金融会社との取引も続く。長期投資を進めやすい一方、少数株主が資本配分を変えさせる力は弱い。買収が増分の利益を生むか、支配株主の事業網を広げるだけかを見続ける必要がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
メキシコの携帯市場で約58%のシェアを持ち、ブラジルで約33%、コロンビアで約53%を持つ企業は、世界でも簡単には見つからない。通信網は新たに敷設するだけで巨額の資金と許認可が必要であり、しかも建設後は顧客を追加するほど利益率が高まる。アメリカ・モビルは、この仕組みを複数の国で持つ。通信サービスが10年後も社会の中心にある限り、継続的な収入を見込める。
2026年第3四半期には後払い純増が310万件に達した。ブラジルでは後払い収入の伸びが8.5%となり、コロンビアでも12%に達した。全社のサービス収入も恒常為替で5.3%増え、設備投資を賄いながら純負債を減らしている。2025年末の純負債対EBITDAaLは1.52倍だったが、2026年9月末には1.21倍となった。借金があるからこそ、返済が進めば株主の取り分は増えやすい。
メキシコではテルメックスが家庭向け光回線の最大手であり、携帯との組み合わせを強められる。ブラジルではデスクトップの買収によりサンパウロの光回線を広げる。後払い、光ファイバー、法人回線が増えると、顧客は複数の契約を一社にまとめるようになる。これによって解約が減り、値引きの必要も小さくなる。通信の量が増えるだけでなく、顧客一人から受け取る収入と利益が増える構造が生まれる。
設備投資は2026年以降も年70億ドル前後にとどめる方針であり、売上が伸びれば投資比率は徐々に下がる。2025年に約21%あった全社の営業利益率がさらに上がれば、利益成長は売上成長を超える。既存網の増分投資が高いROICを保ち、株主還元を増やしながら借金を減らす道もある。メキシコの支配的地位を失わず、ブラジルの後払いと光を育てられれば、10年後の純利益は現在の2倍以上になりうる。
慎重な見方
通信が必需品であることと、通信会社が高い利益を取り続けられることは同じではない。利用者はデータ量が増えても料金を増やしたがらず、競合は常に割安なプランを用意する。メキシコではBaitなどの仮想移動体通信事業者が伸び、テルセルの支配的地位には特別な規制が続く。契約数が安定していても、料金が物価より遅く上がれば実質的な稼ぐ力は減っていく。
ブラジルではビボがクラロを上回る携帯シェアを持ち、TIMも強い。光回線では地域事業者の合計が大きく、買収で規模を手に入れても、価格競争から逃れられるとは限らない。デスクトップの買収がうまくいかなければ、設備の重複と追加の投資負担が残る。コロンビアではティゴとモビスターの統合で大きな競争相手が生まれ、以前より寡占の利益を守りにくくなる。
メキシコの2026年第3四半期には、規制に伴う契約情報の登録と顧客整理で前払い契約が大きく減った。こうした解約の一部は統計上の整理にすぎないが、実際に売上を生む顧客の質を見極めなければならない。欧州でも低価格の仮想通信事業者がシェアを伸ばし、ICTサービスの受託作業にはAIエージェントによる代替が始まる可能性がある。
最大の問題は借金と設備投資である。2025年の純有利子負債は368億ドルあり、将来の借り換え金利が高いままなら利益のかなりの部分が金融機関へ渡る。5Gの次には6Gがあり、光回線も維持更新が必要である。フリーキャッシュフローをすべて株主のものと考えることはできない。通信網の価値が残っても、株主が受け取れる利益は想像以上に小さくなる危険がある。
支配株主が約7割を実質的に握り、系列企業との取引も続いている。利益が出ても、少数株主のために最も効率よく還元されるとは限らない。長期保有では、成長する市場にいることより、投下した資本が本当に株主利益を増やすことのほうが大切である。
どちらに重みを置いたか
事業の存続可能性では強気の根拠が明らかに勝る。しかし、利益率と資本配分の持続性では慎重な見方を優先する。2026年の後払い契約増加と財務改善は評価するが、メキシコの規制、コロンビアの再編、ブラジルの価格競争、支配株主の存在は長期に残る。
確率は楽観10%、やや楽観20%、中立32%、やや悲観25%、悲観13%とした。上側30%より下側38%を厚くしたのは、通信需要そのものよりも、料金、競争、設備投資の失敗が株主利益を削る危険が大きいためである。AIエージェント代替はICT部門の数量に織り込み、全社の確率で重ねて罰してはいない。
中立でも利益は伸びるが、成長に必要な資本を差し引くと現在の時価総額を十分に正当化できない。結論は割高であり、事業の質が高いことだけを理由に評価を甘くするべきではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 23.64 ドル716 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 9.45 ドル286 億ドル)。 今の値に割り戻すと 16.74 ドル507 億ドル、今との差 −31.6%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 48.16 ドル1,458 億ドル | 13.87 ドル420 億ドル | +153.4% | +11.4% | 6.20 ドル188 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 33.42 ドル1,012 億ドル | 11.89 ドル360 億ドル | +85.1% | +7.5% | 9.06 ドル274 億ドル |
| 中立 | 32% | 24.79 ドル750 億ドル | 10.74 ドル325 億ドル | +45.1% | +4.6% | 11.37 ドル344 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 13.21 ドル400 億ドル | 7.10 ドル215 億ドル | −17.0% | −2.2% | 5.08 ドル154 億ドル |
