結論
TKO は、UFC(総合格闘技)と WWE(プロレス)の権利を持ち、IMG(On Location の接待、イベントの権利、PBR)を束ねたスポーツ・エンターテインメント会社で、2023 年にエンデバーが作った。会場を持たず、放映権の販売で稼ぐ。2025 年は売上 47.4 億ドル、調整後 EBITDA 15.9 億ドル(利益率 33%)、2026 年は UFC のパラマウント契約(7 年 77 億ドル)の開始と FIFA ワールドカップの接待で、通期の売上 58 億ドル、調整後 EBITDA 23 億ドル(見通しを 8 月に引き上げ)。
放映権は長期契約で見通しが立つ(ネットフリックスの WWE は 10 年 52 億ドル、ESPN の WWE の PLE は 5 年約 16 億ドル、長期の残高 150 億ドル超)。UFC・WWE は代わりがないため、更改のたびに価格を上げられた。一方、GAAP の純利益は償却・金利・株式報酬を引くと調整後 EBITDA の 3 割強(2025 年は非支配持分込みで 5.5 億ドル)にとどまり、今の PER は 170 倍台。
中立の筋書きは、10 年後(2035 年)に EBITDA 38 億ドル・純利益 21 億ドル。利益ベースの正当化 PER(帳簿の ROE 32% が先で k へ 3 分の 1 薄れる強い堀、g 4.0% で式 20.8 倍)の ×(1+g) の 85% で、10 年後の PER は約 18.4 倍。時価総額(340 億ドル)に対する本質価値は 2 割低い(やや割高)。独占的な権利の質は高いが、値段は更改の成功をすでに織り込んでいるというのがここでの見方である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後もスポーツの生中継への需要は残り、UFC と WWE は今より強い立場にいる可能性が高いと見る。人気のあるライブスポーツは、配信が広がるほど放映権の価値が上がる面がある。堀は、代わりがない権利(UFC・WWE の名前と選手)と長期の放映契約にあり、買い手同士の競りで価格が決まる。ただし、堀は広がらず、更改のたびに上げ幅が鈍る方向で、買い手の財布(ケーブルの減少)が天井を決める。
オーナー利益は、純利益ではなく、設備投資と株式報酬を引いた FCF に近い。2025 年の FCF は 11.6 億ドルだが、株式報酬(1.2 億ドル)を引き、W 杯の預り金のような一時要因を除くと、株主(非支配持分を含む)のものになる利益は 10 億ドル弱。時価総額 340 億ドルに対し約 3% で、国債の 5% を下回る。
資本配分は、借入で自社株買いを増やし、PER 170 倍台でも買っており、成熟後の倍率で見れば割高な買い方。安全域は、放映権の契約が固いぶん不況には強いが、値段が高く、更改の成否が価値の大半を決めるので、広くはない。事業は強く予測の確信度は中程度だが、今の値段は成功した場合の上の方をすでに織り込んでいる。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つ。(1)UFC:年 43 大会の興行と放映権。2025 年の売上 15.0 億ドル・調整後 EBITDA 8.5 億ドル(利益率 57%)。2026 年 1 月からパラマウント(Paramount+ と CBS)が全大会を放映し、年平均約 11 億ドルの契約で、前の ESPN 契約の約 2 倍。2026 年 4〜6 月の売上は 5.4 億ドル(+29%)。(2)WWE:ロウ・スマックダウン・PLE(レッスルマニアなど)の放映権、ライブ、協賛、商品。2025 年の売上 17.1 億ドル・EBITDA 9.0 億ドル(利益率 52%、2024 年の 49% から改善)。ネットフリックス(2025 年 1 月から 10 年・52 億ドル)と ESPN(2025 年 9 月から PLE・5 年約 16 億ドル)が柱。(3)IMG:On Location(IOC のパリ 2024・ミラノ・コルティナ 2026・LA28 の公式接待提供者、W 杯 2026 の接待)、権利の販売・制作、PBR。2025 年の売上 13.7 億ドルで EBITDA は 1.6 億ドル(利益率 12%)と薄いが、2026 年は W 杯で売上が跳ねる。
収益の構造は、放映権(年次の上げ幅つきの長期契約で、利益率が高く固定的)が土台で、ライブ・協賛・商品・接待が上乗せになる。ほかにゾッファ・ボクシング(パラマウントと 2026 年に 12 大会、合弁で低リスクの構造)とパワー・スラップを管理する。本社費は年 3 億ドル台。2026 年 4〜6 月は UFC フリーダム 250(ホワイトハウス)で約 0.3 億ドルの赤字を出したが、通期の見通しは引き上げた。
