結論
ネットフリックスは、190 か国超で 3.25 億件超の有料会員を持つ世界最大の動画配信会社である。2025 年に売上 453 億ドル・営業利益 134 億ドル(営業利益率 29.6%)・純利益 110 億ドルを稼ぎ、2026 年は売上 510〜514 億ドル(前年比 +13〜14%)・営業利益率 31.5% を見込む。2026 年 4〜6 月は売上 125.6 億ドル(+13%)、営業利益率 33.4% と計画どおりだが、7〜9 月の見通しは市場予想を下回り、株価は 7〜8% 下げた。ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収は、パラマウント・スカイダンスに競り負けて手を引き、解約金 28 億ドルが入った(一過性の利益)。
事業の質は高い。会員数・番組への投資額・値上げの力という規模の経済が、他の配信会社(ディズニー、アマゾン、パラマウントと WBD の統合体)に対する差を広げてきた。ただし視聴時間では、ユーチューブが米国のテレビ視聴の 14% を占めてネットフリックスの 8% を大きく上回り、無料で広告を取る相手に時間を奪われている。会員 3.25 億件は先進国で飽和に近く、成長は値上げと広告に移った。広告は 2026 年に約 30 億ドルを目指すが、立ち上がりは予想より遅い。
会員と 1 件あたりの収入を積み上げると、中立の筋書きで 2028 年の売上は約 615 億ドル(営業利益率 33.6%)、2035 年は約 1,040 億ドル(同 35%)、ROE は自社株買いで 50% 台と極めて高い。資本コスト 8.0%、成熟後の成長 4.0%、ROIC 45% が先で k へ半分薄れる利益ベースの正当化 PER は 21.2 倍で、ユーチューブとの競争と番組費の重さから上限の 85%、10 年後の PER は約 18.8 倍とした。中立の 10 年後の時価総額は約 5,890 億ドルと今の約 1.9 倍で、還元を含めた年率(約 10%)は資本コスト 8.0% を上回る。悲観(10 年 13%)とやや悲観(22%)を合わせると、確率を加重した本質価値は今の時価総額(3,064 億ドル)を約 17% 上回り、総合はやや割安。事業の質は高いが、今の値段はその質をおおむね織り込んでいる、というのが結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず「10 年後もあるか」と問うと、動画配信という事業は残り、ネットフリックスはその最大手として今より強い可能性が高い。規模の経済・ブランド・価格を決める力は強く、堀は番組費の規模で広がっている。一方、堀の外側から無料の動画(ユーチューブ・ティックトック・AI で作られた動画)が視聴時間を奪う動きは、堀の幅を狭める方向の力で、10 年の中でいちばん大きな問いである。
オーナー利益は、純利益 110 億ドルから株式報酬(年 4〜5 億ドル)を引き、番組費の償却と現金支出の差(現金のほうが大きい時期が続く)を見ると、FCF(2025 年に 95 億ドル、2026 年の見通し 125 億ドル)が実態に近い。営業利益 134 億ドルに比べ FCF の転換率は 7 割強で、設備が軽い割に番組費の先払いが利益を食う。
安全域の議論では、中立の筋書きの年率は約 10% で資本コスト 8.0% を上回り、確率を加重した価値は今の値段の 2 割弱上にある。安全域はあるが薄い。悲観は 6〜7 割の下落で、2022 年に 75% 下げた実績と近い。予測しやすい事業(会員の積み上げ)と予測しにくい事業(広告・ユーチューブとの競争)が混在し、確信度は中程度。値段は事業の質に対してやや控えめだが、悲観の深さを考えると大きく買い増す水準ではない、というのがバリュー投資の見方である。
何で稼ぐ会社か
売上の約 97% は会員の月額料金で、残りが広告(2025 年に約 15 億ドル超)である。会員は広告なし・広告つきの複数プランから選び、米国・カナダの割合は売上の約 4 割、会員数では約 6 割が米国外にいる。会員数は 2026 年から開示をやめ、売上・利益率・FCF・広告収入の目標で示す方針に変えた。
稼ぎ方は、番組(オリジナル作品・ライセンス作品・ライブ)に年 180 億ドル規模の現金を投じ、それを全世界の会員で割るため、会員が増えるほど 1 件あたりの番組費が薄まる。番組費は先に払い、償却して費用にするので、営業利益率は売上の伸びが番組費の伸びを上回る分だけ上がる(2022 年の 17.8% から 2025 年の 29.6%)。値上げは 2〜3 年ごとに国ごとに行い、解約が増えない範囲で通してきた。2023 年のパスワード共有の取り締まりが、会員を 2 億台から 3 億件超へ押し上げた。