| 悲観 | 13% | 7.00 ドル212 億ドル | 3.63 ドル110 億ドル | −56.5% | −9.3% | 1.38 ドル42 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 23.64 ドル716 億ドル | 9.45 ドル286 億ドル | +35.2% | +3.6% | 33.09 ドル1,002 億ドル |
今の株価時価総額 24.48 ドル741 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 通信網の強みが広がり、後払いと光回線が利益を押し上げる 利益 100 億ドル · PER 14.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 48.16 ドル1,458 億ドル
メキシコではテルセルが携帯契約を約9,500万回線へ増やし、固定通信も光回線の増加で3,200万RGUに達する。Baitや新しい競合は低価格帯で一定のシェアを取るが、テルセルの網の品質と後払いへの移行が優良顧客をつなぎとめる。メキシコの携帯利益率は38%に達し、値上げと解約率の低下を両立する。
ブラジルではビボに迫る規模を保ちながら、デスクトップの光回線と既存のクラロを組み合わせる。携帯・固定の接続は約1.42億件となり、営業利益率は24%へ上がる。コロンビアではティゴ・モビスターの統合後も高いシェアを守る。ペルーなどの周辺地域でも後払いと家庭向け光回線の普及が進み、欧州では通信網の効率化が利益率を押し上げる。
全社の売上は内部取引控除後で約914億ドル、営業利益は約231億ドル、純利益は100億ドルに増える。設備投資は続くが、売上に対する比率は徐々に下がる。10年間の純利益累計は約716億ドルとなり、正味420億ドルを還元しながら自己資本を約497億ドルへ増やす。大型の新株発行を要する買収は想定しない。
A1のICT受託ではAIエージェントが単純作業を減らすため、契約相当件数は増やさない。それでも通信基盤への需要は強く、全社の利益率改善がこの弱点を十分に補う。高い増分ROICが実現し、10年後も競争相手より優れた経済性を保つ。
- メキシコ携帯(テルセル):数量 95.0(百万携帯回線)× 価格 250(1回線当たり年間売上・米ドル)→ 売上 238 億ドル・営業利益 90 億ドル。携帯市場の緩やかな拡大と高いシェアを維持し、後払い比率上昇で単価は約1.48倍。
- メキシコ固定通信(テルメックス):数量 32.0(百万固定通信RGU)× 価格 390(1RGU当たり年間売上・米ドル)→ 売上 125 億ドル・営業利益 25 億ドル。光回線と法人接続が増え、固定電話減少を大きく上回る。
- ブラジル(クラロ):数量 142(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 134(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 190 億ドル・営業利益 46 億ドル。携帯後払いと光回線が増加。デスクトップ取得による固定通信拡大を含む。
- コロンビア(クラロ):数量 61.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 115(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 70 億ドル・営業利益 16 億ドル。統合競合への流出を抑え、光回線と後払いの構成比が上がる。
- その他中南米(ペルー・中米・アルゼンチン・チリ等):数量 130(百万接続(各国の携帯+固定RGU合計))× 価格 171(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 222 億ドル・営業利益 38 億ドル。ペルー・中米のデータ利用と光回線が伸び、チリの赤字も縮小。
- 欧州A1の通信基盤:数量 46.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 225(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 104 億ドル・営業利益 20 億ドル。東欧とIoT接続が拡大し、運用費削減で通信基盤の採算が改善。
- A1の法人ICT・運用サービス(AI代替対象):数量 13.0(千件(年間契約相当件数・推定))× 価格 65,000(年間売上・米ドル/契約相当)→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。AIエージェント代替を考慮して工数数量は横ばい。単価上昇は物価以下の範囲。
倍率:k=8.5%。2035年以降のg=3.7%は実質の契約数増加約0.7%、シェア改善約0.2%、料金上昇約2.8%を根拠とする。ROE=100÷496.9=20.1%。moat=normal、超過利益が残る割合0.5、RONIC=8.5%+0.5×(20.1%−8.5%)=約14.3%。正当化PERは(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=約16.02倍。採用14.58倍は上限の約91%。事業基盤の改善と設備投資効率を評価するが、規制と少数株主の取り分を考慮して上限を使い切らない。純利益はGAAP基準で、利息・税・少数株主利益を控除した株主帰属利益。余剰純現金はなく、純負債を時価総額から再び控除しない。
確率:メキシコの支配的シェア、ブラジルの後払い契約増加、光回線の投資回収がすべて成功する筋書き。現実に2026年の契約増加は強いが、料金規制と競合の存在から、全地域で高い成長を続ける確率は10%とする。
やや楽観 20% 後払いと固定回線が堅調に増え、既存網の採算が改善する 利益 76 億ドル · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 33.42 ドル1,012 億ドル
メキシコの携帯契約は約9,000万回線となり、テルセルは高いシェアを守る。料金は物価を少し下回る程度に上がり、優良な後払い契約の増加が単価を支える。テルメックスの光回線は家庭と企業で増え、固定音声の減少を埋める。メキシコの携帯利益率は36%へ上昇する。