優良さと弱いところ
優良さの核は、代わりのない権利と長期契約である。UFC は格闘技のライブ市場でほぼ唯一の地位にあり、WWE は米国のプロレスの中心で、どちらも更改のたびに放送・配信各社の競り合いで価格が上がってきた。放映権は利益率が高く、会場や選手の人件費のような重い資産を持たない(2025 年の設備投資は売上の 3% 弱)。調整後 EBITDA に対する FCF の転換は 2025 年に 73%(FCF 11.6 億ドル)と高い。
弱い所は 4 つ。1 つ目は、のれんと買収の無形資産が大きく、GAAP の利益が薄い(償却 4.9 億ドル、純利息 2.0 億ドル、株式報酬 1.2 億ドルで、調整後 EBITDA 15.9 億ドルから営業利益 8.4 億ドル、純利益 5.5 億ドルまで落ちる)。2 つ目は、IMG の利益率が 12% と薄く、W 杯・五輪のような年に偏る。3 つ目は、UFC の選手報酬をめぐる反トラスト訴訟(Le 事件は 3.75 億ドルで和解、2017 年以降を扱う Johnson 事件は別に継続、2026 年の状況は未確認)。4 つ目は、看板選手・看板スターへの依存。
経営は、エンデバーが作った合弁の構造のまま、エンデバー(シルバーレイクが非公開化)が約 6 割(2025 年半ばの届出)を持ち、大型の買収の予定はないと 8 月の決算説明で述べた。資本配分は 2025〜26 年で自社株買いと配当を積極的に出し、借入も使う。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
スポーツ放映権は、ケーブルから配信への移行で、ライブスポーツが「放映権を持つ者が視聴者を連れてくる」数少ない番組になり、価格が上がり続けてきた。UFC のパラマウントとの契約は年約 11 億ドルで、前の ESPN 契約の約 2 倍の水準とされ、WWE もネットフリックス・ESPN との契約で大きく上がった。2026 年 5 月は配信が視聴時間の 48.6% で過去最高(業界ノート)。この流れが続けば、更改のたびに上がる。
競合は、UFC では PFL・ONE(アジア)・ボクシング団体(ゾッファ・ボクシングは TKO 自身)、WWE では AEW。権利の買い手のネットフリックス・ディズニー(ESPN)・パラマウント・NBC ユニバーサルが、交渉の力を持つ。TKO が突出するのは、他に代わりがないコンテンツを持つ点。逆に弱みは、買い手が減ったり、ケーブル契約者の減少で ESPN の支払い能力が下がったりして、更改が横ばいになる可能性。
隣のライブ興行(ライブ・ネーション)は会場と人を持つ重い事業で利益率は薄い。TKO は権利を売る軽い事業で、EBITDA 利益率は 30〜40% 台。技術の面では、生成 AI による動画の氾濫でも、ライブの試合は代替されにくい。景気では、放映権は契約済みで固く、協賛・チケット・接待が景気に連動する。
資本政策と M&A
還元は、2025 年に配当 1.9 億ドル・メンバーへの分配 4.6 億ドル・自社株買い 8.7 億ドルの計約 15 億ドルで、2026 年は 8 月の時点で 13 億ドル超(8 億ドルの ASR、2 億ドルの 10b5-1 プラン、四半期配当)。授権は 30 億ドルで残り約 10 億ドル。借入で自社株買いを賄い、総借入は 2025 年末の 37.8 億ドルから 2026 年 6 月に 46.6 億ドルに増え、純有利子負債は約 41 億ドル(調整後 EBITDA の 1.8 倍)。借り換えは約 5.75〜6% で、利払いは年 2.5〜3 億ドル。
M&A は、2023 年に UFC と WWE を合併し、2025 年 2 月にエンデバーから IMG・On Location・PBR を取得した(同一支配下の取引)。8 月の決算説明では大型の M&A の予定なしと述べた。エンデバーが TKO の持ち分を将来売る(または TKO が単位を買い取る)かどうかが需給の分かれ目だが、事業価値には入れない。
バリュー投資の目では、借入で買う自社株買いの値段が決め手になる。今の PER(170 倍台)・EV/EBITDA(約 17 倍)で買う自社株買いは、成熟後の倍率(利益ベースで PER 18 倍前後)に比べ割高になりうる。10 年の正味の還元は、中立で約 170 億ドルと置いた(借入の増加を含む)。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 9.7 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