広告つきプランは、2022 年の開始から 3 年で広告の売上が 15 億ドル超になった。自前の広告配信基盤を 2025 年に作り、アマゾンやトレード・デスク経由の買い手を増やしている。ライブ(NFL のクリスマス戦、ボクシング、WWE の毎週のショー)は番組費の約 5% ・視聴の約 1% だが、広告つきプランの入口と新規会員の獲得に効く。そのほかゲーム、グッズ、体験型施設は売上への寄与がまだ小さい。
優良さと弱いところ
堀は主に 3 つ。第 1 は規模の経済で、世界 3.25 億件超の会員で番組費を割れるため、1 作品あたりの負担は後発の配信会社の数分の 1 で済む。第 2 は推薦と視聴データで、何を作り、何に投資するかの当たりが高い。第 3 はブランドと習慣で、値上げをしても解約が急増しない価格を決める力が、2022 年以降の毎年の値上げと利益率の上昇で確かめられた。
ROE は 41% と高く、営業利益率は過去最高の 29.6%。資本の使い方は、買収を避けて自前制作と自社株買いに回してきた点が堅実で、2026 年 4〜6 月だけで 47 億ドルを買い戻した。2025 年末の WBD 買収の合意は、映画スタジオと HBO を 約 800 億ドル規模で買う大型案件で、一時は方針の転換と受け取られたが、パラマウントに競り負けても値段を上げて追わなかった点は、資本配分の規律として評価できる。
弱点は、視聴時間でユーチューブに負けていること(米国のテレビ視聴で 14% 対 8%)、会員数の伸びが先進国で止まっていること、番組の当たり外れが大きいこと、広告で後発であること、そして株式報酬が年 4〜5 億ドルと小さいものの、評価が高い時に自社株買いを積み増す癖があることである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のテレビ視聴で、配信は 2026 年 5 月に 48.6% と過去最高、ケーブルは 20.4%、放送は 19.2%。ただし配信の中身は割れていて、ユーチューブが 13.8〜14.2% で首位、ネットフリックスは 8% 割れ、ディズニーの配信は 4.7%。業界ノートの中立の見通しは、動画配信の売上が 10 年で年 +7%(契約 +3.5%・ARM +3.5%)。ネットフリックスの足元(2026 年に +13〜14%)は、この見通しを上回る。
循環でいえば、配信の契約は景気に強い(解約は広告つきプランに移る)が、広告は景気の山の近くにいて、不況で 10〜15% 落ちる。競争の構図は、ユーチューブ(無料・広告・ショート・テレビ画面)とティックトックが視聴時間を、アマゾン(プライム・ビデオ)・ディズニー・パラマウントと WBD の統合体が番組を取り合う形に変わった。WBD の映画スタジオと HBO は、パラマウントが約 1,100 億ドルで買収し、ネットフリックスに対抗する第 2 の総合配信会社が生まれる。
技術面では、AI による映像制作費の低下が、番組費という最大の費用を下げる追い風にも、ユーチューブなど無数の制作者に参入を許す逆風にもなる。ライブスポーツは放映権料が上がり続ける領域で、ネットフリックスは NFL を 2029〜30 年まで延長した。規制は、放送局と違って所有規制が弱く、中国・インドなど海外の検閲と現地の制作比率の規制が主な論点である。
資本政策と M&A
還元は配当なしで、自社株買いが中心である。2023 年 60 億ドル、2024 年 63 億ドル、2025 年 91 億ドルと増え、2026 年 4〜6 月は 47 億ドル(過去最大)、追加の枠 250 億ドルが承認されている。2026 年 1〜6 月の買い戻し約 60 億ドル(6,643 万株)は今の株数に反映済みなので、起点の自己資本と 10 年の還元の合計から外した。basis の株数は年次の 43.4 億株から最新四半期の 41.9 億株(brief の写す値)に直した。株式報酬は年 4〜5 億ドルと小さいので、正味の還元は自社株買いの額にほぼ等しい。2026 年の FCF 見通しは 125 億ドル、純負債は 79 億ドルで時価総額の 2.6% しかなく、財務は軽い。
M&A は、WBD の映画スタジオと HBO を現金中心で買う合意が 2025 年 12 月にあり、2026 年 2 月にパラマウントの高い提示で WBD が解約し、ネットフリックスは追わずに解約金 28 億ドルを受け取った。これは買収で価値を壊さなかった一方、自前でそこまでの番組・知的財産が作れるかを問われる結果になった。今後は、大型買収より、ゲーム・ライブ・広告基盤の小さな買収と自社株買いが中心になる見込みである。買われる側になる可能性は時価総額 3,000 億ドル超で事実上ない。