ブラジルではビボとのシェア争いは続くが、クラロは後払い契約を増やす。固定通信ではデスクトップ取得によって光回線の提供範囲を広げ、従来の同軸網から移行する。コロンビアでは統合後のティゴ・モビスターと拮抗する局面が増えるが、クラロの既存網と法人契約が収益を守る。
全社の売上は内部取引を除いて約781億ドル、営業利益は約181億ドル、純利益は76億ドルとなる。収益性の改善はあるが、6Gへの準備、周波数更新、光ファイバーの敷設は続く。年間の設備投資は大きく減らず、借金の借り換えも高い金利で進む。10年間の正味還元は360億ドルで、累計純利益約596億ドルから差し引いた後の自己資本は約437億ドルとなる。
A1の受託ICTサービスにはAI代替の影響があり、契約相当数量は2025年を下回る。それでも欧州の主力通信基盤は収入を増やし、全社の利益を支える。買収は小規模な地域光回線会社に絞られ、大きな新株発行は想定しない。
- メキシコ携帯(テルセル):数量 90.0(百万携帯回線)× 価格 237(1回線当たり年間売上・米ドル)→ 売上 213 億ドル・営業利益 77 億ドル。携帯市場の伸びと後払い移行により顧客数、合成単価とも上昇。
- メキシコ固定通信(テルメックス):数量 30.0(百万固定通信RGU)× 価格 360(1RGU当たり年間売上・米ドル)→ 売上 108 億ドル・営業利益 18 億ドル。光回線が拡大する一方、固定電話は減少を続ける。
- ブラジル(クラロ):数量 130(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 122(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 159 億ドル・営業利益 36 億ドル。携帯の後払い移行とデスクトップの光回線統合が進む。
- コロンビア(クラロ):数量 57.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 107(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 61 億ドル・営業利益 12 億ドル。二大事業者の競争は続くが、法人と光回線の成長が補う。
- その他中南米(ペルー・中米・アルゼンチン・チリ等):数量 121(百万接続(各国の携帯+固定RGU合計))× 価格 151(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 183 億ドル・営業利益 26 億ドル。ペルーと中米が伸び、チリとアルゼンチンの採算が改善。
- 欧州A1の通信基盤:数量 43.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 207(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 89 億ドル・営業利益 16 億ドル。東欧の接続増と通信網の運用効率化が収入を支える。
- A1の法人ICT・運用サービス(AI代替対象):数量 12.0(千件(年間契約相当件数・推定))× 価格 63,000(年間売上・米ドル/契約相当)→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。AI代替で人月が減少。単価上昇は物価を下回る。
倍率:k=8.5%、g=3.4%。長期の数量成長約0.5%、シェア横ばい、単価上昇約2.9%から算出する。ROE=76÷436.9=17.4%、moat=normalでRONIC=約12.95%。正当化PERは約14.95倍。採用13.31倍は上限の約89%。後払い契約と光回線で利益は改善するが、メキシコの料金規制と設備投資があるため満額評価しない。帳簿ROEは40%以下で、周波数免許と成長に必要な設備を分母から除かない。GAAP純利益を使い、株式報酬と借り換え後の利払いを反映する。
確率:2026年の後払い成長は実績があり、ブラジルのデスクトップ買収も完了した。固定網と携帯網の組み合わせが一定の成果を出す可能性は高い。ただしメキシコの規制とブラジルの競争が続くため、楽観ほどの利益率は見込まない。
中立 32% 携帯は成熟し、光回線と緩やかな値上げで利益を増やす 利益 60 億ドル · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 24.79 ドル750 億ドル
メキシコの携帯契約は約8,600万回線で、2025年からほぼ横ばいとなる。携帯市場は緩やかに拡大するが、テルセルはBaitなどの低価格事業者へ一部の回線を失う。後払い移行と料金改定により売上は伸びるものの、年率の単価上昇は物価を下回る。固定通信は光回線が増え、固定電話の減少を上回る。
ブラジルではクラロが携帯約3分の1の地位を守る。後払い契約と光回線が増えるが、ビボとTIMの競争も続く。デスクトップの買収効果は一部にとどまり、固定通信全体の利益率は急には上がらない。コロンビアではティゴ・モビスター統合によってシェアを取りにくくなる。ペルーと中米の成長は、アルゼンチンとチリの不安定な採算を補う。
全社の売上は内部取引約35億ドルを控除して約683億ドル、営業利益は約146億ドルとなる。借り換え金利の上昇による税前費用の増加を約6億ドル反映し、税と少数株主の取り分を控除した純利益は60億ドルとなる。10年間の純利益累計は約516億ドル、正味還元は325億ドルで、自己資本は約392億ドルに増える。これはROEを高くするために還元を調整したものではなく、通信収入と利益の成長から生まれる資本の道筋である。
AIエージェント代替の対象となるA1のICT受託では、契約相当数量が2025年の70%に減る。通信網の維持と更新には投資が続き、全社の増分利益率は徐々に資本コストへ近づく。優良な通信網は残るが、堀が大きく広がる会社にはならない。
- メキシコ携帯(テルセル):数量 86.0(百万携帯回線)× 価格 225(1回線当たり年間売上・米ドル)→ 売上 194 億ドル・営業利益 66 億ドル。市場の緩やかな拡大を低価格事業者へのシェア流出が相殺。単価は約1.33倍。