UFC のパラマウント契約(7 年 77 億ドル)は 2026 年に始まったばかりで、その年次の上げ幅と、協賛・ライブの値上げが 2027 年以降の利益を押し上げる。WWE もネットフリックスの 10 年・52 億ドルと ESPN の 5 年約 16 億ドルで 2030 年代前半まで固い。調整後 EBITDA は 2025 年の 15.9 億ドルから 2026 年に 23 億ドル(見通しを 8 月に引き上げ)、売上は 58 億ドルに伸びる。W 杯の接待は当初の 0.75 億ドルを超え、2028 年の LA 五輪(On Location が公式接待提供者)も続く。UFC・WWE は代わりがなく、次の更改でも 3 割前後は上がる。
借入は EBITDA の 1.8 倍と軽く、FCF 転換が 70% を超えるので、年 15 億ドル超の還元ができる。権利の販売という資産の軽い事業で、設備投資は売上の 3% 弱。ゾッファ・ボクシングも低リスクで足される。10 年で EBITDA は 2025 年の 2 倍を超えうる。バリュー投資の目でも、権利と契約は堀であり、ライブスポーツの唯一性は他の娯楽に代えにくい。
慎重な見方
今の値段は、PER で 170 倍台、EV/EBITDA で約 17 倍。放映権の更改が毎回大きく上がることを前提にしており、ケーブル契約者の減少で買い手の支払い能力が限られる中、2030 年代前半の更改が横ばいなら、成長の大半が消える。GAAP の純利益は償却・金利・株式報酬のあとで調整後 EBITDA の 3 割強しかなく、「調整後」の数字より値打ちが小さい。借入を使った自社株買いも、今の倍率で買えば価値を壊す。
UFC は選手報酬をめぐる反トラスト訴訟(Johnson 事件は継続)で、選手の取り分を引き上げざるを得ない。看板選手が去れば視聴が落ちる。WWE はネットフリックス契約の更改(2034 年前後)で下がる可能性があり、ファンの高齢化が進む。IMG は利益率が 12% と薄く、W 杯・五輪の年に偏る。エンデバーが約 6 割を持つ合弁構造で、持ち分の売り出しは需給の重しになる。景気後退では、協賛・チケット・接待が同時に落ちる。
どちらに重みを置いたか
放映権の更改と唯一性は強いので、中立を最も厚く(10 年 33%)置き、楽観・やや楽観を合わせて 32% にした。一方で、今の値段は成熟後の倍率で見ると更改の大きな上振れまで織り込んでおり、やや悲観・悲観に 10 年で合計 35% を置いた。確率で調整すると本質価値は今の時価総額の 8 割で、強い権利を認めても値段が先に行っている(やや割高)。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 181.02 ドル351 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 80.97 ドル157 億ドル)。 今の値に割り戻すと 138.95 ドル270 億ドル、今との差 −21.8%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 316.73 ドル615 億ドル | 115.61 ドル224 億ドル | +143.3% | +9.3% | 43.23 ドル84 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 257.51 ドル500 億ドル | 98.60 ドル191 億ドル | +100.4% | +7.2% | 78.35 ドル152 億ドル |
| 中立 | 33% | 197.46 ドル383 億ドル | 88.14 ドル171 億ドル | +60.7% | +4.9% | 94.25 ドル183 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 114.48 ドル222 億ドル | 60.31 ドル117 億ドル | −1.7% | −0.2% | 38.45 ドル75 億ドル |
| 悲観 | 13% | 18.04 ドル35 億ドル | 41.23 ドル80 億ドル | −66.6% | −10.4% | 7.71 ドル15 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 181.02 ドル351 億ドル | 80.97 ドル157 億ドル | +47.4% | +4.0% | 261.99 ドル508 億ドル |
今の株価時価総額 177.72 ドル345 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 権利の唯一性が厚くなり、放映権が更改のたびに大きく上がる 利益 31 億ドル · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 316.73 ドル615 億ドル