鍵は、自社株買いを今の PER 28 倍で積み増す判断が報われるかで、本質価値がほぼ今の値段と見る計算では、積み増しで価値は増えも減りもせず、安全域は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ネットフリックスは、規模の経済と値上げの力を持つ勝者で、利益率はまだ上がる。2022 年の 17.8% から 2025 年の 29.6% へ、そして 2026 年は 31.5% と、番組費が売上の伸びより遅く増える構造が続く。会員は 3.25 億件超で、広告つきプランの広告収入は 2026 年に約 30 億ドルと 2 倍になり、広告単価と視聴者の拡大で 2030 年代には 200 億ドル超の事業になりうる。広告は売上より利益率が高く、全社の営業利益率を 40% 近くへ押し上げる。
ライブは NFL の 5 試合と WWE で、新規会員と広告の入口を作り、スポーツの放映権で放送局と放映権を争える配信会社になる。WBD の買収で追わなかった規律と、四半期で 47 億ドルに達した自社株買いで、1 株の価値は積み上がる。2030 年に営業利益 300 億ドルという目標の報道は、売上が 2 倍で利益率が 37.5% なら届く水準である。ユーチューブは無料の広告媒体であって、有料の質の高い作品の代わりにはならない。
慎重な見方
成長が鈍っている。2026 年 4〜6 月の売上は +13% でも、営業利益率は前年より下がり、7〜9 月の見通しも市場予想を下回った。上半期の視聴は 970 億時間で +2% にとどまり、会員数の開示をやめた時期と重なる。ユーチューブは米国のテレビ視聴の 14% を占めて、ネットフリックスの 8% を大きく上回り、視聴時間の差は広がっている。広告は 2026 年の 30 億ドルでも、広告つきプランの 1 人あたり広告収入はユーチューブやメタに比べて低く、立ち上がりも遅い。
さらに、アマゾン・ディズニー・パラマウントと WBD の統合体が番組・ライブ・価格で競り合い、番組費は上がる。NFL・WWE など放映権料は上がり、ライブは視聴の 1% しかない。PER 28 倍・PBR 11.5 倍は、利益率の上昇と広告の成功をほとんど割り引かずに織り込んでいる。今の 28 倍から成熟後の 20 倍前後へ倍率が縮むので、事業が伸びても株価の伸びはその分削られる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と利益率の上昇は強気の見方が強く、確率は楽観・やや楽観を 10 年で 30% に寄せた。一方、視聴時間の議論は慎重な見方が強く、10 年はやや悲観と悲観を合わせて 35% と厚く置いた。中立の筋書きの年率は約 10% で資本コスト 8.0% を上回り、確率を加重した価値は今の値段を 2 割弱上回る。確率は中立を最大(35%)にし、悲観は 13%(視聴時間の喪失による構造的な負け)。結論は「質の高い勝者で、値段はやや割安。悲観の深さは大きい」。 点検(2026-10-19):basis の株数が 10 年次の古い 43.4 億株だったので最新四半期の 41.9 億株に直し(今の時価総額 3064→2955 億ドル)、上期の買い戻し 60 億ドルを還元から外した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 122.34 ドル5,125 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 41.52 ドル1,740 億ドル)。 今の値に割り戻すと 84.93 ドル3,558 億ドル、今との差 +26.7%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 203.52 ドル8,526 億ドル | 60.63 ドル2,540 億ドル | +294.0% | +14.7% | 21.13 ドル885 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 170.07 ドル7,125 億ドル | 53.47 ドル2,240 億ドル | +233.4% | +12.8% | 49.18 ドル2,060 億ドル |
| 中立 | 35% | 140.61 ドル5,891 億ドル | 45.11 ドル1,890 億ドル | +177.0% | +10.7% | 65.00 ドル2,723 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 73.86 ドル3,094 億ドル | 29.60 ドル1,240 億ドル | +54.3% | +4.4% | 22.76 ドル954 億ドル |