- メキシコ固定通信(テルメックス):数量 27.0(百万固定通信RGU)× 価格 340(1RGU当たり年間売上・米ドル)→ 売上 92 億ドル・営業利益 13 億ドル。光回線の増加が固定電話の減少を上回るが、競合の価格攻勢は続く。
- ブラジル(クラロ):数量 124(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 111(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 138 億ドル・営業利益 30 億ドル。ブラジル携帯シェア約33%を維持。後払いと光回線が拡大する。
- コロンビア(クラロ):数量 52.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 99(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 51 億ドル・営業利益 9 億ドル。携帯回線の一部が競合へ移り、固定通信が不足分を補う。
- その他中南米(ペルー・中米・アルゼンチン・チリ等):数量 114(百万接続(各国の携帯+固定RGU合計))× 価格 140(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 160 億ドル・営業利益 18 億ドル。ペルー・中米の契約増が中心で、アルゼンチンとチリは低採算が続く。
- 欧州A1の通信基盤:数量 40.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 196(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 78 億ドル・営業利益 13 億ドル。成熟したオーストリアと成長余地のある東欧を合わせた緩やかな伸び。
- A1の法人ICT・運用サービス(AI代替対象):数量 9.1(千件(年間契約相当件数・推定))× 価格 62,000(年間売上・米ドル/契約相当)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。人月・工数型のAIエージェント代替。数量0.70倍、単価1.24倍、長期g0%。
倍率:k=8.5%。g=2.9%は成熟した携帯需要の実質増加約0.4%、シェアの微減約0.1%、合成単価上昇約2.6%から求める。ROE=60÷391.9=15.3%。moat=normal、残る割合0.5、RONIC=8.5%+0.5×(15.3%−8.5%)=約11.9%。正当化PERは約13.90倍。採用12.09倍は上限の87%。メキシコの強い網は評価するが、ブラジルと欧州の競争、設備更新、支配株主の資本配分を考慮した。ROEは成長に必要な周波数、固定網、買収関連資産を含む帳簿自己資本に対して測った。GAAP純利益で金融費用・税・非支配株主利益を反映し、純現金の上乗せは行わない。
確率:通信契約の需要が安定し、後払いと固定ブロードバンドは成長する。一方、2026年のメキシコでの前払い契約整理、コロンビアの競合再編、ブラジルの価格競争を踏まえ、数量成長は控えめにする。景気より競争と再投資の影響を重く見て32%。
やや悲観 25% 競合の値引きが広がり、増収でも利益が減る 利益 30 億ドル · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13.21 ドル400 億ドル
メキシコではBaitなどの低価格事業者がシェアを増やし、テルセルの携帯契約は約7,900万回線に減る。料金は名目では上がるが、物価に大きく負ける。後払い契約の獲得には端末補助や販売促進費がかかり、携帯の営業利益率は29%まで低下する。テルメックスの固定回線も、トータルプレイとメガケーブルに顧客を奪われる。
ブラジルではビボが高いシェアを維持し、クラロは価格を下げて顧客の流出を防ぐ。デスクトップの光回線買収は採算の改善に結びつかず、設備更新費用が増える。コロンビアのティゴ・モビスターは統合効果を発揮し、クラロは優良な後払い顧客を取りにくくなる。欧州では低価格ブランドが伸び、A1の料金上昇はほぼ止まる。
全社の売上は約523億ドルと2025年をわずかに上回るが、営業利益率が下がり、営業利益は約87億ドルへ減る。借り換え費用と少数株主の取り分を考えると、純利益は約30億ドルとなる。10年間の利益累計約363億ドルから正味215億ドルを還元し、自己資本は約349億ドルとなる。利益が減るため自社株買いを大きく減らし、配当の増額も抑える。
A1のICT受託ではAIエージェントによって工数需要が2025年の半分程度となり、利益はほぼ消える。通信網は依然として必要だが、稼ぐ力は資本コスト程度まで薄れ、拡大よりも既存契約を守る経営になる。
- メキシコ携帯(テルセル):数量 79.0(百万携帯回線)× 価格 198(1回線当たり年間売上・米ドル)→ 売上 156 億ドル・営業利益 45 億ドル。格安MVNOへシェアが流出し、料金上昇は物価を大きく下回る。
- メキシコ固定通信(テルメックス):数量 23.0(百万固定通信RGU)× 価格 292(1RGU当たり年間売上・米ドル)→ 売上 67 億ドル・営業利益 6 億ドル。光回線が競争で伸び悩み、固定電話の減少が重荷になる。
- ブラジル(クラロ):数量 112(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 100(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 112 億ドル・営業利益 19 億ドル。ビボと地域光回線会社に押され、契約者数はほぼ横ばい。
- コロンビア(クラロ):数量 45.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 85(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 38 億ドル・営業利益 4 億ドル。統合後のティゴ・モビスターにシェアを奪われる。