2035 年までに、UFC は世界の格闘技のライブ市場でほぼ独占のまま大会を 52 に増やし、更改(パラマウント契約は 2032 年前後)のたびに放映権が 3 割上がって 1 大会あたりの全収入が現在の約 2.4 倍になり、売上 44 億ドル・利益率 55%。WWE はネットフリックス(2034 年前後に更改)と ESPN が倍の水準に更改され、海外のライブと商品・協賛も伸びて売上 46 億ドル・利益率 56%。IMG は On Location が LA28 の後も五輪・W 杯など大型イベントの接待を取り続け、売上 28 億ドル・利益率 24%。調整後 EBITDA は約 52 億ドル、営業利益約 44 億ドル、純利益約 31 億ドル。反トラストの追加費用はなく、スポーツ権利の石垣として優良さが広がる。
- UFC(総合格闘技):数量 52.0(年間の大会数)× 価格 85(1 大会あたりの全収入(百万ドル。放映権・入場・協賛・商品の合計))→ 売上 44 億ドル・営業利益 24 億ドル。年間の大会数と 1 大会あたりの全収入(百万ドル)
- WWE(プロレス):数量 380(年間の興行・番組の回数(推定))× 価格 12(1 回あたりの全収入(百万ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 26 億ドル。年間の興行・番組の回数と 1 回あたりの全収入(百万ドル)
- IMG(On Location・IMG アリーナ・PBR など):数量 800(取り扱う大型イベント・権利契約の件数(推定))× 価格 3.50(1 件あたり収入(百万ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 7 億ドル。取り扱う大型イベント・権利契約の件数と 1 件あたり収入(百万ドル)
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.0%(基本 8.0%+quality +0.0%)、g 4.0%(放映権の更改が物価+1%、上限の 4%)。事業の ROE 52.7%(その時点の純利益 ÷ 帳簿の自己資本。のれん込み)。 moat=strong(残る割合 0.67)で RONIC=37.8%、式の PER=22.4 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 23.2 倍。 置いたのは 19.76 倍(上限の 85%)。権利の唯一性は強いが、上場して日が浅く、エンデバーの持ち分売却と看板選手への依存があるので、式の値より低めに置いた。純利益は利払い後なので純負債は別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:UFC・WWE の唯一性と放映権の高騰が最も強く出る筋書き。ただし更改は 2030 年代前半で遠く、スポーツ放映権の高騰が続く保証はないので 1 割。
やや楽観 22% 放映権は 2 回の更改で物価を大きく上回って上がり、利益率も保たれる 利益 26 億ドル · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 257.51 ドル500 億ドル
UFC は大会 50、更改で放映権が 2 割上がり、売上 40 億ドル・利益率 53.5%。WWE は更改で 5 割近い上げ幅を取り、売上 42 億ドル・利益率 54%。IMG は五輪・W 杯の接待で売上 25 億ドル・利益率 22%。ゾッファ・ボクシングとレスリング以外の権利(PBR・新興スポーツ)が小さく足される。強気の筋書きと違い、更改は 2 回とも買い手が限られて上げ幅は抑えられるが、唯一性は保たれ、選手報酬と制作費の上昇は物価並みに収まる。反トラスト訴訟は和解で終わり、費用は想定の範囲に収まる。借入は EBITDA の 1.8 倍を保ち、還元を続ける。調整後 EBITDA は約 45 億ドル、営業利益約 37 億ドル、純利益約 26 億ドル。
- UFC(総合格闘技):数量 50.0(年間の大会数)× 価格 80(1 大会あたりの全収入(百万ドル。放映権・入場・協賛・商品の合計))→ 売上 40 億ドル・営業利益 21 億ドル。年間の大会数と 1 大会あたりの全収入(百万ドル)
- WWE(プロレス):数量 365(年間の興行・番組の回数(推定))× 価格 12(1 回あたりの全収入(百万ドル))→ 売上 42 億ドル・営業利益 23 億ドル。年間の興行・番組の回数と 1 回あたりの全収入(百万ドル)