| 悲観 | 13% | 24.46 ドル1,025 億ドル | 20.05 ドル840 億ドル | −33.6% | −4.0% | 5.79 ドル242 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 122.34 ドル5,125 億ドル | 41.52 ドル1,740 億ドル | +144.4% | +9.3% | 163.86 ドル6,865 億ドル |
今の株価時価総額 67.05 ドル2,809 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:広告が 370 億ドル事業になり、利益率が 38% へ 利益 442 億ドル · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 203.52 ドル8,526 億ドル
2035 年に売上は約 1,390 億ドル(年 +11.9%)。会員は年 +4.7% で 4.9 億件(新興国の伸びとパスワード共有の取り締まりの深掘り)、1 件あたり年間売上は物価(10 年 1.41 倍)を上回る 208 ドル。広告は世界の動画広告市場 5,300 億ドルのシェア 7%(約 371 億ドル)まで育ち、利益率 45% でミックスを押し上げる。ライブとスポーツの放映権を広告つきプランの入口に使い、視聴時間でもユーチューブとの差を縮める。営業利益率は 38%、営業利益は約 534 億ドル、純利益は約 442 億ドル。堀は広がり、優良さが保たれる。
- 有料会員の月額料金:数量 4.9(年間平均の有料会員(億件))× 価格 208(1 件あたりの年間売上(ARM×12・ドル))→ 売上 1,019 億ドル・営業利益 367 億ドル。会員と 1 件あたり年間売上
- 広告:数量 24.7(ネットフリックスが売る広告の量(単位=2025 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の世界の動画広告市場 × シェア)× 価格 15(1 単位の値段(億ドル。2025 年=10))→ 売上 371 億ドル・営業利益 167 億ドル。名目市場 5300 億ドル × シェア 7.00%(単価 1.5)。広告市場とシェア
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.0%(基本 8.0%+quality +0.0%)、g 4.0%(契約と単価が物価+1%、上限の 4%)。事業の ROE 55%(帳簿の ROE は自社株買いで 40% を超えるので、SCHEMA_US §1 の ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))を使った。負債の効きは足さず控えめに取った)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=31.5%、式の PER=21.8 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 22.7 倍。 置いたのは 19.29 倍(上限の 85%)。規模と値上げの力はあるが、ユーチューブとの視聴時間の競争と番組費の重さがあるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:広告・ライブ・番組費の抑制が 10 年続けて全部当たる必要があり、ユーチューブが視聴を握る現状から見て確率は 8%。
やや楽観 22% やや楽観:会員と単価の伸びが続き、広告が 300 億ドル 利益 374 億ドル · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 170.07 ドル7,125 億ドル
売上は約 1,229 億ドル(年 +10.5%)。会員は年 +4% で 4.6 億件、1 件あたり年間売上は 202 ドル(物価並みの 1.43 倍)。広告は市場 5,000 億ドルのシェア 6%(約 300 億ドル)、利益率 42%。全社の営業利益率は 36.7% で、番組費の規模の経済が効き続ける。ライブは広告つきプランの獲得に効くが視聴の 1 割は超えない。営業利益は約 451 億ドル、純利益は約 374 億ドル。高い ROE を保つが、成長は 5% 台に落ち着き、PER は 20.5 倍。優良さの面では、規模の経済と値上げの力が保たれ、堀は今のまま維持される。買収は大型を避け、ゲーム・ライブ・広告基盤の小さな補強にとどまり、自社株買いは FCF に近い額で続く。
- 有料会員の月額料金:数量 4.6(年間平均の有料会員(億件))× 価格 202(1 件あたりの年間売上(ARM×12・ドル))→ 売上 929 億ドル・営業利益 325 億ドル。会員と 1 件あたり年間売上