- その他中南米(ペルー・中米・アルゼンチン・チリ等):数量 98.0(百万接続(各国の携帯+固定RGU合計))× 価格 118(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 116 億ドル・営業利益 9 億ドル。ペルーの低価格競争が激化し、チリの採算改善も遅れる。
- 欧州A1の通信基盤:数量 35.5(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 166(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 59 億ドル・営業利益 7 億ドル。仮想通信事業者への流出が続き、通信料金の値上げ力が弱まる。
- A1の法人ICT・運用サービス(AI代替対象):数量 6.5(千件(年間契約相当件数・推定))× 価格 55,000(年間売上・米ドル/契約相当)→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替で人月需要が半減し、固定費が残る。
倍率:k=8.5%、長期g=1.5%。携帯の実質数量横ばいから減少、シェア低下約0.5%、料金上昇約2.0%を組み合わせる。ROE=29.5÷349.4=約8.4%でkとほぼ同水準。超過利益の持続価値をほぼ認めず、1÷k=11.76倍を上限とする。PER11.0倍は中立の12.09倍より低く、増分投資の低収益と設備更新を反映する。悲観の床は現在自己資本201.4億ドルを参照し、10年後の評価額324.5億ドルはこれを上回る。過去の市場PERから置いたものではない。
確率:メキシコの格安MVNO、ブラジルのビボとTIM、コロンビアの統合競合、ペルーのビテルがいずれも価格圧力を強める可能性は高い。通信網は維持できても、料金が物価を下回る伸びになれば投資効率が低下するため25%。
悲観 13% 価格とシェアを同時に失い、通信網の超過利益が消える 利益 20 億ドル · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7.00 ドル212 億ドル
メキシコではテルセルの携帯契約が約7,000万回線まで減る。Baitなどの低価格事業者に回線を奪われ、支配的事業者規制によって卸料金や網の利用条件も厳しくなる。サービスの品質を維持するための設備投資と料金値引きが重なり、携帯営業利益率は25.5%へ下がる。固定通信は競合の光ファイバーが普及し、テルメックスの優位が薄れる。
ブラジルではビボとTIM、地域の光回線事業者がクラロの契約密度を下げる。デスクトップの買収は期待した利益を生まず、固定設備への投資が重荷となる。コロンビアでは統合競合が優良顧客を奪い、クラロの収益性は大きく低下する。ペルーと中米でも低価格競争が続き、欧州ではA1の主力通信網が緩やかに縮む。
全社の売上は内部取引を除いて約434億ドルに減り、営業利益は約61億ドル、純利益は20億ドルとなる。設備更新は止められず、借り換え金利は高いままで、株主還元は当初の配当を中心に徐々に減らす。10年間の純利益累計は約316億ドル、正味還元は110億ドルで、自己資本は約407億ドルとなる。帳簿資本は残っても、そこから十分な利益を得られないため、株主価値は大幅に下がる。
A1の受託ICTサービスではAIエージェントの普及が進み、従来の契約相当数量は約3分の1まで減る。会社は通信という必需事業を維持するが、優良な超過利益を生む企業ではなくなる。周波数と通信網には処分可能な価値が残り、現在自己資本を床の比較基準とするため、10年後の会社全体の時価総額をゼロとはしない。
- メキシコ携帯(テルセル):数量 70.0(百万携帯回線)× 価格 181(1回線当たり年間売上・米ドル)→ 売上 127 億ドル・営業利益 32 億ドル。低価格MVNOへの流出と規制により、数量減少と実質単価下落が重なる。
- メキシコ固定通信(テルメックス):数量 20.0(百万固定通信RGU)× 価格 278(1RGU当たり年間売上・米ドル)→ 売上 56 億ドル・営業利益 4 億ドル。光回線でシェアを失い、固定電話の縮小が続く。
- ブラジル(クラロ):数量 96.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 95(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 91 億ドル・営業利益 13 億ドル。ビボ・TIMと地域光回線業者に顧客を奪われ、買収の利益が出ない。
- コロンビア(クラロ):数量 36.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 83(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 30 億ドル・営業利益 3 億ドル。統合競合の優位が定着し、規模の利益が崩れる。
- その他中南米(ペルー・中米・アルゼンチン・チリ等):数量 88.0(百万接続(各国の携帯+固定RGU合計))× 価格 117(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 103 億ドル・営業利益 7 億ドル。ペルー・中米の価格競争と南米の設備負担で収益性が低下。
- 欧州A1の通信基盤:数量 32.0(百万接続(携帯+固定RGU))× 価格 160(1接続当たり年間売上・米ドル)→ 売上 51 億ドル・営業利益 4 億ドル。欧州の低価格事業者が拡大し、既存網の更新費用が利益を圧迫。
- A1の法人ICT・運用サービス(AI代替対象):数量 4.5(千件(年間契約相当件数・推定))× 価格 50,000(年間売上・米ドル/契約相当)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替で従来工数が大きく消え、固定費のため赤字化。
倍率:k=8.5%、g=0%。携帯・固定回線の構造的シェア喪失と実質単価低下によって長期成長を認めない。ROE=20÷406.9=約4.9%でkを下回るため、利益ベースPERの上限は1÷k=11.76倍。採用10.6倍は上限の約90%、中立の12.09倍より低い。構造的に負けても通信サービスの稼ぐ力は一部残るが、長期の超過利益を評価しない。会社全体の時価総額212億ドルは現在自己資本201.4億ドルをわずかに上回り、過去のPBRの谷や10年後の積み上がった自己資本を床の倍率に使っていない。