- IMG(On Location・IMG アリーナ・PBR など):数量 700(取り扱う大型イベント・権利契約の件数(推定))× 価格 3.57(1 件あたり収入(百万ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 6 億ドル。取り扱う大型イベント・権利契約の件数と 1 件あたり収入(百万ドル)
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.0%(基本 8.0%+quality +0.0%)、g 4.0%(放映権の更改が物価+1%、上限の 4%)。事業の ROE 40.8%(その時点の純利益 ÷ 帳簿の自己資本。のれん込み)。 moat=strong(残る割合 0.67)で RONIC=29.9%、式の PER=21.7 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 22.5 倍。 置いたのは 19.14 倍(上限の 85%)。権利の唯一性は強いが、上場して日が浅く、エンデバーの持ち分売却と看板選手への依存があるので、式の値より低めに置いた。純利益は利払い後なので純負債は別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:放映権の更改が一度でも 5 割前後の上げ幅になれば届く。ただし選手報酬と制作費の上昇で利益率は少し下がる。
中立 33% 放映権は物価+実質 3〜4% で伸び、利益率は 5 割台前半で落ち着く 利益 21 億ドル · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 197.46 ドル383 億ドル
2035 年の UFC は大会 48、更改で放映権が 1 割台後半上がり、売上 36.5 億ドル・利益率 52%(選手報酬の引き上げと反トラスト和解の費用で 2025 年の 57% から下がる)。WWE は更改で上がるが視聴の伸びは鈍り、売上 36 億ドル・利益率 52%。IMG は売上 22 億ドル・利益率 20%(接待は景気と大型イベントの年次で山谷)。本社費は物価で 4.5 億ドルに増える。調整後 EBITDA は約 38 億ドル(2026 年の見込みの 1.6 倍)、営業利益約 30 億ドル、純負債は EBITDA の 1.8 倍の約 68 億ドル、純利益約 21 億ドル。エンデバー(約 6 割保有)が持ち分を売る場合の値下がりは時価総額でなく需給の話として扱い、事業価値には入れない。
- UFC(総合格闘技):数量 48.0(年間の大会数)× 価格 76(1 大会あたりの全収入(百万ドル。放映権・入場・協賛・商品の合計))→ 売上 37 億ドル・営業利益 19 億ドル。年間の大会数と 1 大会あたりの全収入(百万ドル)
- WWE(プロレス):数量 350(年間の興行・番組の回数(推定))× 価格 10(1 回あたりの全収入(百万ドル))→ 売上 36 億ドル・営業利益 19 億ドル。年間の興行・番組の回数と 1 回あたりの全収入(百万ドル)
- IMG(On Location・IMG アリーナ・PBR など):数量 650(取り扱う大型イベント・権利契約の件数(推定))× 価格 3.38(1 件あたり収入(百万ドル))→ 売上 22 億ドル・営業利益 4 億ドル。取り扱う大型イベント・権利契約の件数と 1 件あたり収入(百万ドル)
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.0%(基本 8.0%+quality +0.0%)、g 4.0%(放映権の更改が物価+1%、上限の 4%)。事業の ROE 32.0%(その時点の純利益 ÷ 帳簿の自己資本。のれん込み)。 moat=strong(残る割合 0.67)で RONIC=24.0%、式の PER=20.8 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 21.7 倍。 置いたのは 18.42 倍(上限の 85%)。権利の唯一性は強いが、上場して日が浅く、エンデバーの持ち分売却と看板選手への依存があるので、式の値より低めに置いた。純利益は利払い後なので純負債は別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(10 年の売上 年 +7〜8%)と同じ。契約更改のたびの上げ幅は鈍るが、唯一性は保たれる。確率を最も厚く置く。
やや悲観 22% 放映権の高騰が止まり、番組・興行の勢いが落ちる 利益 14 億ドル · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 114.48 ドル222 億ドル