- 広告:数量 20.7(ネットフリックスが売る広告の量(単位=2025 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の世界の動画広告市場 × シェア)× 価格 15(1 単位の値段(億ドル。2025 年=10))→ 売上 300 億ドル・営業利益 126 億ドル。名目市場 5000 億ドル × シェア 6.00%(単価 1.45)。広告市場とシェア
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.0%(基本 8.0%+quality +0.0%)、g 4.0%(契約と単価が物価+1%、上限の 4%)。事業の ROE 50%(帳簿の ROE は自社株買いで 40% を超えるので、SCHEMA_US §1 の ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))を使った。負債の効きは足さず控えめに取った)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=29.0%、式の PER=21.6 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 22.4 倍。 置いたのは 19.05 倍(上限の 85%)。規模と値上げの力はあるが、ユーチューブとの視聴時間の競争と番組費の重さがあるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:会員の積み上げと 2〜3 年ごとの値上げが 2022 年以降の実績で確かめられており、広告が目標に届けば成立する。
中立 35% 中立:会員・単価とも物価並みに伸び、広告が 225 億ドル 利益 314 億ドル · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 140.61 ドル5,891 億ドル
2035 年の売上は約 1,076 億ドル(2025 年の 2.4 倍、年 +9.0%)。会員は年 +3.3% で 4.3 億件(先進国は飽和し、成長は新興国が担う)、1 件あたり年間売上は物価並みの 198 ドル(10 年 1.40 倍)。広告は世界の動画広告市場 5,000 億ドルのシェア 4.5%(約 225 億ドル)で、利益率 40%。全社の営業利益率は 35%(2025 年の 29.6% から上昇)、営業利益は約 379 億ドル、純利益は約 314 億ドル。ユーチューブに視聴時間では負け続けるが、有料の質の高い作品と規模の経済で堀は保たれる。自社株買いは FCF に近い額を続け、10 年で正味約 1,950 億ドルを還元する。PER は 20 倍で、時価総額は今の約 2 倍。
- 有料会員の月額料金:数量 4.3(年間平均の有料会員(億件))× 価格 198(1 件あたりの年間売上(ARM×12・ドル))→ 売上 851 億ドル・営業利益 289 億ドル。会員と 1 件あたり年間売上
- 広告:数量 16.0(ネットフリックスが売る広告の量(単位=2025 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の世界の動画広告市場 × シェア)× 価格 14(1 単位の値段(億ドル。2025 年=10))→ 売上 225 億ドル・営業利益 90 億ドル。名目市場 5000 億ドル × シェア 4.50%(単価 1.41)。広告市場とシェア
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.0%(基本 8.0%+quality +0.0%)、g 4.0%(新興国の契約 +1%・単価は物価並みで物価+0.5%、上限の 4%)。事業の ROE 45%(帳簿の ROE は自社株買いで 40% を超えるので、SCHEMA_US §1 の ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))を使った。負債の効きは足さず控えめに取った)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=26.5%、式の PER=21.2 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 22.1 倍。 置いたのは 18.76 倍(上限の 85%)。規模と値上げの力はあるが、ユーチューブとの視聴時間の競争と番組費の重さがあるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(契約 年 +3.5%・ARM 年 +3.5%)に、広告の上積みを足した。広告の立ち上がりが遅い現状も織り込んだ。