確率:10年の悲観は単なる不況ではなく構造的な競争負けとする。メキシコの規制強化、ブラジル・コロンビアの競合優位、固定回線の投資回収失敗が重なる可能性を考える。ただし全国網には必需性があり、倒産を中心に考えるほど弱い財務ではないため13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
メキシコ携帯(テルセル)
メキシコの携帯契約と端末販売。前払い契約が多いが、収益性の高い後払い契約への移行が進む。
| 数量百万携帯回線 | 価格1回線当たり年間売上・米ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 84.7 | 169 | 143 | 50 |
| 10 年後 中立 | 86.0 | 225 | 194 | 66 |
取り方:2025年20-Fのメキシコ携帯セグメント売上2,752億ペソと営業利益922億ペソを使用。売上は全社のペソ建て売上9,436億ペソに対する割合からfactsの491.5億ドルへ換算し、営業利益も連結営業利益の構成比でfactsの102.8億ドルに整合させた。数量は2025年12月の携帯8,467.6万回線。年額169.29ドルは端末販売を含むセグメント売上を回線数で割った合成単価であり、会社開示の通信サービス月額ARPUとは異なる。2026年第3四半期ARPU196メキシコペソ、前年186ペソ。2025年の公表市場は約1.45億稼働回線、テルセルのシェア57.9%。出典:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1129137/000114036126017486/ef20060642_20f.htm 、https://www.gob.mx/crt/prensa/reporta-crt-144-5-millones-de-lineas-celulares-activas-en-mexico
メキシコ固定通信(テルメックス)
家庭・企業向け光ファイバー、固定電話、専用線と法人通信。固定音声の減少をブロードバンドの増加で補う。
| 数量百万固定通信RGU | 価格1RGU当たり年間売上・米ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22.7 | 262 | 59 | 9 |
| 10 年後 中立 | 27.0 | 340 | 92 | 13 |
取り方:2025年20-Fのメキシコ固定通信売上1,140億ペソと営業利益162億ペソを基礎とし、factsの全社売上・営業利益との構成比でドル換算した。固定RGU2,269.4万件の内訳は固定電話約1,069万、ブロードバンド約1,200万。合成単価には法人向け専用線と固定設備関連の売上も含む。市場シェアは2026年4月のOpensignal調査でテルメックス系41%、イッシー、トータルプレイ、メガケーブルが各19〜20%。会社の固定サービス別ARPUは同じ基準では非開示。出典:https://insights.opensignal.com/reports/2026/04/mexico/fixed-broadband-experience
ブラジル(クラロ)
携帯の後払い・前払い、家庭向けブロードバンド、固定電話、テレビと法人ネットワーク。光回線の買収も進める。
| 数量百万接続(携帯+固定RGU) | 価格1接続当たり年間売上・米ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 111 | 86 | 95 | 19 |
| 10 年後 中立 | 124 | 111 | 138 | 30 |
取り方:2025年20-Fのブラジル売上1,830億ペソ、営業利益362億ペソを使用。携帯8,952.5万件と固定RGU2,190.2万件を合計した接続数で割り、端末・法人・テレビを含む合成単価を算出。2026年8月のブラジル携帯市場は約2.805億回線で、ビボ37.8%、クラロ33.0%、TIM22.0%。固定ブロードバンドは約5,790万件でクラロ18.8%、ビボ14.8%。デスクトップの買収対象は2025年末の数量には含めず、将来の数量増加へ反映する。出典:https://www.radardatelecom.com.br/en/mobile 、https://www.radardatelecom.com.br/en/broadband
コロンビア(クラロ)
携帯通信、光・ケーブルブロードバンド、テレビ、法人回線。大きなシェアを持つが競合再編と規制の影響を受ける。
| 数量百万接続(携帯+固定RGU) | 価格1接続当たり年間売上・米ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 52.3 | 79 | 41 | 6 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 99 | 51 | 9 |
取り方:2025年20-Fのコロンビア売上793億ペソ、営業利益107億ペソと、携帯4,266.5万件、固定RGU965.9万件から算出。単価は携帯・固定・端末を合わせた合成値。2026年7月のコロンビア通信規制当局CRC資料では、クラロ系が携帯回線の約53%、統合後のティゴ・モビスター系が約39%。会社と規制当局では稼働回線の定義が異なるためシェアを2025年末の会社契約数へ直接掛けない。出典:https://normograma.crcom.gov.co/crc/compilacion/docs/resolucion_crc_8286_2026.htm
その他中南米(ペルー・中米・アルゼンチン・チリ等)
ペルー、エクアドル、アルゼンチン、チリ、中米、カリブ海の携帯と固定通信。国ごとの所得水準と競争環境が異なる。
| 数量百万接続(各国の携帯+固定RGU合計) | 価格1接続当たり年間売上・米ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 103 | 109 | 112 | 12 |