UFC は更改が物価並みにとどまり、選手報酬の増加(反トラスト訴訟の和解の引き上げ)で利益率が 50% に下がり、売上 31 億ドル(大会 46)。WWE は看板選手の世代交代と視聴の頭打ちで、更改が横ばいになり売上 31 億ドル・利益率 46%。IMG は大型イベントの接待の競争が増え、売上 18 億ドル・利益率 15%。調整後 EBITDA は約 28 億ドル(2026 年の見込みの 1.2 倍)、営業利益約 20 億ドル、借入は絞られ純負債約 56 億ドル、純利益約 13.7 億ドル。優良さは縮むが事業は残る。
- UFC(総合格闘技):数量 46.0(年間の大会数)× 価格 67(1 大会あたりの全収入(百万ドル。放映権・入場・協賛・商品の合計))→ 売上 31 億ドル・営業利益 16 億ドル。年間の大会数と 1 大会あたりの全収入(百万ドル)
- WWE(プロレス):数量 330(年間の興行・番組の回数(推定))× 価格 9.39(1 回あたりの全収入(百万ドル))→ 売上 31 億ドル・営業利益 14 億ドル。年間の興行・番組の回数と 1 回あたりの全収入(百万ドル)
- IMG(On Location・IMG アリーナ・PBR など):数量 560(取り扱う大型イベント・権利契約の件数(推定))× 価格 3.21(1 件あたり収入(百万ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 3 億ドル。取り扱う大型イベント・権利契約の件数と 1 件あたり収入(百万ドル)
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.0%(基本 8.0%+quality +0.0%)、g 4.0%(物価+0.5%)。事業の ROE 18.5%(その時点の純利益 ÷ 帳簿の自己資本。のれん込み)。 moat=strong(残る割合 0.67)で RONIC=15.0%、式の PER=18.3 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 19.1 倍。 置いたのは 16.21 倍(上限の 85%)。権利の唯一性は強いが、上場して日が浅く、エンデバーの持ち分売却と看板選手への依存があるので、式の値より低めに置いた。純利益は利払い後なので純負債は別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:スポーツ放映権の高騰は米国のケーブル契約者の減少で限界に来る。更改が横ばいになる筋書きに 2 割強。
悲観 13% 唯一性が崩れ、放映権が更改で下がり、構造的に弱くなる 利益 4 億ドル · PER 7.9 倍 · 株価時価総額 18.04 ドル35 億ドル
UFC は看板選手が去り、他の格闘技団体と配信(無料の SNS 動画)に視聴を奪われ、2032 年前後のパラマウント契約の更改で放映権が下がる。選手報酬の引き上げもあり、売上 24 億ドル(大会 43)・利益率 42%。WWE はネットフリックスの更改(2034 年前後)で放映権が約 3 割下がり、ファンの高齢化で興行も細り、売上 23 億ドル・利益率 36%。IMG は接待が不振で売上 14 億ドル・利益率 8%。調整後 EBITDA は約 15 億ドル(2025 年の水準)、営業利益約 7.6 億ドル、純負債は 2.3 倍の約 35 億ドル、純利益約 4.4 億ドル。還元の合計が純利益の合計を上回るのは、償却(非現金)の戻しと、借入を純負債 35 億ドルまで縮める分(資産の売却は想定しない。のれんの減損は非現金)を含むため。もう優良ではなく、倍率も g 3.5%・ROE 30% の式まで縮む(のれんの減損は時価総額の式では見ず、自己資本は減損で減る可能性を残す)。
- UFC(総合格闘技):数量 43.0(年間の大会数)× 価格 56(1 大会あたりの全収入(百万ドル。放映権・入場・協賛・商品の合計))→ 売上 24 億ドル・営業利益 10 億ドル。年間の大会数と 1 大会あたりの全収入(百万ドル)
- WWE(プロレス):数量 300(年間の興行・番組の回数(推定))× 価格 7.67(1 回あたりの全収入(百万ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 8 億ドル。年間の興行・番組の回数と 1 回あたりの全収入(百万ドル)
- IMG(On Location・IMG アリーナ・PBR など):数量 480(取り扱う大型イベント・権利契約の件数(推定))× 価格 2.92(1 件あたり収入(百万ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 1 億ドル。取り扱う大型イベント・権利契約の件数と 1 件あたり収入(百万ドル)