やや悲観 22% やや悲観:ユーチューブと統合体に挟まれ、利益率が 28% に 利益 194 億ドル · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 73.86 ドル3,094 億ドル
売上は約 837 億ドル(年 +6.4%)。会員は年 +1.8% で 3.9 億件、1 件あたり年間売上は 180 ドル(10 年で 1.28 倍と物価に届かない。値上げが解約を呼ぶため)。広告は市場 4,500 億ドルのシェア 3%(約 135 億ドル)。番組費とスポーツ放映権料が売上より速く上がり、営業利益率は 28% と 2026 年の見通しの水準より下がる。営業利益は約 235 億ドル、純利益は約 194 億ドル。自社株買いは細り、PER は 17 倍。この筋書きでは、ユーチューブが無料で広告を取る一方、有料の配信は番組の質で差をつけられず、規模の経済が頭打ちになる。堀は狭まるが消えはせず、純現金に近い財務が下を支えるので、悲観ほどの崩れにはならない。
- 有料会員の月額料金:数量 3.9(年間平均の有料会員(億件))× 価格 180(1 件あたりの年間売上(ARM×12・ドル))→ 売上 702 億ドル・営業利益 197 億ドル。会員と 1 件あたり年間売上
- 広告:数量 10.4(ネットフリックスが売る広告の量(単位=2025 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の世界の動画広告市場 × シェア)× 価格 13(1 単位の値段(億ドル。2025 年=10))→ 売上 135 億ドル・営業利益 38 億ドル。名目市場 4500 億ドル × シェア 3.00%(単価 1.3)。広告市場とシェア
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.0%(基本 8.0%+quality +0.0%)、g 3.5%(物価並み)。事業の ROE 30%(帳簿の ROE は自社株買いで 40% を超えるので、SCHEMA_US §1 の ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))を使った。負債の効きは足さず控えめに取った)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=19.0%、式の PER=18.1 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 18.8 倍。 置いたのは 15.95 倍(上限の 85%)。規模と値上げの力はあるが、ユーチューブとの視聴時間の競争と番組費の重さがあるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:視聴時間の差の拡大と、パラマウントと WBD の統合による番組の競り合いは、すでに起きている流れの延長である。
悲観 13% 悲観:視聴時間を奪われ、普通の配信会社になる 利益 77 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 24.46 ドル1,025 億ドル
10 年のうちに、無料の動画(ユーチューブ・ティックトック・AI で作られた動画)が視聴時間の大半を握り、有料会員の価値が下がる。会員は 3.4 億件で横ばい、新興国中心の値下げと広告つきの安いプランへの移行で 1 件あたり年間売上は 135 ドルと今より下がる(物価の 1.41 倍に対し 0.96 倍)。広告は市場 3,000 億ドルのシェア 2%(約 60 億ドル)で伸びない。番組費は固定的で、営業利益率は 18%、営業利益は約 94 億ドル、純利益は約 77 億ドル。規制・スポーツの放映権料の高騰も重なり、堀は狭まって優良とは言えなくなり、普通のメディア会社として PER 約 13 倍(式 14.1 倍から純負債を引いた値)で値付けされる。
- 有料会員の月額料金:数量 3.4(年間平均の有料会員(億件))× 価格 135(1 件あたりの年間売上(ARM×12・ドル))→ 売上 459 億ドル・営業利益 83 億ドル。会員と 1 件あたり年間売上
- 広告:数量 5.0(ネットフリックスが売る広告の量(単位=2025 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の世界の動画広告市場 × シェア)× 価格 12(1 単位の値段(億ドル。2025 年=10))→ 売上 60 億ドル・営業利益 11 億ドル。名目市場 3000 億ドル × シェア 2.00%(単価 1.2)。広告市場とシェア