| 10 年後 中立 | 114 | 140 | 160 | 18 |
取り方:2025年20-Fのアルゼンチン366億ペソ、チリ・パラグアイ・ウルグアイ270億ペソ、アンデス地域573億ペソ、中米564億ペソ、カリブ海381億ペソを合算。各地域の2025年末の携帯・固定契約数を合計して約1.031億接続とし、売上を割った合成単価を使用。利益にはチリの事業損失も含む。市場の例として、ペルーの2025年末携帯市場ではクラロ34.0%、ビテル24.6%、モビスター21.9%、エンテル19.2%。他の各国のシェアを一律に仮定せず、国別の成長と競争の合計として将来数量を組み立てる。出典:https://www.gob.pe/institucion/osiptel/noticias/1359346-osiptel-cuantas-lineas-moviles-hay-en-peru-al-cierre-de-2025
欧州A1の通信基盤
オーストリアと東欧各国の携帯、固定回線、家庭向け通信、機器販売。別に取り出したICT受託関連売上を除いた部分。
| 数量百万接続(携帯+固定RGU) | 価格1接続当たり年間売上・米ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 36.6 | 155 | 57 | 9 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 196 | 78 | 13 |
取り方:2025年20-Fの欧州セグメント売上1,212億ペソ、営業利益182億ペソを基礎とし、A1が公表したICT関連売上5.73億ユーロ相当の約6.49億ドルを別セグメントへ移した。営業利益のICT配分は非開示のため概算。欧州の携帯3,017.9万件と固定RGU646万件を合計。オーストリア規制当局RTRによる2025年末の携帯SIMシェアはA1が36.2%、マゼンタ24.9%、ドライ20.1%、その他18.8%。A1全市場を同じシェアで推定せず、東欧の既存顧客も含む会社実数から数量を求めた。出典:https://www.rtr.at/TKP/presse/pressemitteilungen/presseinformationen_2026/pinfo11062026tkp.de.html
A1の法人ICT・運用サービス(AI代替対象)
A1のクラウド、セキュリティー、マネージドIT、業務システムの導入・運用と関連機器。通信回線そのものとは分け、受託工数の代替を保守的に見積もる。
| 数量千件(年間契約相当件数・推定) | 価格年間売上・米ドル/契約相当 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13.0 | 50,000 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 9.1 | 62,000 | 6 | 1 |
取り方:A1の2025年決算説明資料はICT関連の総売上5.73億ユーロ、前年比約20%増を開示。これを連結資料での欧州売上構成比とfactsのドル換算額に合わせ約6.49億ドルとした。実契約件数と工数の開示はない。年額5万ドルの契約相当額を仮定した約1.3万件は分析用換算件数であり、実際の顧客数ではない。営業利益0.65億ドルも全社に開示された独立事業利益ではなく10%の推定利益率。ICTには機器販売やM2Mも含まれるため全額が人月型ではないが、独立した内訳がないため保守的に人月・工数型を適用。中立数量は10年で0.70倍、単価は1.24倍、長期gは0%。A1のICT受託はAIエージェント代替の対象であり、独自データ、低い解約率、法令対応などの堀の証拠が2つ以上確認できないため『記録の正本』型とはしない。出典:https://newsroom.a1.com/news-very-solid-financial-year-2025-for-a1-group-with-revenue-and-ebitda-growth?id=236895&l=english
リスクと懸念
メキシコの支配的地位への規制
テルセルとテルメックスは全国規模の通信網と高いシェアを持つが、2025年に改正された通信法でも支配的事業者への非対称規制が維持されている。卸回線の提供条件、料金、設備開放、事業分離などの措置が厳しくなれば、メキシコの高い利益率を維持しにくい。メキシコ携帯は全社利益の大きな部分を占めるため、規制のわずかな変化でも株主利益への影響は大きい。
ブラジルとコロンビアの競争
ブラジルの携帯ではクラロが約33%、ビボが約38%を持つ。固定ブロードバンドでは地域の光回線事業者が強く、デスクトップの買収後も価格競争から逃れられない。コロンビアではティゴとモビスターの統合によって新しい競争相手が約39%のシェアを持つ。二つの大きな市場で契約の質と単価が同時に悪化すると、全社営業利益の伸びが止まる。
設備投資と借り換え金利
2025年の純有利子負債は368億ドル、自己資本比率は20.1%である。5G、光ファイバー、周波数免許、将来の6Gなどへの投資が毎年必要となる。設備投資の予算は2026年に約70億ドルであり、収入が停滞しても急には減らせない。借り換え金利が5.75%程度へ上がる前提では、2025年からの追加利払いが10年後に税前約6億ドルとなり、株主利益を削る。
支配株主と関連当事者取引
スリム家は2026年3月末時点で信託、関連会社、直接保有を通じて約7割の株式を実質的に支配する。通信塔、建設、金融、小売など系列企業との取引もある。会社は独立企業と同等以上の条件で取引していると説明するが、少数株主が判断を変えさせることは難しい。利益率の低い買収を繰り返したり、系列企業に有利な資本配分を行ったりすれば、本来のオーナー利益が減る。
買収した光回線事業の投資回収
2026年10月にブラジルのデスクトップ取得を完了し、ペルーではWOW買収を発表した。地域の光回線会社は成長余地がある反面、過剰な設備敷設や競合の値下げで契約密度が上がらない可能性がある。未成立のWOW買収利益は予想に入れていない。買収した会社の営業利益とフリーキャッシュフローが、取得額と追加設備投資に見合うかを検証する必要がある。