倍率:式どおり(SCHEMA_US §1)。PER = (1 − g/ROE)/(k − g) に k 8%(基本 8.0%+quality 0%)、g 3.5%、ROE 7.0% を入れる。ROE は指揮の決めどおり帳簿の自己資本 ROE(借金の比率を保って伸びる前提):10 年目の純利益 4.4 億ドル ÷ 自己資本 64 億ドル(非支配持分込み。自社株買い・分配を引いた繰り越し)= 7.0%。40% 以下なので帳簿の値を使う。TKO の伸びは放映権の更改と値上げが中心で買収を要しないが、過去ののれん・無形は除かず、余った現金も無い。来年の利益に対する式の値 11.1 倍、10 年目の利益には ×(1+g) で 11.5 倍。これを税引き後営業利益 6.1 億ドルに掛けた事業価値 70 億ドルから、純負債 35 億ドルを 1 ドルで引いて時価総額 35 億ドル(GAAP 純利益 4.4 億ドルの 8.0 倍。純利益は非支配持分込みで株式報酬は費用、償却の足し戻しなし)。
確率:放映権の高騰が終わり、スポーツ視聴が分散して更改が下がる(2030 年代前半)筋書き。株価が高い今は、悲観を厚めの 13% に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
UFC(総合格闘技)
UFC の放映権・チケット・協賛・商品。年 43 大会。2026 年からパラマウントと 7 年 77 億ドルの契約。
| 数量年間の大会数 | 価格1 大会あたりの全収入(百万ドル。放映権・入場・協賛・商品の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 43.0 | 35 | 15 | 9 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 76 | 37 | 19 |
取り方:2025 年の UFC 売上 15.02 億ドルを年 43 大会で割った。op_oku は調整後 EBITDA 8.51 億ドル(利益率 57%)で置き、減価償却・株式報酬・本社費は全社の調整に入れた。市場は世界の格闘技のライブ・放映権で、シェアはほぼ独占。
WWE(プロレス)
WWE の放映権(ネットフリックス・ESPN・海外)・ライブ・協賛・商品。
| 数量年間の興行・番組の回数(推定) | 価格1 回あたりの全収入(百万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 330 | 5.18 | 17 | 9 |
| 10 年後 中立 | 350 | 10 | 36 | 19 |
取り方:売上 17.09 億ドルを、ロウ・スマックダウン・PLE・ハウスショーなど年約 330 の興行・番組で割った推定(開示は無い)。op_oku は調整後 EBITDA 8.97 億ドル(利益率 52%)。
IMG(On Location・IMG アリーナ・PBR など)
スポーツイベントの接待(On Location)、権利の販売・制作(IMG)、PBR。
| 数量取り扱う大型イベント・権利契約の件数(推定) | 価格1 件あたり収入(百万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 550 | 2.49 | 14 | 2 |
| 10 年後 中立 | 650 | 3.38 | 22 | 4 |
取り方:売上 13.67 億ドルを推定 550 件で割った(開示は無い)。2024 年は EBITDA が赤字、2025 年は 1.60 億ドル(利益率 12%)。2026 年は W 杯の接待で売上・利益とも跳ねる。
リスクと懸念
放映権の更改が横ばいか下がる
TKO の価値の大半は、UFC のパラマウント(2032 年前後)・WWE のネットフリックス(2034 年前後)・ESPN(2030 年前後)の更改で決まる。ケーブル契約者の減少で ESPN の支払い能力が下がり、買い手が減れば、これまでの上げ幅は続かない。式の g と ROE を下げる最大の要因で、10 年の悲観の中心。
今の値段に対する倍率の縮み
PER 170 倍台(GAAP)・EV/EBITDA 約 17 倍は、成熟後の式の倍率(PER 18 倍台)より高い。利益が 10 年で 1.6 倍(EBITDA)になっても、倍率の縮みが利益の伸びを打ち消す。調整後の数字と GAAP の数字の差(償却・金利・株式報酬)も大きい。
UFC の選手報酬をめぐる反トラスト訴訟