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.0%(基本 8.0%+quality +0.0%)、g 3.0%(物価を下回る)。事業の ROE 17%(帳簿の ROE は自社株買いで 40% を超えるので、SCHEMA_US §1 の ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))を使った。負債の効きは足さず控えめに取った)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=12.5%、式の PER=15.2 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 15.7 倍。 置いたのは 13.31 倍(上限の 85%)。規模と値上げの力はあるが、ユーチューブとの視聴時間の競争と番組費の重さがあるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:2022 年にこの株は 75% 下げた。ユーチューブ・ティックトック・AI 動画に視聴時間を奪われる構造的な負けは、10 年のうち最大の懸念で、確率は 13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
有料会員の月額料金
広告なし・広告つき・広告なし上位プランの月額料金。ネットフリックスの売上の約 97%。
| 数量年間平均の有料会員(億件) | 価格1 件あたりの年間売上(ARM×12・ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.1 | 141 | 437 | 130 |
| 10 年後 中立 | 4.3 | 198 | 851 | 289 |
取り方:会員は 2025 年の期末 3.25 億件超から年間平均を約 3.1 億件と置き、広告を除く売上 437 億ドルで割った 1 件あたり年間 141 ドル(月約 11.8 ドル)。会員数は会社が 2026 年から開示をやめたので推定。世界の有料動画配信の契約 約 14 億件(中国を除く推定)の約 2 割強で首位、アマゾンのプライム・ビデオ(特典で付く)、ディズニー(ディズニープラス・Hulu で約 2 億件)、パラマウントと WBD の統合体(約 2 億件)が追う。1 件あたりの売上はディズニープラス(約 8 ドル)を大きく上回り、値上げの力は業界で最も強い。中立の単価は物価並み(10 年 1.41 倍)と置いた。営業利益は全社 134 億ドルから広告分を引いた値。
広告
広告つきプランの広告収入(自前の配信基盤・ライブ番組を含む)。
| 数量ネットフリックスが売る広告の量(単位=2025 年の価格で 10 億ドル分)= 実質の世界の動画広告市場 × シェア | 価格1 単位の値段(億ドル。2025 年=10) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.6 | 10 | 16 | 4 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 14 | 225 | 90 |
取り方:世界の動画広告市場は同じ業種のノートに合わせ約 2,530 億ドル(推定)。会社は 2025 年の広告収入を「15 億ドル超」と開示し、約 16 億ドルとして、シェア 0.63% と置いた。ユーチューブ(約 16%)、メタ、ティックトック、アマゾンのプライム・ビデオ(広告つきを標準にして一気に視聴者を広告に乗せた)に比べてまだ小さく、広告つきプランの 1 人あたり広告収入も低い。数量は実質の市場 × シェア、価格は広告 1 単位の値段(千回表示あたりの単価)で、中立は物価並み(10 年 1.41 倍。グーグルのユーチューブと同じ置き方)。利益は立ち上げ費用の最中なので 25% と推定。2026 年は約 30 億ドルが目標。
リスクと懸念
ユーチューブなど無料動画への視聴時間の流出
米国のテレビ視聴でユーチューブは約 14%、ネットフリックスは 8% 割れ。上半期の視聴時間は +2% にとどまる。視聴が減れば解約の増加と値上げの余地の縮小が同時に来て、ARM の伸びが止まる。AI で作られた動画の氾濫も、この流れを速めうる。
広告の立ち上がりが遅い
2026 年の広告収入の目標は約 30 億ドルだが、立ち上がりは予想より遅いと受け止められた。広告つきプランの 1 人あたり広告収入はユーチューブやメタより低く、広告が伸びなければ、利益率の上昇も会員の ARM の伸びも、この会社の評価を支えにくい。
番組費とスポーツ放映権の高騰