為替・インフレ・非支配株主の取り分
売上の多くをメキシコ、ブラジル、コロンビアなどの現地通貨で得る一方、ドルやユーロ建ての債務を持つ。実際の為替差損益は年ごとに大きく、2024年の純利益は前年から急減した。評価の筋書きでは通貨前提を動かさないが、現実の株主利益は通貨換算や高インフレで変動する。またA1の持分は約61%であり、連結利益のすべてがAMXの株主に帰属するわけではない。
AI エージェント代替と法人ICTサービス
携帯通信網と光ファイバーはAIエージェントに直接代替されない。むしろAIの利用が通信量を増やす可能性がある。ただしA1のクラウド導入、マネージドIT、セキュリティー運用などには、人の工数やシステム操作に依存する業務が含まれる。2025年のICT関連売上は5.73億ユーロであり、その全額が代替対象ではないが、独立内訳がないため保守的に人月型として扱った。中立では数量を10年間で30%減らし、長期成長を0%とする。
今後の分かれ目
- メキシコのテルセルが携帯回線シェア57〜58%を維持し、後払いARPUの上昇が3年以上続く
- 規制を受けながらも料金決定力が残る証拠となる。中立のメキシコ携帯単価と利益率を引き上げ、やや楽観の確率を増やす。
- メキシコの低価格MVNOとテレビサ系の新しい携帯事業がシェアを伸ばし、テルセルが55%を下回る
- 契約者数だけでなく後払い純増と料金を確認する。優良顧客の流出が伴えば中立数量を減らし、やや悲観の確率を上げる。
- ブラジルのクラロが携帯シェア33%前後を維持し、デスクトップ買収後に光回線接続を増やす
- 固定網の投資回収が進む証拠となる。ブラジルの営業利益率を引き上げ、増分ROICを再計算する。
- コロンビアのティゴ・モビスター統合後にクラロの後払い契約が減り始める
- 最大事業者の規模の堀が薄れていると判断する。コロンビアの数量と営業利益率を引き下げ、下側の筋書きに重みを移す。
- 純負債対EBITDAaLが1.2倍以下で定着し、設備投資約70億ドルの範囲内でサービス収入が年4%以上伸びる
- 借り換え負担と成長投資の両立が進む。10年間の正味還元と将来の自己資本の道筋を上方修正する。
- 固定ブロードバンドの純増が止まり、設備投資を減らしてもフリーキャッシュフローが回復しない
- 通信網の成熟が想定より早いと判断する。固定通信の数量成長を引き下げ、設備維持負担を悲観側の利益率へ反映する。
- A1のICT受託でAIエージェントを成果報酬型サービスとして提供し、独立した売上と継続契約の実績が開示される
- 開示された部分だけ人月型から再分類する。受託工数の減少を補う実績が確認できるまで、数量の回復や長期gの引き上げは行わない。
見ておくもの
- メキシコの携帯契約者数、後払い純増、ARPUと解約率
- テルセルの携帯市場シェアと、Baitなど低価格MVNOの増加
- メキシコの固定ブロードバンド契約数と光回線シェア
- ブラジルのクラロ、ビボ、TIMの携帯シェアと後払い増加
- デスクトップ買収後の光ファイバー接続数と投資回収
- コロンビアのクラロとティゴ・モビスターのシェア推移
- ペルーのWOW買収の規制承認・完了状況
- サービス収入の恒常為替ベース成長率と全社営業利益率
- 設備投資、フリーキャッシュフロー、純負債対EBITDAaL
- 配当と自社株買いの正味還元額、関連当事者取引
- A1のICT売上、受託工数の変化とAIサービス収入
- 通信網への再投資で増えた税引き後営業利益と投下資本
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額や市場PERから10年後の倍率を決めていない。まず2025年20-Fの国別売上・営業利益、各地域の回線数、ARPU、競合シェアから2035年の収入を数量×価格で組み立てた。財務の正本は添付factsの売上491.5億ドル、営業利益102.8億ドル、純利益43.1億ドル、自己資本201.4億ドルとした。20-Fのペソ建てセグメント数値とは通貨換算方法の差があるため、国別構成比を使用してfactsの全社数字に整合させた。
倍率はk=8.5%、事業のROE、超過利益が残る割合0.5、長期gから求めるRONICベースの正当化PERを使用した。中立は上限13.90倍に対して12.09倍、楽観は上限16.02倍に対して14.58倍で、いずれも利益の質から割り引いた。やや悲観と悲観はROEが資本コスト程度またはそれ以下となるため、PERは1÷kの上限内に抑えた。10年目の利益には式の倍率に(1+g)を掛けた。純有利子負債は金融費用と資本コストの品質補正で扱い、時価総額から二重に差し引いていない。
ADSは普通株20株相当であり、会社全体の時価総額を評価する。非支配株主への利益は純利益の段階で控除し、将来の株数による持分縮小を別途掛けない。期間還元は株式報酬や増資払い込みを差し引いた正味額であり、自己資本は期首201.4億ドル+累計純利益−還元と一致させた。米国のリース会計とIFRSの違いが見かけの純負債を変えるため、借入・リースを含むfactsの基準を通した。悲観の床は現在自己資本201.4億ドルと照合した。
この結果、中立の10年後時価総額725.4億ドル、正味還元325億ドルとなる。確率加重の割引現在価値は約495億ドルで、台帳時価総額744億ドルとの差は約−33.5%。割高という結論は、今の市場の値付けに合わせるために置いたものではない。2026年第3四半期の業績改善、ブラジル買収完了、コロンビア競合再編、A1のAI代替対象を確認したうえで、この差を受け入れた。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株共通の基本8.0%+事業品質補正0.5%=8.5%。米国通信大手のAT&T、ベライゾン、Tモバイルと同じ資本コストとした。AMXは新興国での規制と競争の不確実性が高いが、メキシコの支配的な地位とブラジルの大規模通信網も持つ。これらの会社固有の不確実性は追加のkではなく、下側確率38%と低収益の筋書きで扱った。βは使用しない。存続危機は認められないためdistressの上乗せはしない。