Le 事件(2010〜2017 年)は 3.75 億ドルで和解した。2017 年以降を扱う Johnson 事件は別に継続しており(2026 年の状況は未確認)、和解または判決で選手報酬の引き上げ・契約の変更が出れば、UFC の利益率(57%)が下がる。悲観の筋書きに利益率 42〜50% として入れた。
看板選手・看板スターへの依存
UFC は看板選手の引退・離脱で視聴が落ちやすく、WWE も看板スターに依存する。ファン層の高齢化も長期の需要を削る。放映権は契約済みなので影響は更改の時に出るが、視聴が落ちれば協賛・チケット・商品が先に弱り、更改の交渉でも買い手に有利に働く。後継のスターが育つかどうかが 10 年の分かれ目になる。
IMG の薄い利益率と、大型イベントの年に偏る収益
IMG の 2025 年の利益率は 12%(2024 年は赤字)。2026 年は W 杯で跳ね、2027 年に谷、2028 年は LA 五輪の接待で戻るが、イベントの年次が利益を決める。W 杯の接待の預り金(2026 年は 6 億ドル超)が営業キャッシュフローを一時的に膨らます点にも注意。利益率が 12% と薄いので、売上が 1 割ずれると利益は大きく動く。
借入を使う自社株買いと、エンデバーの持ち分
総借入が 2025 年末の 37.8 億ドルから 2026 年 6 月に 46.6 億ドルに増えた。今の倍率で買う自社株買いは価値を壊しうる。エンデバー(約 6 割)が持ち分を売れば需給の重しになり、TKO が単位を買い取れば借入が増える。
今後の分かれ目
- UFC の次の更改(または WWE のネットフリックス・ESPN の更改)が 3 割以上の上げ幅になる
- 楽観・やや楽観の確率を数ポイント上げる。10 年の UFC・WWE の売上の置き方を上げてよい。
- 放映権の更改が横ばいか下がる、または買い手が減る
- やや悲観・悲観の確率を上げ、g を 4% 以下に置き直す。10 年の倍率は 20 倍前後まで縮む。
- Johnson 事件が数億ドル規模で和解し、選手報酬の引き上げが決まる
- UFC の利益率を 50% 前後に置き直し、やや悲観の確率を上げる。
- LA28 の接待パッケージの販売が W 杯を大きく上回る
- IMG の売上・利益率を上げ、楽観側の確率を上げる。
- エンデバーが TKO の持ち分を大きく売る(または TKO が単位を大きく買い取る)
- 需給の話として見る。借入で買い取るなら純負債の置き方を上げ、還元を減らす。事業価値は変えない。
- 景気後退で協賛・チケット・接待が落ちる
- 悲観の確率を上げる。放映権が固いので底の EBITDA は 7 割台まで。
見ておくもの
- UFC・WWE の放映権収入の四半期の伸び(パラマウント・ネットフリックス・ESPN の年次の上げ幅)
- 調整後 EBITDA の通期見通し(2026 年は 22.75〜23.05 億ドル)と GAAP 純利益
- IMG の利益率(W 杯の後の 2027 年と、LA28 の予約状況)
- 反トラスト:Johnson 事件の進展と選手報酬
- エンデバーの持ち分の動き(売り出し・単位の買い取り)
- 総借入と自社株買いの値段(残り授権約 10 億ドル)
- ゾッファ・ボクシング・パワー・スラップの採算
倍率と資本コストの決め方
今の PER(170 倍台)や株価を見る前に、UFC・WWE・IMG を 10 年後で、大会・興行の回数と 1 回あたり収入(放映権の更改と物価)で積み上げ、減価償却・株式報酬・本社費・利払い・税(実効 20%)を引いて純利益を出した。倍率は利益ベースの正当化 PER(2026-10-18 の決まり):10 年後の中立は k 8.0%(基本 8.0%+quality 0%)・g 4.0%・帳簿の ROE 32%・moat=strong(UFC・WWE の唯一の権利)で RONIC 24%、式 20.8 倍 ×(1+g) の 85%(上場して日が浅く、エンデバーの持ち分売却と看板選手への依存)で約 18.4 倍を GAAP 純利益に掛けた(純利益は利払い後なので純負債を別に引かない。前の版の税引き後営業利益に掛けて純負債を引く形はやめた)。結果がやや割高に出たのは、今の値段(PER 170 倍台)が更改の上振れまで織り込んでいるためで、今の株価に寄せて決めた値ではない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k は基本 8.0% + quality 0% = 8.0%。放映権の更改で値上げできる値決め力(−0.5%、強い堀なので下げはここまで)と、看板選手・少数の権利への依存(+0.5%)が打ち消し合う。純負債は EBITDA の 1〜2 倍で借金は 0、循環は普通。エンデバーの持ち分売却や訴訟のリスクは k に足さず、確率と筋書きで表した。事業の存続は危うくないので上乗せは 0。