番組費は年 180 億ドル超の先払いで、利益率が上がる前提は売上が番組費より速く伸びること。NFL(2029〜30 年まで延長)などのライブ放映権は上がり続け、競合の統合(パラマウントと WBD)が番組の取り合いを強める。売上の伸びが 1 桁前半に落ちると利益率は逆に下がる。
会員の飽和と情報開示の後退
会員は 3.25 億件超で、先進国は飽和に近い。会社は 2026 年から会員数の開示をやめ、投資家が成長の質を確かめにくくなった。新興国は単価が低く、会員が増えても ARM を押し下げる。先進国の飽和が先に来て、新興国の増加が単価の低下を呼ぶと、売上の伸びが物価に届かなくなる。
自社株買いの値段と資本配分
2026 年 4〜6 月に 47 億ドルと過去最大の自社株買い。本質価値が今の時価総額より低いなら、割高で買い戻すことになり、株主の価値を壊す。WBD の買収を見送った規律が、今後も続く保証はない。借り入れで買い戻しを増やせば、借り換えの金利 6% 弱では利払いが利益を食う。
規制・税・海外の事業環境
海外の検閲・現地の制作比率の規制、デジタルサービス税、EU の放送規制が収益に効く。会員の約 6 割が米国外にいて、為替は動かさない前提でも、現地の価格設定が難しくなりうる。インドや東南アジアの低価格競争で、新興国の ARM が想定より下がる懸念もある。
今後の分かれ目
- 広告収入が 2026 年に 30 億ドルを達成し、2027 年に 50 億ドル超へ伸びたら
- 広告の筋書き(シェア)の置き方を上げ、10 年の楽観・やや楽観の確率を数ポイント上げる。広告は利益率が高く、全社の営業利益率を押し上げる。
- 米国のテレビ視聴で、ユーチューブとの差が広がり続け、ネットフリックスが 7% を割ったら
- 会員の伸びと ARM の置き方を下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。値上げが解約を増やす局面に入る。
- 営業利益率が 2027 年に 35% を超え、売上の伸びが 10% 以上を保ったら
- 楽観側の確率を上げてよい。ただし倍率は成長の減速を先に映すので、時価総額が追いつくとは限らない。
- 番組費の伸びが売上の伸びを上回り、営業利益率が 2 年続けて下がったら
- 規模の経済が崩れていると見て、中立の営業利益率を 3〜4 ポイント下げ、倍率を 2〜3 倍下げる。
- パラマウントと WBD の統合体が配信を一本化して値下げ・同梱で攻めたら
- ネットフリックスの ARM の伸びを 1 ポイント下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 自社株買いが今の倍率でも続き、純負債が増えて財務が重くなったら
- 資本配分の評価を下げ、確信度を下げる。筋書きの悲観の確率を上げて対応する。
見ておくもの
- 広告収入の達成度(2026 年に約 30 億ドル)と広告つきプランの 1 人あたり収入
- 米国のテレビ視聴シェア(ニールセン Gauge)でのユーチューブとの差
- 四半期の営業利益率(2026 年見通し 31.5%)と番組費の現金支出
- 売上の伸び(2026 年見通し +13〜14%)と値上げの時期
- 自社株買いの額と純負債
- ライブスポーツ(NFL・WWE)の放映権料と視聴
- パラマウントと WBD の統合体の配信戦略
倍率と資本コストの決め方
今の PER 27.9 倍を見る前に、会員と 1 件あたり売上、広告(実質の市場 × シェア × 単価)を積み上げて 2028 年・2035 年の利益を作り、次に倍率を決めた。倍率は利益ベースの正当化 PER(2026-10-18 の決まり):10 年後の中立は k 8.0%(基本 8.0%+quality 0%)・g 4.0%・ROIC 45%(帳簿の ROE は自社株買いで 60% と高く出るので使わない)、moat=normal で RONIC 26.5%、式 21.2 倍 ×(1+g) の 85% で約 18.8 倍。純利益は利払い後なので純負債は別に引かない。過去 20 期の中央値 59 倍や今の 28 倍には寄せていない。確率と筋書きは動かしていない。高い ROE が先で薄れる分を倍率に入れたうえで、やや割安に出た。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k は基本 8.0% + quality 0% = 8.0%。月額課金の安定(−0.25%)と値上げの実績(−0.25%)を、ユーチューブとの競争と番組費の重さ・単一事業の寿命(+0.5%)が打ち消す。純負債は小さく借金は 0。株価の急落と回復という短い期間の振れ(β)は使わない。事業の存続は危うくないので上乗せは 0。
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